説明

屈曲光学ユニット

【課題】高さを高くして新たにスペースを設けなくてもシャッタアクチュエータをコンパクトなハウジング内に配備することができる屈曲光学ユニットを提供する。
【解決手段】プリズム111の斜面側にある空きスペースを活用してそのスペースにアクチュエータであるモータSMを配備する。プリズム111付近に一端が達しているガイド軸17にそのモータSMのギアヘッドGHに噛合する連結ギアGEARを介して伝えることによりガイド軸17にシャッタSHの開閉を駆動する駆動力を伝達させる。その駆動力によりシャッタSHが駆動されるようになるため、シャッタSHを駆動するためのアクチュエータを配設するスペースを新たに設ける必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方に向かう第1の光軸に沿って入射してきた被写体光をその第1の光軸と交わる第2の光軸に沿う方向に反射する反射光学素子を含む複数のレンズ群を備え、その第2の光軸に沿って進んできた被写体光を所定の結像面に結像させる屈曲光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
撮影装置には、前方に向かう第1の光軸に沿って入射してきた被写体光を第1の光軸と直交する方向に延びる第2の光軸に沿う方向に反射して撮像素子上に結像させる屈曲光学系を備えたものがある。この屈曲光学系を用いるとカメラボディの薄型化を図ることができる。この屈曲光学系の最大のメリットを引き出して薄型化を達成するためには、第1の光軸を持つ光学部材の数をなるべく減らして、できるだけ反射光学素子であるプリズムの出射面側にズームレンズのような光軸方向に移動させる必要のあるレンズ群を配置することが好ましい(例えば特許文献1参照)。そうすると第1の光軸側に、光軸方向に移動させる必要のあるズームレンズ等を配設する必要がなくなり、屈曲光学系を使うメリットが最大に引き出される。本出願人においては、薄型化を達成する屈曲光学系の組立技術に関して特願2005−30282号を含めて数多くの提案がなされている。
【0003】
またどの程度のズーム倍率にするかを予め決めておいてそのズーム倍率を達成するズームレンズの移動範囲からボディの高さ方向の寸法を定めその寸法内にズームレンズおよび駆動部を詰め込むようにすると、薄型化に加えて高さ方向の縮小化も図ることができる。
【0004】
図1は、薄型化に加えて上記縮小化が図られた屈曲光学ユニットを示す図である。
【0005】
図1(a)には、屈曲光学ユニット10を正面方向から見た図が示されており、図1(b)にはその屈曲光学ユニット10をA−A方向から見た矢視図がそれぞれ示されている。この図1には前方に向かう第1の光軸OP1に沿って入射してきた被写体光をその第1の光軸OP1と交わる第2の光軸OP2に沿う方向に反射する反射光学素子であるプリズム111を含む4つのレンズ群11〜14を備えた屈曲光学系が示されている。
【0006】
この例においては薄型化を図るために第1の光軸OP1側に第1レンズ群の中の対物レンズ110のみを配備してプリズム111以降にプリズム111を含む第1レンズ群の残りのレンズ112と第2レンズ群12から第4レンズ群14までを配備する様にしている。また高さ寸法の縮小化を図るために第2群レンズ12を第2の光軸方向に沿って移動させるためのリードスクリューLS1とモータM1とからなる第1のズーム駆動部ZM1と、第4レンズ群14を第2の光軸に沿って移動させるためのリードスクリューLS2とモータM2とからなる第2のズーム駆動部ZM2を高さ寸法内に高密度に実装する様にしている。
【0007】
まず、図1を参照して被写体光が図1の下方に示されている撮像素子15までどのようにして導かれるかを簡単に説明する。
【0008】
まず、第1レンズ群11のうちの対物レンズ110を経由して入射してきた被写体光がプリズム111で第1の光軸OP1と直交する第2の光軸OP2側に反射される。さらに、第2の光軸OP2側に反射された被写体光が第1レンズ群11の残りのレンズ112、さらに第2レンズ群12、第3レンズ群13、さらには第4レンズ群14を通って撮像素子15にまで達する。この例では、4つのレンズ群11〜14のうちの第2レンズ群12と第4レンズ群14とがズームレンズに該当する。
【0009】
図1には、そのズームレンズを構成する第2レンズ群12と第4レンズ群14が、第1、第2ズーム駆動部ZM1、ZM2によって駆動されて望遠に対応する位置にそれぞれ配置された状態が示されている。
【0010】
上記したように所定のズーム倍率を達成するズームレンズの移動範囲から高さ寸法を定めその高さ寸法内に第2レンズ郡12および第4レンズ群14、さらにそれらを駆動する駆動部ZM1,ZM2を詰め込むようにしているため、図1の望遠位置においては第3レンズ群13の配設位置ぎりぎりの位置に第2レンズ群12と第4レンズ群14が配置され、広角位置においては点線で示す様にカメラボディの高さ寸法ぎりぎりの位置に第2レンズ群12と第4レンズ群14が配置されるようになっている。このようにするとボディ内に高密度に実装される。
【0011】
しかしながら、このように高密度に実装されたボディ内にさらにシャッタを駆動するシャッタアクチュエータSM(図1中点線で示してある)を配設しようとすると、第1駆動部ZM1、第2駆動部ZM2が高さ寸法内に高密度に実装されているため、シャッタアクチュエータSMをシャッタの近くに配置することができない。そこでシャッタから離れた位置にシャッタアクチュエータを配置しそこから連結ギアなどを用いてシャッタまで駆動力を伝達するような構成にすることが考えられるが、そうすると部品点数が増大して屈曲光学ユニットが高価になってしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2005−37490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、シャッタを駆動するための駆動部を配備したとしても部品点数を増やすことなく、低廉化を図ることができる屈曲光学ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の屈曲光学ユニットは、前方に向かう第1の光軸に沿って入射してきた被写体光をその第1の光軸と交わる第2の光軸に沿う方向に反射する反射光学素子を含む複数のレンズ群を備え、その第2の光軸に沿って進んできた被写体光を所定の結像面に結像させる屈曲光学ユニットにおいて、
上記複数のレンズ群のうちの一部のレンズ群が、その第2の光軸方向に移動するレンズ群であって、
上記第2の光軸に平行に延び、上記一部のレンズ群をスライド自在に支持して、その一部のレンズ群の、上記第2の光軸方向への移動を案内するガイド軸と、
上記第2の光軸に沿って進む被写体光を開放自在に遮るシャッタと、
上記ガイド軸を回転することにより、そのガイド軸に、上記シャッタの開閉を駆動する駆動力を伝達させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする。
【0014】
上記本発明の屈曲光学ユニットによれば、元々配備されている上記ガイド軸に、上記アクチュエータから上記シャッタの開閉用の駆動力が伝達され、上記ガイド軸の回転により上記シャッタが駆動される。このため、図1に示す位置にわざわざシャッタアクチュエータを配設する必要がなくなってガイド軸を回転させることができる位置であればどこにでもアクチュエータを配設することができるようになる。
【0015】
このようになると、例えばガイド軸の外周にギアを設けさらにそのガイド軸のギアのある近傍(例えば図1に示すプリズム111の斜面側の空きスペース等)にアクチュエータであるモータを配設して、そのモータのギアヘッドと上記ギアとを噛合させるだけで済むようになるため、低廉な屈曲光学ユニットが構成される。
【0016】
以上説明した様に、シャッタを駆動するための駆動部を配備したとしても部品点数を増やすことなく、低廉化を図ることができる屈曲光学ユニットが実現する。
【0017】
当然のことながら上記本発明は、図1に示すような上記複数のレンズ群が、被写体側から上記結像面側に向かって順に上記屈曲光学素子を含む第1のレンズ群、第2のレンズ群、第3のレンズ群および第4のレンズ群からなり、上記シャッタが上記第2のレンズ群と上記第3のレンズ群とに挟まれた位置に配置されているものにも適用される。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、シャッタを駆動するための駆動部を配備したとしても部品点数を増やすことなく、低廉化を図ることができる屈曲光学ユニットが実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図2は本発明の一実施形態である屈曲光学ユニットの外観を示す図である。
【0021】
図2(a)には、図1と同様、屈曲光学ユニット1を正面方向から見た図が示されており、左側にはその屈曲光学ユニットをA−A方向から見た矢視図がそれぞれ示されている。
【0022】
図2に示す屈曲光学ユニット1の構成は、ガイド軸を回転するためのアクチュエータとしてモータと伝達部材が配設されている以外は図1と同様の構成である。
【0023】
光学反射部材であるプリズム111の斜面側に空きスペースがあることを利用してそのスペースに本発明にいうアクチュエータとなるモータSMが配設されている。そのモータSMのギアヘッドGHにガイド軸に延設されている連結ギアGEARが噛合してモータSMの回転に同期してガイド軸17が回転するようになっている。
【0024】
また、図2に示す様に、第2の光軸に沿って進む被写体光を開放自在に遮るシャッタSHが第2のレンズ群12と第3のレンズ13とに挟まれた位置に配置されている。
【0025】
このようにすると、ボディの高さを高くすることなく、プリズム111の斜面側にある空きスペースを積極的に活用してさらなる高密度実装が実現する。
【0026】
最後にこのようにして高密度に実装されたシャッタ用のアクチュエータによりどのようにシャッタSHが駆動されるかを図を参照して説明する。
【0027】
図3は、シャッタSHの開閉動作を説明する図である。
【0028】
図3に示す様にシャッタSHは2枚の板SH1,SH2の片面同士を重ね合わせた構造になっており、一方の板SH1と他方の板SH2とはカム機構により相互に反対の方向に移動することができるように連結されている。
【0029】
この2枚の板SH1,SH2のうちの一方の板SH2には、図3(b)の位置にあるときに最大の開口となる絞り孔Irisが設けられていて、他方の板には端部側にその絞り孔Irisを半切りにした形の切り欠き部HHが設けられている。
【0030】
モータSMが時計方向に回転して腕部ARMとともにカムピンCPが回転してカムピンCPが双方のカム溝SH1L,SH2Lのカム端に位置すると、切り欠き部HHが絞り孔Irisの外形に合うようにして重なりあって開放絞り状態になる。
【0031】
これに対し、モータSMが反時計回りに回転して図3(a)に示す位置にカムピンCPが位置すると、2枚の板SH1,SH2が相互に反対の方向に動いて絞り孔Irisが塞がれるように切り欠き部HHが図右側に動いて小絞り状態になる。さらにカムピンCPが前述のカム端とは反対の側のカム端に達すると完全に絞り孔Irisが塞がれて光が遮断される。つまり、本実施形態のシャッタは、絞り兼用シャッタということになる。
【0032】
このように、シャッタ用のアクチュエータSMをプリズム111の斜面側に配備して元々配設されているガイド軸17を伝達用部材として用い、さらにシャッタ側にも上記のような工夫を凝らすことによって薄型であってしかも小型の屈曲光学ユニットが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の屈曲光学ユニット10の構成を示す図である。
【図2】実施形態である屈曲光学ユニット1の構成を示す図である。
【図3】シャッタの動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0034】
1 10 屈曲光学ユニット
11 第1レンズ群
110 対物レンズ
111 プリズム
112 レンズ
12 第2レンズ群
13 第3レンズ群
14 第4レンズ群
15 撮像素子
OP1 第1の光軸
OP2 第2の光軸
SH シャッタ
SH1 第1の板
SH2 第2の板
ZM1 第1の駆動部
ZM2 第2の駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に向かう第1の光軸に沿って入射してきた被写体光を該第1の光軸と交わる第2の光軸に沿う方向に反射する反射光学素子を含む複数のレンズ群を備え、該第2の光軸に沿って進んできた被写体光を所定の結像面に結像させる屈曲光学ユニットにおいて、
前記複数のレンズ群のうちの一部のレンズ群が、該第2の光軸方向に移動するレンズ群であって、
前記第2の光軸に平行に延び、前記一部のレンズ群をスライド自在に支持して、該一部のレンズ群の、前記第2の光軸方向への移動を案内するガイド軸と、
前記第2の光軸に沿って進む被写体光を開放自在に遮るシャッタと、
前記ガイド軸を回転することにより、該ガイド軸に、前記シャッタの開閉を駆動する駆動力を伝達させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする屈曲光学ユニット。
【請求項2】
前記複数のレンズ群が、被写体側から前記結像面側に向かって順に、前記屈曲光学素子を含む第1のレンズ群、第2のレンズ群、第3のレンズ群および第4のレンズ群からなり、
前記シャッタが、前記第2のレンズ群と前記第3のレンズとに挟まれた位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の屈曲光学ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−199402(P2007−199402A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17991(P2006−17991)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】