説明

少なくとも1種の1,8−ジヒドロキシナフタレン誘導体、およびアンモニア水と異なる少なくとも1種の塩基性化剤を含む組成物、この組成物を用いてケラチン繊維を染色する方法

本発明の主題は、少なくとも1種の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体およびアンモニア水以外の少なくとも1種の塩基性化剤を含む、ケラチン繊維を染色するための組成物;毛髪染色のためのこの組成物の使用およびケラチン繊維の染色方法におけるこの組成物の使用である。本発明による組成物は、ケラチン繊維を、酸化ベースおよび芳香族アミンを使用することさえなく、穏和な酸化条件下で、染色することを可能にし、一方でそれと同時に、1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体によって広範囲の色を扱うことを可能にする。酸化条件下で観察された染色は、酸化剤および/または塩基性化剤の穏和な条件下、特に空気中で作用し、不快な臭気をまったく発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、少なくとも1種の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体およびアンモニア水以外の少なくとも1種の塩基性化剤を含む、ケラチン繊維を染色するための組成物;毛髪染色のためのこの組成物の使用ならびに染色方法におけるこの組成物の使用である。
【背景技術】
【0002】
酸化ベース、例えば、オルト-またはパラ-フェニレンジアミン、オルト-またはパラ-アミノフェノールおよびヘテロ環式化合物として一般に知られている酸化染料前駆体を含有する染色組成物を用いて「パーマネント」着色を得ることは、公知の慣行である。これらの酸化ベースは、無色または弱着色化合物であり、これらは、酸化性生成物と組み合わせて、酸化縮合方法によって、着色化合物を生じさせ得る。これらの酸化ベースをカプラーまたは着色変性剤と組み合わせることによって得られる色合いを変えることができ、後者は、特に、芳香族メタ-ジアミン、メタ-アミノフェノール、メタ-ジフェノールおよびある種のヘテロ環式化合物、例えば、インドール化合物から選択されることも公知である。この酸化染色方法は、ケラチン繊維に、ベース、またはベースの混合物およびカプラーの混合物を、酸化剤として過酸化水素(H2O2または過酸化水素水溶液)とともに適用し、拡散させ、次いで、繊維をすすぎ洗いすることで構成される。それから生じる着色は、不変で、強力であり、かつ外部の作用因子、特に光、悪天候、洗濯、発汗および摩擦作用に耐性である。
【0003】
酸化ベースおよび酸化カプラーは、豊富な範囲の色を得ることを可能にするが、それらは一般に、i)芳香族アミン、ii)酸化剤として過酸化水素、またはiii)アンモニア水の存在を必要とし、したがって、アンモニア水の臭気に伴う不快な態様および過酸化水素の存在に伴う繊維損傷をもたらす。
【0004】
さらに、汚染などの欠点および不快の問題に、酸化染色によって遭遇され得る。
【0005】
塩素原子または臭素原子で場合によって置換された1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、毛髪の酸化染色で使用されてきた(国際公開第94/18937号)。しかし、記載された方法は、特に大量のアンモニア水の使用を必要とし、これは、非常に不快な臭気を発生させる作用を有する。さらに、1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体が、アンモニア水の不存在下で適用される場合、染色は、シャンプー洗髪に対してあまり耐性でなくなり得る。また、一般に、アンモニア水の不存在下で酸化前駆体を発揮させることがうまくいくことは非常に困難であり、その結果、得られる着色は、非常に光沢がなく、かつあまり強力ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第94/18937号
【特許文献2】米国特許第5,008,093号
【特許文献3】米国特許第3,376,110号
【特許文献4】米国特許第5,183,901号
【特許文献5】仏国特許第2586913号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Physical Chemistry A 2007年、111(2)、345〜351頁
【非特許文献2】Journal of Organic Chemistry 1990年、55(5)、1611〜1623頁
【非特許文献3】Journal of the Chemical Society、Chemical Communication 1979年、206、206頁
【非特許文献4】Journal of the Chemical Society、Chemical Communication 1979年、206、1165頁
【非特許文献5】Australian Journal of Chemistry 1988年、41(7)、1087頁
【非特許文献6】Journal of American Chemical Society 1988年、110(18)、6172頁
【非特許文献7】Synthetic Communication 2007年、37(18)、3041頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、天然由来であり得る1,8-ジヒドロキシナフタレンを用いてより穏和な条件下で、ケラチン繊維の損傷を低減させてまたはさらにはまったく繊維の損傷なしで、染色を行う一方、同時に、外部の作用因子(光、悪天候、シャンプー洗髪)に耐え、かつ毛髪のトリートメントに関連して、可能であれば、不快な臭気なしでまたは非常に低下した臭気で、持続性、均質、強力かつ有色である着色を与える、真の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は本発明によって達成され、その主題は、ケラチン繊維、特に毛髪の染色方法であって、前記繊維を
-i)1種または複数の式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体、その無機もしくは有機の酸もしくは塩基、その光学異性体、その幾何異性体、その互変異性体、および/またはその水和物などの溶媒和物;
[式(I)中:
R1およびR6は、互いに独立に、
- 水素原子、
-C1〜C4アルキル基(これは、1個または複数のヒドロキシル基または(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)、
- カルボン酸基-CO2H、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- (C1〜C4)アルキルカルボニル基(これは、(C1〜C4)アルキルカルボニル基または(C1〜C4
)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)、
- C1〜C4アルコキシ基、
- カルボキシアルデヒド基-CHO、
- スルホン酸基-SO3H
を表し;
R2およびR5は、互いに独立に、
- 水素原子、
- ヒドロキシル基、
- C1〜C4アルキル基(これは、1個または複数のヒドロキシル基または(C1〜C4)アルコキシ
カルボニル基で官能基化され得る)、
- カルボン酸基-CO2H、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- (C1〜C4)アルキルカルボニル基(これは、ヒドロキシル基で官能基化され得る)、
- C1〜C4アルコキシ基、
- カルボキシアルデヒド基-CHO、
- スルホン酸基-SO3H
を表し;
R3およびR4は、互いに独立に、
- 水素原子、
- ヒドロキシル基、
- C1〜C4アルキル基(これは、1個または複数のヒドロキシル基または(C1〜C4)アルコキシ
カルボニル基で官能基化され得る)、
- カルボン酸基-CO2H、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- (C1〜C4)アルキルカルボニル基(これは、(C1〜C4)アルキルカルボニル基または(C1〜C4
)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)
を表し;
R1およびR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、オキソ基、例えば、ピロン、特に4-ピロンで場合によって置換されたヘテロ環(これは、1個または2個のC1〜C4アルキル基で官能基化され得る):
【0012】
【化2】

【0013】
(RおよびR'は、同じかまたは異なっていてもよく、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表し:好ましくは、RおよびR'は、水素原子を表すか、またはR'は、水素原子を表し、Rは、C1〜C4アルキル基を表す)を形成することができる];
ならびに
- ii)アンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤
で処理することによる染色方法であり;
・該式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体および該塩基性化剤は、該ケラチン繊維に同時にまたは連続的に適用することができ、かつ
・該染色方法は、アンモニア水を必要としない
ことが理解される、染色方法である。
【0014】
本発明の別の主題は、ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトのケラチン繊維を染色するための、上に定義されたとおりの式(I)の化合物の使用に関する。
【0015】
本発明の別の主題は、
- i)上記のとおりの1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体;および
- ii)アンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤;
(但し、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、
【0016】
【化3】

【0017】
を表すことができないことを条件とする)
を含有する化粧用組成物に関する。
【0018】
本発明の別の主題は、以下の成分が分配される、2から5種の組成物を収容する2から5つのコンパートメントを備える装置に関する:
- i)上に定義されたとおり1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体、
- ii)アンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤、
- iii)場合によって、1種もしくは複数の化学的酸化剤および/またはiv)1種もしくは複数の酸化触媒、ならびに
- v)場合によって、1種または複数の媒染剤。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による組成物は、ケラチン繊維を穏和な条件下で染色する一方、広い色範囲に及ぶことを可能にする。
【0020】
さらに、本発明による組成物は、ヒトのケラチン繊維を染色する利点を有し、得られた着色は、前記繊維を損なうことなく、強力で、有色であり、かつ洗濯、発汗、皮脂および光に対して耐性である。この方法を用いて得られる着色は、繊維の根元から先端部まで均質である色も与える(低い着色選択性)。アンモニア水などの塩基性化剤の使用によって起こり得るような、とがめられる不快な臭気は、本発明による染色方法に伴って生じることはない。
【0021】
本発明の目的のために、特記のない限り:
- アルキル基は、直鎖または分岐で、飽和の、一般にC1〜C4の炭化水素系基(メチル、エチル、プロピルおよびブチルなど)である。
- 「アルキレン」基は、二価の飽和で、直鎖または分岐の炭化水素基、一般にC1〜C10、好ましくは(C2〜C6)アルキレン(エチレン、プロピレンおよびブチレンなど)であり;
後者は、1個もしくは複数のヘテロ原子で場合によって中断されており、かつ/または場合によって (A) -(CR'R"2)n-X-(CR'R"2)p-または(B) -(CR'R"2)n-X-(CR'R"2)p-Y-(CR'R"2)q-で置換されており
[ここで、
n、pおよびqは、同一かまたは異なり、それぞれ1から4の整数を表し;(A)において、n+pは、2から6の整数を表す、または(B)において、n+p+qは、3から6の整数を表し;
XおよびYは、同一かまたは異なり、結合、ヘテロ原子(酸素原子など)またはNR(Rは、水素原子、または(ヒドロキシル)(C1〜C6)アルキル基を表す)を表し、好ましくはX=Yであり;ならびに
R'およびR"は、同一かまたは異なり、水素原子、またはヒドロキシルおよび(C1〜C6)アルキル(メチルなど)から選択される基を表す];
好ましくは、アルキレン基は(A)を表し、より具体的には、R'およびR"は、水素原子を表す。
- アルコキシ基は、上に定義されたとおりのアルキル、好ましくはC1〜C4を有するアルキルオキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびブトキシなど)である。
- オキソ基で場合によって置換されたヘテロ環は、R1基およびR2基を介して1,8-ジヒドロキシナフタレン核に縮合したヘテロ環であり;前記ヘテロ環は、5個から7個の環員、酸素、硫黄または窒素原子から選択される1個から3個のヘテロ原子を含み、これは、オキソ基またはカルボニル基、および好ましくはオキソ基と共役した不飽和物を含んでもよい。
- 「穏和な条件」という用語は、本発明による方法または組成物において、空気以外の化学的酸化剤、不快な臭気を有する大量の塩基性化剤、ならびに芳香族アミンタイプの酸化ベースおよびカプラーの存在の同時の使用がないことを意味することが意図される。本発明の方法は、穏和な条件下で行われ、すなわち、本発明によって毛髪に適用される組成物は、アンモニア水を含有しない。本組成物は、臭気に関してなんの問題も示さない塩基性化剤、ならびに少量のまたはまったくない化学的酸化剤、ならびに少量のまたはまったくない芳香族アミン由来の酸化ベースおよびカプラーを含む。
- 「化学的酸化剤」の概念については、以下の「酸化剤および酸化触媒」を参照されたい。
【0022】
式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体:
本発明の特定の一実施形態は、R1およびR2が、互いに独立に、
- 水素原子、
- C1〜C4アルキル基、
- カルボン酸基-CO2H、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- (C1〜C4)アルキルカルボニル基(これは、(C1〜C4)アルキルカルボニル基または(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)
を表し;
より具体的には、R1およびR2が、互いに独立に、
- 水素原子、
- C1〜C4アルキル基、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- (C1〜C4)アルキルカルボニル基(これは、(C1〜C4)アルキルカルボニル基または(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)
を表す、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体に関する。
【0023】
本発明の別の特定の実施形態によれば、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、R2およびR5が、互いに独立に、
- 水素原子、
- ヒドロキシル基、
- C1〜C4アルキル基(これは、(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- C1〜C4アルコキシ基、
- スルホン酸基-SO3H
を表すものである。
【0024】
好ましくは、R2およびR5は、互いに独立に、
- 水素原子、
- ヒドロキシ基、
- C1〜C4アルキル基(これは、(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- C1〜C4アルコキシ基
を表す。
【0025】
本発明の別の特定の実施形態は、R3およびR4が、水素原子を表す、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体に関する。
【0026】
より具体的には、本発明による化合物は、以下から選択される:
【0027】
【表1A】

【0028】
【表1B】

【0029】
【表1C】

【0030】
化合物(1)から(20)ならびにそれらの光学異性体、それらの幾何異性体、それらの互変異性体、それらの水和物およびそれらの有機または無機塩基との付加塩。
【0031】
式(I)の好ましい化合物は、化合物(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(10)、(13)および(20)である。
【0032】
本発明で使用される式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、天然、合成および/または市販であってもよい。式(I)の化合物は、文献に記載された合成経路によって合成され得る。この点で、特に以下の参考文献を挙げ得る:
- Journal of Physical Chemistry A 2007年、111(2)、345〜351頁、
- Journal of Organic Chemistry 1990年、55(5)、1611〜1623頁、
- Journal of the Chemical Society、Chemical Communication 1979年、206、206頁、
- Journal of the Chemical Society、Chemical Communication 1979年、206、1165頁、
- Australian Journal of Chemistry 1988年、41(7)、1087頁、
- Journal of American Chemical Society 1988年、110(18)、6172頁、
- Synthetic Communication 2007年、37(18)、3041頁。
【0033】
本発明による式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体の塩は、酸または塩基の塩であり得る。酸は、無機または有機であってもよい。好ましくは、酸は、塩酸であり、これは、塩化物をもたらす。
【0034】
塩基は、無機または有機であり得る。特に、塩基は、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムであり、これはナトリウム塩をもたらす。
【0035】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、本組成物は、天然に存在しない合成の1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含む。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明による式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、天然である。
【0037】
1つの実施形態によれば、天然の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、それらの全体でまたは部分的に用いられる動物、細菌、真菌、藻類または植物の抽出物由来である。好ましくは、天然の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、ダルジニア・コンセントリカ(Daldinia concentrica)などの真菌またはジオスピロス・モリス(Diospyros mollis)などの果実由来である。これらの天然の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、抽出物から得られ、これらの精製は、化学処理または化学反応なしで単純な抽出により行われ得る。
【0038】
抽出物の混合物も用いられ得る。
【0039】
1つの好ましい実施形態によれば、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、単に1種の天然抽出物または複数の天然抽出物だけである。
【0040】
本発明による天然抽出物は、粉末または液体の形態であり得る。本発明の抽出物は、好ましくは粉末の形態である。
【0041】
本発明によれば、本発明による組成物に用いられる合成および/もしくは天然の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体ならびに/または天然抽出物は、好ましくは、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体またはその抽出物を含有する組成物の全重量の0.001重量%から20重量%に相当する。
【0042】
純粋な式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体に関して、それらを含有する組成物中の含有量は、好ましくはこれらの組成物のそれぞれの0.001重量%から20重量%である。
【0043】
抽出物に関して、そのままの抽出物を含有する組成物中の含有量は、好ましくはこれらの組成物のそれぞれの0.001重量%から20重量%である。
【0044】
化粧用組成物:
本発明による化粧用組成物は、ケラチン繊維を染色するために化粧上許容され、すなわち、それは、一般に水、または水と1種もしくは複数の有機溶媒との混合物、または有機溶媒の混合物を含有する染色支持体を含む。
【0045】
「有機溶媒」という用語は、別の物質を、それを化学的に変性させることなく溶解または分散させることができる有機物質を意味することが意図される。
【0046】
有機溶媒
有機溶媒として、例えば、C1〜C4低級アルカノール(例えば、エタノールおよびイソプロパノール);ポリオールおよびポリオールエーテル(例えば、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール);ならびに芳香族アルコール(例えば、ベンジルアルコールまたはフェノキシエタノール)を挙げることができる。
【0047】
有機溶媒は、染色組成物の全重量に対して、好ましくは約1重量%から40重量%、さらにより好ましくは約5重量%から30重量%の割合で存在する。
【0048】
アジュバント:
本発明による染色方法の組成物は、毛髪を染色するための組成物に従来使用されてきた様々なアジュバント、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性もしくは双性イオン性の界面活性剤またはそれらの混合物、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性もしくは双性イオン性のポリマーまたはそれらのブレンド、無機または有機増粘剤、特に、アニオン性、カチオン性、非イオン性および両性イオン性ポリマー結合性の増粘剤、酸化防止剤、浸透剤、封鎖剤、芳香剤、緩衝剤、分散剤、品質改良剤、例えば、変性もしくは非変性の揮発性もしくは不揮発性シリコーン、フィルム形成剤、セラミド、保存剤または不透明化剤なども含有し得る。
【0049】
前記アジュバントは、好ましくは界面活性剤、例えば、アニオン性もしくは非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物、および無機または有機増粘剤から選択される。
【0050】
上記アジュバントは、一般に、それらのそれぞれについて、組成物の重量に対して、0.
01重量%から40重量%、好ましくは組成物の重量に対して0.1重量%から20重量%の量で存在する。
【0051】
当然、当業者は、本発明による組成物に本質的に関連した有利な特性が、想定される添加によって損なわれないか、または実質的に損なわれないように、注意してこのまたはこれらの場合による追加の化合物を選択するであろう。
【0052】
追加の染料:
上に定義されたとおりの1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含む組成物は、1種または複数の追加の直接染料も含み得る。これらの直接染料は、例えば、直接染色に従来使用されているものから選択され、それらの中で、一般に使用される芳香族および/または非芳香族染料のすべて、例えば、中性、酸性またはカチオン性ニトロベンゼン直接染料、中性、酸性またはカチオン性アゾ直接染料、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体以外の天然直接染料、中性、酸性またはカチオン性キノン、特にアントラキノン、直接染料、アジン、トリアリールメタンおよびインドアミン直接染料、メチン、スチリル、ポルフィリン、メタロポルフィリン、フタロシアニン、メチンシアニン、ならびに蛍光染料を挙げることができる。これらの追加の染料は、すべて、本発明による式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体と異なる。
【0053】
天然直接染料の中で、ローソン、ユグロン、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン、アピゲニジンまたはオルセインを挙げることができる。また、これらの天然染料を含有する抽出物または煎出液、特にヘンナベースのパップまたは抽出物も使用することができる。
【0054】
組成物中に使用される追加の直接染料は、好ましくは、それらを含有する組成物の全重量の約0.001重量%から10重量%、さらにより好ましくは約0.05重量%から5重量%に相当する。
【0055】
上に定義されたとおりの1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含む本発明の化粧用組成物は、ケラチン繊維を染色するために従来用いられてきた1種もしくは複数の酸化ベースおよび/または1種もしくは複数のカプラーも用いまたは含み得る。
【0056】
酸化ベースの中で、パラ-フェニレンジアミン、ビスフェニルアルキレンジアミン、パラアミノフェノール、ビス-パラ-アミノフェノール、オルト-アミノフェノール、ヘテロ環式ベース、およびそれらの付加塩を挙げることができる。
【0057】
これらのカプラーの中で、特に、メタ-フェニレンジアミン、メタ-アミノフェノール、メタ-ジフェノール、ナフタレンカプラー、ヘテロ環式カプラー、およびそれらの付加塩を挙げることができる。
【0058】
本組成物中に存在する酸化ベースは、一般にそれぞれ、対応する組成物の全重量の0.001重量%から10重量%の量で存在する。
【0059】
本発明の別の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、酸化ベースをまったく含有しない。
【0060】
さらに別の実施形態によれば、本組成物は、カプラーをまったく含有しない。好ましくは、本発明による組成物は、特に芳香族アミンタイプの酸化ベースまたはカプラーをまったく含有しない。
【0061】
さらに別の実施形態によれば、本発明の組成物は、ジヒドロキシインドールもジヒドロキシインドリン誘導体も、特に5,6-ジヒドロキシインドールも5,6-ジヒドロキシインドリンも含有しない。
【0062】
別の実施形態によれば、本組成物は、ジヒドロキシインドールおよび/またはジヒドロキシインドリン誘導体、特に5,6-ジヒドロキシインドールおよび/または5,6-ジヒドロキシインドリンを含有する。
【0063】
本発明の化粧用組成物は、粉剤、ローション剤、泡剤、クリーム剤もしくはゲル剤などの様々な製剤の形、またはケラチン繊維の染色を実施するための任意の他の適当な形であり得る。それはまた、噴射剤を含まないポンプ作用のディスペンサに、または噴射剤の存在下でエアロゾル容器中に加圧下で詰められ、泡を形成することもできる。
【0064】
組成物のpH
本発明の1つの特定の実施形態によれば、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含有する組成物のpHは、7より大きく、好ましくは8から12である。それは、特に9から11である。
【0065】
本発明による組成物のpHは、ケラチン繊維の染色に従来使用されてきた酸性化剤または塩基性化剤によって、そうでなければ従来の緩衝系を用いて所望の値に調整され得る。
【0066】
本発明で使用される組成物の酸性化剤の中で、一例として、無機酸または有機酸、例えば塩酸、オルトリン酸または硫酸、カルボン酸、例えば、酢酸、酒石酸、クエン酸または乳酸、およびスルホン酸を挙げることができる。
【0067】
塩基性化剤
本発明による組成物は、アンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤を含有する。
【0068】
塩基性化剤の量は、好ましくは組成物のpHが8から12である量である。それは、より具体的には9から11である。
【0069】
アンモニア水以外の塩基性化剤は、好ましくはアルカノールアミン(モノ-,ジ-およびトリエタノールアミンなど)、アルカリ金属炭酸塩、グアニジン、イミダゾール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウム、およびアルギニンならびに以下の式(II):
【0070】
【化4】

【0071】
(式(II)中、
- Wは、1個もしくは複数のヘテロ原子(酸素原子など)によって、または1個もしくは複数の基NR(ここで、Rは、水素原子、または(ヒドロキシル)(C1〜C6)アルキル基を表す)によって、場合によって中断された(C1〜C10)アルキレン基であり、前記アルキレン基は、1個または複数のヒドロキシルまたは(C1〜C4)アルキル基で場合によって置換されており;
Wは特に、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルキル基で場合によって置換されたプロピレン基を表し;
- Ra、Rb、RcおよびRdは、同一かまたは異なっていてもよく、水素原子、C1〜C4アルキル基またはC1〜C4ヒドロキシアルキル基を表す)
の化合物から選択される。
【0072】
より具体的には、塩基性化剤は、エタノールアミン、炭酸塩、グアニジン、イミダゾール、水酸化カルシウムおよびアルギンから選択される。
【0073】
酸化剤および酸化触媒
本発明の1つの特定の実施形態によれば、本組成物は、化学的酸化剤を含有する。「化学的酸化剤」という用語は、空気中の酸素(O2)以外の酸化剤、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属臭素酸塩、過酸基塩(過ホウ酸塩および過硫酸塩など)、またはいくつかの過酸化水素発生系、例えば:
-過酸化水素を放出し得るポリマー複合体、例えば、ポリビニルピロリドン/H2O2など(特に粉末の形態で)、および米国特許第5,008,093号;米国特許第3,376,110号;米国特許第5,183,901号に記載された他のポリマー複合体;
-水中で、過酸化水素を発生する金属過酸化物、例えば、過酸化カルシウムまたは過酸化マグネシウム;
-適当な基質(例えば、グルコースオキシダーゼの場合のグルコースまたはウリカーゼによる尿酸)の存在下で過酸化水素を生成するオキシダーゼ;および酵素(それらの中で、ペルオキシダーゼ、2-電子オキシドレダクターゼ(ウリカーゼなど)、および4-電子オキシゲナーゼ(ラッカーゼなど)を挙げることができる)
を意味することが意図される。
【0074】
過酸化水素の使用が、特に好ましい。
【0075】
特に、化学的酸化剤は、組成物の全重量に対して、0.001%から12%の割合で組成物中に存在する。
【0076】
本発明の別の特定の実施形態によれば、本組成物は、化学的酸化剤をまったく含有しない。その場合、酸化および色の出現は、空気中の酸素のみによって起こる。
【0077】
別の変形によれば、本組成物は、酸化触媒も含有する。一例として、この触媒は、マンガン(Mn)塩、亜鉛(Zn)塩、鉄(Fe)塩および銅(Cu)塩から選択され得る。特に、触媒は、組成物の全重量に対して、0.001%から10%の割合で組成物中に存在する。
【0078】
媒染剤
本発明による組成物は、繊維産業で従来使用されており、かつ好ましくは金属塩、例えば、鉄塩、アルミニウム塩、チタン塩、カルシウム塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩またはストロンチウム塩の形態で化粧上許容される媒染剤(mordantまたはmordanting agent)も含有し得る。一例として、媒染剤は、硫酸鉄、グルコン酸マンガン、硫酸銅、グルコン酸亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、チタニルシュウ酸カリウムまたは酢酸ストロンチウムであり得る。特に、媒染剤は、組成物の全重量に対して、0.001%から10%の割合で組成物中に存在する。
【0079】
1つまたは複数の工程における染色方法
本発明の主題は、i) 上に定義されたとおりの1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体およびii) アンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤によるケラチン繊維の処理またはケラチン繊維へのそれらの適用によって染色する方法に関し、成分i)およびii)が、繊維に1工程で同時に、またはいくつかの工程で連続的に適用されることが可能である。
【0080】
本発明の染色方法の1つの好ましい実施形態によれば、成分i)およびii)は、1工程で適用される。この場合、好ましくは、成分i)およびii)は、1つの化粧用組成物中に一緒にあり、次いで、ケラチン繊維に適用される。
【0081】
本発明の染色方法の別の特定の実施形態によれば、成分i)およびii)は、連続的に適用される。この場合、好ましくは、成分i)は1つの化粧用組成物中にあり、成分ii)は別の化粧用組成物中にある。本発明の第1の有利な変形によれば、成分i)を含む化粧用組成物が、第1の工程でケラチン繊維に適用され、次いで、第2の工程で、成分ii)を含む化粧用組成物が適用される。本発明の別の変形によれば、成分ii)を含む化粧用組成物が、第1の工程でケラチン繊維に適用され、次いで、第2の工程で、成分i)を含む化粧用組成物が適用される。
【0082】
本発明による方法の1つの好ましい実施形態によれば、該方法は、酸化ベースもカプラーも使用しない。より具体的には、該方法は、芳香族アミンタイプの酸化ベースまたはカプラーを必要としない。
【0083】
本染色方法の別の好ましい実施形態によれば、不快な臭気を有しない、アンモニア水以外の塩基性化剤を含有する、ケラチン繊維に適用される組成物は、アルカノールアミン(モノ-、ジ-およびトリエタノールアミンなど)、アルカリ金属炭酸塩、グアニジン、イミダゾール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウムおよびアルギニン、ならびに上に定義されたとおりの式(II)の化合物から選択される。より具体的には、不快な臭気を有しない塩基性化剤は、エタノールアミン、炭酸塩、グアニジン、イミダゾール、水酸化カルシウムおよびアルギニンから選択される。
【0084】
好ましくは、アンモニア水以外の塩基性化剤は、pHが8から12であるような量で存在する。それは、より具体的には9から11である。
【0085】
本発明のある変形は、上に定義されたとおりの1種または複数の化学的酸化剤を必要とする染色方法に関する。酸化剤は、成分i)およびii)と同時に、または追加の工程でケラチン繊維に適用され得る。好ましくは、化学的酸化剤は、成分i)およびii)と一緒に適用される。この場合、成分i)およびii)ならびに化学的酸化剤は、好ましくは同じ化粧用組成物中にあり、単一の工程でケラチン繊維に適用される。本発明のこの特定の方法によれば、該繊維に適用される組成物は、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含有し、アンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤およびその誘導体も含有し、かつ1種または複数の化学的酸化剤をさらに含有する。
【0086】
好ましくは、化学的酸化剤は、成分i)およびii)を含む組成物の全重量に対して、0.001%から12%の割合で存在する。
【0087】
より具体的には、化学的酸化剤は、過酸化水素である。
【0088】
本発明の方法の別の好ましい変形によれば、酸化は、いずれの化学的酸化剤も不存在下で空気中の酸素によって行われる。言い換えれば、いずれの染色方法の工程も、空気中の酸素以外の酸化剤を必要としない。
【0089】
本発明の好ましい染色方法によれば、化粧用組成物は、単一の工程で適用され、1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含有し、アンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤も含有し、化学的酸化剤をまったく含有せず、染色は、空気中の酸素のみで行われる。
【0090】
本染色方法の別の好ましい実施形態によれば、成分i)、すなわち、上に定義されたとおりの式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含有する組成物は、酸化触媒も含有する。一例として、この触媒は、グルコン酸マンガンまたはグルコン酸亜鉛であり得る。
【0091】
空気中で行われる酸化のための放置時間は、3から120分間である。好ましくは、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含有する組成物の適用後、この組成物は、10から60分間作用するように放置される。
【0092】
適用は、酸化性および塩基性条件下で、1または複数の工程で行われ得る。
【0093】
別の実施形態によれば、本発明による染色方法は、ジヒドロキシインドールおよび/またはジヒドロキシインドリン誘導体、特に5,6-ジヒドロキシインドールおよび/または5,6-ジヒドロキシインドリンを有して、行われる。
【0094】
さらに別の実施形態によれば、本発明による染色方法は、ジヒドロキシインドールおよびジヒドロキシインドリン誘導体のいずれも、特に5,6-ジヒドロキシインドールおよび5,6-ジヒドロキシインドリンのいずれも有しないで、行われる。
【0095】
本染色方法の別の特定の実施形態によれば、成分i)、すなわち、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含有する組成物は、従来用いられる1種または複数の媒染剤も含有する。この処理は特に、上に定義されたとおりの式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含む本発明による組成物の適用前に、または染色方法後に行われる。一例として、媒染剤は、硫酸鉄であり得る。
【0096】
本発明の特定の変形は、ケラチン繊維が、異なる工程で、成分i)上に定義されたとおりの1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体;成分ii)アンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤;場合によって、成分iii)1種または複数の酸化剤;場合によって成分iv)1種または複数の酸化触媒;および場合によって、成分v)1種または複数の媒染剤で処理される染色方法からなる。
【0097】
上に定義されたとおりの式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体を含む、本発明による組成物の適用後、および塩基性化剤、場合によって酸化触媒、および場合によって媒染剤による処理のそれぞれの工程間の放置時間は、3から120分間、好ましくは10から60分間、より具体的には15から45分間で設定される。
【0098】
どんな適用の方法でも、適用温度は、一般に周囲温度から80℃、より具体的には15℃から45℃である。したがって、上に定義されたとおりの成分i)からv)を含む組成物の適用後に、30から60℃の温度で加熱することによる加熱処理を頭髪に施すことが有利に可能である。実際、この作業は、理髪用フード、ヘアドライヤー、赤外線ディスペンサおよび他の従来の加熱装置によって行われ得る。
【0099】
加熱する手段および頭髪を整える手段の両方として、加熱アイロンを60から220℃、好ましくは120から200℃の温度で使用することが可能である。
【0100】
本発明の1つの特定の実施形態は、周囲温度(25℃)で行われる染色方法に関する。
【0101】
上に定義されたとおりの成分i)からv)のケラチン繊維への適用後、前記頭髪の房は、好ましくは、水ですすぎ洗いされ、従来のシャンプーで洗われ、上に記載されたような手段で乾燥される。
【0102】
本発明の特定の染色方法によれば、成分i)からii)を含む組成物は、ケラチン繊維、特に毛髪に1工程で適用され、次いで、15から60分間、好ましくは30分間放置され、次いで、前記繊維は、水ですすぎ洗いされ、従来のシャンプーで洗われ、乾燥される。
【0103】
上に記載された方法の特定の実施形態および変形のすべてにおいて、言及された組成物は、2種以上の組成物、特に染色キットに存在する組成物の即座の混合から生じ得る、すぐに使用できる組成物である。
【0104】
iv)染色装置または「キット」
本発明の別の主題は、マルチコンパートメント染色装置または染色「キット」である。有利には、この装置は、以下の成分が分配される、2〜5種の組成物を収容する2から5つのコンパートメントを備える:
- i)上に定義されたとおりの式(I)の1種または複数の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体、
- ii)上に定義されたとおりの1種または複数の塩基性化剤、
- iii)場合によって、1種もしくは複数の化学的酸化剤および/またはiv)1種もしくは複数の酸化触媒、ならびに
- v)場合によって、1種または複数の媒染剤。
【0105】
同一または異なっていてもよい、適当な適用手段、例えば、塗装用はけ、ブラシまたはスポンジを場合によって伴って、本発明による装置の組成物は、別個のコンパートメントに詰められる。
【0106】
上記の装置は、毛髪上に所望の混合物を送達するための手段、例えば、仏国特許第2586913号に記載された装置などを備えていることもできる。
【0107】
(実施例)
(染色実施例)
化合物(1)および(20)は、市販されている。化合物(2)は、Journal of Physical Chemis
try A、2007年 111(2)、345〜351頁に記載された合成経路を用いて得ることができる。
【0108】
A)過酸化水素水溶液(H2O2)+水酸化ナトリウム(NaOH)プロトコル:
i)4mlの水および4mlのエタノール中300mgの式(I)の化合物を含有する混合物に、ii) 1mlの0.01モル/lの水酸化ナトリウム、次いで、iii)1mlの6%過酸化水素水溶液を添加する。この組成物を、90%白髪を含む0.5gの天然毛髪の房に適用する。この調製物を周囲温度で30分間放置し、次いで、この頭髪の房を水ですすぎ洗いし、シャンプーで洗い、乾燥させる。
【0109】
H2O2+NaOHプロトコルの視覚および嗅覚の染色結果
以下の結果が得られた:
【0110】
【表2】

【0111】
アンモニア水の不存在にもかかわらず、毛髪は、染色の間にとがめるべき不快な臭気がまったくなく、強力で、有色かつしっかり着色する。さらに、この繊維の化粧上の態様は、尊重されるものである(手で触った感覚)ことが留意されるべきである。
【0112】
B)空気中酸素(O2)+NaOHプロトコル:
i)4mlの水および4mlのエタノール中300mgの式(I)の化合物を含有する混合物に、ii)2mlの0.01モル/lの水酸化ナトリウムを添加する。
【0113】
この溶液を、90%白髪を含む0.5gの天然毛髪の房に適用する。この調製物を、iii)空気中酸素で30分間酸化し、次いで、頭髪の房を水ですすぎ洗いし、シャンプーで洗い、乾燥させる。
【0114】
O2+NaOHプロトコルの視覚および嗅覚の染色結果
以下の結果が得られる:
【0115】
【表3】

【0116】
アンモニア水および化学的酸化剤の不存在にもかかわらず、毛髪は、有色の様式で着色する。さらに、毛髪の処理の間に、不快な臭気は存在しなかった。繊維の化粧上の態様は、尊重されるものである(手で触った感覚)ことも留意されるべきである。
【0117】
C)空気中の酸素+炭酸カリウム(K2CO3)プロトコル:
i)1.75mlの水および0.75mlのエタノール中75mgの式(I)の化合物を含有する混合物に、pH10.7に到達するようにii)炭酸カリウムを添加する。
【0118】
この溶液を、90%の白髪を含有する0.5gの天然毛髪の房に適用する。この調製物を空気中酸素で30分間酸化し、次いで、頭髪の房を水ですすぎ洗いし、シャンプーで洗い、乾燥させる。
【0119】
O2+K2CO3プロトコルの視覚および嗅覚の染色結果:
以下の結果が得られる:
【0120】
【表4】

【0121】
アンモニア水および化学的酸化剤の不存在にもかかわらず、毛髪は、有色の様式で着色する。さらに、毛髪の処理の間に、不快な臭気は存在しなかった。繊維の化粧上の態様は、尊重されるものである(手で触った感覚)ことも留意されるべきである。
【0122】
D)空気中の酸素+モノエタノールアミン(MEA)プロトコル:
i)1.75mlの水および0.75mlのエタノール中75mgの式(I)の化合物を含有する混合物に、pH9.5に到達するようにii)モノエタノールアミンを添加する。
【0123】
この溶液を、90%の白髪を含有する0.5gの天然毛髪の房に適用する。この調製物を空気中酸素で30分間酸化し、次いで、頭髪の房を水ですすぎ洗いし、シャンプーで洗い、乾燥させる。
【0124】
O2+MEAプロトコルの視覚および嗅覚の染色結果:
以下の結果が得られた:
【0125】
【表5】

【0126】
アンモニア水および化学的酸化剤の不存在にもかかわらず、毛髪は、有色の様式で着色する。さらに、毛髪の処理の間に、不快な臭気は存在しない。繊維の化粧上の態様は、尊重されるものである(手で触った感覚)ことも留意されるべきである。
【0127】
E)従来技術による比較(国際公開第94/18937号)
空気+アンモニア水存在下の1,8-ジヒドロキシナフタレン化合物(20)
i)1.75mlの水および0.75mlのエタノール中75mgの式(I)の化合物を含有する混合物に、pH9.5に到達するようにii)アンモニア水を添加する。
【0128】
この溶液を、90%の白髪を含有する0.5gの天然毛髪の房に適用する。この調製物を空気中酸素で30分間酸化し、次いで、頭髪の房を水ですすぎ洗いし、シャンプーで洗い、乾燥させる。
【0129】
O2+NH3プロトコルの視覚および嗅覚の染色結果:
以下の結果が得られた:
【0130】
【表6】

【0131】
本発明によるプロトコルC)およびD)と違って、アンモニア水の存在にもかかわらず、毛髪はほとんど着色しない。さらに、とがめられる不快な臭気が存在しない本発明による方法CおよびDと違って、毛髪の処理の間に、不快な臭気が存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維の染色方法であって、前記繊維を
- i)1種または複数の式(I):
【化1】

の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体、その無機もしくは有機の酸もしくは塩基、その光学異性体、その幾何異性体、その互変異性体、および/またはその水和物などの溶媒和物;
[式(I)中:
R1およびR6は、互いに独立に、
- 水素原子、
- C1〜C4アルキル基(これは、1個または複数のヒドロキシル基または(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)、
- カルボン酸基-CO2H、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- (C1〜C4)アルキルカルボニル基(これは、(C1〜C4)アルキルカルボニル基または(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)、
- C1〜C4アルコキシ基、
- カルボキシアルデヒド基-CHO、
- スルホン酸基-SO3H
を表し;
R2およびR5は、互いに独立に、
- 水素原子、
- ヒドロキシル基、
- C1〜C4アルキル基(これは、1個または複数のヒドロキシル基または(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)、
- カルボン酸基-CO2H、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- (C1〜C4)アルキルカルボニル基(これは、ヒドロキシル基で官能基化され得る)、
- C1〜C4アルコキシ基、
- カルボキシアルデヒド基-CHO、
- スルホン酸基-SO3H
を表し;
R3およびR4は、互いに独立に、
- 水素原子、
- ヒドロキシル基、
- C1〜C4アルキル基(これは、1個または複数のヒドロキシル基または(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)、
- カルボン酸基-CO2H、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- (C1〜C4)アルキルカルボニル基(これは、(C1〜C4)アルキルカルボニル基または(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)
を表し;
R1およびR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、オキソ基、例えば、ピロン、特に4-ピロンで場合によって置換されたヘテロ環(これは、1個または2個のC1〜C4アルキル基で官能基化され得る):
【化2】

(RおよびR'は、同じかまたは異なっていてもよく、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表し:好ましくは、RおよびR'は、水素原子を表す、またはR'は、水素原子を表し、Rは、C1〜C4アルキル基を表す)
を形成することができる];
ならびに
- ii)アンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤
で処理することによる染色方法であり;
・式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体および塩基性化剤は、ケラチン繊維に同時にまたは連続的に適用することができ、かつ
・前記染色方法は、アンモニア水を必要としない
ことが理解される、染色方法。
【請求項2】
式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体が、R1およびR6は、互いに独立に、
- 水素原子、
- C1〜C4アルキル基、
- カルボン酸基-CO2H、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- (C1〜C4)アルキルカルボニル基(これは、(C1〜C4)アルキルカルボニル基または(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)
を表すものである、請求項1に記載の染色方法。
【請求項3】
式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体が、R3およびR4は水素原子を表すものである、請求項1または2に記載の染色方法。
【請求項4】
式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体が、R2およびR5は、互いに独立に、
- 水素原子、
- ヒドロキシル基、
- C1〜C4アルキル基(これは、(C1〜C4)アルコキシカルボニル基で官能基化され得る)、
- (C1〜C4)アルコキシカルボニル基、
- C1〜C4アルコキシ基、
- スルホン酸基-SO3H
を表すものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項5】
式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体が、以下の化合物:
【表1A】

【表1B】

【表1C】

ならびにそれらの光学異性体、それらの幾何異性体、それらの互変異性体、それらの水和物およびそれらの有機または無機塩基との付加塩から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項6】
式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体が、化合物(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(10)、(13)および(20)から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項7】
i)式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体およびii)塩基性化剤が、化粧用組成物中に一緒にあり、次いで、前記組成物が、ケラチン繊維に適用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項8】
アンモニア水以外の塩基性化剤が、化粧用組成物のpHが、8から12、特に9から11であるような量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項9】
アンモニア水以外の塩基性化剤が、アルカノールアミン(モノ-、ジ-およびトリエタノールアミンなど)、アルカリ金属炭酸塩、グアニジン、イミダゾール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウム、およびアルギニンならびに式(II):
【化3】

(式(II)中、
- Wは、1個もしくは複数のヘテロ原子(酸素原子など)、または1個もしくは複数の基NR(ここで、Rは、水素原子、または(ヒドロキシル)(C1〜C6)アルキル基を表す)で場合によって中断された(C1〜C10)アルキレン基であり、前記アルキレン基は、1個または複数のヒドロキシル基または(C1〜C4)アルキル基で場合によって置換されており;
Wは、特に、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルキル基で場合によって置換されたプロピレン基を表し;
- Ra、Rb、RcおよびRdは、同じまたは異なっていてもよく、水素原子、C1〜C4アルキル基またはC1〜C4ヒドロキシアルキル基を表す)
の化合物から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項10】
空気中の酸素以外の1種または複数の化学的酸化剤を、
a)i)式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体およびii)塩基性化剤と同時に;
または
b)追加の工程で
使用し;好ましくは、前記化学的酸化剤が、成分i)およびii)と同時に存在し、特に前記化学的酸化剤が、請求項7に定義されたとおりの化粧用組成物中に存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項11】
化学的酸化剤が、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属臭素酸塩、過酸基塩(過ホウ酸塩および過硫酸塩など)、またはいくつかの過酸化水素発生系、例えば:
- 過酸化水素を放出し得るポリマー複合体、例えば、ポリビニルピロリドン/H2O2(特に粉末の形態で)、および他のポリマー複合体;
- 水中で過酸化水素を発生する金属過酸化物、例えば、過酸化カルシウムまたは過酸化マグネシウム;
- 適当な基質(例えば、グルコースオキシダーゼの場合のグルコースまたはウリカーゼの場合の尿酸)の存在下で過酸化水素を生成するオキシダーゼ;ならびに酵素(それらの中で、ペルオキシダーゼ、2-電子オキシドレダクターゼ(ウリカーゼなど)、および4電子オキシゲナーゼ(ラッカーゼなど)を挙げることができる)
から選択され、
好ましくは、前記化学的酸化剤は、過酸化水素である、請求項1から10のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項12】
化学的酸化剤をまったく使用しない、請求項1から9のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項13】
1種または複数の酸化触媒を使用する;特に、前記触媒は、請求項7に記載の化粧用組成物中に成分i)およびii)と一緒にあり、マンガン(Mn)塩、亜鉛(Zn)塩、鉄(Fe)塩および銅(Cu)塩から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項14】
芳香族アミンタイプの酸化ベースおよび/またはカプラーをまったく使用しない、請求項1から13のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項15】
ケラチン繊維を染色するための、i)請求項1から6のいずれか一項に定義されたとおりの1種または複数の式(I)の化合物およびii)請求項8または9に定義されたとおりのアンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤の使用。
【請求項16】
i) 請求項1から6のいずれか一項に定義されたとおりの、1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体、および
ii) 請求項8または9に定義されたとおりのアンモニア水以外の1種または複数の塩基性化剤;
(但し、式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体は、
【化4】

を表さないことを条件とする)
を含む化粧用組成物。
【請求項17】
請求項11に定義されたとおりの1種または複数の化学的酸化剤を含む、請求項16に記載の化粧用組成物。
【請求項18】
以下の成分が分配される、2から5種の組成物を収容する2から5つのコンパートメントを備えるマルチコンパートメント装置:
-i) 請求項1から6のいずれか一項に定義されたとおりの1種または複数の式(I)の1,8-ジヒドロキシナフタレン誘導体;
-ii) 請求項9に定義されたとおりの1種または複数の塩基性化剤;
-iii) 場合によって、請求項11に定義されたとおりの1種もしくは複数の化学的酸化剤および/またはiv)請求項13に定義されたとおりの1種もしくは複数の酸化触媒;ならびに
-v) 場合によって、1種または複数の媒染剤。

【公表番号】特表2013−512861(P2013−512861A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533642(P2012−533642)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065484
【国際公開番号】WO2011/045403
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】