説明

小物部品供給装置

【課題】安定動作が可能な小物部品供給装置を提供する。
【解決手段】ナット供給装置100は、ナット300を上部可動電極200の下端部201に供給する。可動シュート6の先端部61は、上部可動電極200が上昇位置にあるときの上部可動電極200の下端部201の近傍下方に位置する。可動シュート6の先端部61は、一対の分割片62が互いに接近又は当接した状態にあるとき、上流側から送給されてきたナット300を受け止め上部可動電極200の下端部201への移し替えを可能にするナット受部(部品受部)を形成し、かつ、一対の分割片62が互いに離隔した状態にあるとき、上部可動電極200の下降201を可能にする空間を形成するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小物部品例えばナットを作業装置例えばスポット溶接機に供給する小物部品供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スポット溶接機(作業装置)にナット(小物部品)を供給するナット供給装置(小物部品供給装置)として、溶接機の電極軸と直交する方向に進退可能な供給ロッドを備え、この供給ロッドにナットを保持させ、ナットが上部可動電極の真下に位置するまで供給ロッドを前進させ、上部可動電極の下降に伴いナットを上部可動電極に移載させるナット供給装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平6−238461号公報
【特許文献1】特開平10−43870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の従来技術によると、供給ロッドのストロークが長いため、供給ロッドを安定動作させることが難しいと考えられる。また、上記の従来技術によると、供給ロッドが溶接機の電極軸と直交する方向に進退可能とされているため、ワークを下部固定電極にセットする作業などの作業空間が制限されるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記のようなナット供給装置のみに限定されるものではないが、上記のような問題点を解決し、新規かつ斬新な発想の下、安定動作が可能な小物部品供給装置を提供することを目的とする。また、本発明は、作業空間の増大を図ることができる小物部品供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の小物部品供給装置は、小物部品を作業装置に供給する小物部品供給装置において、前記作業装置の可動部の移動軌跡上に先端部が位置する可動シュートを備え、前記可動シュートの先端部は一対の分割片で構成され、該一対の分割片は互いに水平方向に接近又は当接及び離隔可能に構成され、前記先端部は、前記一対の分割片が互いに接近又は当接した状態にあるとき、上流側から送給されてきた小物部品を受け止め前記作業装置への移し替えを可能にする部品受部を形成し、かつ、前記一対の分割片が互いに離隔した状態にあるとき、前記作業装置の可動部の移動時に該可動部と前記一対の分割片との干渉が生じない空間を形成するよう構成されることを特徴とする。
【0006】
本発明の小物部品供給装置によると、可動シュートの先端部を構成する一対の分割片は、作業装置の可動部の移動を阻害しない空間を確保できるよう水平方向へ離隔すれば足りるため、その移動量が小さくて済み、安定動作を確保し易くなる。
【0007】
ここで、前記可動シュートの先端部が形成した前記部品受部に小物部品を送給する固定シュートを、前記可動シュートの先端部から斜め上方へ延設すると、従来技術で説明したような電極軸と直交する方向つまり横方向に固定シュートを設ける場合と比べ、作業空間が増大し、作業性が向上する。
【0008】
また、前記固定シュートの先端部にゲートを備え、前記ゲートは、前記可動シュートの先端部が前記部品受部を形成しない間は遮断状態を維持して小物部品を前記固定シュート内に待機させ、前記可動シュートの先端部が前記部品受部を形成すると開放状態に遷移して前記待機中の小物部品の前記部品受部への移動を可能にする。このように構成すると、小物部品を部品受部に連続的に供給することが可能になる。
【0009】
また、前記固定シュートにセレクタを設け、前記セレクタは、前記ゲートにより小物部品が前記固定シュート内に待機しているとき該待機中の小物部品に後続する後続小物部品を待機させ、その後、前記ゲートが開放状態に移行して前記固定シュート内の小物部品が前記部品受部に移動し、さらに前記ゲートが遮断状態に移行したとき、前記後続小物部品の前記ゲートへの移動を可能にすると共に前記後続小物部品に後続する後後続小物部品を待機させる。このように構成すると、小物部品を部品受部にさらに連続的に供給することが可能になる。
【0010】
また、前記可動シュートは、前記各々の分割片から斜め上方へ延びる、平面視「く」字状の作動レバー部を有し、各作動レバー部は、屈曲部を軸として揺動可能に構成される。このように構成すると、一対の作動レバー部の揺動動作によって一対の分割片の接近又は当接及び離隔を実現可能になる。
【0011】
また、小物部品の移動方向に沿って往復動する往復移動体を備え、前記往復移動体の1往復動に連動して前記可動シュート、前記ゲート及び前記セレクタが作動する。このように構成すると、往復移動体を駆動する1つの駆動源のみで可動シュート、ゲート及びセレクタを作動させることができる。
【0012】
また、前記往復移動体は、該往復移動体の移動方向と直交する方向に所定間隔を置いて配置された一対の従動ローラであって、前記可動シュートの前記一対の作動レバー部の各外側の側面を押圧する一対の従動ローラを備え、前記一対の従動ローラは、前記往復移動体が往動するとき、前記可動シュートの前記一対の分割片を離隔状態から接近又は当接状態へと遷移させ、かつ、前記往復移動体が復動するとき、前記可動シュートの前記一対の分割片を接近又は当接状態から離隔状態へと遷移させる。このように構成すると、往復移動体の往復動によって可動シュートを作動させることができる。
【0013】
前記往復移動体は、往動時に前記ゲートが開放状態に遷移することによって移動可能になった前記固定シュート内の待機中の小物部品をその後方から前記部品受部に向けて押し出す押出ロッドを備える。このように構成すると、部品受部まで小物部品を確実に移動させることができ、また、部品受部に小物部品が安定して保持される。
【0014】
前記ゲートは、前記一対の作動レバー部に連動して垂直面上を揺動動作する揺動レバーの先端部に設けられ、前記固定シュートの部品出口前方に下方から出没可能に構成される。このように構成すると、上記のように一対の作動レバー部が往復移動体の往復動によって作動されることから、往復移動体の往復動によってゲートを作動させることができる。
【0015】
前記セレクタは、前係止片と後係止片を備え、前記前係止片は前記後続小物部品の移動を規制及び許容し、かつ、前記後係止片は前記後後続部品の移動を規制及び許容する。このように構成すると、セレクタの部品供給上流側に小物部品を連続して待機させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るナット供給装置の一部断面を有する概略側面図であって、往復移動体が後退位置にあるときの側面図、図2は、図1図示のナット供給装置をその長手方向と直交する方向から見た正面図、図3は、往復移動体が前進途中にあるときの上記ナット供給装置の一部断面を有する概略側面図、図4は、図3図示のナット供給装置をその長手方向と直交する方向から見た正面図、図5は、往復移動体が前進位置にあるときの上記ナット供給装置の一部断面を有する概略側面図、図6は、図5図示のナット供給装置をその長手方向と直交する方向から見た正面図、図7は、可動シュートの動作説明図、図8は、ゲートの動作説明図、図9は、セレクタの動作説明図、図10は、押出ロッドの動作説明図をそれぞれ示す。
【0018】
図1〜図10において、部品供給装置としてのナット供給装置100は、作業装置としてのスポット溶接機の、昇降部材としての上部可動電極200の下端部201に、ナット300を供給する装置である。
【0019】
ナット供給装置100は、上部可動電極200の近傍下方から上部可動電極200の後方へ斜め上方に延びて配設され、このナット供給装置100には、図示しないナットフィーダーからナット300が送給されてくる。ナット供給装置100は、定置式のスポット溶接機に固定配置される。
【0020】
ナット供給装置100は、定置式スポット溶接機側に固定される固定シュート1を備える。固定シュート1は、ナットフィーダー側に接続される送給ホース2に接続される。固定シュート1は、ナット300が一列となって通る直線状のナット通路11を有する。固定シュート1の上壁部には、ナット通路11に連通し、ナット300の移動方向に沿った直線状の開口部12が形成されている。また、ナット通路11の先端はナット出口13となっている。固定シュート1の上面には、ナット300の移動方向に沿って高さ位置が連続的に低くなる傾斜面部14が部分的に形成されている。
【0021】
固定シュート1の後端部には、セレクタ3が配設されている。セレクタ3は、固定シュート1のナット通路11内にそれぞれ出没可能な前係止片31及び後係止片32を有する。前係止片31及び後係止片32は、揺動体33に形成されており、揺動体33は、水平軸34を中心として揺動可能とされる。揺動体33から左右方向に、一対のカムフォロア35が延設されている。一対のカムフォロア35は、後述する一対の作動プレート45のカム部46によって付勢され、前係止片31がナット通路11内に侵入しかつ後係止片32がナット通路11外に位置するナット待機モードと、前係止片31がナット通路11外に位置しかつ後係止片32がナット通路11内に侵入したナット供給モードの2つのモードを選択的に取り得る。ここで、ナット待機モードは、図9(A)に示すように、後述する待機ナット300Cに後続する後続ナット300Aが前係止片31によって滑落を阻止されると共に、後続ナット300Aに後続する後後続ナット300Bの孔300aに後係止片32が侵入可能な状態であり、また、ナット供給モードは、図9(B)に示すように、後続ナット300Aが前係止片31の下方を滑落すると共に、後後続ナット300Bの孔300aに後係止片32が侵入し後後続ナット300B(次回のナット供給時の後続ナット300Aとなるナット)の滑落が阻止される状態である。
【0022】
固定シュート1の後端部の上方に往復移動体4が配設されている。往復移動体4は、固定シュート1に配設されたブラケット41に固定されたエアシリンダ42によって駆動され、固定シュート1のナット通路11に沿って往復動可能とされる。往復移動体4の左右一対の側面ブロック43には、一対の従動ローラとしての横回転ローラ44が所定間隔を置いて配設されている。また、往復移動体4には、後方へ延びる左右一対の作動プレート45が配設されている。各作動プレート45の下端面には、往復移動体4の移動に伴い、セレクタ3の作動を制御するカム部46が形成されている。
【0023】
また、往復移動体4の前面には、押出ロッド5が配設されている。押出ロッド5は、往復移動体4の前面に配された水平軸51を中心として垂直面上を回動自在とされ、その先端部52は、固定シュート1の開口部12に出没可能とされる。押出ロッド5の長手方向中間部には、左右一対の縦回転ローラ53が配設されている。縦回転ローラ53は、垂直面上を転動自在とされ、固定シュート1の上面に載っている。押出ロッド5は、図10に実線で示すように、縦回転ローラ53が固定シュート1の上面の傾斜面部14よりも後方の高い位置にあるとき、水平軸51と縦回転ローラ53とを結んだ仮想線54Aの傾斜は比較的小さく、押出ロッド5の先端部52はナット通路11の上方に位置してナット300と係合しない状態となり、また、図10に二点鎖線で示すように、縦回転ローラ53が上記傾斜面部14の上に位置するとき、上記仮想線54Bの傾斜は大きくなり、押出ロッド5の先端部52はナット通路11内に侵入して待機ナット300Cと係合可能な状態となる。
【0024】
固定シュート1の下方に、可動シュート6が配設される。可動シュート6は、先端部61に互いに水平方向に接近又は当接及び離隔可能に構成される一対の分割片62を有し、可動シュート6の先端部61は、一対の分割片62が互いに接近又は当接した状態にあるとき、固定シュート1のナット出口13から送給されてきた待機ナット300Cを受け止め上部可動電極200の下端部201への移し替えを可能にする部品受部としてのナット受部63を形成する。可動シュート6は、ナット300の前方への脱落を防止するための前壁部と、ナット300の左右方向への脱落を防止するための縦壁部とを有し、上面に、ガイドシャフト202の進入を可能にしつつカバーが配されている。ナット受部63は、上部可動電極200の軸線上で上部可動電極200の真下に位置する。また、可動シュート6の先端部61は、一対の分割片62が互いに離隔した状態にあるとき、上部可動電極200の下降を可能にする空間64を形成するよう構成される。
【0025】
可動シュート6は、先端部61から上部可動電極200の後方かつ斜め上方へ延びる一対の作動レバー部65を有する。各作動レバー部65は、図7に示すように、平面視もしくは正面視「く」字状に構成されており、直線状の後側部分65aから外向きに直線状の前側部分65bが延びて構成されている。各作動レバー部65の前側部分65bと後側部分65aとの屈曲部65c付近には、固定シュート1に固定された回転軸部66が配設され、各作動レバー部65は、この回転軸部66を中心として水平方向へ揺動可能とされている。
【0026】
各作動レバー部65は、横回転ローラ44によって押圧されている。一対の横回転ローラ44は、上記のように、往復移動体4に配設され、往復移動体4の移動方向と直交する方向に所定間隔を置いて配置されている。一対の横回転ローラ44は、往復移動体4の往復動に従って一対の作動レバー部65を押圧しながら転動する。
【0027】
可動シュート6は、一対の横回転ローラ44が一対の作動レバー部65の後側部分65aと当接状態にあるとき図7に実線で示す状態に保持され、一対の分割片62は離隔状態に維持される。その後、往復移動体4が前進(往動)を開始し、一対の横回転ローラ44の前進に伴い一対の横回転ローラ44と一対の作動レバー部65の後側部分65aとの当接状態が解除され、一対の横回転ローラ44が一対の作動レバー部65の前側部分65bと当接するようになると、可動シュート6は図7に二点鎖線で示す状態へと遷移し、一対の分割片62は離隔状態から接近又は当接状態へと遷移する。その後、往復移動体4が後退(復動)を開始し、一対の横回転ローラ44の後退に伴い一対の横回転ローラ44と一対の作動レバー部65の前側部分65bとの当接状態が解除され、一対の横回転ローラ44が一対の作動レバー部65の後側部分65aと当接するようになると、可動シュート6は図7に実線で示す状態へと遷移し(戻り)、一対の分割片62は接近又は当接状態から離隔状態へと遷移する。なお、固定シュート1には、可動シュート6の図7に実線及び二点鎖線で示した状態を保持するためのストッパー15など状態保持手段が適宜の位置に設けられている。
【0028】
固定シュート1のナット出口13の前方には、ナット300をナット出口13に待機させ、その待機ナット300を後ナット出口13から放出させるためのゲート7が配置される。ゲート7は、図8(C)に示すように、ナット出口13の前方を開放及び遮断するものである。ゲート7の下端部には、固定シュート1の下面に沿って揺動レバー71が延設されている。揺動レバー71は、可動シュート6の一対の作動レバー部65の間に配され、固定シュート1に保持された水平軸72を中心として垂直面上を揺動可能とされる。揺動レバー71の後端部の上面と固定シュート1の下面との間には、ゲート7を遮断状態に維持する方向の押圧力を揺動レバー71の後端部に対して常時加えるばね部材73が配設されている。揺動レバー71の前部の上端には、押下受圧部74が設けられている。押下受圧部74は、可動シュート6の一対の作動レバー部65に形成された押下付勢部75と係合及び非係合可能とされる。可動シュート6の一対の分割片62が互いに離隔状態にあり可動シュート6の先端部61が空間64を形成しているとき、図8(B)に実線で示すように、押下受圧部74と押下付勢部75は互いに非係合状態にあり、揺動レバー71は、図8(A)に実線で示すように、ばね部材73の付勢力を受け、ゲート7は固定シュート1のナット出口13を遮断し、固定シュート1内の待機ナット300Cを待機状態に保つ。その後、往復移動体4の前進に伴い可動シュート6の先端部61がナット受部63を形成するようになると、図8(B)に二点鎖線で示すように、揺動レバー71の押下受圧部74が押下付勢部75と係合状態となり、図8(A)に二点鎖線で示すように、押下受圧部74がばね部材73の付勢力に抗して下方へ移動し、ゲート7は固定シュート1のナット出口13を開放する。このため、ナット出口13に待機中の待機ナット300Cは可動シュート6のナット受部63に移動可能になる。
【0029】
次に、上記のように構成されるナット供給装置100の動作例を説明する。
【0030】
(1)往復移動体4が後退位置にあるとき(図1及び図2)
往復移動体4が後退位置にあるとき、一対の横回転ローラ44は対応する作動レバー部65の後側部分65aを押圧しており、可動シュート6の一対の分割片62は互いに離隔した状態にあり、可動シュート6の先端部61は、上部可動電極200の下降を可能にする空間64を形成している。
【0031】
そして、一対の分割片62が互いに離隔した状態にあるため、揺動レバー71の押下受圧部74が一対の作動レバー部65の押下付勢部75と係合しておらず、このため、揺動レバー71はばね部材73の付勢力を受け、ゲート7を上昇位置に保持し、固定シュート1のナット出口13は遮断状態に保持され、待機ナット300Cがナット出口13で待機状態となっている。
【0032】
また、縦回転ローラ53は固定シュート1の傾斜面部14よりも後方の高い位置にあり、押出ロッド5の先端部52は、固定シュート1のナット通路11の外に位置している。
【0033】
また、セレクタ3において、一対のカムフォロア35が作動プレート45のカム部46によって付勢され、前係止片31がナット通路11外に位置しかつ後係止片32がナット通路11内の後続ナット300Aの孔に侵入し、この後続ナット300Aが待機状態となっている。
【0034】
(2)往復移動体4の前進(図3及び図4)
エアシリンダ42により往復移動体4を前進開始させると、一対の横回転ローラ44が対応する作動レバー部65の後側部分65aから離れ前側部分65bを押圧するようになり、可動シュート6の一対の分割片62は互いに接近又は当接した状態へと移行し、可動シュート6の先端部61にナット受部63が形成される。
【0035】
また、一対の分割片62が互いに離隔した状態から接近又は当接した状態へと移行するとき、揺動レバー71の押下受圧部74が一対の作動レバー部65の押下付勢部75と係合するようになり、押下受圧部74が下降するため、ゲート7が下降し、固定シュート1のナット出口13は開放状態へ移行し、それまで待機中だった待機ナット300Cをナット受部63に向けて送給可能となる。
【0036】
また、縦回転ローラ53は固定シュート1の傾斜面部14よりも後方の高い位置から傾斜面部14を転がり下りるようになり、押出ロッド5の先端部52は、固定シュート1のナット通路11内に侵入し、待機ナット300Cに接近する。
【0037】
また、一対のカムフォロア35が作動プレート45のカム部46によって時計方向へ回動し、前係止片31がナット通路11内に侵入しかつ後係止片32がナット通路11内の後続ナット300Aの孔300aから抜け出るようになる。このため、それまで後係止片32で保持されていた後続ナット300Aが自重で滑落して前係止片31で停止され、待機状態となる。
【0038】
(3)往復移動体4の前進停止(図5及び図6)
往復移動体4が図3及び図4に示した位置からさらに前進すると、押出ロッド5の先端部52が待機ナット300Cを後方から押し、往復移動体4の前進位置でナット300を可動シュート6の先端部61のナット受部63に拘束するようにする。往復移動体4の前進は、前進端確認センサ81から検出信号が出力されたときに停止させる。
【0039】
(4)上部可動電極200へのナット300の移送
可動シュート6の先端部61のナット受部63に拘束されたナット300に対し、その真上から上部可動電極200のガイドシャフト202を下降(前進)させ、ガイドシャフト202をナット300の孔に侵入させ、ガイドシャフト202の弾性力によってナット300を弾性保持する。
【0040】
(5)往復移動体4の後退
エアシリンダ42によって往復移動体4を後退開始させると、一対の横回転ローラ44が、対応する作動レバー部65の前側部分65bから離れ後側部分65aを押圧するようになり、可動シュート6の一対の分割片62は互いに離隔した状態へと移行し、可動シュート6の先端部61に空間64が形成される。
【0041】
また、一対の分割片62が互いに接近又は当接した状態から離隔した状態へと移行するとき、揺動レバー71の押下受圧部74と一対の作動レバー部65の押下付勢部75との係合状態が解除され、押下受圧部74が上昇するため、ゲート7が上昇し、固定シュート1のナット出口13は遮断状態へ移行する。
【0042】
また、縦回転ローラ53は固定シュート1の傾斜面部14を転がり上がり、傾斜面部14よりも後方の高い位置まで達するようになり、押出ロッド5の先端部52は、固定シュート1のナット通路11の外に出るようになる。
【0043】
また、一対のカムフォロア35が作動プレート45のカム部46によって反時計方向へ回動し、前係止片31がナット通路11の外に出るため、それまで前係止片31で保持されていた後続ナット300Aが自重で滑落してゲート7で停止され、待機状態(待機ナット300C)となる。また、カムフォロア35の反時計方向への回動により、後係止片32がナット通路11内に侵入し、上記後続ナット300Aに後続する後後続ナット300Bの孔300aに侵入し、この後後続ナット300Bを次回のナット供給時の後続ナット300Aとして保持する。
【0044】
往復移動体4の後退は、後退端確認センサ82から検出信号が出力されたときに停止させる。
【0045】
(6)上部可動電極200の下降、溶接
上部可動電極200を下降させ、ガイドシャフト202で弾性保持したナット300をワーク(図示せず。)にスポット溶接する。この上部可動電極200の下降は、可動シュート6の先端部61に空間64が形成されているため、可動シュート6の先端部61と干渉しないで行われる。また、上部可動電極200の下降時、上部可動電極200が所定位置まで下降したことが位置センサ(図示せず。)によって検知されると、ガイドシャフト202を上昇(後退)させ、ガイドシャフト202が溶接作業を阻害しないようにする。
【0046】
(7)上部可動電極200の上昇
スポット溶接終了後、上部可動電極200を上昇させる。この上部可動電極200の上昇に伴い、次のスポット溶接に対応して下部固定電極(図示せず。)にワークをセットする。
【0047】
(8)往復移動体4の前進
上部可動電極200が上昇位置(図1図示の状態に対応する。)まで達したことが位置センサ(図示せず。)により検知されると、エアシリンダ42を作動し、往復移動体4を再び前進させる。以後、(2)〜(7)の動作が繰り返し行われる。
【0048】
なお、固定シュート1のナット通路11内に供給されているナット300の量を確認するためのナット量確認センサ(図示せず。)を設け、上記のようなナット供給が行われている間、ナット量確認センサにより固定シュート1内のナット300の量が所定量以下になったことが検出されるたびに、ナットフィーダーから固定シュート1内にナット300を1個もしくは複数個供給するようにする。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のナット供給装置(小物部品供給装置)100は、ナット(小物部品)300を上部可動電極200(作業装置)に供給するナット供給装置(小物部品供給装置)であり、上部可動電極200(作業装置の可動部)の移動軌跡上に先端部61が位置する可動シュート6を備え、可動シュート6の先端部61は一対の分割片62で構成され、一対の分割片62は互いに水平方向に接近又は当接及び離隔可能に構成され、先端部61は、一対の分割片62が互いに接近又は当接した状態にあるとき、上流側から送給されてきたナット300を受け止め上部可動電極200への移し替えを可能にするナット受部63(部品受部)を形成し、かつ、一対の分割片62が互いに離隔した状態にあるとき、上部可動電極200の移動時に上部可動電極200と一対の分割片62との干渉が生じない空間64を形成するよう構成される。
【0050】
本実施形態のナット供給装置100によると、可動シュート6の先端部61を構成する一対の分割片62は、上部可動電極200の下降を可能にするだけの空間64を確保できるよう水平方向へ離隔すれば足りるため、その移動量が小さくて済み、安定動作を確保し易くなる。
【0051】
また、ナット供給装置100は、可動シュート6の先端部61が形成したナット受部63にナット300を送給する固定シュート1を、可動シュート6の先端部61から斜め上方へ延設したため、従来技術で説明したような電極軸と直交する方向つまり横方向に固定シュートを設ける場合と比べ、作業空間が増大し、作業性が向上する。
【0052】
また、ナット供給装置100は、固定シュート1のナット出口(先端部)13にゲート7を備え、ゲート7は、可動シュート6の先端部61がナット受部63を形成しない間は遮断状態を維持してナット300Cを固定シュート1内に待機させ、可動シュート6の先端部61がナット受部63を形成すると開放状態に遷移して待機中のナット300Cのナット受部63への移動を可能にするように構成したため、ナット300をナット受部63に連続的に供給することが可能になる。
【0053】
また、ナット供給装置100は、固定シュート1にセレクタ3を設け、セレクタ3は、ゲート7によりナット300Cが固定シュート1内に待機しているとき待機中のナット300Cに後続する後続ナット300Aを待機させ、その後、ゲート7が開放状態に移行して固定シュート1内のナット300Cがナット受部63に移動し、さらにゲート7が遮断状態に移行したとき、後続ナット300Aのゲート7への移動を可能にすると共に後続ナット300Aに後続する後後続ナット(後後続小物部品)300Bを待機させるように構成したため、ナット300をナット受部63にさらに連続的に供給することが可能になる。
【0054】
また、可動シュート6は、各々の分割片62から斜め上方へ延びる、平面視「く」字状の作動レバー部65を有し、各作動レバー部65は、屈曲部65cを軸として揺動可能に構成されるため、一対の作動レバー部65の揺動動作によって一対の分割片62の接近又は当接及び離隔を実現可能になる。
【0055】
また、ナット供給装置100は、ナット300の移動方向に沿って往復動する往復移動体4を備え、往復移動体4の1往復動に連動して可動シュート6、ゲート7及びセレクタ3が作動するため、往復移動体4を駆動する1つのエアシリンダ(駆動源)42のみで可動シュート6、ゲート7及びセレクタ3を作動させることができる。
【0056】
また、往復移動体4は、往復移動体4の移動方向と直交する方向に所定間隔を置いて配置された一対の横回転ローラ(従動ローラ)44であって、可動シュート6の一対の作動レバー部65を押圧する一対の横回転ローラ44を備え、一対の横回転ローラ44は、往復移動体4が往動するとき、可動シュート6の一対の分割片62を離隔状態から接近又は当接状態へと遷移させ、かつ、往復移動体4が復動するとき、可動シュート6の一対の分割片62を接近又は当接状態から離隔状態へと遷移するため、往復移動体4の往復動によって可動シュート6を作動させることができる。
【0057】
往復移動体4は、往動時にゲート7が開放状態に遷移することによって移動可能になった固定シュート1内の待機中のナット300Cをその後方からナット受部63に向けて押し出す押出ロッド5を備えるため、ナット受部63までナット300を確実に移動させることができ、また、ナット受部63にナット300が安定して保持される。
【0058】
ゲート7は、一対の作動レバー部65に連動して垂直面上を揺動動作する揺動レバー71の先端部に設けられ、固定シュート1のナット出口(部品出口)13前方に下方から出没可能に構成される。また、上記のように一対の作動レバー部65が往復移動体4の往復動によって作動される。このため、往復移動体4の往復動によってゲート7を作動させることができる。
【0059】
セレクタ3は、前係止片31と後係止片32を備え、前係止片31は後続ナット300Aの移動を規制及び許容し、かつ、後係止片32は後後続ナット300Bの移動を規制及び許容する。このため、セレクタ3のナット供給上流側にナットを連続して待機させることが可能になる。
【0060】
上記実施形態のナット供給装置100は、上部可動電極200にナット300を供給する構成をとっているが、本発明は、上部固定電極にナットを供給するナット供給装置、または、下部固定電極にナットを供給するナット供給装置、または、下部可動電極にナットを供給するナット供給装置にも適用可能である。また、ナット300が固定シュート1内で連なって並ぶとそのナットの形状により前後のナットが絡み滑走することができなくなる場合には、セレクタ3を削除し、ナットフィーダーからゲート7まで1個ずつナットを直接送給するよう構成してもよい。また、ナット供給装置100は、エアシリンダ等の駆動機構によって往復動可能とし、上部可動電極200から後方斜め上方へ後退可能に配設するようにしてもよい。ナット供給装置100を後退可能にした場合には、作業空間(作業エリア)が増大し、作業性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係るナット供給装置の一部断面を有する概略側面図であって、往復移動体が後退位置にあるときの側面図である。
【図2】図1図示のナット供給装置をその長手方向と直交する方向から見た正面図である。
【図3】往復移動体が前進途中にあるときの上記ナット供給装置の一部断面を有する概略側面図である。
【図4】図3図示のナット供給装置をその長手方向と直交する方向から見た正面図である。
【図5】往復移動体が前進位置にあるときの上記ナット供給装置の一部断面を有する概略側面図である。
【図6】図5図示のナット供給装置をその長手方向と直交する方向から見た正面図である。
【図7】可動シュートの動作説明図である。
【図8】ゲートの動作説明図で、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は正面図である。
【図9】セレクタの動作説明図である。
【図10】押出ロッドの動作説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 固定シュート
3 セレクタ
4 往復移動体
5 押出ロッド
6 可動シュート
7 ゲート
13 ナット出口(部品出口)
31 前係止片
32 後係止片
44 横回転ローラ(従動ローラ)
61 先端部
62 分割片
63 ナット受部(部品受部)
64 空間
65 作動レバー部
65c 屈曲部
71 揺動レバー
100 ナット供給装置(小物部品供給装置)
200 上部可動電極(作業装置、可動部)
201 下端部
300 ナット(小物部品)
300A 後続ナット(後続小物部品)
300B 後後続ナット(後後続小物部品)
300C 待機中のナット(待機中の小物部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小物部品を作業装置に供給する小物部品供給装置において、
前記作業装置の可動部の移動軌跡上に先端部が位置する可動シュートを備え、
前記可動シュートの先端部は一対の分割片で構成され、該一対の分割片は互いに水平方向に接近又は当接及び離隔可能に構成され、
前記先端部は、
前記一対の分割片が互いに接近又は当接した状態にあるとき、上流側から送給されてきた小物部品を受け止め前記作業装置への移し替えを可能にする部品受部を形成し、かつ、前記一対の分割片が互いに離隔した状態にあるとき、前記作業装置の可動部の移動時に該可動部と前記一対の分割片との干渉が生じない空間を形成するよう構成される
ことを特徴とする小物部品供給装置。
【請求項2】
前記可動シュートの先端部が形成した前記部品受部に小物部品を送給する固定シュートを、前記可動シュートの先端部から斜め上方へ延設したことを特徴とする請求項1に記載の小物部品供給装置。
【請求項3】
前記固定シュートの先端部にゲートを備え、
前記ゲートは、前記可動シュートの先端部が前記部品受部を形成しない間は遮断状態を維持して小物部品を前記固定シュート内に待機させ、前記可動シュートの先端部が前記部品受部を形成すると開放状態に遷移して前記待機中の小物部品の前記部品受部への移動を可能にすることを特徴とする請求項2に記載の小物部品供給装置。
【請求項4】
前記固定シュートにセレクタを設け、
前記セレクタは、前記ゲートにより小物部品が前記固定シュート内に待機しているとき該待機中の小物部品に後続する後続小物部品を待機させ、その後、前記ゲートが開放状態に移行して前記固定シュート内の小物部品が前記部品受部に移動し、さらに前記ゲートが遮断状態に移行したとき、前記後続小物部品の前記ゲートへの移動を可能にすると共に前記後続小物部品に後続する後後続小物部品を待機させることを特徴とする請求項3に記載の小物部品供給装置。
【請求項5】
前記可動シュートは、前記各々の分割片から斜め上方へ延びる、平面視「く」字状の作動レバー部を有し、各作動レバー部は、屈曲部を軸として揺動可能に構成されることを特徴とする請求項4に記載の小物部品供給装置。
【請求項6】
小物部品の移動方向に沿って往復動する往復移動体を備え、前記往復移動体の1往復動に連動して前記可動シュート、前記ゲート及び前記セレクタが作動することを特徴とする請求項5に記載の小物部品供給装置。
【請求項7】
前記往復移動体は、該往復移動体の移動方向と直交する方向に所定間隔を置いて配置された一対の従動ローラであって、前記可動シュートの前記一対の作動レバー部の各外側の側面を押圧する一対の従動ローラを備え、
前記一対の従動ローラは、前記往復移動体が往動するとき、前記可動シュートの前記一対の分割片を離隔状態から接近又は当接状態へと遷移させ、かつ、前記往復移動体が復動するとき、前記可動シュートの前記一対の分割片を接近又は当接状態から離隔状態へと遷移させることを特徴とする請求項6に記載の小物部品供給装置。
【請求項8】
前記往復移動体は、往動時に前記ゲートが開放状態に遷移することによって移動可能になった前記固定シュート内の待機中の小物部品をその後方から前記部品受部に向けて押し出す押出ロッドを備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の小物部品供給装置。
【請求項9】
前記ゲートは、前記一対の作動レバー部に連動して垂直面上を揺動動作する揺動レバーの先端部に設けられ、前記固定シュートの部品出口前方に下方から出没可能に構成されることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の小物部品供給装置。
【請求項10】
前記セレクタは、前係止片と後係止片を備え、前記前係止片は前記後続小物部品の移動を規制及び許容し、かつ、前記後係止片は前記後後続部品の移動を規制及び許容することを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の小物部品供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−308256(P2008−308256A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155699(P2007−155699)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(593038000)矢島技研株式会社 (13)
【Fターム(参考)】