説明

巻線装置

【課題】
一対の巻線の軸上で対向する部分間の電位差が小さくなるようにして、作動中の電圧が高くなる場合であっても小型化を可能にした巻線装置を提供する。
【解決手段】
巻線装置は、偏平な磁性体COと、表裏両面の間に磁性体を内装している絶縁性基体IBと、絶縁性基体の表裏両面に沿って磁性体の外周側を取り囲むように巻装され、それぞれのほぼ中点PMが空間配置において一端に位置し、当該中点同士が磁軸に沿って互いに対面し、かつ離間して配設された一対のコイルW1、W2とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに磁気結合する一対の巻線を備えた巻線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに磁気結合する一対の巻線を備えた絶縁形の巻線装置は、トランスなどとして電子機器に用いられている。電子機器の小型化に伴って、そこに用いる巻線装置の小型化が図られている。例えば、巻線装置の殆どを配線基板内に組み込んだり、さらには半導体デバイス中に巻線装置を組み込んだりすることができる。コアとなる磁性体を直線状にして一対の巻線をその磁性体の周囲に、かつ磁軸に沿って離間して巻装すれば、比較的小型の互いに磁気結合する一対の巻線を備えた絶縁形の巻線装置を得ることができるという課題がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−212265号公報
【特許文献2】特開平02−181961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁形の巻線装置では一対の巻線間に絶縁距離を確保する必要があるので、作動中の電圧が高いために磁軸の沿って対向する一対の巻線間の電位差が高くなるほど絶縁距離を大きくする必要があるので、小型化に制限を受ける。
という課題がある。
【0005】
本発明の実施形態は、一対の巻線の磁軸に沿って離間して対向する部分間の電位差が小さくなるようにして、作動中の電圧が高くなる場合であっても小型化を可能にした巻線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態において、巻線装置は、磁性体、絶縁性基体および一対のコイルを具備している。磁性体は、偏平な形態をなしている。絶縁性基体は、その表裏両面の間に磁性体を内装している。一対のコイルは、絶縁性基体の表裏両面に沿って磁性体の外周側を取り囲むように巻装されている。また、それぞれのほぼ中点が空間配置において一端に位置し、当該一端同士が互いに対面し、かつ離間して配設されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、一対の巻線のほぼ中点を一端側に位置させ、当該一端側が磁軸に沿って互いに対面し、かつ離間して配設したことにより、磁軸の沿って対向する巻線間の電位差が小さくなるので、作動中の電圧が高くなる場合であっても小型化を可能にした巻線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる絶縁性基体の表面側を透視した状態の要部平面図である。
【図2】図1のII−II´線に沿う要部端面図である。
【図3】同じく巻線の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係わる巻線の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1の実施形態〕
本発明の巻線装置の第1の実施形態は、図1ないし図3に示すように、磁性体CO、絶縁性基体IBおよび一対のコイルW1、W2を具備している。
【0010】
磁性体COは、コアとして機能する部材であるが、偏平である。偏平であることは、後述する絶縁性基体IBが板状をなしていても、その内部に埋設するのが容易になり、巻線装置の薄型化に寄与する。また、磁性体COは、図1に示すように平面視で短冊状すなわち細長のシート状をなしている。さらに、磁性体COは、既知の磁性材料、例えばフェライトなどの高透磁率物質を用いて形成することができる。なお、磁性体COの肉厚は、絶縁性基体IBが許容する範囲内で適宜の数値を採用することができる。
【0011】
絶縁性基体IBは、図2に示すとともに上述したように、その表裏両面の間に磁性体COを内装している。すなわち、磁性体COは、絶縁性基体IBの内部に埋設されている。したがって、磁性体COを適当な薄さを有するシート状に成形することにより、絶縁性基体IBを板状に形成することが可能である。
【0012】
また、絶縁性基体IBは、プリント配線基板に用いる基板の形態をなしていることが許容される。この形態においては、巻線装置のみを構成するプリント配線基板であってもよいし、電子機器全体またはその一部の回路を構成するためのプリント配線基板の一部として巻線装置が付設されるのであってもよい。
【0013】
さらに、絶縁性基体IBは、半導体デバイスの内部に形成される形態であってもよい。この形態であれば、巻線装置を内蔵した半導体集積回路すなわちICを構成することができる。
【0014】
一対のコイルW1、W2は、絶縁性基体IBの表裏両面に沿って磁性体COの外周を取り囲むように巻装されているとともに、それぞれのほぼ中点PMがコイルW1、W2の空間配置において、コイルの一端に位置し、当該一端同士が互いに対面し、かつ磁軸に沿って離間して配設されて一対のコイルW1、W2間の最接近部分を構成する。そうして、一対のコイルW1、W2は、磁性体COを介して磁気結合するとともに、絶縁性基体IBを介して上記所定の位置関係に保持される。なお、ほぼ中点とは、厳密な意味で中点であるだけでなく、凡そ中点であれば、本実施形態の効果が得られるからである。
【0015】
一対のコイルW1、W2の好適な形態は、次のとおりである。すなわち、一対のコイルW1、W2のほぼ中点PMを境に全体を磁軸に沿った長手方向に2分して第1および第2の領域R1、R2を形成する。第1および第2の領域R1、R2は、それぞれ一端が中点側PMで、他端がコイル端PTとなる。なお、コイル端PTは、一対のコイルW1、W2のそれぞれ両端側に形成されるので、一方がコイル巻回の始点であれば、他方が終点となる。そして、第1および第2の領域R1、R2のいずれか一方の領域の中点側PMがコイルW1、W2の空間配置における一端となり、コイル端PTが他方の領域に隣接する。なお、図1において、符号MCは、第1の領域R1の中点PMと第2の領域R2の中点PMとの間を連絡する連絡導体部である。
【0016】
さらにまた、一対のコイルW1、W2は、絶縁性基体IBの表裏両面に沿って磁性体COの外周側を取り囲むように巻装されているので、その各ターンを、絶縁性基体IBの表裏両面に沿って延在する一対の表面導体部MSと絶縁性基体IBの肉厚部を貫通する一対の貫通導体部MPとで形成することができる。
【0017】
図1において、一対のコイルW1、W2の点線で示す部分は、絶縁性基体IBの裏面に配設した裏面側の表面導体部MSである。これに対して、実線で示す部分は、絶縁性基体IBの表面側の表面導体部MSなどの部材である。表面導体部MSを絶縁性基体IBの表面および裏面に支持させるには既知の種々の支持手段を採用することができる。例えば、絶縁性基体IBの表面に導電性金属の配線パターンを接着、蒸着およびめっきなどの既知の各種被着手段を選択的に用いて被着させることができる。また、配線パターンに代えて絶縁性基体IBに対して独立している導電線または導電条を単に絶縁性基体IBの表面に沿って添設することで、表面導体部MSを絶縁性基体IBの表面に支持させてもよい。
【0018】
上記貫通導体部MPは、磁性体COの周囲に位置する絶縁性基体IBの肉厚部分を貫通するスルーホールなどの形態をなしていて、表裏両面の表面導体部MS、MSを橋絡して接続することでコイルのターンを形成する。
【0019】
また、本実施形態において、絶縁性基体IBの表面に被着した表面導体部MSの配線パターンは、図1および図3に示すように、表面側がコアCOの磁軸に対して直角をなしている。これに対して、裏面側が点線で示すように、配線パターンを斜めに形成することで、各ターンを連結している。
【0020】
ところで、一対のコイルW1、W2は、互いに同一ターン数であってもよいし、異なるターン数であってもよい。したがって、コイルW1、W2のターン数は、所望により適宜設定することができる。
【0021】
一対のコイルW1、W2に外部回路を接続する付属的手段として、一対の外部端子T1、T2を一対のコイルW1、W2の両端部すなわち一対のコイル端PT、PTに配設することができる。そこで、コイル端PTを構成しているそれぞれの表面導体部MSから配線パターンを絶縁性基体IBの例えば表面の適当な位置まで延在させて外部端子T1、T2を配設することができる。しかし、所望により他の導電部材で外部端子T1、T2を形成してもよい。
【0022】
次に、第1の実施形態における巻線装置の作用を説明する。一対のコイルW1、W2を備えた巻線装置を絶縁形のトランスとして作動させる場合、一対のコイルW1、W2がいずれの極性に配置されている場合であっても、一対のコイルW1、W2は、その中点PM、PM間における電位差が最も小さくなる。本実施形態においては、一対のコイルW1、W2が最も接近する位置となる中点PM同士が磁軸に沿って離間して対向するよう配設にしたので、一対のコイルW1、W2間の絶縁距離を確保しやすくなり、そのために巻線装置を小型化することができる。
【0023】
〔第2の実施形態〕
図4を参照して第2の実施形態を説明する。本実施形態は、一対のコイルW1、W2の少なくとも一方において、磁軸方向からコイルのターンを見たときに四角形状をなしている点で第1の実施形態と同様であるが、コイルのターンを形成する一対の表面導体部MS、MSと、一対の貫通導体部MP、MPとの接合部が全て直角になる点で異なっている。すなわち、絶縁性基体IBの表面側の表面導体部MSが短冊状をなし、裏面側の表面導体部MSが鍵の手状に屈曲している。そして、貫通導体部MPは、その両端が隣接する一対の裏面側の表面導体部MS、MSの磁軸と平行な側面部分に接合している。
【0024】
本実施形態においては、一対の表面導体部MSと貫通導体部MPとの接合部が全て表面導体部MSの磁軸と平行な側面部分に接合していので、接合部を形成する際の接合作業が容易になるとともに、確実な接合を行いやすくなるという利点がある。
【0025】
〔第3の実施形態〕
図示を省略しているが、第3の実施形態は、半導体デバイスの内部に巻線装置を内蔵している。すなわち、巻線装置は、半導体基板と、その上に形成した第1の絶縁層と、第1の絶縁層の上に形成した裏面側の表面導体部MSと、裏面側の表面導体部の一対のスルーホール接合予定部を除いて表面導体部MSおよび表面導体部MSの周囲の第1の絶縁層の上に形成した第2の絶縁層と、第2の絶縁層の上に形成した磁性体と、磁性体の上および磁性体の周囲の第2の絶縁層の上に一対のスルーホール予定部を除いて形成した第3の絶縁層と、第3の絶縁層の上に形成した表面側の表面導体部と、裏面側の表面導体部および表面側の表面導体部の間を接続する一対のスルーホールと、表面側の表面導体部を被覆する外面層とを備え、上記裏面側の表面導体部、一対のスルーホールおよび表面側の表面導体部で磁性体の周囲を取り囲んで形成したターンを有する一対のコイルを形成し、第2および第3の絶縁層が絶縁性基体を構成している。そして、一対のコイルは、第1の実施形態におけるのと同様の中点同士が磁軸にそって対面し、かつ離間して配設されている。
【0026】
第3の実施形態によれば、巻線装置が半導体デバイスの内部に内蔵されているから、半導体デバイスの中にIC化した電子機器またはその主要部を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
CO…磁性体、IB…絶縁性基体、MC…連絡導体部、MP…貫通導体部、MS…表面導体部、PM…中点、PT…コイル端、R1…第1の領域、R2…第2の領域、T1、T2…外部端子、W1、W2…コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平な磁性体と;
表裏両面の間に磁性体を内装している絶縁性基体と;
絶縁性基体の表裏両面に沿って磁性体の外周を取り囲むように巻装され、それぞれのほぼ中点が空間配置において一端に位置し、当該中点同士が磁軸に沿って互いに対面し、かつ離間して配設された一対のコイルと;
を具備していることを特徴とする巻線装置。
【請求項2】
一対のコイルは、それぞれ中点を境にして第1および第2の領域に2分され、当該コイルの空間配置において、第1および第2の領域のいずれか一方の領域における中点側が一端に位置し、かつコイル端部側が他方の領域に隣接するとともに、第1および第2の領域が互いに逆巻き関係になっていることを特徴とする請求項1記載の巻線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−204815(P2012−204815A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71106(P2011−71106)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】