説明

巻芯及び巻芯を用いたシート状物巻体とそれらの管理方法

【課題】紙やフィルムなどのシート状物を巻き付ける、繊維強化プラスチックス製の巻芯及びそれにシート状物を巻き付けた巻体の出荷管理及び在庫管理を行う。
【解決手段】繊維強化プラスチック製の巻芯11の内壁面又は壁中に、非接触パッシブ型のICタグ14を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙や透明フィルムなどのシート状物を巻き付ける巻芯の出荷先や保管先、及びシート状物を巻き付けた在庫品を管理するために有効な巻芯及びその管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙や透明フィルムなどの一方向に長大なシート状物は、円筒状の巻芯に巻き付けて出荷、輸送される。この巻芯としては、紙を接着、積層させて円筒形にした紙管や、耐摩耗性及び耐水性に優れた合成樹脂製の筒などが用いられている。
【0003】
この巻芯は、巻き付けるシート状物が巻き付け及び巻き取りの際にずれないように、軸方向に対する平行性や、表面の平滑性が高い精度で求められるとともに、高速で回転しても破損変形しない高い強度や耐久性も求められる。そのため、特許文献1に記載のように補強具を設けた物や、材料に繊維強化プラスチックス(以下、「FRP」と略記する。)を使用して強度や耐久性を高めた物など、コストがかかる物が用いられており、使い捨てにすると経済的負担が無視できないものとなる。このため、特にFRPを用いた巻芯をシート状物の出荷の際に用いる取り扱い者は、シート状物を巻芯に巻き付けた巻体を顧客に出荷した後、使用済みの巻芯を顧客から回収し、再利用するのが一般的である。
【0004】
このような再利用を行う場合、どの巻体が出荷されていてどの巻体が手元に残っているかを把握したり、あるいは、どの巻体がどの顧客に出荷されているのかを把握しておく必要がある。
【0005】
一方、巻芯はシート状物に必ず付属するものなので、巻芯に識別子を設けて管理することで、巻芯だけでなく、巻芯にシート状物を巻き付けた製品である巻体の出荷管理、在庫管理等もし易くなる。
【0006】
このような在庫管理などに用いる識別子としては、近年、ID等の情報を記録可能なタグで、無線通信によりその情報を読み取り、書き込み可能な、いわゆるRFID(Radio Frequency IDentification)が用いられている。これは、バーコードと違って、ダンボールなどの不透明な包装体で遮蔽されていても、読み取り装置で読み取ることができ、製品に付属させておけば包装外に印刷などしなくても、近距離の無線通信でタグに記録された情報を読み取り、又は状況に応じて情報を書き込むことができる。このような読み取り装置が、例えば特許文献2に挙げられている。
【0007】
特に、RFIDの中でも非接触パッシブ型のICを用いた小型のICタグであれば、かさばらず、装着が容易であり、かつ外部電源が不要であるため、様々な商品に装着することが可能である。このようなICタグを商品に装着させ、そのICタグとの通信により商品管理を行う大規模な管理システムが提案されている(例えば特許文献3)。
【0008】
【特許文献1】特開2004−175489号公報
【特許文献2】特開2001−155120号公報
【特許文献3】特開2005−301556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、シート状物を巻き付けるFRP製巻芯を、容易に出荷管理及び在庫管理を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、FRP製巻芯の内壁面又は壁中に、非接触パッシブ型のICタグを設けることで、上記の課題を解決したのである。ICタグは固有のIDや、追加で情報を書き込むことができ、個々の巻芯を一意に識別することができる。また、パッシブ型のICタグは電源が不要であるため、長期間に亘って再利用を続ける巻芯に装着しても、効果を失わずに済む。さらに、非接触型のICタグとすることで、巻芯内に挿入した読み取り装置により容易に読み取りができ、側壁中に埋め込むことも可能となる。
【0011】
また、FRP製巻芯には様々な口径のものがあるが、例えば3インチ(7.6cm)などの口径が10cm未満の巻芯だと、成人男性が読み取り装置を持って管内に読み取り装置を挿入しようとしても小さすぎて入らず、読み取り部分が細長くなった読み取り装置を管外から延ばして読み取る必要がある。口径10cm以上の巻芯では、成人男性が読み取り装置を持ってICタグを設置した箇所に近づけることができ、特殊な形状の読み取り装置を必要とせずに読み取り可能である。
【0012】
上記のICタグの設置方法は、内壁面にくぼみを設けて取り付ける方法と、壁を構成するプラスチック中に埋め込む方法とのどちらでもよい。内壁面にそのまま取り付けると、ICタグが邪魔をしてしまうために、巻芯内に貫通する回転軸が通らなくなり、巻芯を両端部から挟み込んで固定する場合も、端部のごく近傍までしか固定具を挿入できなくなってしまう。従って、内周面にくぼみを設けてそこにICタグを軸の邪魔にならないように取り付けるか、あるいは、巻芯を製造する段階で、予め樹脂中に埋め込んでおくと好ましい。内周面にくぼみを設ける場合は、巻芯の端部からドリルなどを挿入して、設置箇所の内壁を削る方法が挙げられる。また、予め樹脂中に埋め込む場合には、FRP製巻芯が製造時に取り込む不織布に予め取り付けておき、この不織布を取り込みつつ成形する方法が挙げられる。
【0013】
ただし、ICタグを設置した箇所の周方向位置が、容易に判別できるように、取り付けた部位と周方向位置が同じである軸方向端部に識別印を設けてあると好ましい。ICタグの読み取りに用いる読み取り装置の電波は指向性があり、方向がずれていると読み取り装置を挿入してもICタグを読み取ることができないが、その識別印に読み取り方向を合わせることで、無駄なく読み取りが可能となる。
【0014】
上記のICタグは使用する周波数帯域により複数の規格があり、それぞれの読み取り可能範囲が異なる。安価に流通しているのは読み取り可能範囲が30cm以下である短距離用ICタグであり、この短距離用ICタグを本発明に用いる場合は、巻芯だけではなく、巻芯の端部に被せるキャップを併用し、そのキャップの端部外側となる側に同じ短距離用ICタグを取り付けることが好ましい。巻芯の軸方向奥の方に取り付けられた短距離用ICタグは、シート状物を巻芯に巻き付けてダンボール等の包装体で包装してしまうと、その包装体の外部から読み取ることができなくなってしまう。
【0015】
そこで包装体に近接する巻芯の端部に、短距離用ICタグを外側に取り付けたキャップを嵌めると、そのキャップの短距離用ICタグのID(以下、「キャップID」と略記する。)は包装体の外から読み取ることができる。合わせて、外部記憶装置に巻芯の短距離用ICタグのID(以下、「コアID」と略記する。)とキャップIDとを関連づけて記憶しておけば、キャップIDを読み取り、その関連づけを参照することで、キャップが被せられた巻芯を判別することができる。このような、キャップを合わせた巻芯を用いることにより、製品に使用した際のICタグの読み取りと管理が容易になる。なお、このキャップは、巻芯に巻き付けたシート状物を接地させないように中空に維持するための枠板に、巻芯を固定するためにも用いられるものである。
【0016】
上記の巻芯とキャップとに短距離用ICタグを併用する場合の、シート状物を巻芯に巻き付けたシート状物巻体の管理方法は以下のようになる。
【0017】
まず、予め一つのシート状物巻体に用いる上記シート状物を巻き付けた巻芯のコアIDを読み取り、その巻芯に嵌めるキャップのキャップIDを嵌める前に読み取り、その二つのIDを関連づけて、それらIDについての情報を登録管理する管理データベースに送信して、関連づけを登録する。読み取りが終わった上記キャップは上記巻芯の端部に嵌めて上記シート状物巻体とする。
【0018】
上記シート状物巻体の出荷時には、外側から読み取りしやすいキャップIDを読み取り装置で読み取り、出荷先の情報とともに管理データベースに送信する。送信されたキャップIDについて、上記管理データベースにおける、当該キャップIDに関連づけられたコアIDについての、所在情報をその出荷先に対応する情報に書き換える。合わせてキャップIDについての所在情報も同様に書き換える。
【0019】
上記シート状物巻体を使用し終わった後の、上記巻芯と上記キャップとの返却時には、それぞれのコアIDとキャップIDとを、読み取り装置で読み取るとともに、その後の保管場所の情報と共に上記管理データベースに送信して、上記管理データベースにおけるそれぞれのIDの所在情報を、その保管場所に対応した情報に書き換える。
【0020】
以上の手順を実行することで、所在情報の登録が容易に可能であり、かつ、その所在情報を参照することで、上記巻芯及び上記キャップがどこに存在するかを検索することができる。
【0021】
上記の巻芯複合体の管理に用いる管理システムは、上記コアIDと上記キャップIDとを記録するID記録手段と、上記コアIDと上記キャップIDとの関連づけを記録する関連づけ情報記録手段と、その関連づけを参照して、上記キャップIDから、そのキャップIDに関連づけられた上記コアIDを呼び出す関連づけ情報呼出手段と、上記コアID及び上記キャップIDの所在情報を変更する所在情報変更手段とを有する必要がある。上記の管理方法において、最初に読み取り装置で読み取られて送信されてきたそれぞれのIDをID記録手段により管理データベースに記録し、関連づけ情報記録手段により、関連づけの管理データベースへの登録を行い、関連づけ情報呼出手段により、読み取り装置から送信された上記キャップIDからそのキャップIDに関連づけられたコアIDを参照し、所在情報変更手段により、最初の登録時、移動時、出荷時、返却時のそれぞれにおける所在情報の変更を記録する。
【0022】
一方、上記ICタグとして、1メートル以上の読み取り可能範囲を有する非接触パッシブ型の長距離用ICタグを用いると、管内に読み取り装置を挿入することなく、外部から容易にその長距離用ICタグのコアIDを読み取ることができる。この場合、ダンボール等で包装した後でも、キャップを併用することなく直接にそのコアIDを読み取ることができるため、読み取ったコアIDを直接に管理データベースに送信して、登録、保管、出荷、返却のそれぞれの場合に、管理データベースの所在情報を書き換えて、在庫管理を行うことができる。
【0023】
上記の長距離用ICタグを用いる場合、上記巻芯の管理のために、上記巻芯の全ての保管場所に、保管した全ての巻芯を読み取り範囲に含む読み取り装置を設けておく。上記巻芯をそれぞれの保管場所内に設置しておき、前記読み取り装置を定期的、又は作業者の発意により作動させて、その読み取り範囲内に存在する巻芯のコアIDを一括して読み取り、コアIDについての情報を記録する管理データベースに送信する。送信された管理データベースでは、送信した読み取り装置を判別して、それぞれのコアIDの所在情報を、その読み取り装置に対応した情報に記録する。この記録を参照することで、個々の上記巻芯の所在を知ることが出来る。
【0024】
ここで、読み取る巻芯は既に上記シート状物を巻き付けられたものでもよく、巻き付けた上記シート状物ごとの個別の製品ごとの読み取り装置が設けられた保管場所に置くことで、それぞれのコアIDがどの製品が巻き付けられたかを自動的に登録することができる。また、出荷先ごとの読み取り装置が設けられた保管場所に置くことで、それぞれの上記シート状物を巻き付けた巻芯の出荷先を判別可能とすることができる。
【0025】
また、上記の所在情報を記録するのではなく、予め使用する巻芯のコアIDを寸法等の規格情報とともに管理データベースに登録しておくとともに、全ての保管場所に、その保管場所の全体を読み取り範囲とする読み取り装置を設けておくことで、上記巻芯の所在を捜索可能とすることもできる。捜索する際には、全ての読み取り装置と有線又は無線で接続された操作端末から、全ての読み取り装置を作動させて、保管されてある全ての上記巻芯の中から、捜索すべき規格の巻芯がどこにあるのかを捜索できる。このような捜索方法での管理は、上記巻芯の移動が頻発し、移動のたびの所在情報の書き換えが煩わしい場合に有効である。
【発明の効果】
【0026】
この発明により、ICタグを用いて、シート状物巻体に用いる、再利用することを想定したFRP製の巻芯の出荷先や管理場所を容易に管理することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態について説明する。この発明は、図1のようなシート状物12を巻き付ける繊維強化プラスチックス製の巻芯11を管理するための発明であり、その第一の実施形態として、まず使用する巻芯そのものについて説明する。なお、この発明にかかる巻芯に巻き付ける上記のシート状物とは、一方向の長さが上記巻芯の軸方向長さ未満であって、それと垂直な方向が、上記巻芯に何周も巻き付け可能である十分な長さを有する物であり、紙、不織布、織布、樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0028】
この第一の実施形態である巻芯は、その巻芯の内壁面又は壁中に、読み取り可能距離が30cm以下である非接触パッシブ型の短距離用ICタグを設けたものであり、前記短距離用ICタグを取り付けたキャップを、前記短距離用ICタグを外側に向けて前記巻芯の端部に取り付けたシート状物巻体として使用する。
【0029】
この巻芯11へのICタグの取り付け方法は二通りあり、第一の取り付け方法の場合の断面図を図2に示す。これは、内周面の端部から離した位置にくぼみ11aを設け、そのくぼみ11aに、短距離用ICタグ14を取り付けたものである。このくぼみ11aの深さは少なくとも短距離用ICタグ14の厚みより深いと好ましい。巻芯11の内径側には、巻き付け巻き取りの際に、回転軸を通すが、短距離用ICタグ14の上部が、内周面よりも内側に出っ張っていると、そこで回転軸が引っかかるために、通すことができなくなってしまい、貫通せずに巻芯の両端部だけを固定することで回転させるしかなくなってしまう。
【0030】
この短距離用ICタグ14を取り付けた部位と周方向位置が同じである巻芯11の軸方向端部には、ICタグ14の位置を示す識別印を設けてある。取り付けた部位が巻芯11の奥の方にあると、外部から取り付けた位置が判別しづらい。一方で、後述する読み取り装置15は、読み取りのために電波を発信する方向が決まっているため、方向が合わないと読み取ることができない。識別印に合わせて読み取り装置15を挿入することで、速やかに短距離用ICタグ14のコアIDを読み取ることができる。
【0031】
上記の短距離用ICタグ14は、読み取り可能距離が30cm以下である非接触パッシブ型のICタグであり、一般に、使用する周波数帯域が、13.56MHzであるICタグを用いることができる。パッシブ型とは、外部からの特定の周波数の電波を受けて、電源を必要とせずに、記録されたIDなどの情報を発信することができることを示す。この発信された情報は、発信と受信の機能を備えた無線読み取り装置15により読み取られる。この無線読み取り装置15は、単に短距離用ICタグ14と通信するだけではなく、テンキーなどの入力装置と、情報を確認するための液晶画面などの出力装置を備えている。さらに、読み取ったIDを一時的に記憶して、二つのIDを関連づけ、必要に応じて入力装置から入力した情報を合わせて、後述する在庫管理を行うための管理サーバへ、有線又は無線送信する送信機能を有している。
【0032】
上記の短距離用ICタグ14をくぼみ11aに取り付ける方法としては、両面粘着シートで貼り付けたり、接着剤で貼り付けたりする方法など特に限定されないが、条件としては、回転時に受ける力によって剥がれない程度の強度で接着していることが必要となる。
【0033】
上記のくぼみ11aを設ける位置は、少なくとも巻芯11の端部から、軸方向に10cm以上離れていることが必要となる。これは、端部に近いと回転軸から受ける力が強すぎるために、短距離用ICタグ14が破壊されるおそれがあるためである。一方で、くぼみ11aが軸方向端部から離れすぎていると、短距離用ICタグ14を取り付けることが難しくなるだけでなく、上記の読み取り装置を近づけてID等の情報を読み取ることが難しくなる。このため、くぼみ11aは軸方向端部から長くても50cm程度であることが好ましい。これは、人が読み取り装置15を手にして管内に差し込んで届く距離である。
【0034】
なお、上記の短距離用ICタグ14は、円筒状の内壁に取り付けるため、取り付け時の周方向幅は、壁面の曲線に沿うことができる程度であることが必要となる。大きすぎると、回転軸を通す際に邪魔となってしまい、巻芯11を両端から回転する軸と固定するしかなくなってしまう。
【0035】
次に、上記巻芯への上記短距離用ICタグ14の第二の取り付け方法の場合の断面図を図3に示す。これは、巻芯11’の壁面樹脂中に上記短距離用ICタグ14が埋め込まれたものである。この埋め込みは、FRPで巻芯11’を製造する際に、予め内部に埋め込んでおく。具体的には、FRP製の樹脂によって巻芯11’を成形するにあたり、内面層の強化繊維となるガラスマットと保護層を巻き付ける際に、短距離用ICタグを一緒に巻き込んだ上で、外層となる樹脂層を成形させる。
【0036】
この第二の取り付け方法における埋め込み位置の好ましい条件は、上記の第一の取り付け方法におけるくぼみ11aの位置と同じである。
【0037】
ただし、この取り付け方法では、第一の取り付け方法以上に、外部から見てどこに短距離用ICタグ14が埋まっているのかを判別することが難しい。このため、巻芯11’には、短距離用ICタグ14を設けた箇所、及びその軸方向端部に、短距離用ICタグ14の設置箇所であることを示す識別印を設けて、読み取りを容易にしておく。
【0038】
上記の第一、第二のいずれの取り付け方法による巻芯11、11’(以下、まとめて「巻芯11」と略記する。)も、シート状物12を製造された元々の幅から、巻芯11の横幅に合わせて切断して巻き付ける。
【0039】
この巻き付けたシート状物12の表面を接地させてしまうと、シート状物12に自身の重みがかかり、シート状物12を傷めてしまう場合がある。そのため、図4(a)に示す枠板19によって巻芯11の両端を支えて、シート状物12を浮かす。この枠板19はベニヤ板などで出来ており、その中央には、孔19aが空けられている。孔19aの直径は、巻芯11の外径と同じである。孔19aの下部から枠板19の下端までの長さは、シート状物12の巻き付けられた厚みよりも長く、枠板19を巻芯11の両端に取り付けると、両端の枠板19の下端が接地し、シート状物12は接地しなくなり、シート状物12が傷むことを防ぐ。
【0040】
この枠板19を巻芯11の両端に固定するために、別途、巻芯11の口径に対応する直径である挿入部分16aと、枠板19を固定するために径が大きくなった張り出し部分16bを有するキャップ16を用意する。枠板19をキャップ16により取り付けた際の断面図を図4(b)に示す。
【0041】
上記のキャップ16の張り出し部分側には、巻芯11に取り付けたものと同種の短距離用ICタグ17を取り付ける。ただし、この短距離用ICタグ17は、両端部のうち、一方の端部のキャップ16にのみ取り付ければよい。すなわち、この短距離用ICタグ17も、記録されたID等の情報を、読み取り装置15によって読み取り、書き換え可能である。このキャップ16を、後述する関連づけを行った後に、シート状物12を巻き付けた巻芯11の端部に嵌め込んで、シート状物巻体18とする。キャップ16を取り付ける際には、図4に示すように、キャップ16の短距離用ICタグ17を設けた側が外側に向くようにする。この短距離用ICタグ17を読み取り易くするためである。なお、図4は第一の取り付け方法の巻芯11を用いたものを示すが、第二の取り付け方法の巻芯11’でも同様に行う。
【0042】
上記のキャップ16は、巻芯11と違い、出荷先でシート状物巻体18からシート状物12を巻き取る際には、回転軸を巻芯11に設ける前に取り外すものである。このため、キャップ16は巻芯11と同時に回収できれば望ましいが、出荷先でキャップ16を廃棄される可能性があるものであり、特に強度を必要とするものではないので、安価なプラスチックで製造されたものでよい。なお、この短距離用ICタグ17を取り付けたキャップ16には、端部外側を向く面に取り外しのための引っ掛けを設け、取り外しを容易にする。
【0043】
なお、枠板19を用いる以外の、上記のシート状物12を保護する方法として、図5に示すような受枠20に巻芯11を引っ掛ける方法がある。この受枠20は、二枚の側板20aとそれを繋ぐ底板20bとからなり、側板20aの間隔は巻芯11と同一か、それよりやや短い。側板20aには中央上方から中央へ向かって溝20cが形成されており、この溝20cに、巻芯11の両端が引っかかることで、シート状物12を巻き付けた部分が中心になるように支えられる。これにより、シート状物12が自身の重量で押さえつけられることがなくなる。この受枠20はベニヤ板などの木材や鉄などの金属で構成され、図4に示す枠板19によって両端で支えるだけでは支えきれない、1t程度のシート状物巻体でも支えることができる。このような受枠20を用いてシート状物巻体18を支える場合も、同様にキャップ16を巻芯11の両端に取り付け、うち一方のキャップ16には、同様に短距離用ICタグ17を、外側に向くように取り付ける。
【0044】
この実施形態にかかる巻芯11とキャップ16、及びこれらからなるシート状物巻体18の管理方法は、以下のような手順による。
その準備として、巻芯11のコアIDと、キャップ16のコアIDを記録し、かつ、それぞれのIDごとの使用状況を示す情報、出荷先や保管場所等の所在情報、巻芯に巻き付ける製品情報、コアIDとキャップIDとの関連づけ情報などを記録するデータベース機能を有する管理データベースとなる管理サーバ31を構築する。この管理サーバ31は有線又は無線ネットワークを経由して、現場で使用される読み取り装置15との間で通信可能であり、通信された内容、及び自己で呼び出した内容に応じて前記の情報を書き換えることができる管理システムからなる。
【0045】
上記管理方法の手順を、図6乃至図8、及び図10,図11を用いて説明する。それぞれの図中左側は巻芯11と読み取り装置15の手順であり、図中右側は管理サーバ31での処理を示す。左右を繋ぐ矢印は、読み取り装置15から管理サーバ31への有線又は無線による信号の送信である。
【0046】
まず、本発明に使用する巻芯11と、キャップ16とに、それぞれ短距離用ICタグ14,17を装着し、そのコアID及びキャップIDを読み取り装置15にて読み取る(101)。作業者は読み取り装置15に、それぞれのIDが巻芯11のものであるか、キャップ16のものであるかの情報を入力し(102)、必要に応じて後述する情報を入力して(103、104)、それぞれのIDとともに、管理サーバ31に送信する(105)。管理サーバ31は、送信されたコアIDとキャップIDを、それぞれ識別可能な状態で記録する(201)。保有する全ての巻芯11及びキャップ16についてこの作業を行い、新たに使用する巻芯11及びキャップ16を導入するたびにこの作業を行うことで、巻芯11の保有及び管理本数を管理するとともに、その管理サーバ31で管理する巻芯11及びキャップ16を識別できる。このように予め使用する巻芯11及びキャップ16のIDを記録しておくことで在庫管理を行うとともに、同種の巻芯11及びキャップ16を使用する当業者の製品が返却時に紛れ込んだ場合でも、すぐに識別することができる。
【0047】
また、このとき作業者が読み取り装置15の入力装置から、IDを読み取った巻芯11の口径や軸方向幅、又はキャップ16の直径などの、巻芯11及びキャップ16自体の寸法情報を入力して(103)、コアID又はキャップIDとともに管理サーバ31に送信し(105)、管理サーバ31でコアID又はキャップIDとともにそれらの寸法情報を記録する(203)ことで、保有する巻芯11の内訳を管理することができる。このような寸法情報は、数値を直接打ち込むのではなく、大きさの規格ごとの選択肢を予め設定しておき、該当する選択肢を選択することで寸法情報を入力するようにすると、入力ミスを軽減できる。
【0048】
さらに、このとき作業者が読み取り装置15の入力装置から、IDを読み取った巻芯11又はキャップ16の保管場所に対応する所在情報を入力して(104)、コアID及びキャップIDとともに管理サーバ31に送信し(105)、管理サーバ31がコアID又はキャップIDとともにその保管場所に対応する所在情報を記録する(204)ことで、それぞれの巻芯11又はキャップ16がどこに保管されているのかを管理できる。この保管場所についての所在情報とは、予め複数ある保管場所を選択肢として登録しておき、該当する選択肢を選択することで、保管場所に関する情報を入力するようにすると、入力ミスを軽減できる。
【0049】
上記の工程でコアIDを登録した巻芯11に、シート状物12をスリッター加工とともに巻き付ける(111)。このとき、どの巻芯11を使用したのかを、コアIDを読み取り装置15で読み取って(112)、そのコアIDの巻芯11が使用中である旨を入力して管理サーバ31に送信する(115)。またこれに合わせて、複数のシート状物12を扱っている場合は、シート状物12として何を巻き付けたのかを判別できる製品情報を読み取り装置15の入力装置から選択して入力し(113)、コアIDとともに管理サーバ31に送信する(115)。管理サーバ31では、どのコアIDが使用状態になったかと(212)、そのコアIDにどの製品が巻き付けられたかとを記録する(213)。
【0050】
次に、そのシート状物12を巻き付けた巻芯11に嵌めるキャップ16を用意し、そのキャップ16のキャップIDを読み取り装置15で読み取る(116)。読み取り装置15では、先に読み取ったコアIDと、新たに読み取ったキャップIDとを、これらが一体のシート状物巻体を構成したと関連づけて、管理サーバ31に送信する(117)。管理サーバ31では、そのキャップIDから、関連づけられたコアIDを参照できるように関連づけを記録する(216)。また、これにより当該キャップIDのキャップ16が、使用中である旨の情報が記録されることになる(218)。関連づけたキャップ16は巻芯11の端部に嵌めて(118)、シート状物巻体18とする。
【0051】
上記の関連づけが終わったシート状物巻体18は、ダンボール箱などの包装体30で包装する(121)。この包装は、キャップ16の短距離用ICタグ17と、包装体30の一番近い壁面との距離が、読み取り装置15の読み取り可能範囲であるように包装する。包装が終わったシート状物巻体18は、所定の保管場所に移送して保管する(122)。作業者は、図9のように、包装体の外側から読み取り装置15を近づけてそのシート状物巻体18のキャップIDを読み取り(123)、その保管場所に対応する所在情報を読み取り装置15に入力して(124)、そのキャップIDのキャップ16を用いたシート状物巻体18が、コアIDが関連づけられた巻芯11とともにその保管場所に保管された旨の所在情報を管理サーバ31に送信する(125)。管理サーバ31は、送信されたキャップIDに関連づけられたコアIDを参照し(223)、そのキャップID及びコアIDの保管場所に対応する所在情報を、同じく送信された保管場所に対応する所在情報に書き換える(224)。
【0052】
上記の包装が終わったシート状物巻体18を出荷する際には、包装体30の外部から、図9のように、キャップ16のある側の面に読み取り装置15を近づけて、そのキャップIDを読み取る(131)。作業者は読み取り装置15に、出荷先に対応する所在情報を入力し(132)、キャップIDとともに管理サーバ31に送信する(133)。管理サーバ31は、送信されたキャップIDに関連づけられたコアIDを参照し(231)、そのコアID及びキャップIDの保管場所に対応する所在情報に書き換える(232)。なお、この出荷先に対応する所在情報とは、出荷先の名前を予め登録し、選択肢として選択できるようにしておくと好ましい。この選択にあたっては、例えば出荷伝票に出荷先をバーコード化した情報として記載しておき、バーコード読み取り機能を有する読み取り装置15を使用して、そのバーコードを読み取ることで入力するようにすると、入力の手間が省けて好ましい。
【0053】
上記の出荷先から返却された巻芯11及びキャップ16に対しては、それぞれのコアID及びキャップIDを読み取り装置15で直接読み取る(141)。このときには包装体30に包まれていないため、巻芯11の短距離用ICタグ14も直接に読み取ることができる。作業者は、読み取り装置15に、返却後の保管場所についての所在情報を入力して(142)、読み取ったコアID又はキャップIDとともに管理サーバ31に送信する(143)。管理サーバ31は、送信されたコアID及びキャップIDについての所在情報を、送信された保管場所に対応する所在情報に書き換える(242)。また、このとき、キャップIDについての関連づけられたコアIDの情報はクリアする(243)。キャップ16は返還されないことがあるため、巻芯11とキャップ16は個別に保管されるのが一般的であり、再び同じ巻芯11に設ける可能性は低いので、この段階でクリアしておくことが好ましいためである。さらに、巻芯11は製品であるシート状物12とは分かれたので、コアID及びキャップIDの使用情報をクリアして不使用であるとの情報に書き換える(244)。
【0054】
返却後に保管された巻芯11及びキャップ16は、上記の工程「111」から同様の処理を行い、次のシート状物巻体18としての管理を行う。
【0055】
なお、上記の工程中で、上記シート状物巻体18をダンボール等で包装せずに出荷する場合であっても、同様にキャップ16を取り付けておけば、そのキャップ16のキャップIDを読み取ることに変わりはなく、同様の管理方法を実施することができる。ただし実際には、包装しない場合にはキャップ16を装着させることなく、巻芯11の管内に読み取り装置15を直接入れて、巻芯11のコアIDを読み取ることができるので、この実施形態にかかるキャップ16と連携した管理方法によらなくても出荷管理、在庫管理が可能である。
【0056】
このような管理方法により、安価な短距離用ICタグ14,17を用いて、巻芯11の保管、出荷、返却時における所在の管理を容易に行うことができる。また、記録される管理サーバ31の記録から、出荷先からの巻芯11及びキャップ16の返却率を求めるこができ、返却本数に応じて、新たに調達が必要な巻芯11及びキャップ16の個数を求めることができる。さらに、管理サーバ31の記録から、製品であるシート状物12の出荷管理、出荷実績等の解析を合わせて行うこともできる。
【0057】
この管理方法を実現する管理サーバ31を備えた管理システムの構成は図12に示すような構成の手段を有するシステムとなる。以下、それぞれの手段は、コンピュータに指定の処理を行わせる機能を有するソフトウェアである。制御手段300は、読み取り装置15から有線又は無線送信されてきた情報に応じて、各々の手段に対して処理を行わせる。
【0058】
ID記録手段301は、送信されてきた上記のコアIDとキャップIDとを記録する上記の工程「201」を行う。記録先は、コンピュータに装着する磁気ディスクなどの一般的な記憶装置を用いてよく、記録されたそれぞれのIDについての情報は、そのIDに関連する情報を有するデータベースとなっている。そのデータベースの記録内容例としては、図13のようなテーブルが挙げられる。このようなテーブルからなる管理データベースに対して、上記の工程による変更が加えられる。
【0059】
関連づけ情報記録手段302は、キャップ16のキャップIDについての情報に、関連づけとして、そのキャップ16が取り付けられた巻芯11のコアIDを管理データベースに記録する上記の工程「216」を行う。また、関連づけ情報呼出手段303は、指定されたキャップIDについて、その関連づけ情報記録手段302により関連づけられたコアIDを参照する、上記の工程「223」「231」を行う。参照されたコアIDは制御手段300に送られ、次の所在情報変更手段304を実行するコアIDを判別する。
【0060】
所在情報変更手段304は、それぞれの巻芯11及びキャップ16がどこに保管されているかを示す保管場所に対応した所在情報、又はどこに出荷されているかを示す出荷先に対応した所在情報を記録する、上記の工程「204」「224」「232」「242」を行う。これらは、そのとき読み取り装置15から送信されたコアID及びキャップIDの情報に直接変更を加える場合と、上記の関連づけ情報呼出手段303から関連づけられたコアIDを呼び出して、そのIDの情報に変更を加える場合とがある。
【0061】
この他に、上記管理システムは、上記の工程「102」のように種別を入力し、管理データベースがそれぞれのIDごとにコアIDかキャップIDか記録する種別情報記録手段311を有していると好ましい。上記短距離用ICタグ14及び17は同種のICタグを使用すると大量発注できるために経済的に好ましく、その場合はIDを管理するデータベースを単一のものとし、種別情報を含めることでその短距離用ICタグ14,17を管理可能となる。
【0062】
また、上記の管理システムは、それぞれの短距離用ICタグ14、17が取り付けられた巻芯11及びキャップ16の寸法についての情報を記録する(203)寸法情報記録手段312を有していると好ましい。また、この寸法情報記録手段312は、個々の巻芯11及びキャップ16の大きさを数値で記録するのではなく、予め使用する巻芯11及びキャップ16の大きさを規格づけしておき、該当する規格を判別できる情報を記録するものであると管理しやすく好ましい。
【0063】
さらに、上記の管理システムは、それぞれのコアID及びキャップIDの巻芯11とキャップ16とが、使用されずに保管されているか、又はどの製品に使用されているかを示す使用情報を記録する使用情報記録手段313を有していると好ましい。製品が巻き付けられた段階で情報を書き込み(213)、返却時に不使用状態に変更する(244)。
【0064】
これらのうち、ID記録手段301、種別情報記録手段311、寸法情報記録手段312は、新たな巻芯11、キャップ16を使用する際に行う初期作業の際にまとめて実行されることになる。
【0065】
次に、この発明の第二の実施形態について記述する。この実施形態は、読み取り可能範囲が1メートル以上である長距離用ICタグ22を取り付けた巻芯21である。このような巻芯21は、図2又は図3に記載の巻芯11の短距離用ICタグ14の代わりとして、内径面にくぼみ11aを設けてそこに長距離用ICタグ22を貼り付けたり、壁面中に長距離用ICタグ22を埋め込んだりしたものである。長距離用ICタグ22としては、使用周波数がUHF帯又はそれ以上の高周波数であるICタグを、このような長距離用ICタグとして使用することが出来る。具体的には、読み取り可能範囲が3〜5メートルのものが既に実用化されており、さらに長い距離に対応したものが検討されている。この実施形態で用いる長距離用ICタグ22の読み取り範囲は、長いほど好ましく、保管場所全域を一台の読み取り装置でカバーできるようにするため、10メートル程度の読み取り可能範囲を有しているとより好ましい。このような長距離用ICタグ22を用いた巻芯21は、上記短距離用ICタグ14を用いた巻芯11と比較して、以下の実用上の利点を有する。
【0066】
上記の巻芯21は、別途ICタグを設けたキャップ16を取り付けなくても、包装体30の外部から直接に長距離用ICタグ22を読み取ることができるので、キャップ16が不要であり、管理システムの運用上、キャップIDの登録(図6中、102の場合の201の工程。)や関連づけ(図7中、116〜118、216、218の工程。)、及びその関連づけの呼び出し(図8中、123,223の工程。)等が不要になる。
【0067】
また、上記の長距離用ICタグ22を用いた巻芯21の管理方法としては、以下のような方法がある。まず、巻芯21の保管場所の全てに、その保管場所の全域を読み取り可能範囲に含み、その読み取り可能範囲にある長距離用ICタグ22から情報を読み取ることができる遠距離型読み取り装置23を設置しておく。保管場所の上方に、天井などに吊すようにして遠距離型読み取り装置23を設けた例を図14に示す。上方から下方へ向けて読み取りのための電波を発信するようにすると、保管場所を広く使うことができるので好ましい。
【0068】
一方、使用する巻芯21のコアIDとそれぞれのIDごとの所在情報とを登録、管理する管理データベースとなる管理サーバ24を用意し、使用する全ての巻芯21のコアIDを登録する。巻芯21の規格が複数ある場合は、登録にあたって、それぞれのコアIDの巻芯21の寸法情報を同時に登録しておくと、個々の巻芯21をコアIDから規格ごとに区別可能となる。この管理サーバ24の情報は、上記の第一の実施形態と違って、コアIDとキャップIDとの種別や関連づけ情報が不要である。
【0069】
上記の所在情報の登録のため、遠距離型読み取り装置23の読み取りを実行し、保管場所の読み取り範囲内に置かれた巻芯21の長距離用ICタグ22のIDであるコアIDをまとめて読み取る。遠距離型読み取り装置はそれらのコアIDを無線又は有線ネットワークを通じて管理サーバ24に送信する。管理サーバ24は、コアIDを送信してきた遠距離型読み取り装置23が、複数設けた遠距離型読み取り装置23のうちのどれであるかを、遠距離型読み取り装置23ごとに付与された位置IDで識別し、受信したコアIDの所在情報を、その位置IDに書き換える。管理サーバ24で、コアIDの所在情報として記録された位置IDは、すなわち、どの保管場所に設けられたどの遠距離型読み取り装置23の読み取り範囲内に、当該コアIDの巻芯21が存在するかを突き止めることが可能となる、保管場所に対応した情報となる。なお、上記の位置IDとしては、遠距離型読み取り装置23のネットワーク機能で用いるMACアドレスやIPアドレスなどのネットワークアドレスが使用可能である他、より判別しやすい位置IDを任意に割り振ってもよい。
【0070】
このような所在情報の書き換えを、巻芯21の保管場所を変更するごとに行うことで、どの保管場所にどの巻芯21が存在するかを管理サーバ24で把握することができる。ここで巻芯21とは、巻芯21単独の状態だけでなく、シート状物を巻き付けられて、製品出荷前の状態となったシート状物巻体27も含む。巻芯21の保管場所を、待機・保管中、シート状物巻き付け後、個々の出荷先への出荷準備中、返却後のそれぞれの状況ごとに分けておくことで、単に管理区域内での移動に限らず、どの出荷先にあっていつ返却されたかを把握することもできる。すなわち、出荷前に、出荷先ごとに異なる保管場所に置いておき、異なる遠距離型読み取り装置23でコアIDを読み取るようにしておけば、ある遠距離型読み取り装置23から送信されたコアIDの巻芯21は、その遠距離型読み取り装置23に対応した出荷先がその後に存在する場所となるので、所在情報をその保管場所とするのではなく、当該出荷先としておく。返却後の所在情報は、そのまま返却後の保管場所に対応した情報とする。
【0071】
また、出荷準備中に使用する遠距離型読み取り装置23を、出荷先ごとに個別のものを使うのではなく、出荷先情報を入力可能な単一の遠距離型読み取り装置23を使用することもできる。すなわち、読み取りの実行前に、遠距離型読み取り装置23に、出荷先情報をリモコンなどにより入力しておき、その直後の読み取り操作で読み取ったコアIDを管理サーバ24に送信する際には、その予め入力された出荷先情報とともに送信して、管理サーバ24におけるコアIDのその出荷先情報を登録する。
【0072】
また、巻芯21の規格を最初に登録するに当たっては、新たに導入する巻芯21を、規格ごとに特定の読み取り装置23でコアIDを読み取らせることにより、読み取らせたコアIDを新たに管理サーバ24の管理データベースに記録させる、若しくはそのコアIDの規格情報を、その読み取り装置23の位置IDに対応した規格として自動的に登録させてもよい。また、規格ごとに別個遠距離型読み取り装置23を設置するのではなく、1つの遠距離型読み取り装置23を使用し、新たに登録する巻芯21の規格に応じて、どの規格であるかの情報を作業者が選択し、遠距離型読み取り装置23が、その選択された規格情報とともに管理サーバ24にコアIDを送信して、それらをまとめて登録するようにすると、登録のために導入すべき遠距離型読み取り装置23を一つにまとめることができる。
【0073】
上記の遠距離型読み取り装置23の実行は、一定時間間隔で自動的に行うようにしてもよいし、遠距離型読み取り装置23に赤外線受光装置を取り付けて、下方から作業者が赤外線リモコンで起動指示を与えて起動させてもよい。赤外線リモコンによる任意の起動は、例えば出荷先から大量に巻芯が返却されてきた場合に、速やかに読み取って登録すべき場合に行う。
【0074】
さらにこの実施形態にかかる巻芯21を用いる場合、管理データベースとなる管理サーバにコアIDごとの所在情報を登録、更新することなく、巻芯21の所在を捜索することが可能である。この捜索方法は、まず、上記の管理方法と同様に、個々の巻芯21のコアIDを規格情報とともに管理サーバに登録しておく。また、巻芯21を保管する可能性がある全ての場所に、そこに置かれた、又は置かれることになる巻芯21のコアIDを読み取り可能であるように遠距離型読み取り装置23を設けて、現在保有する全ての巻芯21がいずれかの遠距離型読み取り装置23の読み取り可能範囲に含まれるようにしておく。さらに、全ての遠距離型読み取り装置23は、無線又は有線ネットワークを通じて管理サーバ24と接続されており、この管理サーバ24の操作端末から、それぞれの遠距離型読み取り装置23を操作可能である。
【0075】
上記の捜索の実行は、上記の操作端末から全ての遠距離型読み取り装置23を作動させることにより行う。作動にあたって、操作端末では捜索対象となる巻芯21の規格などの情報を指定し、その条件に合致する巻芯21のコアIDが、どの遠距離型読み取り装置23で読み取られるかを調べる。これにより、そのコアIDを読み取った遠距離型読み取り装置23が設置された保管箇所に捜索すべき巻芯21があると判別することができる。
【0076】
この捜索方法は、管理している読み取り装置23の読み取り範囲の中に巻芯21が無ければ所在不明となってしまうので、巻芯21を外部に出荷せず、事業者が自らの管理区域内でのみ巻芯21を運用する場合に適したものとなる。この捜索方法は、管理サーバ24に個々のコアIDの所在情報を記録しておく必要が無いため、巻芯21の所在の変更が頻繁にあって、移動の度に所在情報を書き換えていたのでは処理負担が大きい場合に有効である。
【0077】
また、取り扱う巻芯21の量が大量である場合には、保管場所に置いた全ての巻芯21についてコアIDを一括して読み取るのではなく、移動させる巻芯21を順次遠距離型読み取り装置23に読み取らせていく連続型の管理方法を採ることもできる。この連続型の管理方法の例を図15に示す。巻芯21を輸送するベルトコンベア26のような連続式輸送装置を使用し、その経路上に設けたゲート25に遠距離型読み取り装置23を設けることで行う。すなわち、そのゲート内を通るシート状物巻体27の遠距離用ICタグを順次読み取って、コアIDを管理サーバ24に送信するようにする。このようにすると、一度に読み取る長距離用ICタグ22は一つであるため、一括して読み取る場合に比べて読み取りミスが起こりにくい。
【0078】
例えば、出荷先ごとに異なるゲートを通るようにしておくと、どのゲートに設けられた遠距離型読み取り装置23によって読み取られたかによって、その巻芯21を用いたシート状物巻体27の出荷先を判別することができる。この場合、管理サーバ24はそれぞれの遠距離型読み取り装置23の位置IDと、出荷先の識別情報との対応関係を別途記録しておき、特定の位置IDを有する遠距離型読み取り装置23から送信されたコアIDの所在情報を、その位置IDに対応する出荷先に対応する情報に書き換える。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】シート状物を巻芯に巻き付けた状態の概念図
【図2】内壁に設けたくぼみに短距離用ICタグを取り付けた実施形態の断面図
【図3】壁中に短距離用ICタグを埋め込んだ実施形態の断面図
【図4】(a)枠板の概念図、(b)キャップを嵌め込んだシート状物巻体の断面図
【図5】受枠に嵌める場合の概念図
【図6】登録の際のフローチャート
【図7】巻き付けの際のフローチャート
【図8】包装の際のフローチャート
【図9】包装体外からの読み取りを行う際の概念図
【図10】出荷の際のフローチャート
【図11】返却の際のフローチャート
【図12】管理システムの例を示す構成図
【図13】データベースのテーブルの例
【図14】遠距離型読み取り装置を天井に取り付けた保管場所の概念図
【図15】ゲートにより読み取り装置を取り付けた場合の概念図
【符号の説明】
【0080】
11、11’ 巻芯
11a くぼみ
12 シート状物
13 巻体
14、17 短距離用ICタグ
15 読み取り装置
16 キャップ
16a 挿入部分
16b 張り出し部分
18 シート状物巻体
19 枠板
20 受枠
20a 側板
20b 底板
20c 溝
21 巻芯
22 長距離用ICタグ
23 遠距離型読み取り装置
24 管理サーバ
25 ゲート
26 ベルトコンベア
27 シート状物巻体
30 包装体
31 管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物を巻き付ける繊維強化プラスチックス製の巻芯であって、その内壁面又は壁中に非接触パッシブ型のICタグを設けた巻芯。
【請求項2】
上記巻芯の内径が少なくとも10cmであることを特徴とする請求項1に記載の巻芯。
【請求項3】
上記ICタグを上記内壁面にくぼみを設けてそのくぼみに取り付けたもの、又は壁中に埋め込んだものであり、そのICタグを取り付けた部位と周方向位置が同じである上記巻芯の軸方向端部に識別印を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の巻芯。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の上記巻芯の端部にキャップを被せ、そのキャップにも上記ICタグを外側に向けて設け、
いずれの上記ICタグも読み取り可能距離が30cm以下の短距離用ICタグとしたことを特徴とする巻芯複合体。
【請求項5】
請求項4に記載の巻芯複合体に上記シート状物を巻き付けたシート状物巻体の管理方法であって、
上記シート状物を巻き付けた上記巻芯に取り付けた上記短距離用ICタグのIDであるコアIDと、その巻芯に嵌める上記キャップに取り付けた上記短距離用ICタグのIDであるキャップIDとを読み取り装置で読み取り、それら二つのIDを互いに関連づけて、それらのIDについての情報を管理登録する管理データベースに送信して関連づけを登録し、上記巻芯に上記キャップを嵌めて上記シート状物巻体とし、
上記シート状物巻体の出荷時には、出荷される上記シート状物巻体の上記キャップIDを読み取り装置で読み取り、このキャップIDを出荷先の情報とともに上記管理データベースへ送信し、当該キャップIDと、そのキャップIDに関連づけられた上記コアIDとの上記管理データベースにおける所在情報として前記出荷先に対応した情報を記録させ、
出荷された上記シート状物巻体を使用した後で返却される上記巻芯又は上記キャップの返却時には、それらの上記コアID、又は上記キャップIDを読み取り装置で読み取り、それらの上記コアID又は上記キャップIDの上記管理データベースにおける所在情報を保管場所に対応した情報に変更させる、巻芯の管理方法。
【請求項6】
請求項4に記載の巻芯複合体の管理に用いる管理システムであって、
上記巻芯の短距離用ICタグのIDであるコアIDと、キャップの短距離用ICタグのIDであるキャップIDとを記録するID記録手段と、
前記コアIDと前記キャップIDとの関連づけを記録する関連づけ情報記録手段と、
前記関連づけを参照して、前記キャップIDから、そのキャップIDに関連づけられた前記コアIDを呼び出す関連づけ情報呼出手段と、
前記のコアID及びキャップIDの所在情報を変更する所在情報変更手段とを有する、巻芯の管理システム。
【請求項7】
上記ICタグを、読み取り可能距離が少なくとも1mである非接触パッシブ型の長距離用ICタグとしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の巻芯。
【請求項8】
請求項7に記載の巻芯の管理方法であって、
使用する上記巻芯の上記長距離用ICタグのIDであるコアIDを、管理データベースに登録し、
上記シート状物を巻き付けられたものでもよい上記巻芯の保管場所全体を読み取り可能範囲に含む、上記長距離用ICタグ用の遠距離型読み取り装置を設け、
その遠距離型読み取り装置により前記保管場所に置かれた上記巻芯に取り付けられた上記長距離用ICタグのIDであるコアIDを読み取り、前記管理データベースに送信し、そのコアIDについての前記管理データベースの所在情報をその保管場所に対応した情報として記録する、巻芯の管理方法。
【請求項9】
請求項7に記載の巻芯の捜索方法であって、
使用する上記巻芯の上記長距離用ICタグのIDであるコアIDを、その上記巻芯の規格情報とともに管理データベースに登録し、かつ、上記巻芯の全ての保管場所に、その保管場所にある上記巻芯の上記コアIDを読み取り可能である遠距離型読み取り装置を設けて、現在保有する全ての上記巻芯がいずれかの上記遠距離型読み取り装置の読み取り可能範囲に含まれるようにしておき、
それぞれの上記遠距離型読み取り装置と無線又は有線ネットワークで接続された上記管理データベースを操作する操作端末から、それぞれの読み取り装置を作動させて、保有する全ての上記巻芯のコアIDを読み取ることで、必要とする上記巻芯を捜索する、巻芯の捜索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−1348(P2009−1348A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161589(P2007−161589)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)
【Fターム(参考)】