説明

希薄物質検出装置

【課題】含有量がppbレベルの希薄な物質の検出において,検出に必要な濃度を効率良く確保し,効率的な検出を可能にする。
【解決手段】被検出物質の濃度を確保する為に,被検出物質を捕捉する少量の捕捉媒体を用いる。捕捉媒体を少量とすると,捕捉媒体の流路内の密度が小さくなる為,これを冷却,液化して収集することが難しくなるが,マイクロチャネル流路を用いることによって,冷却効果を高め,捕捉媒体を効率的に微細な小滴として収集タンクに確保しうる。結果として,捕捉媒体に捕捉された被検出物質の効率的な検出を可能とする希薄物質検出装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,含有量がppb(parts per billion。十億万分の1を単位とし,濃度や含有率を表す容量比,重量比のこと)レベルの希薄な物質を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
含有量が希薄な物質の検出には,種々の方法がある。希薄なガスとして,例えば,人体に対する毒性が強いトリレンジイソシアネートの検出は,高効率のカラムを用いた高速液体クロマトグラフ法などにより行われている。
【0003】
また,溶液中の希薄な物質の検出には,被検出物質を吸着剤に吸着させる吸着法や,水−有機溶媒系の抽出を利用した溶媒抽出法などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
含有量がppbレベルの希薄な物質を検出するには,被検出物質の濃度が,検出器の検出限界を上回っていることが必要である。
【0005】
上記の高速液体クロマトグラフ法では,検出可能な濃度を確保する為に,前処理として濃縮やろ過を行う。この前処理にはかなりの手間と時間を要する。
【0006】
また,溶液中に存在する希薄な物質として,例えば海水中のウランやプルトニウムを検出する場合がある。これらの場合に,ウランやプルトニウムの一般的な検出法である吸着法や溶媒抽出法を使用すると,検出可能な濃度を確保する為に,大量のサンプリング量が必要になると考えられる。
【0007】
このように,従来の装置では,希薄な物質を検出する際に,効率的な検出ができないという問題点があった。
【0008】
本発明の希薄物質検出装置は,濃度がppbレベルの希薄な物質について,検出に必要な濃度を効率良く確保し,効率的な検出を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の希薄物質検出装置は,被検出物質を含むガスまたは液体を供給する被検出物質供給部と,前記被検出物質を吸着または溶解により捕捉する媒体を供給する捕捉媒体供給部と,その内部において前記被検出物質を前記捕捉媒体に吸着または溶解させ,その内部または外部に,吸着または溶解を促進させる為の反応促進部を有する反応容器と,前記被検出物質を吸着または溶解により捕捉した前記捕捉媒体が移動する媒体移動流路と,前記捕捉媒体に,前記媒体移動流路内で推進力を与えることにより,その移動を促進する移動促進部と,前記媒体移動流路の途中に設置され,前記捕捉媒体を導く,断面積が1平方ミリメートル以下の微細な流路であるマイクロチャネル流路と,前記マイクロチャネル流路を冷却することにより,前記マイクロチャネル流路内を移動中の前記捕捉媒体を液化するチャネル冷却部と,液化した前記捕捉媒体を収集する収集タンクと,液化してタンクに収集された前記捕捉媒体中の前記被検出物質を検出する検出器を備えることを特徴とする。
【0010】
前記希薄物質検出装置は,前記反応促進部が,前記反応容器内を撹拌する機構と,前記捕捉媒体を微細化する機構とから構成されていても良い。
【0011】
前記希薄物質検出装置は,前記反応容器内部に乾燥部を有していても良い。
【0012】
前記希薄物質検出装置は,前記収集タンクが着脱可能であっても良い。
【0013】
前記希薄物質検出装置は,前記マイクロチャネル流路の内面に表面修飾を施していても良い。
【0014】
濃度がppbレベルの被検出物質について,検出に必要な濃度を確保する為には,被検出物質の捕捉媒体を少量とする必要がある。捕捉媒体の量が多いと,被検出物質が捕捉されていない媒体の割合が増す為である。捕捉媒体を少量とすると,流路内の捕捉媒体の密度が小さくなる為,これを冷却,液化して収集することが難しくなる。
【0015】
一方,本発明を構成するマイクロチャネル流路は,断面積が1平方ミリメートル以下の微細な流路である為,流路単位体積あたりの表面積が非常に大きい。この為,マイクロチャネル流路内面と捕捉媒体との熱伝達性が非常に良くなることから,マイクロチャネル流路に及ぼされた冷却効果が捕捉媒体に伝達されやすく,少量の捕捉媒体でも冷却されやすい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の希薄物質検出装置によれば,マイクロチャネル流路に及ぼされた冷却効果が,捕捉媒体に伝達されやすい結果,少量の捕捉媒体でも効率的に冷却され,微細な小滴として収集タンク内に収集される。あわせて捕捉媒体に捕捉された状態で被検出物質も収集タンク内に確保され,検出される。
【0017】
すなわち,希薄な被検出物質について,捕捉媒体が少量であっても,検出に必要な被検出物質の濃度を効率良く確保し,結果として被検出物質を効率的に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1には,本発明の第一の実施形態の全体構成図を示す。
【0020】
図1において,10は被検出物質供給部,20は捕捉媒体供給部,30は反応容器,31は反応促進部,40は媒体移動流路,50は移動促進部,61はマイクロチャネル流路,70はチャネル冷却部,80は収集タンク,90は検出器である。矢印は流れの進行方向を示す。
【0021】
被検出物質供給部10及び捕捉媒体供給部20はともに反応容器30に接続され,それぞれ,被検出物質を含むガスまたは液体,前記被検出物質を吸着または溶解により捕捉する捕捉媒体を反応容器30に供給する役割を担う。また,被検出物質供給部10及び捕捉媒体供給部20は,それぞれ,例えば弁11,弁21を有し,これらの弁は,それぞれ,被検出物質供給部10及び捕捉媒体供給部20から反応容器30へ供給される被検出物質及び捕捉媒体の供給量を調節する役割を担う。
【0022】
反応容器30は,被検出物質供給部10から供給された被検出物質が,捕捉媒体供給部20から供給された捕捉媒体に吸着または溶解される反応が行われる場を提供する役割を担う。
【0023】
反応容器30は,その内部または外部に反応促進部31を有する。反応促進部31は,被検出物質供給部10から供給された被検出物質が,捕捉媒体供給部20から供給された捕捉媒体に効率的に吸着または溶解されるように,反応を促進させる役割を担う。反応促進部31は,例えば,反応容器30内に撹拌機構を有する。撹拌機構は,反応容器30内を撹拌する役割を担う。また,反応促進部31は,例えば捕捉媒体をマイクロバブル化したり,捕捉媒体を噴霧させるなど,捕捉媒体の微細化機構を有する。捕捉媒体は,微細化されると,微細粒子となった捕捉媒体全体の体積に対する表面積が大きくなる為,被検出物質を容易に吸着または溶解しやすくなる。また,微細化は,捕捉媒体が迅速に蒸発するのを助ける。
【0024】
反応容器30は,例えば,容器内温度調節部32を有する。容器内温度調節部32は,反応容器30内の温度を調節する役割を担う。
【0025】
反応容器30には,被検出物質を吸着または溶解により捕捉した捕捉媒体が移動する媒体移動流路40が接続される。媒体移動流路40は,例えば弁41及び弁42を有する。弁41及び弁42は,それぞれ,反応容器30と媒体移動流路40との間を移動する,被検出物質を吸着または溶解により捕捉した捕捉媒体の移動量を調節する役割を担う。
【0026】
また,媒体移動流路40は,媒体移動流路40内の捕捉媒体の移動を促進する移動促進部50を有する。捕捉媒体が少量の為,分圧が低く,後述する液化がされにくい場合は,移動促進部50には例えばコンプレッサを用いる。コンプレッサにより,捕捉媒体は媒体移動流路40内の推進力が与えられ,かつ圧縮される。コンプレッサを用いる場合は,例えば媒体移動流路の終端部付近にオリフィスを設け,捕捉媒体の圧縮効率を高める。圧縮が必要なく,捕捉媒体に推進力を与えるだけの場合は,移動促進部50に,例えば,ファンやロータリーポンプを用いても良い。前記コンプレッサやファン,ロータリーポンプにより,捕捉媒体は,媒体移動流路40を移動して,反応容器30に戻る循環運動を行う。
【0027】
媒体移動流路40の途中に,断面積が1平方ミリメートル以下の微細な流路であるマイクロチャネル流路61が設置される。マイクロチャネル流路61は,媒体移動流路40と同様に,捕捉媒体が移動する流路を提供する。
【0028】
マイクロチャネル流路61の近傍には,チャネル冷却部70が備えられる。チャネル冷却部70は,マイクロチャネル流路61を冷却することにより,マイクロチャネル流路61内を移動中の捕捉媒体を液化する役割を担う。チャネル冷却部70は,例えば,銅製の板,ペルチェ素子及び電源からなり,銅製の板を介してマイクロチャネル流路に接して配置され,ペルチェ冷却作用を利用してマイクロチャネル流路の温度を調節する。
【0029】
マイクロチャネル流路61の下部に,収集タンク80が接続される。収集タンク80は,マイクロチャネル流路61を移動中にチャネル冷却部70の冷却作用により液化した捕捉媒体を収集する役割を担う。
【0030】
液化して収集タンク80に収集された捕捉媒体中の被検出物質は検出器90により検出される。検出器90は被検出物質の検出方法に適したものが適用される。UV法や蛍光法により被検出物質を検出する場合は,例えば,溶融石英でつくられた収集タンク80が適用される。
【0031】
マイクロチャネル流路61は,例えばマイクロチャネルチップ60に形成される。マイクロチャネルチップ60は,チャネル冷却部70及び収集タンク80を一体化して形成されても良い。
【0032】
図2に流れの進行方向から見たマイクロチャネル流路61の断面図の例を示す。
【0033】
マイクロチャネル流路61は,例えば,ガラスに幅1ミリメートル以下の溝を形成し,断面積を1平方ミリメートル以下としたものである。その断面はどのような形状でも良く,図2(a)に示す半円61aや図2(b)に示す四角形61bでも良い。一般に,流路を移動する媒体への熱伝達効率を高くする為には,流路単位体積あたりの表面積が大きい方が良い。チャネル冷却部70による冷却作用がマイクロチャネル流路61を移動する捕捉媒体に効率的に及ぶように,マイクロチャネル流路61の下部を熱伝達効率が高い形状に形成することができる。熱伝達効率が高い断面形状として,例えば図2(c)に示す鋸歯状の下部を有する半円61cの形状としても良い。
【0034】
図3に流れの進行方向と直交する方向から見たマイクロチャネル流路61の断面図の例61dを示す。
【0035】
流れの進行方向と直交する方向から見たマイクロチャネル流路61の断面形状は,どのような形状でも良いが,図3は,マイクロチャネル流路61内に凸部を設けるなどの表面修飾を施した例である。ここで,表面修飾とは,マイクロチャネル流路61の表面を処理し,装飾を施すことをいう。図3の場合,凸部を設けることにより表面積が増大する為,捕捉媒体への熱伝達効率が高まり,捕捉媒体は冷却されやすくなる。
【0036】
図4にマイクロチャネル流路61の端部を示す。
【0037】
マイクロチャネル流路61の端部には,例えば,流路接続ポート62が形成される。流路接続ポート62は,例えば,直径5ミリメートル,長さ10ミリメートルで,円状の断面を有する。流路接続ポート62は,媒体移動流路40とマイクロチャネル流路61とを接続する接続部の役割を担う。
【0038】
媒体移動流路40とマイクロチャネル流路61とは,例えば,シリコンチューブ63により接続される。シリコンチューブ63は,シリコンゴム製のチューブで柔らかい性質を有し,捕捉媒体を密封したまま,媒体移動流路40とマイクロチャネル流路61を接続する。シリコンチューブ63は,耐圧性を有し,必要な場合は,媒体移動流路40の端部及び流路接続ポート62の端部に接着剤やバンドなどで固定される。
【0039】
図5に着脱可能な収集タンク80の例を示す。
【0040】
例えば,マイクロチャネル流路61の途中に,収集タンク接続ポート64を設ける。収集タンク80は,例えば,収集タンク接続ポート64とOリングで接続される。この場合,収集タンク80と収集タンク接続ポート64の間のシール性は,このOリングで確保される。
【0041】
収集タンク80は着脱可能とされる為に,例えば,収集タンク80の外表面に一定の機械的形状が施され,マイクロチャネルチップ60側には,前記収集タンク80側の機械的形状に係合するような機械的形状が施されても良い。その機械的形状は,例えば,それぞれが,雄螺子,雌螺子としても良い。
【実施例1】
【0042】
次に,ガスに含まれている被検出物質の検出例を示す。
【0043】
例えば,空気に含まれているトリレンジイソシアネートの検出例がある。トリレンジイソシアネートを含む空気が,被検出物質供給部10から通常閉状態の弁11を開することにより供給される。この空気中に含まれるトリレンジイソシアネートの量はごくわずかである。一方,トリレンジイソシアネートが吸着される媒体としてメタノールが,例えば,約1マイクロリットル,捕捉媒体供給部20から通常閉状態の弁21を開することにより供給される。
【0044】
トリレンジイソシアネートを含む空気と,メタノールは反応容器30に導かれる。被検出物質供給部10は,例えば,反応容器30に対して正圧とすることにより,トリレンジイソシアネートを含む空気は,弁11の開により自己の圧力で反応容器30内に導入される。メタノールは,液体のものを滴下することにより反応容器30内に入れることができる。メタノールを反応容器30に入れるときに,メタノールは反応促進部31の微細化機構によりマイクロバブル化または噴霧化などの微細化がされても良い。
【0045】
反応容器30は,例えば,直径が約1メートルの大きさである。この容器の中で,揮発性の高いメタノールは気化し,気化したメタノールにトリレンジイソシアネートが吸着される。このとき,吸着が促進されるように,反応促進部31の撹拌機構の作動により,反応容器30内を撹拌しても良い。
【0046】
なお,この例の場合,図には示さないが,反応容器30内には,例えば塩化カルシウムなどの,アルコールは吸着しないが除湿作用のある乾燥剤を有する乾燥部を設け,空気中の水蒸気を極力除く。これは,後述するマイクロチャネル流路61内で,収集を目的としない水蒸気が液化するのを防ぐ為である。
【0047】
反応容器30内でトリレンジイソシアネートを吸着したメタノールは,開された弁41を通過し,媒体移動流路40に移動する。媒体移動流路40に移動したメタノールは,移動促進部50のコンプレッサが作る流れにより,圧縮されるとともに推進力を与えられ,矢印の方向に移動が促進され,マイクロチャネル流路61に導かれる。コンプレッサはメタノールが移動するような風量を送り出すように回転数が調節される。マイクロチャネル流路61内のメタノールの移動を監視する監視部を設け,監視部からの制御信号により,メタノールの移動が促進されるようにコンプレッサの回転数が制御されても良い。
【0048】
マイクロチャネル流路61は,この例では,幅100マイクロメートルである。マイクロチャネル流路61は,チャネル冷却部70により,メタノールの沸点である摂氏約65度以下に冷却される。マイクロチャネル流路61に導かれたメタノールは冷却され,液化する。前述したように,反応容器30内の乾燥部の作用により,マイクロチャネル流路61内には水蒸気は入り込まない為,収集を目的としない水蒸気が液化することはない。
【0049】
液化したメタノールは,収集タンク80に向かって移動し,表面張力に抗って重力により収集タンク80内に落下する。収集タンク80は,この例では,円柱状の形状で,直径500マイクロメートル,高さ500マイクロメートルの大きさとする。被検出物質であるトリレンジイソシアネートも,液化したメタノールに吸着した状態で収集タンク80内に回収される。
【0050】
収集タンク80は,例えば,溶融石英でつくられており,UV法や蛍光法で用いられるような検出器90により,トリレンジイソシアネートの有無が検出される。
【0051】
導電率により検出できる被検出物質に対しては,収集タンク80に電極を設けて検出可能としても良い。
【0052】
試薬により検出できる物質に対しては,収集タンク80内に試薬を投入することにより検出可能としても良い。
【0053】
収集タンク80は,着脱可能として,再利用しても良いし,使い捨てにしても良い。
【0054】
マイクロチャネル流路61を含むマイクロチャネルチップ60は,チャネル冷却部70及び収集タンク80を一体化して形成され,着脱可能とされても良い。
【0055】
液化せずに,収集タンク80の上部を通過した一部のメタノールは,弁42を通過して反応容器30内に戻り,循環する。
【実施例2】
【0056】
次に,液体に含まれている被検出物質の検出例を述べる。
【0057】
例えば,海水に含まれている被検出物質であるウランやプルトニウムを検出する例がある。ウランやプルトニウムを含む海水が,被検出物質供給部10から通常閉状態の弁11を開することにより供給される。この海水中に含まれるウランまたはプルトニウムの量はごくわずかである。一方,ウランまたはプルトニウムが吸着される媒体としてリン酸トリブチル(以下,TBP)が,例えば,約1マイクロリットル,捕捉媒体供給部20から通常閉状態の弁21を開することにより供給される。
【0058】
ウランまたはプルトニウムを含む海水と,TBPは反応容器30に導かれる。例えば,被検出物質供給部10及び捕捉媒体供給部20を反応容器30の上部に配置することにより,それぞれ弁11及び弁21の開により,ウランまたはプルトニウムを含む海水と,TBPは反応容器30内に導入される。TBPを反応容器30内に導入するときに,TBPは反応促進部31の微細化機構によりマイクロバブル化または噴霧化などの微細化がされても良い。
【0059】
反応容器30は,例えば,直径が約1メートルの大きさである。この容器の中で,ウランまたはプルトニウムは,TBPに抽出される。このとき,抽出が促進されるように,反応促進部31の撹拌機構の作動により,反応容器30内を,攪拌しても良い。
【0060】
この例の場合,反応容器30は,容器内温度調節部32による温度調節により,TBPの沸点である摂氏289℃以上の,例えば,摂氏約300℃に加熱される。
【0061】
そうすると,TBP及び水蒸気がガス化する。ガス化したTBP及び水蒸気は,開された弁41を通過し,媒体移動流路40に移動する。
【0062】
なお,本例の場合は,反応容器30内に乾燥部はない。前記の加熱により水蒸気となった反応容器30内の水分は,後述するマイクロチャネル流路61内で液化しない為,乾燥部を設けて反応容器30内から水分を取り除く必要がないからである。
【0063】
媒体移動流路40に移動したTBP及び水蒸気は,移動促進部50の,例えばコンプレッサが作る流れにより圧縮されるとともに推進力を与えられ,矢印の方向に移動が促進され,マイクロチャネル流路61に導かれる。
【0064】
マイクロチャネル流路61は,チャネル冷却部70により,水蒸気の沸点である摂氏100度以上で,かつ,TBPの沸点である摂氏289度以下の,例えば,摂氏約200度に調節される。マイクロチャネル流路61に導かれた,ガス化したTBP及び水蒸気は冷却され,TBPのみ液化する。
【0065】
液化したTBPは,収集タンク80に向かって移動し,表面張力に抗って重力により収集タンク80内に落下する。被検出物質であるウランまたはプルトニウムも,液化したTBPに抽出された状態で収集タンク80内に回収される。
【0066】
収集タンク80は,例えば,溶融石英でつくられており,UV法や蛍光法で用いられるような検出器90により,ウランまたはプルトニウムの有無が検出される。
【0067】
液化せずに,収集タンク80の上部を通過した一部のTBPは,弁42を通過して反応容器30内に戻り,循環する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の利用分野としては,人や環境に対する毒性のある物質の検出を必要としている分野がある。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明にかかる希薄物質検出装置の一実施例の全体構成図である。
【図2】流れの進行方向から見たマイクロチャネル流路の断面図である。
【図3】流れの進行方向と直交する方向から見たマイクロチャネル流路の断面図である。
【図4】マイクロチャネル流路端部を示す図である。
【図5】着脱可能な収集タンクを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希薄な被検出物質を検出する装置であって,
被検出物質を含むガスまたは液体を供給する被検出物質供給部と,
前記被検出物質を吸着または溶解により捕捉する媒体を供給する捕捉媒体供給部と,
その内部において前記被検出物質を前記捕捉媒体に吸着または溶解させ,その内部または外部に,吸着または溶解を促進させる為の反応促進部を有する反応容器と,
前記被検出物質を吸着または溶解により捕捉した前記捕捉媒体が移動する媒体移動流路と,
前記捕捉媒体に,前記媒体移動流路内で推進力を与えることにより,その移動を促進する移動促進部と,
前記媒体移動流路の途中に設置され,前記捕捉媒体を導く,断面積が1平方ミリメートル以下の微細な流路であるマイクロチャネル流路と,
前記マイクロチャネル流路を冷却することにより,前記マイクロチャネル流路内を移動中の前記捕捉媒体を液化するチャネル冷却部と,
液化した前記捕捉媒体を収集する収集タンクと,
タンクに収集された前記捕捉媒体中の前記被検出物質を検出する検出器
を備えることを特徴とする希薄物質検出装置。
【請求項2】
前記反応促進部が,前記反応容器内を撹拌する機構と,前記捕捉媒体を微細化する機構とから構成される請求項1に記載の希薄物質検出装置。
【請求項3】
前記反応容器内部に乾燥部を有する請求項1に記載の希薄物質検出装置。
【請求項4】
前記収集タンクが着脱可能である請求項1に記載の希薄物質検出装置。
【請求項5】
前記マイクロチャネル流路の内面に表面修飾を施した請求項1に記載の希薄物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−115627(P2009−115627A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289174(P2007−289174)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】