説明

差動ディジタル伝送路の断線検出回路

【課題】 ラインドライバからラインレシーバに信号を伝送する差動ディジタル伝送路の断線検出回路において、高速信号パルスにも対応できる断線検出回路を提供する。
【解決手段】
DCフォトカプラー10への入力電流を整流する直流手段11を回線7とDCフォトカプラー10との間に設け、ターミネータ抵抗5をDCフォトカプラー10に直列に接続し、コンデンサー8をターミネータ抵抗5に並列に接続し、コンデンサー9をDCフォトカプラー10の発光ダイオードに並列に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットやFAサーボのエンコーダなどで用いられる差動ディジタル伝送路の断線検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
第4図は従来の差動ディジタル伝送路の断線検出回路である。(実用新案文献1)
差動ディジタル伝送路1は、2本のラインを1組の回線として少なくとも1組の回線を有しており、各回線の2本のラインにはそれぞれ正逆の両方向のパルスP、Qが組合わされて伝送される。
伝送路1はラインドライバ2とラインレシーバ3との間で正逆のパルス信号を伝送し、AC対応低速のフォトカプラー4の有する1組の入力端子が回線1の二つのラインに、ラインレシーバ3のターミネータ抵抗5とともに並列に接続されている。
ターミネータ抵抗5には、常時、どちらかの方向に電流が流れており、したがってフォトカプラー4は常にオン状態となる。いまの場合、フォトカプラー4の出力側は電源側の抵抗6と接地間に挿入されているため、出力信号aはLレベルを保つ。この状況は、パルス信号が流れても変化しない。もし伝送路1が切断されたとき、または停電のときは、フォトカプラー4は直ちにオフとなり、その出力信号aはHレベルに反転するため、この信号aを常時監視してHレベルになることを検出し、公知の手段により外部に通知することにより、容易に伝送路1の異常を検出することができる。
ところが図4の差動ディジタル伝送路の断線検出回路では、フォトカプラーとしてACタイプが用いられているので、応答速度が遅く、伝送路のパルス数が4Mpps程度になるとフォトカプラーの伝達遅延時間よりも短い時間でパルスが変化するため、フォトカプラーがONせず、断線検出ができないという問題があった。そこで図5のように、フォトカプラと回線の間にダイオードブリッジからなる直流手段を設け、フォトカプラーをDCタイプとする例が開示されている(特許文献1)。図5の回路によると、フォトカプラーへの入力電流は直流手段によって常に同一方向の直流となり、その直流電流を受けてDCフォトカプラーは常にON状態となるので、高速信号パルスにも対応できるようになる。
【特許文献1】実公平7−15219号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開平7−212409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが図5の回路においても、信号の切替わり時には電流がゼロになる時間帯が存在し、フォトカプラーの特性(伝達遅延時間)によっては電流の変化に追従できずに、フォトカプラーが動作しない場合があるという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、高速信号パルスにも対応できる断線検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、伝送路の回線それぞれに接続されたラインレシーバ側のターミネータ抵抗と、前記ターミネータ抵抗を流れる電流を入力電流とするDCフォトカプラーと、前記回線と前記DCフォトカプラーとの間に設けて前記DCフォトカプラーへの入力電流を整流する直流手段と、前記DCフォトカプラーの出力信号を監視して、前記入力電流の消失により出力信号の論理レベルが反転したことを検出する検出手段と、を有する差動ディジタル伝送路の断線検出回路において、
前記ターミネータ抵抗にコンデンサーを並列接続し、前記フォトカプラーの発光ダイオードにコンデンサーを並列接続するものである。
また、請求項2に記載の発明は、前記ターミネータ抵抗を前記フォトカプラーに直列に接続し、前記直流手段を前記回線に並列に接続するものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1と2に記載の発明によると、フォトカプラーへの入力電流は直流手段によって常に同一方向の直流となり、その直流電流を受けてDCフォトカプラーは常にON状態となる。また、ターミネータに並列接続されたコンデンサーは信号の切り替わり時に大電流を流しフォトカプラーの発光側のコンデンサーをチャージするので、常にフォトカプラーの発光ダイオードには電圧が印加される。以上の結果、高速信号パルスにも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の差動ディジタル伝送路の断線検出回路の第1の実施例である。図1において、10はDCフォトカプラー、11はダイオードマトリックスからなる直流手段である。図1において直流手段11が回線7と並列に接続されている。
また、ターミネータ抵抗5とフォトカプラー10にはコンデンサー8、9がそれぞれ並列に接続されている。
ここでダイオードは順方向電圧ドロップの少ないショットキーバリアダイオードである。
本発明が特許文献1と異なる部分は、フォトカプラーとターミネータ抵抗にコンデンサー8、9がそれぞれ並列に接続されている部分である。
【0008】
その動作は、信号がLとHの場合は図2の矢印ように流れ、信号がHとLの場合は図3の矢印のように流れ、常にフォトカプラー10の発光ダイオードには同じ方向の電流が流れる。さらに、ターミネータ5に並列接続されたコンデンサー8は信号の切り替わり時に大電流を流しフォトカプラー10の発光側のコンデンサー9をチャージするので、常にフォトカプラー10の発光ダイオードには電圧が印加される。以上の結果、フォトカプラーの伝達遅延時間より短い時間で電流が変化する高い周波数の信号パルスにも対応することができる。
【0009】
以上の実施例では、直流手段を回線に並列に、かつターミネータ抵抗をフォトカプラーに直列に接続したがこれに限定されることはなく、例えば直流手段を回線の片側に直列に、あるいはターミネータ抵抗を回線に並列に接続する場合も考えられる。
また、以上の実施例では1回線の伝送路を例に説明したが、複数の回線からなる伝送路に対しても、各回線にそれぞれ上記の断線検出回路を設けることで同様の効果が得られる。
さらに、複数回線の場合、フォトカプラーの出力側を直列に接続すると、いずれかの回線がひとつでも断線すれば出力レベルは反転するので、伝送路全体の断線監視に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明はロボットやFAサーボのエンコーダに限られるものではなく、一般にラインドライバからラインレシーバに信号を伝送する伝送路の断線検出に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例を示す差動ディジタル伝送路の断線検出回路図
【図2】本発明における直流手段の第1の動作を示す回路図
【図3】本発明における直流手段の第2の動作を示す回路図
【図4】従来の差動ディジタル伝送路の断線検出回路図
【図5】従来の別の差動ディジタル伝送路の断線検出回路図
【符号の説明】
【0012】
1……伝送路
2……ラインドライバ
3……ラインレシーバ
4……ACフォトカプラー
5……ターミネータ抵抗
6……電源側抵抗
a……出力信号
P,Q……正逆のパルス信号
7……回線
8,9……コンデンサー
10…DCフォトカプラー
11…直流手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1回線からなり、前記回線ごとにラインドライバからラインレシーバに信号を伝送する伝送路と、前記回線それぞれに接続されたラインレシーバ側のターミネータ抵抗と、前記ターミネータ抵抗を流れる電流を入力電流とするDCフォトカプラーと、前記回線と前記DCフォトカプラーとの間に設けて前記DCフォトカプラーへの入力電流を整流する直流手段と、前記DCフォトカプラーの出力信号を監視して、前記入力電流の消失により出力信号の論理レベルが反転したことを検出する検出手段と、を有する差動ディジタル伝送路の断線検出回路において、
前記ターミネータ抵抗に並列接続したコンデンサーと、前記DCフォトカプラーの発光ダイオードに並列接続したコンデンサーを備えることを特徴とする差動ディジタル伝送路の断線検出回路。
【請求項2】
前記断線検出回路は前記DCフォトカプラーに直列に接続された前記ターミネータ抵抗を備え、前記回線に並列に接続された前記直流手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の差動ディジタル伝送路の断線検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−96378(P2007−96378A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279008(P2005−279008)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】