説明

小角散乱測定装置、小角散乱測定方法、および試料解析方法

【課題】 複雑な空孔/粒子構造の薄膜中の空孔/粒子サイズの分布評価を高い信頼性で実現する。
【解決手段】 試料に対して所定の入射角αで照射線を入射し、前記試料からの照射線の強度を、前記試料に対して垂直な測定面から所定の角度χだけ傾けた面内で取得する。所定の角度χは、5°〜90°の範囲で設定される。角度χの範囲は、5°〜60°の第1領域と、60°〜90°の第2領域を含み、前記第1領域で、小角散乱成分を取得し、第2領域で、試料の横方向の干渉情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線、粒子線等を試料に照射して、その小角散乱を測定する技術と、小角散乱の測定データから試料中の空孔径・粒子径の分布を解析する解析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、材料中にナノ粒子やナノ空孔を持つ先端材料が開発されている。たとえば、LSIの微細化・高集積化の進展に伴い、金属配線間を埋め込む絶縁膜に低誘電率(low−k)の材料を用いて、配線層間の容量の低減を図る必要性が生じ、絶縁膜中に空孔を持つポーラスlow−k膜が開発されている。このような材料では、空孔径の分布は、low−k膜に関する各種の特性、たとえばCu配線のlow−k膜への拡散や、Cu配線のボイドの発生等と密接に関係する。
【0003】
また、磁気記録デバイスへの適用では、記録密度の増大に対応して、平均化された、より大きな磁気異方性の発現を実現する必要性に応じ、ナノメータオーダーの微細な磁性金属粒子で構成されるグラニュラ膜が開発されている。白金、白金合金などのナノメータ粒からなるグラニュラ膜では、その粒子サイズと磁気特性の間に、強い相関がある。
【0004】
このように、材料中の空孔径や粒径の分布は、最終製品の特性に大きく影響することから、その測定は、材料開発段階および製造管理段階で、非常に重要となる。
【0005】
空孔径・粒径の測定方法として、X線や粒子線が材料中の空孔や粒子で散乱(小角散乱)する効果を利用した小角散乱法が、従来から提案されている。小角散乱による測定では、ナノメータオーダーの粒子径・空孔径とその分布を非破壊で測定できるので、半導体デバイスのlow−k膜中の空孔分布測定や、磁気デバイスのグラニュラ磁性膜の粒径分布測定に、広く利用されつつある。
【0006】
図1は、従来の小角散乱測定方法を示す図である。X線、中性子線、電子線などを用いた小角散乱測定は、通常は、透過配置で行われる。透過配置では、試料100に垂直にX線を入射する。空孔101や微粒子102の存在に起因する密度差のある構造により、後方に散乱したX線の強度分布から、粒径や空孔径が評価される。散乱X線強度は、散乱体の形状、大きさ、密度差により各測定位置において変化する。
【0007】
しかし、半導体デバイスや磁性デバイスに用いられる薄膜試料などでは、X線が基板を透過しないので、透過法は使えない。そこで反射配置での測定が開発されている。
【0008】
しかし反射配置では、空孔・微粒子からの小角散乱のほかに、
(1)試料表面・界面からの強い「鏡面反射」と、
(2)表面・界面の凹凸によりX線が反射された微弱な「散漫散乱」と
が観測され、これらの成分が優勢であるため、小角散乱を測定することが難しい。
【0009】
そこで、試料をオフセット角Δθだけずらすことにより、鏡面反射を避けた角度(入射角θ+Δθ、反射角θ−Δθ)で小角散乱データを測定する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0010】
図2は、従来のオフセット反射法を説明する図である。図2(a)に示すように、試料100への入射角と反射角が同じ条件では、鏡面反射(X線反射率)が起こる。そこで、図2(b)に示すように、試料100をオフセット角Δθだけずらして、鏡面反射を避けた角度(入射角θ+Δθ、反射角θ−Δθ)に散乱されたX線の入射角依存性をθ/2θ測定することにより、小角散乱データを測定する。
【0011】
図3(a)は、図2のオフセット反射法で、オフセット角Δθを変化させたときの測定データである。この小角散乱データは、Δθを0.1°程度に設定して取得したものである。鏡面反射の両側に広がるなだらかなフリンジは、純粋な小角散乱と散漫散乱とが重なり合った強度である。フリンジの端部に生じる突出部は、全反射効果により、散漫散乱が強まった効果である。
【0012】
ここで問題となるのは、鏡面反射の近くを測定する方法では、どうしても散漫散乱を拾ってしまい、純粋な小角散乱が得られないことである。すなわち、図3(b)に示すように、オフセット角Δθだけずらしても、試料表面や基板界面の凹凸による散乱X線(散漫散乱:Diffuse
Scattering)や、強い鏡面反射のフリンジ(すそ)が、部分的に入ってきてしまう。このような寄生散乱の強度は、表面や界面の凹凸の大きさ、ポーラス膜やグラニュラ膜の膜厚、粒径などにより変化する。従来の手法では、角度Δθのオフセット条件で測定したデータでも、小角散乱データとは角度依存性が異なる散漫散乱や鏡面反射のフリンジが含まれてしまい、解析結果に十分な精度を期待できなかった。
【0013】
散漫散乱と小角散乱とを分離して、小角散乱のみを求める方法も提案されている(たとえば、特許文献2参照)。しかしこの方法は、散漫散乱振幅と小角散乱振幅の重ね合わせの絶対値である散乱強度から、各々の散乱振幅を分離する必要があり、算出アルゴリズムが複雑なうえ、鏡面散乱の重なりの影響も考慮されていないため、結果の信頼性が低い。
【特許文献1】特開2001−349849号公報
【特許文献2】特開2003−202305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来手法のさらに別の問題点として、従来の測定データの解析方法では、解析対象となる膜が複雑な空孔構造を持つ場合に、空孔サイズ分布を正確に見積もることができないという問題がある。
【0015】
従来の解析手法では、空孔径・粒子径分布を求める際に、単一の空孔分布関数を用いてフィッティングを行っている。空孔分布関数として、たとえば、Γ分布(K.Omote, Y.Ito, S.Kawamura, Appl. Phys.
Lett., 82, 544 (2003) 参照)や、Log正規分布(E.Huang et. al.,
Appl. Phys. Lett., 81, 2232 (2002) 参照)などが用いられる。しかし、最近のナノクラスタリングシリカ(NCS)などの新ポーラス膜は、複雑な空孔構造を有し、従来のモデルでは、空孔サイズ分布を正しく見積もることができなくなってきている。
【0016】
上述した特許文献1および2に開示されるいずれの方法も、単一の散乱関数を用いたフィッティングにより、粒子状物の分布状態を求めている。これらの従来方法では、通常のCVD膜などにおける粒子サイズの分布は、ある程度の精度で近似的に求めることができるが、空孔構造が複雑な新ポーラス膜では、正しい分布を導くことができない。
【0017】
そこで、本発明は、小角散乱と散漫散乱をあらかじめ分離しなくても、正確な小角散乱の分布を測定することのできる測定技術の提供を課題とする。
【0018】
また、複雑な空孔構造の試料であっても、小角散乱の測定結果から、空孔径・粒径の分布を正確に見積もることのできる解析技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第1の側面では、小角散乱測定方法を提供する。この測定方法は、
(a)試料に対して所定の入射角で照射線を入射するステップと、
(b)前記試料からの照射線の強度を、前記試料に対して垂直な測定面から所定の角度だけ傾けた面内で取得するステップと
を含み、前記所定の角度を5°〜90°の範囲で設定する。
【0020】
上述した範囲で強度測定することにより、試料からの鏡面反射や散漫散乱の影響の少ない領域で、小角散乱成分を精度よく測定することができる。
【0021】
良好な例として、前記所定の角度は、5°〜60°の第1領域と、60°〜90°の第2領域を含み、前記第1領域で、小角散乱成分を取得する。
【0022】
前記第2領域では、前記薄膜の横方向の干渉情報を取得する。
【0023】
別の良好な例として、前記所定角度の設定範囲を60°〜90°に設定して、前記試料の横方向の干渉情報を得るとともに、前記所定の角度を傾けずに、試料の水平面内方向に+0.4°〜+4°または、−0.4°〜−4°の範囲でオフセットした位置で2θ走査を行なうことにより、小角散乱成分を取得する。
【0024】
いずれの例においても、寄生散乱を回避した良好な測定データを得ることができる。
【0025】
本発明の第2の側面では、上述した小角散乱測定データから、試料内の空孔・粒子の分布、あるいは空孔・粒子のサイズ分布を求める試料解析方法を提供する。この試料解析方法は、
(a)異なる構造の空孔または粒子を含む試料から小角散乱測定データを取得するステップと、
(b)前記小角散乱測定データを、2種類以上の分布関数の和で表現されるモデルを用いて解析して、前記空孔または粒子に関する分布状態を求めるステップと
を含み、前記分布関数の少なくともひとつは、ピーク形状を有する第1の分布関数であり、他の少なくともひとつは、ピークを持たない第2の分布関数である。
【0026】
このような試料解析方法によれば、異なる構造の空孔/粒子分布を内部に有する試料についても、2以上の分布関数のリニア結合モデルを用いて、精度よく解析することが可能になる。
【0027】
本発明の第3の側面では、小角散乱測定装置を提供する。小角散乱測定装置は、
試料を保持する保持部と、
前記試料に対して照射線を照射する照射源と、
前記試料からの照射線の強度を、前記試料の表面に垂直な測定面から所定の角度だけ回転させた面内で取得する検出器と
を備え、前記所定の角度は5°〜90°の範囲で設定される。
【0028】
本発明の第4の側面では、
(a)試料からの照射線の強度を、試料に対する垂直面から5°〜90°の範囲で設定される所定の角度だけ傾けた面内で取得して小角散乱を測定する測定装置と、
(b)前記測定装置による測定結果を、2種類以上の分布関数の和で表現されるモデルを用いて解析して、前記試料中の空孔または粒子に関する分布状態を求める解析装置と
を含む解析システムを提供する。
【発明の効果】
【0029】
上記構成および方法により、複雑な空孔/粒子構造の薄膜中の空孔/粒子分布や、そのサイズ分布を、高い信頼性で見積もることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の良好な実施形態を説明する。以下の説明では、主としてX線を照射する例を用いて説明するが、中性子線、電子線などの粒子線を用いた場合にも同様の議論が当てはまる。
(第1実施形態)
図4Aおよび図4Bは、本発明の第1実施形態に係る小角散乱測定の原理を説明する図である。図4Aは、シンチレーションカウンタなどの検出器を、2θ軸(緯度方向)と、2γ軸(経度方向)に沿って走査して散乱強度を測定する配置例を示す。図4Bは、CCDカメラなどの二次元検出器による平面測定の配置例を示す。
【0031】
いずれの配置例においても、X線を、試料10に対して微小角度αで入射させる。微小入射角αは、試料10の薄膜の全反射臨界角θcの3倍以下(α≦3×θc)、好ましくは、θcの1.1〜2.0倍の角度である。
【0032】
試料10で反射されたX線の強度を、試料表面に垂直な面から角度χだけ傾けた(回転させた)面内で取得する。この場合の測定方法は、入射角を固定にし、出射側で2θスキャンする2θ測定法である。
【0033】
図4Aの例では、試料面に対して垂直な面内にある2θ軸から、2γ軸方向に向かって角度χだけ傾けた(回転させた)走査パスに沿って、検出器を走査する。あるいは、試料をχだけ傾け、検出器は垂直面内で測定しても同等な効果が得られる。図4bの例では、試料面に垂直な面内にあるKz軸から、Ky軸方向に角度χだけ傾けたk軸での測定データを利用する。
【0034】
X線入射角αを浅くすることによって、薄膜の実効厚さを大きくするとともに、基板からの散乱を低減することができる。
【0035】
また、試料表面に対する垂直面から、所定角度χだけ傾けた位置での測定データを選択的に用いることによって、共鳴ピーク(鏡面反射)と散漫散乱の双方を排除した、信頼性の高い小角散乱データを取得することができる。
【0036】
これについて、図5および図6を参照して、さらに説明する。
【0037】
図5は、図4Aの配置で、シリコン基板を試料としたときの測定データ、図6は、同じく図4Aの配置で、ナノクラスタリングシリカ(NCS)薄膜からの測定データである。いずれも、X線波長1.4Å、入射角αが0.25°(全反射臨界角θcの1.2倍)の条件で、検出器走査により散乱強度を測定したものである。
【0038】
図5のシリコン基板では、表面に密度が不均一な薄膜が形成されていないので、小角散乱を含まないが、サークルAで示すように、2γ=0°、2θ=0.5°(=2α)に鏡面反射のピークがある。また、サークルBで示すように、2γ=0°、2θ=0°〜3°付近に、表面凹凸による散漫散乱が見られる。
【0039】
一方、図6のNCS膜からの測定データでは、薄膜内部の空孔の存在により、入射X線を中心として広く円弧状に拡がる小角散乱がある。この小角散乱に、鏡面散乱(サークルA)と散漫散乱(サークルB)の強度が重なっている。さらに、点線のサークルCで示すように、2θ=0.5°、2γ=±1.5°付近に、散乱強度が強い領域がある。これは、試料内部の空孔間の横方向での干渉効果によるものである。
【0040】
そこで、小角散乱成分を分離するのではなく、散漫散乱を避けた領域での小角散乱強度を測定データとして用いる。すなわち、試料表面に垂直な面内の測定軸(2θ軸)から所定角度χだけ傾けた(回転させた)位置での測定データを取得する。角度χは、好ましくは5°〜90°である。このうち、5°〜60°の範囲は、主として、純粋な小角散乱の強度情報を得るための第1領域、60°〜90°の範囲は、試料内部の水平方向での空孔分布情報を得るための第2領域である。第1領域での角度χは、より好ましくは5°〜30°、さらに好ましくは、10°〜30°である。小角散乱以外の寄生散乱(鏡面散乱、散漫散乱)が強い領域を避けた領域での測定データを用いることによって、信頼性の高い小角散乱の強度分布を得ることができる。
【0041】
一方、χ=90°付近のデータについては、試料面内の空孔間あるいは粒子間の距離に相関がある場合に、その散乱が干渉した強度分布が測定されることになる。この強度の解析から、空孔間/粒子間の距離情報が得られる。
【0042】
なお、2θ法を採用することによって、X線の試料への入射角度を固定にして、反射側で2θ測定を独立して行うことができる。すなわち、図5および6に示す本実施形態の小角散乱測定手法を、PSPC(位置敏感型比例計数管)などの一次元検出器や、CCD、イメージングプレートなどの2次元検出器(図4b参照)を用いた高速測定へ、容易に拡張することができる。
【0043】
次に、上述した小角散乱測定を実行する測定装置について説明する。
【0044】
図7〜9は、本発明の一実施形態に係る小角散乱測定装置の構成例と、使用される検出器を示す図である。
【0045】
図7および図8は、本発明の一実施形態に係る測定装置の構成例を示す。図7の構成例1では、検出器28を2θレールに沿って移動させ、試料10を2γ方向に回転させる。図8の構成例2では、2θアームを動かすことによって、検出器28を2θ軸にそって移動させる。
【0046】
図7において、小角散乱測定装置20は、X線を照射するX線源21と、試料10を照射X線に対して全反射臨界角θcの3倍以下の微小角度αで保持するステージ(試料台)30と、試料10で反射されたX線の強度を、試料10に対する垂直面から所定の角度χだけ回転させた面内で取得する検出器28とを有する。図7では、試料台全体を入射角度αだけ傾けているが、X線源21全体を入射角度αだけ傾けてもよい。
【0047】
小角散乱測定装置20はさらに、X線源21の強度調整用のアッテネータ22と、X線通過部に配置される真空あるいはヘリウム(He)のパス23、25と、試料10への入射X線の形状を整形する4象限スリット24を有する。試料10の周囲に薄膜からなるドーム26を設けて、He雰囲気に保つことによって、空気散乱を低減する構成としてもよい。さらに試料10での反射側に、ビームストップ27と、検出器28を2θ軸に沿って案内する2θレール29を有する。ゴニオ部は、Z軸、2θ軸、2γ軸、α軸を持つ。この構成では、検出器28nの検出面は、2θ/2γスキャンにより、試料10に対する垂直面内にある2θ軸から、所定の角度χだけ傾いた面内の測定ができる。
【0048】
図8において、X線源から試料10に到るX線通過部の構成は省略するが、図7と同様である。図8の小角散乱測定装置は、χサークル32と2θアーム31を有する、ゴニオ部は、Z軸、2θ軸、2γ軸、χ軸、およびω軸を有する。この構成例2では、試料の表面が、2θ測定面から角度χだけ傾けて(回転させて)保持される。
【0049】
図9は、図7または8の小角散乱測定装置で用いられる検出器28の例を示す。図9(a)のシンチレーションカウンタ28aは一点測定のものであり、高い解像度が得られる。図9(b)のPSPC(Position Sensitive Proportional Counter)28bは、一次元の同時測定が可能である。図9(b)の例では、湾曲型PSPCであり、円弧部に沿った強度を、同時に測定できる。また、検出器28bをχD軸により動かすと、ゴニオχ軸(図8参照)の代用もできる。図9(c)のCDDカメラ28cは、二次元測定用のものである。CDDの代わりにIP(イメージングプレート)を用いてもよい。
【0050】
次に、上述した測定装置を使用し、回転角(あおり角)χを持たせた測定手法で取得した小角散乱データの空孔径・粒径分布解析手法について説明する。
【0051】
実際のlow−k試料、たとえばナノクラスタリングシリカ(NCS)では、シリカ中のマイクロポアと、シリカ粒界のメソポアという2種類の異なった分布を想定する必要がある。マイクロポアは、シリカ内部の規則性の細孔であり、空孔径は2nm以下である。メソポアは、溶媒中にシリカ原料を溶かしてスピンコートし、ベークにより溶媒を飛ばして薄膜を形成する際に生じるシリカ間の空孔(ボイド)である。メソポアの空孔径は、2〜50nmの範囲にわたる。このような2つの異なる構成の空孔分布を考慮しなければならないので、従来のように単一の散乱モデルを用いた解析方法では、正確な空孔径・粒径分布を得ることができない。
【0052】
そこで本発明の一実施形態では、一定サイズのポア(マイクロポア)を再現する「ピークを持った分布」と、多種のサイズの空孔(メソポア)を再現する「単調減少型の分布」という2種類の分布関数を用いて、実際のポア(空孔)径の分布形状を再現する。「ピークを持った分布」の例として、ガウス分布やローレンツ分布がある。「単調減少型の分布」の例として、指数型関数や多項式関数がある。
【0053】
以下で、具体的な実施例を説明する。
【0054】
X線照射源として、Cu対陰極ターゲットからのCuKα(波長1.542Å)を用いる。波長とエネルギーの換算は、λ(Å)=12.4/E(KeV)である。
【0055】
入射スリットにより、X線縦幅を0.05mmまたは0.1mm、水平幅を1mmに絞る。試料位置の調整はx、y、Rx、Ry、φ、Z駆動軸を持ったゴニオメータにより行う。
【0056】
X線の試料への入射角αを、α=1.5×θc(上述の波長ではθc=0.22°)に設定する。この配置で試料を2θ測定軸からχ=10°傾ける。あるいは逆に、検出器の検出面を試料に対する垂直面に対してχ=10°傾けてもよい。この状態で2θ測定を行う。この結果を図10および図11に示す。図10は、試料として、CVDで形成されるポーラスCoral膜を用いた測定結果、図11は、試料にナノリラスタリングシリカ(NCS)薄膜を用いた測定結果である。
【0057】
上述したように、実際のNCSは、塗布・乾燥・焼成により形成された薄膜内に、2〜4nmのナノクラスター状シリカが分散し、シリカ内部のマイクロポア(ミクロ孔)と、粒界ボイドによる種々のサイズのメソポア(メソ孔)が存在している。この構造を再現する関数として、式(1)で表わされるガウス型+指数関数型の分布関数Nを提案する。
【0058】
N(R,a0,σR0,R0,a1,R1
=(a0/√2πσR0)・exp[−(R−R0)2/2(σR0)2]
+(a1/R1)・exp(−R/R1) (1)
ここで、Rは空孔の半径、a0、a1 は係数、σR0は分布幅、R1は指数分布の傾きである。
【0059】
この分布関数では、空孔径が均一なマイクロポアは、右辺の第1項のガウス分布で再現され、空孔径が広く分布するメソポアは、右辺の第2項の指数分布で表わされる。したがって、各々の分布が独立に再現され、種々の構造に適用できると考えられる。なお、上記関数では、空孔の形状を球形と仮定した。実際の空孔形は多様であると考えられるが、その有効近似と考える。形状が明確に分かっている場合には、その形状に対する散乱振幅を用いることは言うまでもない。
【0060】
一個の球からの散乱振幅Fは、式(2)で現される。ここでRは球の半径である。
【0061】
q=4πsinθ/λ
F(q,R)=(Δρ)V・[3(sinqR−qRcosqR)/(qR)3] (2)
ここで、Δρは空孔・粒子の、周りの材料との密度差、Vは単位体積である。
【0062】
また、薄膜内の空孔間の距離に相関がある場合、横方向での干渉効果は、たとえば式(3)で表わされる。
【0063】
S(q,R,c,η)=1−3η[sin(2cRq)-(2cRq)cos(2cRq)]/(2cRq)3 (3)
ここで、cは空孔間距離の係数であり、剛体モデルでは1となる(2cR=半径の2倍)。ηは干渉する空孔の割合である。
【0064】
以上から、小角散乱強度I(q)は式(4)で表わされ、この式を数値積分する。
【0065】
I(q)=∫0-∞ N(R, a0, σR0, R0, a1, R1)・F(q,R)2・S(q,R,c,η)dR
(4)
一方、実測の散乱強度をImeas(q)とし、式(4)によるモデル計算値との残差和を計算する。
【0066】
χ2=Σi=1-n(Imeas(qi)−I(qi))2/wi (5)
ここでwiは測定点のウェイトであり、測定誤差σの二乗で定義される。この残差和を最小にすることで、評価試料のパラメータa0,σR0,R0,a1,R1,c,ηを求める。残差和を最小にする方法として、非線形最小二乗法などを用いる。
【0067】
図10の測定結果におけるポーラスCoral膜は、low−k膜の一種であり、空孔が多い条件でCVDにより作製したものである。波長1.4Åにおける測定で、X線入射角は0.25°に設定した。図10(a)は測定データとモデル計算結果を示す。モデル計算結果のうち、点線はガウス分布によるマイクロポアの分布、破線は指数分布によるメソポアの分布、実線はこれら2つのトータル分布である。測定データでは、0°付近にYoneda Wing があり、0.5°付近に鏡面反射ピーク(反射率)が見られ、小角散乱へのバックグラウンドとなっている。モデル計算では、バックグラウンドを避けるため、0.8°以上のデータを解析したが、図10(a)では0°までの小角散乱計算値を表示している。
【0068】
図10(b)は解析結果による空孔径分布である。ガウス分布の粒径ピークは1.5nmであり、指数関数的な分布も見られる。
【0069】
図11は、ナノクラスタリングシリカ(NCS)膜を、χ=10°で2θスキャンにより測定したものである。解析の結果、ガウス分布成分は少なく、指数関数型分布が主であることが分かる。また、図11(b)から、サイズの小さい空孔が多いことが分かる。
【0070】
図12は、同じくNCS膜を、回転角(あおり角)χ=90°において、2γが0〜10°の範囲で測定したものである。空孔間干渉を考慮した結果、c=1、η=0.7で測定データを再現した。
【0071】
図13は、本発明の実施形態に係る測定データ解析手法を、透過法による測定データの解析に適用したものであり、燃料電池用Ptナノ粒子の透過測定の解析結果を示す。
【0072】
上述した実施形態に係る解析方法は、基板上に形成された薄膜試料の解析だけではなく、透過法で測定されたデータの解析にも有効である。図13の例では、燃料電池用の触媒を箔状にし、中に含まれるPtナノ粒子を透過配置で測定した。この場合、反射成分がないので、散漫散乱や鏡面散乱の影響は無い。
【0073】
図13(a)は、振幅で表わされる測定データ(点)と、モデル計算結果を示す。モデル計算結果のうち、点線はガウス分布、破線は指数分布、実線はこれらのトータル分布である。モデル最適化は、入射X線の影響が無い2θ>0.3°の領域で行っているが、参考のため、0°までの分布を比較している。
【0074】
図13(b)は粒径分布を示す。トータルの分布からわかるように、得られた平均粒径は3.4nmである。燃料電池用の触媒中のPtパーティクルの場合、わずかな指数型分布もあるが、ほぼガウス型分布である。
【0075】
Pt粒子は金属結晶であるため、X線回折のピーク値からSherrerの式により、平均結晶粒径を求めることができる。PFでの測定結果から得られた平均結晶粒径は、2.9nmであった。この値は、Pt粒が単一結晶子であり、その表面が酸化しており結晶子サイズには含まれないことを考えると、両者はよく一致していると考えられる。
【0076】
上記実施形態では、ピーク形状を有するガウス分布関数と、単純減少型の指数分布関数の2種類の関数を組み合わせて解析を行ったが、2以上の分布関数を組み合わせても、信頼性高く空孔径・粒径の分布を見積れることは言うまでもない。
【0077】
このような解析手法を、図7または8に示す測定装置と組み合わせて、解析システムを構成することができる。このような解析システムの構成例を図14〜16を参照して説明する。
【0078】
図14の示では、解析システム1は、試料からの照射線の強度を、試料に対する垂直面から5°〜90°の範囲で設定される所定の角度だけ傾けた面内で取得して小角散乱を測定(S101)する測定装置20Aと、測定装置で得られた小角散乱測定データを、2種類以上の分布関数の和で表現されるモデルを用いて解析して、前記試料中の空孔または粒子の分布状態を求める解析装置40Aとで構成される。解析装置40Aは、多成分分布関数によるデータフィットを行い(S103)、モデルパラメータを抽出して空孔径・粒子径の分布を求める(S105)。
【0079】
図15の例では、解析システム2は、測定装置20Bと解析装置40Bで構成される。測定装置20Bは、試料表面に対して垂直な面から5°〜60°の第1領域で第1の小角散乱測定データを取得し(S201)、60°〜90°の第2領域で第2の小角散乱測定データを取得する(S202)。解析装置40Bは、第1の小角散乱測定データに対しては、干渉効果を含まないモデルを適用し(S203)、第2の小角散乱測定データに対しては、干渉効果を含むモデルを適用する(S204)。空孔・粒子のサイズおよびサイズ分布に関しては、共有の多成分分布関数モデルでデータを同時フィットして(S205)、モデルパラメータを抽出することによって(S206)、解析結果の信頼性をさらに向上させることができる。
【0080】
図16は、解析装置40の構成例を示すブロック図である。解析装置40は、測定装置20から小角散乱測定結果を受け取る入力部(データ入出力部)41と、上述した2以上の分布関数の和で表現されるモデルを格納する格納部(モデルパラメータ値入出力部)42と、このモデルを用いて小角散乱強度をモデル計算するモデル計算部43と、モデル計算と、実際の測定結果とをフィッティングさせて試料内の空孔/粒子分布あるいは空孔径/粒子径の分布状態を解析するフィッティング解析部44とを有する。解析装置40はさらに表示部45を有し、測定装置20から取得した測定データ、モデル計算部43の出力であるモデル計算値、フィッティング解析部44の出力である空孔・粒子サイズの分布状態などを表示する。
【0081】
小角散乱の測定結果は、データファイルとして測定装置20から直接入力されてもよいし、記憶媒体などに格納されたデータとして入力されてもよい。また、解析対象(試料)に応じて所望のモデルパラメータを入力することができる。解析結果は、出力ファイルとして出力される。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る小角散乱測定方法について説明する。
【0082】
第1実施形態では、散漫散乱を回避した領域での小角散乱強度を測定データとして用いるために、試料表面に垂直な面内の測定軸(2θ軸)から所定角度χだけ傾けた(回転させた)位置で測定データを取得した。第2実施形態では、試料のあおり角χを0°にし、試料面内での円周角2γを原点(0°)から+0.2°〜+10°、あるいは−0.2°〜−10°の範囲、より好ましくは、+0.4°〜+4°、あるいは−0.4°〜−4°の範囲に設定して、2γの位置で、2θ走査により測定する。
【0083】
図17は、2γ方向で寄生散乱を回避する小角散乱測定を説明するグラフである。原点(0°)から2γ方向に沿って、±0.4°の範囲で寄生散漫が存在し、±0.2°の範囲では、その影響が特に顕著である。第2実施形態では、原点近傍の寄生散乱を回避して、たとえば、+0.4°〜+4°の範囲で、2γ方向の測定位置を設定し、2γ定位置において、試料面と垂直方向へ2θ測定する。図17の二次元散乱分布における2θ測定ラインを、矢印で示す。この場合の散乱の実行角θ’は、2θ’=cos-1(cos2θcos2γ)で与えられる。
【0084】
図18は、2γの定義を示す図である。資料面に入射し、反射するX線の光軸を含む面を試料垂直面とする。この試料垂直面を、試料の円周に沿って水平方向に回転した角度が2γであり、2γ測定位置で試料垂直方向に沿った測定が2θ測定である。
【0085】
第2実施形態に係る小角散乱測定に基づくlow−k膜評価の具体例を述べる。照射源として、Cu対陰極ターゲットからのCuKα(波長1.542Å)を利用する。波長とエネルギーの換算は、λ(Å)=12.4/E(KeV)である。
【0086】
入射スリットにより、X線縦幅を0.05mmまたは0.1mm、水平幅を5mmにする。試料位置の調整はx、y、Rx、Ry、φ、Z駆動軸を持ったゴニオメータにより行う。
【0087】
X線の試料への入射角αを、α=1.5×θc(上述の波長ではθc=0.22°)に設定する。たとえば、図18に示すように、試料を水平に設置して、X線散乱面(試料垂直面)と直交する円周方向(水平方向)に、2γ=0.6°だけ回転する。あるいは、2γ=−0.6°でも同等である。この状態で、2θ測定を行う。
【0088】
2γのオフセットを具体的に実現する方法を図19〜図21に示す。
【0089】
図19は、試料10をステージ30上に水平設置したときの小角散乱測定装置の部分上面図である。図19の例では、2θアーム31全体を、2θ回転軸の周りに2γ(たとえば0.6°)だけ回転して検出器28の位置を、原点から水平方向に2γだけオフセットした位置へ移動させる。
【0090】
図20の構成例では、同じく試料10がステージ30上に水平設置されているが、2θアーム31は動かさずに、2θアームに固定されたリニアステージ33上で検出器28をY軸方向に駆動することによって、実効的に2γをつくる。このとき、図20(b)に示すように、検出器28をリニアステージ33上で2γ回転させることが望ましい。これによって、検出器28の検出面(入射面)をX線反射光に対して垂直にすることができる。
【0091】
図21の構成例では、2θアーム31に円弧状の2γアーム34を取り付ける。試料10はステージ30上に水平設置されている。2θアーム31を動かさずに、検出器28を2γアーム34に沿って自走させることによって2γを設定する。
【0092】
図19〜21のいずれの方法によっても2γ駆動が実現できる。検出器28の前部に、測定角度の分解能を上げるために水平、垂直方向のソーラースリットを設けてもよい。また、図19〜21の配置で、2θを固定し、2γを走査すると、水平方向の測定(図17における2γ測定矢印)も可能になる。この場合は、資料表面付近に現れる強い散乱を避けるために、2θを0.4°〜4°の範囲で設定し、2γ方向に走査すればよい。
【0093】
2γオフセット位置での2θ測定結果に基づくlow−k膜の評価結果として、図11(a)及び図11(b)に示すのと同様の結果を得ることができる。
【0094】
以上述べたように、本発明の測定方法によれば、試料表面に対する垂直面から所定角度χだけ傾けた領域で、試料からの反射X線強度を測定するので、鏡面反射や散漫散乱などの寄生散乱の影響を排除して、ターゲットである空孔あるいは粒子からの小角散乱成分を効果的に取り出すことができる。
【0095】
また、X線入射角を浅くすることによって、試料薄膜の実行厚さを大きくするとともに、基板からの散乱を低減することができる。2θ測定を採用することによって、反射側での測定を独立して行うことができ、多様な装置構成に対応できる。
【0096】
本発明の測定データ解析方法によれば、2成分以上の空孔/粒子分布関数を利用するので、複雑な空孔構成の薄膜の空孔サイズ分布も正しく見積もることが可能になる。
【0097】
また、薄膜内の横方向の干渉を解析することによって、空孔間(粒子間)距離を見積もることもできる。
【0098】
最後に、以上の説明に関して、以下の付記を開示する。
(付記1) 試料に対して所定の入射角で照射線を入射するステップと、
前記試料からの照射線の強度を、前記試料に対して垂直な測定面から所定の角度だけ傾けた面内で取得するステップと
を含み、前記所定の角度を5°〜90°の範囲で設定することを特徴とする小角散乱測定方法。
(付記2) 前記入射角を、前記試料の全反射臨界角の3倍以下に設定するステップをさらに含むことを特徴とする付記1に記載の小角散乱測定方法。
(付記3) 前記所定の角度の設定範囲は、5°〜60°の第1領域と、60°〜90°の第2領域を含み、前記第1領域で、小角散乱成分を取得することを特徴とする付記1に記載の小角散乱測定方法。
(付記4) 前記第2領域で、前記薄膜の横方向の干渉情報を取得することを特徴とする付記3に記載の小角散乱測定方法。
(付記5) 前記所定角度の設定範囲を60°〜90°に設定して、前記試料の空孔間または粒子間の距離情報を得るとともに、前記所定の角度を傾けずに、試料の水平面内方向に+0.4°〜+4°または、−0.4°〜−4°の範囲でオフセットした位置で2θ走査を行なうことにより、小角散乱成分を取得することを特徴とする付記1に記載の小角散乱測定方法。
(付記6) 前記所定角度の設定範囲を60°〜90°に設定して、前記試料の空孔間または粒子間の距離情報を得るとともに、前記所定の角度を傾けずに、資料の垂直方向(2θ方向)に0.4°〜4°の範囲でオフセットした位置で2γ走査を行なうことにより、小角散乱成分を取得することを特徴とする付記1または5に記載の小角散乱測定方法。
(付記7) 試料を保持する保持部と、
前記試料に対して照射線を照射する照射源と、
前記試料からの照射線の強度を、前記試料の表面に垂直な測定面から所定の角度だけ回転させた面内で取得する検出器と
を備え、前記所定の角度は5°〜90°の範囲で設定されることを特徴とする小角散乱測定装置。
(付記8) 異なる構造の空孔または粒子を含む試料から小角散乱測定データを取得するステップと、
前記小角散乱測定データを、2種類以上の分布関数の和で表現されるモデルを用いて解析して、前記空孔または粒子に関する分布状態を求めるステップと
を含み、前記分布関数の少なくともひとつは、ピーク形状を有する第1の分布関数であり、他の少なくともひとつは、ピークを持たない第2の分布関数であることを特徴とする試料解析方法。
(付記9) 前記小角散乱測定データ取得ステップは、前記試料に対する垂直面から5°〜60°の第1領域で第1測定データを取得するステップと、前記垂直面から60°〜90°の第2領域で第2測定データを取得するステップをさらに含み、
前記第1測定データについて、干渉効果を含まないモデルを用い、第2測定データについて、干渉効果を有するモデルを用いて、同時に解析することを特徴とする付記8に記載の試料解析方法。
(付記10) 前記第1測定データと、第2測定データについて、前記空孔または粒子のサイズと分布に関しては同じモデルパラメータを用いることを特徴とする付記9に記載の試料解析方法。
(付記11) 前記モデルを用いて小角散乱強度をシミュレーションするステップをさらに含み、前記シミュレーション結果と、前記測定データとをフィッティングさせることによって、前記空孔または粒子に関する分布状態を求めることを特徴とする付記8に記載の解析方法。
(付記12) 前記第1の分布関数はガウス分布関数であり、前記第2の分布関数は指数分布関数であることを特徴とする付記8に記載の解析方法。
(付記13) 試料からの照射線の強度を、試料に対する垂直面から5°〜90°の範囲で設定される所定の角度だけ傾けた面内で取得して小角散乱を測定する測定装置と、
前記測定装置による測定結果を、2種類以上の分布関数の和で表現されるモデルを用いて解析して、前記試料中の空孔または粒子に関する分布状態を求める解析装置と
を含む解析システム。
(付記14) 前記解析装置は、前記測定装置から小角散乱の測定結果を受け取る入力部と、
前記モデルを格納する格納部と、
前記モデルを用いて小角散乱強度をモデル計算する計算部と、
前記モデル計算と、前記測定結果とをフィッティングさせて前記分布状態を見積もる解析部と
を有することを特徴とする付記13に記載の解析システム。
(付記15) 前記2種類以上の分布関数の少なくともひとつは、ピーク形状を有する第1の分布関数であり、他の少なくともひとつは、ピークを持たない第2の分布関数であることを特徴とする付記13に記載の解析システム。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】従来の透過配置での小角散乱の測定を説明するための図である。
【図2】従来のオフセット反射法による測定を説明するための図である。
【図3】従来のオフセット反射法による問題点を説明するための図であり、図3(a)は散乱強度のオフセット角(Δθ)依存性を、図3(b)は表面/界面の凹凸に起因する散漫散乱を示す図である。
【図4A】本発明の第1実施形態に係る小角散乱測定の原理を説明するための図であり、一点測定型の検出器を走査する測定配置例である。
【図4B】本発明の第1実施形態に係る小角散乱測定の原理を説明するための図であり、2次元検出器による測定配置例である。
【図5】図4aの測定配置で、シリコン基板を試料としたときの測定結果を示す図である。
【図6】図4aの測定配置で、ナノクラスタリングシリコン(NCS)膜を試料としたときの測定結果であり、回転(あおり)角度χでの小角散乱測定を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る小角散乱測定装置の構成例1である。
【図8】本発明の一実施形態に係る小角散乱測定装置の構成例2である。
【図9】小角散乱測定装置で用いる検出器の例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る測定データの解析方法を説明するための図であり、図10(a)は、CVD形成されたポーラスCoral膜の実測データとモデル計算結果、図10(b)は、空孔分布を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る測定データの解析方法を説明するための図であり、図11(a)は、NCS膜の実測データとモデル計算結果、図11(b)は、空孔分布を示す図である。
【図12】NCS膜内の水平方向での空孔間干渉を示す測定例である。
【図13】本発明の測定方法および測定データ解析方法を透過配置に適用したときの測定および解析結果を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る解析システム1の構成例を示す図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る解析システム2の構成例を示す図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る解析装置の概略ブロック図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係る2γオフセット位置での2θ測定を説明するための図である。
【図18】第2実施形態での2γの定義を説明するための図である。
【図19】2γオフセットを実現するための構成例1である。
【図20】2γオフセットを実現するための構成例2である。
【図21】2γオフセットを実現するための構成例3である。
【符号の説明】
【0100】
10 試料
20、20A、20B 小角散乱測定装置
21 X線源(照射源)
22 アッテネータ
23,25 真空/Heパス
24 4象限スリット
26 Heドーム
27 ビームストップ
28 検出器
29 2θレール
30 ステージ
31 2θアーム
32 χサークル
34 2γアーム
40、40A、40B 解析装置
41 データ入出力部(入力部)
42 モデルパラメータ値入出力部(格納部)
43 モデル計算部(計算部)
44 フィッティング解析部(解析部)
45 表示部
α 入射角
χ 回転角(あおり角)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して所定の入射角で照射線を入射するステップと、
前記試料からの照射線の強度を、前記試料に対して垂直な測定面から所定の角度だけ傾けた面内で取得するステップと
を含み、前記所定の角度を5°〜90°の範囲で設定することを特徴とする小角散乱測定方法。
【請求項2】
前記所定角度の設定範囲を60°〜90°に設定して、前記試料の横方向の干渉情報を得るとともに、前記所定の角度を傾けずに、試料の水平面内方向に+0.4°〜+4°または、−0.4°〜−4°の範囲でオフセットした位置で2θ走査を行なうことにより、小角散乱成分を取得することを特徴とする請求項1に記載の小角散乱測定方法。
【請求項3】
異なる構造の空孔または粒子を含む試料から、小角散乱測定データを取得するステップと、
前記小角散乱測定データを、2種類以上の分布関数の和で表現されるモデルを用いて解析して、前記空孔または粒子に関する分布状態を求めるステップと
を含み、前記分布関数の少なくともひとつは、ピーク形状を有する第1の分布関数であり、他の少なくともひとつは、ピークを持たない第2の分布関数であることを特徴とする試料解析方法。
【請求項4】
試料を保持する保持部と、
前記試料に対して照射線を照射する照射源と、
前記試料からの照射線の強度を、前記試料の表面に垂直な測定面から所定の角度だけ回転させた面内で取得する検出器と
を備え、前記所定の角度は5°〜90°の範囲で設定されることを特徴とする小角散乱測定装置。
【請求項5】
試料からの照射線の強度を、試料に対する垂直面から5°〜90°の範囲で設定される所定の角度だけ傾けた面内で取得して小角散乱を測定する測定装置と、
前記測定装置による測定結果を、2種類以上の分布関数の和で表現されるモデルを用いて解析して、前記試料中の空孔または粒子に関する分布状態を求める解析装置と
を含む解析システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−78464(P2006−78464A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80661(P2005−80661)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】