説明

希土類金属凝集剤

【課題】複数の希土類が混合している水溶液からイオン半径の小さな希土類を高速で大量に分離・回収すること。
【解決手段】複数の希土類が混在している水溶液から特定の希土類を分離回収する凝集剤において、該凝集剤が酸性基を有する水溶性高分子、及びアミノ基を有する主鎖が長鎖の水溶性高分子からなることを特徴とする希土類を分離回収する凝集剤、及びそれを用いた希土類分離回収方法、希土類分離回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類金属、特に、磁石合金等に混在するネオジム(Nd)及びディスプロシウム(Dy)を簡便な方法で分離する技術に関し、具体的には希土類金属の分離に用いる薬剤、並びに希土類金属の分離方法及び分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録装置、或いはハイブリッド車両等に用いられている磁性合金は、主成分が鉄であるものの保磁力を高めるために少量のネオジム、ディスプロシウム等の希土類金属が添加されており、資源枯渇が叫ばれる昨今、これらを分離・回収し、再使用する動きが加速している。
【0003】
従来のNd、Dy等の希土類金属を分離するための一般的な方法としては、溶媒抽出法が挙げられる。まず複数の希土類金属を含む合金を強酸に溶解し、リン酸系の抽出剤、及び炭化水素系の有機溶剤を加える。これを攪拌後、放置すると抽出剤の種類によって水と有機溶媒にそれぞれの希土類金属がある比率で分配される(非特許文献1)。ただし、希土類金属の種類によっては分配率差があまり大きくないため、前記溶媒抽出法を繰り返し行い、それぞれの金属の純度を高めている。Nd及びDyも分配率差があまり大きくないため、純度を99%以上にするためには、数十回程度の溶媒抽出を行っていると言われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】資源処理技術、第37巻、157〜164(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶媒抽出法は炭化水素系の有機溶媒を用いるので、溶媒の回収・処理が必要となり、環境負荷が大きい。また、分配率差が小さいので数十回と繰り返す必要がある。これらの事情から、Nd及びDyとも比較的高価格の金属として流通しており、流通量も多くない。そのため今後ハイブリッド車両の普及に伴い、両者の調達が重要な課題となってくることが予想される。そのため、廃棄された製品に含まれている磁石からNd及びDyを簡便に且つ高効率で回収することが求められている。
【0006】
また、それ以外にブラウン管、PDP等で使われている希土類金属を用いた蛍光体も世界規模では膨大な量となるため、そこから希土類金属を分離回収することも求められている。しかし、希土類金属は種々の物理的、化学的性質が近似している。例えば、希土類金属の電気陰性度は0.86〜1.14と近似しており、特に磁石合金中のNdは1.07、Dyは1.10とかなり近い。希土類金属はイオン半径も0.745〜1.17Åと近似しており、特に磁石合金中のNdは0.99Å、Dyは0.91Å(どちらも3価のイオン)と近いため、通常の方法では分離が困難である。なお、本明細書における希土類金属イオンのイオン半径は、松本和子「希土類元素の化学」,朝倉書店,2008年8月25日 初版第1版に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、複数種の希土類金属を分離・回収するための薬剤、並びに前記薬剤を使用する分離・回収方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、アミノ基を有する水溶性高分子、及び酸性基を有する水溶性高分子を使用することで複数種の希土類金属を分離・回収できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子と、
酸性基を有する水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂と
を組み合わせてなる希土類金属凝集剤。
(2)複数種の希土類金属イオンの中からイオン半径が最も小さい希土類金属イオンを選択的に回収するための、(1)に記載の希土類金属凝集剤。
(3)側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子が、一般式(I)
【化1】

[式中、
R1は、C1-C3アルキレンであり、
R2及びR3は、互いに独立して、水素又はC1-C3アルキルである]
で表される構成単位、及び/又は一般式(II)
【化2】

[式中、R4は、水素又はC1-C3アルキルである]
で表される構成単位を有する、(1)又は(2)に記載の希土類金属凝集剤。
(4)アミノ基が三級アミノ基である、(1)〜(3)のいずれかに記載の希土類金属凝集剤。
(5)側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子と、
酸性基を有する水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂と、
複数種の希土類金属イオンと
を水溶液中で混合して凝集物を形成させる工程を含む、希土類金属の回収方法。
(6)複数種の希土類金属イオンの中からイオン半径が最も小さい希土類金属イオンを選択的に回収するための、(5)に記載の回収方法。
(7)アミノ基のモル数と、複数種の希土類金属イオンの中でイオン半径が最も小さい希土類金属イオンのモル数との比が0.1:1〜1.3:1である、(5)又は(6)に記載の回収方法。
(8)凝集物を酸又は塩基で処理して溶解する工程を更に含む、(5)〜(7)のいずれかに記載の回収方法。
(9)側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子が、一般式(I)
【化3】

[式中、
R1は、C1-C3アルキレンであり、
R2及びR3は、互いに独立して、水素又はC1-C3アルキルである]
で表される構成単位、及び/又は一般式(II)
【化4】

[式中、R4は、水素又はC1-C3アルキルである]
で表される構成単位を有する、(5)〜(8)のいずれかに記載の回収方法。
(10)アミノ基が三級アミノ基である、(5)〜(9)のいずれかに記載の回収方法。
(11)複数種の希土類金属イオンが3価のネオジムイオン及び3価のディスプロシウムイオンである、(5)〜(10)のいずれかに記載の回収方法。
(12)(1)〜(4)のいずれかに記載の希土類金属凝集剤と、複数種の希土類金属イオンとを混合して凝集物を形成させる混合槽;及び
前記凝集物を濾過する濾過部;
を有する、希土類金属の回収装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数種の希土類金属が含まれる水溶液から特定の希土類金属のみを高速で大量に分離・回収することができる。特に、Nd及びDyが含まれる水溶液からDyのみを高速で大量に分離・回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の金属トラップ・凝集物形成のスキームである。
【図2】本発明の金属トラップの模式図である。
【図3】本発明の金属分離のスキームである。
【図4】本発明の金属分離・回収装置の模式図である。
【図5】本発明の金属分離装置の模式図である。
【図6】本発明の金属回収装置の模式図である。
【図7】本発明の金属分離・回収装置の模式図である。
【図8】本発明の金属分離・回収装置の模式図である。
【図9】本発明の金属分離・回収装置の模式図である。
【図10】本発明の金属分離装置の模式図である。
【図11】本発明の金属回収装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.基本原理
本発明の基本原理を、イオン半径の大きいNdイオンとイオン半径の小さいDyイオンを含有する水溶液を用いて説明する。NdとDyは各種モータに用いられる磁石合金に含まれているため代表的な例として説明するが、これ以外の、例えば、蛍光体で用いられるランタン(La)、セリウム(Ce)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)等でも同様の原理に基づいて実施することができる。
【0013】
(1)酸性基を有する水溶性高分子を使用する方法
Ndイオン及びDyイオンが混合している水溶液中からDyを回収する方法について、図1を用いて説明する。なお、磁石合金を酸で溶解した場合、Nd、Dyとも3価のイオンの形になるため、本発明でもNdイオン、Dyイオンはどちらも3価のイオンを意味している。
【0014】
まずNdイオン1、Dyイオン2が混合している水溶液にアミノ基3を有する直鎖の水溶性高分子4を添加する。するとDyイオンが優先的にアミノ基を有する直鎖の水溶性高分子に包み込まれる。
【0015】
次に、酸性基5を有する水溶性高分子6の溶液を加える。するとアミノ基を有する直鎖の水溶性高分子のアミノ基と酸性基を有する水溶性高分子の酸性基からなるイオン結合7が形成される。このイオン結合の形成により、酸性基を有する水溶性高分子とアミノ基を有する水溶性高分子が架橋する。すると、この架橋物は水に溶解できなくなり、Dyイオンをトラップした凝集物8として析出する。この凝集物は、濾過槽を通すことで分離でき、結果として希土類金属を回収することが可能となる。
【0016】
回収した凝集物は水酸化ナトリウム等を加えて塩基性にすると、溶解し、塩基性を高めると、希土類の水酸化物が析出してくる。これを回収することで、Dyが高い割合で含まれる希土類水酸化物を得ることが可能になる。
【0017】
酸性基を有する水溶性高分子の酸性基は、加えた塩基と塩構造を形成する。またアミノ基を有する直鎖の水溶性高分子のアミノ基は、酸性基を有する水溶性高分子の酸性基とのアンモニウム塩構造が解消しフリーになる。こうして、凝集物を形成している高分子同士のイオン結合を解消することで凝集物が溶解する。
【0018】
凝集物は塩酸等を加えて酸性にしても溶解する。アミノ基を有する直鎖の水溶性高分子のアミノ基は、加えた酸と塩構造を形成する。また酸性基を有する水溶性高分子の酸性基は、アミノ基を有する直鎖の水溶性高分子のアミノ基とのアンモニウム塩構造が解消しフリーになる。こうして、凝集物を形成している高分子同士のイオン結合を解消することで凝集物が溶解する。
【0019】
一方、希土類はこの場合、加えた酸と塩構造を形成する。加える酸が塩酸等、水溶性の希土類の塩を形成する酸を加えた場合、凝集に用いた高分子とともに溶解した状態となるため、これらの分離が必要になる。この場合の分離には、透析膜を用いたり、ゲル濾過等を用いて、低分子量の希土類塩と高分子量の水溶性高分子に分離することが可能である。なお、ここでは酸性基としてカルボキシル基を有している水溶性高分子を図示しているが、スルホン基の場合でも同様である。
【0020】
ところで、Ndイオン、Dyイオンが混合している水溶液は凝集後、Dyイオンが減るので、相対的にNdイオンの割合が高まる。そのため、凝集物でDyを回収するとともに、残液でNdを回収することが可能になる。
【0021】
Ndに比べDyを選択的にトラップする原理は、以下のように考えている。まずNdイオンのイオン半径は約0.99Å、Dyイオンのイオン半径は約0.91Åである。つまりDyイオンの方がイオン半径が小さい。アミノ基を有する直鎖の水溶性高分子がイオンをトラップする場合、図2に示すように直鎖が輪になって数個のイオンをトラップする形になると推定される。
【0022】
ただし、アミノ基等の影響のため、直鎖の形成する輪は円ではなく、不定形と考えられる。その場合、イオン半径が小さいイオンは、輪が不定形でも隙間を埋めるように多数トラップ可能であるが、イオン半径が大きいイオンは隙間に入りにくくなるのでトラップしにくくなる。
【0023】
アミノ基を有する水溶性高分子の中でも、例えばポリエチレンイミンのように主鎖が分岐している場合は、主鎖がDyイオンをトラップする輪になることができないため、Dyイオンは配位結合、或いはイオン結合で捕捉される形になる。
【0024】
即ち、主鎖が直鎖であるアミノ基を有する水溶性高分子に比べて、ポリエチレンイミン等の主鎖が分岐しているアミノ基を有する水溶性高分子はDyイオンに対する選択的トラップ能力が低い。これがNdに比べてDyを選択的にトラップする理由と考えている。
【0025】
また、上記より、本技術はNd及びDyに限らず複数種の希土類金属イオンが混在している水溶液中から小さなイオン半径の希土類金属イオンを凝集によりトラップするものである。この技術を用いると、Nd、Dy以外に、例えば蛍光体からの希土類の分離回収へも展開を図ることができる。蛍光体で用いられるランタン(La)、セリウム(Ce)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)はイオン半径がそれぞれ1.03Å、1.01Å、0.95Å、0.92Åである。本発明の技術を用いることで、これら元素は凝集物にトラップしやすい順にTb、Eu、Ce、Laとなる。
【0026】
(2)陽イオン交換樹脂を使用する方法
本発明では酸性基を有する水溶性高分子を添加することでアミノ基を有する水溶性高分子と凝集物を形成している。しかし、酸性基を有する水溶性高分子の代わりに陽イオン交換樹脂を使用することもできる。以下、図3を用いて説明する。
【0027】
イオン半径の小さい希土類イオン9、イオン半径の大きい希土類イオン10の2種類の希土類イオンを含んだ水溶液の中にアミノ基3を有する直鎖の水溶性高分子4を加え、イオン半径の小さい希土類イオンをトラップさせる。次に、陽イオン交換樹脂11を加えると、アミノ基を有する直鎖の水溶性高分子のアミノ基と陽イオン交換樹脂の酸性基12がイオン結合13を形成し、陽イオン交換樹脂の表面にイオン半径の小さい希土類イオンをトラップした凝集物を形成する。この状態での陽イオン交換樹脂の濾過等により、イオン半径の小さい希土類イオンをイオン半径の大きい希土類イオンから分離する。
【0028】
回収した陽イオン交換樹脂表面の凝集物は水酸化ナトリウム等を加えて塩基性にすると、溶解し、塩基性を高めると、希土類の水酸化物が析出してくる。これを回収することで、イオン半径の小さい希土類イオンが高い割合で含まれる希土類水酸化物を得ることが可能になる。
【0029】
アミノ基を有する直鎖の水溶性高分子のアミノ基は、陽イオン交換樹脂の酸性基とのアンモニウム塩構造が解消しフリーになる。こうして、凝集物を形成している高分子同士のイオン結合を解消することで凝集物が溶解する。アミノ基を有する直鎖の水溶性高分子は回収し、再び希土類の分離回収に用いることが可能である。
【0030】
凝集物は塩酸等を加えて酸性にしても溶解する。アミノ基を有する直鎖の水溶性高分子のアミノ基は、加えた酸と塩構造を形成する。こうして、凝集物を形成している高分子同士のイオン結合を解消することで凝集物が溶解する。
【0031】
一方、希土類はこの場合、加えた酸と塩構造を形成する。加える酸が塩酸等、水溶性の希土類の塩を形成する酸を加えた場合、凝集に用いた高分子とともに溶解した状態となるため、これらの分離が必要になる。この場合の分離には、透析膜を用いたり、ゲル濾過等を用いて、低分子量の希土類塩と高分子量の水溶性高分子に分離することが可能である。
【0032】
2.希土類金属凝集剤
本発明は、側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子(以下、「アミノ基含有水溶性高分子」ともいう)と、酸性基を有する水溶性高分子(以下、「酸性基含有水溶性高分子」ともいう)又は陽イオン交換樹脂とを組み合わせてなる希土類金属凝集剤に関する。ここで「組み合わせてなる」とは、アミノ基含有水溶性高分子と、酸性基含有水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂とを分離した状態で含む希土類金属凝集剤、及びアミノ基含有水溶性高分子と、酸性基含有水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂とを混合した状態で含む希土類金属凝集剤のいずれも含むことを意味する。
【0033】
本発明に係る希土類金属凝集剤を使用することで、複数種の希土類金属イオンを含有する水溶液から特定の希土類金属イオン、つまり水溶液中に存在する希土類金属イオンの中で最もイオン半径が小さい希土類金属イオン、を選択的に分離回収することができる。
【0034】
(1)アミノ基含有水溶性高分子
本発明において使用するアミノ基含有水溶性高分子は、上記の通り、側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子である。主鎖は、希土類金属イオンをトラップできるものであれば特に限定されないが、炭化水素からなる主鎖、又は炭化水素とSO2とからなる主鎖であることが好ましい。側鎖は、アミノ基を有していれば特に限定されないが、-R1-NR2R3(ここで、R1はC1-C3アルキレン、好ましくはメチレンであり、R2及びR3は互いに独立して水素又はC1-C3アルキル、好ましくは共にメチルである)や、主鎖の炭素原子と一緒になって形成される5〜7員の窒素含有脂環式複素環(例えば、主鎖の隣接した2つの炭素原子と一緒になって形成されるピロリジン)であることが好ましい。
【0035】
また、本発明において使用するアミノ基含有水溶性高分子は、一般式(I)
【化5】

[式中、
R1は、C1-C3アルキレンであり、好ましくはメチレン又はエチレンであり、より好ましくはメチレンであり;
R2及びR3は、互いに独立して、水素又はC1-C3アルキルであり、好ましくは共に水素であり、より好ましくは一方が水素で他方がメチルであり、特に好ましくは共にメチルである]
で表される構成単位、及び/又は一般式(II)
【化6】

[式中、R4は、水素又はC1-C3アルキルであり、好ましくは水素又はメチルであり、より好ましくはメチルである]
で表される構成単位を有することが好ましい。
【0036】
更に、本発明において使用するアミノ基含有水溶性高分子は以下の化学式:
【化7】

[式中、mは正の整数であり、好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が200〜1,000,000となるような整数であり、より好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が500〜200,000となるような整数である];
【化8】

[式中、m及びnは正の整数であり、好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が200〜1,000,000となるような整数であり、より好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が500〜200,000となるような整数である];
【化9】

[式中、nは正の整数であり、好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が200〜1,000,000となるような整数であり、より好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が500〜200,000となるような整数である];
【化10】

[式中、nは正の整数であり、好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が200〜1,000,000となるような整数であり、より好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が500〜200,000となるような整数である];
【化11】

[式中、m及びnは正の整数であり、好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が200〜1,000,000となるような整数であり、より好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が500〜200,000となるような整数である];
【化12】

[式中、m及びnは正の整数であり、好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が200〜1,000,000となるような整数であり、より好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が500〜200,000となるような整数である];
【化13】

[式中、nは正の整数であり、好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が200〜1,000,000となるような整数であり、より好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が500〜200,000となるような整数である];又は
【化14】

[式中、nは正の整数であり、好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が200〜1,000,000となるような整数であり、より好ましくはアミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量が500〜200,000となるような整数である];
で表される化合物1〜8であることが好ましい。
【0037】
アミノ基は一級、二級、三級のいずれのアミノ基であってもイオン半径の最も小さい希土類金属イオンを選択的にトラップすることができるが、三級アミノ基を使用することでより選択的な希土類金属の分離回収を行うことができる。このことは、以下に示す実際の実験結果、及び計算化学から裏付けられている。
【0038】
上記化合物1、化合物1のアミノ基の1個の水素をメチル基に変えた化合物(化合物1')、化合物1のアミノ基の2個の水素をメチル基に変えた化合物(化合物1'')を合成した。化合物1のアミノ基は一級のアミノ基、化合物1'のアミノ基は二級のアミノ基、化合物1''のアミノ基は三級のアミノ基である。これらを用いて凝集実験を行った。するとDyを選択的に凝集する割合を高い順に並べると化合物1''、化合物1'、化合物1の順であった。つまり、Dyを選択的にトラップする割合はアミノ基が三級の場合に最も高く、以下二級、一級の順となる。
【0039】
密度汎関数法による分子軌道計算を行ったところ、化合物1、化合物1'、化合物1''のNdに対する結合エネルギーはそれぞれ6.9 kcal/mol、7.5 kcal/mol、8.4 kcal/molであった。一方Dyに対する結合エネルギーはそれぞれ10.2 kcal/mol、11.5 kcal/mol、12.9 kcal/molであった。
【0040】
Dyとの結合エネルギーからNdとの結合エネルギーを引いた値は化合物1、化合物1'、化合物1''についてそれぞれ3.3 kcal/mol、4.0 kcal/mol、4.5 kcal/molであった。この結果はDyとNdの結合エネルギー差が最も大きい化合物1''、つまり三級アミノ基を有する化合物が最もDyを選択的にトラップする可能性が高いことを示し、続いて二級アミノ基を有する化合物、そして一級アミノ基を有する化合物の順で選択性が低下することを示している。
【0041】
これは実際の実験における選択性の順序と良く一致する。そのため、アミノ基の級数の違いによりDyのトラップの選択率に差が生じる原因は、DyとNdの結合エネルギー差であると考えられる。
【0042】
上記の通り、三級アミノ基を有する高分子を使用することが選択的な希土類金属の分離回収を行ううえで好ましいが、一級〜三級のアミノ基を組み合わせて有する水溶性高分子を使用しても高い選択性の達成することができる。また、環状のアミノ基を有する水溶性高分子を使用することで、より選択的な分離回収を行うことができる。
【0043】
アミノ基含有水溶性高分子は、数平均分子量が小さいと常温でもアミン特有の臭気を発生する。具体的には、数平均分子量が200未満の場合に顕著になる。そこで、アミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量は200以上であることが好ましい。また、臭気をほとんど感じなくなるようにするため、可能であれば数平均分子量が500以上であることが好ましい。
【0044】
一方、数平均分子量が大きくなると、水溶液にしてもその粘度が高く、投入量管理、金属含有水への投入操作の際に扱いが難しくなる。具体的には、数平均分子量が1,000,000を超えると、10重量%の水溶液にしても粘度が3,000mPa・s以上になる。そこで、アミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量は1,000,000以下が好ましい。また、10重量%水溶液にしても粘度が1,000mPa・s以下となり、投入量管理又は金属含有水への投入操作の際の扱いを簡便にするためには、アミノ基含有水溶性高分子の数平均分子量は200,000以下が好ましい。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって計測される。
【0045】
(2)酸性基含有水溶性高分子
本発明において使用する酸性基含有水溶性高分子は、上記の通り、酸性基を有する水溶性高分子である。希土類金属イオンの選択的なトラップは主にアミノ基含有水溶性高分子に依存しているため、本発明で使用する酸性基含有水溶性高分子は、アミノ基含有水溶性高分子と反応して凝集物を形成できるものであれば特に限定されない。また、酸性基はアミノ基と反応できるものであれば特に限定されず、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。
【0046】
カルボキシル基を有する水溶性高分子としては、例えば、安価でアミノ基とイオン結合しやすい点でポリアクリル酸が好適である。このほか、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸とポリメタクリル酸との共重合体等も挙げられる。これらは直鎖炭化水素からなる主鎖に酸性基が結合している高分子である。
【0047】
スルホン酸基を有する水溶性高分子としては、ポリビニルスルホン酸又はポリスチレンスルホン酸等が挙げられる。スルホン酸基は、カルボキシル基よりも酸性度が大きいため、アミノ基とのイオン結合を形成する割合が高く、安定な凝集物を得られる点で好ましい。
【0048】
本発明においては、酸性基含有水溶性高分子と、酸性基を有しない高分子との共重合体を使用することも好ましい。酸性基を有しない高分子としては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸ヘキシル、ポリアクリル酸オクチル、ポリアクリル酸デシル、ポリアクリル酸ドデシル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸ヘキシル、ポリメタクリル酸オクチル、ポリメタクリル酸デシル、ポリメタクリル酸ドデシル、ポリスチレン等を挙げることができる。共重合体は、酸性基含有水溶性高分子のモノマーと酸性基を有しない高分子のモノマーとを混合し重合することにより得られるが、混合比率は酸性基含有水溶性高分子のモノマーが50モル%以上(例えば、50〜90モル%)であることが好ましい。なぜならば、50モル%未満になると、水に溶解しにくくなるためである。
【0049】
酸性基含有水溶性高分子の数平均分子量は、低すぎると凝集物の架橋部位の数が少なくなるため、凝集物の安定性が低くなる。また、凝集物が粘度の高い液状になる傾向もある。こうなると、濾過では凝集物の回収は困難になる。そこで酸性基含有水溶性高分子の数平均分子量は、2,000以上が望ましい。
【0050】
なお、希土類金属を含有する水溶液の温度が40℃以上になると、数平均分子量が2,000の場合は凝集物が粘着性を有するようになる。希土類を酸に溶解した直後の場合、温度が60℃程度まで高くなる場合もある。この場合は、更に数平均分子量を大きくすることで、高温でも凝集物を固体化することが可能となる。具体的には、数平均分子量を5,000以上にすることで、希土類含有水溶液の温度が40℃でも凝集物を固体化することが可能となる。よって、酸性基含有水溶性高分子の数平均分子量は、5,000以上がより好ましい。更に、数平均分子量を10,000以上にすることで、排水の温度が60℃でも凝集物を固体化することが可能となる。よって、酸性基含有水溶性高分子の数平均分子量が10,000以上であることが更に好ましい。
【0051】
一方、数平均分子量が大きくなりすぎると、酸性基含有水溶性高分子は水に溶解しにくくなる。そうなると大量の水を使って酸性基含有水溶性高分子の希薄な溶液を調製し凝集に用いることになる。こうなると排液の量が膨大になるので実用的ではない。そのため、酸性基含有水溶性高分子の数平均分子量は200,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましい。これにより、排液の量を実用的なレベルまで低減することができる。
【0052】
(3)陽イオン交換樹脂
本発明においては、酸性基含有水溶性高分子の代わりに陽イオン交換樹脂を使用することもできる。陽イオン交換樹脂は表面にカルボキシル基やスルホン酸基等の酸性基を多数有する樹脂粒子であり、表面積を大きくしてイオン交換効率を高めるため、多孔質となっている場合が多い。陽イオン交換樹脂が、希土類イオンをトラップしたアミノ基含有水溶性高分子とイオン結合した後は、複数種の希土類イオンが混在する水溶液から濾過により分取することができる。その後、塩基、或いは酸の水溶液により、希土類イオンをトラップしたアミノ基含有水溶性高分子とのイオン結合を解除することができる。また、通常のイオン交換樹脂の再生方法(酸、引き続き蒸留水で洗浄する方法)により、陽イオン交換樹脂を再生することが可能である。
【0053】
本発明で用いる陽イオン交換樹脂としては特別なものを使用する必要はなく、汎用のグレードを使用することができる。
【0054】
また、樹脂内部に磁性粉を含有する場合、或いは強磁性を有する金属粉を含有する場合は、濾過しなくとも磁気分離法により複数種の希土類イオンが混在する水溶液から陽イオン交換樹脂を分取することができる。
【0055】
3.希土類金属の回収方法
本発明に係る希土類金属の回収方法は、側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子と、酸性基を有する水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂と、複数種の希土類金属イオンとを水溶液中で混合して凝集物を形成させる工程を含む。より具体的には、アミノ基含有水溶性高分子と、酸性基含有水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂とを複数種の希土類金属イオンを含有する水溶液に添加して凝集物を形成させる工程を含む。
【0056】
本発明に係る回収方法は、複数種の希土類金属イオンを含有する水溶液中に存在するイオン半径が最も小さい希土類金属イオンをアミノ基含有水溶性高分子で選択的にトラップし、続いてその希土類金属イオンをトラップしたアミノ基含有水溶性高分子と酸性基含有水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂とを反応させて凝集物を形成させるという原理に基づいている。
【0057】
アミノ基含有水溶性高分子が希土類金属イオンをトラップする速度は、酸性基含有水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂と凝集物を形成する速度よりも速い。そのため、アミノ基含有水溶性高分子と酸性基含有水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂とを添加する順番は重要ではなく、いずれの水溶性高分子を先に添加してもよい。また、それぞれの水溶性高分子を同時に添加してもよい。
【0058】
アミノ基含有水溶性高分子は、イオン半径の最も小さい希土類金属イオンを選択的にトラップし、最も小さい希土類金属イオンが全て分離回収された場合、次に小さい希土類金属イオンを選択的にトラップする。そのため、添加するアミノ基含有水溶性高分子の量を適宜調節し、本発明に係る回収方法を複数回にわたって行うことにより、各回で異なる希土類金属イオンを選択的に回収することができる。
【0059】
一方、水溶性高分子のアミノ基、酸性基の数が、イオン半径の最も小さい希土類金属イオンの数より多くなると、前記官能基と希土類金属イオンとの間で配位結合、イオン結合等が形成される。これら結合はイオンサイズにあまり影響しないため、イオン半径が小さい希土類イオンだけでなくイオン半径が大きい希土類イオンもほぼ同様に凝集物にトラップされることになる。そのため、アミノ基含有水溶性高分子の添加量は、アミノ基のモル数が、イオン半径が最も小さい希土類イオンのモル数と同じ程度かそれ以下になる量であることが望ましい。具体的には、イオン半径が最も小さい希土類金属イオンのモル数(M)を1とした場合、アミノ基含有水溶性高分子のアミノ基のモル数(PB)が、1.3以下となることが好ましい。より具体的には、PB:Mが0.1:1〜1.3:1であることが好ましく、0.5:1〜1.2:1であることがより好ましく、0.8:1〜1:1であることが特に好ましい。ここで、「アミノ基のモル数」とは、1分子のアミノ基含有水溶性高分子が有するアミノ基の数ではなく、アミノ基含有水溶性高分子を水溶液に添加することにより、水溶液中に存在することになる全てのアミノ基の数を意味する。
【0060】
酸性基含有水溶性高分子の役割は、アミノ基含有水溶性高分子のアミノ基とイオン結合を形成し、水に不溶の凝集物を形成することである。イオン半径が最も小さい希土類イオンの数より酸性基含有水溶性高分子の酸性基の数が大きいと、酸性基はイオン半径が最も小さい希土類イオン、及びイオン半径がより大きい希土類イオンとイオン結合してしまい、この結合物が更にアミノ基含有水溶性高分子のアミノ基とイオン結合し、水に不溶の凝集物を形成する。そのため、イオン半径が小さい希土類イオンに対する選択凝集が起こりにくくなってしまう。
【0061】
従って、酸性基含有水溶性高分子の添加量は、酸性基含有水溶性高分子の酸性基のモル数(PA)が、イオン半径が最も小さい希土類金属イオンのモル数(M)よりも少なくなる量であることが好ましく、また、アミノ基含有水溶性高分子のアミノ基のモル数(PB)と同数かそれ以下(つまり、PA≦PB)であることが好ましい。陽イオン交換樹脂の役割及び添加量も酸性基含有水溶性高分子の場合と同様である。
【0062】
本発明に係る希土類金属の回収方法では、全ての希土類金属、つまり、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ディスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)を分離することができる。
【0063】
特に、本発明に係る希土類金属の回収方法では、イオン半径の差が0.01Å以上の複数種の希土類金属イオンを分離することが好ましく、イオン半径の差が0.04Å以上の複数種の希土類金属イオンを分離することがより好ましく、イオン半径の差が0.06Å以上の複数種の希土類金属イオンを分離することが特に好ましい。
【0064】
より具体的には、NdとDyとを含有する水溶液からDyを選択的に回収すること、CeとYとを含有する水溶液からYを選択的に回収すること、LaとTbとを含有する水溶液からTbを選択的に回収すること、LaとCeとTbとを含有する水溶液からTbを選択的に回収することが好ましい。また、3価のNdイオンと3価のDyイオンとを含有する水溶液からDyを選択的に回収することが特に好ましい。
【0065】
本発明に係る希土類金属の回収方法は、アミノ基含有水溶性高分子と酸性基含有水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂とからなる凝集物を酸又は塩基で処理して溶解させる工程を更に含んでいてもよい。凝集物を溶解させるために使用する酸は、特に限定されないが、無機酸を使用することが好ましく、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸などを使用することが好ましい。また、凝集物を溶解させるために使用する塩基は、特に限定されないが、無機塩基を使用することが好ましく、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを使用することが好ましい。
【0066】
4.希土類金属の回収装置
(1)金属分離・回収装置の発明の形態1
本発明に係る希土類金属の回収装置は、上記の希土類金属凝集剤と、複数種の希土類金属イオンとを混合して凝集物を形成させる混合槽、及び前記凝集物を濾過する濾過部を有する。図4を用いて前記装置を具体的に説明する。
【0067】
まず混合槽14内部に、複数種の希土類イオンが含まれている水溶液をポンプ15により、配管16を通って混合槽に投入する。次に第1のタンク17からポンプ18により、配管19を通ってアミノ基含有水溶性高分子の水溶液が混合槽14に投入される。なお、投入されたアミノ基含有水溶性高分子は、複数種の希土類イオンが含まれている水溶液中で最も小さなイオン半径を有する希土類イオンを選択的にトラップする。
【0068】
次に第2のタンク20からポンプ21により、配管22を通って酸性基含有水溶性高分子の水溶液を混合槽14に投入する。複数種の希土類イオンが含まれている水溶液の投入後は撹拌羽根23を装着したオーバーヘッドスターラー24によって水溶液は攪拌され続けている。これにより混合槽内でアミノ基含有水溶性高分子と酸性基含有水溶性高分子からなる凝集物25が形成される。凝集物形成後、撹拌を停止する。
【0069】
続いてシャッター26を開くと、フィルター27を通って混合槽から凝集物以外の液体が排出される。凝集物はフィルターでせき止められるため、混合槽からは排出されない。混合槽の液体成分が排出された後、シャッターを閉じる。
【0070】
次に第3のタンク28からポンプ29により、配管30を通って塩酸水溶液を混合槽に投入すると、凝集物が溶解する。再びシャッターを開くと、フィルターを通って混合槽から凝集物が溶解した液体が排出され、金属回収槽31に入る。なお、金属回収槽へ投入するか否かの制御はバルブ32で制御する。
【0071】
続いて第4のタンク33からポンプ34により、配管35を通って水酸化ナトリウム水溶液が金属回収槽に投入される。すると、希土類金属のイオンが水に難溶の希土類金属の水酸化物36として析出する。金属回収槽の下部にあるシャッター37を開くと、フィルター38を介して回収槽から液体が薬剤回収槽39に入る。
【0072】
金属回収槽に残った希土類金属の水酸化物を取り出すことで、小さなイオン半径の希土類の回収は終了する。
【0073】
ここには図示しないが、これら操作が終わったら、混合槽や回収槽は精製水等で洗浄することで、壁面等に付着した塩酸を除去することができる。また、酸性基含有水溶性高分子とアミノ基含有水溶性高分子の投入順序は逆にしてもかまわない。
【0074】
(2)金属分離・回収装置の発明の形態2
本発明の希土類金属分離・回収装置のうち、磁気分離法を用いて希土類金属分離、回収を行う構成について図5及び6を使って説明する。
【0075】
まず、磁性粉を第2のタンクのアミノ基含有水溶性高分子水溶液に混合させておく。第2のタンクからアミノ基含有水溶性高分子水溶液と一緒に磁性粉が混合槽に投入されると凝集物が形成し、凝集物の中には磁性粉が含有される。
【0076】
この装置では、第一のローラー40、第二のローラー41、第三のローラー42、第四のローラー43、ベルト44からなる磁性粉含有凝集物搬送機構を有する。第四のローラーから第一のローラーを経て第二のローラーまでの間のベルト表面は磁力を有する構造とすることで、第一の混合槽中の磁性粉含有凝集物をベルト表面に付着させることができる。第二のローラーから第四のローラーまでは磁力が無いので凝集物は第三のローラーから外れ、凝集物回収槽45に落ちる。こうして金属イオンをトラップした凝集物が凝集物回収槽に集められる。
【0077】
次に、金属イオンをトラップした凝集物から金属を回収する工程を、図6を使って説明する。
まず第3のタンクからポンプにより、配管を通って塩酸水溶液を凝集物回収槽に投入する。すると凝集物が溶解する。シャッター46を開けると、フィルター47を介して凝集物が溶解した液体、及び磁性粉が金属回収槽に投入される。続いて第4のタンク33からポンプ34により、配管35を通って水酸化ナトリウム水溶液が金属回収槽に投入されると溶解していた希土類金属が水酸化物になるので析出する。ここでシャッター37を開けると溶解している酸性基含有水溶性高分子、アミノ基含有水溶性高分子はフィルター38を通って薬剤回収槽39に入る。析出した希土類金属の水酸化物はフィルター38上に残る。こうして磁気分離方式を用いることによっても希土類金属の選択回収が可能となる。
【0078】
(3)金属分離・回収装置の発明の形態3
酸性基含有水溶性高分子の代わりに陽イオン交換樹脂を用いた場合の、本発明の金属分離・回収装置の基本構成について図7を使って説明する。
【0079】
複数種の希土類イオンが含まれている水溶液の中にアミノ基含有水溶性高分子の水溶液を添加後、容器48から通路49を通って陽イオン交換樹脂50を加える。加える量はバルブ51によって制御される。こうして小さなイオン半径の希土類イオンをトラップしたアミノ基含有水溶性高分子が陽イオン交換樹脂表面にイオン結合する。
【0080】
混合槽から複数種の希土類イオンが含まれている水溶液を排出後、塩酸の水溶液を添加すると、陽イオン交換樹脂からアミノ基含有水溶性高分子が除去される。この後、陽イオン交換樹脂は精製水で洗浄することにより再生し、再びアミノ基含有水溶性高分子とイオン結合を形成できるようになる。
【0081】
一方、陽イオン交換樹脂から離れたアミノ基含有水溶性高分子は金属回収槽に貯められる。ここで水酸化ナトリウム水溶液を添加されると、小さなイオン半径の希土類イオンは水酸化物になり、析出する。さらに金属回収槽のシャッターを開けることでアミノ基含有水溶性高分子の水溶液が薬剤回収槽に移る。金属回収槽に残った小さなイオン半径の希土類金属の水酸化物を回収することにより操作が終了する。
【0082】
(4)金属分離・回収装置の形態4
本発明の金属分離・回収装置のうち、陽イオン交換樹脂をカラムに充填して用いた構成について図8を使って説明する。
【0083】
複数種の希土類イオンが含まれている水溶液にアミノ基含有水溶性高分子の水溶液を混合後、この混合液をポンプ52により配管53を通して陽イオン交換樹脂が充填されていて、下部がメッシュ54になっているカラム55に投入する。カラム上部には圧縮空気、或いは圧縮窒素等を用いた加圧機構56が設けられている。このように、陽イオン交換樹脂をカラムに充填して使用することにより、イオン交換樹脂を混合槽から除く操作が不要となる。
【0084】
(5)金属分離・回収装置の形態5
本発明の金属分離・回収装置のうち、陽イオン交換樹脂をカラムに充填して用い、カラム内に電極を設けた構成について図9を使って説明する。
【0085】
まず、第4のタンクには水酸化ナトリウム水溶液ではなく、塩化ナトリウム水溶液を入れておく。上記実施の形態で水酸化ナトリウム水溶液を投入直後の段階(本実施の形態では塩化ナトリウム水溶液投入直後)、電極57の間に電源58で電位差を発生させることにより、塩化ナトリウムが電気分解され、水酸化ナトリウムが生成する。
【0086】
水酸化ナトリウムを5%以上含む部材(溶液も含む)は劇物に指定されており、扱いも注意を要する。しかし、本実施の形態の装置、方法を用いることにより、劇物である水酸化ナトリウムを直接用いずとも希土類金属分離回収を行うことが可能になる。電源を制御することにより、必要最小限の水酸化ナトリウムを発生させることが可能になるので、排液処理等でも負担が軽減されるメリットがある。
【0087】
なお、本実施の形態では塩化ナトリウムの代わりに塩化カリウム、塩化リチウム等のアルカリ金属をもちいることが可能である。また電極間の電位差は、用いるアルカリ金属塩化物が、水酸化物になるのに必要な値以上に設定する。
【0088】
(6)金属分離・回収装置の形態6
本発明の金属分離・回収装置のうち、陽イオン交換樹脂を用い、磁気分離を用いた構成について図10及び11を使って説明する。
【0089】
この実施の形態では、陽イオン交換樹脂は内部に磁性粉を含有したものを用いる。陽イオン交換樹脂は希土類イオンをトラップしたアミノ基含有水溶性高分子と結合後、第一のローラーから第四のローラー、ベルト44からなる磁性粉含有凝集物搬送機構により凝集物回収槽45に回収される。
【0090】
この後、図11に示す装置を使い、実施の形態2と同様の処理で希土類金属を回収することが可能となる。
【0091】
この形態を用いると、希土類金属を水酸化物に変換する際に加える水酸化ナトリウムにより、塩酸塩構造であったアミノ基含有水溶性高分子のアミノ基が再生し、この高分子自身も再生される。更に陽イオン交換樹脂も塩酸添加により再生できる。そのため本形態を行うことでアミノ基含有水溶性高分子、陽イオン交換樹脂の両方を再生することが可能となる。両者を再生することにより希土類金属分離回収の際の廃棄物低減及び部材コストの低減を図ることが可能となる。
【0092】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0093】
[実施例1]
塩化ネオジム(NdCl3)、塩化ディスプロシウム(DyCl3)を水に溶解した水溶液を調製する。その際、Nd、Dyの濃度がどちらも500ppmとなるよう調製する。
【0094】
この水溶液35g(2種の希土類金属イオンの総数は0.916mmol)を容器に入れ撹拌中、数平均分子量が5,000のポリアクリル酸の10重量%水溶液を0.067g(繰り返し単位数は0.093mmol)添加する。更に上記化合物1〜8の10重量%水溶液を適正量(繰り返し単位数は0.458mmol、なお、繰り返し単位中にアミノ基が2個ある場合は0.229mmol)添加する。すると、白い凝集物が発生する。数時間放置すると、容器の底に沈降する。ピペット等で溶液部分を吸い出し、容器内をほぼ凝集物のみにする。
【0095】
次に凝集物を洗浄する操作を行う。具体的には精製水を35g入れ、超音波洗浄器で撹拌後、ピペット等で溶液部分を吸い出し、容器内を凝集物のみにする。この洗浄操作を5回行った後、凝集物が溶解し終わるまで0.5モル/リットルの塩酸を滴下する。容器内の液体重量が35gになるまで水を加える。
【0096】
誘導結合プラズマ(ICP)分析を使って、この溶液中のNdとDyの濃度を調べた。ここで調べる値は凝集物中にトラップされたNdとDyの濃度である。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
化合物1〜8を用いた場合はいずれもDyの方が凝集物へのトラップ率の高いことが判った。これら化合物はいずれも主鎖構造が直鎖である。一方主鎖が分岐構造のポリエチレンイミンを用いた場合はNdとDyのトラップ率に差は認められなかった。
【0099】
以上より、アミノ基を有する水溶性高分子は主鎖が分岐ではなく直鎖のものを選ぶことによってNdに比べてイオン半径の小さなDyが選択的にトラップされることが明らかになった。
【0100】
アミノ基の級数で比較すると、三級アミンを有する高分子(化合物2、4、6、8)を用いた場合、Ndのトラップ率が低く、Dyのトラップ率が高い傾向が見いだせる。次にDyトラップ率の高いのは二級アミンを有する高分子(化合物3、5、7)であり、一級のみを有する化合物1は最もDyトラップ率が低かった。また複数の級数のアミノ基を有する高分子(化合物2、5、6)はいずれも級数の大きいアミノ基のトラップ率に近いことがわかった。
【0101】
以上より、アミノ基を有し、主鎖が直鎖の水溶性高分子は、アミノ基の級数が大きいほどNdに比べてイオン半径の小さなDyをより選択的にトラップすることが明らかになった。
【0102】
アミノ基の構造を比較すると、化合物3〜8は環状アミンの構造になっている。化合物2と化合物6は2個のアミノ基があり、一方は非環状一級アミンである。もう一つは化合物2が非環状三級アミン、化合物6が環状三級アミンである。化合物2と6を比較すると、化合物6の方がNdのトラップ率が低い。また化合物2の方がDyのトラップ率が若干低い。
【0103】
以上より、アミノ基を有し、主鎖が直鎖の水溶性高分子は、アミノ基が非環状アミノ基に比べて環状のアミノ基の方がNdに比べてイオン半径の小さなDyをより選択的にトラップすることが明らかになった。
【0104】
[実施例2]
ポリアクリル酸の代わりに数平均分子量が200,000のポリスチレンスルホン酸の28.6重量%水溶液を0.067g(繰り返し単位数は0.093mmol)用いる以外は実施例1と同様の実験を行った。その結果、凝集物中のNd、Dyのトラップ率はポリアクリル酸を用いた時の結果に対する差がいずれも±10%以下であった。よって、ポリスチレンスルホン酸を用いてもNdに比べてイオン半径の小さなDyを選択的に凝集物にトラップできることが明らかになった。
【0105】
[実施例3]
ポリアクリル酸の代わりに陽イオン交換樹脂(表面にスルホン酸基を有するタイプ、表面のスルホン酸基の数が0.093mmolとなる量を添加)を用いる以外は実施例1と同様の実験を行った。その結果、凝集物中のNd、Dyのトラップ率はポリアクリル酸を用いた時の結果に対する差がいずれも±10%以下であった。よって、陽イオン交換樹脂を用いてもNdに比べてイオン半径の小さなDyを選択的に凝集物にトラップできることが明らかになった。
【0106】
[実施例4]
希土類金属の塩化物としてNdCl3とDyCl3を500ppmずつ混合した水溶液35gの代わりに、同じく希土類金属の塩化物である塩化イットリウム(YCl3)、塩化セリウム(CeCl3)を500ppmずつ混合した水溶液26.1g(2種の希土類金属イオンの総数は0.916mmol)を用いる以外は実施例1と同様の実験を試みた。
【0107】
なお、YとCeのイオン半径はそれぞれ0.9Å、1.01Åであるから、Yの方がイオン半径が小さい。結果を表2に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
Ceに比べてイオン半径の小さなYの方が凝集物へのトラップ率が高かった。また、アミノ基を有する水溶性高分子は、主鎖が分岐より直鎖のものである場合、またアミノ基の級数が大きいほど、環状アミンである場合にCeに比べてイオン半径の小さなYをより選択的にトラップした。
【0110】
[実施例5]
希土類金属の塩化物としてNdCl3とDyCl3を500ppmずつ混合した水溶液35gの代わりに、同じく希土類金属の塩化物である塩化ランタン(LaCl3)、塩化テルビウム(TbCl3)を500ppmずつ混合した水溶液34g(2種の希土類金属イオンの総数は0.916mmol)を用いる以外は実施例1と同様の実験を試みた。
【0111】
なお、TbとLaのイオン半径はそれぞれ0.92Å、1.03Åであるから、Tbの方がイオン半径が小さい。結果を表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
Laに比べてイオン半径の小さなTbの方が凝集物へのトラップ率が高かった。また、アミノ基を有する水溶性高分子は、主鎖が分岐より直鎖のものである場合、またアミノ基の級数が大きいほど、環状アミンである場合にLaに比べてイオン半径の小さなTbをより選択的にトラップした。
【0114】
[実施例6]
希土類金属の塩化物としてNdCl3とDyCl3を500ppmずつ混合した水溶液35gの代わりに、同じく希土類金属の塩化物である塩化ランタン(LaCl3)、塩化セリウム(CeCl3)、塩化テルビウム(TbCl3)の3種類を500ppmずつ混合した水溶液19.6g(3種の希土類金属イオンの総数は0.916mmol)を用いる以外は実施例1と同様の実験を試みた。
【0115】
なお、TbとCeとLaのイオン半径はそれぞれ0.92Å、1.01Å、1.03Åであるから、この3種類の中ではTbのイオン半径が最も小さい。結果を表4に示す。
【0116】
【表4】

【0117】
La、Ceに比べてイオン半径の小さなTbの方が凝集物へのトラップ率が高かった。また、アミノ基を有する水溶性高分子は、主鎖が分岐より直鎖のものである場合、またアミノ基の級数が大きいほど、環状アミンである場合にLa、Ceに比べてイオン半径の小さなTbをより選択的にトラップした。
【0118】
実施例1〜3、及び実施例4〜6より、本発明の技術を用いることで、Nd、Dy以外の希土類金属が混合している水溶液においても、イオン半径の小さな希土類金属を選択的に凝集物にトラップできることが明らかになった。
【0119】
[実施例7]
希土類金属の混合液、ポリアクリル酸の水溶液、アミノ基を有する水溶性高分子の水溶液を実施例1と同様の割合だけ用い、装置として図4の装置で希土類金属の分離回収を行ったところ、Nd、Dyの凝集物へのトラップ率は表1の結果に対して±5%以下の結果であった。
【0120】
よって、本発明の装置を用いても、イオン半径の小さな希土類を選択的に回収できることが明らかになった。
【符号の説明】
【0121】
1…Ndイオン
2…Dyイオン
3…アミノ基
4…アミノ基含有水溶性高分子
5…酸性基
6…酸性基含有水溶性高分子
7…イオン結合
8…Dyイオンをトラップした凝集物
9…小さなイオン半径の希土類イオン
10…大きなイオン半径の希土類イオン
11…陽イオン交換樹脂
12…陽イオン交換樹脂の酸性基
13…イオン結合
14…混合槽
15…ポンプ
16…配管
17…第1のタンク
18…ポンプ
19…配管
20…第2のタンク
21…ポンプ
22…配管
23…撹拌羽根
24…オーバーヘッドスターラー
25…アミノ基含有水溶性高分子と酸性基含有水溶性高分子からなる凝集物
26…シャッター
27…フィルター
28…第3のタンク
29…ポンプ
30…配管
31…金属回収槽
32…バルブ
33…第4のタンク
34…ポンプ
35…配管
36…希土類金属の水酸化物
37…シャッター
38…フィルター
39…薬剤回収槽
40…第一のローラー
41…第二のローラー
42…第三のローラー
43…第四のローラー
44…ベルト
45…凝集物回収槽
46…シャッター
47…フィルター
48…容器
49…通路
50…陽イオン交換樹脂
51…バルブ
52…ポンプ
53…配管
54…メッシュ
55…カラム
56…加圧機構
57…電極
58…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子と、
酸性基を有する水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂と
を組み合わせてなる希土類金属凝集剤。
【請求項2】
複数種の希土類金属イオンの中からイオン半径が最も小さい希土類金属イオンを選択的に回収するための、請求項1に記載の希土類金属凝集剤。
【請求項3】
側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子が、一般式(I)
【化1】

[式中、
R1は、C1-C3アルキレンであり、
R2及びR3は、互いに独立して、水素又はC1-C3アルキルである]
で表される構成単位、及び/又は一般式(II)
【化2】

[式中、R4は、水素又はC1-C3アルキルである]
で表される構成単位を有する、請求項1又は2に記載の希土類金属凝集剤。
【請求項4】
アミノ基が三級アミノ基である、請求項1〜3のいずれかに記載の希土類金属凝集剤。
【請求項5】
側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子と、
酸性基を有する水溶性高分子又は陽イオン交換樹脂と、
複数種の希土類金属イオンと
を水溶液中で混合して凝集物を形成させる工程を含む、希土類金属の回収方法。
【請求項6】
複数種の希土類金属イオンの中からイオン半径が最も小さい希土類金属イオンを選択的に回収するための、請求項5に記載の回収方法。
【請求項7】
アミノ基のモル数と、複数種の希土類金属イオンの中でイオン半径が最も小さい希土類金属イオンのモル数との比が0.1:1〜1.3:1である、請求項5又は6に記載の回収方法。
【請求項8】
凝集物を酸又は塩基で処理して溶解する工程を更に含む、請求項5〜7のいずれかに記載の回収方法。
【請求項9】
側鎖にアミノ基を有し、主鎖が直鎖である水溶性高分子が、一般式(I)
【化3】

[式中、
R1は、C1-C3アルキレンであり、
R2及びR3は、互いに独立して、水素又はC1-C3アルキルである]
で表される構成単位、及び/又は一般式(II)
【化4】

[式中、R4は、水素又はC1-C3アルキルである]
で表される構成単位を有する、請求項5〜8のいずれかに記載の回収方法。
【請求項10】
アミノ基が三級アミノ基である、請求項5〜9のいずれかに記載の回収方法。
【請求項11】
複数種の希土類金属イオンが3価のネオジムイオン及び3価のディスプロシウムイオンである、請求項5〜10のいずれかに記載の回収方法。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれかに記載の希土類金属凝集剤と、複数種の希土類金属イオンとを混合して凝集物を形成させる混合槽;及び
前記凝集物を濾過する濾過部;
を有する、希土類金属の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−30139(P2012−30139A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169098(P2010−169098)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】