説明

屋外設置用透明成形体

【課題】特定のポリカーボネート樹脂組成物からなる透明性、耐候性、湿熱安定性、防汚性に優れる屋外設置用透明成形体を提供する。
【解決手段】ポリカーボネートコポリマーを含み、かつケイ素含有量が、0.2〜2質量%である特定のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤を0.001〜1質量部、特定のリン化合物を0.01〜0.08質量部とを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外設置用成形体に関する。より詳細には、特定のポリカーボネート樹脂組成物からなる透明性、耐候性、湿熱安定性、防汚性に優れる透明カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光エネルギーの有効利用や、LEDに代表される照明器具の普及、無線インフラ社会の整備等が進み、これらに関連し屋外に設置されるデバイスがより一層増加している。
これらのデバイスにおいては、LED、有機EL等の光源を覆う、透明(半透明)の照明カバー、太陽光発電用ソーラーパネルを覆う透明カバー、液晶、計器等を覆う各種メーターカバー等、光の透過性や表示デバイスの視認性が必要とされる為、透明性が必要なカバー部材を有することがある。
このような透明カバー部材には、透明材料が使用されるが、加工が容易であることや、軽量化の観点からガラスよりも熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。
【0003】
しかしながら、通常使用される熱可塑性樹脂は、屋外環境における様々な環境条件に弱い為、比較的長期間使用することが想定される上記デバイスにおいては耐久性の面で不十分であった。
【0004】
例えば、透明樹脂として最も一般的な、アクリル樹脂は、耐衝撃性が低い為に容易に割れが発生する為、好ましくない。
また、耐熱性が低く、難燃性も低い為、電気電子デバイス用のカバーとしては適さない。
【0005】
一方、ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性に優れ、自己消化性も有するが、耐候性、耐湿熱安定性に弱いという致命的な欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−84669号公報
【特許文献2】特開平11−39910号公報
【特許文献3】特開平11−44557号公報
【特許文献4】特開2000−174297号公報
【特許文献5】特開2004−51885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、透明性、耐候性、湿熱安定性、防汚性に優れた屋外設置用成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定の構成単位を含有するポリカーボネートコポリマーを含み、かつ特性のケイ素含有量としたポリカーボネート樹脂と、紫外線吸収剤と、リン化合物とからなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる特定の平均厚みの平板状成形体を用いることで、透明性、耐候性、湿熱安定性、耐薬品性、防汚性、耐擦傷性、耐衝撃性、難燃性に優れる屋外設置用成形体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち本発明の第1の要旨は、下記式(1)で表される構成単位と、(2)で表される構成単位とを含むポリカーボネートコポリマーを含み、かつケイ素含有量が、0.2〜2質量%であるポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、紫外線吸収剤(B)を0.001〜1質量部、下記式(C)で表されるリン化合物を0.01〜0.08質量部とを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる平均厚み0.5〜5mmの平板状成形体であって、上記平均厚みにおけるヘイズ値が、10以下であることを特徴とする屋外設置用透明成形体に存する。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、Xは、炭素数1〜15の二価炭化水素残基、−S−、−SS−、−SO−、−SO−、−O−、−C−から選ばれる少なくとも1種の残基を表し、R、R、R、R、R、R、R及びRは、水素原子または炭素数1〜12の一価炭化水素基をそれぞれ表す。
【0012】
【化2】

【0013】
式(2)中、X、Xは、炭素数1〜6のアルキレン残基を示し、R、R10、R11、R12、R13、及びR14は、水素原子またはヒドロカルビル基を表し、R15及びR16は、水素原子、炭素数1〜12の一価炭化水素基を表し、mは3〜120の整数を表す。
【0014】
【化3】

【0015】
式(3)中、R17、R18、R19、R20、及びR21は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、nは、0または1を表す。
【0016】
また、第2の要旨は、照明、看板、ソーラーパネル、分電盤、電力計メーター、ガスメーター、水道計メーター、無線基地局、アンテナの透明カバーであることを特徴とする上述の屋外設置用透明成形体に存する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の屋外設置用成形体によれば、透明性、耐候性、湿熱安定性、防汚性に優れる為、様々な環境下においても長期に渡って使用可能な屋外設置機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明はこれら実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
【0019】
[1.概要]
本発明の屋外設置用成形体は、下記の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成る。
【0020】
[2.芳香族ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明の成形体を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、後述のポリカーボネートコポリマーを含有するポリカーボネート樹脂と、紫外線吸収剤(B)と、後述のリン化合物(C)とからなる。
【0021】
[3.ポリカーボネートコポリマー]
下記式(1)で表される構成単位と、(2)で表される構成単位とを含むポリカーボネートコポリマーを含む。
【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
式(1)中、Xは、炭素数1〜15の二価炭化水素残基、−S−、−SS−、−SO−、−SO−、−O−、−C−から選ばれる少なくとも1種の残基を表す。
【0025】
炭素数1〜15の二価炭化水素残基としては、メチル残基、エチル残基、プロピル残基等のアルキル残基、シクロペンチル残基、シクロヘキシル残基等のシクロアルキル残基等が挙げられるが、なかでもプロピル残基が好ましい。
【0026】
また、式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、水素原子または炭素数1〜12の一価炭化水素基をそれぞれ表す。
【0027】
炭素数1〜12の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基等が挙げられるが、なかでもメチル基が好ましい。
【0028】
式(1)で表される構成単位としてはなかでも、下記式(4)で表されるビスフェノールAから誘導される単位が特に好ましい。このような構成単位を含むことで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性が向上する傾向にある為有利である。
【0029】
【化6】

【0030】
また、式(2)中、X、Xは、炭素数1〜6のアルキレン残基を示す。炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン残基、エチレン残基、プロピレン残基、プロペン残基等が挙げられるが、なかでもエチレン残基、プロピレン残基が好ましく、プロピレン残基がより好ましい。
【0031】
また、R、R10、R11、R12、R13、及びR14は、水素原子またはヒドロカルビル基を表す。
【0032】
ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、プロポキシ基等の炭素数1〜12のアルキル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜12のシクロアルキル基、ビニル基等の炭素数2〜12のアルケニル基、フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基等が挙げられるが、なかでもメチル基、フェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0033】
また、R15、R16は、水素原子、炭素数1〜12の一価炭化水素基を表す。一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0034】
また、mは、3〜120の整数を表すが、なかでも5〜100が好ましく、8〜50がより好ましい。
【0035】
式(2)で表される構成単位としてはなかでも、下記式(5)で表される構成単位が好ましく、(6)〜(8)で表される構成単位がより好ましい。
【0036】
【化7】



【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
本発明で用いるポリカーボネートコポリマーの分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、通常14,000〜32,000、好ましくは15,000〜25,000である。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形品を与える樹脂組成物が得られる。ポリカーボネートコポリマーの最も好ましい分子量範囲は17,000〜23,000である。
【0040】
ポリカーボネートコポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネートコポリマーも使用することができる。なお、製造法の代表例としては、特開昭55−160052号公報、特開昭61−215652号公報、特開平4−202466号公報等が例示できる。
【0041】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上述のポリカーボネートコポリマーと、適宜その他の芳香族ポリカーボネート樹脂を含有してもよい。なかでも、上述のポリカーボネートコポリマーと、芳香族ポリカーボネートホモポリマーとの混合物が好ましく、芳香族ポリカーボネートホモポリマーとしては、ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネートがより好ましい。
【0042】
[4.ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述のポリカーボネートコポリマー単独、または上述のポリカーボネートコポリマーとその他のポリカーボネート樹脂との混合物である。その他のポリカーボネート樹脂としては、公知のポリカーボネート樹脂であれば特に制限はなく、脂肪族ポリカーボネート樹脂であっても芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよいが、なかでも耐熱性の観点から芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、耐衝撃性、難燃性の観点よりビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂が、より好ましい。
【0043】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、ケイ素含有量が、0.2〜2質量%であることが重要である。このような範囲とすることで、透明性に優れ、耐候性、耐湿熱安定性、防汚性が向上するばかりでなく、難燃性、耐擦傷性、離型性、耐熱性も向上する傾向にある。 このような観点より、ケイ素含有量としては、0.25〜1質量%がより好ましく、0.3〜0.8質量%であることがさらに好ましい。
【0044】
[5.紫外線吸収剤(B)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、紫外線吸収剤(B)を含有する。紫外線吸収剤を上述のポリカーボネート樹脂コポリマーと同時に含有することで、耐候性を効果的に向上することができる。
本発明における紫外線吸収剤(B)は、特に制限はなく、公知のものであれば適宜選択し用いればよいが、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0045】
紫外線吸収剤(B)の含有量としては、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、通常0.001〜1質量部、好ましくは、0.01〜0.5質量部、より好ましくは0.05〜0.4質量部である。紫外線吸収剤の含有量が、0.001質量部未満の場合は、耐候性改良効果が十分に得られず、また1質量部を超える場合は、効果が頭打ちになるばかりでなく、初期色相が悪化し、また金型汚染を引き起こす可能性がある為好ましくない。
【0046】
[6.リン化合物(C)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、下記式(9)で表される特定のリン化合物を含有する。このようなリン化合物を配合することで、黄変が少なく優れた色相の成形体が得られるばかりでなく、本発明の屋外設置用透明成形体の耐候性、湿熱安定性が良好なものとなる。
【0047】
【化10】

【0048】
上記式(9)中、R17、R18、R19、R20、及びR21は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられるが、なかでも水素原子またはtert−ブチル基が好ましい。
【0049】
また、nは、0または1を表す。nが0のときは、即ちホスフィン化合物を表し、nが1のホスファイト化合物を表す。
【0050】
リン化合物(C)の含有量としては、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜0.08質量部、好ましくは0.02〜0.06質量部、より好ましくは、0.025〜0.055質量部である。このようにリン化合物(C)の配合量を厳密に制御し配合することで、本発明の成形体の色相と湿熱安定性のバランスが良好なものとなる。
【0051】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに種々の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、染顔料、蛍光増白剤、難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防錆剤、アンチブロッキング剤、流動改質剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0052】
[7.屋外設置用透明成形体]
本発明の屋外設置用透明成形体は、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴する、平均厚み0.5〜5mmの平板状成形体である。
【0053】
平均厚みとは、以下のように測定した値の平均値である。
平板の場合は、以下の9点の厚みの平均値とする。
(1)平板の重心点の厚み(1点)、および
(2)重心点を中心に角度45度の間隔で周辺線(この表現でいいか?)に向かって放射状に直線を8本引き、周辺線との交点と重心とを結ぶ線上の中点の厚み(8点)を測定する。
なお、箱型である場合は、各平板部分で上記(1)(2)と同様の測定を行う。
平板でない場合(例えばレンズのような形状の場合)は、
(3)重心点の厚み(1点)
(4)重心点を中心に角度45度の間隔で周辺線に向かって放射状に糸や紐のようなフレキシブルな線状物を用いて面上部に沿って線を8本引き、周辺線との交点と重心とを結ぶ線上の中点の厚み(8点)
を測定する。
【0054】
平均厚みが、0.5mm未満の場合は、屋外設置用機器の透明カバー材料としては、剛性・耐衝撃性等の機械物性が不十分である他、長期使用によって成形体が濁りやすく視認性が著しく低下する傾向にある為好ましくない。一方、5mmを越える場合は、本発明のポリカーボネートコポリマーが成形加工時に凝集しやすくなり、本発明の屋外設置用透明成形体の著しく透明性が低下する傾向にあるほか、成形体製造時にヒケやソリが発生しやすく、寸法精度にも劣る為やはり好ましくない。このような観点より、平均厚みは、0.7〜4mmがより好ましく、0.8〜3mmがさらに好ましい。
【0055】
また、本発明の屋外設置用透明成形体は、上述の平均厚みにおいて、ヘイズ値が、10以下であることを特徴とする。このようなヘイズ値を示す屋外設置用成形体を用いることで、視認性が向上し、例えば、光源、表示デバイス、スイッチ等のカバーとして好適に用いることができる。このような観点より、上述のヘイズ値は、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。
【0056】
ヘイズ値を上述の範囲とする手法としては、特に制限はないが、本発明に用いるポリカーボネート樹脂のケイ素含有量を上述の範囲とし、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造時に混練条件を制御し、ダストやヤケを低減し、ポリカーボネートコポリマーを効率よく分散させ、内部ヘイズを向上させ、さらに、表面に傷や荒れを残さぬよう、平滑となるように本発明の屋外設置用透明成形体を製造し、外部ヘイズをも向上させることによって達成することができる。
【0057】
なお、上述のヘイズ値は、JIS K−7136に準拠し、ヘイズメーター(日本電飾工業社製「NHD−2000型」)にて、D65光源、透過法の条件で測定した値である。
【0058】
成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
【0059】
本発明の屋外設置用透明成形体は、特に、光源、表示デバイス、スイッチを有し、それらを覆う透明カバー部材に好適に用いることができる。
【0060】
光源としては、LED、有機EL、無機EL、冷陰極間、白熱電球、蛍光管等が挙げられるが、なかでもLEDが好ましい。
【0061】
また、表示デバイスとしては、液晶、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ、計器針、表示灯等が挙げられる。
【0062】
また、スイッチとしては、トグルスイッチ、レバースイッチ、スライドスイッチ、ロッカースイッチ、プッシュスイッチ、ロータリースイッチ、プルチェーンスイッチ、キーボードスイッチ、リミットスイッチ、DCスイッチ、キースイッチ等が挙げられる。
【0063】
また、本発明の屋外設置用デバイスとしては、上述の光源、表示デバイス、スイッチと、上述の屋外設置用成形体とからなる透明カバーとからなることを特徴とする。
【0064】
なかでも、照明、看板、ソーラーパネル、分電盤、電力計メーター、ガスメーター、水道計メーター、無線基地局、アンテナの透明カバーとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
なお、実施例及び比較例で用いた測定・評価法は、以下のとおりである。
【0066】
[ケイ素含有量の評価]
プロトンNMRにて、上記式(1)のR〜R由来のプロトンピークと、上記式(2)のR〜R14由来のプロトンピークの比より、上記式(2)構成単位の含有量を算出し、その値よりケイ素(Si)の含有量(質量%)を算出した。
【0067】
[ヘイズ評価]
JIS K−7136に準拠し、後述の平板状試験片を試験片とし、ヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH−2000型」)で、各厚みにおけるヘイズ(単位:%)を測定した。
【0068】
[耐候性評価]
後述の平板状試験片を試験片とし、サンシャインウェザオメーターを用い、ブラックパネル温度63℃、スプレー(12分/60分)の条件で、300h処理をし、黄変具合を評価した。なお、黄変がわずかなものを○、著しく黄変したものを×と評価した。
【0069】
[防汚性評価]
上述の耐候性試験後のサンプル表面の、水垢のつき具合を目視で評価した。なお、汚れが少ないものを○、汚れが多いものを×と評価した。
【0070】
[湿熱安定性]
後述の平板状試験片を試験片とし、スチームプレッシャークッカー試験機にて、120℃、8時間の条件で処理し、成形品の透明性、及び外観を目視で評価した。
なお、評価は次の要領で、4段階で評価した。
1:白濁、クラックが著しくある
2:白濁、クラックが僅かに認められる
3:クラックが僅かに認められる
4:白濁、クラックがほとんど認められない
【0071】
[実施例1]
上記式(5)で表されるポリカーボネートコポリマー(ケイ素含有量:1.13質量%、n=40)33質量部、ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:「ユーピロンS−3000、粘度平均分子量:21,000)67質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3、−テトラメチルブチル)フェノール、シプロ化成社製、商品名:「シーソーブ709」)0.3質量部、リン化合物−1(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ADEKA社製、商品名:「アデカスタブ2112」)0.05質量部とを、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0072】
[試験片作製]
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、名機製作所製のM150AII−SJ型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、長さ100mm、幅50mm、厚さ3mm(実施例1〜4、及び比較例1〜5)、及び6mm(比較例6)の平板状試験片を成形した。このような方法で作製した成形品を、上記した評価用の試験片として用いて評価を行った。
【0073】
[実施例2]
ポリカーボネートコポリマーの配合量を67質量部、ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂の配合量を33質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1の配合量を0.3質量部、リン化合物−1の配合量を0.05質量部、さらにパーフルオロブタンスルホン酸カリウム(難燃剤)を0.1質量部とした他は、実施例1と同様にして、評価を行った。
【0074】
[実施例3]
ポリカーボネートコポリマーの配合量を100質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1の配合量を0.3質量部、リン化合物−1の配合量を0.05質量部とした他は、実施例1と同様にして、評価を行った。
【0075】
[実施例4]
ポリカーボネートコポリマーの配合量を67質量部、ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂の配合量を33質量部、トリアジン系紫外線吸収剤−1(2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、チバ社製、商品名「チヌビン1577ED」)の配合量を0.3質量部、リン化合物の配合量を0.05質量部とした他は、実施例1と同様にして、評価を行った。
【0076】
[比較例1]
ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1の配合量を0.3質量部、リン化合物−1の配合量を0.05質量部とした他は、実施例1と同様にして、評価を行った。
【0077】
[比較例2]
ポリカーボネートコポリマーの配合量を67質量部、ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂の配合量を33質量部、リン化合物−1の配合量を0.05質量部とした他は、実施例1と同様にして、評価を行った。
【0078】
[比較例3]
ポリカーボネートコポリマーの配合量を33質量部、ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂の配合量を67質量部、リン化合物−2(ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、商品名:ADEKA社製「アデカスタブPEP−8」)の配合量を0.05質量部とした他は、実施例1と同様にして、評価を行った。
これらの結果を、表1に示す。
【0079】
[比較例4]
ポリカーボネートコポリマーの配合量を67質量部、ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂の配合量を33質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1の配合量を0.3質量部、リン化合物−2の配合量を0.05質量部とした他は、実施例1と同様にして、評価を行った。
これらの結果を、表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
[比較例5]
ケイ素含有量が2.4%のポリカーボネートコポリマーの配合量を100質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤−1の配合量を0.3質量部、リン化合物−1の配合量を0.05質量部とした他は、実施例1と同様にして、3mm厚みのヘイズ評価を行ったところ、値は21%であった。
【0082】
[比較例6]
実施例1の方法で得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットから上述の方法で厚さ6mmの平板上試験片を成形し、ヘイズ評価を行ったところ、値は15%であった。
【0083】
表1に示すように、ケイ素を特定量含有するポリカーボネートコポリマー、紫外線吸収剤、およびリン化合物を含有する成型体は耐候性、湿熱安定性および防汚性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本成形体は、耐候性、湿熱安定性および防汚性に優れており、また、透明性にも優れているので、屋外で使用される、照明、看板、ソーラーパネル、分電盤、電力計メーター、ガスメーター、水道計メーター、無線基地局、アンテナの透明カバーとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位と、(2)で表される構成単位とを含むポリカーボネートコポリマーを含み、かつケイ素含有量が、0.2〜2質量%であるポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、
紫外線吸収剤(B)を0.001〜1質量部、
下記式(C)で表されるリン化合物を0.01〜0.08質量部とを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる平均厚み0.5〜5mmの平板状成形体であって、上記平均厚みにおけるヘイズ値が、10以下であることを特徴とする屋外設置用透明成形体。

【化1】

[式(1)中、Xは、炭素数1〜15の二価炭化水素残基、−S−、−SS−、−SO−、−SO−、−O−、−C−から選ばれる少なくとも1種の残基を表し、
、R、R、R、R、R、R及びRは、水素原子または炭素数1〜12の一価炭化水素基をそれぞれ表す。]

【化2】

[式(2)中、X、Xは、炭素数1〜6のアルキレン残基を示し、R、R10、R11、R12、R13、及びR14は、水素原子またはヒドロカルビル基を表し、R15及びR16は、水素原子、炭素数1〜12の一価炭化水素基を表し、mは3〜120の整数を表す。]

【化3】

[式(3)中、R17、R18、R19、R20、及びR21は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、nは、0または1を表す。]
【請求項2】
照明、看板、ソーラーパネル、分電盤、電力計メーター、ガスメーター、水道計メーター、無線基地局、アンテナの透明カバーであることを特徴とする請求項1に記載の屋外設置用透明成形体。

【公開番号】特開2011−246530(P2011−246530A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118863(P2010−118863)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】