説明

工具経路生成装置及び方法

【課題】複数の工具を用いて加工を行う場合に、工具への負荷を軽減できる工具経路生成装置及び方法を得ること。
【解決手段】複数の工具の各々に関して加工を行うことが可能な凸部の最小曲率半径を決定する最小曲率半径決定部4と、複数の工具の中から加工に使用する選択工具を選択する工具選択部3と、現在までに工具経路生成の対象となっていない工具経路未生成領域から、凸部の曲率半径が工具選択部が選択した選択工具に関しての最小曲率半径以上となる工具経路生成対象領域を除去した部分を、新しく工具経路未生成領域として記憶する加工領域抽出部5と、選択工具の情報とポケット加工における加工条件とから、選択工具が工具経路生成対象領域の凸部に内接するように、工具経路生成対象領域に対する工具経路を生成する工具経路生成部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元平面上で定義された加工領域と深さとで定義されるポケット部の加工において、複数の工具を用いて高効率に加工し、かつ、工具寿命を長くすることを可能とするための工具経路生成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2次元平面上で定義された加工領域形状と深さとから定義されるポケット部を加工するための工具経路生成装置としては、切削効率を維持しつつ工具への負荷を低くした加工を行えるようにするために、例えば、加工領域形状の輪郭に並行な工具経路の中で特定部分をトロコイド経路に置き換えるようにしたもの(特許文献1参照)が知られている。また、複数の工具を用いて高効率に加工を行えるようにするために、例えば、加工領域形状に対して使用工具と加工方法とを指定して使用工具で加工可能な最大限の領域を加工領域形状から切り出して工具経路を生成し、さらに残された加工領域形状に対して次の使用工具と加工方法とを指定して同様に加工可能な最大限の領域を切り出して工具経路を生成するといったことを残された加工領域形状が無くなるまで繰り返すようにしたもの(特許文献2参照)なども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3870021号公報
【特許文献2】特開平7−121219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、単一の工具を用いる際には、高効率でしかも工具への負荷を低くした加工が行えるが、複数の工具を用いる際には、ある工具で加工の対象となる加工領域形状が工具への負荷を低くすることが考慮されたものでないために、最外郭の工具経路において存在する凸のコーナー部において工具への負荷が増大することになり、工具寿命を長くすることができる工具経路を生成できない問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の工具を用いて加工を行う場合に、工具への負荷を軽減できる工具経路生成装置及び方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、二次元平面上で定義された加工領域形状と深さとから定義されるポケット部を加工するポケット加工を行う際の工具経路を生成する工具経路生成装置であって、複数の工具の情報及びポケット加工における切削条件に関する情報に基づいて、工具の各々に関してポケット加工を行うことが可能な凸部の最小曲率半径である第1最小曲率半径を決定する最小曲率半径決定部と、最小曲率半径決定部が決定した第1最小曲率半径に基づいて、複数の工具の中からポケット加工に使用する選択工具を選択する工具選択部と、現在までに工具経路生成の対象となっていない工具経路未生成領域から、凸部の曲率半径が、工具選択部が選択した選択工具に関しての第1最小曲率半径以上となる部分を工具経路生成対象領域として抽出し、工具経路生成対象領域を抽出元の工具経路未生成領域から除去した部分を、新しく工具経路未生成領域として記憶する加工領域抽出部と、選択工具の情報とポケット加工における加工条件とから、選択工具が工具経路生成対象領域の凸部に内接するように、工具経路生成対象領域に対する工具経路を生成する工具経路生成部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の工具を用いて高効率な加工が行え、かつ、工具の長寿命化を図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明にかかる工具経路生成装置の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図2は、1本の工具に関する工具データの一例を示す図である。
【図3】図3は、選択工具データの一例を示す図である。
【図4】図4は、工具経路生成装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は、加工領域形状記憶部に工具経路未生成領域として記憶された加工領域形状の例を示す図である。
【図6】図6は、加工領域形状に対して従来の工具経路生成方法で生成した工具経路を示す図である。
【図7】図7は、工具選択部における工具の選択動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】図8は、選択された工具に関しての工具経路生成対象領域を工具経路未生成領域から抽出したものを示す図である。
【図9】図9は、工具経路生成部で生成した工具経路データの例を示す図である。
【図10】図10は、ある工具での工具経路生成の対象とはならない加工領域形状の一部に対して別の工具で生成した工具経路データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる工具経路生成装置及び方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態.
図1は、本発明にかかる工具経路生成装置の実施の形態の構成を示す図である。工具経路生成装置100は、2次元平面上で定義された加工領域形状と深さとから定義されるポケット部を加工するポケット加工を行う装置であり、制御部20、記憶部30、表示部40及び入力インタフェース(I/F)部50を備える。制御部20はCPUや、CPUが処理を行うワークエリアとしてのRAMなどを備えた処理装置であり、CPUがソフトウェア処理を行うことによって、素材材質入力部1、加工領域形状入力部2、工具選択部3、最小曲率半径決定部4、加工領域抽出部5、加工条件入力部6、工具経路生成部7が構成される。また、記憶部30は、素材材質記憶部11、加工領域形状記憶部12、工具データ記憶部13、選択工具データ記憶部14、抽出加工領域記憶部15、加工条件記憶部16及び工具経路記憶部17を有する。表示部40は、液晶表示装置や有機EL素子などを用いた表示装置などを適用可能である。入力I/F部50は、キーボードやポインティングデバイス、情報記録媒体の読み取り装置、外部機器との通信用のインタフェース、他のソフトウェア(例えばCAD)からのデータのインポート機能などを適用可能である。
【0011】
素材材質入力部1は、入力I/F部50を介して被加工物の素材材質データが外部入力され、外部入力されたデータを素材材質記憶部11に記憶する。
【0012】
加工領域形状入力部2は、入力I/F部50を介して加工領域形状を定義するデータ(線分や円弧の集合として2次元平面上で定義された形状及び深さ)が外部入力され、外部入力されたデータを加工領域形状記憶部12に記憶する。
【0013】
工具選択部3は、素材材質記憶部11に記憶されている素材材質データ、加工領域形状記憶部12に記憶されている加工領域形状のデータ(現在までに工具経路生成の対象となっていない加工領域(工具経路未生成領域)の形状のデータ)、工具データ記憶部13に記憶されている複数の工具に関するデータ、選択工具データ記憶部14に記憶されている前回の工具経路生成時に選択・使用された工具に関するデータ及び入力I/F部50を介して外部入力されたデータに基づいて使用する工具を複数の工具の中から選択する。工具選択部3は、選択した工具に関するデータとともに最小曲率半径決定部4を用いて得た選択した工具に対しての加工領域形状の凸部の最小曲率半径値(加工を行うことが可能な凸部の最小曲率半径:第1最小曲率半径)を選択工具データ記憶部14に記憶する。なお、加工領域形状の凸部とは、加工領域形状において外形が外側に対して凸となっている部分や、加工領域形状のコーナー部であってコーナー部の曲率半径を定義する際に曲率の中心が加工領域の側に存在するコーナー部を指す。
【0014】
工具選択部3は、最小曲率半径決定部4が決定した最小曲率半径が、前回選択した工具で行うポケット加工での最小曲率半径(前回の選択工具の第1最小曲率半径)よりも小さく、かつ、工具経路未生成領域の凸部の最小曲率半径(第2最小曲率半径)よりも大きい工具を大径加工用工具として抽出する大径工具抽出部31と、最小曲率半径決定部4が決定した最小曲率半径が、工具経路未生成領域の凸部の最小曲率半径以下の工具を最終加工用工具として抽出する最終工具抽出部32と、大径工具抽出部31及び最終工具抽出部32でそれぞれ抽出された工具の情報を識別できるように表示し、表示した工具の中から外部入力の指示に基づいて工具を選択する指示工具選択部33とを備える。
【0015】
最小曲率半径決定部4は、工具選択部3から渡された特定の工具に関するデータ(工具関連データ)に基づき加工領域形状の凸部における最小曲率半径値を決定し、決定した最小曲率半径値を工具選択部3へ返す。
【0016】
加工領域抽出部5は、加工領域形状記憶部12に記憶されている工具経路未生成領域の形状データ、選択工具データ記憶部14に記憶されている選択工具の最小曲率半径値を基に、工具経路未生成領域から凸部の曲率半径が選択工具の最小曲率半径以上となる加工領域(工具経路生成対象領域)を抽出し、抽出した加工領域形状を抽出加工領域記憶部15へ記憶する。また、抽出元である工具経路未生成領域から工具経路生成対象領域を除去することで、残りの加工領域の形状データを生成し、生成した残りの加工領域形状データで加工領域形状記憶部12に記憶する加工領域形状データ(工具経路未生成領域の形状のデータ)を更新する。
【0017】
加工条件入力部6は、工具経路を決定するための経路パターン、切り込み量、切り込み深さ、工具と加工素材との接触する最大の範囲(許容範囲)などのデータが入力I/F部50を介して外部入力され、外部入力されたデータを加工条件記憶部16に記憶する。
【0018】
工具経路生成部7は、選択工具データ記憶部14に記憶された工具に関するデータ、抽出加工領域記憶部15に記憶された加工領域データ、加工条件記憶部16に記憶された工具経路を決定するためのデータを基に、工具経路データを生成し工具経路記憶部17にデータを記憶する。
【0019】
素材材質記憶部11は、素材材質入力部1で入力された素材材質データを記憶する。
【0020】
加工領域形状記憶部12は、加工領域形状入力部2で入力された加工領域形状データを工具経路未生成領域の形状データとして記憶する。また、加工領域抽出部5で生成された残りの加工領域形状データを工具経路未生成領域の形状データとして記憶し直す。
【0021】
工具データ記憶部13は、使用可能な複数の工具に関するデータを記憶する。図2は、1本の工具に関する工具データの一例を示す図である。工具データ131としては工具の形状・寸法に関するものとして形状のタイプ(スクエアエンドミル、ボールエンドミルなど)、刃数、直径、刃長があり、また切削条件に関するものとして素材材質とそれに対する推奨の切削条件(切り込み量、送り速度、回転数)がある。
【0022】
選択工具データ記憶部14は、工具選択部3で選択された1本の工具に関するデータと関連する最小曲率半径値とを記憶する。図3は、選択工具データの一例を示す図である。選択工具データ141としては、工具の形状・寸法に関するもの、切削条件に関するもの(素材材質記憶部11に記憶された素材材質に対する推奨の切削条件)、および最小曲率半径値がある。
【0023】
抽出加工領域記憶部15は、加工領域抽出部5で工具経路生成対象領域として抽出された加工領域形状のデータを記憶する。
【0024】
加工条件記憶部16は、加工条件入力部6から入力された工具経路を決定するためのデータを記憶する。
【0025】
工具経路記憶部17は、工具経路生成部7で生成された工具経路データを記憶する。
【0026】
図4は、工具経路生成装置100の動作の流れを示すフローチャートである。ステップS201では、素材材質入力部1において素材材質データが入力I/F50部を介して外部入力され、外部入力されたデータが素材材質記憶部11に記憶される。
【0027】
ステップS202では、加工領域形状入力部2において加工領域形状を定義するデータが入力I/F部50を介して外部入力され、外部入力されたデータが工具経路未生成領域の形状データとして加工領域形状記憶部12に記憶される。加工領域形状入力部2における外部入力の例としては、輪郭形状を定義する形状の種類、座標、寸法などの情報を作業者がキーボードなどの操作により入力する方法や、CADデータ上の指定された部位から変換する方法などを挙げられる。
【0028】
図5は、加工領域形状記憶部12に工具経路未生成領域として記憶された加工領域形状の例を示す図である。この例の加工領域形状121はコーナー部に半径RCのRが付いた四角形の形状として素材111上に定義されている。
【0029】
図6は、従来の工具経路生成方法で生成した工具経路を示す図であり、図5に示した加工領域形状に対して従来の工具経路生成方法で生成した工具経路を示している。加工領域A1は、工具半径R1がRCよりも大きい工具T1に対して抽出された加工領域形状であり、加工領域形状121内で工具T1が最大限到達できる領域となっている。工具T1で加工できない加工領域A2〜A5については、工具半径R2がコーナー部の半径RCよりも小さい工具T2を用いて加工する必要がある。工具経路200は、工具T1が加工領域A1の境界に接する最外郭の工具経路で四角形状となっており、接線方向が不連続な凸のコーナー部が存在する。このようなコーナー部付近では、工具T1と素材111との接触範囲が急激に増大することによって工具T1への負荷が増大し、これにより工具寿命の低下を招くことが問題となる。また、工具経路200の接線方向が連続であっても変化が大きければ同様の問題が発生する。上記の原因による工具寿命の低下を避けるためには、加工領域形状121のコーナー部の半径RCよりも工具半径R2が小さい工具T2を用いる必要があり、高効率な加工を実現する妨げとなる。
【0030】
本実施の形態では、与えられた工具に対し接線方向が連続でその変化が所定値以下となる工具経路を生成可能な加工領域形状を抽出し、これに基づいて工具経路を生成するようにして工具の負荷を抑制して工具寿命の低下を回避しつつ、高効率な加工を実現する。
【0031】
図4のステップS203では、加工領域形状記憶部12に工具経路未生成領域として記憶されている加工領域形状データが存在するか否かを工具選択部3がチェックしており、存在している場合はステップS204へ進み、そうでない場合は工具経路生成装置100の動作を終了する。
【0032】
ステップS204では、工具選択部3において次に使用する工具が選択され、選択された工具(選択工具)に関するデータが選択工具データ記憶部14に記憶される。
【0033】
図7は、工具選択部3における工具の選択動作の流れを示すフローチャートである。ステップS301では、加工領域形状記憶部12に記憶されている工具経路未生成領域の形状データを参照し、工具経路未生成領域の凸部の最小曲率半径RWを算出する。
【0034】
ステップS302では、選択工具データ記憶部14に記憶されている前回の選択工具での加工領域形状凸部の最小曲率半径値RDを取得している。
【0035】
ステップS303からステップS310にかけて、工具データ記憶部13に記憶された工具に関するデータを一つずつ取り出しながら全工具データに対して処理するループ処理を実施する。
【0036】
ステップS304では、工具データ記憶部13から取り出した現在の工具に関するデータに対し、最小曲率半径決定部4を用いて現在の工具での加工領域形状凸部の最小曲率半径RMを決定して得ている。
【0037】
最小曲率半径RMの決定手順について説明する。工具選択部3において工具データ記憶部13から取り出した現在の工具に関するデータから、直径D、刃数Z、素材材質記憶部11に記憶された素材材質に対応する送り速度F、回転数Sが取り出され最小曲率半径決定部4に入力される。最小曲率半径決定部4では、入力されたデータから工具の一刃あたりの送り量fを下記式(1)に基づいて算出する。
【0038】
f=F/(Z×S) ・・・(1)
【0039】
工具の中心経路が半径RAの円弧として、工具中心点が円弧上で一刃あたりの送り量fだけ移動する際の円弧の角度変化量Δθがある一定の値となるように半径RAが決定される。すなわち、一般的な工具であればΔθは十分に小さいため下記式(2)を変形することで、式(3)が得られる。
【0040】
RA×Δθ=f ・・・(2)
【0041】
RA=f/Δθ ・・・(3)
【0042】
このようにして決定された半径RAの円弧を工具の中心経路とした場合、工具一刃あたりの送り量fに対して円弧の角度変化量Δθがある一定の値であるため、工具運動方向の変化もある一定の量となる。したがって、Δθを適度に与えておくことにより工具一刃あたりの工具運動方向の極端な変化を避けることができ、これにより工具一刃あたりの負荷の極端な変化を避けることが可能となる。
【0043】
加工領域形状凸部の最小曲率半径RMは、半径RAの円弧を直径Dの工具が移動した際の加工形状の半径であるので、下記式(4)により得られる。
【0044】
RM=RA+D/2 ・・・(4)
【0045】
以上のようにして、与えられた工具と加工対象の素材材質とに基づいて工具への負荷が抑制された適切な加工が可能となるための加工領域形状に必要な凸部の最小曲率半径を決定できる。
【0046】
なお、一刃あたりの送り量fが工具の直径Dに比例すると仮定すれば(f=k×D kは比例定数)、最小曲率半径RMは下記式(5)で表されるため、工具の直径Dに係数Kを掛けることで最小曲率半径RMが得られる。工具直径に所定の係数を掛けることにより、与えられた工具について工具への負荷が抑制された適切な加工が可能となるための加工領域形状に必要な凸部の最小曲率半径を簡易的に決定できる。
【0047】
RM=k×D/Δθ+D/2=K×D (K=k/Δθ+1/2) ・・・(5)
【0048】
ステップS305では、選択工具データ記憶部14に工具に関するデータが存在しているか(すでに1本目の工具での工具経路生成が実施されており、選択工具データ記憶部14に前回の選択工具に関するデータが残っているか)をチェックしており、存在する場合はステップS306へ進み、そうでない場合はステップS307へ進む。
【0049】
ステップS306では、ステップS302で得られた最小曲率半径値RDとステップS304で得られた最小曲率半径RMとを比較しており、RM<RDとなる場合にステップS307へ進み、そうでない場合はステップS310へ進む。
【0050】
ステップS307では、ステップS301で得られた最小曲率半径RWとステップS304で得られた最小曲率半径RMとを比較しており、RM>RWとなる場合はステップS308へ進み、そうでない場合はステップS309へ進む。
【0051】
ステップS308では、大径工具抽出部31は、工具経路未生成領域を加工する場合に削り残りが生じる工具(大径加工用工具)の中の選択候補として現在の工具を抽出している。
【0052】
ステップS309では、最終工具抽出部32は、工具経路未生成領域を加工する場合に削り残りが生じない工具(最終加工用工具)の中の選択候補として現在の工具を抽出している。
【0053】
ステップS311では、指示工具選択部33は、選択される工具の候補としてステップS308及びステップS309で抽出された工具をそれぞれ工具経路未生成領域を加工する場合に削り残りが生じるものとそうでないものとが識別できるように表示部40に表示し、作業者からの候補の中からの選択指示を入力I/F50部を介して外部入力として受け取り、指示された工具を選択する。
【0054】
以上が図4のステップS204における工具選択部3の動作であり、前回の選択工具よりも大きな領域を加工できる工具の中で工具経路未生成領域を加工する場合に削り残りが生じるものとそうでないものとが識別できるように表示部40に表示することにより、作業者は二種類に区別して表示された中から工具を選択することができるため、作業者の工具選択の負担を軽減できる。
【0055】
なお、ステップS307〜S309の処理を省略し、工具経路未生成領域を加工する場合に削り残りが生じるものとそうでないものとを区別せずに選択工具の候補として抽出するようにしても良い。
【0056】
ステップS205では、ステップS204の結果として選択された工具が存在するかを工具選択部3がチェックしており、存在する場合にステップS206へ進み、そうでない場合に工具経路生成装置100の動作を終了する。
【0057】
ステップS206では、加工領域抽出部5において、加工領域形状記憶部12に工具経路未生成領域として記憶されている形状データ、選択工具データ記憶部14に記憶されている選択工具での加工領域形状凸部の最小曲率半径値RDを基に、工具経路未生成領域の中から凸部の曲率半径がRD以上となる形状が工具経路生成対象領域として抽出され、その形状データが抽出加工領域記憶部15に記憶される。また、抽出元の工具経路未生成領域から工具経路生成対象領域が除去された形状データが生成され、加工領域形状記憶部12の工具経路未生成領域の形状データが置き換えられる。
【0058】
工具経路生成対象領域の抽出方法としては、例えば、抽出元である工具経路未生成領域を内側へ最小曲率半径値RD分オフセットしたものをさらに外側へ最小曲率半径値RD分オフセットして工具経路生成対象領域を得るものがある。
【0059】
図8は、選択された工具に関しての工具経路生成対象領域を工具経路未生成領域から抽出したものを示す図であり、選択された半径R1の工具T1に関しての工具経路生成対象領域を図5に示した工具経路未生成領域から抽出したものを示している。工具T1に対し得られた加工領域形状凸部の最小曲率半径はRN1であり、抽出結果の工具経路生成対象領域は加工領域N1である。また、加工領域N1を抽出元の工具経路未生成領域から除去した加工領域形状は加工領域N2〜加工領域N5となり、これらは加工領域形状記憶部12に新たに記憶されるものである。
【0060】
加工領域N1を工具T1で加工するための最外郭の工具経路300においては、凸部が半径(RN1−R1)の円弧になっており、工具T1への負荷の抑制が可能なものとなっている。
【0061】
図4のステップS207では、加工条件入力部6において工具経路を決定するための経路パターン、切り込み量、切り込み深さ、工具と加工素材との接触する最大の範囲などのデータが入力I/F部50を介して外部入力され、外部入力されたデータを加工条件記憶部16に記憶している。
【0062】
ステップS208では、選択工具データ記憶部14に記憶されている選択工具に関するデータ、抽出加工領域記憶部15に記憶されている工具経路生成対象領域の形状データ、加工条件記憶部16に記憶されている工具経路を決定するためのデータを基に、工具経路データを生成し、工具経路記憶部17に記憶し、その後にステップS203からの手順を再び実施する。
【0063】
図9は、工具経路生成部7で生成した工具経路データの例を示す図である。この例では、図8における工具T1、加工領域N1に対し工具経路を決定するためのデータとして、経路パターンをスパイラル経路とトロコイド経路の組み合わせ、工具と加工素材との接触する最大範囲として90°が与えられ生成されたものである。
【0064】
図9(a)において、図8における加工領域N1がスパイラル経路のための加工領域形状である加工領域N11とトロコイド経路のための加工領域形状である加工領域N12〜加工領域N15とに分けられており、工具経路P11は加工領域N11に対して生成されたスパイラル状の工具経路データである。
【0065】
図9(b)において、工具経路P12は加工領域N12に対して生成されたトロコイド状の工具経路データであり、同様な工具経路データは加工領域N13〜加工領域N15に対しても生成される。
【0066】
図10は、ある工具での工具経路生成の対象とはならない加工領域形状の一部に対して別の工具で生成した工具経路データを示す図である。ここでは、図8における工具T1での工具経路生成の対象とはならない加工領域形状の一部である加工領域N2に対して工具T2で生成した工具経路データP22を示している。工具T2に対して得られた加工領域形状凸部の最小曲率半径値RDが工具経路生成初期の加工領域形状コーナー部の半径RCよりも小さな場合で、加工領域N3〜加工領域N5に対して同様に生成された工具経路データも含めることで工具T2での経路で全体の加工が完了する。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、選択された工具に対する加工領域形状として、凸部の曲率半径が工具への負荷を抑えるための曲率半径以上のものから工具経路が生成され、残された加工領域形状についても前回選択工具よりも径の小さな工具で同様に工具経路が生成されるので、複数工具を用いた高効率かつ工具への負荷を小さくした加工のための工具経路生成が行える。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明にかかる工具経路生成装置及び方法は、複数の工具を用いる場合でも、最外郭の工具経路において存在する凸のコーナー部において工具への負荷が増大することを防止し、工具寿命を長くすることができる点で有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 素材材質入力部
2 加工領域形状入力部
3 工具選択部
4 最小曲率半径決定部
5 加工領域抽出部
6 加工条件入力部
7 工具経路生成部
11 素材材質記憶部
12 加工領域形状記憶部
13 工具データ記憶部
14 選択工具データ記憶部
15 抽出加工領域記憶部
16 加工条件記憶部
17 工具経路記憶部
20 制御部
30 記憶部
31 大径工具抽出部
32 最終工具抽出部
33 指示工具選択部
40 表示部
50 入力I/F部
100 工具経路生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元平面上で定義された加工領域形状と深さとから定義されるポケット部を加工するポケット加工を行う際の工具経路を生成する工具経路生成装置であって、
複数の工具の情報及び前記ポケット加工における切削条件に関する情報に基づいて、前記工具の各々に関して前記ポケット加工を行うことが可能な凸部の最小曲率半径である第1最小曲率半径を決定する最小曲率半径決定部と、
前記最小曲率半径決定部が決定した前記第1最小曲率半径に基づいて、前記複数の工具の中から前記ポケット加工に使用する選択工具を選択する工具選択部と、
現在までに工具経路生成の対象となっていない工具経路未生成領域から、凸部の曲率半径が、前記工具選択部が選択した選択工具に関しての前記第1最小曲率半径以上となる部分を工具経路生成対象領域として抽出し、該工具経路生成対象領域を抽出元の前記工具経路未生成領域から除去した部分を、新しく前記工具経路未生成領域として記憶する加工領域抽出部と、
前記選択工具の情報と前記ポケット加工における加工条件とから、前記選択工具が前記工具経路生成対象領域の凸部に内接するように、前記工具経路生成対象領域に対する工具経路を生成する工具経路生成部とを備えることを特徴とする工具経路生成装置。
【請求項2】
前記工具選択部は、
前記第1最小曲率半径が、前記工具選択部によって前回選択された選択工具に関しての前記第1最小曲率半径よりも小さく、かつ、前記工具経路未生成領域の凸部の最小曲率半径である第2最小曲率半径よりも大きい工具を大径加工用工具として抽出する大径工具抽出部と、
前記第1最小曲率半径が、前記第2最小曲率半径以下の工具を最終加工用工具として抽出する最終工具抽出部と、
前記大径工具抽出部及び前記最終工具抽出部でそれぞれ抽出された工具の情報を識別できるように表示し、表示した工具の中から外部入力の指示に基づいて工具を選択する指示工具選択部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の工具経路生成装置。
【請求項3】
前記最小曲率半径決定部は、前記各工具について、工具直径に予め定められた係数を乗じることで前記第1最小曲率半径を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の工具経路生成装置。
【請求項4】
前記最小曲率半径決定部は、前記各工具について、被加工物の加工素材の材質に対する推奨の1刃当たりの送り量と、該1刃当たりの送り量に対する工具中心位置の進行方向の変化量から与えられた工具での前記第1最小曲率半径を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の工具経路生成装置。
【請求項5】
二次元平面上で定義された加工領域形状と深さとから定義されるポケット部を加工するポケット加工を行う際の工具経路を生成する工具経路生成方法であって、
複数の工具の情報及び前記ポケット加工における切削条件に関する情報に基づいて、前記工具の各々に関して前記ポケット加工を行うことが可能な最小曲率半径を決定する最小曲率半径決定工程と、
前記最小曲率半径決定工程において決定した前記最小曲率半径に基づいて、前記複数の工具の中から前記ポケット加工に使用する選択工具を選択する工具選択工程と、
現在までに工具経路生成の対象となっていない工具経路未生成領域から、凸部の曲率半径が前記工具選択工程において選択した選択工具の前記最小曲率半径以上となる部分を工具経路生成対象領域として抽出する加工領域形状抽出工程と、
前記選択工具の情報と前記ポケット加工における加工条件とから、前記選択工具が前記工具経路生成対象領域の凸部に内接するように、前記工具経路生成対象領域に対する工具経路を生成する工具経路生成工程とを備えることを特徴とする工具経路生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−88976(P2013−88976A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228158(P2011−228158)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】