説明

局所的に酸性基を有するウレタン樹脂組成物および顔料組成物

【課題】
酸性基を局所的に有するウレタン樹脂組成物を顔料分散に用いることで、ウレタン樹脂中の顔料吸着部と思われる酸性基と顔料との相互作用を強め、オフセットインキ、グラビアインキおよびインキジェットインキ、塗料、着色ウレタン樹脂組成物などに適する、分散性、非集合性および流動性に優れた安定な顔料組成物および顔料分散体の提供を目的とする。
【解決手段】
少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートに少なくとも2個の酸性基を有するモノオールポリカルボン酸を反応させ、さらに、ポリオールを反応させて得ることができる局所的に酸性基を有するウレタン樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ、塗料および着色ウレタン樹脂組成物などの分野に関する。特に、非集合性および流動性に優れた安定な顔料組成物および顔料分散体として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
一般に、顔料の微細な粒子をオフセットインキ、グラビアインキおよび塗料のようなビヒクルに分散する場合、安定な分散体を得ることが難しく、製造作業および得られる製品の特性に種々の問題を引き起こすことが知られている。例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は、往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出し、輸送が困難となるばかりでなく、さらに悪い事例では貯蔵中にゲル化を起こし使用困難となることがある。
また、展色物の塗膜表面に関しては、光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生じることがある。特に、異種の顔料を混合して使用する場合、凝集による色別れや、沈降などの現象により展色物に色むらや著しい着色力の低下が現れることがある。
近年は、上記のような顔料の分散安定性に対するニーズの高まりと共に、局所的に酸性基を導入したウレタン系の分散樹脂が注目されている。
かつて、顔料の分散安定性向上のために、分散樹脂中に酸価を持たせるべく、カルボキシル基を含むエステル化合物からなる顔料分散剤があった(特許文献1)。
また、有機顔料を母体骨格として側鎖に酸性基や塩基性基を置換基として有する顔料誘導体を分散剤としてウレタン樹脂と混合する方法が開示されている(特許文献2参照)。
しかしながら、いずれの発明も、酸性基を局所的に導入したウレタン樹脂の組成物を提供するものではなかった。しかも、有機顔料に対する分散性も満足なものではなかった。そのうえ、塗料やインキなどには非常に多くのワニス系が存在するため、これらの発明を用いても一部のワニス系を除いては満足な効果が得られていないのが実状である。
【特許文献1】特開平1−141968号公報
【特許文献2】特開昭62−295966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、酸性基を局所的に有するウレタン樹脂組成物を顔料分散に用いることで、ウレタン樹脂中の顔料吸着部と思われる酸性基と顔料との相互作用を強め、オフセットインキ、グラビアインキおよびインキジェットインキ、塗料、着色ウレタン樹脂組成物などに適する、分散性、非集合性および流動性に優れた安定な顔料組成物および顔料分散体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートに少なくとも2個の酸性基を有するモノオールポリカルボン酸を反応させ、さらに、ポリオールを反応させて得ることができる局所的に酸性基を有するウレタン樹脂組成物に関する。
また、前記のモノオールポリカルボン酸が、2〜4個の酸性基を有する上記ウレタン樹脂組成物が好ましく、さらに、前記のモノオールポリカルボン酸が、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸またはα−ヒドロキシコハク酸である上記ウレタン樹脂組成物が好ましい。
また、前記のポリイソシアネートが脂環式構造を有する上記ウレタン樹脂組成物が好ましい。
【0005】
次に、本発明は、上記ウレタン樹脂組成物と、顔料とを含有してなる顔料組成物に関する。また、上記顔料組成物において、さらに、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体および塩基性基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれる少なくとも一種の誘導体を含有する顔料組成物が好ましい。
また、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体または塩基性基を有するトリアジン誘導体が、下記式(1)、式(2)、式(3)および式(4)の群から選ばれる少なくとも1つの塩基性置換基を有することを特徴とする上記顔料組成物が好ましい。
式(1)
【化1】


式(2)
【化2】


式(3)
【化3】

式(4)
【化4】

X:−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−または直接結合を表す。m:1〜10の整数を表す。
、R:それぞれ独立に置換されていてもよいアルキル基、それぞれ独立に置換されていてもよいアルケニル基、それぞれ独立に置換されていてもよいフェニル基、またはRとRとが一体となって形成した置換されていてもよい複素環を表す。ただし、前記複素環は、さらなる窒素、酸素または硫黄原子を含んでいてもよい。
:置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置
換されていてもよいフェニル基を表す。
、R、R、R:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。Y:−NR−Z−NR−または直接結合を表す。
、R:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
Z:置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルケニレン基、または置換されていてもよいフェニレン基を表す。
P:式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。
Q:水酸基、アルコキシル基、式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。

式(5)
【化5】

式(6)
【化6】

【0006】
次に、本発明は上記顔料組成物をワニスに分散せしめてなる顔料分散体に関する。
【0007】
次に、本発明は、少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートに少なくとも2個の酸性基を有するモノオールポリカルボン酸を反応させ、次いで、ポリオールおよび/またはジイソシアネート化合物を反応させることを特徴とする局所的に酸性基を有するウレタン樹脂組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ウレタン樹脂に局所的に酸性基を付与することにより、顔料組成物、特に有機顔料を含む顔料組成物を各種ビヒクルに分散する際に、顔料吸着性を飛躍的に向上させる。その結果、顔料分散性を改善させることが可能となり、安定な顔料分散体が得られる。
本発明の顔料組成物および顔料分散体は、高い貯蔵安定性および高い経時安定性を有し、経時による粘度の増大も示さない。
そのため、本発明の顔料組成物を使用すれば、ビヒクルに含まれる樹脂の顔料分散性が悪い場合でも、常に安定な顔料分散体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートに少なくとも2個の酸性基を有するモノオールポリカルボン酸を反応させ、後にポリオールにより鎖延長することで局所的に酸性基を有するウレタン樹脂を含む。
さらに、該ウレタン樹脂組成物を顔料と混合した顔料組成物や、ワニスに分散せしめた顔料分散体も本発明の一態様である。
【0010】
ここで、局所的に酸性基を有するということはブロック構造や末端極性化という意味ではなく、少なくとも3個のイソシアネート基とモノオールポリカルボン酸と反応させることによりカルボン酸の分布を局在化させることが可能となり、かつそのポリカルボン酸部を末端などではなく樹脂の主鎖にもたせることで、顔料吸着部と溶剤溶解部を分けるというものである。
【0011】
本発明の局所的に酸性基を含有するウレタン樹脂の原料となる少なくとも2個の酸性基を有するモノオールポリカルボン酸について説明する。
モノオールポリカルボン酸類としてはヒドロキシマロン酸、α−ヒドロキシコハク酸(リンゴ酸)、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン二酸、3−ヒドロキシペンタン二酸、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸(クエン酸)等のモノオールポリカルボン酸類が挙げられる。
【0012】
また、有機合成により得られる酸性基含有モノオールを用いてもよい。例えば、酸無水物と多官能アルコールの反応から得られる酸性基含有ポリオールである。
酸無水物としては、分子内に1個の酸無水物基を有する化合物と分子内に2個以上の酸無水物基を有する化合物を用いることができる。これらは単独でも併用でもよい。
分子内に1個の酸無水物基を有する化合物としては、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂肪族環状酸無水物、無水フタル酸、イサト酸無水物、ジフェン酸無水物などの芳香族環状酸無水物、これらに飽和または不飽和脂肪族炭化水素基、アリール基、ハロゲン基、ヘテロ環基などを結合せしめた誘導体などを使用することができる。
【0013】
本発明の局所的に酸性基を含有するウレタン樹脂の原料となる少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートについて説明する。
本発明の酸性基含有ウレタン樹脂に使用されるポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネ−ト、脂肪族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環族ポリイソシアネ−ト等が挙げられる。さらにそれらの2量体、3量体が挙げられる。
例えば、1,3−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルジイソシアネ−ト、1,4−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−トルイジンジイソシアネ−ト類のジイソシアネートの2量体および3量体である3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、ジアニシジンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等も挙げることができる。その他に一部上記ポリイソシアネ−トのトリメチロ−ルプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレ−ト環を有する3量体等を使用することができる。
【0014】
また、ウレタン樹脂の分子量を上げる目的で、上記の3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネ−トとは異なるポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネ−ト、脂肪族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−トまたは脂環族ポリイソシアネ−ト等を併用することができる。
【0015】
芳香族ポリイソシアネ−トとしては、例えば1,3−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルジイソシアネ−ト、1,4−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−トルイジンジイソシアネ−ト、2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、ジアニシジンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0016】
脂肪族ポリイソシアネ−トとしては、例えばトリメチレンジイソシアネ−ト、テトラメチレンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネ−ト、2,3−ブチレンジイソシアネ−ト、1,3−ブチレンジイソシアネ−ト、ドデカメチレンジイソシアネ−ト、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0017】
芳香脂肪族ポリイソシアネ−トとしては、例えばω,ω’−ジイソシアネ−ト−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネ−ト−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネ−ト−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0018】
脂環族ポリイソシアネ−トとしては、例えば3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト、1,3−シクロペンタンジイソシアネ−ト、1,3−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、1,4−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネ−トメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0019】
上記のうち顔料分散後の粘度を考慮すると、脂肪族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環族ポリイソシアネ−トが好ましく、さらには脂環族ポリイソシアネ−トが好ましい。
【0020】
本発明の原料となるポリオールについて説明する。
ポリオールとしては、それ自体が公知であるようなものは、いずれも使用し得る。それらのうちでも、特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、次のグループ(a)〜(g)に属するものがある。
【0021】
(a) エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリンもしくは、ヘキサントリオールの如き多価アルコール類。
【0022】
(b) ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールもしくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルグリコール類;
【0023】
(c) 上掲された如き各種の多価アルコール類と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き各種の(環状)エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール類;
【0024】
(d) 上掲された如き各種の多価アルコール類の1種以上と、多価カルボン酸類との共縮合によって得られるポリエステルポリオール類であって、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,4−シクロヘキサンヒカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサトリカルボン酸または2,5,7−ナフタレントリカルボン酸などで特に代表される多価カルボン酸類を用いて得られるポリオール類;または
【0025】
(e) 上掲された如き各種の多価アルコール類の1種以上と、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンもしくは3−メチル−δ−バレロラクトンの如き各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール類;あるいは、
【0026】
上掲された如き、各種の多価アルコール類と、多価カルボン酸類と、各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン変性ポリエステルポリオール類;または
【0027】
(f) ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、一価および/または多価アルコール類のグリシジルエーテル、あるいは、一塩基酸および/または多塩基酸類のグリシジルエステルの如き各種のエポキシ化合物を、ポリエステルポリオールの合成時に、1種以上併用して得られるエポキシ変性ポリエステルポリオール類;さらには、
【0028】
(g) ポリエステルポリアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール、ひまし油、ひまし油誘導体、水30添ひまし油、水添ひまし油誘導体、水酸基含有アクリル系共重合体、水酸基含有含フッ素化合物または水酸基含有シリコン樹脂などである。
【0029】
これら(a)〜(g)に示されたポリヒドロキシ化合物は、単独使用でも2種以上の併用でもよいことは勿論であるが、その数平均分子量としては、200〜10,000なる範囲内が、好ましくは、300〜7,000なる範囲内が、さらに好ましくは、500〜3,000なる範囲内が適切である。
【0030】
また、強靱なるウレタン樹脂を得るためには、ポリエステルポリオールの使用が望ましく、就中、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンまたは3−メチル−δ−バレロラクトンの如き、各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール類の使用が望ましい。
【0031】
本発明の酸性基を局所的に有するウレタン樹脂の製造に用いられる触媒としては、公知の触媒を使用することができる。例えば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
3級アミン系化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
有機金属系化合物としては錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。錫系化合物としては、例えばジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジアセテ−ト、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテ−ト、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテ−ト、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネ−ト、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネ−トなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。これらは単独使用、もしくは併用することもできる。
【0032】
本発明の酸性基を局所的に有するウレタン樹脂は、これまで挙げた原料のみで製造することも可能であるが、高粘度になり反応が不均一になるなどの問題を回避すべく、溶剤を用いるのが好ましい。使用される溶剤としては、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル等が挙げられる。
本発明の酸性基含有ウレタン樹脂を得る反応の温度は40〜120℃が好ましい。更に好ましくは50〜100℃である。
【0033】
本発明の酸性基を局所的に有するウレタン樹脂の製造方法は、少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートに少なくとも2個の酸性基を有するモノオールポリカルボン酸を反応させ、後にポリオールを反応させる方法である。
ポリイソシアネートとモノオールポリカルボン酸を反応させた後に、加えられるポリマージオールとを反応させる方法は、特に限定されず、公知の方法で製造できる。例えば、モノオールポリカルボン酸とポリイソシアネートを反応させて、1分子当たり1個以上のイソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーを形成した後、該プレポリマーとその他のジオールを反応させる方法などが挙げられる。
【0034】
原料比は少なくとも3個のイソシアネート基に対し0.5から1.8倍モル量のモノオールポリカルボン酸を反応させるのが好ましく、さらには0.8から1.2倍のモル数が好ましい。0.5倍未満であると分岐が多くなりゲル化がおきてしまい、1.8倍を超えると分子量が低くなってしまう。
【0035】
本発明の酸性基を局所的に有するウレタン樹脂の酸価は10〜100であることが好ましく、20〜80であることがさらに好ましく、30〜70であることが特に好ましい。酸価10未満であると顔料吸着能を示さず、酸価100を超えると樹脂間の相互作用が強くなり逆に増粘が起きる。
また、本発明の酸性基含有ウレタン樹脂の重合平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算値)は、1000〜100000であることが好ましく、1000〜50000であることがさらに好ましく、1000〜30000であることが特に好ましい。
【0036】
本発明の顔料組成物を構成する顔料は、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等の有機顔料、または、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機顔料、または、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックである。
【0037】
本発明を構成する塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体または塩基性基を有するトリアジン誘導体は、下記一般式(1)、(2)、(3)および(4)で示される群から選ばれる少なくとも1つの置換基を有するものである。
式(1)
【化7】

式(2)
【化8】

式(3)
【化9】

式(4)
【化10】

X:−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−または直接結合を表す。m:1〜10の整数を表す。
、R:それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはRとRとで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
:置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置
換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
、R、R、R:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
Y:−NR−Z−NR−または直接結合を表す。
、R:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
Z:置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルケニレン基または置換されていてもよいフェニレン基を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜8が好ましい。
P:式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。
Q:水酸基、アルコキシル基、式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。

式(5)
【化11】

式(6)
【化12】

【0038】
式(1)〜式(6)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0039】
塩基性基を有する顔料誘導体を構成する有機色素は、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の色素である。また、塩基性基を有するアントラキノン誘導体および塩基性基を有するアクリドン誘導体は、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基またはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基または塩素等のハロゲン等の置換基を有していてもよい。
また、塩基性基を有するトリアジン誘導体を構成するトリアジンは、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、またはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、またはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、塩素等のハロゲン、またはメチル基、メトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、水酸基等で置換されていてもよいフェニル基、またはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ニトロ基、水酸基等で置換されていてもよいフェニルアミノ基等の置換基を有していてもよい1,3,5−トリアジンである。
【0040】
本発明の塩基性基 を有する顔料誘導体、アントラキノン誘導体およびアクリドン誘導
体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、有機色素、アントラキノンもしくはアクリドンに式(7)〜式(10)で示される置換基を導入した後、上記置換基と反応して式(1)〜式(4)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミンまたは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を反応させることによって得られる。
式(7) −SO2Cl
式(8) −COCl
式(9) −CH2NHCOCH2Cl
式(10) −CH2Cl
また、有機色素がアゾ系色素である場合は、式(1)〜式(4)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分またはカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系顔料誘導体を製造することもできる。
【0041】
本発明の塩基性基を有するトリアジン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に式(1)〜式(4)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンまたはN−メチルピペラジン等を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミンまたはアルコール等を反応させることによって得られる。
【0042】
本発明の顔料組成物において、本発明の酸性基含有ウレタン樹脂の配合量は、顔料100重量部に対して好ましくは5〜150重量部である。また、塩基性基を有する顔料誘導体等の配合量は、顔料100重量部に対して好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは5〜20重量部である。また、必要により各種溶剤、樹脂、添加剤、分散剤等を混合してもよい。
【0043】
本発明の顔料組成物は、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより、顔料組成物をワニスに分散せしめてなる顔料分散体を調製することができる。酸性基含有ウレタン樹脂、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体または塩基性基を有するトリアジン誘導体(以下、塩基性基を有する顔料誘導体等という。)、顔料、その他の樹脂、添加剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めに酸性基含有ウレタン樹脂と塩基性基を有する顔料誘導体等と顔料のみ、あるいは、酸性基含有ウレタン樹脂と塩基性基を有する顔料誘導体等のみを分散し、次いで、順次他の成分を添加して再度分散を行ってもよい。
【0044】
また、横型サンドミル、 縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等
で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、2本ロールミル等による固形分散、または顔料への酸性基含有ウレタン樹脂と塩基性基を有する顔料誘導体等の処理を行ってもよい。また、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が本発明の分散体を製造するために利用できる。本発明の顔料分散体に用いることができる各種溶剤としては、有機溶剤、水等が挙げられるが、有機溶剤中で使用されるのが顔料分散性の点で好ましい。
【0045】
また、本発明の顔料分散体に用いることができる樹脂の例としては、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル酸性基含有ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン変性マレイン酸、ポリアミド樹脂、塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
【0046】
本発明の顔料分散体は、非水系の塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インキジェットインキなどのインキ、およびプラスチック着色等に利用できる。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明に関わる酸性基含有ウレタン樹脂、塩基性基を有する顔料誘導体等の製造例、および実施例を示す。以下の「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」をそれぞれ表す。酸性基含有ウレタン樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィ)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(製造例1)
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、クエン酸(OH価292.0mgKOH/g、酸価876.0mgKOH/g、扶桑化学工業株式会社製)30.7部、イソホロンジイソシアネートトリマー(製品名 デスモジュール 4470(DM 4470)住化バイエルウレタン株式会社製)105.6部、シクロヘキサノン100.0部を仕込み、徐々に昇温し、90℃にて1時間反応させ、後に2官能ポリカーボネートポリオール(製品名C−1015N クラレ株式会社製)385.6部、イソホロンジイソシアネート(デグサジャパン株式会社製)64.6部、シクロヘキサノン200.0部を仕込み、90℃にて反応させ、IRにてイソシアネート基に基づく2270cm−1のピークの消失を確認した後、40℃まで冷却し、ポリウレタン溶液(U−1)を得た。
(製造例2〜4)
表1に記載した原料と仕込み量を用いた以外は製造例1と同様にしてポリウレタン溶液(U)を合成し、順に(U−2)〜(U−4)を得た。
【0048】
【表1】

クエン酸(扶桑化学株式会社製)
リンゴ酸(扶桑化学株式会社製)
DMPA:ジメチロールプロパン酸(日本化成株式会社製)
C−1015N:2官能ポリカーボネートポリオール(OH価116mgKOH/g、クラレ株式会社製)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(デグサジャパン株式会社製)
DM Z4470:IPDIトリマー(住化バイエルウレタン株式会社製)
アノン:シクロヘキサノン
【0049】
(実施例1〜3<分散体の製造>)
表2のように、顔料(C.I. Pigment Blue 15:3)、製造例1〜3にて合成したポリウレ
タン(U−1)〜(U−3)、下記構造式(1)で表される塩基性基を有する顔料誘導体、およびシクロヘキサノンを配合し、2mmφジルコニアビーズ100部を加えペイントコンディショナーで3時間分散し、塗料を作成した。
【0050】
(比較例1<分散体の製造>)
製造例4にて合成したポリウレタン(U−4)を用いた以外は、実施例1〜3と同様に塗料を作成した。
【0051】
構造式(1)
【化13】

CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す。
【0052】
(分散体の評価)
本発明の顔料分散体の性能を評価するために、得られた塗料の粘度をB型粘度計で、ヘイズをヘイズメーター( 光透過率20%)で測定し、初期粘度およびヘイズで分散体の性能を評価した(粘度は低いほど良好。ヘイズは小さいほど良好)。初期粘度およびヘイズは分散後1日室温で放置後に測定、経時粘度は1週間40℃に放置後に測定を行った。結果を表2に示す。
本発明の分散体は、比較例に比べ、良好な粘度およびヘイズを示した。
【0053】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートに少なくとも2個の酸性基を有するモノオールポリカルボン酸を反応させ、さらに、ポリオールを反応させて得ることができる局所的に酸性基を有するウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記のモノオールポリカルボン酸が、2〜4個の酸性基を有することを特徴とする請求項1記載の局所的に酸性基を有するウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記のモノオールポリカルボン酸が、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸またはα−ヒドロキシコハク酸であることを特徴とする請求項1または2記載の局所的に酸性基を有するウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記のポリイソシアネートが脂環式構造を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の局所的に酸性基を有するウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物と、顔料とを含有してなる顔料組成物。
【請求項6】
さらに、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体および塩基性基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれる少なくとも一種の誘導体を含有することを特徴とする請求項5に記載の顔料組成物。
【請求項7】
塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体または塩基性基を有するトリアジン誘導体が、下記式(1)、式(2)、式(3)および式(4)の群から選ばれる少なくとも1つの塩基性置換基を有することを特徴とする請求項6に記載の顔料組成物。
式(1)
【化1】


式(2)
【化2】


式(3)
【化3】


式(4)
【化4】


X:−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−または直接結合を表す。m:1〜10の整数を表す。
、R:それぞれ独立に置換されていてもよいアルキル基、それぞれ独立に置換されていてもよいアルケニル基、それぞれ独立に置換されていてもよいフェニル基、またはRとRとが一体となって形成した置換されていてもよい複素環を表す。ただし、前記複素環は、さらなる窒素、酸素または硫黄原子を含んでいてもよい。
:置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置
換されていてもよいフェニル基を表す。
、R、R、R:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。Y:−NR−Z−NR−または直接結合を表す。
、R:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
Z:置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルケニレン基、または置換されていてもよいフェニレン基を表す。
P:式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。
Q:水酸基、アルコキシル基、式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。

式(5)
【化5】


式(6)
【化6】

【請求項8】
請求項5〜7いずれか1項に記載の顔料組成物をワニスに分散せしめてなる顔料分散体。
【請求項9】
少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートに少なくとも2個の酸性基を有するモノオールポリカルボン酸を反応させ、次いで、ポリオールおよび/またはジイソシアネート化合物を反応させることを特徴とする局所的に酸性基を有するウレタン樹脂組成物の製造方法。




【公開番号】特開2007−153915(P2007−153915A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346503(P2005−346503)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】