説明

少なくとも1種のアウロンを適用することによる美容的脱色素沈着ケア方法

【課題】 脱色作用及び/又はメラニン生成抑制作用を持つ調製物の提供
【解決手段】 少なくとも1種のアウロンあるいは、独立したフェニル環がピロール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、フラン又はチオフェンタイプの複素環により置換されていてもよいアウロンの天然又は合成の誘導体又はアウロンの類似体が、メラニン生成抑制作用又は脱色素沈着作用又は抗チロシナーゼ活性をもつ化粧品組成物又は製薬学的組成物、特に皮膚科学的組成物のいずれかの製造のための美容的物質として又は有効物質として開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は本質的に、脱色素沈着作用をもつ又はメラニン生成抑制効果をもつ化粧品中への又は製薬学的組成物、特に皮膚科学的組成物の製造のための少なくとも1種のアウロンの使用に関する。
【0002】
本発明はまた、脱色素沈着作用又はメラニン生成抑制効果をもち、そしてそのために得られる化粧品組成物又は製薬学的組成物、特に皮膚科学的組成物を包含する。
【0003】
本発明はまた、脱色素沈着に関して活性な物質としてアウロンを使用する脱色素沈着の美容的ケア方法又は治療的処置法を包含する。
【0004】
太陽光線に対抗するために、皮膚はこの機能に特に適合された異なる細胞:メラノサイトを有する。複雑な過程のメラニン形成期間中に、これらの細胞はその効果が皮膚構造物を保護し、日焼けを被るのに要する時間を延長することである暗色の色素、メラニンを形成する。しかしすべてのメラニンが防御的ではなく、とりわけ極めて光毒性のフェオメラニンと呼ばれるメラニンの1形態が存在する。すべてのメラニンのように特定の形態のフリーラジカルと反応することができるこの分子は更に毒性ですらあり、そしてケラチン形成細胞の遺伝物質に不可逆的損傷を誘発することができるフリーラジカルの形成を誘発する。更に、メラニン形成単位の機能損傷に関連する特定の障害が時々特に見苦しい色素沈着亢進を誘発することができる。従って、メラニンの合成阻害剤の使用は強度に色素沈着した皮膚の淡色化又は例えば特定の見苦しい外見における色素沈着亢進の抑制の症例におけるような真の脱色素沈着が追求される場合の適用のためのみならずまた、皮膚に明色を、表面組織に光沢を与えために色彩を明るくすることを追求する場合の適用のための化粧品において特に興味深い。メラニン合成のこの抑制はまた、真の病理を処置するための治療的処置の範疇内においても特に興味深い可能性がある。
【背景技術】
【0005】
アウロンはフラボノイド族に属し、そしてフラボンの構造異性体である天然の分子である(非特許文献1参照)。
【0006】
アウロンは植物界、特にそれらが色合いに寄与する果実及び花中に広範に分布されている。以下の表は植物中に認められる天然アウロンの完全ではないリストを含む:
【0007】
【表1】

【0008】
フラボン、カルコン、フラボノール及びイソフラボンはそれらの治療的機能につき広範に研究されているが、アウロンの生物学的活性は研究を開始されたばかりである。アウロンは事実フラボンより自然界に少ないために、これらの天然の分子はこれまで余り興味を
もたれなかった。更に、植物の色素沈着のそれらの役割のために、アウロンは種々の感染症に対する防御剤としての植物により使用されるフィトアレキシンと説明されてきた。生物学的作用に関してはアウロンはそれらの種々の作用形態:
・アウロンは抗ガン剤の仲介を可能にする膜透過運搬体である糖タンパク質−Pに結合する能力をもち、
・アウロンはサイクリンキナーゼを阻害し、
・アウロンはアデノシン受容体と相互に作用し、そして
・アウロンはテロメラーゼを阻害する、
ために癌の分野に記載されている。
【0009】
最後にアウロンはDNAに関係するラジカルの損傷を最小にすることによりそれらの抗酸化特性(特にグリコシル化アウロン)のために使用される。
【0010】
アウロンはまた、寄生虫及び微生物感染症を処置するために知られている。それらは抗ホルモン作用を有し、メイラード反応を阻害する能力のために糖尿病を罹患している特定の患者において使用されてきた。
【0011】
アウロンは他のフラボノイドのように、カルコンであるピボット前駆体に起源をもつ。この場合、カルコンからのアウロンの生産は、これらのカルコン分子が2’位にヒドロキシルをもつことを条件にした酸化による環化を伴う(非特許文献2参照)。
【非特許文献1】Boumendjel A.,Currrent Medicinal Chemistry,2003,10,2621−2630
【非特許文献2】Nakamura,J.of Bioscience and Bioengineering,2002,94(6),487−491
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主要な目的は良好な脱色素沈着作用及び/又は良好なメラニン生成抑制作用をもつ化粧品組成物及び/又は製薬学的組成物、特に皮膚科学的組成物の新規の調製物を提供することである。
【0013】
本発明のもう1つの主要な目的は良好な抗チロシナーゼ活性をもつ化粧品組成物及び/又は製薬学的組成物、特に皮膚科学的組成物の新規の調製物を提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの主要な目的は美容的脱色素沈着手入れの方法又は脱色素沈着の治療的処置法を提供することである。
【0015】
最後に本発明の主要な目的は工業的及び美容的、製薬学的、特に皮膚科学的規模において使用することができる簡単な、安全なそして信頼性のある方法でこれらの目的を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
アウロンは良好な脱色素沈着作用及び/又は良好なメラニン生成抑制活性をもち、特にそれらが、メラニンの合成に関与する酵素であるヒトのチロシナーゼの強力な阻害剤であることが本発明により示されるので、本発明はアウロン及び誘導体の新規の生物学的活性の開示により以上に示された目的達成を可能にさせる。
【0017】
特に予期されないこの活性はアウロンの使用に関連した文献及び特許には記載されていない。
【0018】
第1のアスペクトに従うと、本発明はメラニン生成抑制作用又は脱色素沈着作用、あるいは抗チロシナーゼ活性をもつ、化粧品組成物又は製薬学的組成物、特には皮膚科学的組成物のいずれかの製造のための美容的物質又は有効物質としての、独立したフェニル環であってピロール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、フラン又はチオフェンタイプの複素環により置換されてもよい独立したフェニル環を含んでなる少なくとも1種のアウロン、アウロン誘導体又はアウロン類似体の使用に関する。
【0019】
本発明の特別の態様に従うと、この使用はアウロンが以下に記載された一般化学式:
【0020】
【化1】

【0021】
[式中、
Xは酸素原子(O)、窒素原子(N)又は硫黄原子(S)を表わすことができ、
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9は相互に独立にH、ハロゲン、ヒドロキシル(OH)、エステル、塩形成型又は非塩形成型C1〜12酸、アミド、スルホンアミド、ニトロ、塩基性又は塩形成型I、II又はIIIアミン、シアノ、チオール、糖(O−ヘテロシド又はC−ヘテロシド)、線状又は分枝C1〜12アルキル鎖、線状又は分枝C1〜12アルコキシ鎖、線状又は分枝C1〜12アルケニル鎖(例えばプレニル)、C1〜12アルケニルオキシ、チオアルキル鎖、アルキル又は芳香族タイプの環又は複素環、塩形成型又は非塩形成型スルフェート、塩形成型又は非塩形成型スルホネート、塩形成型又は非塩形成型ホスフェート、エステル化又は非エステル化ホスフェート、エステル化又は非エステル化ホスホネート、塩形成型又は非塩形成型ホスホネート、式:
【0022】
【化2】

【0023】
(ここでR1及びR2は相互に独立にヒドロキシル、メチル、エチル、フェニル、p−メチルフェニル、p−メトキシフェニル又はtert−ブチルを表わす)
のシラノール基を表わすことができる]
を有することを特徴とする。
【0024】
もう1つの態様に従うと、本発明はまた、一般式:
【0025】
【化3】

【0026】
[式中、R1〜R9は相互に独立に、前記に引用された基を表わすことができる。R10は1〜12個の炭素原子を有する線状又は分枝アルキル鎖又はアシル基であることができる]
のアウロノール、アザアウロン又はチオアウロンタイプのアウロンの誘導体の使用に関する。
【0027】
もう1つの態様に従うと、本発明はまた、アウロンの二量体の使用に関する。例えば:ジスルフレチン、ビアウレウシジンで、それらの一般式は以下に示される。
【0028】
【化4】

【0029】
更にもう1つの態様に従うと、本発明はまた、フェニル環Bをピロール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、フラン又はチオフェンタイプの複素環により置換することができるアウロンの類似体の使用に関する。
【0030】
【化5】

【0031】
態様の種々の例に従うと、本発明はまた、2’,4’,6’−トリヒドロキシ−2−クロロアセトフェノン(R1=OH)、2’,4’−ジヒドロキシ−2−クロロアセトフェノン(R1=H)、4,6−ジヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン(R1=OH)、6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン(R1=H)、(Z)−2−ベンジリデン−6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(4’−エチル)ベンジリデン−6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(2’−エチル)ベンジリデン−6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(4’−ヒドロキシ)ベンジリデン−6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン、4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−ベンジリデン−4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−ヒドロキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−エチルベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−メチルチオベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(4’−シアノベンジリデン)−4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−スルホネートベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(2’,4’−ジスルホネートベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−メチルベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−プロピルベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−イソプロピルベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(4’−ブチルベンジリデン)−4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−ベンジリデン−(4,6−ジヒドロキシ)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4’−エトキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4’−ヒドロキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、4,6−ジ−−MEMベンゾフラン−3(2H)−オン、2,6−ジアセトキシ−α−ブロモアセトフェノン、4−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン又は(Z)−2−(4’−ヒドロキシベンジリデン)−4−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オンから選択されるアウロン、その誘導体又はその類似体の使用に関する。
【0032】
本発明の態様の更に他の有利な例に従うと、アウロン、その誘導体又はその類似体は(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4−メトキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4’−エトキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4’−ヒドロキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン及び(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシ)ベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オンから選択される。
【0033】
本発明の更にもう1つの特別の態様に従うと、本発明に従うアウロン、それらの誘導体及び類似体を特にヒトのチロシナーゼを阻害する作用のために皮膚、毛髪又は外皮上に局所的に使用される。
【0034】
本発明の更にもう1つの特別の態様に従うと、淡色、褐色及び暗色のフォトタイプ(phototype)の供与者からの正常なヒトのメラニン細胞から起因するヒトのチロシナーゼを阻害する作用が本発明に従うアウロン、それらの誘導体及び類似体により実現される。
【0035】
有利な態様の変法に従うと、アウロン、その誘導体又はその類似体は天然源ものであるか又は化学合成により得られるか又はこのアウロン、その誘導体又は類似体を天然に含有する植物抽出物中に存在する。
【0036】
第2のアスペクトに従うと、本発明はまた、脱色素沈着作用又はメラニン生成抑制作用を有するこれらの物質の1つとして、それらが場合により美容的に、製薬学的に許容できる、特に皮膚科学的に許容できる賦形剤、ビヒクル又は支持体と混合されてもよい少なくとも1種のアウロン又は1種のその誘導体又は前記に定義のとおりの類似体を含んでなることを特徴とする脱色素沈着作用をもつ又はメラニン生成抑制効果をもつ化粧品組成物又は製薬学的組成物、特には皮膚科学的組成物を対象とする。
【0037】
第3のアスペクトに従うと、本発明はまた、新規の生成物として以下の化学式:
【0038】
【化6】

【0039】
[式中R1〜R9基は前記に定義されたとおりであり、ただし、R5〜R9のうちの少なくとも1個の基は線状又は分枝C1〜12アルキル鎖、線状又は分枝C1〜12アルコキシ鎖、C1〜12チオアルキル基、スルホニル基及びシアノ基から選択される]
のアウロン又はアウロンの誘導体あるいは以下の化学式:
【0040】
【化7】

【0041】
[式中、R1、R2、R3、R4基は前記に定義のとおりであり、そしてZは未置換の又は前記に定義されたとおりのR5、R6、R7基及び場合によりR8基で置換されたピロール、ピリジン、フラン及びチオフェンタイプの複素環を含んでなる基を表わし、好ましくはR5〜R8の少なくとも1個の基は線状又は分枝C1〜12アルキル鎖、線状又は分枝C1〜12アルコキシ鎖、C1〜12チオアルキル基、スルホニル基及びシアノ基から選択される]のアウロンの類似体を対象とする。
【0042】
第4のアスペクトに従うと、本発明は更に、場合により美容的に許容できる賦形剤、ビヒクル又は支持体と混合されてもよい、少なくとも1種のアウロン又は1種のその誘導体又は前記に定義のとおりの類似体の前記の脱色素沈着を実施するために有効な量を脱色素沈着に関与する皮膚、毛髪又は外皮の少なくとも1領域上に局所適用することを含んでなることを特徴とする美容的脱色素沈着の手入れ法を対象とする。
【0043】
第5のアスペクトに従うと、本発明は更に、場合により、製薬学的に、特に皮膚科学的に許容できる賦形剤、ビヒクル又は支持体と混合されてもよい少なくとも1種のアウロン又は1種のその誘導体又は前記に定義のとおりの類似体の前記の領域の脱色素沈着を実施するために有効な量を色素沈着の病理が関与される皮膚、毛髪又は外皮の少なくとも1領域上に局所的に適用することを含んでなることを特徴とする脱色素沈着の治療的処置法を対象とする。
【0044】
「色素沈着の病理」の用語は皮膚、毛髪又は外皮の前記領域の色素沈着が医学的に処置されるべき病理を構成するようなものであることを意味すると理解される。それは当業者に周知のような色素沈着亢進、角化症、等であることができる。
【0045】
本発明の範疇内で、これらのアウロン、それらの誘導体及び類似体はマッシュルームからのチロシナーゼ及びヒトのメラニン細胞からのチロシナーゼを阻害しそして従って良好な脱色素沈着作用及び/又は良好なメラニン生成抑制作用及び/又は良好な抗チロシナーゼ活性を実施するための貴重な化粧品又は製薬学的物質、特に貴重な皮膚科学的物質を構成することができたことが全く予期されなかった方法で示された。
【0046】
本発明のその他の目的、特徴物及び利点はアウロン、それらの誘導体及びそれらの類似体の合成の幾つかの実施例、並びにそれらの生物学的評価を参照し、並びに棒グラフの形態で結果を表わす付記の図面を参照された以下の説明に照らして明白になるであろう。
[実施例]
【0047】
以下の合成の実施例において、別記されない限りすべての百分率は重量により与えられ、圧力は大気圧であり、温度は摂氏における。
【0048】
アウロンの合成及び生物学的評価
【実施例1】
【0049】
2’,4’,6’−トリヒドロキシ−2−クロロアセトフェノン(R1=OH)及び2’,4’−ジヒドロキシ−2−クロロアセトフェノン(R1=H)の合成:
【0050】
【化8】

【0051】
フロログルシノール(5g、すなわち39.6ミリモル)又はレゾルシノール(5g、すなわち45.4ミリモル)の溶液(150mLのエーテル中)にクロロアセトニトリル(1当量)及び塩形成型亜鉛(0.1当量)を連続して添加する。全体を0℃に冷却し、気体の塩酸と1時間反応させる。形成される沈殿物を濾取し、エーテルで洗浄する。
【0052】
沈殿物を1Nの塩酸に溶解し、得られる溶液を還流下で1時間維持する。溶媒を外気温にもたらし、形成される橙色の沈殿物を回収し、水で洗浄する。
【実施例2】
【0053】
4,6−ジヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン(R1=OH)及び6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン(R1=H)の合成:
【0054】
【化9】

【0055】
実施例1で得られた化合物(R1=OH又はH)をメタノール(100mL)中に懸濁させる。次にナトリウムメトキシド(2.5当量)を添加する。得られる溶液を冷所で約10分間撹拌し、次に還流下で1時間半維持する。外気温に復帰後、溶媒をHCl溶液で酸性化し、蒸発させる。得られる残渣を酢酸エチル中に取り込む。有機相を水、飽和塩形成型ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾燥すると、橙色の粉末として期待生成物を与える。
【実施例3】
【0056】
(Z)−2−ベンジリデン−6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オンの合成:
【0057】
【化10】

【0058】
実施例2において得られそしてR1=Hである化合物(1.0ミリモル)(メタノール中)に水酸化カリウム50%溶液(1.5mL)及びベンズアルデヒド(1.5当量)を継続して添加する。得られる溶液を還流下で1時間維持する。外気温に復帰後、メタノールを蒸発除去し、得られる残渣を水中に取り込む。得られる溶液を酸性化する。沈殿物が現れ、それを濾取し、水で洗浄する。シリカゲルカラムクロマトグラフィー後、生成物を非晶質粉末として得る。
【0059】
前記の方法をベンズアルデヒドを以下で置き換えることにより適用することができ:
p−エチルベンズアルデヒドにより、この場合は、4’にエチル基をもつ実施例3の分子が得られ、そして実施例3aになり、
2−エチルベンズアルデヒドにより、この場合は、2’にエチル基をもつ実施例3の分子が得られ、そして実施例3bになり、
4−ヒドロキシベンズアルデヒドにより、この場合は、4’にヒドロキシル基をもつ実施例3の分子が得られ、そして実施例3cになる。
【実施例4】
【0060】
4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オンの合成:
【0061】
【化11】

【0062】
DMF中に溶解された実施例2で得られ、R1=OHの化合物に炭酸カリウム(3当量)及びヨウ化メチル(3当量)を添加する。得られる混合物を1時間加熱(150℃)する。外気温に復帰後、溶媒を水と混合し、酢酸エチルで抽出する。有機相を乾燥し、蒸発乾燥させる。シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる精製後、生成物を黄色の粉末として単離する。
【実施例5】
【0063】
(Z)−2−ベンジリデン−4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オンの合成:
【0064】
【化12】

【0065】
メタノール中に溶解された本発明の実施例4で得られた化合物の溶液(0.77ミリモル)に、水酸化カリウムの50%溶液(1.5mL)及びベンズアルデヒド(1.5当量)を継続して添加する。得られる溶液を還流下で1時間維持する。外気温に復帰後、メタノールを蒸発除去し、得られる残渣を水で取り込む。得られる溶液を酸性化し、次に酢酸エチルで3回抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下蒸発させる。
【0066】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー後淡黄色の粉末として生成物を得る。
【0067】
前記の方法をベンズアルデヒドを以下の物質と置き換えることにより適用することができる:
p−ヒドロキシベンズアルデヒドにより、この場合は4’にヒドロキシル基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5a)、
p−エチルベンズアルデヒドにより、この場合は4’にエチル基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5b)、
p−メチルチオベンズアルデヒドにより、この場合は4’にチオメチル基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5c)、
p−シアノベンズアルデヒドにより、この場合は4’にシアノ基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5d)、
p−スルホネートベンズアルデヒドにより、この場合は4’にスルホネート基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5e)、
2,4−ジスルホネートベンズアルデヒドにより、この場合は2’及び4’に2個のスルホネート基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5f)、
p−トルアルデヒドにより、この場合は4’にメチル基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5g)、
p−プロピルベンズアルデヒドにより、この場合は4’にプロピル基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5h)、
p−イソプロピルベンズアルデヒドにより、この場合は4’にイソプロピル基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5i)、
p−ブチルベンズアルデヒドにより、この場合は4’にブチル基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5j)、
p−tert−ブチルベンズアルデヒドにより、この場合は4’にtert−ブチル基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5k)、
2’−エチルベンズアルデヒドにより、この場合は2’にエチル基をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5l)、
2−フルアルデヒドにより、この場合は環Bを置き換えるフラン環をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5m)、
5−エチル−2−フルアルデヒドにより、この場合は環Bを置き換える5−エチルフラン環をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5n)、
4,5−ジメチル−2−フルアルデヒドにより、この場合は環Bを置き換える4,5−ジメチルフラン環をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5o)、
2−チオフェンカルボキシアルデヒドにより、この場合は環Bを置き換えるチオフェン環をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5p)、
5−メチル−2−チオフェンカルボキシアルデヒドにより、この場合は環Bを置き換える5−メチルチオフェン環をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5q)、
5−エチル−2−チオフェンカルボキシアルデヒドにより、この場合は環Bを置き換える5−エチルチオフェン環をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5r)、
ピロール−2−カルボキシアルデヒドにより、この場合は環Bを置き換えるピロール環をもつ実施例5の分子が得られ(実施例5s)、
3,5−ジメチルピロール−2−カルボキシアルデヒドにより、この場合は環Bを置き換える3,5−ジメチルピロール環をもつ実施例5の分子が得られる(実施例5t)。
【実施例6】
【0068】
(Z)−2−ベンジリデン−4−ヒドロキシ−6−メトキシベンゾフラン−3(2H)−オンの合成:
【0069】
【化13】

【0070】
実施例5において得られた化合物(ジクロロメタン中)に三臭化ホウ素の1モル溶液(4当量)(ジクロロメタン中)を添加する。得られた混合物を外気温で20時間撹拌する。次に混合物を氷水中に注入し、全体を酢酸エチルで抽出する。有機相を乾燥し、蒸発乾燥させる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後黄色の粉末として生成物を得る。
【0071】
前記の方法を実施例5c(6cになる)及び5d(6dになる)で得られた分子に適用することができる。
【実施例7】
【0072】
(Z)−2−ベンジリデン−(4,6−ジヒドロキシ)ベンゾフラン−3(2H)−オンの合成:
【0073】
【化14】

【0074】
本発明の実施例5で得られた化合物(ジクロロメタン中に溶解)に三臭化ホウ素(BBr、過剰)を添加し、次に混合物を外気温で20時間撹拌する。次に氷水を溶媒中に滴下し、このように形成される懸濁液を酢酸エチルで抽出する。有機相を乾燥し、蒸発乾燥させると非晶質沈殿物として期待生成物を与える。
【0075】
前記の方法はそれぞれ実施例7b、7e、7g、7h、7i、7j、7k、7l、7m、7n、7o、7p、7q、7r、7s及び7tになる実施例5b、5e、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5n、5o、5p、5q、5r、5s及び5tで得られた分子に適用することができる。
【実施例8】
【0076】
4,6−ジ−−MEMベンゾフラン−3(2H)−オンの合成:
【0077】
【化15】

【0078】
N,N−ジイソプロピルチルアミン(2当量)(無水DMF中)を添加されたR1=OHの実施例2の化合物(36ミリモル)を氷浴により冷却する。2−メトキシエトキシメチルクロリド(2当量)を滴下し、得られる溶液を外気温で30分間撹拌する。次に溶媒を水100mL中に注入し、酢酸エチルで抽出する。有機相を乾燥し、蒸発乾燥させる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後、白色の油として生成物を得る。
【実施例9】
【0079】
(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4−メトキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オンの合成:
【0080】
【化16】

【0081】
実施例8で得られた化合物の溶液(1.02ミリモル)(メタノール中)に水酸化カリウムの50%溶液(3.5mL)及び−アニスアルデヒド(1.5当量)を連続して添加する。得られた溶液を還流下に1時間維持する。外気温に復帰後、メタノールを蒸発除去し、得られた残渣を水中に取る。得られた溶液を酢酸エチルで抽出する。有機相を乾燥し、蒸発乾燥させる。得られた生成物をメタノール中に取る。得られた溶液に1Mの塩酸溶液(エーテル中)を添加する。混合物を約60℃で2時間撹拌する。外気温に復帰後、溶媒を水と混合し、ジクロロメタンで抽出する。有機相を水、飽和塩形成型ナトリウム溶液で連続して洗浄し、乾燥し、そして蒸発乾燥させる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後黄色の粉末として生成物を得る。
【0082】
前記の方法をp−アニスアルデヒドを以下で置き換えることにより適用することができる:
p−エトキシベンズアルデヒド、この場合4’にエトキシ基が得られ(実施例9a)、
p−ヒドロキシベンズアルデヒド、この場合、4’(9b)又は2’(9c)にヒドロキシル基が得られ、
ヴァニリン、この場合3’にメトキシ基及び4’にヒドロキシル基が得られる(9d)。
【実施例10】
【0083】
2,6−ジアセトキシ−α−ブロモアセトフェノンの合成:
【0084】
【化17】

【0085】
2,6−ジヒドロキシアセトフェノン(3.08ミリモル)を無水酢酸中に分散し、全体を還流下に4時間維持する。溶媒を氷水中に注入し、酢酸エチルで抽出する。有機相を乾燥し、蒸発乾燥させると油を与え、それを無水THF中に取る。得られた溶液にトリメチルフェニルアンモニウムブロミド(1.2当量)を緩徐に添加し、得られた混合物を外気温で6時間撹拌する。次に溶媒に水を添加し、得られた溶液を外気温で数分間撹拌し、次に酢酸エチルで抽出する。有機相を乾燥し、蒸発乾燥させる。粗生成物を橙色の油として得て、精製せずに次の段階に使用する。
【実施例11】
【0086】
4−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オンの合成:
【0087】
【化18】

【0088】
実施例10の化合物(380mg)(メタノール中)に水酸化カリウム50%水溶液(0.5mL)を添加する。全体を還流下で約3時間維持する。外気温に復帰後、メタノールを真空下蒸発除去し、得られた残渣を水中に取り、HCl溶液の助けにより酸性化する。次に得られた懸濁液をジクロロメタンで抽出する。次に有機相を乾燥し、蒸発乾燥させる。
【0089】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後オフホワイトの沈殿物として生成物を得る。
【実施例12】
【0090】
(Z)−2−(4’−ヒドロキシベンジリデン)−4−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オンの合成:
【0091】
【化19】

【0092】
実施例11で得られた化合物(0,66ミリモル)(メタノール中)に水酸化カリウム50%溶液及び4−ヒドロキシベンズアルデヒド(1.5当量)を連続して添加する。得られた溶液を還流下に3時間維持する。外気温に復帰後、メタノールを蒸発除去し、得られた残渣を水中に取る。得られた溶液を酸性化し、黄色の沈殿物が現れ、それを濾取し、最少の水で洗浄し、真空乾燥する。分取クロマトグラフィーにより精製後橙色の沈殿物として生成物を得る。
【0093】
アウロンの生物学的評価
【実施例13】
【0094】
アウロンによる単離チロシナーゼの阻害のインビトロ試験:
チロシナーゼはL−DopaからのL−ドパキノン、そして次にドパクロムの形成を触媒する。ドパクロムは490nmにおける可視的分光測定法により定量可能な着色化合物である。酵素活性を修飾することができる活性物質の使用は490nmにおける光学濃度の変化により明らかになる。
【0095】
ドパクロムの形成速度の率は、試験される種々の分子で得られる活性化又は阻害作用を正確に測定させる。
【0096】
試験される試料を撹拌下でマッシュルームからのチロシナーゼ(Sigma)の存在下で5分間インキュベートする。L−DOPA(Sigma)(チロシナーゼの基質)を試験される分子の存在下又は不在下で暗所で10分間インキュベートする。阻害率の計算を分子を伴わない負の対照のODに対して試験体のODを比較することにより実施する。使用される正の対照は0.01%におけるコージ酸(Sigma)(=45%±5%阻害)である。
【0097】
このインビトロ試験に関する限り、アウロン誘導体は10−4M及び10−5Mの最終濃度で試験された。結果は表1に示される。
【0098】
【表2】

【0099】
以上の表1から、アウロンが低濃度においてもチロシナーゼを阻害することが明白である。環Aが好ましくはヒドロキシル化される時は活性がより大きいので、測定された活性はアウロンの構造に左右される。
【実施例14】
【0100】
アウロンによるヒトのチロシナーゼの阻害のインビトロ試験:
健康な供与者から由来するメラノサイト抽出物から得られたヒトのチロシナーゼはL−ドパからのL−ドパキノンの形成を触媒する。L−ドパキノンはクロモゲン:3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)の力で490nmにおける可視分光測定により定量することができる。
【0101】
この試薬はチロシナーゼにより合成されるo−キノンを捕捉して、安定で可溶性で、そして高いモル光学濃度を有するMBTH−o−キノン化合物を与える。
【0102】
従って酵素活性を修飾することができる活性物質の使用は負の対照で得られる値に比較した490nmにおけるODの変化により表わされる(100%の活性)。
【0103】
メラノサイト抽出物を、溶解が熱ショックにより実施される正常なヒトのメラノサイトの細胞膜の溶解後に得る。上澄み液を回収し、次にMBTH(Sigma)及びL−ドパ(Sigma)とともにインキュベートする。30分後に測定される490nmにおけるODを対照に対して得られるものに対して試験される各活性物質につき比較し、阻害率を負の対照(分子を含まない)のODに対する試験物(試験される分子)のODを比較することにより計算する。使用される正の対照は0.1%のコージ酸(60%±5%の阻害)である。
【0104】
得られた結果は表2に要約される。
【0105】
【表3】

【0106】
以上の表2から、アウロンの阻害作用は存在するが、単離されたヒトのチロシナーゼのこの特定のモデルについては軽度であると結論される。
【実施例15】
【0107】
正常なヒトのメラノサイト上で試験される活性物質の適用後の単層において研究されたヒトのチロシナーゼの阻害作用の試験:
正常なヒトのメラノサイト(腹部形成術から採取)をウエル当り80,000個の細胞の率で24−ウエルのプレートに播種する。それらを密集体まで培養し、培地中に活性物質を24時間適用する。24時間後、培地を除去し、メラノサイトを機械的活動(action)により採取する。熱ショックにより抽出し、次に上澄み液を回収し、MBTH(Sigma)及びL−ドパ(Sigma)とともにインキュベートする。30分後に490nmにおけるODを測定し、チロシナーゼの阻害作用を、負の対照(未処理対照)の490nmにおけるOD/タンパク質の濃度の比率に対する、試験体のタンパク質レベル(各培養ウエル中で測定)に対する490nmにおけるODを比較することにより計算する。従って抗チロシナーゼ活性の率は未処理対照に対して計算される。
【0108】
実験の負の対照はメラノサイトに0.1%で適用されるコージ酸であり(20%±5%の測定阻害に対して)、アウロンの誘導体は10−4M及び10−5Mの濃度で研究された。得られた結果は以下のとおりである:
【0109】
【表4】

【0110】
表3及び図1から、得られた結果が評価されたモデルに対するヒトのメラニン形成の阻害に対するヒドロキシル化アウロンの真の有効性を示すことを明らかにもたらす。認められる阻害率は生存生物からのモデル上で、すなわちマッシュルームからのチロシナーゼ及び正常なヒトのメラノサイトから抽出されたチロシナーゼとの直接的接触により得られるものより極めて明白に大きい。
【0111】
従ってヒドロキシル化アウロンは当業者には特に予期されず、そして非常に重要な活性を有する。好ましくは、環A上でヒドロキシル化され、そして4’位にヒドロキシルを有するアウロン(実施例9b)が特に活性である。
【0112】
【表5】

【0113】
表4及び図2から、メチル化アウロンは正常なヒトのメラノサイト上に適用される時に、ヒドロキシル化アウロンよりは少ない程度にヒトのチロシナーゼを阻害することを示す。
【0114】
【表6】

【0115】
更に、表5及び図3から、メチル化アウロンと同様に、ヒドロキシル化及びメチル化アウロンはより軽度にチロシナーゼを阻害することを明白に示す。
【0116】
【表7】

【0117】
【表8】

【0118】
更に表6から、大部分のアウロン類似体はヒトのチロシナーゼを有意に阻害し、そしてその結果、メラニンの形成及びその直接的結果である皮膚の色素沈着を予防することを明白に示す。
【実施例16】
【0119】
種々の供与者から由来する正常なヒトのメラノサイトに対する実施例9bで得られた化合物の適用後のヒトのチロシナーゼの阻害作用の試験
実施例9bで得られた化合物を実施例15に記載の方法に従って、淡色のフォトタイプの種々の供与者から由来するメラノサイトにつき試験した。試験された供与者は以下:
−供与者S(実施例15で試験された供与者):46歳
−供与者1:40歳
−供与者2:47歳
−供与者3:33歳
である。得られた結果は以下の表7及び図4に示される。
【0120】
【表9】

【0121】
得られた結果は4人の異なる供与者に対する化合物9bの高い効果を示す。
【実施例17】
【0122】
褐色及び黒色のフォトタイプの種々の供与者から由来する正常なヒトのメラノサイトに対する実施例9bで得られた化合物の適用後のヒトのチロシナーゼの阻害作用の試験
実施例9bで得られた化合物を褐色のフォトタイプの2人の供与者及び黒色人種のフォトタイプの1人の供与者から由来するメラノサイト培養物について試験する。適用された方法は実施例15に記載のものである。
【0123】
褐色のフォトタイプの2人の供与者から得られた結果は表8及び図5に示される。
【0124】
【表10】

【0125】
褐色のフォトタイプに対して得られた結果は抗チロシナーゼ活性が用量依存性で、高いことを示す。黒色のフォトタイプ(31歳)で得られた結果は表9に示す。
【0126】
【表11】

【0127】
黒色のフォトタイプから由来するチロシナーゼ阻害活性は用量依存性で、第1に淡色のフォトタイプの供与者からそして第2に黒色のフォトタイプの供与者から得られた結果を立証する。
【実施例18】
【0128】
アウロンの細胞毒性の研究
活性物質の細胞毒性を生存可能細胞の細胞内酸ホスファターゼによりp−ニトロフェノールに転化される物質のPNPP(P−ニトロフェニルホスフェート)による決定により24−ウエルのプレート中の正常なヒトメラノサイトにつき研究する。
【0129】
405nmにおけるp−ニトロフェノールの吸収は生存可能細胞数に正比例する。
【0130】
活性物質を2種の異なる濃度(10−4M及び10−5M)で試験し、培養培地に添加し、37℃で24時間インキュベートする。PNPPによる測定を細胞マット上で実施し、結果を負の対照(未処理ウエル)に対する生存率として表わす。
【0131】
得られた結果は以下の表10に要約される。
【0132】
【表12】

【0133】
試験された分子は、得られた生存率が75%生存率(許容閾値)を超えるので、10−4及び10−5Mのモル濃度で試験された時に無細胞毒である。10−4Mで試験された時に3分子、すなわち実施例6、5b及び6cで得られた分子のみが75%未満の閾値を有する。従って、評価するために、これらの分子を10−4M未満(例えば、10−5M)の濃度で単層で試験することが必要であろう。
【実施例19】
【0134】
アウロンの特異性の研究:
それらの脱色素沈着作用について文献に知られている分子につき研究を実施する。これらの分子は前記のアウロンに対してそれらの効果を比較するために実施例15に記載のモデルに適用される。
【0135】
われわれのモデルにおいてリン酸マグネシウムの群により安定化されたビタミンC又はVitC PMg並びにコージ酸を評価することができた。
【0136】
得られた結果は表11に示される。
【0137】
【表13】

【0138】
試験された分子は実施例15のモデルにおいて無効であることが示された。どの分子もアウロン、そして更に特に実施例9bで得られた分子の作用に匹敵する閾値でヒトのチロシナーゼを阻害することができなかった。
【0139】
3%及び0.3%で試験されたビタミンCは、この分子がメラノサイト上に細胞毒性及び非特異的作用を有する範囲で有意なレベルの阻害作用を有する。
【0140】
結果として、この分子はわれわれのモデルにおいては活性物質であるとは考えることができない。
【0141】
アウロンは正常なヒトのチロシナーゼに対して非常に有効な分子であることが判明する。
【0142】
アウロンは構造的にフラボンに近似するので、好ましくは、実施例9b及び7aから得られたアウロンに比較されたフラボンを試験することからなる研究が実施された。アピゲニン(実施例9bで得られた誘導体に構造的に類似)を10−4M及び10−5Mで試験した。クリシン(実施例7で得られた誘導体に構造的に類似)を10−5Mの濃度で試験した。得られた結果は以下の表12に要約される
【0143】
【表14】

【0144】
表12からアウロン誘導体はヒトのチロシナーゼを特異的に阻害する、事実、同一分子濃度で試験されたアピゲニン及びクリシンはチロシナーゼを阻害せず、得られたOD/タンパク質比率は未処理の対照のOD/タンパク質比率より大きいことが示される。
【0145】
ヒトのチロシナーゼを阻害するためには、ヘキサン環(フラボンの場合)の代わりにCにおけるペンタン環の存在が不可欠であるように思われる。これが追求される脱色素沈着作用に対するアウロンの特異性を示すことを可能にする。
【実施例20】
【0146】
アウロン又はアウロン誘導体を含有する調製物の実施例:
水中油型の化粧品又は製薬学的調製物中への本発明の生成物の使用
【0147】
調製物20a
A 水 全100

ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ナトリウムジヒドロキシセチルホスフェート、 2
イソプロピルヒドロキシセチルエーテル
B グリコールステアレートSE 14
トリイソノアオイン 5
オクチルココエート 6
C ブチレングリコール 2
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン
pH、5.5に調整
D 本発明の生成物 0.01〜10%
【0148】
調製物20b
A 水 全100
ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ポリアクリルアミド、イソパラフィン、 2.8
ラウレス−7
B ブチレングリコール 2
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン;

フェノキシエタノール、
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン 0.5
ブチレングリコール
D 本発明の生成物 0.01〜10%
【0149】
調製物20c
A カーボマー 0.50
プロピレングリコール 3
グリセロール 5
水 全100
B オクチルココエート 5
ビスアボロール 0.30
ジメチコン 0.30
C 水酸化ナトリウム 1.60
D フェノキシエタノール、 0.50
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
E 香料 0.30
F 本発明の生成物 0.01〜10%
【実施例21】
【0150】
油中水型の調製物中の本発明の生成物の使用
A PEG 30 −3
ジポリヒドロキシステアレート
カプリン酸トリグリセリド 3
セテアリルオクタノエート 4
ジブチルアジペート 3
ブドウの種油 1.5
ホホバ油 1.5
フェノキシエタノール、 0.5
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
B グリセリン 3
ブチレングリコール 3
硫酸マグネシウム 0.5
EDTA 0.05
水 全100
C シクロメチコン 1
ジメチコン 1
D 香料 0.3
E 本発明の生成物 0.01〜10%
【実施例22】
【0151】
シャンプー又はシャワーゲル型の調製物中の本発明の生成物の使用:
A キサンタンガム 0.8
水 全100
B ブチレングリコール、 0.5
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン
フェノキシエタノール、 0.5
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
C クエン酸 0.8
D ナトリウムラウレススルフェート 40.0
E 本発明の生成物 0.01〜10%
【実施例23】
【0152】
水性ゲル調製物(アイライナー、スリマー、等)中への本発明の生成物の使用:
A 水 全100
カーボマー 0.5
ブチレングリコール 15
フェノキシエタノール、メチルパラベン、 0.5
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
B 本発明の生成物 0.01〜10%
【実施例24】
【0153】
本発明の生成物の毒性学的研究:
【0154】
本発明の主題物質を含有する調製物の美容的許容性の評価
毒性学的試験をウサギにおける眼科評価により、ラットにおける単独経口投与による異常毒性の不在の研究により、そしてモルモットにおける感作力の研究により0.5%キサンタンガム中10%で取り込まれた実施例9に従って得られた化合物に対して実施した。
【0155】
ウサギにおける皮膚の原発的刺激の評価
前記の調製物を「皮膚に対する急性刺激/腐蝕効果」の研究に関するOECD指針により推奨される方法に従って3匹のウサギの皮膚上で0.5mlの用量で希釈せずに適用した。
【0156】
生成物は21/02/82のフランス共和国の官報(“JORF”)中に公開された1/2/1982の決議中に規定された評価に従い分類される。
【0157】
ウサギにおける眼科刺激の評価
前記の調製物は「眼に対する急性刺激/腐蝕効果」の研究に関して1987年2月24日のOECD第405号の指針により推奨される方法に従って、3匹のウサギの眼に0.1mlの割合で純粋で1バッチで滴下した。
【0158】
本試験の結果は,調製物が純粋で又は希釈せずに使用されて指針91/326 EECの意味で眼に対して非刺激性であると考えることができると結論させる。
【0159】
ラットにおける1回の経口投与による異常毒性の不在に対する試験
調製物を1987年2月24日のOECDの指針第401号から示唆され、化粧品に適用されたプロトコールに従って、5匹の雄ラット及び5匹の雌ラットに5g/kg体重の用量で1バッチで経口投与した。
【0160】
LD0及びLD50は5,000mg/kgより大きいことが見いだされた。従って、試験された調製物は摂取により危険である調製物の仲間には分類されない。
【0161】
モルモットにおける皮膚感作能の評価
前記の調製物をOECD指針ライン第406号と一致するプロトコールのMagnusson及びKligmannにより記載された最大化試験にかける。
【0162】
調製物は皮膚との接触により非感作性であると分類される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】横軸に沿って、異なる2種の濃度10−5M及び10−4Mそれぞれの表3に示される環A上でヒドロキシル化されたアウロンを伴って実施される実施例15の試験の被験体において試験された実施例を伴う、縦軸のヒトのチロシナーゼ活性の抑制率のグラフを表わす。
【図2】横軸に沿って、異なる2種の濃度10−5M及び10−4Mそれぞれの表4に示される環A上でメチル化されたアウロンを伴う実施例15の試験の被験体において試験された実施例を伴う、縦軸のヒトのチロシナーゼ活性の抑制率のグラフを表わす。
【図3】横軸に沿って、異なる2種の濃度10−5M及び10−4Mそれぞれの表5に示される環A上でヒドロキシル化及びメチル化されたアウロンを伴う実施例15の試験の被験体において試験された実施例を伴う、縦軸のヒトのチロシナーゼ活性の抑制率のグラフを表わす。
【図4】横軸に沿って、異なる2種の濃度10−5M及び10−4Mそれぞれの実施例16の試験の被験体において試験された実施例9bで得られた化合物に対して4人の異なる供与者について得られた結果(これらの結果はまた表6に示される)を伴う、縦軸のヒトのチロシナーゼ活性の抑制率のグラフを表わす。
【図5】横軸に沿って、異なる3種の濃度10−5M,10−4M及び10−3Mそれぞれの実施例17の試験の被験体において試験された実施例9bで得られた化合物に対する褐色及び黒色のフォトタイプの2人の供与者について得られた結果(これらの結果はまた表7及び8に示される)を伴う、縦軸のヒトのチロシナーゼ活性の抑制率のグラフを表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場合により美容的に許容され得る賦形剤、ビヒクルまたはキャリヤーと混合されてもよい、
a)一般化学式(I):
【化1】

[式中、
Xは酸素原子(O)、窒素原子(N)又は硫黄原子(S)を表わすことができ、
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9は相互に独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル(OH)、エステル、塩形成型又は非塩形成型C1〜12酸、アミド、スルホンアミド、ニトロ、塩基性又は塩形成型I、II又はIIIアミン、シアノ、チオール、糖(O−ヘテロシド又はC−ヘテロシド)、線状又は分枝C1〜12アルキル鎖、線状又は分枝C1〜12アルコキシ鎖、線状又は分枝C1〜12アルケニル鎖(例えばプレニル)、C1〜12アルケニルオキシ、チオアルキル鎖、アルキル又は芳香族タイプの環又は複素環、塩形成型又は非塩形成型スルフェート、塩形成型又は非塩形成型スルホネート、塩形成型又は非塩形成型ホスフェート、エステル化又は非エステル化ホスフェート、エステル化又は非エステル化ホスホネート、塩形成型又は非塩形成型ホスホネート、式:
【化2】

(ここでR1及びR2は相互に独立して、ヒドロキシル、メチル、エチル、フェニル、p−メチルフェニル、p−メトキシフェニル又はtert−ブチル基を表わすことができる)
のシラノール基を表わすことができる]のアウロン、
b)以下の化学式:
【化3】

[式中、R1〜R9は相互に独立して、前記のa)でアウロンに対して定義されたものと同様な基を表わし、そしてR10は1〜12個の炭素原子を有する線状又は分枝アシル基又はアルキル基から選択される]
のアウロノール又はアザアウロン又はチオアウロン、
c)ジスルフレチン及びビアウレウシジン(biaureusidin)から選択されるアウロンの二量体、
d)前記のa)で定義されたようなアウロンの《B》環と呼ばれる独立したフェニル環を以下の化学式:
【化4】

[ここでR1〜R8は前記定義のとおりである]
中のピロール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、フラン及びチオフェンからなる群から選択される複素環により置換することにより得られるアウロン類似体、
から選択される少なくとも1種のアウロン成分の有効に脱色素沈着する量を皮膚、毛髪又は外皮の領域から選択される脱色素沈着されるべき少なくとも1カ所の身体領域上に局所的に適用することを含んでなる美容的脱色素沈着ケア方法。
【請求項2】
アウロン成分が2’,4’,6’−トリヒドロキシ−2−クロロアセトフェノン(R1=OH)、2’,4’−ジヒドロキシ−2−クロロアセトフェノン(R1=H)、4,6−ジヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン(R1=OH)、6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン(R1=H)、(Z)−2−ベンジリデン−6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(4’−エチル)ベンジリデン−6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(2’−エチル)ベンジリデン−6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(4’−ヒドロキシ)ベンジリデン−6−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン、4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−ベンジリデン−4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(4’−ヒドロキシ)ベンジリデン−4,6−ジ
メトキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−エチル−ベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−メチルチオ−ベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(4’−シアノベンジリデン)−4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−スルホネートベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(2,4−ジスルホネートベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−ベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−プロピルベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジメトキシ−2−(4’−イソプロピルベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−(4’−ブチルベンジリデン)−4,6−ジメトキシベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−2−ベンジリデン−(4,6−ジヒドロキシ)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4’−エトキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4’−ヒドロキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、4,6−ジ−OMEMベンゾフラン−3(2H)−オン、2,6−ジアセトキシ−α−ブロモアセトフェノン、4−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オン及び(Z)−2−(4’−ヒドロキシベンジリデン)−4−ヒドロキシベンゾフラン−3(2H)−オンからなる群から選択される請求項1の方法。
【請求項3】
アウロン成分が(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4−メトキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4’−エトキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン、(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(4’−ヒドロキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オン又は(Z)−4,6−ジヒドロキシ−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)ベンゾフラン−3(2H)−オンからなる群から選択される請求項1の方法。
【請求項4】
アウロン成分が植物からの抽出物の形態のアウロン成分及び化学合成により得られるアウロン成分からなる群から選択される請求項1の方法。
【請求項5】
a)以下の化学式(I):
【化5】

[式中R1〜R9基は請求項1に定義されたとおりであり、ただし、R5〜R9からの少なくとも1個の基は線状又は分枝C1〜12アルキル鎖、線状又は分枝C1〜12アルコキシ鎖、C1〜12チオアルキル基、スルホニル基及びシアノ基から選択される]
のアウロン、
b)以下の化学式(II):
【化6】

[式中、
R1、R2、R3、R4基は前記に定義のとおりであり、そして
Zは未置換の又は前記に定義されたとおりのR5、R6、R7基及び場合によりR8基で置換されたピロール、ピリジン、フラン及びチオフェンからなる群から選択される複素環を表わす]
のアウロン類似体:から選択されるアウロン成分。
【請求項6】
R5〜R8の少なくとも1個の基が線状又は分枝C1〜12アルキル鎖、線状又は分枝C1〜12アルコキシ鎖、C1〜12チオアルキル基、スルホニル基及びシアノ基から選択される請求項5のアウロン成分。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−290886(P2006−290886A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94625(P2006−94625)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(506057214)エンゲルハード・リヨン・ソシエテ・アノニム (4)
【Fターム(参考)】