説明

工具および工具の製造方法、スロッタナイフ、ダンボール製函機

【課題】耐摩耗性に優れ、長期に渡って使用できる寿命の長い工具および工具の製造方法を提供する。
【解決手段】工具鋼からなる基材2と、基材2の表面の少なくとも一部を、グロー放電により窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより設けられた窒素が拡散されてなるプラズマイオン窒素拡散層3と、プラズマイオン窒素拡散層3上に設けられた金属窒化物からなるコーティング層4とを備える工具とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性に優れた工具および工具の製造方法、スロッタナイフ、ダンボール製函機に関し、特に、ダンボール製函機においてダンボールシートに溝を加工するスロッタナイフとして好適に用いられる工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダンボール製函機には、給紙部から一枚ずつ供給されたダンボールシートに所定の印刷を施す印刷部と、印刷されたダンボールシートに、罫線やスロット、糊付用のフラップ等の形成加工及び化粧断ちのためのスリットの切断などを行うスロッタクリーザ部とが備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、スロッタクリーザ部には、剪断によってダンボールシートに溝を加工するための上下一対のスロッタナイフが備えられている。上スロッタナイフは、上スロッタ軸に備えられた上スロッタヘッドに取り付けられている。また、下スロッタナイフは、下スロッタ軸に備えられた下スロッタヘッドに取り付けられている。そして、上スロッタ軸および下スロッタ軸の回転によって、上下一対のスロッタナイフが上スロッタヘッドおよび下スロッタヘッドを介して、それぞれ回転駆動されるようになっている。
【0004】
一般に、スロッタナイフは、合金工具鋼や冷間ダイス鋼、高速度鋼具鋼などの工具鋼からなる。工具鋼からなるスロッタナイフは、ダンボールシートを切断することにより、ダンボールシート中に含まれているSiOやAlOなどの硬質粒子と接触して磨耗減肉していく。スロッタナイフが磨耗減肉すると、切断面が荒れてしまうため切断品質が劣化する。
この問題を解決する方法としては、例えば、スロッタナイフの表面に、TiNやダイヤモンドなどのコーティング皮膜を形成することにより、耐摩耗性を向上させ、スロッタナイフの寿命を延ばす方法などが挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−40997号公報
【特許文献2】実開平7−690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のコーティング皮膜を有するスロッタナイフなどの工具では、基材からコーティング皮膜が剥離して、コーティング皮膜の優れた耐摩耗性を十分に生かすことができず、スロッタナイフなどの工具の寿命を十分に延ばすことができなかった。このため、工具の寿命をさらに向上させることが要求されていた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性に優れ、長期に渡って使用できる寿命の長い工具および工具の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、耐摩耗性に優れ、しかも長期に渡って使用できる寿命の長いスロッタナイフを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、以下に示すように、鋭意検討した。
通常、ダンボール製函機に工具として備えられているスロッタナイフは、高速で回転されながら、200〜300m/minの高速で搬送されるダンボールシートに溝を加工する。したがって、ダンボールシートに溝を加工しているスロッタナイフには、高いせん断荷重が負荷される。本発明者らは、このようなダンボールシートの溝加工に伴うせん断荷重によって、従来のコーティング皮膜を有するスロッタナイフのコーティング皮膜が剥離すると考えた。
【0009】
そして、本発明者は、ダンボールシートの溝加工に伴うせん断荷重が負荷されても、コーティング皮膜の剥離が生じにくいものとするために鋭意検討を重ねた。その結果、基材とコーティング層との間に、窒素の拡散されてなる窒素拡散層を設け、窒素拡散層上に、窒素拡散層との密着性に優れた材料であって、しかも高い耐摩耗性が得られる材料である金属窒化物からなるコーティング層を設けることで、コーティング皮膜と基材との密着性を向上させればよいことを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は以下に関する。
【0010】
(1) 工具鋼からなる基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を、窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより設けられた窒素が拡散されてなるプラズマイオン窒素拡散層と、前記プラズマイオン窒素拡散層上に設けられた金属窒化物からなるコーティング層とを備えることを特徴とする工具。
(2) 前記プラズマイオン窒素拡散層の厚みが10μm以上60μm未満の範囲であることを特徴とする(1)に記載の工具。
(3) 前記コーティング層がTiN、TiCN、TiAlNから選ばれる1種からなることを特徴とする(1)または(2)に記載の工具。
【0011】
(4) 工具鋼からなる基材の表面の少なくとも一部を、窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより、前記基材の表面の少なくとも一部に窒素を拡散させてプラズマイオン窒素拡散層を形成する工程と、前記プラズマイオン窒素拡散層上に、金属窒化物からなるコーティング層を形成する工程とを備えることを特徴とする工具の製造方法。
(5) 前記プラズマイオン窒素拡散層を形成する工程は、グロー放電によりアンモニアガスと水素ガスとの混合ガスをプラズマ化して前記基材の表面をイオン窒化する工程を含むことを特徴とする(4)に記載の工具の製造方法。
(6) 前記コーティング層をTiN、TiCN、TiAlNから選ばれる1種により形成することを特徴とする(4)または(5)に記載の工具の製造方法。
【0012】
(7) ダンボールシートに溝を加工するスロッタナイフであって、前記ダンボールシートと接する被接触面の少なくとも一部が、工具鋼からなる基材の表面に窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより設けられた窒素が拡散されてなるプラズマイオン窒素拡散層と、前記プラズマイオン窒素拡散層上に設けられた金属窒化物からなるコーティング層とを有する耐摩耗面とされていることを特徴とするスロッタナイフ。
(8) 雄刃と雌刃との剪断によってダンボールシートに溝を加工する一対のスロッタナイフであり、前記一対のスロッタナイフそれぞれは、切断時に前記ダンボールシートの切断面と対向して配置される切断面対向部を有するものであり、前記一対のスロッタナイフの切断面対向部のうち、一方のスロッタナイフの前記切断面対向部のみ前記耐摩耗面とされていることを特徴とする(7)に記載のスロッタナイフ。
(9) 前記コーティング層がTiN、TiCN、TiAlNから選ばれる1種からなることを特徴とする(7)または(8)に記載のスロッタナイフ。
(10) (7)〜(9)のいずれかに記載のスロッタナイフを備えることを特徴とするダンボール製函機。
【発明の効果】
【0013】
本発明の工具は、工具鋼からなる基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を、窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより設けられた窒素が拡散されてなるプラズマイオン窒素拡散層と、前記プラズマイオン窒素拡散層上に設けられた金属窒化物からなるコーティング層とを備えるものであり、プラズマイオン窒素拡散層とコーティング層との密着性が優れているため、コーティング層が剥離しにくいものとなる。また、コーティング層が金属窒化物からなるものであるので、優れた耐摩耗性が得られる。したがって、本発明の工具は、長期に渡って使用できる寿命の長いものとなる。
【0014】
また、本発明の工具の製造方法は、工具鋼からなる基材の表面の少なくとも一部を、窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより、前記基材の表面の少なくとも一部に窒素を拡散させてプラズマイオン窒素拡散層を形成する工程と、前記プラズマイオン窒素拡散層上に、金属窒化物からなるコーティング層を形成する工程とを備える方法であるので、長期に渡って使用できる寿命の長い本発明の工具を製造できる。
【0015】
また、本発明のスロッタナイフは、ダンボールシートに溝を加工するスロッタナイフであって、前記ダンボールシートと接する被接触面の少なくとも一部が、工具鋼からなる基材の表面に窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより設けられた窒素が拡散されてなるプラズマイオン窒素拡散層と、前記プラズマイオン窒素拡散層上に設けられた金属窒化物からなるコーティング層とを有する耐摩耗面とされているものであるので、コーティング層が剥離しにくく、優れた耐摩耗性が得られ、長期に渡って使用できる寿命の長いものとなる。
また、本発明のダンボール製函機は、本発明のスロッタナイフを備えるものであるので、長期に渡って使用できる寿命の長いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明のスロッタナイフを備えた本発明のダンボール製函機の一例を説明するための概略模式図である。
【図2】図2は、図1に示すダンボール製函機を通過した後のダンボールシート1の形状を説明するための斜視図である。
【図3】図3は、図1に示すダンボール製函機の一部のみを拡大して示した拡大模式図であり、ダンボールシートの進行方向に沿う方向から見た図である。
【図4】図4は、図1に示すダンボール製函機の一部のみを拡大して示した拡大模式図であり、ダンボールシートの進行方向と直交する方向から見た断面図である。
【図5】図5は、図1に示すダンボール製函機に備えられているスロッタナイフを示した斜視図である。
【図6】図6は、図1に示すダンボール製函機に備えられているスロッタナイフを説明するための断面図である。
【図7】図7は、図1に示すダンボール製函機に備えられているスロッタナイフを説明するための図であり、スロッタナイフの表面の一部のみを示した拡大断面図である。
【図8】図8(a)は、表1に示す基材の側面図であり、図8(b)は、ピンオンディスク式磨耗試験を説明するための図である。
【図9】図9は、実験例1〜7の試験体の比磨耗量を示したグラフである。
【図10】図10は、スクラッチ試験を説明するための斜視図である。
【図11】図11はスクラッチ剥離荷重と窒素拡散層の厚さとの関係を示したグラフである。
【図12】図12は、基材をマスキングする方法の例を説明するための図である。図12(a)は、マスキング板を用いる方法を説明するための斜視図であり、図12(b)は、マスキング箱を用いる方法を説明するための斜視図であり、図12(c)は図12(b)のA−A‘断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の工具および工具の製造方法、スロッタナイフ、ダンボール製函機について、詳細に説明する。
図1は、本発明のスロッタナイフを備えた本発明のダンボール製函機の一例を説明するための概略模式図である。また、図2は、図1に示すダンボール製函機を通過した後のダンボールシート1の形状を説明するための斜視図である。図3は、図1に示すダンボール製函機の一部のみを拡大して示した拡大模式図であり、ダンボールシートの進行方向に沿う方向から見た図である。図4は、図1に示すダンボール製函機の一部のみを拡大して示した拡大模式図であり、ダンボールシートの進行方向と直交する方向から見た断面図である。また、図5〜図7は、図1に示すダンボール製函機に備えられているスロッタナイフを説明するための図であり、図5は斜視図であり、図6は断面図であり、図7は、スロッタナイフの表面の一部のみを示した拡大断面図である。
【0018】
図1に示すダンボール製函機は、給紙部50と印刷部51とスロッタクリーザ部52とを備えている。給紙部50は、コルゲートマシン(図示略)で製造されたダンボールシート1を一枚ずつ印刷部51に供給するものである。また、印刷部51は、給紙部50から供給されたダンボールシート1に所定の印刷を施すものである。また、スロッタクリーザ部52は、印刷部51で印刷されたダンボールシート1に、罫線やスロット(溝)、糊付用のフラップ等の形成加工及び化粧断ちのためのスリットの切断などの加工を行うものである。
本実施形態においては、コルゲートマシンで製造されたダンボールシート1は、図1に示すダンボール製函機を通過することにより、図2に示すように、スロットSや糊付用のフラップF、化粧断ちのためのスリットLを有するダンボール箱の展開形状とされる。
【0019】
スロッタクリーザ部52には、図1および図3に示すように、上スロッタ軸10および下スロッタ軸11が備えられている。上スロッタ軸10および下スロッタ軸11は、図3において矢印18a,18bで示されるように相反する方向に、それぞれ回転駆動されるようになっている。
【0020】
上スロッタ軸10には上スロッタヘッド12が備えられ、上スロッタヘッド12には2枚の上スロッタナイフ14a,14b(2つの上スロッタナイフ14a,14bを区別しない場合は符号14で示す)が、図3に示すように、円周方向に所定の間隔を空けて取り付けられている。また、下スロッタ軸11には下スロッタヘッド13が備えられ、下スロッタヘッド13には下スロッタナイフ16が取り付けられている。
【0021】
上スロッタナイフ14は、図4に示すように、上スロッタヘッド12と押え板15とに挟持されて固定されており、図3および図5に示すように、円弧状の形状とされている。
また、下スロッタナイフ16は、図4〜図6に示すように、2枚の円弧状の下ナイフ16a,16bを有するものである。下スロッタナイフ16は、2枚の下ナイフ16a,16bが軸方向に間隔17を有して下スロッタヘッド13に取り付けられて一体化されていることによって、雌刃として機能するようになっている。
【0022】
上下スロッタナイフ14,16は、上下スロッタ軸10,11が回転駆動されることによって、図6(a)に示すように、ダンボールシート1のスロットSの形成される位置に配置され、さらに、上下スロッタ軸10,11が回転駆動されることによって、図4に示すように、上スロッタナイフ14が、2枚の下ナイフ16a,16bの間に雄刃として嵌入され、ダンボールシート1にスロットSを形成する。すなわち、スロットSは、雄刃である上スロッタナイフ14と雌刃である下スロッタナイフ16との剪断によって形成される。
【0023】
また、本実施形態においては、2枚のスロッタナイフ14が上スロッタヘッド12の円周方向に離間して配置されていることによって、図2に示すように、ダンボールシート1のシート進行方向の前後にスロットSが所定の間隔を空けて加工されるようになっている。また、本実施形態においては、上下スロッタヘッド12,13および上下スロッタナイフ14,16が、加工されるスロットSの数で所定の間隔を空けて一対の上下スロッタ軸10,11に設置されていることによって、上下スロッタ軸10,11の回転駆動により、図2に示すように、スロットSがダンボールシート1のシート進行方向の左右方向に所定の数および所定の間隔で加工されるようになっている。
【0024】
また、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16はそれぞれ、図6(a)に示すように、ダンボールシート1の表面と対向して配置される表面対向部14c、16cと、切断時にダンボールシート1の切断面と平行して配置される切断面対向部14d、16dとを有している。表面対向部14c、16cおよび切断面対向部14d、16dは、図4および図6(a)に示すように、ダンボールシート1と接する被接触面である。
【0025】
本実施形態においては、図6(b)に示すように、下スロッタナイフ16の表面対向部16cと、上スロッタナイフ14の切断面対向部14dとが、図7に示す耐摩耗面5とされている。したがって、本実施形態においては、一対のスロッタナイフ14、16の切断面対向部14d、16dのうち、上スロッタナイフ14の切断面対向部14dのみ耐摩耗面5とされており、下スロッタナイフ16の切断面対向部16dは耐摩耗面5とされていない。
【0026】
耐摩耗面5は、基材2の表面に窒素が拡散されてなるプラズマイオン窒素拡散層3(以下、「窒素拡散層」と略記する。)と、窒素拡散層3上に設けられたコーティング層4とを有するものである。
基材2は、工具鋼からなるものである。工具鋼としては、例えば合金工具鋼(JIS SDK)や高速度工具鋼(JIS SKH)などを用いることができる。
【0027】
また、窒素拡散層3は、基材2の表面に窒素が拡散されてなるものであり、窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより設けられたものである。窒素拡散層3は、優れた硬さを有し、コーティング層4を構成する窒化物との結合力に優れている。
窒素拡散層3の厚みは10μm以上60μm未満の範囲であることが好ましい。窒素拡散層3の厚みが10μm以上であると、より一層優れた硬さを有する窒素拡散層3になるとともに、コーティング層4を構成する窒化物との結合力がより一層優れた窒素拡散層3となり、コーティング層4の剥離を効果的に防止できるとともに、より一層耐摩耗性に優れた耐摩耗面5が得られる。しかし、窒素拡散層3の厚みが60μm以上であると、窒素拡散層3が脆くなり、ダンボールシート1の溝加工に伴うせん断荷重によって、窒素拡散層3や基材2が割れる恐れがある。
【0028】
また、窒素拡散層3は、窒素拡散層3中に含まれるNの濃度が高い程、優れた硬さを有するものとなるため好ましいが、Nの濃度が高すぎると脆いものとなる。窒素拡散層3が脆いと、ダンボールシート1の溝加工に伴うせん断荷重によって窒素拡散層3や基材2に割れが発生しやすくなる。
【0029】
また、窒素拡散層3は、表面が平滑であることが好ましい。具体的には、窒素拡散層3の表面粗さRaが0.3〜1.0μmの範囲であることが好ましい。
窒素拡散層3の表面が粗い場合、コーティング層4の厚みを十分に厚くすることにより、耐摩耗面5の表面を平滑にしなければならなくなるので、コーティング層4の厚みを後述する好ましい範囲にできなくなる恐れがある。これに対し、窒素拡散層3の表面が平滑なものである場合、コーティング層4の厚みを容易に好ましい範囲とすることができる。
【0030】
コーティング層4は、金属窒化物からなるものであり、TiN、TiCN、TiAlNから選ばれる1種からなるものであることが好ましい。コーティング層4は、金属窒化物からなるものであるので、窒素拡散層3と優れた密着性が得られる。
コーティング層4の厚みは1μm〜10μmの範囲であることが好ましく、3μm〜5μmの範囲であることがより好ましい。コーティング層4の厚みが10μmを超えると、成膜時の皮膜応力が増大し,コーティング層4が脆くなり、ダンボールシートの溝加工に伴うせん断荷重によって、コーティング層4の剥離が生じやすくなる。
【0031】
このような耐摩耗面5を有する上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16を製造するには、まず、工具鋼を上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16に対応する形状となるように加工する。
次に,上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16に対応する形状の工具鋼からなる基材2の表面を水系アルカリ洗浄することにより切削油を洗浄除去する。
次に,基材2の表面のうち耐摩耗面5を形成しない部分のマスキングを行う。
マスキングは,例えば、図12(a)に示すように、SUS430などのステンレス鋼からなる厚み10μm程度のマスキング板21で、基材2の耐摩耗面5を形成しない部分を覆う方法や、あるいは,図12(b)および図12(c)に示すように、基材2をステンレス鋼などからなるマスキング箱22に、耐摩耗面5を形成する領域のみが露出されるように収納する方法などが用いられる。
次に、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16に対応する形状の工具鋼からなる基材2の表面における所定の位置に、窒素を拡散させて窒素拡散層3を形成する。
【0032】
窒素拡散層3を形成する方法としては、工具鋼からなる基材2の表面の少なくとも一部を、窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより、基材2の表面の少なくとも一部に窒素を拡散させる方法(以下、「プラズマイオン窒化法」という。)を用いる。
プラズマイオン窒化法としては、グロー放電によりアンモニアガスと水素ガスとの混合ガスをプラズマ化して、NHラジカルおよび窒素分子イオン(N+)を発生させて基材2の表面をイオン窒化する工程を含む方法を用いることが好ましい。
【0033】
なお、プラズマイオン窒化法以外の窒素拡散層3を形成する方法としては、イオン窒化法、イオン注入法、ガス窒化法、塩浴窒化法などが考えられる。
イオン窒化法としては、グロー放電により窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを導入し、イオン化した窒素と基材2とを反応させて、基材2の表面を窒化する方法が挙げられる。
【0034】
また、ガス窒化法としては、アンモニア気流中で基材2の表面を500℃程度に加熱し、アンモニアの解離により発生した窒素を基材2の表面から深さ方向に拡散させる方法が挙げられる。
塩浴窒化法としては、500℃〜600℃に加熱された青化ソーダ(シアン化ナトリウム)を主体とする塩浴に基材2の表面を浸漬させて、基材2に含まれるFeの触媒作用によりNaCONが分解されて生成したNを、基材2の表面から深さ方向に拡散させる方法が挙げられる。
【0035】
しかし、窒素拡散層3を形成する方法としては、以下に示す理由により、プラズマイオン窒化法を用いる。
例えば、ガス窒化法や塩浴窒化法、プラズマを用いないイオン窒化法を用いた場合、得られた窒素拡散層3の表面に、基材2を構成するFeとの化合物であるFe−Nからなる化合物層が形成される。Fe−Nからなる化合物層は、優れた硬さを有するものであるが、脆いものである。このため、窒素拡散層3の表面に、Fe−Nからなる化合物層が形成されていると、Fe−Nからなる化合物層がない場合と比較して、ダンボールシート1の溝加工に伴うせん断荷重によって窒素拡散層3や基材2に割れが発生しやすくなる。
これに対し、プラズマイオン窒化法を用いた場合、得られた窒素拡散層3は、基材2の表面から深さ方向に均一に窒素が分散・拡散されたものとなる。その結果、窒素拡散層3を形成する際に、プラズマイオン窒化法を用いた場合、ガス窒化法や塩浴窒化法、プラズマを用いないイオン窒化法を用いた場合と比較して、ダンボールシートの溝加工に伴うせん断荷重による窒素拡散層3や基材2の割れが発生しにくく、寿命の長い耐摩耗面5が得られる。
【0036】
また、窒素拡散層3を形成する際に、プラズマイオン窒化法を用いた場合、ガス窒化法や塩浴窒化法、プラズマを用いないイオン窒化法を用いた場合と比較して、窒素拡散層3の表面が平滑なものとなるため好ましい。これらの理由から、窒素拡散層3を形成する方法としては、プラズマイオン窒化法を用いる。
【0037】
次に、このようにして得られた窒素拡散層3上に、金属窒化物である例えば、TiN、TiCN、TiAlNから選ばれる1種からなるコーティング層4を形成する。
コーティング層4を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタリング法やイオンプレーティング法などが挙げられる。
【0038】
本実施形態の上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16は、ダンボールシート1に溝を加工するスロッタナイフであって、ダンボールシート1と接する被接触面の少なくとも一部が、工具鋼からなる基材2の表面に窒素が拡散されてなる窒素拡散層3と、窒素拡散層3上に設けられた金属窒化物からなるコーティング層4とを有する耐摩耗面5とされているので、窒素拡散層3とコーティング層4との密着性が優れているものとなり、コーティング層4が剥離しにくいものとなる。
【0039】
また、本実施形態の上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16は、コーティング層4が金属窒化物からなるものであるので、優れた耐摩耗性を有するものとなる。したがって、本実施形態の上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16は、長期に渡って使用できる寿命の長いものとなる。
また、本実施形態の上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16において、コーティング層4がTiN、TiCN、TiAlNから選ばれる1種からなるものである場合、窒素拡散層3とコーティング層4との密着性がより一層優れたものとなるとともに、より一層優れた耐摩耗性を有するものとなる。
【0040】
また、本実施形態の上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16は、雄刃と雌刃との剪断によってダンボールシート1に溝を加工する一対のスロッタナイフ14、16であり、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16のそれぞれは、切断時にダンボールシート1の切断面と対向して配置される切断面対向部14d、16dを有するものであり、一対のスロッタナイフ14、16の切断面対向部14d、16dのうち、上スロッタナイフ14の切断面対向部14dのみ耐摩耗面5とされているので、以下に示すように、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16の寿命を効果的に長くできる。
【0041】
すなわち、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16の切断面対向部14d、16dのうち、上スロッタナイフ14または下スロッタナイフ16いずれか一方の切断面対向部のみ耐摩耗面5とされている場合、ダンボールシート1に溝を加工するときの剪断によって、耐摩耗面5同士が接触するのは、図4に示すように、図6(a)において符号14e、16eで示される上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16のエッジ部のみとなる。その結果、切断面対向部14d、16dの磨耗の進行が抑制され、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16の寿命を効果的に長くできる。
これに対し、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16の切断面対向部14d、16dが両方とも耐摩耗面5とされている場合、ダンボールシート1に溝を加工するときの剪断によって、耐摩耗面5同士が接触することになるので、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16の切断面対向部14d、16dの磨耗が進行しやすい。
【0042】
また、本実施形態の上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16の製造方法は、工具鋼からなる基材2の表面に窒素を拡散してなる窒素拡散層3を形成する工程と、窒素拡散層3上に、金属窒化物からなるコーティング層4を形成する工程とを備える方法であるので、長期に渡って使用できる寿命の長い上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16を製造できる。
【0043】
なお、本発明は本実施形態のスロッタナイフに限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては、本発明の工具の一例としてスロッタナイフを例に挙げて説明したが、本発明の工具はスロッタナイフのみに限定されるものではなく、例えば、印刷用トリミングナイフなどにも適用できる。
【0044】
また、本実施形態においては、一対のスロッタナイフ14、16の切断面対向部14d、16dのうち、上スロッタナイフ14の切断面対向部14dのみ耐摩耗面5とされており、下スロッタナイフ16の切断面対向部16dは耐摩耗面5とされていないものとしたが、本発明のスロッタナイフにおいては、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16の被接触面の少なくとも一部が、耐摩耗面とされていればよい。例えば、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16の表面全面が図7に示す耐摩耗面5とされていてもよいし、図6(c)に示すように、上スロッタナイフ14の表面対向部14cと、下スロッタナイフ16の切断面対向部16dとが、図7に示す耐摩耗面5とされていてもよい。図6(c)に示すように、上スロッタナイフ14の表面対向部14cと下スロッタナイフ16の切断面対向部16dとが耐摩耗面5とされている場合、耐摩耗面5同士が接触するのは、図4に示すように、図6(a)において符号14e、16eで示される上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16のエッジ部のみとなる。したがって、切断面対向部14d、16dの磨耗の進行が抑制され、上スロッタナイフ14および下スロッタナイフ16の寿命を効果的に長くできる。
【0045】
「実験例1、実験例3」
表1に示す材料からなる基材の表面に、表1に示す方法により表1に示す材質および厚みのコーティング層を形成して試験体とした。
「実験例2、実験例4、実験例5」
表1に示す材料からなる基材の表面に、表1に示す方法により表1に示す厚さの窒素拡散層を形成し、窒素拡散層上に表1に示す方法により表1に示す材質および厚みのコーティング層を形成し、試験体とした。
「実験例6」
表1に示す材料からなる基材(1%C−1%Cr−1%Moを含む合金工具鋼)からなる試験体を用意した。
「実験例7」
表1に示す材料からなる試験体を用意した。
【0046】
【表1】

【0047】
なお、表1に示す基材としては、図8(a)に示すように、平面視円形の頭部6と、頭部6の下面に接続された円柱状の足部7とからなる断面視略T字型の形状を有し、頭部6の表面粗さが1.6S以下のものを用いた。また、図8(a)に示した寸法の単位はmmである。また、表1に示す基材は、アセトンで洗浄した後、乾燥させたものである。また、上記の実験例1〜5の試験体においては、頭部6の上面および側面にのみコーティング層を設けた。
【0048】
表1において、ALPとは、アーク放電式イオンプレーティング法を意味する。
また、表1に示すプラズマイオン窒化法としては、以下に示す方法を用いた。すなわち、チャンバー内に、基材を設置し、外部加熱ヒーターを用いて窒素拡散層の形成される基材の表面が400℃となるように加熱し、直流電源によりグロー放電を発生させた。その後、チャンバー内にプロセスガスとして、アンモニアと水素の混合ガスを供給してプラズマ化し、NHラジカルおよび窒素分子イオン(N+)を発生させて、基材の表面をイオン窒化した。
【0049】
なお、実験例1〜7の試験体のうち、窒素拡散層を有する実験例2、実験例4、実験例5は、本発明の実施例であり、窒素拡散層のない実験例1、実験例3、窒素拡散層およびコーティング層のない実験例7は、比較例であり、実験例6は、従来例である。
このようにして得られた実験例1〜7の試験体について、頭部6の表面(耐磨耗面)のビッカーズ硬さ(Hv)を測定した。その結果を表1に示す。
また、以下に示すピンオンディスク式磨耗試験を用いて、以下に示すように、実験例1〜7の試験体の対磨耗面の耐摩耗性を評価した。
【0050】
「耐摩耗性評価方法」
図8(b)は、ピンオンディスク式磨耗試験を説明するための図である。図8(b)に示すように、耐磨耗面を表2に示すエメリー紙8側に向けて試験体19をディスク9に取り付け、ディスク9を表2に示す回転速度Rでさせながら、表2に示す荷重P(圧力0.05kgf/mm)、表2に示す距離でエメリー紙8に押し付けた。なお、ディスク9の回転中心に対して対向する試験体10間の距離は60mmであった。また、ピンオンディスク式磨耗試験において潤滑剤は用いなかった。
【0051】
【表2】

【0052】
そして、実験例1〜7の試験体のピンオンディスク式磨耗試験法を行う前後での重量差から単位面積当たりの磨耗量を算出し、荷重Pに対する磨耗量(比磨耗量)を求め、耐摩耗性を評価した。その結果を図9に示す。
【0053】
図9に示すように、窒素拡散層を有する実験例2では、窒素拡散層のない実験例1と比較して、比磨耗量が少なかった。
また、窒素拡散層を有する実験例4でも、窒素拡散層のない実験例3と比較して、比磨耗量が少なかった。
また、窒素拡散層を有する実験例2、実験例4、実験例5では、窒素拡散層およびコーティング層のない実験例7と比較して、比磨耗量が少なかった。
また、コーティング層の材質がTiAlNである実験例5では、コーティング層の材質がTiNである実験例2と比較して、比磨耗量が少なかった。
また、実験例6は、金属窒化物からなるコーティング層を有している実験例1〜5や、基材の異なる実験例7と比較して、比磨耗量が多かった。
【0054】
「実験例8」
表3に示す材料からなる基材の表面に、表3に示す方法により表3に示す材質および厚みのコーティング層を形成して試験体とした。
「実験例9〜実験例11」
表3に示す材料からなる基材の表面に、表3に示す方法により表3に示す厚さの窒素拡散層を形成し、窒素拡散層上に表3に示す方法により表3に示す材質および厚みのコーティング層を形成し、試験体とした。
【0055】
【表3】

【0056】
なお、表3に示す基材としては、図10に示すように、縦30mm、横50mm、厚さ5mmの平板20を用いた。
また、上記の実験例9〜11の試験体においては、平板20の上面にのみコーティング層を設けた。
【0057】
また、表3において、ALPとは、アーク放電式イオンプレーティング法を意味する。
また、プラズマイオン窒化としては、実験例2と同じ方法を用いた。
このようにして得られた実験例9〜11の試験体の上面(耐磨耗面)に対し、以下に示すスクラッチ試験を行った。
【0058】
「スクラッチ試験」
図10に示すように、実験例9〜11の試験体の上面(耐磨耗面)を、先端部の直径が0.2mmのダイヤモンド圧子で、荷重負荷レート100N/min,走査速度10mm/minで負荷を増大させながら連続的に引っかき、コーティング層の剥離又はクラックの発生点をAEセンサ(アコースティック エミッション)及び摩擦力センサで検出し,発生点の荷重を臨界荷重Lc(スクラッチ剥離荷重)とした。その結果を図11に示す。
【0059】
図11に示すように、厚さ10μmの窒素拡散層を有する実験例10、厚さ60μmの窒素拡散層を有する実験例11では、窒素拡散層のない実験例8および厚さ5μmの窒素拡散層を有する実験例9と比較して、スクラッチ剥離荷重が高くなった。
【0060】
「実験例12〜実験例14」
以下に示す実験例12〜実験例14のスロッタナイフを備えた図1に示すダンボール製函機を用い、給紙部から5000枚のダンボールシートをシート速度300m/minで供給し、スロッタクリーザ部においてスロッタナイフでダンボールシートに溝を加工した。
【0061】
実験例12:SKD11からなる基材の表面に、実験例2と同じ方法によりTiNからなる平均厚み4μmのコーティング層を形成し、スロッタナイフを得た。
なお、実験例12においてコーティング層は、上スロッタナイフ14の表面対向部14cと下スロッタナイフ16の切断面対向部16d(図6(c)参照。)とに形成した。
実験例13:実験例12と同じ基材の表面に、実験例2と同じ方法により厚さ10μmの窒素拡散層を形成し、窒素拡散層上に実験例12と同じ方法により実験例12と同じコーティング層を形成し、スロッタナイフを得た。
なお、実験例13において窒素拡散層およびコーティング層は、上スロッタナイフ14の表面対向部14cと下スロッタナイフ16の切断面対向部16d(図6(c)参照。)とに形成した。
実験例14:窒素拡散層の厚さを60μmとしたこと以外は、実験例13と同様にしてスロッタナイフを得た。
【0062】
ダンボールシートに溝を加工した後、実験例12〜実験例14のスロッタナイフを取り外し,以下に示す方法により、スロッタナイフの表面の拡大観察及び断面拡大観察を行った。
表面拡大観察:光学顕微鏡を用いて拡大倍率50〜200倍で観察した。
断面拡大観察:マイクロカッターで切断した後、エポキシ樹脂に埋め込み,観察断面を鏡面研磨して光学顕微鏡を用いて拡大倍率50〜200倍で観察した。
【0063】
その結果,実験例14のスロッタナイフでは、窒素拡散層およびコーティング層に割れが認められた。また、実験例14のスロッタナイフでは、コーティング層の一部が剥離した。また、窒素拡散層のない実験例12のスロッタナイフでは、コーティング層に割れが認められ、コーティング層の一部が剥離した。
これに対し、実験例13のスロッタナイフでは、割れやコーティング層の剥離は認められなかった。
【符号の説明】
【0064】
1…ダンボールシート、2…基材、3…窒素拡散層、4…コーティング層、5…耐摩耗面、6…頭部、7…足部、8…エメリー紙、9…ディスク、10…上スロッタ軸、11…下スロッタ軸、12…上スロッタヘッド、13…下スロッタヘッド、14、14a,14b…上スロッタナイフ(スロッタナイフ)、14c、16c…表面対向部、14d、16d…切断面対向部、15…押え板、16…下スロッタナイフ(スロッタナイフ)、16a,16b…下ナイフ、17…間隔筒、20…平板、50…給紙部、51…印刷部、52…スロッタクリーザ部、S…スロット、F…フラップ、L…スリット、19…試験体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具鋼からなる基材と、
前記基材の表面の少なくとも一部を、窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより設けられた窒素が拡散されてなるプラズマイオン窒素拡散層と、
前記プラズマイオン窒素拡散層上に設けられた金属窒化物からなるコーティング層とを備えることを特徴とする工具。
【請求項2】
前記プラズマイオン窒素拡散層の厚みが10μm以上60μm未満の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記コーティング層がTiN、TiCN、TiAlNから選ばれる1種からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の工具。
【請求項4】
工具鋼からなる基材の表面の少なくとも一部を、窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより、前記基材の表面の少なくとも一部に窒素を拡散させてプラズマイオン窒素拡散層を形成する工程と、
前記プラズマイオン窒素拡散層上に、金属窒化物からなるコーティング層を形成する工程とを備えることを特徴とする工具の製造方法。
【請求項5】
前記プラズマイオン窒素拡散層を形成する工程は、グロー放電によりアンモニアガスと水素ガスとの混合ガスをプラズマ化して前記基材の表面をイオン窒化する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の工具の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング層をTiN、TiCN、TiAlNから選ばれる1種により形成することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の工具の製造方法。
【請求項7】
ダンボールシートに溝を加工するスロッタナイフであって、
前記ダンボールシートと接する被接触面の少なくとも一部が、工具鋼からなる基材の表面に窒素または窒素化合物を含有するガスをプラズマ化してイオン窒化することにより設けられた窒素が拡散されてなるプラズマイオン窒素拡散層と、前記プラズマイオン窒素拡散層上に設けられた金属窒化物からなるコーティング層とを有する耐摩耗面とされていることを特徴とするスロッタナイフ。
【請求項8】
雄刃と雌刃との剪断によってダンボールシートに溝を加工する一対のスロッタナイフであり、前記一対のスロッタナイフそれぞれは、切断時に前記ダンボールシートの切断面と対向して配置される切断面対向部を有するものであり、前記一対のスロッタナイフの切断面対向部のうち、一方のスロッタナイフの前記切断面対向部のみ前記耐摩耗面とされていることを特徴とする請求項7に記載のスロッタナイフ。
【請求項9】
前記コーティング層がTiN、TiCN、TiAlNから選ばれる1種からなることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のスロッタナイフ。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれかに記載のスロッタナイフを備えることを特徴とするダンボール製函機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−196085(P2010−196085A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39476(P2009−39476)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】