説明

差分較正

機械に装架された計測プローブ(10)を較正する方法が記述される。計測プローブ(10)は、ワークピースに接触する先端(16)を備えたスタイラス(14)を有する。方法は、プローブアウトプット(a、b、c)を機械座標系(x、y、z)に関連づけるプローブ較正マトリクスを決定することを含む。方法は、第一の機械データを得るために第一のプローブ偏位(d)を用い、第二の機械データを得るために第二のプローブ偏位(d)を用いて、較正アーティファクト(18)を走査する工程を含む。第一および第二の機械データは、いかなる機械誤差も実質的に除去される完全なプローブ較正マトリクスを得るために用いられる。有利には、方法は、第一および第二の機械位置データの差は既知であるとの仮定に基づいて、完全なプローブマトリクスを数学的に決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械に装架される計測プローブの較正方法、特に、プローブ較正マトリクスを決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
計測システム、例えば、工作機械および計測プローブにおいて、得られるどの測定値にも精度に影響を与える多くの要因が存在する。これらの要因は、真直および直角誤差を含む機械誤差のような誤差、動的誤差、および、プローブ測定値の機械測定値への変換からの誤差を含む。これらの影響を減少するために、機械および計測プローブは、測定がなされる前に較正される。
【0003】
そのような測定装置を較正するために、種々の技術が発展させられた。これらは、機械の誤差マップを作るために機械の動作範囲内の異なる箇所で走査を行うことを含む。また、偏位に関連する誤差のマップ関数を作るために異なるプローブ偏位を用いて標準のワークピースを走査することも知られている。この誤差マップは、その後に、許容誤差をチェックするため実際のワークピースを計測するときに使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他の技術は、プローブの(a、b、c)軸を、機械の(x、y、z)軸に関連づけるためのプローブ較正マトリクスを作るために較正用のアーティファクト(しばしば、球)を用いることである。問題は、プローブの較正マトリクスに組み入れられる他の寄与要因がまた存在するということである。これらは、全体的な誤差、部分的な誤差および動的誤差にグループ化され得る。標準のプローブ較正プロセスは、これらの要素を、単一のプローブ較正マトリクスにグループ化し、プローブ較正プロセスにおいて用いられたのと同様の、機械の同じ領域での、そして、同じ速度で行われる計測に対して、プローブ軸の測定値の機械座標への正確な変換のみを提供する。
【0005】
一般的に、較正および計測プロセスは、同じ速度で行われ、その結果、例えば、加速からの動的誤差は減少される。しかしながら、ワークピースの形状の急な変更または走査されるべき小さな形状が存在するときは、その結果、全体の計測プロセスの速度が限定される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第一の態様によれば、機械に装架された計測プローブの較正方法が提供され、計測プローブは、ワークピースに接触する先端を備えるスタイラスを有し、方法は、プローブ出力を機械の座標系に関連づけるプローブ較正マトリクスを決定することを含み、方法は、
(i)第一の機械データを得るために、第一のプローブ偏位を用いて較正用アーティファクトを走査すること、
(ii)第二の機械データを得るために、第二のプローブ偏位を用いて較正用アーティファクトを走査すること、および、
(iii)いかなる機械誤差も実質的に除かれる完全なプローブ較正マトリクスを得るために、第一の機械データおよび第二の機械データを用いることの工程を含む。
この発明は、したがって、第一および第二のプローブ偏位を用いる計測プローブによって、較正用アーティファクト(例えば、球)の二度の走査が実行される、計測プローブの較正技術を提供する。これは、機械誤差が実質的に除去されるかまたは除外される完全なプローブ較正マトリクスが決定される第一の機械データおよび第二の機械データを提供する。この方法を用いて決定される完全なプローブ較正マトリクスは、したがって、プローブ座標系にあるプローブ出力が、機械軸の要素に変換されるのを許容する、すなわち、プローブ偏位の関連する機械軸の要素は、各々のプローブ出力要素に、関連するマトリクス項を乗算することによって求められ得る。以下に説明されるように、一度、完全なプローブ較正マトリクスが知られたら、その後、機械幾何および動的誤差を補正するための較正マトリクスを確立することが可能である。
【0007】
この発明の方法は、較正用アーティファクトを走査する間に存在するいかなる機械誤差によっても実質的に影響されない完全なプローブ較正マトリクスを提供する。対照的に、従来技術は、全体的な誤差および部分的な誤差の組み合わせから生じる機械誤差を含むプローブ較正マトリクスを提供する。従来の較正技術は、したがって、測定値が得られた機械の領域の近傍でのみ有効であるプローブ較正マトリクスを提供し、プローブ較正マトリクスは、それゆえ、ワークピースが計測されるべき各々のさらなる領域のために再計算されねばならない。完全なプローブマトリクスを決定することにより、この発明は、それゆえ、機械を較正するのに必要な時間を減少し、工作機械の動作範囲のどの位置においても、計測プローブ出力(例えば、a、b、c値のセット)が、機械座標系に正確に変換されることを許容する。以下に、より詳細に説明されるように、この発明に従って完全なプローブ較正マトリクスを確立することは、また、動的誤差がそれによって定量化されることを許容し、可変速度走査を容易にする。
【0008】
有利には、プローブ出力は、プローブ座標系において定義されるプローブ出力データを含む。工程(i)は、したがって、また、上述の第一の機械データに対応する第一のプローブ出力データを取得することを含む。また、工程(ii)は、上述の第二の機械データに対応する第二のプローブ出力データを取得することを含む。そのような場合において、工程(iii)は、好都合には、完全なプローブ較正マトリクスを得るために、第一の機械データ、第二の機械データ、第一のプローブ出力データ、および、第二のプローブ出力データを用いることを含む。換言すると、対応する一組の機械データ(例えば、x、y、z値)およびプローブ出力データ(例えば、a、b、c値)は、二つの異なるプローブ偏位の各々に対して較正用アーティファクトの表面の複数の点で取得される。
【0009】
有利には、工程(iii)は、完全なプローブ較正マトリクスを確立するために、数値処理を用いることを含む。例えば、幾何学的な関係が、ある値または範囲が計算されること(ある完全なプローブ較正マトリクスを仮定すること)を許容するために、二つのプローブ偏位の各々で取得される一組のプローブ出力データおよび対応する機械データから確立される。計算によって生じるデータは、その後、既知の(例えば、事前に計測された)値と比較される。特に、数値処理は、好都合には、完全なプローブ較正マトリクスの項が、そのような計算値と既知の値との間の相違または誤差を最小限とするため、反復して変更されるように実行される。
【0010】
方法の工程(i)において、機械は計測プローブを第一の工具通路に沿って走査する。この工具通路は、スタイラスの先端が、上述の第一プローブ偏位を与えるために較正用アーティファクトに接触するように選択される。もし、較正用アーティファクトが球であるなら、第一の工具通路は、したがって、その球の中心にほぼ中心が置かれる半径Mの円を含む(簡単にするために、二次元の例を選択する)。方法の工程(ii)の間、機械は計測プローブを第二の工具通路に沿って走査する。要求される第二のスタイラス偏位を得るために、第二の工具通路は、また、その球の中心にほぼ中心が置かれる半径Mの円を含む。第一および第二の工具通路の差(この例においては、半径の差M−M)は、したがって、知られていると仮定される、すなわち、半径方向におけるある知られた差を有する二つの工具通路に沿ってプローブを走査するように指示されるであろう。二つの走査を実行するときの機械位置に対する全体的な誤差および部分的な誤差は、同じか、差があっても無視できるものであるから、この仮定は有効と見られる。第一機械データおよび第二機械データ間の差に関連する機械位置の差の値(例えば、M−M)は、したがって、好都合なことに、知られていると仮定される。
【0011】
以下にさらに詳細に説明されるように、機械位置の差の値(例えば、M−M)から導かれ得る数式が、第一および第二のプローブ出力のセット、ならびに、第一および第二のプローブ偏位で実行される走査から得られる機械データから(与えられる完全なプローブ較正マトリクスのために)計算される。得られたデータのセットの各々に対する計算された機械位置の差の値が、その後、既知の値と比較される。
【0012】
有利には、誤差の値は、したがって、既知および計算された機械位置の差の値の間の差を定量化していることが知られる。完全なプローブ較正マトリクスの値が、誤差を最小限にするために反復して変更される、誤差を最小限にする技術(例えば、最小二乗法)がそれから実行される。上述した方法の工程(iii)は、したがって、便利には、既知および計算された機械位置の差の値を最小限にする工程を含む。
【0013】
有利には、第一の機械データは、一連の第一機械データ値を含み、第二の機械データは、一連の第二機械データ値を含む。第一の機械データ値および第二の機械データ値は、好ましくは、対応する表面の法線ベクトルを有する機械位置に関する。上述の例を取ると、第一および第二の機械データ値は、したがって、同じ角度の機械位置に関連するように用意される。機械は、機械位置のデータが、二つの異なるプローブ偏位の走査中に、同じ角度位置で最初に取得されるよう用意される。択一的に、第一および第二の機械位置データは補間される。第一または第二プローブ出力データは、同じ方法で補間される。
【0014】
上述の方法を用いて、一度完全なプローブ較正マトリクスが確立されると、いわゆる、ボールバーデータを計算することができ、このことは、以下にさらに詳細に記述される。方法は、したがって、機械の範囲の中の第一位置に位置されるときに、機械データ、および、較正アーティファクトから得られる対応する計測プローブの出力を得る工程(iv)を、有利には含む。工程(iv)は、上述の方法の工程(i)または工程(ii)の間に取得される機械データおよび対応するプローブ出力を得ることを含み、また、さらなるデータを収集することを含む。第一の位置は、工程(i)および工程(ii)の間の、較正アーティファクトの位置に対応するかまたは対応しない。さらなる工程(v)が、それから実行され、工程(iii)において決定されるような完全なプローブ較正マトリクスは、指示される機械の動きが実際の機械の動きと対比されることを許容するボールバーデータを提供するために用いられる。換言すると、完全なプローブ較正マトリクスを知ることは、ボールバープロットが、較正アーティファクトを走査するときに得られるデータから作成される(実際にボールバーを用いることなく)ことを許容する。
【0015】
有利には、工程(v)は、機械範囲内の上述の第一位置のための幾何学的較正マトリクスを計算することを含む。そのような幾何学的較正マトリクスは、機械に関係する幾何学的誤差がスタイラス先端位置データから除去されることを許容する。
【0016】
機械の幾何学的誤差が、全体的な誤差および部分的な誤差の複合であり、これらが、どのように影響し合うとしても、機械の幾何学的較正マトリクスは、較正が行われる機械の作動範囲の領域に対する誤差を除去するだけである。もし、測定がこの領域の外で必要とされるなら、その後、較正方法は、作動範囲の他の位置で実行されることができ、多分、使用される測定条件に対するその機械の機械誤差とは独立した誤差マップを作成できる。もし必要なら、工程(iv)は、したがって、機械の範囲の一つまたはそれ以上の異なる位置に置かれた較正アーティファクトで繰り返し行われる。この方法によると、幾何学的較正マトリクスは、機械の範囲の複数の異なった位置に対して求められる。
【0017】
機械(幾何学的)誤差を確立することに加え、または、それに代えて、この発明により決定される完全なプローブ較正マトリクスを、動的誤差を補正するための方法において用いることがまた可能である。これは、同一のスタイラス偏位を用いる、異なった速度の少なくとも二つの走査で実行することによって得られる。方法は、したがって、好都合には、二つまたはそれ以上の異なった速度で、較正用のアーティファクトを走査する工程を含む。好都合には、動的較正マトリクスは、異なる速度で実行される走査から取得される機械データおよびプローブ出力から決定される。これを行う最も簡単な方法は、異なった速度で、前に(例えば、工程(i)または工程(ii)中に)使用された偏位の一つを用いてさらなる較正のための走査を実行することである。有利には、工程(i)は、したがって、第一の走査速度で実行され、その後、第二の走査速度で繰り返される。この方法によると、動的な較正マトリクスをまた確立するために、ただ一つの付加的な走査(すなわち、第二の速度で)が必要である。
【0018】
単純な形式において、動的な較正マトリクスは、第一の走査速度で収集された機械位置データが、第二の速度で収集された機械位置データに位置づけされるのを許容する。種々の速度の走査が実行され得るために、プローブの速度における変更に起因する動的誤差が、測定が必要とされる各々の速度に対して確立されまたは補間される必要がある。較正用アーティファクトは、したがって、複数の(例えば、三つまたはそれ以上、四つまたはそれ以上、五つまたはそれ以上)速度で走査され、その後の計測が、種々の速度で試みられることを許容する。較正アーティファクトが走査される速度の数は、したがって、要求される動的補正の精度、および、計測走査速度で使用される速度の範囲に依存する。多くの走査が各々の偏位で、各々、使用される範囲内の異なる速度で実行されることがまた好まれ、このことは、補間法の精度を改良する。
【0019】
幾何学的較正マトリクスと共通して、動的較正マトリクスは、機械領域の較正用アーティファクトの位置とともに変わる。多くの動的較正マトリクスが、したがって、必要ならば決定される。組み合わせられた幾何学的および動的較正マトリクスが、作動範囲の一つまたはそれ以上の位置に対して確立され得る。
【0020】
従来技術は、プローブの分離、機械の幾何学的および動的な誤差の補正マトリクスを許容しないことが留意されるべきである。既知の較正方法においては、動的誤差に関する機械誤差の影響が、線形ではなく、または、断定できないため、種々の速度で走査を実施することは可能でない。これに対して、この発明は、これらの誤差の各々が分離して確立されることを許容し、それにより、測定精度を増進する。
【0021】
上述のマトリクス(例えば、完全なプローブ較正マトリクス、幾何学的較正マトリクス、および、動的較正マトリクス)は、有利には、いかなる形においても実行される。例えば、そのようなマトリクスは、関数の列の形を取るか、一つまたはそれ以上のルックアップテーブル(LUTs)を含む。好都合には、一つまたはそれ以上のマトリクスは、多次元である。
【0022】
有利には、計測プローブの走査軸は、互いに直角である(すなわち、プローブは、デカルト座標系を用いる。)。同様に、機械は、デカルト座標系を用いる。好都合には、プローブの座標系の軸は、機械の座標系の軸に名目上平行である。デカルト幾何がここでは記述されるが、この発明は、いかなるタイプの機械および/またはプローブの幾何を使用することにも適用される。例えば、計測プローブは、極座標データを出力し、機械のデカルト座標系に変換される。方法は、三次元のプローブおよび機械軸の間のマッピングを提供するように実施されるが、技術は、二次元の適用に対しても等しく適用されることが留意されるべきである。
【0023】
有利には、工程(i)および(ii)は、較正アーティファクトの表面を横切る実質的に同じ行程に沿って計測プローブのスタイラス先端を走査することを含む。好都合には、工程(i)および(ii)は、各々、一つまたはそれ以上の面において、較正アーティファクトの表面を走査することを含む。例えば、図2を参照して以下に記述されるタイプの複数面走査技術が使用され得る。しかしながら、いかなる走査行程も使用され得ることが留意されるべきである。
【0024】
方法は、第一および第二のプローブ偏位で実行される二つの走査を含むように記述されるが、異なるプローブ偏位での一つまたはそれ以上のさらなる走査が付加的に実行され得ることが留意されるべきである。例えば、方法は、また、第三、第四、第五等の機械データを取得するために、第第三四、第五等のプローブ偏位を用いて較正アーティファクトを走査する工程を含む。
【0025】
いかなる形の較正アーティファクトも使用され得るが、較正アーティファクトは、有利には、球を含む。上述の方法において採用される機械は、いかなるタイプの座標位置決め機械も含む。例えば、それは、工作機械、座標計測機械またはそれに類するものを含む。
【0026】
この発明の第二の態様によると、計測装置は、計測プローブ、機械および較正アーティファウトを含み、計測プローブは、ワークピースに接触する先端を備えるスタイラスを有し、計測プローブは、上述の機械に装架され、上述の機械は、計測プローブの動作を制御する制御器を含み、制御器は、機械の座標系に対するプローブ出力に関するプローブ較正マトリクスを決定するため、較正ルーチンを実行するよう配置され、制御器は、(i)計測用のプローブに、第一のプローブ偏位を用いて較正アーティファクトを走査させ、それにより、第一の機械データを取得し、(ii)計測用のプローブに、第二のプローブ偏位を用いて較正アーティファクトを走査させ、それにより、第二の機械データを取得し、(iii)いかなる機械誤差も実質的に除かれている完全なプローブ較正マトリクスを得るために第一機械データおよび第二機械データを用いるように配置されている。制御器は、さらに、上述のこの発明の第一の態様による方法のいかなる工程も実施するように配置されている。
【0027】
この発明は、これから、添付する図面を参照して、実施例のみによって説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、中空軸12を介して工作機械に一端で取り付けられたプローブ10を示し、プローブの末端にワークピースと接触する先端16を有するスタイラス14がある。工作機械は、ワークピース、または、この場合において、較正用の球18が位置づけられるベッド20を含む。
【0029】
プローブ10は、三つの直交する(デカルト)走査軸におけるスタイラスのいずれの偏位にも関するプローブ偏位データを生成するアナログまたは走査プローブである。偏位の生のプローブ出力は、ここでは、a、b、c座標値と称される。工作機械は、また、機械座標(X、Y、Z)幾何における中空軸の位置を計測する、すなわち、いわゆる機械データを提供する、位置エンコーダまたはそれに類するものを含む。
【0030】
スタイラス先端の位置の測定値を提供するために、プローブ(a、b、c)座標系において取得される測定値を機械(X、Y、Z)座標系に変換することが必要である。そのような変換を提供するために、(a、b、c)プローブデータを機械(X、Y、Z)座標系に変換するために、いわゆるプローブマトリクス(Δm+p)を導くことが知られている。これは、機械(X、Y、Z)座標系におけるプローブの先端の位置(およびそれゆえ対象の表面にある点)を提供するために、プローブおよび機械データが結合されることを許容する。
【0031】
そのようなプローブマトリクスを導く方法は、米国特許第6909983号明細書に記載されている。方法は、単一のプローブ偏位(d)を用いて較正用球の周りにスタイラスを走査することを含む。特に、米国特許第6909983号明細書には、いかに、二方向性の走査が、機械座標系の各々の平面において実行されるかが記載されている。このことは、また、図2に図解されており、機械軸のx−y、x−z、および、y−z平面にそれぞれ対応する、三つの直交する平面50、52、および、54が選択される。そのような走査の間に取得される機械データおよびプローブ偏位データは、それから、最適のプローブマトリクスを見出すために反復(最小二乗)プロセスに用いられる。この最適化プロセスは、球の表面上の決められた位置と結びついた半径方向の誤差を最小限にすることに基づいている。
【0032】
米国特許第6909983号明細書に記載された較正プロセスは、したがって、次のマトリクス方程式を用いて先端位置が確立されることを可能にする。
先端位置=Δp+mP+M (1)
【0033】
ここで、Mは機械データ、Pはプローブ(a、b、c)データ、および、Δm+pは、プローブ(a、b、c)データを機械座標幾何に変換するための(最適化された)プローブ較正マトリクスである。この従来技術は、プローブ(p)および機械(m)誤差の両方を含むプローブ較正マトリクスを生成することに留意することが重要である。機械の作業スペースの異なる部分(すなわち、機械誤差が異なる)において較正プロセスを繰り返すことは、したがって、異なる値を有するプローブ較正マトリクスを生成する。プローブ較正マトリクスΔp+mは、したがって、測定データが高度の正確さで得られるべきであるなら、各々の場所で求められる必要がある。
【0034】
この発明によれば、完全なプローブ較正マトリクスが求められることを許容する改良された較正技術が得られる。換言すると、方法は、機械誤差からの重要な寄与を含まない較正マトリクス(Δ)を求めるために工夫された。この発明の方法は、少なくとも二つの異なるスタイラス偏位を用いて計測することを含み、次に、詳細に記述される。
【0035】
図3a、3bおよび3cに関連して、プローブ10a、10bおよび10cが、偏位ゼロ、偏位dおよび偏位dでそれぞれ示される。この三つのケースの全てにおいて、プローブの先端は較正球18を接触している。方法の工程が、次に、詳細に記述される。
【0036】
プローブ先端16の休止位置を確立する第一の工程が実行される。この休止位置は、プローブゼロ位置(P)として表示される。休止位置を見出す事前の工程は、真の休止位置からのプローブ先端のいかなる偏位も、それに続く較正計算に用いられるのを防止する。そのような最初の工程は任意であり、任意のプローブゼロ位置(P)が仮定され得ることが留意されるべきである。
【0037】
較正球の中心が見出される第二の工程が、また実行される。球の表面の点の最低限4回の計測が、球の中心の位置の推定値を提供するために要求される。球の中心を見出すためのプロセスは、国際特許出願WO00/25087号により詳細に記述されている。この第二の工程は、較正プロセスの間中、おおよそ要求される量の偏位で、プローブの先端が較正球との接触を維持することを確実にする、較正行程が選択されることを可能にする。この工程は、球の中心位置の推定のみを提供し、球の中心は、以下に記述されるように、また、これに続く最適化プロセスにおいて変数として含まれる。択一的に、この工程中に見出される球の中心位置は、これに続く最適化プロセス中、固定される(すなわち、知られたと推定される)。
【0038】
図3bに示されるように、計測プローブは、ほぼ一定のスタイラス偏位dでもって、較正球18の周りを走査される。便利には、走査は、上述の図2に示された行程に沿って、機械座標系の各平面で実行される。しかしながら、走査される三平面が直角であることは本質ではないことが留意されるべきである。しかしながら、図2に示されたタイプの走査の実行は、較正球の表面に沿った実質的に同じ行程が、プローブ偏位の量に関係なく、スタイラス先端によってトレースされることを確実にするので好まれる。走査中、機械データ(x、y、z)および対応するプローブ偏位(a、b、c)データの組が、走査行程の複数の点で収集される。
【0039】
図2に示された行程が一方向に走査されるか、または、二方向の走査が実行されることが留意されるべきである。二方向の走査は、完全なプローブ較正マトリクスから、方向に起因する影響(例えば、摩擦、抗力等)を除く利点を有する。択一的に、分離した完全なプローブ較正マトリクスが、異なる方向で実行される走査に対して計算される。
【0040】
図3cに示されるように、二方向の走査プロセスが、第二の、ほぼ一定の、スタイラス偏位dを用いて繰り返される。第二の走査中、機械データのセット(x、y、z)、および対応するプローブ偏位データのセット(a、b、c)の組が、走査行程の複数の点で再び収集される。
【0041】
第一および第二の走査のための適切な偏位の例は、50μmおよび500μmである。双方の走査は、例えば、250mm/sの速度で行われる。
【0042】
図4を参照して、いかにして、図3を参照して上記に説明された二方向の偏位(dおよびd)に対して得られるデータが、完全なプローブ較正マトリクスを計算するために用いられ得るかが記述される。
【0043】
第一の走査(すなわち、スタイラス偏位dでの走査)の幾何が図4aに示される。X−Y平面にある較正球の表面は、半径Rの円を規定し、機械の中空軸は、半径Sの円の周りを走査されて上述のスタイラス偏位dを提供することが理解される。したがって、次式が示される。
=M+K+2MProj (2)
【0044】
ここで、Mは、機械ベクトルの長さ、Kは、機械座標におけるプローブベクトルの長さ、Projは、表面法線ベクトルN上の機械座標におけるプローブベクトルの数学的突出である。
【0045】
同様の方程式が、機械の中空軸が、半径Sの円の周りを走査されてスタイラス偏位dを提供する、図4bの第二の走査の幾何に対して確立される。
=M+K+2MProj (3)
【0046】
ここで、Mは、機械ベクトルの長さ、Kは、機械座標におけるプローブベクトルの長さ、Projは、(同一の)表面法線ベクトルN上の機械座標におけるプローブベクトルの数学的突出である。
【0047】
方程式(2)および(3)の結合は、次式を得る。
【0048】
【数1】

【0049】
上述されたように、KおよびKは、機械座標(X、Y、Z)幾何において規定される距離である。KおよびKの値は、それぞれ、QおよびQのベクトル長さによって与えられ(すなわち、K=‖Q‖およびK=‖Q‖)、ここで、ベクトルQおよびQは、次式を介し、プローブ(a、b、c)幾何において得られる計測値に関連している。
【0050】
【数2】

【0051】
【数3】

【0052】
ここで、PおよびPは、それぞれ、第一および第二のスタイラス偏位に対する、プローブ座標における計測点(a、b、c)であり、Pは、偏位されていないプローブ位置(再度、プローブ座標系において規定される)であり、Δは、プローブ幾何から機械幾何への変換を許容する完全なプローブ較正マトリクスである。完全なプローブ較正マトリクスは、必要に応じて、線形または非線形である。もし、完全なプローブ較正マトリクスが非線形であるなら、PおよびPは、プローブ偏位(a、b、c)の高次の関数を含む。
【0053】
機械長さの値MおよびMは、また、双方とも、球の中心値(x、y、z)を含み、次式によって与えられる。
【0054】
【数4】

【0055】
【数5】

【0056】
ここで、第一および第二の走査に対する機械位置は、それぞれ、(x、y、z)および(x、y、z)である。
【0057】
方程式(5)および(6)を、方程式(4)に組み入れることは、M−Mが、第一および第二の偏位(すなわち、偏位PおよびP)で得られる、プローブデータ(a、b、c)および対応する機械データ(x、y、z)に関係する式を与える。さらに、式は、プローブ較正マトリクス(Δ)および球の中心位置(x、y、z)を変数として含む。先端の半径は、また、必要なら、変数として含まれる。
−Mの名目上の値は、スタイラス偏位dおよびdが用いられた計測における機械位置の差であり、したがって、既知と仮定される。上で与えられた例をとると、第一および第二の走査に対する適切なプローブ偏位(dおよびd)は、50μmおよび500μmである。このことは、450μmの半径の既知の差を有する二つの円の工具通路の周りに機械を走査することによって達成される。M−Mの値は、したがって、450μmと仮定される。
【0058】
上述したように、プローブおよび機械データは、二つの偏位dおよびdにおいて、球の表面の複数の点で得られる。したがって、各々の走査は、複数の(例えば、n個の)機械位置(x、y、z)およびプローブ(a、b、c)測定データの組を生ずる。
理想的なシナリオにおいて、dの走査中に得られるn組のdデータの各々は、dの走査中に得られるn組のデータと同じ角度位置(および、それゆえに、同じ表面法線ベクトルN)に関連している。しかしながら、実際には、第一走査(すなわち、偏位dでの)で得られるデータ組の表面法線ベクトルNは、第二走査(すなわち、偏位dでの)の表面法線ベクトルNと正確に対応していない。したがって、補間プロセス(例えば、線形補間)が、同一の表面法線ベクトルに対応する一連の機械位置データ値を含む、偏位dおよびdに対するデータ組を提供するために、データ組の一方において実行される。
上記に従うと、得られたn個のデータ組に対する全体の差は、次式のように表わされる。
【0059】
【数6】

【0060】
ここで、“Act”は、i回目のデータ組に対して方程式(4)の右辺を用いて求められるM−Mの実際の値であり、“Nom”は、M−M(例えば、450μm)の名目上のまたは既知の値である。方程式(7)は、したがって、数学的な、最小二乗の合計の、誤差最小化プロセスが、上述の変数を求めるために実行されることを許容する。特に、そのような最小化プロセスは、いかなる機械誤差もないプローブ較正マトリクス(Δ)を生む。最小化プロセスは、十分な高精度に事前に計測されるなら、最適化プロセスにおける定数として含むことが可能ではあるが、また、球の中心位置(x、y、z)を求めるために使用され得る。必要なら、誤差最小化プロセスにおいて、先端の半径は、また、変数として含まれる。
【0061】
プローブ較正マトリクスが求められると、したがって、プローブ座標(a、b、c)を機械座標(x、y、z)に変換するための方程式は、次式によって与えられる。
【0062】
【数7】

【0063】
ここで、a、bおよびcは、それぞれ、プローブ軸A、BおよびCに対するプローブ測定値、a、bおよびcは、偏位していないプローブ測定値(休止値)、および、線形較正マトリクスは、次式である。
【0064】
【数8】

【0065】
したがって、例えば、次式のようになる。
【0066】
【数9】

【0067】
二次元系に対しては、プローブ較正マトリクスは、単純に2×2のマトリクスに減じられる。もし必要なら、より高次の項がまた含まれる、非線形の完全なプローブ較正マトリクスが(例えば、3×5または3×7マトリクス)計算される。そのような例において、プローブデータは、また、より高次の項を含むことが認識される。
上述の技術の利点は、従来技術と異なり、完全な較正マトリクスがいかなる機械誤差も含まないように提供されるという事実にある。完全なプローブ較正マトリクスが得られると、機械のある領域または複数の領域における機械誤差を求めるための更なる工程が実行される。特に、完全なプローブ較正マトリクスΔが得られると、較正されたプローブを用いて機械の幾何学上の誤差を求めることが可能である。
【0068】
この点において、機械の幾何学上の誤差を立証する最も一般的な技術は、いわゆるボールバー試験であることが留意されるべきである。ボールバー試験は、プローブの挙動の真球度を決定する較正プロセスである。ボールバー試験の一例が、ヨーロッパ特許第0508686号明細書に記載されており、機械スピンドルは、拡張可能なバー(ボールバー)によって機械ベッドに固定された旋回ジョイントに取り付けられている。この例において、ボールバーは、スピンドルが旋回ジョイントを中心とされる円を旋回するように指示されるとき、ボールバーの長さを測定する内部トランスデューサーを有する。
【0069】
従来のボールバー技術の結果は、いわゆるボールバープロットと称される。そのようなボールバープロットの一例が、図5に示される。特に、図5は、機械がいかにある半径の円(例えば、真円60)を描くように指示され得るかを示す。真円60からの偏差は、ボールバーによって記録され、機械の精度を示すためにプロット62される。それから、機械の幾何学上の誤差に対して補正するために幾何学上の修正を適用することが知られており、すなわち、その結果、機械は、指示されたように真円を旋回する。
【0070】
本発明の方法は、ボールバープロットが実際のボールバーの必要なしに確立されることを許容する。較正球の赤道(例えば、x−y平面において)の周りの輪郭に沿って得られた一組のプローブおよび機械データを考慮するがよい。機械およびプローブデータは、上述したように完全なプローブマトリクスを計算して得られるデータであり、または、それは、分離して得られる。プローブ先端(a、b)の測定値は、完全なプローブマトリクスΔによって掛け算され、機械(x、y)の測定値に加えられる。換言すると、ボールバーデータは、次式によって求められる。
ボールバーデータ=ΔP+M (11)
【0071】
ここで、Pはプローブデータ、Mは機械データである。ボールバーデータは、方程式(11)を用いて計算され、したがって、図5に示されたタイプのボールバープロットを提供する。この技術は、プローブの行程(すなわち、工具の行程)に関する情報が、ボールバーを用いる分離した較正プロセスを実行する必要なくして得られるので、有利である
ボールバーデータが計算された後、補正が公知の方法で求められ、これらの幾何学上の誤差を軽減するための位置データとして適用される。換言すると、補正マトリクスが、図5に62でプロットされたデータを、真円60に変換するために求められる。先端の位置は、したがって、次のように表わされる。
先端位置=ΔP+ΔM (12)
【0072】
ここで、Δは、機械データ(M)に適用されて幾何学的誤差を除去する補正である。補正Δによって修正される機械の幾何学的誤差の一つの原因が、機械のxおよびyの動きを制御するサーボモータのバックラッシュから生じることが留意されるべきである。
また、この発明の方法は、上述の完全なプローブ較正マトリクスを得るために計測が行われる機械の動作範囲内の位置と結びつく機械誤差とは独立している完全なプローブ較正マトリクスΔを提供することが記憶されるべきである。プローブ較正マトリクスから機械誤差を除去することは、また、種々の速さの走査を可能にする。換言すると、この発明は、また、システムのいかなる動的誤差も計算され、したがって、測定データが補正されることを許容する。
【0073】
動的誤差を決定するために、2回の較正走査が選択された偏位(例えば、d)で、しかし、異なる速度で実行され、例えば、使用される極度の速度は、250mm/sおよび330mm/sである。全ての他の条件が無視できる差と仮定すると、動的誤差は、二回の異なる速度の走査により得られる測定値の相違によって与えられる。このことは、動的誤差に対して先端位置データを補正する、動的誤差補正マトリクスΔが計算されることを許容する。
【0074】
二つの選択された走査速度の中間にある走査速度に対して、動的誤差の補正は、半径方向で補間される。必要なら、付加的な較正走査が補間の精度を向上するために行われる。有利には、選択される偏位は、dまたはdであり、このことは、要求される較正走査の回数を減少する。動的補正が計算されると、それにより、種々の速度の走査が、データのロスまたは変換なしに部分の速やかな測定を提供することを可能にする。
速度変化(Δ)による動的誤差の補正は、多くの方法において得られたデータに適用され得る。一つの方法は、第一に、複数の速度の走査が行われる機械の動作範囲の領域における部分的なまたは全体的な機械誤差を補正するために、ボールバーデータを用いる上述の方法により、機械誤差の補正マトリクス(Δ)を計算することである。さらなる走査が、それから、前に使用された偏位の一つと異なる速度で行なわれ得る。動的誤差補正マトリクス(Δ)は、それから、同一偏位で異なる速度で実行された二回の走査の間の差から求められる。これは、先端位置が次式によって与えられることを許容する。
【0075】
先端位置=ΔP+ΔΔM (13)
【0076】
ここで記述されるマトリクス(Δ)は、上述した例で概説されたように、幾何学的なマトリクスの形式をとるけれども、マトリクスは、実際に、いかなる適切な形式でも実行される。例えば、各々のマトリクスは、一つまたはそれ以上の参照テーブルまたはそれに類するものを含む。動的補正マトリクスの場合において、ある予め決められた範囲内に含まれる速度で走査するときに使用される、複数の動的補正マトリクスΔが、参照テーブル(LUTs)の形式で提供される。
【0077】
同じ偏位の異なる速度で実行された二回の走査から得られたボールバーデータを減じることによって計算される結合した幾何学的/動的補正のマトリクス(Δa+m)を提供することが、また可能である。結果として得られるボールバーデータが、それから、動的および機械誤差に対する結合された補正(Δa+m)を計算するために次のように用いられる。
先端位置=ΔP+Δa+mM (14)
【0078】
これらの技術の双方にとって、幾何学的および動的誤差の補正は、典型的には、走査が行われた位置に対してだけ正しく考慮される。機械の動作範囲内の他の位置が、測定の走査に使用されるなら、較正プロセスは、他の位置で繰り返されるか、位置間の誤差の補正の補間を可能にするため、多くの走査が実行され得る。
もし、較正補正マトリクスを作成するための較正プロセス中に、時計回りおよび反時計回りの走査が実行されると、各々の方向に生成される動的誤差または較正マトリクスを平均する結合された較正マトリクスが作成され得る。
【0079】
較正アーティファクトは、これが最も複雑ではない結果を与えるため好ましくは球体であるが、しかしながら、他のいかなる形状も用いられ、例えば、卵型のような曲線形状が使用され得る。そのような場合において、ボールバープロットは、球体よりはむしろ卵型から変化するであろう。面を有するアーティファクトを用いることがまた可能であるが、高速を用いるとき、一定の加速度が維持するに困難であり、計算に複雑さを加え得る。
ここに示された速度、プローブ偏位等は、使用される典型的な速度を表わし、純粋に、本発明の理解を助けるための実施例として与えられる。他の速度、プローブ偏位、走査行程等は、本発明に従い、必要に応じて使用され得る。例えば、較正の後に、繊細な形態の物品が測定されるなら、使用される速度は、250mm/sの代わりに35mm/sのようなもっと遅いものであるだろう。したがって、実施例において使用される速度は、単に、実施例であり、ある環境下においては、与えられたものより高くも低くもなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】計測プローブの概略図である。
【図2】較正プロセスの概略的な走査を示す。
【図3a】異なる偏位でのプローブの較正を概略的に示す。
【図3b】異なる偏位でのプローブの較正を概略的に示す。
【図3c】異なる偏位でのプローブの較正を概略的に示す。
【図4a】計測システムの幾何を示す。
【図4b】計測システムの幾何を示す。
【図5】ボールバープロットの概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械に装架された計測プローブを較正する方法であって、計測プローブは、ワークピースに接触する先端を備えたスタイラスを有し、方法は、プローブの出力を機械座標系に関連づけるプローブ較正マトリクスを決定することを含み、方法は、(i)第一機械データを得るために第一プローブ偏位を用いて較正アーティファクトを走査すること、(ii)第二機械データを得るために第二プローブ偏位を用いて較正アーティファクトを走査すること、および(iii)いかなる機械誤差も実質的に除去される完全なプローブ較正マトリクスを得るために第一機械データおよび第二機械データを用いることの工程を含むことを特徴とする機械に装架された計測プローブを較正する方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、プローブ出力は、プローブ座標系で定義されるプローブ出力データを含み、工程(i)は、上述の第一機械データに対応する第一プローブ出力データを得ることをさらに含み、工程(ii)は、上述の第二機械データに対応する第二プローブ出力データを得ることをさらに含み、および、工程(iii)は、完全なプローブ較正マトリクスを得るために、第一機械データ、第二機械データ、第一プローブ出力データおよび第二プローブ出力データを用いることを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2の方法であって、工程(iii)は、完全なプローブ較正マトリクスを決定するために数値処理を用いることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3の方法であって、機械位置の差の値は既知であると仮定され、該機械位置の差の値は、第一機械データと第二機械データとの差に関連することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、工程(iii)は、計算された機械位置の差の値と上述の既知の機械位置の差の値の誤差を最小限にすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの方法であって、第一の機械データは、一連の第一の機械データの値を含み、第二の機械データは、一連の第二の機械データの値を含み、第一の機械データの値および第二の機械データの値は、対応する表面法線ベクトルを有する機械位置に関連することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの方法であって、完全なプローブ較正マトリクスが、少なくとも一つのルックアップテーブルを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの方法であって、(iv)機械データと、機械包絡線内の第一位置に位置される較正用アーティファクトから得られる対応する計測プローブ出力とを得ること、および、(v)実際の機械動作に比較される指示された機械動作を許容するボールバーデータを提供するために、工程(iii)で決定された完全なプローブ較正マトリクスを用いることの工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、工程(v)は、機械包絡線内の上述の第一位置に対して機械幾何学的較正マトリクスを計算することを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの方法であって、二またはそれ以上の異なる速度で較正アーティファクトを走査する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、工程(i)は、第一の走査速度で実行され、それから第二の走査速度で繰り返されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10または11の方法であって、動的較正マトリクスが、機械データおよび異なる速度で実行された走査のプローブ出力から決定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかの方法であって、計測プローブの走査軸が互いに垂直であり、機械座標系の互いに垂直な軸に名目上平行であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかの方法であって、工程(i)および(ii)が、較正アーティファクトの表面を横切る実質的に同じ行程に沿って、計測プローブのスタイラス先端を走査させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかの方法であって、工程(i)および(ii)が、各々、一またはそれ以上の表面において較正アーティファクトを走査することを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかの方法であって、上述の較正アーティファクトは、球を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
計測プローブ、機械および較正アーティファクトを含む計測装置であって、計測プローブは、ワークピースに接触する先端を備えるスタイラスを有し、計測プローブは上述の機械に装架され、上述の機械は、計測プローブの動作を制御する制御器を含み、制御器は、プローブ出力を機械座標系に関連づけるプローブ較正マトリクスを決定するために、較正ルーチンを実行するように用意され、制御器は、(i)計測プローブに第一プローブ偏位を用いて較正用アーティファクトを走査して第一機械データを得ることをもたらし、(ii)計測プローブに第二プローブ偏位を用いて較正用アーティファクトを走査して第二機械データを得ることをもたらし、(iii)いかなる機械誤差も実質的に除去される完全なプローブ較正マトリクスを得るために、第一機械データおよび第二機械データを用いるように用意されていることを特徴とする計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−534681(P2009−534681A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507149(P2009−507149)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001496
【国際公開番号】WO2007/125306
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】