差込式管継手
【課題】接続管の所定長さの差込み状態を人目で容易に確認できるものとする。
【解決手段】継手本体2の受口部12に接続管11の端部が差し込まれる差込式管継手において、継手本体2に確認孔18が内外貫通状に設けられ、継手本体2内に接続管11を所定長さにまで差し込むと確認孔18に露出するマーキング21が接続管11の外周面につけられている。
【解決手段】継手本体2の受口部12に接続管11の端部が差し込まれる差込式管継手において、継手本体2に確認孔18が内外貫通状に設けられ、継手本体2内に接続管11を所定長さにまで差し込むと確認孔18に露出するマーキング21が接続管11の外周面につけられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水又は給湯用ステンレス鋼管などの配管をワンタッチで接続するために使用される差込式管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワンタッチ方式の差込式管継手として、例えば、図11に示すように、基体(継手本体)30の大径部の内面に設けられた2条の周溝にOリング31を嵌め込み、大径部の縁端にコイルバネ32と、内側面に直角エッジ33aを有する押圧部材33が嵌め込まれた合成樹脂製の内カラー34とが配置され、これらをテーパ付外カラー(押輪)35で覆うようにしたものがある(特許文献1参照。)。この差込式管継手によれば、内カラー34の先端より接続管36が差し込まれると、押圧部材33が内カラー34の先端側に押されるが、押圧部材33の外側面が外カラー35のテーパ面35aで押圧されて内側面の直角エッジ33aが接続管36に食い込むことにより、これら差込式管継手と接続管36との結合が保持される。この結合状態で接続管36に引き抜き力が作用すると、押圧部材33はコイルバネ32の弾発力により外カラー35のテーパ面35a側に押し付けられると共に、そのテーパ面35aによって押圧部材33の直角エッジ33aが接続管36を押圧することにより、接続管36の引き抜きが阻止されるというものである。
【0003】
【特許文献1】特開平10−122460号公報(図1〜図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、上記従来の差込式管継手では、継手本体30に接続管36の端部を差込み後、該接続管36を正常長さにまで差込みできたか否かを容易に確認することができず、差込み不足の場合漏水の原因になる。そのためには、一般に、接続管36を継手本体30に差込む前に、施工者が接続管36の末端から所定距離を置いた所定位置にマジックインキ等でマーキングをつけ、接続管36の端部が所定の長さだけ差込まれるとマーキングが外カラー35の開口端面直近に位置するようにし、施工後に施工者以外の第三者(施工管理者等)もそのマーキングを確認できるようにしてある。
しかしながら、こうした場合、施工者がマーキングをつけないで施工を終え、施工後にマーキングをつけることも可能であり、このため外観上マーキングが正しい位置にあっても、正しく施工されたか疑わしい面もあった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、接続管の所定長さの差込み状態を施工者はもとより、第三者も人目で容易に確認でき、施工性、信頼性に優れる差込式管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の差込式管継手は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図10に付した符号を参照して説明すると、受口部(12)を有する継手本体(2)の受口部(12)に接続管11の端部が差し込まれる差込式管継手において、継手本体(2)に確認孔(18)が内外貫通状に設けられ、継手本体(2)内に接続管(11)が所定の長さまで差し込まれると接続管(11)の外周面に設けられたマーキング(21)が確認孔(18)から確認されるように構成していることに特徴を有するものである。
このような構成によれば、継手本体(2)への接続管(11)の所定長さの差込み状態を確認孔(18)からマーキング(21)を目視することで容易に確認でき、接続管(11)の差込み不足を未然に防止できる。また、施工者が接続管(11)にマーキング(21)をつけずに差込み施工した場合、施工後第三者は確認孔(18)からマーキング(21)を見ることができず、不正な施工を行ったことを容易に確認することができる。また、施工後に確認孔(18)からマーキングを行なうという不正があった場合、マーキングが不自然な状態になり、正しい施工でないことが容易に判別できる。すなわち、施工者により正しくマーキングを接続管(11)につけて差込むという手順を追って施工が行われたか否かを、第三者は確認孔(18)へのマーキング(21)の有無を確認することで容易に見分けることができる。
【0007】
請求項1記載の差込式管継手は、請求項2に記載のように、継手本体(2)の内部に収容され接続管(11)の外周面に係合する抜止部材(3)と、継手本体(2)の内部に収容され接続管(11)の外周面に密着するシールリング(5)とを備えるという構成を採用することができる。このような構成によると、接続管(11)を差し込むだけのワンタッチでシール状にかつ抜止め状に接続できる。
【0008】
請求項2記載の差込式管継手は、請求項3に記載のように、確認孔(18)は継手本体(2)内のシールリング(5)より受口部(12)の開口端側に偏倚した箇所に設けるという構成を採用することができる。このような構成によると、接続管(11)の内部と確認孔(18)との連通状態がシールリング(5)により遮断されるため、確認孔(18)から水が漏洩するのを防止したり、確認孔(18)から接続管(11)内へ雨水が浸入するのを防止したりするために確認孔(18)を敢えて密封シールする必要がなくなる。
【0009】
請求項2又は3記載に差込式管継手は、請求項4に記載のように、シールリング(5)の内径部に、接続管(11)の末端に外嵌可能な傷付き防止スリーブ(7)が配置され、この傷付き防止スリーブ(7)は、接続管(11)が所定長さにまで差し込まれるに伴い該接続管(11)の末端で継手本体(2)の内奥に向かって押し込まれてシールリング(5)から抜け出るようにしてあり、シールリング(5)は、自由状態において接続管(11)の外径よりも小さい内径を有して弾性変形自在に形成し、傷付き防止スリーブ(7)の抜け出しに伴い拡径変形して接続管(11)の外周面に密着するようにするという構成を採用することができる。尚、本願の特許請求の範囲および明細書において、「自由状態」とは、シールリング(5)が拡径するように変形されておらず圧縮応力又は引張応力が作用していない状態を言う。
接続管(11)を差し込むとき該接続管(11)の端部に外側のエッジが発生していると、該端部でシールリング(5)を傷付け、シールリング(5)によるシール機能に悪影響を及ぼすため、接続管(11)の切断後、その切断端面に発生している外側のエッジを除去する面取り等の加工が必要であり、また外側のエッジが発生しない接続管(11)の切断方法にはロータリカッター等が挙げられるが、このような切断方法に限定されるとの制限があった。
その点、上記のように傷付き防止スリーブ(7)を継手本体(2)の内部に収容する構成によれば、接続管(11)を切断する際、その切断端面に多少の外側のエッジが発生しそれを除去する加工を怠っても、接続管(11)差込み時に該接続管(11)の端部の外側のエッジでシールリング(5)を傷付けることなく施工できる。したがって、接続管(11)の切断方法に制限がなくその切断施工の自由度が得られる。
【0010】
請求項4記載の差込式管継手は、請求項5に記載のように、傷付き防止スリーブ(7)は、外周にシールリング(5)を保持するシールリング保持筒部(7a)と、このシールリング保持筒部の後端側に連設され、内径が接続管(11)の外径よりも大きく形成されて接続管(11)の末端に外嵌可能な接続管端部受け筒部(7b)とを有する形に形成することができる。
このような構成によると、接続管(11)の差込み長さが不足した場合には、図5のように接続管(11)とシールリング(5)との間に傷付き防止スリーブ(7)の接続管端部受け筒部(7b)が介在し、接続管(11)がシールリング(5)と非接触状態になるので、水圧試験で傷付き防止スリーブ(7)の内周面と接続管(11)の外周面との間の隙間から接続管(11)の外周面に沿って受口部(12)の方向への水漏れを検知することができ、この水漏れを検知することにより接続管(11)の差込み不足を確認できる。
【0011】
請求項5記載の差込式管継手は、請求項6に記載のように、シールリング保持筒部(7a)の外周に、自由状態のシールリング(5)の内径部が嵌まり込む凹溝(24)を形成することができる。これによれば、接続管(11)を差し込む前、すなわち在庫、保管時にシールリング(5)には内部応力が発生せず、シールリング(5)は接続管(11)が差し込まれたときにはじめて弾性的に拡径して接続管(11)の外周に密着するので、適切な圧縮代が長期間にわたり維持され、所定の耐用年数を保証することができる。
【0012】
請求項2ないし6のいずれか1項に記載の差込式管継手は、請求項7に記載のように、継手本体(2)内のシールリング(5)と抜止部材(3)との間に、抜止部材(3)を受口部(12)の内周に向かって押圧付勢する弾性部材(4)を収容配置し、受口部(12)の内周に、抜止部材(3)の当接により該抜止部材(3)に径方向内方への移動作用を加えるテーパ面(13)を受口部(12)外方に向かって窄まり状に形成することができる。
このような構成によれば、接続管(11)が完全に差し込まれると、抜止部材(3)は弾性部材(4)により受口部(12)のテーパ面(13)に押し付けられると共に、そのテーパ面(13)によって抜止部材(3)が縮径して接続管(11)の外周面に係合されることにより、接続管(11)の確実な抜止め状態が得られる。
また、接続管(11)の差込み後、接続管(11)に引き抜き力が加えられると、接続管(11)と同行する抜止部材(3)が受口部(12)のテーパ面(13)と当接することにより、抜止部材(3)が径方向内方へ移動して、接続管(11)の外周面への係合力が増す。これにより接続管(11)の抜け出しが確実に阻止される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の差込式管継手によれば、接続管の所定長さの差込み状態を確認孔から施工者はもとより第三者も人目で容易に確認でき、施工性、信頼性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例を示す差込式管継手の斜視図、図2は接続管の差込み完了後の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図、図3は接続管を差し込む前の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図、図4は接続管の差込み途中の状態を示す同差込式管継手の欠截断面図、図5は接続管を更なる差込み途中の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図、図6は接続管の端部を示す側面図、図7は同差込式管継手の傷付き防止スリーブの斜視図、図8は同差込式管継手のカラーの平面図、図9は同カラーの正面図、図10は同カラーの断面図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、差込式管継手1は、両端部が開口した筒形状を有する継手本体2と、この継手本体2の内部に収容配置される抜止部材3と、弾性部材4と、シールリング5と、傷付き防止スリーブ7等を備えている。
【0016】
継手本体2は、耐食性及び剛性を必要とするので、例えばSCS材や青銅材により精密鋳造の手法等により製造する。そして、図3のように、継手本体2は、軸方向中央付近に第1段部8を設け、この第1段部8をはさんで一側に大径部9を、他側に小径の流路10を形成し、大径部9の開口端部、すなわち継手本体2の軸方向一端部に接続管11の端部が差し込まれるれる受口部12を形成し、他端部の外周に接続用雄ねじ6を形成している。受口部12の開口端側の内周には受口部外方に向かって窄まり状のテーパ面13と、テーパ面13の受口部外方側端に円周溝14を形成している。受口部12内の第1段部8とテーパ面13との間の中間部内周には第1段部8より径大の第2段部19を設けている。
【0017】
図3のように、受口部12の内部には、テーパ面13に内接する抜止部材3と、この抜止部材3を保持するカラー15と、抜止部材3をカラー15ごとテーパ面13に向かって押圧付勢する弾性部材4とが配置されている。抜止部材3は、接続管11より硬質の材料、例えば接続管11がオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の場合は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS420)で形成すればよい。継手本体2の円周溝14にはストッパーリング16が嵌合されてその内径部でカラー15及び抜止部材3が受口部外方へ抜け出るのを防止している。ストッパーリング16はオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)等で形成することができる。
【0018】
弾性部材4は圧縮コイルばね等からなり、この弾性部材4の後端部はカラー15の前端の段部15aに係合し、同弾性部材4の前端部はシールリング5に隣接配置する断面L形の環状のスペーサー17に係合している。弾性部材4として圧縮コイルバネを使用する場合は、この部材をオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)等で形成することができる。
【0019】
シールリング5は、オレフィン系ゴム製パッキン等で弾性変形自在に形成し、特に耐塩素、耐熱性に優れたエチレンとプロピレン及び架橋用ジエンモノマーとの3元共重合体であるEPDMで形成することが好ましく、また耐熱性とともに耐薬品性にも優れたFKM(フッ素ゴム)などで形成することもできる。そして、図3のように、シーリング5はこれの内周からリップ5aを径方向内方へ突設した形に形成し、自由状態においてリップ5aの内径は接続管11の外径より小さい寸法に形成している。このシールリング5は受口部12内の第2段部19に配置している。
【0020】
継手本体2の適所には確認孔18を内外貫通状に設ける。図1、図2では確認孔18が継手本体2内のシールリング5より受口部12の開口端側に偏した箇所の円周上の少なくとも1箇所(図1に示す例では3箇所)に設けている。
【0021】
傷付き防止スリーブ7はPP、PE等プラスチックや金属などで形成し、図2、図7に示すように、内径が接続管11の内径と略同一径で、外径が継手本体2内の第1段部8と第2段部19との間の内周面20の内径よりも小さく形成されたシールリング保持筒部7aと、このシールリング保持筒部7aの後端側に一体に連設され、内径が接続管11の外径よりも大きく形成されて接続管11の末端に外嵌可能な薄肉の接続管端部受け筒部7bとを有する形に形成されている。シールリング保持筒部7aの内周面と接続管端部受け筒部7bの内周面との間には、接続管11の末端が当接する段部23を形成している。シールリング保持筒部7aの外周には、自由状態のシールリング5のリップ5aが嵌まり込む断面略V形状の凹溝24を形成している。接続管端部受け筒部7bの後端部7cは後方へ漸次拡径するラッパ状に形成し、これにより接続管11の差込み時に該接続管11の末端が接続管端部受け筒部7bの後端部7cに引っ掛かることなくスムーズに差し込まれるようになしている。接続管端部受け筒部7bにはスリットSを円周方向に所定間隔置きに設けている。シールリング保持筒部7aの先端部外周にはアール又は先窄まりテーパcを付けて、継手本体2内の内周面20に差し込みやすくしている。
【0022】
カラー15は、架橋ポリエチレンなどの汎用エンジニアリングプラスチックや、優れた耐熱性を有するPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの特殊エンジニアリングプラスチックで形成し、図3、図8〜10に示すように、複数個の保持穴15bを円周方向に所定間隔置きに有し、各保持穴15bに抜止部材3が嵌着されている。各抜止部材3の内面側には複数(図示例では2個)の係合歯3aを形成している。
【0023】
図6に示すように、接続管11を差込式管継手1に差し込む前に、接続管11の末端から所定距離Lを置いた所定位置にはマジックインキ等でマーキング21(点描で図示する)をつける。マーキング21は、継手本体2の受口部12に接続管11が所定長さにまで差し込まれると確認孔18の内側位置に達して確認孔18に露出するように位置設定してある。マーキング21は例えば赤色や青色などの目立つ色に着色しておくことによって、確認孔18からより一層確認し易くなる。
【0024】
上記の差込式管継手1による接続管11の施工手順を図2〜図5を参照にして説明する。
【0025】
まず、現場施工で、接続管11を差込式管継手1に差し込む前に、施工者は、図6のように接続管11の末端から所定距離Lを置いた所定位置にマーキング21(点描で図示する)をつける。
【0026】
また、予め、図3に示すように継手本体2内に、受口部12から継手本体2内奥に向かって順に、抜止部材3と、弾性部材4と、シールリング5、および傷付き防止スリーブ7等全ての部品を組み込んでおく。その際、シールリング5は自由状態でこれの内径部が傷付き防止スリーブ7の凹溝24に嵌まり込むように配置される。この組み込み状態で在庫、保管される。
【0027】
しかる後、図4に示すように、継手本体2の受口部12に接続管11を差込み、その端部を傷付き防止スリーブ7の接続管端部受け筒部7bに差し込んで接続管11の末端を傷付き防止スリーブ7内の段部23に当接させる。この接続管11の差込みに伴い抜止部材3は受口部12のテーパ面13に沿って継手本体2の内奥方向に移動し、かつ係合歯3aが接続管11の外周面に係合する。この状態で接続管11を引き抜く方向に外力が加わったとしても、受口部12のテーパ面13に当接する抜止部材3の係合歯3aが接続管11の外周面に係合しているので、接続管11が抜け出ることはない。
また、この接続管11の差込み時にはシールリング5と接続管11の末端との間に傷付き防止スリーブ7が介在した状態にあり、この状態で接続管11の末端の端面はシールリング5と非接触の状態で継手本体2の奥まで差し込まれるので、接続管11の末端の端面に外側のエッジが生じていてもその外側のエッジでシールリング5が傷付けられることはなく、シールリング5の損傷による水漏れは生じない。
【0028】
接続管11を更に深く差し込むと、図5の差込み途中過程を経て、図2に示すように継手本体2と接続管11とのシール接続状態が得られる。すなわち、図5に示すように接続管11が継手本体2内の途中まで差し込まれると、抜止部材3の係合歯3aが接続管11の外周面を滑りながら接続管11は傷付き防止スリーブ7をシールリング5より継手本体2内奥方向へ押し込む。
更に、接続管11は、図2に示すように、傷付き防止スリーブ7がシールリング保持筒部7aを継手本体2内の第1段部8に当接するとともに接続管端部受け筒部7bをシールリング5より継手本体内奥方向に押込む。これと同時にマーキング21が確認孔18の内側位置の差込み完了位置まで到達する。この過程において、傷付き防止スリーブ7はシールリング5のリップ5aを継手本体2の内奥方向に変向しながら移動しシールリング5から外れ、接続管11の差込みが完了した図2の状態では、シールリング5のリップ5aは接続管11の外周面に圧縮状に密着して接続管11の外周面と継手本体2の内周面との間を密封シールする状態が得られるとともに、抜止部材3の係合歯3aが接続管11の外周面に係合した抜止め状態が得られる。
【0029】
シールリング5のリップ5aが継手本体2の内奥方向に向いた状態で接続管11の外周面に圧縮状に密着していると、継手本体2内を流れる水が継手本体2の内周と傷付き防止スリーブ7との間あるいは接続管11の末端と傷付き防止スリーブ7との間からシールリング5にまで流れ込んできてもその水圧によってリップ5aを接続管11の外周面に押し付けるというシール圧が発生し、このためシール機能を効果的に発揮する。
【0030】
こうした接続管11の差込み完了状態は、確認孔18から接続管11のマーキング21が見えることを確認することによって、接続管11が所定長さの位置まで確実に差し込まれていることを確認することができる。したがって、接続管11の差込み不足による内部水漏れの発生を未然に防止することができる。また、施工者が接続管11にマーキング21をつけずに差込み施工した場合、施工後、第三者は確認孔18からマーキング21を見ることができないことから容易に発見することができる。
確認孔18は継手本体2内のシールリング5より受口部12の開口端側に偏した箇所に設けていると、接続管11の内部と確認孔18との連通状態がシールリング5により遮断され、確認孔18から内部の水が漏洩するのを防止したり、確認孔18から接続管11内へ雨水が浸入するのを防止したりするために確認孔18を敢えて密封シールする必要がなくなる。
【0031】
接続管11の差込み完了後、該接続管11を抜き出し方向に引っ張ると、接続管11と同行する抜止部材3がテーパ面13の窄まり側に当接することにより、抜止部材3が径方向内方へ移動して係合歯3aが接続管11の外周面へ食い込み係合力を増す。これにより接続管11の抜け出しが確実に阻止される。
【0032】
接続管端部受け筒部7bを有する傷付き防止スリーブ7が組み込まれていると、次のような利点もある。すなわち、接続管11の差込み長さが不足した場合には、図5のように接続管11とシールリング5との間に傷付き防止スリーブ7の接続管端部受け筒部7bが介在し、接続管11がシールリング5と非接触状態になるので、水圧試験で傷付き防止スリーブ7の内周面と接続管11の外周面との間の隙間から接続管11の外周面に沿って受口部12の方向への水漏れが生じる。この水漏れを検知することにより接続管11の差込み不足を確認できる。この場合、図7のように接続管端部受け筒部7bにスリットSを円周方向に所定間隔置きに設けておくと、より大きな水漏れを発生させることができ、検知が容易になる。
【0033】
尚、接続管11の接続後、接続管11を差込式管継手1から人為的に離脱させるには、ドライバー等を受口部12から差し込んでカラー15を抜止部材3ごと継手本体2の内奥方向へ弾性部材4の弾発力に抗して押し込むことにより、抜止部材3のテーパ面13との当接による締め付け力が解除され、これで接続管11を継手本体2から引き抜くことができる。
【0034】
図3に示すように、接続管11を差込む前、すなわち在庫、保管時には、傷付き防止スリーブ7のシールリング保持筒部7aの外周に形成した凹溝24に、自由状態のシールリング5のリップ5a(内径部)を嵌まり込む状態にしている。仮に、シールリング保持筒部7aの外周にシールリング5のリップ5aを格納する凹溝24を設けずに嵌め込むとシールリング5のリップ5aが弾性変形(拡径)する。この状態で長期間放置されると、シールリング5には、いわゆる「ヘタリ現象」が生じて圧縮永久歪が残留し、荷重が除去されても内径が元の寸法に復帰せず、耐用年数の低下をもたらすが、図3に示すように自由状態のシールリング5のリップ5aがシールリング保持筒部7aの外周に形成した凹溝24に嵌まり込む装着状態では、シールリング5には内部応力が発生せず、シールリング5のリップ5aは接続管11が差込まれたときにはじめて弾性的に拡径変形して接続管11の外周に密着するので、適切な圧縮代が長期間にわたり維持され、所定の耐用年数を保証することができる。
【0035】
上記実施例では、シールリング5にはリップパッキンを採用しているが、リップパッキンに代えて、Oリングを採用することもできる。
【0036】
上記実施例では、複数個の抜止部材3がそれぞれカラー15に複数個設けた保持穴15bにそれぞれ嵌着されているが、これに代えて、抜止部材3としては、図示省略するが、全体的に一つのリング状に形成し、その内径部に接続管11の外周面に食い込む係合歯を設けたものを使用し、これを受口部12の内周のテーパ面13に収容配備するものであってもよい。この場合は、上記カラー15や弾性部材4は不要である。
【0037】
さらに、上記実施例では、継手本体2の一方の側に接続用雄ねじ6を形成した雄ねじアダプター差込式管継手について記述したが、本発明はこれに限られず、他の構造、例えば、左右対称のソケット形差込式管継手、エルボ型差込式管継手等にも適用できることは勿論である。また、接続管11としては、ステンレス鋼管等の金属管に限られず、樹脂製の接続管、例えば塩化ビニール製の接続管などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例の差込式管継手の斜視図である。
【図2】接続管の差込み完了後の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図である。
【図3】接続管を差込む前の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図である。
【図4】接続管の差込み途中の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図である。
【図5】接続管を更なる差込み途中の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図である。
【図6】接続管の端部を示す側面図である。
【図7】同差込式管継手の傷付き防止スリーブの斜視図である。
【図8】同差込式管継手のカラーの平面図である。
【図9】同カラーの正面図である。
【図10】同カラーの断面図である。
【図11】従来例の差込式管継手の半欠截断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 差込式管継手
2 継手本体
3 抜止部材
4 弾性部材
5 シールリング
7 傷付き防止スリーブ
7a シールリング保持筒部
7b 接続管端部受け筒部
11 接続管
12 受口部
13 テーパ面
18 確認孔
21 マーキング
24 凹溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水又は給湯用ステンレス鋼管などの配管をワンタッチで接続するために使用される差込式管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワンタッチ方式の差込式管継手として、例えば、図11に示すように、基体(継手本体)30の大径部の内面に設けられた2条の周溝にOリング31を嵌め込み、大径部の縁端にコイルバネ32と、内側面に直角エッジ33aを有する押圧部材33が嵌め込まれた合成樹脂製の内カラー34とが配置され、これらをテーパ付外カラー(押輪)35で覆うようにしたものがある(特許文献1参照。)。この差込式管継手によれば、内カラー34の先端より接続管36が差し込まれると、押圧部材33が内カラー34の先端側に押されるが、押圧部材33の外側面が外カラー35のテーパ面35aで押圧されて内側面の直角エッジ33aが接続管36に食い込むことにより、これら差込式管継手と接続管36との結合が保持される。この結合状態で接続管36に引き抜き力が作用すると、押圧部材33はコイルバネ32の弾発力により外カラー35のテーパ面35a側に押し付けられると共に、そのテーパ面35aによって押圧部材33の直角エッジ33aが接続管36を押圧することにより、接続管36の引き抜きが阻止されるというものである。
【0003】
【特許文献1】特開平10−122460号公報(図1〜図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、上記従来の差込式管継手では、継手本体30に接続管36の端部を差込み後、該接続管36を正常長さにまで差込みできたか否かを容易に確認することができず、差込み不足の場合漏水の原因になる。そのためには、一般に、接続管36を継手本体30に差込む前に、施工者が接続管36の末端から所定距離を置いた所定位置にマジックインキ等でマーキングをつけ、接続管36の端部が所定の長さだけ差込まれるとマーキングが外カラー35の開口端面直近に位置するようにし、施工後に施工者以外の第三者(施工管理者等)もそのマーキングを確認できるようにしてある。
しかしながら、こうした場合、施工者がマーキングをつけないで施工を終え、施工後にマーキングをつけることも可能であり、このため外観上マーキングが正しい位置にあっても、正しく施工されたか疑わしい面もあった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、接続管の所定長さの差込み状態を施工者はもとより、第三者も人目で容易に確認でき、施工性、信頼性に優れる差込式管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の差込式管継手は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図10に付した符号を参照して説明すると、受口部(12)を有する継手本体(2)の受口部(12)に接続管11の端部が差し込まれる差込式管継手において、継手本体(2)に確認孔(18)が内外貫通状に設けられ、継手本体(2)内に接続管(11)が所定の長さまで差し込まれると接続管(11)の外周面に設けられたマーキング(21)が確認孔(18)から確認されるように構成していることに特徴を有するものである。
このような構成によれば、継手本体(2)への接続管(11)の所定長さの差込み状態を確認孔(18)からマーキング(21)を目視することで容易に確認でき、接続管(11)の差込み不足を未然に防止できる。また、施工者が接続管(11)にマーキング(21)をつけずに差込み施工した場合、施工後第三者は確認孔(18)からマーキング(21)を見ることができず、不正な施工を行ったことを容易に確認することができる。また、施工後に確認孔(18)からマーキングを行なうという不正があった場合、マーキングが不自然な状態になり、正しい施工でないことが容易に判別できる。すなわち、施工者により正しくマーキングを接続管(11)につけて差込むという手順を追って施工が行われたか否かを、第三者は確認孔(18)へのマーキング(21)の有無を確認することで容易に見分けることができる。
【0007】
請求項1記載の差込式管継手は、請求項2に記載のように、継手本体(2)の内部に収容され接続管(11)の外周面に係合する抜止部材(3)と、継手本体(2)の内部に収容され接続管(11)の外周面に密着するシールリング(5)とを備えるという構成を採用することができる。このような構成によると、接続管(11)を差し込むだけのワンタッチでシール状にかつ抜止め状に接続できる。
【0008】
請求項2記載の差込式管継手は、請求項3に記載のように、確認孔(18)は継手本体(2)内のシールリング(5)より受口部(12)の開口端側に偏倚した箇所に設けるという構成を採用することができる。このような構成によると、接続管(11)の内部と確認孔(18)との連通状態がシールリング(5)により遮断されるため、確認孔(18)から水が漏洩するのを防止したり、確認孔(18)から接続管(11)内へ雨水が浸入するのを防止したりするために確認孔(18)を敢えて密封シールする必要がなくなる。
【0009】
請求項2又は3記載に差込式管継手は、請求項4に記載のように、シールリング(5)の内径部に、接続管(11)の末端に外嵌可能な傷付き防止スリーブ(7)が配置され、この傷付き防止スリーブ(7)は、接続管(11)が所定長さにまで差し込まれるに伴い該接続管(11)の末端で継手本体(2)の内奥に向かって押し込まれてシールリング(5)から抜け出るようにしてあり、シールリング(5)は、自由状態において接続管(11)の外径よりも小さい内径を有して弾性変形自在に形成し、傷付き防止スリーブ(7)の抜け出しに伴い拡径変形して接続管(11)の外周面に密着するようにするという構成を採用することができる。尚、本願の特許請求の範囲および明細書において、「自由状態」とは、シールリング(5)が拡径するように変形されておらず圧縮応力又は引張応力が作用していない状態を言う。
接続管(11)を差し込むとき該接続管(11)の端部に外側のエッジが発生していると、該端部でシールリング(5)を傷付け、シールリング(5)によるシール機能に悪影響を及ぼすため、接続管(11)の切断後、その切断端面に発生している外側のエッジを除去する面取り等の加工が必要であり、また外側のエッジが発生しない接続管(11)の切断方法にはロータリカッター等が挙げられるが、このような切断方法に限定されるとの制限があった。
その点、上記のように傷付き防止スリーブ(7)を継手本体(2)の内部に収容する構成によれば、接続管(11)を切断する際、その切断端面に多少の外側のエッジが発生しそれを除去する加工を怠っても、接続管(11)差込み時に該接続管(11)の端部の外側のエッジでシールリング(5)を傷付けることなく施工できる。したがって、接続管(11)の切断方法に制限がなくその切断施工の自由度が得られる。
【0010】
請求項4記載の差込式管継手は、請求項5に記載のように、傷付き防止スリーブ(7)は、外周にシールリング(5)を保持するシールリング保持筒部(7a)と、このシールリング保持筒部の後端側に連設され、内径が接続管(11)の外径よりも大きく形成されて接続管(11)の末端に外嵌可能な接続管端部受け筒部(7b)とを有する形に形成することができる。
このような構成によると、接続管(11)の差込み長さが不足した場合には、図5のように接続管(11)とシールリング(5)との間に傷付き防止スリーブ(7)の接続管端部受け筒部(7b)が介在し、接続管(11)がシールリング(5)と非接触状態になるので、水圧試験で傷付き防止スリーブ(7)の内周面と接続管(11)の外周面との間の隙間から接続管(11)の外周面に沿って受口部(12)の方向への水漏れを検知することができ、この水漏れを検知することにより接続管(11)の差込み不足を確認できる。
【0011】
請求項5記載の差込式管継手は、請求項6に記載のように、シールリング保持筒部(7a)の外周に、自由状態のシールリング(5)の内径部が嵌まり込む凹溝(24)を形成することができる。これによれば、接続管(11)を差し込む前、すなわち在庫、保管時にシールリング(5)には内部応力が発生せず、シールリング(5)は接続管(11)が差し込まれたときにはじめて弾性的に拡径して接続管(11)の外周に密着するので、適切な圧縮代が長期間にわたり維持され、所定の耐用年数を保証することができる。
【0012】
請求項2ないし6のいずれか1項に記載の差込式管継手は、請求項7に記載のように、継手本体(2)内のシールリング(5)と抜止部材(3)との間に、抜止部材(3)を受口部(12)の内周に向かって押圧付勢する弾性部材(4)を収容配置し、受口部(12)の内周に、抜止部材(3)の当接により該抜止部材(3)に径方向内方への移動作用を加えるテーパ面(13)を受口部(12)外方に向かって窄まり状に形成することができる。
このような構成によれば、接続管(11)が完全に差し込まれると、抜止部材(3)は弾性部材(4)により受口部(12)のテーパ面(13)に押し付けられると共に、そのテーパ面(13)によって抜止部材(3)が縮径して接続管(11)の外周面に係合されることにより、接続管(11)の確実な抜止め状態が得られる。
また、接続管(11)の差込み後、接続管(11)に引き抜き力が加えられると、接続管(11)と同行する抜止部材(3)が受口部(12)のテーパ面(13)と当接することにより、抜止部材(3)が径方向内方へ移動して、接続管(11)の外周面への係合力が増す。これにより接続管(11)の抜け出しが確実に阻止される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の差込式管継手によれば、接続管の所定長さの差込み状態を確認孔から施工者はもとより第三者も人目で容易に確認でき、施工性、信頼性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例を示す差込式管継手の斜視図、図2は接続管の差込み完了後の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図、図3は接続管を差し込む前の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図、図4は接続管の差込み途中の状態を示す同差込式管継手の欠截断面図、図5は接続管を更なる差込み途中の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図、図6は接続管の端部を示す側面図、図7は同差込式管継手の傷付き防止スリーブの斜視図、図8は同差込式管継手のカラーの平面図、図9は同カラーの正面図、図10は同カラーの断面図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、差込式管継手1は、両端部が開口した筒形状を有する継手本体2と、この継手本体2の内部に収容配置される抜止部材3と、弾性部材4と、シールリング5と、傷付き防止スリーブ7等を備えている。
【0016】
継手本体2は、耐食性及び剛性を必要とするので、例えばSCS材や青銅材により精密鋳造の手法等により製造する。そして、図3のように、継手本体2は、軸方向中央付近に第1段部8を設け、この第1段部8をはさんで一側に大径部9を、他側に小径の流路10を形成し、大径部9の開口端部、すなわち継手本体2の軸方向一端部に接続管11の端部が差し込まれるれる受口部12を形成し、他端部の外周に接続用雄ねじ6を形成している。受口部12の開口端側の内周には受口部外方に向かって窄まり状のテーパ面13と、テーパ面13の受口部外方側端に円周溝14を形成している。受口部12内の第1段部8とテーパ面13との間の中間部内周には第1段部8より径大の第2段部19を設けている。
【0017】
図3のように、受口部12の内部には、テーパ面13に内接する抜止部材3と、この抜止部材3を保持するカラー15と、抜止部材3をカラー15ごとテーパ面13に向かって押圧付勢する弾性部材4とが配置されている。抜止部材3は、接続管11より硬質の材料、例えば接続管11がオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の場合は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS420)で形成すればよい。継手本体2の円周溝14にはストッパーリング16が嵌合されてその内径部でカラー15及び抜止部材3が受口部外方へ抜け出るのを防止している。ストッパーリング16はオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)等で形成することができる。
【0018】
弾性部材4は圧縮コイルばね等からなり、この弾性部材4の後端部はカラー15の前端の段部15aに係合し、同弾性部材4の前端部はシールリング5に隣接配置する断面L形の環状のスペーサー17に係合している。弾性部材4として圧縮コイルバネを使用する場合は、この部材をオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)等で形成することができる。
【0019】
シールリング5は、オレフィン系ゴム製パッキン等で弾性変形自在に形成し、特に耐塩素、耐熱性に優れたエチレンとプロピレン及び架橋用ジエンモノマーとの3元共重合体であるEPDMで形成することが好ましく、また耐熱性とともに耐薬品性にも優れたFKM(フッ素ゴム)などで形成することもできる。そして、図3のように、シーリング5はこれの内周からリップ5aを径方向内方へ突設した形に形成し、自由状態においてリップ5aの内径は接続管11の外径より小さい寸法に形成している。このシールリング5は受口部12内の第2段部19に配置している。
【0020】
継手本体2の適所には確認孔18を内外貫通状に設ける。図1、図2では確認孔18が継手本体2内のシールリング5より受口部12の開口端側に偏した箇所の円周上の少なくとも1箇所(図1に示す例では3箇所)に設けている。
【0021】
傷付き防止スリーブ7はPP、PE等プラスチックや金属などで形成し、図2、図7に示すように、内径が接続管11の内径と略同一径で、外径が継手本体2内の第1段部8と第2段部19との間の内周面20の内径よりも小さく形成されたシールリング保持筒部7aと、このシールリング保持筒部7aの後端側に一体に連設され、内径が接続管11の外径よりも大きく形成されて接続管11の末端に外嵌可能な薄肉の接続管端部受け筒部7bとを有する形に形成されている。シールリング保持筒部7aの内周面と接続管端部受け筒部7bの内周面との間には、接続管11の末端が当接する段部23を形成している。シールリング保持筒部7aの外周には、自由状態のシールリング5のリップ5aが嵌まり込む断面略V形状の凹溝24を形成している。接続管端部受け筒部7bの後端部7cは後方へ漸次拡径するラッパ状に形成し、これにより接続管11の差込み時に該接続管11の末端が接続管端部受け筒部7bの後端部7cに引っ掛かることなくスムーズに差し込まれるようになしている。接続管端部受け筒部7bにはスリットSを円周方向に所定間隔置きに設けている。シールリング保持筒部7aの先端部外周にはアール又は先窄まりテーパcを付けて、継手本体2内の内周面20に差し込みやすくしている。
【0022】
カラー15は、架橋ポリエチレンなどの汎用エンジニアリングプラスチックや、優れた耐熱性を有するPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの特殊エンジニアリングプラスチックで形成し、図3、図8〜10に示すように、複数個の保持穴15bを円周方向に所定間隔置きに有し、各保持穴15bに抜止部材3が嵌着されている。各抜止部材3の内面側には複数(図示例では2個)の係合歯3aを形成している。
【0023】
図6に示すように、接続管11を差込式管継手1に差し込む前に、接続管11の末端から所定距離Lを置いた所定位置にはマジックインキ等でマーキング21(点描で図示する)をつける。マーキング21は、継手本体2の受口部12に接続管11が所定長さにまで差し込まれると確認孔18の内側位置に達して確認孔18に露出するように位置設定してある。マーキング21は例えば赤色や青色などの目立つ色に着色しておくことによって、確認孔18からより一層確認し易くなる。
【0024】
上記の差込式管継手1による接続管11の施工手順を図2〜図5を参照にして説明する。
【0025】
まず、現場施工で、接続管11を差込式管継手1に差し込む前に、施工者は、図6のように接続管11の末端から所定距離Lを置いた所定位置にマーキング21(点描で図示する)をつける。
【0026】
また、予め、図3に示すように継手本体2内に、受口部12から継手本体2内奥に向かって順に、抜止部材3と、弾性部材4と、シールリング5、および傷付き防止スリーブ7等全ての部品を組み込んでおく。その際、シールリング5は自由状態でこれの内径部が傷付き防止スリーブ7の凹溝24に嵌まり込むように配置される。この組み込み状態で在庫、保管される。
【0027】
しかる後、図4に示すように、継手本体2の受口部12に接続管11を差込み、その端部を傷付き防止スリーブ7の接続管端部受け筒部7bに差し込んで接続管11の末端を傷付き防止スリーブ7内の段部23に当接させる。この接続管11の差込みに伴い抜止部材3は受口部12のテーパ面13に沿って継手本体2の内奥方向に移動し、かつ係合歯3aが接続管11の外周面に係合する。この状態で接続管11を引き抜く方向に外力が加わったとしても、受口部12のテーパ面13に当接する抜止部材3の係合歯3aが接続管11の外周面に係合しているので、接続管11が抜け出ることはない。
また、この接続管11の差込み時にはシールリング5と接続管11の末端との間に傷付き防止スリーブ7が介在した状態にあり、この状態で接続管11の末端の端面はシールリング5と非接触の状態で継手本体2の奥まで差し込まれるので、接続管11の末端の端面に外側のエッジが生じていてもその外側のエッジでシールリング5が傷付けられることはなく、シールリング5の損傷による水漏れは生じない。
【0028】
接続管11を更に深く差し込むと、図5の差込み途中過程を経て、図2に示すように継手本体2と接続管11とのシール接続状態が得られる。すなわち、図5に示すように接続管11が継手本体2内の途中まで差し込まれると、抜止部材3の係合歯3aが接続管11の外周面を滑りながら接続管11は傷付き防止スリーブ7をシールリング5より継手本体2内奥方向へ押し込む。
更に、接続管11は、図2に示すように、傷付き防止スリーブ7がシールリング保持筒部7aを継手本体2内の第1段部8に当接するとともに接続管端部受け筒部7bをシールリング5より継手本体内奥方向に押込む。これと同時にマーキング21が確認孔18の内側位置の差込み完了位置まで到達する。この過程において、傷付き防止スリーブ7はシールリング5のリップ5aを継手本体2の内奥方向に変向しながら移動しシールリング5から外れ、接続管11の差込みが完了した図2の状態では、シールリング5のリップ5aは接続管11の外周面に圧縮状に密着して接続管11の外周面と継手本体2の内周面との間を密封シールする状態が得られるとともに、抜止部材3の係合歯3aが接続管11の外周面に係合した抜止め状態が得られる。
【0029】
シールリング5のリップ5aが継手本体2の内奥方向に向いた状態で接続管11の外周面に圧縮状に密着していると、継手本体2内を流れる水が継手本体2の内周と傷付き防止スリーブ7との間あるいは接続管11の末端と傷付き防止スリーブ7との間からシールリング5にまで流れ込んできてもその水圧によってリップ5aを接続管11の外周面に押し付けるというシール圧が発生し、このためシール機能を効果的に発揮する。
【0030】
こうした接続管11の差込み完了状態は、確認孔18から接続管11のマーキング21が見えることを確認することによって、接続管11が所定長さの位置まで確実に差し込まれていることを確認することができる。したがって、接続管11の差込み不足による内部水漏れの発生を未然に防止することができる。また、施工者が接続管11にマーキング21をつけずに差込み施工した場合、施工後、第三者は確認孔18からマーキング21を見ることができないことから容易に発見することができる。
確認孔18は継手本体2内のシールリング5より受口部12の開口端側に偏した箇所に設けていると、接続管11の内部と確認孔18との連通状態がシールリング5により遮断され、確認孔18から内部の水が漏洩するのを防止したり、確認孔18から接続管11内へ雨水が浸入するのを防止したりするために確認孔18を敢えて密封シールする必要がなくなる。
【0031】
接続管11の差込み完了後、該接続管11を抜き出し方向に引っ張ると、接続管11と同行する抜止部材3がテーパ面13の窄まり側に当接することにより、抜止部材3が径方向内方へ移動して係合歯3aが接続管11の外周面へ食い込み係合力を増す。これにより接続管11の抜け出しが確実に阻止される。
【0032】
接続管端部受け筒部7bを有する傷付き防止スリーブ7が組み込まれていると、次のような利点もある。すなわち、接続管11の差込み長さが不足した場合には、図5のように接続管11とシールリング5との間に傷付き防止スリーブ7の接続管端部受け筒部7bが介在し、接続管11がシールリング5と非接触状態になるので、水圧試験で傷付き防止スリーブ7の内周面と接続管11の外周面との間の隙間から接続管11の外周面に沿って受口部12の方向への水漏れが生じる。この水漏れを検知することにより接続管11の差込み不足を確認できる。この場合、図7のように接続管端部受け筒部7bにスリットSを円周方向に所定間隔置きに設けておくと、より大きな水漏れを発生させることができ、検知が容易になる。
【0033】
尚、接続管11の接続後、接続管11を差込式管継手1から人為的に離脱させるには、ドライバー等を受口部12から差し込んでカラー15を抜止部材3ごと継手本体2の内奥方向へ弾性部材4の弾発力に抗して押し込むことにより、抜止部材3のテーパ面13との当接による締め付け力が解除され、これで接続管11を継手本体2から引き抜くことができる。
【0034】
図3に示すように、接続管11を差込む前、すなわち在庫、保管時には、傷付き防止スリーブ7のシールリング保持筒部7aの外周に形成した凹溝24に、自由状態のシールリング5のリップ5a(内径部)を嵌まり込む状態にしている。仮に、シールリング保持筒部7aの外周にシールリング5のリップ5aを格納する凹溝24を設けずに嵌め込むとシールリング5のリップ5aが弾性変形(拡径)する。この状態で長期間放置されると、シールリング5には、いわゆる「ヘタリ現象」が生じて圧縮永久歪が残留し、荷重が除去されても内径が元の寸法に復帰せず、耐用年数の低下をもたらすが、図3に示すように自由状態のシールリング5のリップ5aがシールリング保持筒部7aの外周に形成した凹溝24に嵌まり込む装着状態では、シールリング5には内部応力が発生せず、シールリング5のリップ5aは接続管11が差込まれたときにはじめて弾性的に拡径変形して接続管11の外周に密着するので、適切な圧縮代が長期間にわたり維持され、所定の耐用年数を保証することができる。
【0035】
上記実施例では、シールリング5にはリップパッキンを採用しているが、リップパッキンに代えて、Oリングを採用することもできる。
【0036】
上記実施例では、複数個の抜止部材3がそれぞれカラー15に複数個設けた保持穴15bにそれぞれ嵌着されているが、これに代えて、抜止部材3としては、図示省略するが、全体的に一つのリング状に形成し、その内径部に接続管11の外周面に食い込む係合歯を設けたものを使用し、これを受口部12の内周のテーパ面13に収容配備するものであってもよい。この場合は、上記カラー15や弾性部材4は不要である。
【0037】
さらに、上記実施例では、継手本体2の一方の側に接続用雄ねじ6を形成した雄ねじアダプター差込式管継手について記述したが、本発明はこれに限られず、他の構造、例えば、左右対称のソケット形差込式管継手、エルボ型差込式管継手等にも適用できることは勿論である。また、接続管11としては、ステンレス鋼管等の金属管に限られず、樹脂製の接続管、例えば塩化ビニール製の接続管などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例の差込式管継手の斜視図である。
【図2】接続管の差込み完了後の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図である。
【図3】接続管を差込む前の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図である。
【図4】接続管の差込み途中の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図である。
【図5】接続管を更なる差込み途中の状態を示す同差込式管継手の半欠截断面図である。
【図6】接続管の端部を示す側面図である。
【図7】同差込式管継手の傷付き防止スリーブの斜視図である。
【図8】同差込式管継手のカラーの平面図である。
【図9】同カラーの正面図である。
【図10】同カラーの断面図である。
【図11】従来例の差込式管継手の半欠截断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 差込式管継手
2 継手本体
3 抜止部材
4 弾性部材
5 シールリング
7 傷付き防止スリーブ
7a シールリング保持筒部
7b 接続管端部受け筒部
11 接続管
12 受口部
13 テーパ面
18 確認孔
21 マーキング
24 凹溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受口部を有する継手本体の前記受口部に接続管の端部が差し込まれる差込式管継手において、前記継手本体に確認孔が内外貫通状に設けられ、前記継手本体内に前記接続管が所定の長さまで差し込まれると前記接続管の外周面に設けられたマーキングが前記確認孔から確認されるように構成していることを特徴とする、差込式管継手。
【請求項2】
前記継手本体の内部に収容され前記接続管の外周面に係合する抜止部材と、前記継手本体の内部に収容され前記接続管の外周面に密着するシールリングとを備えている、請求項1記載の差込式管継手。
【請求項3】
前記確認孔は前記継手本体内の前記シールリングより前記受口部の開口端側に偏倚した箇所に設けている、請求項2記載の差込式管継手。
【請求項4】
前記シールリングの内径部に、前記接続管の末端に外嵌可能な傷付き防止スリーブが配置され、この傷付き防止スリーブは、前記接続管が所定長さにまで差し込まれるに伴い該接続管の末端で継手本体内奥に向かって押し込まれて前記シールリングから抜け出るようにしてあり、
前記シールリングは、自由状態において前記接続管の外径よりも小さい内径を有して弾性変形自在に形成し、前記傷付き防止スリーブの抜け出しに伴い拡径変形して前記接続管の外周面に密着するようにしている、請求項2又は3記載に差込式管継手。
【請求項5】
前記傷付き防止スリーブは、外周に前記シールリングを保持するシールリング保持筒部と、このシールリング保持筒部の後端側に連設され、内径が前記接続管の外径よりも大きく形成されて前記接続管の末端に外嵌可能な接続管端部受け筒部とを有する形に形成されている、請求項4記載の差込式管継手。
【請求項6】
前記シールリング保持筒部の外周に、自由状態の前記シールリングの内径部が嵌まり込む凹溝を形成している、請求項5記載の差込式管継手。
【請求項7】
前記継手本体内の前記シールリングと前記抜止部材との間に、前記抜止部材を受口部の内周に向かって押圧付勢する弾性部材を収容配置しており、前記受口部の内周に、前記抜止部材の当接により該抜止部材に径方向内方への移動作用を加えるテーパ面を受口部外方に向かって窄まり状に形成している、請求項2ないし6のいずれか1項に記載の差込式管継手。
【請求項1】
受口部を有する継手本体の前記受口部に接続管の端部が差し込まれる差込式管継手において、前記継手本体に確認孔が内外貫通状に設けられ、前記継手本体内に前記接続管が所定の長さまで差し込まれると前記接続管の外周面に設けられたマーキングが前記確認孔から確認されるように構成していることを特徴とする、差込式管継手。
【請求項2】
前記継手本体の内部に収容され前記接続管の外周面に係合する抜止部材と、前記継手本体の内部に収容され前記接続管の外周面に密着するシールリングとを備えている、請求項1記載の差込式管継手。
【請求項3】
前記確認孔は前記継手本体内の前記シールリングより前記受口部の開口端側に偏倚した箇所に設けている、請求項2記載の差込式管継手。
【請求項4】
前記シールリングの内径部に、前記接続管の末端に外嵌可能な傷付き防止スリーブが配置され、この傷付き防止スリーブは、前記接続管が所定長さにまで差し込まれるに伴い該接続管の末端で継手本体内奥に向かって押し込まれて前記シールリングから抜け出るようにしてあり、
前記シールリングは、自由状態において前記接続管の外径よりも小さい内径を有して弾性変形自在に形成し、前記傷付き防止スリーブの抜け出しに伴い拡径変形して前記接続管の外周面に密着するようにしている、請求項2又は3記載に差込式管継手。
【請求項5】
前記傷付き防止スリーブは、外周に前記シールリングを保持するシールリング保持筒部と、このシールリング保持筒部の後端側に連設され、内径が前記接続管の外径よりも大きく形成されて前記接続管の末端に外嵌可能な接続管端部受け筒部とを有する形に形成されている、請求項4記載の差込式管継手。
【請求項6】
前記シールリング保持筒部の外周に、自由状態の前記シールリングの内径部が嵌まり込む凹溝を形成している、請求項5記載の差込式管継手。
【請求項7】
前記継手本体内の前記シールリングと前記抜止部材との間に、前記抜止部材を受口部の内周に向かって押圧付勢する弾性部材を収容配置しており、前記受口部の内周に、前記抜止部材の当接により該抜止部材に径方向内方への移動作用を加えるテーパ面を受口部外方に向かって窄まり状に形成している、請求項2ないし6のいずれか1項に記載の差込式管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−2455(P2009−2455A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164992(P2007−164992)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】
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