説明

屋根構造

【課題】断熱パネルからなる屋根材に凸条を設けることで強度を向上して母屋の設置数の削減と施工性の向上を達成することができ、且つ屋根材の位置合わせを容易に行うことができる屋根構造を提供する。
【解決手段】二枚の金属外皮9,9の間に断熱材10を充填した断熱パネル11にて形成される複数の屋根材1を設置して構成されている。上面に複数の凸条2を有する。前記凸条2の長手方向と直交する方向に隣り合う屋根材1同士が、一方の屋根材1の端部に設けられた上向き嵌合部3と、他方の屋根材1の端部に設けられた下向き嵌合部4との上下方向の凹凸嵌合により接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根構造に関し、詳しくは断熱パネルで構成される屋根材の強度向上を図ると共に屋根材間の位置合わせを容易に行うことができる屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根材等の複数の外装材を接続して設置する場合において、屋根材として断熱パネルを使用し、その全面に亘って防水層を設けている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、建物に屋根材を設置する場合、その下地となる母屋の数を削減するために、屋根材に凹凸を設けることで強度向上を図ることがなされている。これにより、屋根材の剛性を向上して、母屋の設置数を削減し、施工性を向上すると共に施工コストを削減することができる。
【0004】
しかし、このような凹凸を有する屋根材を設ける場合、特にその端縁の防水施工が問題となる。すなわち、凹凸を有する屋根の端縁にはこの凹凸が現れるため、この端縁を防水シート等にて隙間無く覆うことが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、屋根の端縁の凹凸形状に合致する形状の防水用の役物を設けて端縁部分の防水を図ることも考えられる。
【特許文献1】特開平11−172834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、複数枚の屋根材を連結して屋根を形成する場合、隣り合う屋根材間に位置ずれが生じていると、屋根の凸条間のピッチにずれが生じる。特に、屋根材同士をパッキンを介して突き合わせて防水性を確保する場合には、パッキンを設けた分だけ屋根材の働き幅が大きくなりやすく、この屋根材の働き幅を一定に保つことが困難となって、凸条間のピッチにずれが生じやすくなる。このように凸条間のピッチにずれが生じると、防水用の役物の形状に合致しなくなり、この役物を設置することができなくなるという事態が生じ得る。
【0007】
このため、屋根材の設置にあたっては、屋根材の働き幅が一定になるように屋根材を設置するごとに位置合わせをしなければならず、また位置ずれが生じてしまった場合にそれを修正するために屋根材を設置し直さなければならず、煩雑な手間と労力が必要となるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、断熱パネルからなる屋根材に凸条を設けることで強度を向上して母屋の設置数の削減と施工性の向上を達成することができ、且つ屋根材の位置合わせを容易に行うことができる屋根構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る屋根構造は、二枚の金属外皮9,9の間に断熱材10を充填した断熱パネル11にて形成される複数の屋根材1を設置して構成され、上面に複数の凸条2を有する屋根構造であって、前記凸条2の長手方向と直交する方向に隣り合う屋根材1同士が、一方の屋根材1の端部に設けられた上向き嵌合部3と、他方の屋根材1の端部に設けられた下向き嵌合部4との上下方向の凹凸嵌合により接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1において、凸条2の長手方向における屋根Aの端縁が、前記凸条2と合致する形状の複数の凸覆い部6を有する防水役物5で覆われていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、上記屋根材1を構成する断熱パネル11の上側の金属外皮9が被覆金属板7であり、上記防水役物5が、前記被覆金属板7の被膜に溶着可能な材質で形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3において、隣接する屋根材1同士の隙間を覆う防水シート8が設けられ、前記防水シート8が、上記被覆金属板7の被膜に溶着可能な材質で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、屋根に断熱性を付与すると共に、凸条を設けることで屋根の強度を向上し、屋根材を設置するための母屋の設置数の削減と施工性の向上とをなすことができ、且つ、隣接する屋根材同士の接続を、上向き嵌合部と下向き嵌合部とによる上下方向の嵌合にて行うことで、この屋根材同士の位置ずれが生じにくくなって、屋根材を設置するにあたっての位置合わせが容易となり、屋根に形成される複数の凸条のピッチにずれが生じることを防ぐことができるものである。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、防水役物によって、凸条の長手方向における屋根の端縁の防水をすることができ、且つ防水役物を設けるにあたり、屋根の端縁における凸条と防水役物の凸覆い部とにずれが生じることを防ぐことができて、防水役物によって屋根の端縁の防水を容易且つ確実に行うことができるようになるものである。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、被覆金属板の被膜に防水役物を溶着させることで防水役物を設けることができ、接着剤の劣化の問題がなく密着性が損なわれにくくなり、経時変化による防水性の低下が発生しにくくなるものである。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、防水シートによって隣接する屋根材同士の隙間も防水することができ、且つ被覆金属板の被膜に防水シートを溶着させることで防水シートを設けることができて、接着剤の劣化の問題がなく密着性が損なわれにくくなり、経時変化による防水性の低下が発生しにくくなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
屋根材1としては、図7に示すような断熱パネル11で形成したものが挙げられる。断熱パネル11は二枚の金属外皮9の間に断熱材10を介在させ、各金属外皮9と断熱材10とをそれぞれ接着して一体化することにより形成されている。
【0019】
金属外皮9としては被覆金属板7を用いることができる。被覆金属板7は、鋼板、メッキ鋼板、ステンレス鋼板、ガルバリウム鋼板等で形成される基材金属板の表面(断熱材10と接着していない方の表面)に被膜を全面に亘って形成したものである。この被膜は樹脂系塗料を基材金属板の表面に塗布して硬化させることによって、塗膜として形成したり、樹脂系フィルムを基材金属板の表面にラミネートすることによって、樹脂層として形成したりすることができる。被膜の膜厚は適宜設定可能であるが、例えば、100〜500μmとすることができる。尚、断熱パネル11を構成する二枚の金属外皮9のうち、この断熱パネル11を屋根材1として設置した場合に上面側に配置される方の金属外皮9を被覆金属板7で形成すれば良く、下面側に向く方の金属外皮9は被覆金属板7あるいは被覆されていない金属板(例えば、基材金属板)のいずれでも良い。
【0020】
この被覆は、熱溶着性や溶剤接合性等の溶着性を有する被膜であることが好ましい。熱溶着性の被膜としては、塩化ビニル樹脂塗料やビニル樹脂フィルムで形成するものや、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのフィルムで形成するものが挙げられる。
【0021】
この屋根材1を設置して構成される屋根Aの上面には複数の凸条2が形成される。そのため屋根材1の上面の金属外皮9は凹凸加工が施されている。図示の例では、上側の金属外皮9の一端部及び他端部には上方に膨出する厚肉部12が形成されており、屋根材1を設置する際には隣り合う屋根材1の厚肉部12同士が一体化して、平行並列な複数の凸条2が形成されるようになっている。
【0022】
このとき、屋根材1に形成される各凸条2の長手方向と直交する方向に生じる屈曲部分37の曲率半径が20mm以上となるように、各厚肉部12を形成することが好ましい。すなわち、図示の例では上面の金属外皮9の平坦部分と厚肉部の立ち上がり部分との間の屈曲部分37の曲率半径が20mm以上となり、且つ前記立ち上がり部分と厚肉部の平坦な上面との間の屈曲部分37の曲率半径が20mm以上となるように形成することが好ましい。
【0023】
金属外皮9の両側の各厚肉部12の上面には下方に凹入する固着用溝13を設けることが好ましい。
【0024】
また、厚肉部12が設けられている側の屋根材1の一端には上向き嵌合部3が設けられ、他端には下向き嵌合部4が設けられている。これらの嵌合部3,4は屋根材1の端部において金属外皮9を折り曲げ成形して形成されている。このように各嵌合部3,4を厚肉部12で形成することによって、各嵌合部3,4を形成するために必要な屋根材1の厚みを確保することができる。このとき、屋根材1の一端面において外側方に突出する上向き嵌合部3を形成し、他端面において外側方に突出する下向き嵌合部4を形成する。
【0025】
上向き嵌合部3には上方に開口する嵌合溝14が形成されており、この嵌合溝14の外側方には上方に突出するストッパ片15が設けられている。一方、下向き嵌合部4には下方に突出する嵌合凸条16が形成されており、この嵌合凸条16の内側方には上方に凹入するストッパ溝17が設けられている。図7に示す例では、上向き嵌合部3全体が下側の金属外皮9を屈曲成形して形成されると共に、下向き嵌合部4の嵌合凸条16及びストッパ溝17が下側の金属外皮9を屈曲成形して形成されている。
【0026】
また、下向き嵌合部4が設けられている側の厚肉部12では、嵌合凸条16の上方に固着用溝13が設けられていると共に、その内側方にもう一つ固着用溝13が設けられている。固着用溝13の個数及び位置は適宜に設定され、本例に示すものには限られない。
【0027】
この上向き嵌合部3と下向き嵌合部4は、二つの屋根材1を隣接して接続する場合に、図1,2に示すように、一方の屋根材1の上向き嵌合部3と他方の屋根材1の下向き嵌合部4とが上下方向に嵌合するように形成される。この嵌合時には、各屋根材1の下側の金属外皮9が面一となった状態で、上向き嵌合部3の嵌合溝14と下向き嵌合部4の嵌合凸条16とが嵌合し、且つ上向き嵌合部3のストッパ片15が下向き嵌合部4のストッパ溝17に嵌合する。これにより、上向き嵌合部3と下向き嵌合部4とが嵌合した状態では、屋根材1同士が屋根Aの凸条2と直交する方向に位置決めされ、位置ずれが生じないようになる。
【0028】
また、このとき、ストッパ片15の先端とストッパ溝17の上底部との間には隙間が形成されるようにし、この隙間にパッキン18を介在させることが好ましい。これにより屋根材1同士の連結部分における気密性が向上する。このときパッキン18はストッパ片15とストッパ溝17との間で上下方向に挟持されて設けられているため、屋根材1同士の横方向の位置ずれ、ひいては屋根Aの凸条16のピッチのずれに影響を及ぼすことがない。
【0029】
ここで、屋根材1の上向き嵌合部3が形成されている側における、上向き嵌合部3の上方の端面19の、水平方向に対する傾斜角度θが90°未満の、上向き嵌合部3側が外側方に突出する傾斜面となるように形成されており、一方、屋根材1の下向き嵌合部4が形成されている部位の端面20は、前記上向き嵌合部3側の傾斜面19と合致する、嵌合凸条16よりも上方側ほど外側方に突出する傾斜面として形成されている。これにより、上向き嵌合部3の上方の空間が広く開放され、上向き嵌合部3の上方から下向き嵌合部4を嵌合させる際の作業が容易なものとなる。嵌合時には、上向き嵌合部3よりも上方の端面19と、下向き嵌合部4が設けられている部位の端面20とが突き当てられた状態となる。
【0030】
また、上記嵌合状態では、屋根材1間の位置ずれを確実に防止するため、上記のように端面19,20同士が突き合わされた状態において、嵌合凸条16とストッパ片15とが当接した状態となるようにすることが好ましい。また、このとき、ストッパ溝17内におけるストッパ片15の上方への突出寸法が5mm以上となるようにすることが好ましい。
【0031】
また、図4は、上向き嵌合部3と下向き嵌合部4の他の形態の例を示すものであり、上向き嵌合部3の嵌合溝14及びストッパ片15が、上側の金属外皮9を屈曲成形して形成されており、下向き嵌合部4全体が上側の金属外皮9を屈曲成形して形成されている。
【0032】
また、下向き嵌合部4が形成されている側の端面の下端部には、内側に凹入する凹入部35が設けられており、上向き嵌合部3が形成されている側の端面の下端部には前記凹入部35に合致する、外側方へ突出する突出部36が設けられている。また各厚肉部12には、それぞれ一つずつ固着用溝13が設けられているが、既述のように固着用溝13の個数及び位置はこのようなものに限られない。それ以外は図7に示す形態と同様の形態を有しており、図1,2に示すものと同様にして屋根材1同士を嵌合接続することができる。
【0033】
このように屋根材1が連結された状態では、各屋根材1の厚肉部12同士が突き合わされて一体となり、屋根Aの凸条2が形成される。
【0034】
このような屋根材1は、建物の屋根部分の母屋21等で構成される屋根下地に設置される。屋根材1を設置するにあたっては、まず屋根材1を母屋21の上に配置し、母屋21と、上向き嵌合部3が形成されている側の厚肉部12とが合致する位置において、この厚肉部12にビス等の固着具22を打入或いは螺挿等して、屋根材1を母屋21に固定する。このように厚肉部12に固着具22を設けることで、固着具22を設ける位置において屋根材1に十分な強度を確保することができる。このとき、厚肉部12に固着用溝13を設けている場合には、この固着用溝13の内側で固着具22を打入等すると、固着具22の頭部が固着用溝13内に収まり、この頭部が突出しないようにすることができる。固着用溝13を設けていない場合には、厚肉部12と母屋21とが合致する適宜の位置に固着具22を打入等すれば良い。
【0035】
次に、図2,4に示すように、この屋根材1の上向き嵌合部3側の上方に、別の屋根材1を配置し、この別の屋根材1を下方に移動させ、既に設置されている屋根材1の上向き嵌合部3と、別の屋根材1の下向き嵌合部4とを嵌合させる。この状態で、前記別の屋根材1の各厚肉部12と母屋21とが合致する位置において、各厚肉部12の固着用溝13にビス等の固着具22を打入或いは螺挿等して、屋根材1を母屋21に固定する。これにより、二つの屋根材1が隣り合って連結されると共に、一体化した厚肉部12にて屋根Aの凸条2が形成される。このとき、図2に示すように下向き嵌合部4の嵌合凸条16の上方に固着用溝13が設けられている場合には、この固着用溝13に打入等した固着具22が、一方の屋根材1の上向き嵌合部3と他方の屋根材1の下向き嵌合部4とを同時に貫通し、隣接する屋根材1同士を強固に接続することができる。
【0036】
この動作を繰り返すことで、母屋21上に、屋根Aの凸条2の長手方向と直交する方向に並んで複数の屋根材1を設置することができる。
【0037】
また、更に屋根Aの凸条2の長手方向に並んで屋根材1を設置することもできる。この場合は、図3に示すように屋根材1の端面同士を必要に応じてパッキン23を介して突き合わせた状態で、上記と同様に母屋21と合致する位置において厚肉部12の固着用溝13にビス等の固着具22を打入等することで、屋根材1を固定することができる。
【0038】
このようにして複数枚の屋根材1を縦横に並設した後、屋根材1同士の接続部分に防水シート8を溶着して防水処理を施すことが好ましい。このとき、隣接する屋根材1の隙間とその周辺部分のみを覆って防水シート8を屋根材1に溶着することができる。また、このとき屋根材1と防水シート8の間に鉄板等の板材24や、アルミニウムテープ、ステンレステープ等の金属テープ25などを介在させても良い。
【0039】
防水シート8としては、溶着する屋根材1の被覆金属板7(金属外皮9)の被膜の樹脂成分と同種の樹脂成分を主成分として含有しているものを用いることが好ましい。つまり、被覆金属板7の被膜が塩化ビニル樹脂塗料やビニル樹脂フィルムで形成されている場合は、被膜の樹脂成分は塩化ビニル樹脂であるので、防水シート8として塩化ビニル樹脂を樹脂成分として含有するシートを用いるようにするのが好ましく、また、被覆金属板7の被膜がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのフィルムで形成されている場合は、被膜の樹脂成分はポリオレフィン系エラストマーであるので、防水シート8としてポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを樹脂成分として含有するシートを用いるのが好ましい。
【0040】
この防水シート8としては防水性や取扱性を考慮して適宜な性能のものを用いることができるが、防水シート8の厚みは、例えば0.3〜2.0mm、好ましくは1.0〜1.5mmにすることができる。
【0041】
図示の例では、屋根Aの凸条2に沿った屋根材1同士の隙間に沿って一方の屋根材1から他方の屋根材1に亘って鉄板等の帯状の板材24を載置している。この金属板4の幅は特に制限されないが、凸条2の上面で露出する固着用溝13を全て塞ぐことができる幅に形成することが好ましい。
【0042】
この板材24に重ねて、上記隙間に沿って帯状の防水シート8(8a)を配置している。防水シート8aの幅寸法は、板材24の両側において40mm以上の溶着幅が確保できものであることが好ましい。そして、屋根材1の金属被覆の被膜と防水シート8aが熱溶着性の樹脂を含むものである場合には、防水シート8aの表面側から熱を加えることによって、被膜と防水シート8とを溶融又は軟化し、この後、加熱を終了することにより、被膜と防水シート8aとを再び固化又は硬化させる。このようにして被膜と防水シート8aとを溶着することによって、防水シート8aを接着することができる。また、屋根材1の金属被覆の被膜と防水シート8が溶剤接合性を有する樹脂を含むものである場合は、被膜と防水シート8aとの間に溶剤を供給して前記樹脂成分を溶解させた後、乾燥等することによって被膜と防水シート8aとを溶着することができる。
【0043】
この防水シート8aによって、屋根Aの凸条2に沿った屋根材1同士の隙間の防水をすることができ、同時に固着具22を打入等した部分の防水も行うことができる。このとき固着具22の頭部は固着用溝13内に収まっているため、防水シート8aの外面に固着具22の頭部による膨らみが生じることがなく、また防水シート8aと固着用溝13との間には板材24が介在しているため、固着用溝13が形成されている部分において防水シート8aに凹みが生じるようなこともなくなり、外観が良好なものとなる。
【0044】
また、凸条2と直交する方向に沿った屋根材1同士の隙間に沿って、一方の屋根材1から他方の屋根材1に亘ってアルミニウムテープやステンレステープ等の金属テープ25を貼着している。この金属テープ25の幅は特に制限されず、前記隙間の幅以上の適宜の幅のものが用いられる。
【0045】
この金属テープ25に重ねて、屋根材1の隙間に沿って帯状の防水シート8(8b)を配置している。防水シート8bの幅寸法は、金属テープ25の両側において40mm以上の溶着幅が確保できものであることが好ましい。そして、この防水シート8bを既述のものと同様の手法により被覆金属板7の被膜に溶着する。
【0046】
この防水シート8bによって、屋根Aの凸条2と直交する方向に沿った屋根材1同士の隙間の防水をすることができる。このとき、防水シート8bは凸条2を横切ることになるが、叙述のように凸条2の屈曲部分37の曲率半径が20mm以上であると、凸条2の屈曲がなだらかになり、屋根材1に防水シート8bを溶着する際の作業性が向上すると共にこの屈曲部分37で防水シート8bと屋根材1との間に隙間が生じることを防止することができる。このため、防水シート8bによる防水を確実に行うことができるようになる。
【0047】
そして、屋根Aの凸条2の長手方向の端縁に防水役物5を設けることで、屋根Aの端縁部分の防水を行う。防水役物5としては、屋根Aの複数の凸条2と合致する複数の凸覆い部6が設けられているものを用いる。この防水役物5は、上記防水シート8と同様に、溶着する屋根材1の被覆金属板7(金属外皮9)の被膜の樹脂成分と同種の樹脂成分を主成分として含有するシート材を成形したものを用いることが好ましい。前記シート材としては、防水性や取扱性を考慮して適宜な性能のものを用いることができるが、その厚みは、例えば0.3〜2.0mm、好ましくは1.0〜1.5mmの範囲とすることができる。
【0048】
図8(a)に示す防水役物5(5a)の一例では、防水役物5aは、屋根Aの上面の端縁に配置される上片26と、屋根Aの端面側に配置される垂下片27とを備えている。上片26は、屋根Aの端縁の上面形状と合致する形状に屈曲成形され、屋根Aの凸条2に合致する位置に、この凸条2と合致する形状の複数の凸覆い部6が上方に膨出するように形成されている。垂下片27は上片26の一端縁から下方に延出されている。
【0049】
このような防水役物5aは、複数の屋根材1を設置した屋根Aの、凸条2の長手方向の端縁における防水を行う。図5に示す例は、建物の端縁部分において、屋根Aの端縁に樋等の部材を支持するための支持金具29を設けた場合において、防水役物5aを設けた例を示す。この支持金具29は、鉛直方向の縦片30の上端から略水平方向に延出された固定片31と、本端部の下端から前記固定片31とは反対側に略水平方向に延出された保持片32とから構成されている。支持金具29の固定片31は屋根材1と母屋21との間に介装され、この屋根材1を母屋21に固定する固着具22が固定片31を貫通することにより、固定されている。この固定片31の端縁の位置と屋根材1の端縁位置とが一致しており、この固定片31の端縁から縦片30が垂下している。そして、縦片30の下端から保持片32が外側方に向けて突出している。
【0050】
防水役物5aを設けるにあたっては、屋根Aの上面の端縁に上片26を、この上片26の凸覆い部6と屋根Aの凸条2の位置を合致させた状態で重ねると共に、垂下片27を屋根Aの端面に沿って配置する。この垂下片27は屋根材1の端面、及び屋根材1と支持金具29との間の隙間を覆い、更に支持金具29の縦片30を覆うと共にこの縦片30の下端で屈曲されて保持片32の表面を覆っている。この状態で、防水役物5aの上片26を被覆金属板7の表面に防水シート8の場合と同様にして溶着することで防水役物5aを設置することができる。また、このとき支持金具29も金属外皮9と同様の被覆金属板7で形成し、防水役物5aの垂下片27を支持金具29の縦片30や保持片32にも溶着することができる。
【0051】
このようにすると、屋根Aの端縁の防水を行うにあたり、屋根Aの凸条2による凹凸に合致させて屋根Aの端縁を防水役物5aで覆うことができ、屋根Aの端面の防水を行うと共に、屋根Aと支持金具29の間の隙間の防水も為すことができる。
【0052】
また、図8(b)に示す防水役物5(5b)の他例では、防水役物5bは、屋根Aの上面の端縁に配置される上片26と、屋根Aの端面側に配置される添え片28とを備えている。上片26は、図8(a)に示す防水役物5aと同様に、屋根Aの端縁の上面形状と合致する形状に屈曲成形され、屋根Aの凸条2に合致する位置に、この凸条2と合致する形状の複数の凸覆い部6が上方に膨出するように形成されている。添え片28は上片26の一端縁から上方に延出されている。
【0053】
この防水役物5bは、屋根Aの端縁を、この屋根Aよりも上方に設置される外壁やベランダ等を構成する壁材33に突き当てるように設置した場合の前記端縁に設けるものである。図6に示す例では、屋根Aの端面は壁材33に若干の隙間をあけて対向するように設けられ、この屋根Aの端面と壁材33との間にパッキン34を介装している。
【0054】
防水役物5を設けるにあたっては、屋根Aの上面の端縁に上片26を、この上片26の凸覆い部6と屋根Aの凸条2の位置を合致させた状態で重ねると共に、この上片26にて屋根材1と壁材33の間の隙間を覆うようにし、更に添え片28を壁材33の沿って配置する。この上片26及び添え片28によって、屋根材1と壁材33との間の隙間を覆うようにしている。この状態で、防水役物5の上片26を被覆金属板7の表面に防水シート8の場合と同様にして溶着することで防水役物5を設置することができる。また、このとき壁材33も金属外皮9と同様の被覆金属板7で形成し、防水役物5の添え片28を壁材33に溶着することができる。
【0055】
このようにすると、屋根Aの端縁の防水を行うにあたり、屋根Aの凸条2による凹凸に合致させて屋根Aの端縁を防水役物5bで覆うことができ、屋根Aの端面の防水を行うと共に、屋根Aと壁材33との間の隙間の防水も為すことができる。
【0056】
尚、図示はしていないが、各実施形態において、凸条2の長手方向と直交する方向の屋根Aの端縁についても、防水シート等で適宜防水処理を行うことができる。
【0057】
上記各実施形態のように、防水シート8や防水役物5と、屋根材1の被覆金属板7との樹脂成分が同種であると、この樹脂成分が異種である場合に比べて、溶着時における密着性が高くなり、しかも、別途に接着剤を利用する必要がなく、接着剤の劣化の問題がなくなって、密着性が損なわれにくくなり、経時変化による防水性の低下が発生しにくくなる。
【0058】
上記実施形態では、断熱パネル11にて形成された屋根材1を用いて屋根Aを形成しているため、屋根Aの防水処理を行うと共に屋根Aに断熱性を付与することができる。
【0059】
このような屋根構造は、新築の建物に適用するほか、既存の屋根を改修する場合にも適用することができる。すなわち、既存の屋根の上に母屋21を設け、この母屋21に対して上述のように屋根材1や防水役物5を設置することで、屋根構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す破断した斜視図である。
【図2】同上の実施の形態の一例の一部の断面図である。
【図3】同上の実施の形態の一例の他の一部の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の他例を示す一部の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の一例の他の一部の断面図である。
【図6】同上の実施の形態の一例の他の一部の断面図である。
【図7】屋根材の一例を示す断面図である。
【図8】(a)(b)は防水役物の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
A 屋根
1 屋根材
2 凸条
3 上向き嵌合部
4 下向き嵌合部
5 防水役物
6 凸覆い部
7 被覆金属板
8 防水シート
9 金属外皮
10 断熱材
11 断熱パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の金属外皮の間に断熱材を充填した断熱パネルにて形成される複数の屋根材を設置して構成され、上面に複数の凸条を有する屋根構造であって、前記凸条の長手方向と直交する方向に隣り合う屋根材同士が、一方の屋根材の端部に設けられた上向き嵌合部と、他方の屋根材の端部に設けられた下向き嵌合部との上下方向の凹凸嵌合により接続されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
凸条の長手方向における屋根の端縁が、前記凸条と合致する形状の複数の凸覆い部を有する防水役物で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
上記屋根材を構成する断熱パネルの上側の金属外皮が被覆金属板であり、上記防水役物が、前記被覆金属板の被膜に溶着可能な材質で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根構造。
【請求項4】
隣接する屋根材同士の隙間を覆う防水シートが設けられ、前記防水シートが、上記被覆金属板の被膜に溶着可能な材質で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−202307(P2008−202307A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39752(P2007−39752)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】