説明

巨大磁気抵抗複合材料体

【課題】本発明は、複合材料体及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明の巨大磁気抵抗複合材料体は、高分子材料で形成したポリマー基材と、複数のカーボンナノチューブと、を備えている。前記複数のカーボンナノチューブは、前記ポリマー基材に埋め込まれ、前記ポリマー基材における複数のカーボンナノチューブが前記ポリマー基材に間隔を置いて設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨大磁気抵抗複合材料体に関し、特にカーボンナノチューブを含む巨大磁気抵抗複合材料体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
巨大磁気抵抗(Giant Magnneto−Resistance,GMR)効果が1988年に発見されたこと(非特許文献1)によって、巨大磁気抵抗材料は、ハードディスク・ドライブ、磁気センサ、磁気記録装置などの分野で注目されている材料の一つである。巨大磁気抵抗効果と呼ばれる現象は、特定の温度で物質の電気抵抗率が磁場により変化する現象である。
【0003】
巨大磁気抵抗材料の磁気抵抗MR(Magnneto−Resistance)は、以下の公式を満たす。ここで、前記ρ(0)は前記巨大磁気抵抗材料に磁場が印加されない時の抵抗値であり、前記ρ(H)は前記巨大磁気抵抗材料に予定な強度の磁場が印加される時の抵抗値である。
【0004】
【数1】

【0005】
従来の巨大磁気抵抗材料は、磁気金属膜と非磁気材料膜と交互積層されて形成する多層薄膜である。例えば、Fe/Cr交互積層膜、あるいは、Co/Cu交互積層膜、あるいは、Ni/Ar交互積層膜などの多層薄膜である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.N.Baibich et al.,Phys.Rev.Lett.61,2472(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、異なる金属層は異なる結晶磁気異方性を有するので、前記多層薄膜からなる巨大磁気抵抗材料は、外部磁場の作用で磁化容易方向と磁化困難方向とが磁気抵抗曲線にすべて一致しない。また、零下269℃の低温では、前記巨大磁気抵抗材料のMRが約10%の電気抵抗値変化を実現することができるが、実際の応用では、常温で巨大磁気抵抗材料のMRが5%以上の電気抵抗値変化を実現することが望ましい。従って、前記多層薄膜からなる巨大磁気抵抗材料の応用範囲は制限されている。さらに、前記巨大磁気抵抗材料の多層薄膜はすべて金属材料からなるので、硬度が大きく、異なる応用に応じて裁断することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、前記課題を解決するために、本発明は応用範囲が広く、実際応用に易しい採用される巨大磁気抵抗複合材料体を提供する。
【0009】
本発明の巨大磁気抵抗複合材料体は、高分子材料で形成したポリマー基材と、複数のカーボンナノチューブと、を備えている。前記複数のカーボンナノチューブは、前記ポリマー基材に埋め込まれ、前記ポリマー基材における複数のカーボンナノチューブが前記ポリマー基材に間隔を置いて設置されている。
【0010】
前記複数のカーボンナノチューブにおいて、隣接する2つのカーボンナノチューブ間の間隔は、2nm〜5μmである。
【0011】
前記巨大磁気抵抗複合材料体における前記複数のカーボンナノチューブの質量パーセンテージは0.2%〜2%である。
【0012】
前記巨大磁気抵抗複合材料体における前記複数のカーボンナノチューブの質量パーセンテージは0.5%〜0.6%である。
【0013】
常温、及び10kOeの磁場で、前記巨大磁気抵抗複合材料体の磁気抵抗値は4%〜14%である。
【発明の効果】
【0014】
従来の技術と比べて、本発明の巨大磁気抵抗複合材料体を利用する場合は、前記巨大磁気抵抗複合体において、複数のカーボンナノチューブが相互に分離してポリマー基材に分散されているので、本発明の巨大磁気抵抗複合材料体は巨大磁気抵抗特性を有する。且つ、前記巨大磁気抵抗複合体は、柔軟性を有するポリマー基材を利用しているので、柔軟性が良く、要望の形状に応じて前記巨大磁気抵抗複合体を加工し、フレキシブルな電子設備に応用することができる。又、常温で、磁場強度が10kOeである場合、本発明の巨大磁気抵抗複合体の磁気抵抗値は14%に達することができるので、本発明の巨大磁気抵抗複合体は、常温での磁気抵抗性能が高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明巨大磁気抵抗複合材料体の一つの実施例の構造を示す図である。
【図2】図1に示す巨大磁気抵抗複合材料体の走査型電子顕微鏡での写真である。
【図3】図1に示す巨大磁気抵抗複合材料体の磁気抵抗と前記巨大磁気抵抗複合材料体における前記複数のカーボンナノチューブの質量パーセンテージの含有量との関係(常温、磁場強度が10kOeである)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0017】
図1を参照すると、本実施例の巨大磁気抵抗複合体20は、固化可能なポリマー基材22と、複数のカーボンナノチューブ24と、を備えている。前記複数のカーボンナノチューブ24は、前記ポリマー基材22に埋め込まれて形成されている。ここで、前記複数のカーボンナノチューブ24は、前記ポリマー基材22の中で、導電性ネットを形成できない。即ち、前記複数のカーボンナノチューブ24において、少なくとも一部のカーボンナノチューブは相互に接触していない。勿論、全ての前記複数のカーボンナノチューブ24が、相互に接続しないことが好ましい。前記複数のカーボンナノチューブ24は、前記ポリマー基材22に配向せず配列し、且つ等方的、及び均一的に分散される。ここで、前記複数のカーボンナノチューブの隣り合う2つのカーボンナノチューブの間には間隔が置いてあり、前記間隔は、2nm〜5μmである。前記複数のカーボンナノチューブ24に複数のカーボンナノチューブが、前記ポリマー基材22に等方的、及び均一的に分散されるので、前記巨大磁気抵抗複合体20は、あらゆる方向に巨大磁気抵抗特性を有している。
【0018】
前記ポリマー基材22の高分子材料は、シリコーンゴム(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エポキシ樹脂及びポリウレタン(Polyurethane)などの一種又は幾種の混合物である。前記巨大磁気抵抗複合体20における前記ポリマー基材22の高分子材料の質量パーセンテージは98%〜99.75%である。本実施例において、前記ポリマー基材22は、シリコーンゴムからなる。シリコーンゴムからなる前記ポリマー基材22は、良好な柔軟性があり、所望の形状により切断される。
【0019】
前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージは0.25%〜2%である。各々のカーボンナノチューブの長さが1〜20μmである。各々のカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブのいずれか一種またはそれらの複数種である。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、その直径は0.5ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、その直径は1ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、その直径は1.5ナノメートル〜50ナノメートルである。本実施例において、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブであり、前記多層カーボンナノチューブは直径が10ナノメートル〜20ナノメートルであり、長さが5〜10μmである。
【0020】
図2を参照すると、図1に示す巨大磁気抵抗複合材料体の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。前記SEM写真に示されるように、PDMSポリマー基材に複数のカーボンナノチューブが相互に間隔を置いて均一的に分散されている。本実施例において、巨大磁気抵抗複合体20は、長さが10ミリメートルであり、幅が5ミリメートルであり、厚さが1ミリメートルである。前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージは0.55%である。
【0021】
前記巨大磁気抵抗複合体20に、複数のカーボンナノチューブが相互に分離してPDMSポリマー基材に分散されているので、前記複数のカーボンナノチューブの間にスピン‐トンネル効果が生じる。従って、前記巨大磁気抵抗複合体20に磁場を印加する時、スピン‐トンネル効果によって量子トンネルが生じ、電子が複数のカーボンナノチューブ間にあるPDMSポリマー基材を通過できる。従って、前記巨大磁気抵抗複合体20の抵抗が減少され、トンネル磁気抵抗が生じて、前記巨大磁気抵抗複合体20が巨大磁気抵抗特性を有する。
【0022】
図3を参照すると、常温で、磁場強度が10kOeであり、本実施例の巨大磁気抵抗複合体20の磁気抵抗(MR)と前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージとの関係を示す図である。前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージが約0.5%〜0.6%である時、前記巨大磁気抵抗複合体20の磁気抵抗は、図4に示す曲線の上に最大値がある。
【0023】
前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージが0.55%より小さい場合、前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージの増加に伴って、前記巨大磁気抵抗複合体20の磁気抵抗値が増加している。前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージが0.55%より大きい場合、前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージの増加に伴って、前記巨大磁気抵抗複合体20の磁気抵抗値は減少する。前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージが0.55%である場合、前記巨大磁気抵抗複合体20の磁気抵抗値は14%である。本実施例において、前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージは0.2%〜1%であることが好ましい。この時、常温で、磁場強度が10kOeである場合、前記巨大磁気抵抗複合体20の磁気抵抗値は5%〜14%である。前記巨大磁気抵抗複合体20における前記複数のカーボンナノチューブ24の質量パーセンテージは0.4%〜0.6%であることがより好ましい。この時、常温で、磁場強度が10kOeである場合、前記巨大磁気抵抗複合体20の磁気抵抗値は4%〜10%である。
【0024】
前記巨大磁気抵抗複合体20において、複数のカーボンナノチューブが相互に分離してPDMSポリマー基材に分散されているので、前記巨大磁気抵抗複合体20が巨大磁気抵抗の特性を有する。且つ、前記巨大磁気抵抗複合体20は、柔軟性を有するPDMSポリマー基材を利用するので、柔軟性が良く、要望の形状に応じて前記巨大磁気抵抗複合体20を加工し、フレキシブルな電子設備に応用することができる。常温で、磁場強度が10kOeである場合、前記巨大磁気抵抗複合体20の磁気抵抗値は14%に達することができるので、前記巨大磁気抵抗複合体20は、常温での磁気抵抗性能が高い。前記複数のカーボンナノチューブ24は、前記ポリマー基材22に等方的、及び均一的に分散されるので、前記巨大磁気抵抗複合体20は、異なる方向に沿って巨大磁気抵抗性を有する。
【0025】
本発明の前記巨大磁気抵抗複合体20の製造方法は、液体のポリマー材料(例えば、シリコーンゴム)を提供する第一ステップと、前記複数のカーボンナノチューブを、前記液体のポリマー材料に分散させて混合物を形成する第二ステップと、前記混合物に脱イオン水を開始剤として加え、超音波で処理した後、前記混合物を固化させる第三ステップと、を含む。前記第一ステップにおいて、前記液体のポリマー材料に酢酸エチルを入れることができる。この場合、超音波で処理することにより、前記液体のポリマー材料に入れた酢酸エチルを均一的に分散させることができる。前記第二ステップにおいて、前記混合物における複数のカーボンナノチューブの質量パーセンテージは0.2%〜1%である。超音波で前記複数のカーボンナノチューブを液体のポリマー材料に十分に分散させ、全ての前記カーボンナノチューブを相互に分離させる。
【符号の説明】
【0026】
20 巨大磁気抵抗複合材料体
22 ポリマー基材
24 複数のカーボンナノチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料からなるポリマー基材と、複数のカーボンナノチューブと、を備えた巨大磁気抵抗複合材料体であって、
前記複数のカーボンナノチューブは、前記ポリマー基材に埋め込まれ、
前記複数のカーボンナノチューブが、それぞれ間隔を置いて設置されていることを特徴とする巨大磁気抵抗複合材料体。
【請求項2】
前記複数のカーボンナノチューブにおいて、隣接する2つのカーボンナノチューブ間の間隔は、2nm〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗複合材料体。
【請求項3】
前記巨大磁気抵抗複合材料体における前記複数のカーボンナノチューブの質量パーセンテージは0.2%〜2%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の巨大磁気抵抗複合材料体。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−166045(P2010−166045A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−642(P2010−642)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】