説明

少量のフッ素化界面活性剤を有するポリテトラフルオロエチレンの水性分散液

本発明は、非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液を製造する方法であって、(a)最終的な量のポリテトラフルオロエチレン固体を生成する量のテトラフルオロエチレン、および任意に、テトラフルオロエチレンの量を基準にして1重量%までの過フッ素化コモノマーを水性乳化重合する段階であって、前記水性乳化重合がラジカル開始剤で開始され、重合がフッ素化界面活性の存在下で行われ、かつ前記量のテトラフルオロエチレンの供給が完了する前であるが、前記量のテトラフルオロエチレンの少なくとも80重量%を供給した後に、ポリテトラフルオロエチレンポリマーにおいてイオン性末端基またはその前駆体を導入することができるラジカルを、対策なしで、少なくとも20%の重合速度の増加が起こるであろう割合で形成させる段階;(b)このようにして得られた水性分散液におけるフッ素化界面活性剤の量を、ポリテトラフルオロエチレン固体の量を基準にして、200ppm以下、好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下の量に低減する段階;を含む方法を提供する。本発明は、ポリテトラフルオロエチレン粒子の水性分散液および基材のコーティングにおけるその使用をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量のフッ素化界面活性剤を有するポリテトラフルオロエチレンの水性分散液に関する。本発明は、かかる水性分散液を調製する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー、つまりフッ素化主鎖を有するポリマーが長い間知られており、耐熱性、耐薬品性、耐候性、紫外線安定性等のいくつかの望ましい特性のために、様々な用途において使用されている。種々のフルオロポリマーが例えば、(非特許文献1)に記載されている。フルオロポリマーは、一般に少なくとも40重量%フッ素化で部分フッ素化された主鎖、または完全にフッ素化された主鎖を有し得る。フルオロポリマーの詳細な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー(FEPポリマー)、パーフルオロアルコキシコポリマー(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデン(THV)とのターポリマー、およびポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)が挙げられる。
【0003】
特にPTFE分散液は、PTFEの固有の、および望ましい化学的および物理的性質のために、広範な用途に使用されている。例えば、PTFE分散液は、PTFEの耐熱性および非付着性のために、調理器具などの金属製基材をコーティングするためのコーティング組成物を製造するのに多く使用される。PTFEの耐薬品性および耐食性は、化学製造工場などの工業用途において利用されている。その無類の耐候安定性のために、PTFEはさらに、建築用織物用のガラス織布をコーティングするために使用されている。PTFE分散液の製造および処理についての詳細は、(非特許文献2)に記載されている。
【0004】
PTFEの水性分散液は一般に、水性乳化重合によって得られる。水性乳化重合は一般に、非テロゲン(non−telogenic)フッ素化界面活性剤の存在下にて行われる。多用されている素化界面活性剤としては、パーフルオロオクタン酸およびその塩、特にアンモニウムパーフルオロオクタン酸が挙げられる。使用されている他のフッ素化界面活性剤としては、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)および(特許文献7)に開示されているようなパーフルオロポリエーテル界面活性剤が挙げられる。使用されているさらに他の界面活性剤が、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)および(特許文献15)に開示されている。PTFEを製造するために水性乳化重合法はよく知られており、例えば(特許文献16)、(特許文献17)、(特許文献18)および(特許文献19)に記載されている。
【0005】
TFEの水性乳化重合は、いわゆるペースト製品(paste ware)と呼ばれる樹脂微粉末を製造するために工業的規模でも使用される。樹脂微粉末を製造するために、コア・シェル重合が広く使用されており、樹脂粉末の特定の特性およびそれで製造された物品の特定の最終用途特性が得られる。一般に、コア・シェル重合によって、樹脂粉末粒子のシェルにおいて非常に高い分子量のポリマーが生成され、コアにおいて著しく低い分子量が得られる。
【0006】
PTFEのコア・シェル重合は、PTFEの特定の特性を改善することも記述されている。例えば、PTFEのコア・シェル重合は、(特許文献17)、(特許文献20)および(特許文献21)に記載されている。(特許文献22)には、樹脂、エラストマーまたは塗料における優れたブレンド特性および分散特性を有するPTFEを得るためのコア・シェル重合が開示されている。PTFE粒子のシェルは、分子量約10,000〜800,000g/molを有することがこの特許において教示されている。コア・シェル粒子のシェルにおいて低分子量を達成するために、連鎖移動剤が一般に使用される。
【0007】
(特許文献23)には、少なくとも5の長さ対直径比を有する棒状PTFE粒子を少なくとも1.5重量%含有するコア・シェルPTFE分散液が教示されている。分散液中のPTFE粒子の大部分は円柱状であり、つまり、1.5以上の長さ対直径比を有する。かかる分散液は、高い限界亀裂厚さと共に向上した剪断安定性を有することが教示されている。しかしながら、非球形粒子を製造するためには、重合条件を注意深く制御する必要がある。さらに、(特許文献23)には、重合の最後の段階中にテロゲン剤(telogenic agent)を使用することが教示されており、それによって、かなりの量の非常に低い分子量のPTFEが生成され、PTFEの望ましい特性が損なわれる可能性がある。
【0008】
水性乳化重合に続いて、得られた分散液は一般に、さらに濃縮され、一般に40〜70重量%である、目的のフルオロポリマー固体が得られる。濃縮の方法としては、例えば(特許文献24)に開示されている熱的濃縮(thermal upconcentration)、限外濾過、および(特許文献25)に開示されているデカンテーションが挙げられる。一般に、分散液は、非イオン界面活性剤などの安定化界面活性剤の存在下にて濃縮される。
【0009】
水性乳化重合で一般に使用されるフッ素化界面活性剤の存在に対して生じている、いくつかの環境的問題のため、およびかかる界面活性剤がかなり高価であることから、PTFE分散液などの水性フルオロポリマー分散液からフッ素化界面活性剤を除去および回収する方法が開発されている。PTFE分散液からフッ素化界面活性剤を回収するのに特に有効な方法が、(特許文献26)に開示されている。この方法は、フルオロポリマー分散液を陰イオン交換体と接触させ、それによってフッ素化界面活性剤が陰イオン交換樹脂に結合し、その結果、フッ素化界面活性剤が水性分散液から有効に除去されることを含む。フッ素化界面活性剤は一般に、物理的吸着の結果として陰イオン交換樹脂に結合し、それが樹脂のアニオンと置き換わる、イオン交換部位に結合する。一般に、この方法によって、フルオロポリマー固体の重量を基準にして、100ppm以下、しばしば50ppm以下のフッ素化界面活性剤残留量が達成される。
【0010】
多くの用途において、重合および濃縮後に得られるPTFE分散液は、更なる添加剤または成分と合わせられ、最終組成物が生成される。例えば、特に調理器具をコーティングするための金属コーティングにおいて、最終組成物は、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはポリアリーレン硫化物などの耐熱性ポリマーをPTFE分散液とさらにブレンドすることによって得られる。金属をコーティングするための最終コーティング組成物を得るために、顔料およびマイカ粒子などのさらに他の成分も添加することができる。かかる更なる成分は一般に、トルエン、キシレンまたはN−メチルピロリドンなどの有機溶媒中に分散される。フルオロポリマー分散液は一般に、最終組成物の約10〜80重量%に相当する。金属コーティングのためのコーティング組成物およびそれに使用される成分は、例えば(特許文献27)、(特許文献28)、(特許文献29)および(特許文献30)に記載されている。
【0011】
例えば上述のように、フッ素化界面活性剤含有しない、またはほとんど含有しないPTFE分散液を使用して最終コーティング組成物を調製する場合、最終組成物の調製時に、特にフッ素化界面活性剤のレベルが非常に低い場合に、凝固が起こり得ることが現在見出されている。さらに、例えば調理器具用の金属基材などの基材への最終コーティング組成物の適用に問題が生じる。例えば、吹付け塗りした場合には、しばらくしてコーティング用ダイの目詰りが起こる。さらに、例えばガラス布をコーティングするためのコーティングステーションに分散液を送るポンプシステムにおいて凝固が起こる。さらに、過剰なコーティング組成物がドクターブレードによって除去された場合には、分散液に凝固が起こり得る。
【0012】
このように、フッ素化界面活性剤がそれから除去された、水性PTFE分散液の優れた貯蔵安定性にもかかわらず、かかる分散液には、それが更なるコーティング成分と合わせられた、最終コーティング組成物の製造および/または適用において凝固の問題がある。
【0013】
したがって、前述の問題を克服する、または少なくとも緩和することが望ましい。望ましくは、前述の問題は、PTFEおよびそれで製造されたコーティングの優れた機械的および物理的性質を損なうことなく、または実質的に損なうことなく緩和または解決される。その解決策は容易かつ簡便であり、対費用効果が高く、環境に優しいことが好ましい。
【0014】
【特許文献1】EP 1059342
【特許文献2】EP 712882
【特許文献3】EP 752432
【特許文献4】EP 816397
【特許文献5】米国特許第6,025,307号明細書
【特許文献6】米国特許第6,103,843号明細書
【特許文献7】米国特許第6,126,849号明細書
【特許文献8】米国特許第5,229,480号明細書
【特許文献9】米国特許第5,763,552号明細書
【特許文献10】米国特許第5,688,884号明細書
【特許文献11】米国特許第5,700,859号明細書
【特許文献12】米国特許第5,804,650号明細書
【特許文献13】米国特許第5,895,799号明細書
【特許文献14】国際公開第00/22002号パンフレット
【特許文献15】国際公開第00/71590号パンフレット
【特許文献16】米国特許第2,434,058号明細書
【特許文献17】米国特許第2,965,595号明細書
【特許文献18】DE 25 23 570
【特許文献19】EP 030 663
【特許文献20】米国特許第3,142,665号明細書
【特許文献21】EP 525 660
【特許文献22】EP 481 509
【特許文献23】国際公開第02/072653号パンフレット
【特許文献24】米国特許第4,369,266号明細書
【特許文献25】米国特許第2,037,953号明細書
【特許文献26】国際公開第00/35971号パンフレット
【特許文献27】国際公開第02/78862号パンフレット
【特許文献28】国際公開第94/14904号パンフレット
【特許文献29】EP 22257
【特許文献30】米国特許第3,489,595号明細書
【特許文献31】米国特許第5,285,002号明細書
【特許文献32】国際公開第02/072653 A2号パンフレット
【特許文献33】DE 100 18 853
【特許文献34】GB 642,025
【特許文献35】米国特許第3,037,953号明細書
【特許文献36】EP 818506
【特許文献37】米国特許第5,576,381号明細書
【特許文献38】EP 969 055
【特許文献39】EP 990 009
【特許文献40】国際公開第03/020836号パンフレット
【特許文献41】国際公開第02/14065−A1号パンフレット
【特許文献42】PCT/US01/41760
【非特許文献1】“Modern Fluoropolymers”,edited by John Scheirs,Wiley Science 1997
【非特許文献2】Fluoroplastics,Vol.1,“Non−melt processible fluoroplastics”,p.168−184,Sina Ebnesajjad,Plastics Design Library,Norwich,NY 13815,publ.2000
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、30〜70重量%の量の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン粒子およびポリテトラフルオロエチレン固体の重量を基準にして2〜15重量%、好ましくは3〜12重量%の量の非イオン界面活性剤を含有する非溶融加工性のポリテトラフルオロエチレン水性分散液が提供され、その分散液は、フッ素化界面活性剤を含有しないか、またはポリテトラフルオロエチレン固体の量を基準にして、200ppm以下の量でフッ素化界面活性剤を含有する。非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン粒子の少なくとも一部は、ポリテトラフルオロエチレンポリマー鎖において有効量のイオン性末端基を含み、その結果、以下の組成:
前記有効量のイオン性末端基を有する非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン粒子58重量%;
固体の全重量を基準にして、平均9〜10個のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールモノ[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]エーテルからなる非イオン界面活性剤(トリトン(Triton)(商標)X−100として入手可能)5重量%;
フッ素化界面活性剤100ppm未満;を有し、かつ
少なくとも500μS/cmの電気伝導率を有するその水性分散液は、ポリテトラフルオロエチレン粒子が150nm以上である場合には、少なくとも3分、好ましくは少なくとも4分の剪断安定性を有し、またはその粒径が150nm未満である場合には、少なくとも4分、好ましくは少なくとも5分の剪断安定性を有し、その剪断安定性は、温度20℃および攪拌速度8000rpmで水性分散液150gをキシロール2gと攪拌することによって測定される。
【0016】
「非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン」という用語は、ポリテトラフルオロエチレンの溶融粘度が非常に高く、従来の溶融加工装置を使用して、ポリテトラフルオロエチレンを加工することができないことを意味する。これは一般に、溶融粘度が>1010Pa.sであることを意味する。本発明による水性分散液は、分散液が更なる成分、特に有機溶媒と合わせられた、最終コーティング組成物の製造および/適用時に凝固を生じる問題が少ないことと併せてフッ素化界面活性剤の量が少ないために、環境に優しいという利点を提供することができる。この分散液は、便利に、かつ費用効果的に製造することができる。
【0017】
このように、更なる態様において、本発明は、非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液を製造する方法であって:
(a)最終的な量のポリテトラフルオロエチレン固体を生成する量のテトラフルオロエチレン、および任意に、テトラフルオロエチレンの量を基準にして1重量%までの過フッ素化コモノマーを水性乳化重合する段階であって、前記水性乳化重合がラジカル開始剤で開始され、重合がフッ素化界面活性の存在下で行われ、かつ前記量のテトラフルオロエチレンの供給が完了する前であるが、前記量のテトラフルオロエチレンの少なくとも80重量%を供給した後に、ポリテトラフルオロエチレンポリマーにおいてイオン性末端基またはその前駆体を導入することができるラジカルを、対策なしで、少なくとも20%の重合速度の増加が起こるであろう割合で形成させる段階;
(b)このようにして得られた水性分散液におけるフッ素化界面活性剤の量を、ポリテトラフルオロエチレン固体の量を基準にして、200ppm以下、好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下の量に低減する段階;
を含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
重合プロセス
PTFEの水性分散液は、TFEの水性乳化重合を用いて製造される。本発明に従って生成されるPTFEは、変性PTFEを含み、したがって、重合は任意に、例えば過フッ素化ビニルエーテルまたは過フッ素化C3−C8オレフィン、例えばヘキサフルオロプロピレンなどの過フッ素化コモノマーの使用を含む。本発明と関連して使用される「過フッ素化モノマー」という用語は、炭素およびフッ素原子からなるモノマーを含むだけでなく、例えばクロロトリフルオロエチレンなど、そのフッ素原子のいくつかが塩素または臭素によって置換されたモノマーも含む。それにもかかわらず、本発明と関連する過フッ素化モノマーは、分子中に水素原子を持たないほうがよい。かかる任意のコモノマー(1種または複数種)の量は一般に、モノマー供給物の総量の1重量%を超えない。その量が1%を超える場合には、得られるPTFEはおそらく溶融加工性であり、非溶融加工性PTFEを定義するISO 12086基準にもはや適合しないだろう。
【0019】
水性乳化重合はフッ素化界面活性剤の存在下で行われる。PTFE粒子を十分に安定化し、PTFE粒子の所望の粒径を得るのに有効な量のフッ素化界面活性剤が通常、使用される。フッ素化界面活性剤の量は一般に、水性乳化重合で使用される水の量を基準にして、0.03〜1重量%、好ましくは0.08〜0.5重量%である。
【0020】
フッ素化モノマーの水性乳化重合に使用することが知られている、またはその使用に適しているフッ素化界面活性剤のいずれかを使用することができる。特に適しているフッ素化界面活性剤は、非テロゲン(non−telogenic)であり、かつ次式:
Q−Rf−Z−Ma(I)
(式中、Qは、ハロゲン、ClまたはFを表し、ここでQは、末端位置に存在するか、または存在せず;Rfは、炭素原子4〜15個を有する直鎖状または分枝鎖過フッ素化アルキレンを表し;Zは、COO-またはSO3-を表し、Maは、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンを含むカチオンを表す)に相当するものを含む、一般にアニオン性のフッ素化界面活性剤である。
【0021】
上記の式(I)による乳化剤の代表的な例は、パーフルオロアルカン酸およびその塩、例えばパーフルオロオクタン酸およびその塩、特にアンモニウム塩である。
【0022】
使用することができる他のフッ素化界面活性剤としては、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)に開示されているようなパーフルオロポリエーテル界面活性剤が挙げられる。使用されている他の界面活性剤は、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)および(特許文献15)に開示されている。
【0023】
TFEの水性乳化重合は、ラジカル開始剤で開始される。TFEの水性乳化重合を開始することが知られている、または開始するのに適している開始剤のいずれかを使用することができる。適している開始剤としては、有機開始剤ならびに無機開始剤が挙げられるが、後者が一般に好ましい。使用することができる無機開始剤としては、例えば過硫酸、過マンガン酸またはマンガン酸(1種または複数種)のアンモニウム塩、アルカリ塩またはアルカリ土類塩が挙げられる。過硫酸塩開始剤、例えば、過流酸アンモニウム(APS)を単独で使用するか、または還元剤と組み合わせて使用してもよい。適切な還元剤としては、例えば硫酸水素アンモニウムまたはメタ重亜硫酸ナトリウムなどの重亜硫酸塩、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウムまたはチオ硫酸ナトリウムなどのチオ硫酸塩、ヒドラジン、アゾジカルボキシレートおよびアゾジカルボキシルジアミド(ADA)が挙げられる。使用することができる他の還元剤としては、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(ドイツ、ルートウィヒスハーフェンのBASF社(BASF Co.,Ludwigshafen,Germany)からロンガリット(Rongalite)(登録商標)として市販されている)、または(特許文献31)に開示されているフルオロアルキルスルフィン酸塩が挙げられる。還元剤は一般に、過硫酸塩開始剤の半減期の期間を低減する。さらに、例えば銅、鉄または銀塩などの金属塩触媒を添加することができる。一般に、第二マンガンまたは過マンガン酸ベースの開始剤を使用した場合、第二マンガンイオンは、得られた分散液を陽イオン交換樹脂と接触させることによって、重合の後に除去される。
【0024】
重合は一般に、温度10〜100℃、好ましくは20℃〜90℃、圧力4〜30バール、好ましくは10〜25バールで行われるだろう。水性乳化重合システムはさらに、緩衝剤、錯形成剤およびガスキャリアなどの助剤を含み得る。TFEの重合は、強力に物質移動が制御され、したがって、重合速度は攪拌条件に強く依存する。TFEは、それが気相(ヘッドスペース)から水相中に補給されるよりも速く、重合によって消費される。この問題を軽減するために、重合は、ガスキャリアの存在下で行われる。これは一般に、水と比較して、TFEに対して実質的に高い溶解性を有する、水と不混和性の有機液体である。適切なガスキャリアは例えば、(特許文献32)に記載の重合条件下で液体であるパラフィンワックス、またはR113などのフレオン(Freon)である。ガスキャリアの量は一般に、水相の約10容積%である。
【0025】
特定の実施形態において、シード重合が用いられる。つまり、重合がフルオロポリマーの小粒子の存在下で開始され、一般にPTFE小粒子は、体積平均直径50〜100nmを有する。かかるシード粒子は、別々の水性乳化重合において生成され、水性乳化重合において水の重量を基準にして20〜50重量%の量で使用される。シード粒子を使用することによって、目的のPTFE粒径についてより良く制御することができ、重合中に爆発を起こす可能性のある、重合中の凝塊の形成を防ぐことができる。さらに、重合条件は、生成された粒子が一般に球形であるように、つまり粒子の2つの直交する主要な寸法の最も長い部分と最も短い部分との比が1.5未満、好ましくは1〜1.3であるように選択されることが一般に好ましい。したがって、重合は、例えば(特許文献23)に開示されているような、棒状または円柱状粒子の形成を起こさせる特別な対策をとることなく行われるべきであり、その結果、生成されるPTFE粒子の少なくとも90重量%、さらに好ましくは99重量%が球形であるだろう。球形粒子は好都合なことに、少量のHFPまたはパーフルオロアルキルビニルエーテルの存在下で重合を開始することによって得ることができる。
【0026】
重合の終わりに得ることができるポリマー固体の量は一般に、10%〜35重量%、好ましくは20%〜30重量%であり、得られるフルオロポリマーの平均粒径(体積平均直径)は一般に、50nm〜350nm、例えば100〜300nmである。小粒子のPTFE分散液は一般に、より安定な分散液を提供し、沈降速度が低く、一般により良い皮膜形成特性を提供する。
【0027】
本発明に従って、乳化重合の最終段階にて、ポリテトラフルオロエチレンポリマーにおいてイオン性末端基または前駆体を導入することができるラジカルを、対策なしで、少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、さらに好ましくは少なくとも35%、最も好ましくは少なくとも40%の重合速度の増加が起こるであろう割合で形成させる。いずれかの理論によって束縛されることなく、増加した量(未変更の重合の実施に対して)のイオン性末端基および/またはその前駆体がPTFEポリマーにおいて形成されると考えられる。これらのイオン性基(および相当するイオン性基に変換された場合には、その前駆体)は、PTFE粒子の表面に実質的に存在し、分散液のフッ素化界面活性剤のレベルを低減した後でさえ、後に、粒子を安定化し続け、その結果、上述のようにかかる分散液を更なる成分とブレンドして最終コーティング組成物を製造した場合に、高い剪断安定性が達成されると考えられる。
【0028】
「最終重合段階」とは、最終量のPTFEを製造するために、TFEの総量の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90重量%がその段階で重合に供給されている段階を意味する。「最終量のPTFE」とは、重合の最後で得られるPTFE固体の量を意味する。PTFE粒子を使用したシード重合を用いる場合、最終重合段階は、シード粒子を製造するために使用されるTFEの量を考慮することなく、シード重合に供給されるTFEの総量を基準にして決定される。一般に、最終重合段階が短いと、形成し得る低分子量PTFEの量が少なくなるだろう。しかしながら、一般に、最終重合段階が短い場合には、有効量のイオン性末端基を得るために、重合速度をより大きく増加することが望ましい。したがって、TFEの総量の少なくとも90重量%が重合に供給された時に最終重合段階が開始する場合、一般に、少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%の重合速度の増加が生じること(対策なく)が好ましく、TFEの総量の80重量%が重合に供給された時点で最終重合段階が開始する場合には、重合速度の増加は、20%を超える、または25%を超える必要はない。
【0029】
対策なしの重合速度の増加とは、その段階中にTFEの総量の10重量%が転化され、その段階が最終重合段階の直前に行われる重合段階における平均重合速度と、重合速度の増加が最終重合段階で起こることを避けるための対策がとられていない最終重合段階中の平均重合速度と、の間の重合速度の相対的な増加から決定される重合速度の増加を意味する。したがって、最終重合段階を80%で開始した場合には、重合速度の増加は、TFEの総添加の70%と80%の時点の間の平均重合速度と、最終段階、つまりTFEの量の80〜100%が添加されている段階での平均重合速度との間で決定される。
【0030】
ポリマーPTFEにおいてイオン性末端基またはその前駆体を導入することができるラジカル(以降、省略のために、「イオン性ラジカル」と呼ぶ)は、対策なしで、重合速度が少なくとも20%増加するような量で形成される。一般に、重合速度の増加または高すぎる増加を避けるための適切な対策をとることが好ましいが、本発明において、つまり重合の増加を生じさせるであろう対策をとらず、事実上、重合速度の増加が可能となることが企図される。重合の増加を軽減する、または完全に補うために、とることができる対策は、例えば、TFEがその圧力で重合に供給される圧力、または過フッ素化コモノマーの添加を下げることを含む。そうでなければ重合速度の増加を抑えるために、重合の最終段階中に同時供給される適切な過フッ素化コモノマーとしては、過フッ素化ビニルエーテル、例えば次式:
CF2=CF−O−Rf(II)
(式中、Rfは、1つまたは複数の酸素原子を含有する過フッ素化脂肪族基を表す)
の過フッ素化ビニルエーテルが挙げられる。具体的な例としては、パーフルオロアルキルビニルエーテル、例えばパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテルおよびパーフルオロn−プロピルビニルエーテル(PPVE−1)、パーフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、パーフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテルおよびパーフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテルが挙げられる。好ましいパーフルオロアルキルビニルエーテルは、気体であるか、または重合温度で少なくとも10kPaの蒸気圧を有する。適切な過フッ素化コモノマーの他の例としては、過フッ素化アリルエーテルおよび炭素原子3〜8個を有する過フッ素化オレフィン、例えばヘキサフルオロプロピレンが挙げられる。過フッ素化コモノマーとTFEとの同時供給比(co−feeding ratio)は一般に、重合速度を所望の速度に調節するように選択される。一般に、同時供給比は、モル基準で少なくとも0.015、一般に0.015〜0.07である。同時供給比は、添加されるコモノマーのモルと、最終重合段階の最初にヘッドペースに存在するTFEのモルとの比によって定義される。過フッ素化モノマーは、連続的に、またはバッチ式で同時供給される。一般に、重合の最終段階において連鎖移動剤を添加することによって、重合速度の増加を打ち消すことも可能である。しかしながら、連鎖移動剤はさらに、イオン性末端基またはその前駆体を形成することなく、最終重合段階においてPTFEの分子量を下げ、それは一般に望ましくないことから、このことは一般に好ましくないだろう。重合の増加を打ち消すための前述の過フッ素化コモノマーの使用は、かかる過フッ素化コモノマーを更なる成分とブレンドして最終コーティング組成物を生成した場合に、分散液の剪断安定性をさらに高めることが見出されていることから、最も好ましい。
【0031】
本発明の特定の実施形態に従って、最終重合段階で使用される過フッ素化コモノマーは、1つまたは複数のイオン性基またはその前駆体を含み得る。かかるコモノマーは、PTFE粒子の表面上に更なるイオン性基を導入することから、分散液の安定性を実質的にさらに高める利点を提供する。イオン性コモノマーにおけるイオン性基の例としては、酸性基またはその塩、例えばカルボン酸、スルホン酸、リン酸またはホスホン酸およびその塩が挙げられる。イオン性基の前駆体基の例としては、加水分解すると、例えばエステルなどのイオン性基を生じる基、加水分解すると、カルボン酸基またはその塩を生じる基、および加水分解すると、スルホン酸基またはその塩を生じるSO2F基が挙げられる。好ましくは、イオン性コモノマーは、例えば、1つまたは複数のイオン性基またはその前駆体を有する過フッ素化アリルまたはビニルエーテルを含む過フッ素化モノマーである。
【0032】
特定の実施形態に従って、イオン性コモノマーは、一般式:
CF2=CF−(−CFX)s−(OCF2CFY)t(O)h−(CFY’)u−A
(式中、sは、0または1であり、tは、0〜3であり;hは、0〜1であり;uは、0〜12であり;Xは、−F、−Clまたは−CF3であり;YおよびY’は独立して、−FまたはC110パーフルオロアルキル基を表し;Aは、アニオン性基またはその前駆体、−CN、−COF、−COOH、−COOR、−COOM、または−COONRR’、−SO2F、−SO3M、−SO3H、−PO32、−PO3RR’、−PO32を表し;Mは、アルカリ金属イオンまたは第4級アンモニウム基を表し;RおよびR’は、例えばC1-10アルキル基などの炭化水素基を表し、RおよびR’は同一または異なる)に相当する。
【0033】
他の実施形態に従って、イオン性コモノマーは、一般式:
CF2=CF−O−Rf−Z
(式中、Rfは、1つまたは複数の酸素原子によって任意に割り込まれるパーフルオロアルキレン基を表し、Zは、カルボン酸基、その塩またはその前駆体、例えば式COOR(Rは、アルキル基またはアリール基などの炭化水素基を表す)のエステル、またはスルホン酸基、その塩またはその前駆体、例えばSO2Fを表す)に相当する。一実施形態において、Rfは、炭素原子2〜8個を有するパーフルオロアルキレン基を表す。その代わりとして、Rfは、例えば、式AまたはB:
−(CF2n(O(CF2xm(CF2k−(A)
(式中、nは、1〜6の整数であり、xは、1〜5の整数であり、mは、1〜4の整数であり、kは、0〜6の整数である);
−[CF2CF(CF3)O]p−(CF2q
(式中、pは、1〜3の整数であり、qは、2〜4の整数である);
に相当する、パーフルオロエーテル基であり得る。
【0034】
イオン性コモノマーの具体的な例としては:
CF2=CF−O−(CF22−SO2
CF2=CF−O−(CF23−SO2
CF2=CF−O−(CF23−COOCH3
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−(CF22−COOCH3
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−(CF23−COOCH3
CF2=CF−O−[CF2CF(CF3)−O]2−(CF22−COOCH3
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−(CF22−SO2
CF2=CF−O−[CF2CF(CF3)−O]2−(CF22−SO2
が挙げられる。
【0035】
最終重合段階におけるイオン性ラジカルは、PTFEポリマーにおいてイオン性末端基またはその前駆体を形成するラジカルを形成することができる適切な源から形成される。好ましくは、イオン性末端基は、強酸性の基、好ましくは3以下のpKaを有する基である。かかる末端基の例としては、その塩を含むスルホン酸およびカルボン酸基が挙げられる。これらの基は、2以下のpKaを有する。好都合なことには、イオン性ラジカルは、上述のような無機開始剤または開始剤系から形成される。例えば、過硫酸塩、一般に過硫酸アンモニウム(APS)の熱分解から得られるラジカルは、PTFEポリマーにおいてカルボン酸基(−CF2−COOH)および/またはその塩を導入するだろう。還元剤として重亜硫酸塩を使用した場合、−CF2−SO3Hおよび/またはその塩が末端基として導入される。本発明にしたがって必要とされる有効量のイオン性末端基は非常に少なく、その正確な量は、赤外分析法または末端基滴定などの公知の分析法よって確実に定量化することができない。にもかかわらず、上記に記載の、かつ実施例に示される試験法によって、有効量を間接的に決定することができる。イオン性末端基の他に、イオン性末端基に変換される他の末端基も形成し得る。例えば分散液の塩基性pHにて加水分解によってカルボン酸末端基またはその塩に変換することができる、例えば、−COFおよび−CONH2末端基が形成し得る。したがって、かかる末端基は、イオン性末端基の適切な前駆体の例ということになる。
【0036】
重合速度を低減するための対策をとらない場合には、イオン性ラジカルは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、さらに好ましくは少なくとも35%、最も好ましくは少なくとも40%の重合速度の増加を生じさせるために、重合の最終段階で有効な量で形成される必要がある。必要量または有効量のイオン性ラジカルは様々な方法で生じさせることができる。例えば、無機開始剤を使用して、PTFEの重合を開始した場合、無機開始剤の分解速度は、更なる量の無機開始剤を添加することによって、重合温度を高めることによって、例えばAPSの場合など酸化還元開始剤系の場合に還元剤を添加することによって、重亜硫酸塩またはADAなどの還元剤を添加することによって、触媒を添加することによって、またはこれらの手段のいずれかの組み合わせによって、重合の最終段階において増加することができる。
【0037】
少なくとも20%の重合速度の増加を達成するために(対策なしで)、どの程度まで温度をあげる必要があるか、または更なる開始剤の量または無機開始剤の分解を促進する成分(例えば、還元剤または触媒)の量をどの程度まで重合の最終段階に添加する必要があるかは、対策がとられる時点での特定の重合条件としてのかかる因子に依存するだろう。一般に、有効量のイオン性ラジカルを形成させるためにとられる対策の程度は、以下の等式:
F=Rf/Ri(等式1)
(Riは、最終重合段階の開始直前(つまり、対策がとられる前)の時点で、重合を開始するラジカルが生成される速度であり、Rfは、最終重合段階(つまり、対策がとられた後)においてイオン性ラジカルが生成される速度である)
に従って定義されるラジカルのフラックス比Fに基づいて推定することができる。
【0038】
使用される開始剤系が、重合時間、つまり完全な重合を行うのに必要な時間の少なくとも約2倍の長い寿命を有する場合、重合速度の増加が更なる開始剤またはその成分を添加することによって起こるならば、以下の等式のうちの1つに従って、Fを計算または推定することができる:
F=mIs/mIk(等式2)
F=(mOS*RS)/(mOK*RK)(等式3)
F=(mOS*RS*CS)/(mOK*RK*CK)(等式4)
【0039】
上記の等式において、mは、インデックス文字によって示されるそれぞれの化合物の量を表し、最初のインデックス文字は化合物の性質を示し、Iは、他の成分を添加することなく、それ自体を分解する(例えば、触媒または還元剤の存在下にてAPSを熱分解する)単一の開始剤成分を表し、Oは、酸化還元系の酸化成分を表し、Rは、酸化還元の還元剤を表し、Cは、触媒を表し、第2のインデックス文字Sは、完全な重合中に添加される総量を表し、Kは、重合の最終段階中に添加される量を表す。重合のすべての段階において同一または同様な無機開始剤を使用する場合に、上記の等式が有効である。重合が単一の開始剤成分を使用して行われる場合には、等式2を使用することができ、酸化還元系を使用する場合には等式3が当てはまり、触媒も使用される場合には、等式4が当てはまる。例えば、重合のすべての段階においてAPSが使用される場合には、等式2を使用することができ、APS、重亜硫酸塩および銅などの金属触媒を含む系の場合には、等式4が使用される。
【0040】
非常に短い半減期を有する開始剤系について、例えば、APS、ADAをベースとし、かつ銅イオンで触媒される開始剤または開始剤系としての過マンガン酸塩などの場合には、一般に、前述のラジカルのフラックス比Fを計算することは不可能であるだろう。かかる場合には、ラジカルのフラックス比Fは以下のように推定することができる。かかる系で、開始剤またはその1つの成分が完全に消費されると想定すると、フラックス比は、最終重合段階前に重合されたTFE1kgあたりの開始剤の消費量と、最終重合段階において重合されたTFE1kg当たりの開始剤またはその1つの成分の消費量との比に近い。
【0041】
したがって、銅で触媒されるAPS/ADA開始剤系に関して、APSが化学量論的に過剰であるという条件で、ラジカルのフラックス比F(等式(1))は、等式(4)を
F=(mADA,O/Mp,O+mADA,fin/Mp,fin)/(mADA,O/Mp,O)等式(5)
に修正することによって推定することができる。上記の等式mADA、OおよびmADAfinはそれぞれ、最終重合段階前および最終重合段階で添加されるADAの量を表す。最終重合段階前に生成されるポリマーの量はMp,Oであり、最終重合段階で生成されるポリマーの量はMp,finである。最終重合段階の最初の転化度は、Mp,O/(Mp,O+Mp,fin)によって定義される。
【0042】
代替方法としては、ラジカルのフラックス比は、重合に依存しないRiおよびRfを測定し、重合中に存在する条件と同様な条件を使用することによって実験的に決定することができる。かかる実験的な決定は、重合速度の増加が、重合温度の上昇によって全面的または部分的に起こる場合に一般に必要とされる。
【0043】
PTFE粒子において有効量のイオン性末端基を得るのに最適なラジカルのフラックス比Fは一般に、最終重合段階がいつ開始するかに依存する。最終重合段階が遅く始まり、したがってその段階が短くなると、有効量のイオン性末端基を得るためのF値は高くなるはずである。一般に、最終重合段階が、供給されたTFEの量の80%で開始した場合には、Fは、少なくとも2、好ましくは少なくとも4であり、最終重合段階が95%で開始した場合には、Fは、少なくとも3、好ましくは少なくとも10である。
【0044】
フッ素化界面活性剤の量の低減
PTFEの水性分散液中のフッ素化界面活性剤の量は、多くの方法で低減することができる。一般に、かかる方法では、安定化(非フッ素化)界面活性剤を添加する必要があるだろう。この安定化非フッ素化界面活性剤は一般に、非イオン界面活性剤であるが、フッ素化界面活性剤を除去するのに使用される技術に応じて、他の安定化界面活性剤もまた適している。有用な非イオン界面活性剤の例としては、次式:
1−O−[CH2CH2O]n−[R2O]m−R3(III)
(式中、R1は、少なくとも8個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族炭化水素基を表し、R2は、炭素原子3個を有するアルキレンを表し、R3は、水素またはC1−C3アルキル基を表し、nは、0〜40の値を有し、mは、0〜40の値を有し、n+mの合計は、少なくとも2である)による非イオン界面活性剤が挙げられる。上記の式(III)において、nおよびmによって示される単位は、ブロックとして存在するか、または交互になる、またはランダムな配置で存在し得ることを理解されよう。上記の式(III)による非イオン界面活性剤の例としては、例えばトリトン(TRITON)(商標)X100(エトキシ単位の数が約10である)またはトリトン(TRITON)(商標)X114(エトキシ単位の数が約7〜8である)などの商標名トリトン(Triton)(商標)で市販されているエトキシ化p−イソオクチルフェノールなどのアルキルフェノールオキシエチレートが挙げられる。さらに他の例としては、上記式(III)において、R1は、炭素原子4〜20個を有するアルキル基を表し、mは0であり、R3は水素である界面活性剤が挙げられる。その一例としては、エトキシ基約8個でエトキシ化されたイソトリデカノールが挙げられ、クラリアント社(Clariant GmbH)からGENAPOL(登録商標)X080として市販されている。親水性部分がエトキシ基およびプロポキシ基のブロックコポリマーを含む、式(III)による非イオン界面活性剤も使用することができる。かかる非イオン界面活性剤は、商品名GENAPOL(登録商標)PF40およびGENAPOL(登録商標)PF80としてクラリアント社(Clariant GmbH)から市販されている。
【0045】
フッ素化界面活性剤の量を低減するために一実施形態に従って、例えば上記で開示される非イオン界面活性剤をフルオロポリマー分散液に添加し、次いで、そのフルオロポリマー分散液を陰イオン交換体と接触させる。かかる方法は、(特許文献26)に詳細に開示されている。
【0046】
アニオン交換プロセスは好ましくは、本質的に塩基性の条件で行われる。したがって、イオン交換樹脂は好ましくは、OH-の形をとるが、アニオンのようなフッ化物または硫酸塩も使用することができる。イオン交換樹脂の具体的な塩基度は、それほど重要ではない。低分子量フッ素化界面活性剤の除去での効率が高いため、強塩基性樹脂が好ましい。このプロセスは、イオン交換樹脂を含有するカラムを通してフルオロポリマー分散液を供給することによって行われるか、または代替方法としては、フルオロポリマー分散液をイオン交換樹脂と共に攪拌し、その後にフルオロポリマー分散液を濾過によって単離することができる。この方法では、低分子量フッ素化界面活性剤の量を150ppm未満のレベルに、または10ppm未満のレベルにさえ低減することができる。したがって、その方法によって、実質的にフッ素化界面活性剤を含有しない分散液が得られる。
【0047】
フッ素化界面活性剤がその遊離酸の形であり、蒸気揮発性である場合には、代替方法として、以下の方法を使用して、フッ素化界面活性剤の量を低減することができる。水性フルオロポリマー分散液のpH値5未満で水性フルオロポリマー分散液に非イオン界面活性剤を添加し、分散液中の蒸気揮発性フッ素化界面活性剤の濃度が(特許文献33)に開示される所望の値に達するまで蒸留することにより蒸気揮発性フッ素化界面活性剤を除去することによって、遊離酸の形の蒸気揮発性フッ素化界面活性剤を水性フルオロポリマー分散液から除去することができる。このプロセスで除去することができるフッ素化界面活性剤としては、例えば上記の式(I)による界面活性剤が挙げられる。
【0048】
さらに、(特許文献24)に開示される限外濾過の使用によって、フッ素化界面活性剤の量を所望のレベルまで低減することができる。一般に、この方法は同時に、分散液の固体量もまた増加させ、したがって、同時にフッ素化界面活性剤を除去し、分散液を濃縮するために使用することができる。
【0049】
濃縮(upconcentration)
一般に、得られたPTFE固体が所望のレベルよりも低い場合には、フッ素化界面活性剤のレベルの低減に続いて、水性分散液を濃縮する。しかしながら、濃縮された分散液において、または上述のように濃縮と同時に、フッ素化界面活性剤の量を低減することも可能である。フルオロポリマー固体の量を増加するために、いずれかの適切な、または公知の濃縮技術を用いることができる。これらの濃縮技術は一般に、濃縮プロセスにおいて分散液を安定化するために添加される非イオン界面活性剤の存在下で行われる。濃縮のために分散液中に一般に存在する非イオン界面活性剤の量は通常、2重量%〜15重量%、好ましくは3重量%〜10重量%である。濃縮の適切な方法としては、(特許文献34)に記載のように、限外濾過、熱的濃縮、熱的デカンテーションおよび電気デカンテーションが挙げられる。
【0050】
限外濾過の方法は、(a)濃縮されることが望ましい分散液に非イオン界面活性剤を添加する段階と、(b)限界濾過半透膜に分散液を循環させて、分散液をフッ素化ポリマー分散液濃縮物と水性透過液に分離する段階と、を含む。循環は一般に、2〜7m/秒の輸送速度であり、ポンプによって行われ、摩擦力を生じる、フッ素化ポリマーと成分との接触がない状態に維持する。
【0051】
水性分散液中のフルオロポリマー固体を増加させるために、熱的デカンテーションを用いることもできる。この方法では、濃縮されることが望ましいフルオロポリマー分散液に非イオン界面活性剤を添加し、次いで、他の層は濃縮された分散液を含有するが、デカントすることができ、かつ一般に水およびいくらかの非イオン界面活性剤を含有する上清層を形成するために、分散液を加熱する。この方法は例えば、(特許文献35)および(特許文献36)に開示されている。
【0052】
熱的濃縮は、分散液を加熱すること、および所望の濃度が得られるまで減圧下で水を除去することを含む。
【0053】
水性PTFE分散液
一般に、本発明の方法によって、フッ素化界面活性剤を含有しない、または分散液中のPTFE固体を基準にして200ppm以下、好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、最も好ましくは20ppm以下の量のフッ素化界面活性剤を含有する水性PTFE分散液が得られるだろう。分散液は通常、非イオン界面活性剤も含有するだろう。その量は一般に、PTFE固体の重量を基準にして2〜15重量%、好ましくは3〜12重量%である。非イオン界面活性剤の量は、フッ素化界面活性剤の除去中および/または分散液の任意の濃縮中に使用される安定化界面活性剤の量から得られる。しかしながら、非イオン界面活性剤の量は、分散液における前述の範囲内の非イオン界面活性剤の所望のレベルを達成するために、更なる非イオン界面活性剤を添加することによって調節される。例えば金属等の基材をコーティングするための最終的なコーティング組成物を製造するために、更なる成分と合わせるのに最も適している分散液を製造するため、分散液は通常、30〜70重量%、好ましくは40〜65重量%の範囲の量でPTFE固体を有する。
【0054】
本発明の方法から得られるPTFE粒子は、上述のような組成および電気伝導率を有し、かつ上述の条件下で試験される分散液が、粒子の平均粒径が150nm以上である場合には、少なくとも3分の剪断安定性、平均粒径が150nm未満である場合には、少なくとも4分の剪断安定性を有するように、有効量のイオン性末端基を有する。そのPTFE粒子の少なくとも一部がこの条件を満たすPTFE分散液を使用して、スプレーヘッドの目詰まりのリスクなく、または低いリスクで、あるいは使用されるポンプシステムでの凝固のリスクなく、またはその低いリスクで、既存のコーティング装置において使用することができる最終的なコーティング組成物を配合することができることが見出されている。一般に、凝固のリスクは、実際の利用での凝固が起こらないように、またはコーティングプロセスを損なわないように十分に低減される。PTFE粒子の総量の、好ましくは少なくとも30重量%、さらに好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%、またはPTFE粒子のすべてが、有効量の末端基を有するPTFE粒子である。
【0055】
PTFE分散液は、異なる平均粒径のPTFE粒子の混合物を含有する。つまり、PTFE粒子の粒径分布は、(特許文献37)および(特許文献38)に開示されるように二峰性分および多峰性分布である。多峰性PTFE粒子分散液は、有利な特性を有する。例えば、PTFE分散液は、(特許文献37)に開示されているように第1PTFE粒子の平均粒径の0.7倍以下の平均粒径(体積平均粒径)を有する第2PTFE粒子と組み合わせた、少なくとも180nmの平均粒径を有する第1PTFE粒子との混合物を含む。二峰性または多峰性PTFE分散液は好都合なことには、所望の量で異なるPTFE粒径の水性PTFE分散液を共にブレンドすることによって得ることができる。多峰性または二峰性PTFE分散液を得るために使用される個々のPTFE分散液は、上述の水性乳化重合プロセスに従って調製してあることが一般に好ましい。特に、二峰性または多峰性分散液中の、例えば体積平均粒径50〜200nmを有する少なくとも小さなPTFE粒子は、これらの粒子が、最終的なコーティング組成物の製造および使用中に遭遇する問題に最も大きく影響することが見出されていることから、上述の水性乳化重合プロセスに従って調製されるべきである。好ましくは、個々の分散液は既に、フッ素化界面活性剤を含有しないか、またはその低減された量を含有する。しかしながら、分散液を互いに混合した後に、フッ素化界面活性剤の量を低減することも可能である。
【0056】
さらに、PTFE分散液を他のフルオロポリマー、特に溶融加工性フルオロポリマーの水性分散液と混合することができる。PTFE分散液と混合することができる溶融加工性フルオロポリマーの適切な分散液としては、以下のフルオロポリマー:TFEと過フッ素化ビニルエーテル(PFA)とのコポリマー、TFEとHFPとのコポリマー(FEP)が挙げられる。かかる分散液は、(特許文献39)に開示される単峰性、二峰性または多峰性である。
【0057】
PTFE分散液は好ましくは、少なくとも500μS、一般に500μS〜1500μSの電気伝導率を有する。電気伝導率が低すぎると、剪断安定性が低下する。分散液の電気伝導率の所望のレベルは、例えば、塩化ナトリウムまたは塩化アンモニウム等の単一の無機開始剤塩などの塩をそれに添加することによって、調節することができる。また、(特許文献40)に開示されるように、分散液にアニオン性非フッ素化界面活性剤を添加することによって、電気伝導率のレベルを調節することができる。
【0058】
一般に好ましいアニオン性非フッ素化界面活性剤は、4以下、好ましくは3以下のpKaを有する酸性基を有する界面活性剤である。粘度の制御の他に、かかるアニオン性界面活性剤は一般に、フルオロポリマー分散液の安定性を高めることができることもまた見出された。非フッ素化アニオン性界面活性剤の例としては、1つまたは複数のアニオン性基を有する界面活性剤が挙げられる。アニオン性非フッ素化界面活性剤は、1つまたは複数のアニオン性基の他に、他の親水性基、例えばポリオキシエチレン基など、オキシアルキレン基において炭素2〜4個を有するポリオキシアルキレン基、またはアミノ基などの基を含み得る。それにもかかわらず、アミノ基が界面活性剤中に含有される場合には、分散液のpHは、アミノ基がプロトン化状態でないようなpHであるべきである。一般に、非フッ素化界面活性剤としては、アニオン性炭化水素界面活性剤が挙げられる。本明細書において使用される「アニオン性炭化水素界面活性剤」という用語は、分子における1つまたは複数の炭化水素部位または1つまたは複数のアニオン性基、特にスルホン酸、硫酸、リン酸およびカルボン酸基およびその塩などの酸性基を含む界面活性剤を含む。アニオン性炭化水素界面活性剤の炭化水素部位の例としては、例えば炭素原子6〜40個、好ましくは炭素原子8〜20個を有する飽和および不飽和脂肪族基が挙げられる。かかる脂肪族基は、直鎖状または分岐状であり、かつ環状構造を含有する。炭化水素部位は、芳香族であるか、または芳香族基もまた含有し得る。さらに、炭化水素部位は、例えば、酸素、窒素および硫黄などの1つまたは複数のヘテロ原子を含有し得る。
【0059】
本発明で使用されるアニオン性炭化水素界面活性剤の詳細な例としては、スルホン酸ラウリルなどのスルホン酸アルキル、硫酸ラウリルなどの硫酸アルキル、アルキルアリールスルホネートおよびアルキルアリールスルフェート、脂肪(カルボン)酸およびその塩、例えばラウリン酸およびその塩、およびリン酸アルキルまたはアルキルアリールエステルおよびその塩が挙げられる。使用することができる市販のアニオン性炭化水素界面活性剤としては、クラリアント社(Clariant GmbH)から市販されているEmulsogen(商標)LS(ラウリル硫酸ナトリウム)およびEmulsogen(商標)EPA 1954(C12〜C14アルキル硫酸ナトリウムの混合物)およびユニオン・カーバイド社(Union Carbide)から市販されているトリトン(Triton)(商標)X−200(アルキルスルホン酸ナトリウム)が挙げられる。好ましいのは、スルホネート基を有するイオン性炭化水素界面活性剤である。
【0060】
水性PTFE分散液中に存在し得る他の任意の成分としては、種々の用途に必要とされる、または望まれる、緩衝剤およびKClO3などの酸化剤が挙げられる。
【0061】
本発明のPTFE分散液を使用して、金属基材などの種々の基材、例えば調理器具、建築用織物として使用されるガラス繊維ベースの布などの布をコーティングするための最終コーティング組成物を製造することができる。一般に、PTFE分散液は、最終コーティング組成物を製造するために通常使用される更なる成分とブレンドされる。このような更なる成分は、トルエン、キシレン等の有機溶媒に溶解または分散される。最終コーティング組成物に使用される一般的な成分としては、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはポリアリーレン硫化物などの耐熱性ポリマーが挙げられる。最終コーティング組成物を得るために、顔料およびマイカ粒子などのさらに他の成分もまた添加することができる。PTFE分散液は一般に、最終組成物の約10〜80重量%に相当する。金属コーティングのためのコーティング組成物およびその中に使用される成分についての詳細は、例えば、(特許文献27)、(特許文献28)、(特許文献29)および(特許文献30)に記述されている。
【実施例】
【0062】
本発明は、さらに説明されるが、本発明をそれに限定するものではない。
【0063】
方法
固体含有率および非イオン性乳化剤の決定
ISO 12086に従って、どちらの量も重量測定によって決定される。実施例に示される非イオン性乳化剤含有率の値は、固形分に基づき、±5%の精度である。実施例に示される濃縮分散液の固形分は、58%±1%である。非揮発性無機開始剤塩に対する補正は考慮されていない。
【0064】
粒径
マルバーン(Malvern)1000HASゼータサイザー(Zetasizer)を使用して、非弾性光散乱によってPTFE粒子の粒径を測定した。平均粒径は、体積平均直径として報告される。
【0065】
APFOAの決定
APFOA含有率は、内標準、例えばパーフルオロデカン酸のメチルエステルを使用して、メチルエステルのガスクロマトグラフィーによって決定される。APFOAをメチルエステルに定量的に転化するために、MgSO40.3gの存在下にて100℃で1時間、分散液200μlをメタノール2mlおよび塩化アセチル1mlで処理する。形成したメチルエステルをヘキサン2mlで抽出し、ガスクロマトグラフィー分析にかける。検出限界は<5ppmである。実施例で報告されるAPFOAの量は、分散液の固体に基づく。
【0066】
電気伝導率
メトローム社(Metrohm AG)によって供給されている712伝導度測定器(Conductometer)で電気伝導率を測定した。濃縮分散液の電気伝導率が1000μS/cm未満の場合には、硫酸アンモニウム水溶液(1%)を添加して、電気伝導率を約1000μS/cmに調節した。
【0067】
重合
3フィンガーパドル(finger paddle)撹拌機およびバッフルを備えたステンレス鋼製の150L重合容器を使用した。攪拌速度は一般に約210rpmであり、重合中一定に保った。重合速度は、反応器中へのTFEの流れによって測定した。平均重合速度は、12〜16kg/時の範囲であった。形成したポリマーの体積による、蒸気空間からのTFEの排除量は考慮に入れなかった。温度およびTFEの圧力は重合中、一定に保った。
【0068】
剪断安定性試験
内径65mmの250mL標準ガラスビーカーに、20℃で恒温に保たれた分散液150gを入れた。Janke & Kunkel社によって供給されているUltra Turrax T25の攪拌ヘッド(S25N−25G)を、ヘッドの末端がビーカーの底から7mm上にあるように、ビーカーの中央に浸した。Ultra Turraxを回転速度8000rpmでオンに切り換えた。攪拌することによって、分散液の表面を「乱流」または「波状」にした。10〜20秒後に、攪拌分散液にキシレン2.0gを一滴ずつ、10秒未満で添加した。時間の測定をキシレンの添加で開始し、攪拌分散液の表面がもはや視認できる乱流を示さなくなった時に止めた。その表面は、凝固のために「固まる」または滑らかになる。凝固は、Ultra Turraxの音の固有の変化を伴った。泡が形成したため、「表面が固まる」のをはっきりと認められない場合には、時間の測定は、音の変化の始まりで止めた。実施例で報告される剪断安定性の値は、5回の測定の平均である。認められた再現性は10%であった。
【0069】
フッ素化界面活性剤:パーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFOA)の除去
重合から得られた分散液を未精製分散液と呼ぶ。未精製分散液に、固体の重量を基準にしてトリトン(Triton)(登録商標)X100 2%を添加した。OH−状態の陰イオン交換樹脂アンバーライト(Amberlite)(登録商標)IRA402 100mlを未精製分散液1Lに添加した。混合物を穏やかに、12時間攪拌し、交換樹脂をガラスふるいによって濾過除去した。
【0070】
濃縮
必要であれば、1%硫酸アンモニウム水溶液を添加することによって、APFOAが低減された分散液の電気伝導率をコンダクタンス500μS/cmに調節した。次いで、分散液を蒸発によって熱的に、非イオン界面活性剤としてトリトン(Triton)(登録商標)X100(ダウ・ケミカル社(Dow Chemical)によって供給されている)の存在下で固体含有率58%に濃縮した。非イオン界面活性剤の量は、固体の総量を基準にして5%であった。必要であれば、アンモニア水(25%)を添加することによって、pHを少なくとも9に調節し、硫酸アンモニウム水溶液(1%)を添加することによって、電気伝導率を約1000μS/cmに調節した。このようにして濃縮された分散液を上述の剪断試験にかけた。
【0071】
実施例1(比較)
ペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFOA)200gを含有する脱イオン水100Lを150L重合容器に装入した。交互に排気し、窒素で6バールまで加圧することによって、空気を除去した。次いで、HFP140gを容器に供給した。容器内の温度を35℃に調節した。容器をTFEで15バール(絶対圧力)に加圧した。次いで、APS1.1g、25%アンモニア溶液50g、CuSO4・5H2O60mgを含有する脱イオン水100mlを容器にポンプで注入した。Na2250.5gを含有する脱イオン水150mlを容器にポンプで迅速に注入することによって、重合を開始した。重合温度および圧力を一定に保った。攪拌の速度を適切に調節することによって、TFEの取り込み速度を約12kg/時に調節した。TFE11kgを消費したら、TFEの供給を閉じ、攪拌速度を下げることによって、重合を止めた。容器を排気し、得られた分散液を排出した。このようにして得られた分散液は固体含有率10%、粒径約100nmを有した。この分散液は、以下で「シードラテックス」と呼ばれる。
【0072】
APFOAをアニオン交換によって除去し、分散液を熱的に濃縮した。最終的な濃縮分散液は、固体含有率57.8%、固形分を基準にしてトリトン(Triton)(登録商標)X100含有率4.8%であった。APFOA含有量は5ppmであった。調節された電気伝導率は1100μS/cmであった。分散液は、剪断安定性2:15分を有した。
【0073】
実施例2
以下の違いを除いては、実施例1に記載のように重合を行った。TFE11kgを消費したら、脱イオン水150ml中にAPS1.0g、CuSO4・5H2O60mg、25%アンモニア水溶液5.0gを含有する溶液を容器中にポンプで注入し、続いて、脱イオン水中のNa2250.5gの溶液を注入した。上記の等式4によるラジカルのフラックス比は約8であった。重合速度はすぐに増加した。増加が90%に達したら、HFP200gを容器に注入した(モル比:0.04)。総量12kgのTFEが消費されたら、TFEの供給を閉じ、攪拌速度を下げることによって、重合を止めた。したがって、最終重合段階をTFE転化率91.6%で開始した。容器を排気し、得られた分散液を排出した。このようにして得られた分散液は固体含有率10.5%、粒径約95nmを有した。この分散液は、以下で「安定化シードラテックス」と呼ばれる。
【0074】
APFOAをアニオン交換によって除去し、分散液を熱的に濃縮した。電気伝導率を硫酸アンモニウム水溶液で調節した。最終的な濃縮分散液は、固体含有率58.1%、固形分を基準にしてトリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.0%であった。APFOA含有量は約10ppmであった。電気伝導率は1300μS/cmであった。分散液は、剪断安定性7:11分を有した。
【0075】
実施例3(比較)
実施例1に記載のように製造したシードラテックス21kgを、APFOA100gを含有する脱イオン水80Lと共に150L重合容器に装入する。実施例1に記載のように、空気を除去した。容器をTFEで15バール(絶対圧力)に加圧し、温度を42℃に調節した。一定の圧力および温度、攪拌速度210rpmで重合を行った。APS0.6g、CuSO4.5H2O60mg、25%アンモニア水溶液50gを含有する水溶液200mlを容器に装入した。10%NaOH50mlを含有する脱イオン水3Lに溶解されたアゾジカルボキシルジアミド(ADA)0.15gを含有する水溶液を容器に連続的にポンプで注入することによって、重合を開始した。ADA溶液は、ADA0.05g/Lの濃度を有した。最初の10分間のポンプ注入速度は50ml/分であり、次いで15〜30ml/分に下げた。約12kg/時のTFEの取り込み速度が達成されるように、供給速度を調節した。TFE22kgが消費された時には、総量0.10gのADAが容器に供給されていた。ADA溶液およびTFEの供給を中止することによって、重合を止めた。ADAの供給を中止した結果、重合速度が急速に低下した。容器を排気し、分散液を排出した。
【0076】
このようにして得られた未精製分散液は、固体含有率約19.5重量%、粒径220nmを有した。
【0077】
APFOAをアニオン交換によって除去し、上述のように分散液を熱的に濃縮した。電気伝導率を硫酸アンモニウムで1100μs/cmに調節し、濃アンモニア水溶液でpH値を9に調節した。最終的な濃縮分散液は、固体含有率57.9%、固形分を基準にしてトリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.0%であった。APFO含有量は約20ppmであった。分散液は、剪断安定性1:15分を有した。
【0078】
実施例4
実施例3に記載のように重合を行ったが、TFEの総消費量22kgで、ADAの供給を止め、脱イオン水150mL中にAPS0.8g、CuSO4・5H2O60mg、25%アンモニア水溶液50gを含有する溶液を容器中に迅速に装入し、続いて、脱イオン水50ml中のNa2250.6gの溶液を装入した。重合速度は急速に上昇した。重合速度が70%増加したら、HFP200gを重合容器に注入した。HFP/TFEのモル比は0.04であった。総量23kgのTFEが消費されたら、TFEの供給を閉じることによって、重合を止めた。したがって、最終重合段階は、TFE転化率95.6%で開始した。容器を排気し、分散液を排出した。このようにして得られた未精製分散液は、固体含有率20%、粒径220nmを有した。
【0079】
未精製分散液を実施例3に記載のように処理し、固形分に対するトリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.2%と共に、固体含有率58.3%、電気伝導率1300μS/cmの分散液を得た。APFO含有量は約10ppmであった。分散液は、剪断安定性5:10分を有した。
【0080】
実施例5
実施例4を繰り返したが、実施例1のシードラテックス21kgを使用する代わりに、実施例1のシードラテックス38kgおよび脱イオン水63Lを容器に装入した。未精製分散液は、固体含有率20.5%、粒径180nmを有した。APFOA含有率は低減され、未精製分散液を濃縮して、固形分58.1%、電気伝導率1200μS/cm、およびAPFOA含有量8ppmの分散液が得られた。トリトン(Triton)(登録商標)X100の量は4.9%であった。濃縮分散液は、剪断安定性5:40分を有した。
【0081】
実施例6
最終段階で、脱イオン水150mL中のAPS0.1g、CuSO4・5H2O60mg、25%アンモニア水溶液50gを含有する溶液を容器に迅速に装入し、続いて、脱イオン水50mL中のNa2250.075gの溶液を装入したことを除いては、実施例4を繰り返した。重合速度はすぐに、20%まで上昇した。TFE0.5kgが消費されたら、HFP200gを容器に供給し、TFE0.5kgがさらに消費された後に、重合を止めた。最終重合段階は、転化率95.6%で開始された。未精製分散液は、固体含有率20%を有した。粒径は、220nmであった。APFOA含有率は低減され、未精製分散液を濃縮して、固形分58.0%、トリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.1%、APFOA含有量12ppm、調節された電気伝導率1200μS/cmの分散液が得られた。この分散液は、剪断安定性3:07分を有した。
【0082】
実施例7
最終段階で、脱イオン水150mLに溶解されたAPS0.15g、CuSO4・5H2O60mg、25%アンモニア水溶液50gを含有する溶液を容器に迅速に装入し、続いて、脱イオン水50mL中のNa2250.1gの溶液を装入したことを除いては、実施例6を繰り返した。HFPを添加する前に、35%までの重合速度の増加が認められた。最終重合段階は、転化率95.6%で開始された。未精製分散液は、固体含有率20%を有した。粒径は、220nmであった。
【0083】
APFOA含有率は低減され、未精製分散液を濃縮して、固形分58.3%、トリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.2%、APFOA含有量5ppmを有する分散液が得られた。電気伝導率は1000μS/cmに調節された。この分散液は、剪断安定性3:30分を有した。
【0084】
実施例8
最終段階で、脱イオン水150mLに溶解されたAPS0.3g、CuSO4・5H2O60mg、25%アンモニア水溶液50gを含有する溶液を容器に迅速に装入し、続いて、脱イオン水50mL中のNa2250.2gの溶液を装入したことを除いては、実施例6を繰り返した。HFPを添加する前に、60%までの重合速度の増加が認められた。最終重合段階は、転化率95.6%で開始された。APFOA含有量は低減され、未精製分散液を濃縮して、固形分57.8%、トリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.0%、APFOA含有量約9ppmを有する分散液が得られた。調節された電気伝導率は、1000μS/cmであった。この分散液は、剪断安定性4:43分を有した。
【0085】
実施例9
TFE21kgが消費された時、つまりTFEのうち91.3%が添加された時に、最終重合段階が開始されたことを除いては、実施例8を繰り返した。脱イオン水150mLに溶解されたAPS0.2g、CuSO4・5H2O60mg、25%アンモニア水50gを含有する溶液を容器に迅速に装入し、続いて、脱イオン水50mL中のNa2250.12gの溶液を装入した。重合速度はすぐに、35%上昇した。次いで、HFP80gを注入した。HFP/TFEのモル比は0.016であった。総量23kgのTFEが消費された時に、重合を止めた。APFOA含有率は低減され、未精製分散液を濃縮して、固形分58.1%、トリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.2%、APFOA含有量7ppmを有する分散液が得られた。粒径は220nmであった。調節された電気伝導率は、900μS/cmであった。剪断安定性は4:40分であった。
【0086】
実施例10
TFE19kgが消費された時、つまりTFEの総量の82.6%が供給された時に、最終重合段階が導入されたことを除いては、実施例8を繰り返した。脱イオン水150mLに溶解されたAPS0.12g、CuSO4・5H2O60mg、25%アンモニア水50gを含有する溶液を容器に迅速に装入し、続いて、脱イオン水50mLに溶解されたNa2250.1gの溶液を装入した。重合速度はすぐに、25%上昇した。次いで、HFP40gを注入した。HFP/TFEのモル比は0.008であった。総量23kgのTFEが消費された時に、重合を止めた。APFOA含有量は低減され、未精製分散液を濃縮して、固形分58.0%、トリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.0%、APFOA含有量10ppmを有する分散液が得られた。粒径は220nmであった。調節された電気伝導率は、1200μS/cmであった。剪断安定性は4:15分であった。
【0087】
実施例11
以下の違いを除いては、実施例3に記載のように重合を行った。TFE22kgが消費されたら、ADA約0.12gを容器に供給した。次いで、APS2.1gを含有するAPS溶液200mlを迅速に、容器に供給した。重合速度は増加しなかった。これは、APSが重合温度42℃で重合を有効に開始しないことを示している。次いで、10%NaOH50mlに溶解されたADA0.08gを含有するADA溶液200mlを迅速に、ポンプで容器に注入した。重合速度はすぐに、72%まで上昇した。次いで、HFP200gを容器に装入した。総量23kgのTFEが消費された時に、重合を止めた。最終重合段階は転化率95.6%で開始され、上記の等式5によるラジカルのフラックス比Fは15.6であった。固体含有率19.5%の未精製分散液が得られた。粒径は220nmであった。
【0088】
APFOA含有量は低減され、未精製分散液を濃縮して、固形分57.8%、トリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5%、APFOA含有量15ppm、および調節された電気伝導率1100μS/cmを有する分散液が得られた。分散液は、剪断安定性4:25分を有した。
【0089】
実施例12
最終重合段階で、注入されたADA溶液200mlがADA0.025gを含有したことを除いては、実施例9を繰り返した。重合速度はすぐに、35%上昇した。次いで、HFP200gを容器に装入した。総量23kgのTFEが消費された時に、重合を止めた。TFEの総量の95.6%が添加された時に、最終重合段階が開始した。最終段階前に、ADA0.12gを容器に供給した。上記の等式5によるラジカルのフラックス比Fは5.6であった。固体含有率19.8%の未精製分散液が得られた。粒径は220nmであった。濃縮分散液は、固体含有率58.0%、トリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.2%、APFOA含有量8ppm、および調節された電気伝導率1200μS/cmを有した。分散液は、剪断安定性3:28分を示した。
【0090】
実施例13
固形分を基準にしてトリトン(Triton)(登録商標)X100 2%を含有する実施例1の分散液10kgを、トリトン(Triton)(登録商標)X100 2%を含有する実施例4の分散液46kgとブレンドし、濃縮して、固体含有率57.8%、トリトン(Triton)(登録商標)X100含有率5.2%、APFOA含有量25ppmを有する分散液を得た。伝導率は1000μS/cmに調節した。分散液は、剪断安定性3:51分を有した。
【0091】
実施例14
実施例2の「安定化シードラテックス」を実施例1のシードラテックスの代わりに使用したことを除いては、実施例13に記載のように二峰性分散液を製造した。最終的な分散液は、APFOA含有量約15ppm、固体含有率58.0%、伝導率1200μS/cmを有した。分散液は、剪断安定性7:57分を有した。
【0092】
実施例15
金属コーティングのいくつかの最終用途特性に関して、比較例3の分散液と実施例4のPTFE分散液とを比較する。
脱脂されたアルミニウムプレート、いわゆるパネル(10×10cm)上に、配合されたプライムコートおよびトップコートを吹付けることによって、2つの層、「プライムコート」および「トップコート」を作製した。赤外線乾燥器で約100℃にて15分間乾燥させることによって、各層を別々に作製した。各層の乾燥フィルム厚さは約20μmであった。プライムコートおよびトップコートを400℃で5分間、共に硬化させた。「配合バッチ」の組成を表1に示す。プライムコートはPTFE分散液を40重量%含有し、トップコートはPTFE分散液を80重量%含有した。インターコートおよびプライムコートについて表2に示されるように、コーティングされたアルミニウムパネルを当技術分野でよく知られている様々な試験にかけた。調理器具についての英国標準規格(British Standard Specification)BS7069:1988に従って試験を行った。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
試験結果から容易に分かるように、本発明によるPTFE分散液は、最終用途特性に関して、低下は示さず、識別可能な向上を示すと思われる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液を製造する方法であって:
(a)最終的な量のポリテトラフルオロエチレン固体を生成する量のテトラフルオロエチレン、および任意に、テトラフルオロエチレンの量を基準にして1重量%までの過フッ素化コモノマーを水性乳化重合する段階であって、前記水性乳化重合はラジカル開始剤で開始され、前記重合はフッ素化界面活性の存在下で行われ、かつ前記量のテトラフルオロエチレンの供給が完了する前であるが、前記量のテトラフルオロエチレンの少なくとも80重量%を供給した後に、ポリテトラフルオロエチレンポリマーにおいてイオン性末端基またはその前駆体を導入することができるラジカルを、対策なしで、少なくとも20%の重合速度の増加が起こるであろう割合で形成させる段階;
(b)このようにして得られた水性分散液におけるフッ素化界面活性剤の量を、ポリテトラフルオロエチレン固体の量を基準にして、200ppm以下の量に低減する段階;
を含む方法。
【請求項2】
フッ素化界面活性剤の前記量は、非イオン界面活性剤の存在下で前記水性分散液を陰イオン交換樹脂と接触させることによって低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリテトラフルオロエチレンポリマーにおいてイオン性末端基またはその前駆体を導入することができる前記ラジカルの形成が、重合温度の増加、無機開始剤の添加、および開始剤系の1種または複数の無機成分の添加のうちの少なくとも1つによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン性基が、3以下のpKaを有する酸性基または前記酸性基の塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン性基またはその前駆体の形成中に、過フッ素化コモノマーが、テトラフルオロエチレンと共に重合に同時供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記過フッ素化コモノマーが、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロビニルエーテルおよびパーフルオロアリルエーテルから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記重合が、段階(a)の後に得られるポリテトラフルオロエチレン粒子の少なくとも90重量%が球形であるような条件下にて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
得られた水性分散液を、30〜70重量%の量のポリテトラフルオロエチレン固体に濃縮する段階をさらに含み、前記濃縮は非イオン界面活性剤の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水性乳化重合が、体積平均粒径50nm〜350nmを有するポリテトラフルオロエチレン粒子が生成されるような条件下で行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
30〜70重量%の量の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン粒子と、ポリテトラフルオロエチレン固体の重量を基準にして2〜15重量%の量の非イオン界面活性剤と、を含む非溶融加工性のポリテトラフルオロエチレン水性分散液であって、前記分散液は、フッ素化界面活性剤を含有しないか、またはポリテトラフルオロエチレン固体の量を基準にして200ppm以下の量でフッ素化界面活性剤を含有し、かつ前記非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン粒子の少なくとも一部が、ポリテトラフルオロエチレンポリマー鎖において有効量のイオン性末端基を含み、その結果、以下の組成:
前記有効量のイオン性末端基を有する非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン粒子58重量%;
固体の全重量を基準にして、平均9〜10個のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールモノ[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]エーテルからなる非イオン界面活性剤5重量%;
フッ素化界面活性剤100ppm未満;を有し、かつ
少なくとも500μS/cmの電気伝導率を有するその水性分散液が、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒径が150nm以上である場合には、少なくとも3分の剪断安定性を有し、またはその粒径が150nm未満である場合には、少なくとも4分の剪断安定性を有し、前記剪断安定性が、温度20℃および攪拌速度8000rpmで前記水性分散液150gをキシロール2gと攪拌することによって測定される、非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン水性分散液。
【請求項11】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒径が50〜350nmである、請求項10に記載の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン水性分散液。
【請求項12】
前記粒径分布が二峰性または多峰性分布である、請求項10または11に記載の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン水性分散液。
【請求項13】
前記分散液が、少なくとも180nmの平均粒径を有する第1ポリテトラフルオロエチレン粒子および第1PTFE粒子の平均粒径の0.7倍以下の平均粒径を有する第2ポリテトラフルオロエチレン粒子を含む、請求項10または11に記載の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン水性分散液。
【請求項14】
前記分散液が、溶融加工性フルオロポリマー粒子をさらに含む、請求項10に記載の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン水性分散液。
【請求項15】
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子が、コア・シェル構造を有し、かつシェル中にテトラフルオロエチレンと過フッ素化コモノマーとのコポリマーを含む、請求項10〜14のいずれか一項に記載の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン水性分散液。
【請求項16】
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の少なくとも90重量%が球形である、請求項10〜15のいずれか一項に記載の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン水性分散液。
【請求項17】
基材のコーティングにおける、請求項10〜16のいずれか一項に定義される非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン水性分散液の使用。
【請求項18】
前記基材が金属基材または織物である、請求項17に記載の使用。


【公表番号】特表2007−511657(P2007−511657A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541153(P2006−541153)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/033478
【国際公開番号】WO2005/052013
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】