説明

差分算出回路、プロジェクター、および差分算出回路の制御方法

【課題】画像全体の変化を検出することが可能な差分算出回路を提供する。
【解決手段】差分算出回路は、入力された画像信号に基づいた画像情報を記憶する複数のフレームメモリー(第1のフレームメモリー32a、第2のフレームメモリー33a)と、フレームメモリーに記憶された画像情報に基づく画素毎の情報である画素情報について、複数のフレームメモリー間での差分を画素差分値として算出する画素差分算出部33c1と、画素差分値の平均を画素差分平均値として算出する差分平均算出部33c2と、画素差分平均値を、画像情報に基づく全ての画素について算出する全画素算出部33c3と、全ての画素の画素差分平均値についての平均を全画素差分平均値として算出する全画素平均算出部33c4と、全画素差分平均値と所定の閾値とを比較する比較部33c6と、比較部33c6の比較結果に基づいて、所定の通知信号を出力する通知部33fと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差分算出回路、プロジェクター、および差分算出回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、液晶プロジェクター、プラズマディスプレイ等の表示装置では、静止画が長時間にわたって表示されると画面の焼き付きを生じる。そこで、画面の一部に設定された監視エリアに対応するデータの差分を算出し、差分が閾値以上の場合を動画、閾値未満の場合を静止画とする静止画/動画判定処理部を備えた画面焼き付き防止装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−259287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の画面焼き付き防止装置では、特定エリア(監視エリア)の差分検出を行うため、変化領域が特定エリアから外れている場合には、画面の変化を検出できないという問題がある。また、このような画面焼き付き防止処理における差分検出をソフトウェアで行う場合には、処理に時間が掛かるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る差分算出回路は、入力された画像信号に基づいた画像情報を記憶する複数のフレームメモリーと、前記フレームメモリーに記憶された前記画像情報に基づく画素毎の情報である画素情報について、前記複数のフレームメモリー間での差分を画素差分値として算出する画素差分算出部と、前記画素差分算出部が算出した前記画素差分値の平均を画素差分平均値として算出する差分平均算出部と、前記差分平均算出部が算出した前記画素差分平均値を、前記画像情報に基づく全ての画素について算出する全画素算出部と、前記全画素算出部が算出した全ての画素の前記画素差分平均値についての平均を全画素差分平均値として算出する全画素平均算出部と、前記全画素平均算出部が算出した前記全画素差分平均値と所定の閾値とを比較する比較部と、前記比較部の比較結果に基づいて、所定の通知信号を出力する通知部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような差分算出回路によれば、画素差分算出部は、複数のフレームメモリー間の画素差分値を算出する。差分平均算出部は、画素差分平均値を算出する。全画素算出部は、画素差分平均値を全ての画素について算出する。全画素平均算出部は、全ての画素の画素差分平均値についての平均を算出して差分情報値とする。これにより、全ての画素について差分の平均(画素差分平均値)を算出し、さらに画素差分平均値の平均を算出して全画素差分平均値とするため、画像情報全体の変化を検出することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る差分算出回路において、前記複数のフレームメモリーは、順次入力される画像信号に基づいた画像情報を順次記憶することを特徴とする。
【0009】
このような差分算出回路によれば、複数のフレームメモリーは、順次入力される画像信号に基づいた画像情報を順次記憶する。これにより、入力される全ての画像情報に基づいて全画素差分平均値を算出するため、全画素差分平均値算出の処理精度が向上する。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る差分算出回路において、前記全画素平均算出部は、入力された画像信号に基づいた画像情報が所定の数に達した際に、前記全画素差分平均値を算出することを特徴とする。
【0011】
このような差分算出回路によれば、画像情報が所定の数に達した際に全画素差分平均値を算出する。これにより、全画素差分平均値の算出処理を行う回数が低減されるため、差分算出回路の処理負荷が低減される。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る差分算出回路において、前記画素差分算出部が算出した前記画素差分値を加算して加算差分値として記憶する加算値記憶部をさらに有し、前記差分平均算出部は、前記加算値記憶部に記憶された前記加算差分値を用いて前記画素差分平均値を算出することを特徴とする。
【0013】
このような差分算出回路によれば、加算値記憶部をさらに有し、差分平均算出部は、加算差分値を用いて画素差分平均値を算出する。これにより、フレームメモリーのサイズを増大させることなく、複数フレームにわたって画素差分平均値を算出することができる。
【0014】
[適用例5]本適用例に係るプロジェクターは、光源と、前記光源から射出された光を画像信号に応じて画像光に変調する光変調装置と、前記光変調装置で変調された前記画像光を投写する投写光学系と、を有するプロジェクターであって、入力された前記画像信号に基づいた画像情報を記憶する複数のフレームメモリーと、前記フレームメモリーに記憶された前記画像情報に基づく画素毎の情報である画素情報について、前記複数のフレームメモリー間での差分を画素差分値として算出する画素差分算出部と、前記画素差分算出部が算出した前記画素差分値の平均を画素差分平均値として算出する差分平均算出部と、前記差分平均算出部が算出した前記画素差分平均値を、前記画像情報に基づく全ての画素について算出する全画素算出部と、前記全画素算出部が算出した全ての画素の前記画素差分平均値についての平均を全画素差分平均値として算出する全画素平均算出部と、前記全画素平均算出部が算出した前記全画素差分平均値と所定の閾値とを比較する比較部と、前記比較部の比較結果に基づいて、所定の通知信号を出力する通知部と、を有する差分算出回路と、前記差分算出回路から出力された前記所定の通知信号に基づいて、前記光変調装置の焼き付き防止処理を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このようなプロジェクターによれば、差分算出回路から出力された所定の通知信号に基づいて光変調装置の焼き付き防止処理を行う。つまり、全画素差分平均値と所定の閾値とを比較することによって、入力されている画像信号が静止画か否かを判定することが可能となり、静止画と判定した場合には、光変調装置の焼き付き防止処理を行うことができる。これにより、光変調装置の焼き付きを防止することができる。
【0016】
[適用例6]本適用例に係る差分算出回路の制御方法は、入力された画像信号に基づいた画像情報を記憶する複数のフレームメモリーを有する差分算出回路の制御方法であって、前記フレームメモリーに記憶された前記画像情報に基づく画素毎の情報である画素情報について、前記複数のフレームメモリー間での差分を画素差分値として算出する画素差分算出ステップと、前記画素差分算出ステップによって算出された前記画素差分値の平均を画素差分平均値として算出する差分平均算出ステップと、前記差分平均算出ステップによって算出される前記画素差分平均値を、前記画像情報に基づく全ての画素について算出する全画素算出ステップと、前記全画素算出ステップによって算出された全ての画素の前記画素差分平均値についての平均を全画素差分平均値として算出する全画素平均算出ステップと、前記全画素平均算出ステップによって算出された前記全画素差分平均値と所定の閾値とを比較する比較ステップと、前記比較ステップによる比較結果に基づいて、所定の通知信号を出力する通知ステップと、を備えることを特徴とする。
【0017】
このような差分算出回路の制御方法によれば、全ての画素について差分の平均(画素差分平均値)を算出し、さらに画素差分平均値の平均を算出して全画素差分平均値とするため、画像情報全体の変化を検出することができる。
【0018】
また、上述した差分算出回路およびその制御方法が差分算出回路に備えられたコンピューターを用いて構築されている場合には、上記形態および上記適用例は、その機能を実現するためのプログラム、あるいは当該プログラムを前記コンピューターで読み取り可能に記録した記録媒体等の態様で構成することも可能である。記録媒体としては、フレキシブルディスクやハードディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu−ray Disc(登録商標)、光磁気ディスク、不揮発性メモリーカード、差分算出回路の内部記憶装置(RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリー)、及び外部記憶装置(USB(Universal Serial Bus)メモリー等)等、前記コンピューターが読み取り可能な種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係るプロジェクターの回路構成を示すブロック図。
【図2】差分情報算出部の回路構成を示すブロック図。
【図3】差分算出処理の概要の説明図。
【図4】差分算出回路が行う差分算出処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態では、差分算出回路を備え、当該差分算出回路の全画素差分平均値算出結果に基づいて、画面の焼き付き防止処理を行うプロジェクターについて説明する。以降、全画素差分平均値算出の処理を差分算出処理ともいう。
【0022】
図1は、本実施形態に係るプロジェクターの回路構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プロジェクター1は、画像投写部10、制御部20、操作受付部21、光源制御部22、画像信号入力部31、画像処理部32、差分情報算出部33等を備えて構成されている。
【0023】
画像投写部10は、光源11、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12B、投写光学系としての投写レンズ13、ライトバルブ駆動部14等を含んでいる。画像投写部10は、光源11から射出された光を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bで変調して画像光を形成し、この画像光を投写レンズ13から投写してスクリーンSC等に表示する。
【0024】
光源11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源ランプ11aと、光源ランプ11aが放射した光を液晶ライトバルブ12R,12G,12B側に反射するリフレクター11bとを含んで構成されている。光源11から射出された光は、図示しないインテグレーター光学系によって輝度分布が略均一な光に変換され、図示しない色分離光学系によって光の3色である赤色R、緑色G、青色Bの各色光成分に分離された後、それぞれ液晶ライトバルブ12R,12G,12Bに入射する。
【0025】
液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル等によって構成される。液晶ライトバルブ12R,12G,12Bには、マトリクス状に配列された複数の画素(図示せず)が形成されており、液晶に対して画素毎に駆動電圧を印加可能になっている。ライトバルブ駆動部14が、入力される画像情報に応じた駆動電圧を各画素に印加すると、各画素は、画像情報に応じた光透過率に設定される。このため、光源11から射出された光は、この液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを透過することによって変調され、画像情報に応じた画像が色光毎に形成される。形成された各色の画像は、図示しない色合成光学系によって画素毎に合成されてカラー画像となった後、投写レンズ13から投写される。
【0026】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、各種データの一時記憶等に用いられるRAM、および、マスクROMやフラッシュメモリー、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリー)等の不揮発性のメモリー等(いずれも図示せず)を備え、コンピューターとして機能するものである。制御部20は、CPUが不揮発性のメモリーに記憶されている制御プログラムに従って動作することにより、プロジェクター1の動作を統括制御する。
【0027】
また、制御部20は、差分情報算出部33から画像が静止画となっている旨の所定の通知信号を受信すると、画像処理部32に対して液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの焼き付き防止のための指示を行う。例えば、画像処理部32にスクリーンセーバー画面を出力させることができる。なお、焼き付き防止の処理は、スクリーンセーバー画面の出力処理に限定するものではなく、他の処理としてもよい。
【0028】
操作受付部21は、ユーザーからの入力操作を受け付けるものであり、ユーザーがプロジェクター1に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備えている。操作受付部21が備える操作キーとしては、電源のオン・オフを切り替えるための電源キー、入力された画像信号を切り替えるための入力切替キー、各種設定を行うためのメニュー画面の表示・非表示を切り替えるメニューキー、メニュー画面におけるカーソルの移動等に用いられるカーソルキー、各種設定を決定するための決定キー等がある。ユーザーが操作受付部21の各種操作キーを操作(押下)すると、操作受付部21は、この入力操作を受け付けて、ユーザーの操作内容に応じた操作信号を制御部20に出力する。なお、操作受付部21として、遠隔操作が可能なリモコン(図示せず)を用いた構成としてもよい。この場合、リモコンは、ユーザーの操作内容に応じた赤外線等の操作信号を発信し、図示しないリモコン信号受信部がこれを受信して制御部20に伝達する。
【0029】
光源制御部22は、電源回路(図示せず)で生成された直流電流を交流矩形波電流に変換するインバーター(図示せず)や、光源ランプ11aの電極間の絶縁破壊を行って、光源ランプ11aの始動を促すためのイグナイター(図示せず)等を備えており、制御部20の指示に基づいて光源11の点灯を制御する。具体的には、光源制御部22は、光源11を始動させて所定の電力を供給することにより光源11を点灯させるとともに、電力の供給を停止して光源11を消灯させることができる。また、光源制御部22は、制御部20の指示に基づいて光源11に供給する電力を制御することにより、光源11の輝度(明るさ)を調整することが可能である。
【0030】
画像信号入力部31には、パーソナルコンピューターやビデオ再生装置、メモリーカード、USBストレージ、デジタルカメラ等、外部の画像供給装置(図示せず)とケーブルを介した接続を行うための各種の入力端子(図示せず)が備えられており、画像供給装置から画像信号が入力される。画像信号入力部31は、入力される画像信号を、画像処理部32で処理可能な形式の画像情報に変換して、画像処理部32に出力する。
【0031】
画像処理部32は、RAM等により構成された第1のフレームメモリー32aを備えている。そして、画像信号入力部31から入力される画像情報を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの各画素の階調を表す画像情報に変換し、フレーム(画面)単位で第1のフレームメモリー32aに記憶する。なお、フレームメモリーに記憶された1画面分の画像情報をフレーム画像と呼ぶ。
【0032】
ここで、変換された画像情報は、R、G、Bの色光別になっており、各液晶ライトバルブ12R,12G,12Bのすべての画素に対応する複数の画素値によって構成されている。画素値とは、対応する画素の光透過率を定めるものであり、この画素値によって、各画素から射出する光の強弱(階調)が規定される。さらに、画像処理部32は、制御部20の指示に基づき、変換した画像情報に対して、明るさ、コントラスト、シャープネス、色合い等を調整するための画質調整処理等を行い、第1のフレームメモリー32a内の画像情報を更新する。そして、処理後の画像情報をライトバルブ駆動部14および差分情報算出部33に出力する。
【0033】
差分情報算出部33は、全画素差分平均値を算出する差分算出処理を行う回路である。差分情報算出部33は、第2のフレームメモリー33aおよび加算値記憶部33bを備えている。なお、本実施形態では、画像処理部32が備える第1のフレームメモリー32aおよび差分情報算出部33が差分算出回路に相当する。
【0034】
ここで、差分情報算出部33について説明する。
図2は、本実施形態に係る差分情報算出部33の回路構成を示すブロック図である。
図2に示すように、差分情報算出部33は、第2のフレームメモリー33a、加算値記憶部33b、差分算出処理部33c、画素数カウンター33d、フレーム数カウンター33e、通知部33f等を備えて構成されている。
【0035】
第2のフレームメモリー33aは、RAM等により構成されたフレームメモリーである。第2のフレームメモリー33aには、第1のフレームメモリー32aに記憶されていた前回のフレームの画像情報がコピーされて記憶される。第2のフレームメモリー33aへの書き込みおよび読み出しは、差分算出処理部33cが行う。
【0036】
加算値記憶部33bは、RAM等により構成された記憶部である。加算値記憶部33bには、第1のフレームメモリー32aに記憶された画素の画像情報(画素の画像情報を「画素情報」とも呼ぶ)と、第2のフレームメモリー33aに記憶された画素の画像情報との差分の絶対値を、各画素について、過去のn−2回分加算して加算差分値として記憶することができる。加算値記憶部33bへの書き込みおよび読み出しは、差分算出処理部33cが行う。
【0037】
画素数カウンター33dには、画像処理部32から画像情報に含まれて出力される画素数クロックが入力され、画素数を計測する。本実施形態では、画素数として1画面の画素数Nを計測する。例えば、画像情報がXGAである場合には、1画面の画素数Nとして、1024×768画素を計測する。なお、画素数カウンター33dで計測する画素数の設定値を変更可能としてもよい。この場合は、差分情報算出部33は、画素数計測設定レジスター(図示せず)を備え、ユーザーの操作に基づき、制御部20からの指示によって画素数計測設定レジスターの設定値を変更する。そして、画素数計測設定レジスターの設定値に基づいて、計測する画素数を変更する。こうすれば、1画面の画素数が異なる画像情報(画像信号)にも対応することが可能になる。
【0038】
フレーム数カウンター33eには、画像処理部32から画像情報に含まれて出力される垂直同期信号が入力され、フレーム数(即ち画面の数)を計測する。本実施形態では、フレーム数としてnフレームを計測する。ここで、nが所定の数に相当する。例えば、nを3600フレームとすれば、1秒間に60フレームの画像表示を行うプロジェクターであれば、60秒を計測することができる。なお、フレーム数カウンター33eで計測する計測フレーム数の設定値を変更可能としてもよい。この場合は、差分情報算出部33は、フレーム数計測設定レジスター(図示せず)を備え、ユーザーの操作に基づき、制御部20からの指示によってフレーム数計測設定レジスターの設定値を変更する。そして、フレーム数計測設定レジスターの設定値に基づいて、計測するフレーム数を変更する。こうすれば、計測するフレーム数を変更することによって、差分算出処理(即ち画像が静止画か否かを判定する処理)の計測時間を変更することが可能になる。
【0039】
差分算出処理部33cには、画素差分算出部33c1、差分平均算出部33c2、全画素算出部33c3、全画素平均算出部33c4、閾値記憶部33c5、比較部33c6等を備えて構成されている。
【0040】
画素差分算出部33c1は、画像処理部32の第1のフレームメモリー32aから入力される画素情報と、第2のフレームメモリー33aから入力する画素情報との差分を画素差分値として算出し、差分平均算出部33c2に出力する。
【0041】
差分平均算出部33c2は、入力された画素差分値の絶対値と加算値記憶部33bに記憶された加算差分値とを加算する。計測フレーム数がnフレームに満たない場合は、加算した値を加算値記憶部33bに記憶する。計測フレーム数がnフレームになった場合は、加算した値をn−1で除算し、画素差分平均値として算出する。
【0042】
全画素算出部33c3は、差分平均算出部33c2にフレーム画像の全画素について画素差分平均値を算出させる。
【0043】
全画素平均算出部33c4は、全画素の画素差分平均値を加算して、画素数Nで除算して全画素差分平均値を算出する。
【0044】
閾値記憶部33c5は、全画素差分平均値と比較するための所定の閾値(以降、単に「閾値」ともいう)が記憶されている不揮発性のメモリーである。所定の閾値は、静止画か否かを判定するための比較値であり、予め実験等で好適な値を決定しておくものとする。また、閾値記憶部33c5に記憶される閾値は変更可能としてもよい。この場合は、差分情報算出部33は、閾値設定レジスター(図示せず)を備え、ユーザーの操作に基づいて、制御部20からの指示によって閾値設定レジスターの設定値を変更する。そして、閾値設定レジスターの設定値に基づいて、閾値を変更する。
【0045】
比較部33c6は、全画素平均算出部33c4が算出した全画素差分平均値と閾値記憶部33c5に設定されている閾値とを比較し、全画素差分平均値が閾値よりも小さいか否かを判定する。そして、比較部33c6は、通知部33fに比較結果を通知する。
【0046】
通知部33fは、所定の通信手段を備え、制御部20に対して通知を行う。所定の通信手段としては、例えば、RS−232C等とすることができるが、これに限定するものではない。通知部33fは、比較部33c6から入力される比較結果に基づき、全画素差分平均値が閾値よりも小さい場合には、制御部20に対して、画像が静止画である旨を示す所定の通知信号を送信する。
【0047】
図1に戻り、ライトバルブ駆動部14が、画像処理部32から入力される画像情報に従って液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを駆動すると、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、画像情報に応じた画像を形成し、この画像が投写レンズ13から投写される。
【0048】
次に、プロジェクター1の差分算出処理の概要について説明する。
図3は、差分算出処理の概要の説明図である。
【0049】
図3では、1番目のフレームF1、2番目のフレームF2、3番目のフレームF3、n−1番目のフレームFn−1、n番目のフレームFnが表示されている。そして、差分算出処理では、フレームの所定の画素p1について、各フレーム間での画素差分値、即ち画素情報の差分を算出する。本実施形態では、画素情報の差分は、R、G、Bの色光別の値の差分の和とする。なお、画素情報の差分は、この算出方法に限定するものではなく、例えば、R、G、Bの色光の値に基づいて輝度値を算出し、この輝度値の差分を画素情報の差分としてもよい。
【0050】
図3に示すように、フレームF1とフレームF2の画素p1における差分(画素差分値)をΔ1とし、フレームF2とフレームF3の画素p1における差分(画素差分値)をΔ2とし、フレームFn−1とフレームFn−2(図示せず)の画素p1における差分(画素差分値)をΔn−2とし、フレームFnとフレームFn−1の画素p1における差分(画素差分値)をΔn−1とする。
【0051】
ここで、加算値記憶部33bに記憶される加算差分値Sは、図3の式(1)に示すように、Δ1からΔn−2までの絶対値を加算した値である。また、画素p1の画素差分平均値P1は、図3の式(2)に示すように、Δn−1の絶対値に加算差分値Sを加算し、n−1で除算した値である。このような画素差分平均値P1をフレームの全ての画素に対して行い、P1からPNまでを算出する。そして、図3の式(3)に示すように、全画素差分平均値Cは、画素差分平均値P1〜PNまでを加算し、画素数Nで除算することで算出される。
【0052】
このように算出した全画素差分平均値Cを、閾値記憶部33c5に記憶された閾値と比較することによって、画像情報が静止画か否かを判定することができる。
【0053】
次に、プロジェクター1の差分算出回路(第1のフレームメモリー32aおよび差分情報算出部33)が差分算出処理を行う動作について説明する。
図4は、差分算出回路が行う差分算出処理を説明するフローチャートである。
【0054】
第1のフレームメモリー32aに新たな画像情報が入力されると、差分情報算出部33は、フレーム数カウンター33eで計測している計測フレーム数に1を加算する(ステップS101)。差分情報算出部33は、計測フレーム数がnとなったか否かを判断する(ステップS102)。
【0055】
計測フレーム数がnとなっていない場合(ステップS102:NO)、差分情報算出部33の差分算出処理部33cは、フレーム画像の全ての画素(N個)について、ステップS103からステップS106までの処理を繰り返す(ループ1)(ステップS103)。まず、差分算出処理部33cの画素差分算出部33c1は、第1のフレームメモリー32aと第2のフレームメモリー33aの同一画素について、画素差分値を算出する(ステップS104)。次に、差分算出処理部33cは、画素差分値の絶対値を加算値記憶部33bに記憶された加算差分値Sに加算して、加算値記憶部33bに記憶する(ステップS105)。そして、ステップS103に戻る(ステップS106)。
【0056】
ループ1が終了したら、差分算出処理部33cは、第1のフレームメモリー32aのフレームの画像情報を第2のフレームメモリー33aにコピーする(ステップS107)。そして、差分算出処理を終了する。
【0057】
計測フレーム数がnとなった場合(ステップS102:YES)、差分情報算出部33の差分算出処理部33cは、フレーム画像の全ての画素(N個)について、ステップS108からステップS112までの処理を繰り返す(ループ2)(ステップS108)。まず、差分算出処理部33cの画素差分算出部33c1は、第1のフレームメモリー32aと第2のフレームメモリー33aの同一画素について、画素差分値を算出する(ステップS109)。次に、差分算出処理部33cの差分平均算出部33c2は、画素差分値の絶対値と加算値記憶部33bに記憶された加算差分値Sとを加算する(ステップS110)。そして、差分平均算出部33c2は、加算した結果をn−1で除算して画素差分平均値(P1〜PN)を算出する(ステップS111)。そして、ステップS108に戻る(ステップS112)。
【0058】
ループ2が終了したら、差分算出処理部33cの全画素平均算出部33c4は、算出した全ての画素(N個)についての画素差分平均値を合計する(ステップS113)。そして、全画素平均算出部33c4は、全ての画素差分平均値の合計を画素数Nで除算して、全画素差分平均値Cを算出する(ステップS114)。
【0059】
差分算出処理部33cの比較部33c6は、算出した全画素差分平均値Cが閾値記憶部33c5に記憶された閾値よりも小さいか否かを判断する(ステップS115)。全画素差分平均値Cが閾値よりも小さい場合(ステップS115:YES)、差分算出処理部33cは通知部33fに指示を出して、制御部20に、画像情報に基づく画像が静止画である旨を示す所定の通知信号を送信させる(ステップS116)。そして、差分算出処理部33cは、加算値記憶部33bに記憶されている加算差分値Sをクリアする(ステップS117)。さらに、差分情報算出部33は、フレーム数カウンター33eが計測していた計測フレーム数をクリアする(ステップS118)。そして、ステップS107に移行する。
【0060】
全画素差分平均値Cが閾値以上の場合(ステップS115:NO)は、ステップS117に移行する。
【0061】
上述したように、差分算出回路は、計測フレーム数がnになるまでは、画素差分値を算出して加算差分値Sとして記憶し、計測フレーム数がnとなった場合には、全画素差分平均値Cを算出し、全画素差分平均値Cが閾値よりも小さい場合には、制御部20に対して、フレーム数nの間の画像が静止画である旨を示す所定の通知信号を送信する。
【0062】
上述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)プロジェクター1は、全ての画素について差分の平均(画素差分平均値P1〜PN)を算出し、さらに画素差分平均値P1〜PNの平均を算出して全画素差分平均値Cとするため、フレーム画像の特定エリアの画像情報の変化ではなく、画像情報全体の変化を検出することができる。そして、全画素差分平均値Cと閾値との比較を行い、画像が静止画と判定された場合には、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの焼き付き防止処理を行うことができる。
【0063】
(2)プロジェクター1は、全画素差分平均値Cと閾値との比較を行い、画像が静止画か否かを判断する。よって、予め実験等で好適な閾値を定めておくことで、画像に局所的な変化がある場合であっても、静止画と判断することも可能になり、焼き付き防止処理を行うことができる。
【0064】
(3)プロジェクター1では、差分情報算出部33は専用回路(ハードウェア)として構成されているため、差分算出処理を高速化することができる。つまり、制御部20が備えるCPUへの負荷を低減することができる。したがって、ソフトウェアをCPU上で実行することのできる時間が増大する。このため、同じCPUを用いても、従来より多機能な製品の提供が可能となる。
【0065】
(4)プロジェクター1では、第1のフレームメモリー32aおよび第2のフレームメモリー33aは、順次入力される画像信号に基づいた画像情報を順次記憶する。これにより、入力される全ての画像情報に基づいて全画素差分平均値Cを算出するため、差分算出処理による静止画の検出精度が向上する。
【0066】
(5)プロジェクター1は、計測フレーム数がnフレームになった際に、全画素差分平均値Cを算出する。これにより、全画素差分平均値Cの算出処理を行う回数が低減されるため、差分情報算出部33(差分算出回路)の処理負荷が低減される。
【0067】
(6)プロジェクター1は、加算値記憶部33bを有し、差分情報算出部33は、加算差分値Sを用いて、全画素差分平均値Cを算出する。これにより、全画素差分平均値Cを算出するためのフレームメモリーの数を低減することができる。
【0068】
なお、上述した実施形態に限定されず、種々の変更や改良等を加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0069】
(変形例1)上記実施形態では、計測フレーム数がnフレームになるまで画素差分値を加算し、計測フレーム数がnフレームとなった際に全画素差分平均値Cを算出するものとした。そして、このnフレーム毎の算出処理を繰り返すものとした。しかし、差分情報算出部33にn個のフレームメモリー(または、フレーム画像をn個記憶できるフレームメモリー)を備える場合には、n個のフレームメモリーに順次画像情報を入力することにより、画素差分平均値P1〜PNを画像情報入力毎に算出し、全画素差分平均値Cを毎回算出して閾値と比較するものとしてもよい。こうすれば、常時、画像が静止画となっているか否かを判定することが可能となり、判定精度が向上する。
【0070】
(変形例2)上記実施形態では、差分算出処理は、差分算出回路、即ちハードウェアによって行うものとしたが、差分算出処理部33cで行う差分算出処理をソフトウェアで行ってもよい。また、差分算出回路は、ソフトウェアプログラムが組み込まれたハードウェア(回路)によって構成されていてもよい。
【0071】
(変形例3)上記実施形態では、比較部33c6は、全画素差分平均値Cが閾値よりも小さいか否かについて判定しているが、閾値を含めて閾値以下か否かについて判定してもよい。
【0072】
(変形例4)上記実施形態では、比較部33c6が判定した結果、全画素差分平均値Cが閾値以上の場合には、通知部33fは制御部20に所定の通知信号を送信しないものとしているが、画像が動画である旨を示す通知信号を制御部20に送信してもよい。
【0073】
(変形例5)上記実施形態では、算出した全画素差分平均値Cをモニター(モニタリング)することはできないが、差分算出回路に全画素差分平均値モニター用レジスター(図示せず)を備えてもよい。こうすれば、全画素差分平均値Cをモニターすることが可能になる。
【0074】
(変形例6)上記実施形態では、第1のフレームメモリー32aに入力される画像情報を順次第2のフレームメモリー33aにコピーして、差分算出処理を行うものとしたが、第1のフレームメモリー32aに入力される画像情報を、所定の回数(フレーム)毎に1回、第2のフレームメモリー33aにコピーし、差分算出処理も所定の回数(フレーム)毎に1回行うものとしてもよい。こうすれば、プロジェクター1の処理負荷を低減することができる。
【0075】
(変形例7)上記実施形態では、差分算出回路を備えるプロジェクター1を例にして説明しているが、プロジェクターに限定するものではない。例えば、透過型のスクリーンを一体的に備えたリアプロジェクター、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等に適用することも可能である。
【0076】
(変形例8)上記実施形態では、光源11は、放電型の光源ランプ11aによって構成されているが、LED(Light Emitting Diode)光源やレーザー等の固体光源や、その他の光源を用いることもできる。
【0077】
(変形例9)上記実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いているが、反射型の液晶ライトバルブ等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…プロジェクター、10…画像投写部、11…光源、11a…光源ランプ、11b…リフレクター、12R,12G,12B…液晶ライトバルブ、13…投写レンズ、14…ライトバルブ駆動部、20…制御部、21…操作受付部、22…光源制御部、31…画像信号入力部、32…画像処理部、32a…第1のフレームメモリー、33…差分情報算出部、33a…第2のフレームメモリー、33b…加算値記憶部、33c…差分算出処理部、33d…画素数カウンター、33e…フレーム数カウンター、33f…通知部、33c1…画素差分算出部、33c2…差分平均算出部、33c3…全画素算出部、33c4…全画素平均算出部、33c5…閾値記憶部、33c6…比較部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像信号に基づいた画像情報を記憶する複数のフレームメモリーと、
前記フレームメモリーに記憶された前記画像情報に基づく画素毎の情報である画素情報について、前記複数のフレームメモリー間での差分を画素差分値として算出する画素差分算出部と、
前記画素差分算出部が算出した前記画素差分値の平均を画素差分平均値として算出する差分平均算出部と、
前記差分平均算出部が算出した前記画素差分平均値を、前記画像情報に基づく全ての画素について算出する全画素算出部と、
前記全画素算出部が算出した全ての画素の前記画素差分平均値についての平均を全画素差分平均値として算出する全画素平均算出部と、
前記全画素平均算出部が算出した前記全画素差分平均値と所定の閾値とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて、所定の通知信号を出力する通知部と、
を備えることを特徴とする差分算出回路。
【請求項2】
請求項1に記載の差分算出回路であって、
前記複数のフレームメモリーは、順次入力される画像信号に基づいた画像情報を順次記憶することを特徴とする差分算出回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の差分算出回路であって、
前記全画素平均算出部は、入力された画像信号に基づいた画像情報が所定の数に達した際に、前記全画素差分平均値を算出することを特徴とする差分算出回路。
【請求項4】
請求項3に記載の差分算出回路であって、
前記画素差分算出部が算出した前記画素差分値を加算して加算差分値として記憶する加算値記憶部をさらに有し、
前記差分平均算出部は、前記加算値記憶部に記憶された前記加算差分値を用いて前記画素差分平均値を算出することを特徴とする差分算出回路。
【請求項5】
光源と、前記光源から射出された光を画像信号に応じて画像光に変調する光変調装置と、前記光変調装置で変調された前記画像光を投写する投写光学系と、を有するプロジェクターであって、
入力された前記画像信号に基づいた画像情報を記憶する複数のフレームメモリーと、
前記フレームメモリーに記憶された前記画像情報に基づく画素毎の情報である画素情報について、前記複数のフレームメモリー間での差分を画素差分値として算出する画素差分算出部と、
前記画素差分算出部が算出した前記画素差分値の平均を画素差分平均値として算出する差分平均算出部と、
前記差分平均算出部が算出した前記画素差分平均値を、前記画像情報に基づく全ての画素について算出する全画素算出部と、
前記全画素算出部が算出した全ての画素の前記画素差分平均値についての平均を全画素差分平均値として算出する全画素平均算出部と、
前記全画素平均算出部が算出した前記全画素差分平均値と所定の閾値とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて、所定の通知信号を出力する通知部と、
を有する差分算出回路と、
前記差分算出回路から出力された前記所定の通知信号に基づいて、前記光変調装置の焼き付き防止処理を行う制御部と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
入力された画像信号に基づいた画像情報を記憶する複数のフレームメモリーを有する差分算出回路の制御方法であって、
前記フレームメモリーに記憶された前記画像情報に基づく画素毎の情報である画素情報について、前記複数のフレームメモリー間での差分を画素差分値として算出する画素差分算出ステップと、
前記画素差分算出ステップによって算出された前記画素差分値の平均を画素差分平均値として算出する差分平均算出ステップと、
前記差分平均算出ステップによって算出される前記画素差分平均値を、前記画像情報に基づく全ての画素について算出する全画素算出ステップと、
前記全画素算出ステップによって算出された全ての画素の前記画素差分平均値についての平均を全画素差分平均値として算出する全画素平均算出ステップと、
前記全画素平均算出ステップによって算出された前記全画素差分平均値と所定の閾値とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップによる比較結果に基づいて、所定の通知信号を出力する通知ステップと、
を備えることを特徴とする差分算出回路の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−150262(P2012−150262A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8617(P2011−8617)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】