説明

帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体及びその製造方法

【課題】帯電防止性に優れた架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂100重量部に高分子型帯電防止剤5〜30重量部、発泡剤及び架橋剤を添加混練して発泡性架橋性組成物を得、該組成物を密閉式金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤及び架橋剤を分解させた後除圧して発泡させることを特徴とする帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法、及び、ポリオレフィン系樹脂100重量部に高分子型帯電防止剤5〜30重量部、発泡剤及び架橋剤を添加混和して発泡性樹脂組成物を得、該組成物を密閉金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤及び架橋剤を部分的に分解させた後除圧して中間発泡体を得、次いで常圧下に加熱して残存する発泡剤及び架橋剤を分解させて発泡させることを特徴とする帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、架橋ポリオレフィン系発泡体は、断熱性、緩衝性等に優れており、各種機器類の包装、輸送等に使用されている。
【0003】
しかし、ポリオレフィン系樹脂は、元来骨格構造に極性を持っていないため、静電気を帯びやすいことが欠点となっている。
【0004】
従来、これらの帯電防止法としては、帯電防止剤であるグリセリンのステアリン酸エステルを練り込んだり(特公昭62−153326号公報)、アルキルアミン系添加剤を練り込む方法(特公昭50−29740号公報)が知られている。
【0005】
また、本出願人は、ポリオレフィン系樹脂に導電性カーボンを練り込んだ導電性架橋ポリオレフィン気泡体の製造方法(特公平2−29095号公報)を開発した。
【特許文献1】特公昭62−153326号公報
【特許文献2】特公昭50−29740号公報
【特許文献3】特公平2−29095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の帯電防止剤を用いる場合は、帯電防止剤の発泡体表面へのブリードアウトにより、帯電防止性が永続しない問題があった。後者の導電性カーボンを用いる場合は、導電性、すなわち帯電防止性に優れるものの、発泡体の色が黒に限定されてしまう問題があった。
【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン系樹脂に特定の帯電防止剤を用いることにより、ブリードアウトがなく、良好な帯電防止性を示すポリオレフィン系発泡体を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体は、ポリオレフィン系樹脂に高分子型帯電防止剤、発泡剤及び架橋剤を添加混練して加熱、発泡して得られるものである。
【0009】
上記発泡体において、高分子型帯電防止剤がポリエーテル系高分子型帯電防止剤であることが好ましい。この条件を満たすと、帯電防止剤の発泡体表面へのブリードアウトがなく、帯電防止性が永続し、満たさない場合は、ブリードアウトが起こり、帯電防止性が永続しない。
【0010】
本発明に係る帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法の第一の発明は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に高分子型帯電防止剤5〜30重量部、発泡剤及び架橋剤を添加混和して発泡性樹脂組成物を得、該組成物を密閉金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤及び架橋剤を部分的に分解させた後除圧して中間発泡体を得、次いで該中間発泡体を常圧下に加熱して残存する発泡剤及び架橋剤を分解させて発泡させて発泡体を成形する製造方法である。
【0011】
本発明に係る帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法の第二の発明は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に高分子型帯電防止剤5〜30重量部、発泡剤及び架橋剤を添加混和して発泡性樹脂組成物を得、該組成物を密閉金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤及び架橋剤を部分的に分解させた後除圧して中間発泡体を得、次いで該中間発泡体を常圧下に加熱して残存する発泡剤及び架橋剤を分解させて発泡させて発泡体を成形する製造方法である。
【0012】
上記本発明の製造方法において、高分子型帯電防止剤がポリエーテル系高分子型帯電防止剤であることが好ましい。この条件を満たすと、帯電防止剤の発泡体表面へのブリードアウトがなく、帯電防止性が永続し、満たさない場合は、ブリードアウトが起こり、帯電防止性が永続しない。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、帯電防止性に優れ、ブリードアウトがなく半永久的に帯電防止性能が維持でき、黒以外の多様な色を持つ帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明でいうポリオレフィンとは、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、エチレン共重合体を挙げることができる。
【0015】
本発明でいう高分子型帯電防止剤とは、一般にイオン性の観点から、非イオン系、アニオン系、カチオン系、両イオン系に分けられる。また、その化学構造から、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド架橋体、ポリエチレンオキサイドと他樹脂の共重合体、ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールと他樹脂の共重合体等の非イオン系のポリエーテル系の高分子型帯電防止剤、第四級アンモニウム塩系(第四級アンモニウム塩基含有共重合体、第四級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート共重合体、第四級アンモニウム塩基含有マレイミド共重合体、第四級アンモニウム塩基含有メタクリルイミド共重合体)等のカチオン系の高分子型帯電防止剤、スルホン酸系(ポリスチレンスルホン酸ソーダ)等のアニオン系の高分子型帯電防止剤、カルボベタイングラフト共重合体等の両イオン系(ベタイン系)等に分類される。
【0016】
本発明においては、特に非イオン系のポリエーテル系の高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。
【0017】
高分子型帯電防止剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に5〜30重量部を練和することが好ましい。高分子型帯電防止剤が上記範囲未満である場合、十分な帯電防止性が得られず、上記範囲を越えて添加する場合、発泡成形を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【0018】
本発明でいう架橋剤とは、ポリエチレン系樹脂中において少なくともポリエチレン樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するものであって、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α、α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどがあるが、その時に使用される樹脂によって最適な有機過酸化物を選択しなければならない。
【0019】
本発明でいう発泡剤とは、ポリエチレン系樹脂の溶融温度以上の分解温度を有する化学発泡剤であり、例えばアゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等がある。
【0020】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【0021】
本発明においては、使用する組成物の物性の改良或いは価格の低下を目的として、架橋結合に著しい悪影響を与えない配合剤(充填剤)、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、あるいはパルプ等の繊維物質、又は各種染料、顔料並びに蛍光物質、その他常用のゴム配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0022】
次に、本発明の帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法について説明する。
前記したポリオレフィン系樹脂100重量部と、高分子型帯電防止剤5〜30重量部からなる混合物に、周知の発泡剤、発泡助剤及び架橋剤を添加し、これを加熱したミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。次いで、得られた発泡性組成物をプレス中の金型に充填し、一定時間加圧下に140〜170℃で加熱し、発泡剤及び架橋剤を完全に分解させ、除圧して発泡体を得る。
【0023】
或いは、前記したポリオレフィン系樹脂100重量部と、高分子型帯電防止剤5〜30重量部からなる混合物に、周知の発泡剤、発泡助剤及び架橋剤を添加し、これを加熱したミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。次いで、得られた発泡性組成物をプレス中の金型に充填し、一定時間加圧下に120〜180℃、好ましくは、130〜170℃で5〜60分間、好ましくは10〜50分間加熱し、発泡剤及び架橋剤を部分的に分解せしめて、中間発泡体を得る。次いで、このようにして得られた中間発泡体を、常圧下にて密閉系でない直方体型などの所望の形状の型内に入れ、ローゼ合金、ウッド合金等を用いるメタルバス、オイルバス、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム等の塩の1種又は2種以上の溶融塩を用いる塩浴中、窒素気流中で、または直方体型がその外壁に加熱用熱媒体導管(熱媒:スチーム等)が設けられてなるものでその中で、あるいは伸長可能な鉄板等により覆われた状態で、所定時間加熱した後、冷却して発泡体を得る。加熱温度は使用するポリオレフィンの種類に応じて145〜210℃、好ましくは160〜190℃であり、加熱時間は30〜120分、好ましくは40〜90分である。
【0024】
本発明でいう帯電防止性は、絶縁抵抗計(商品名:ハイ・レジスタンス・メーターHP4329A、日本ヒューレット・パッカード(株)製)を用い、測定端子間距離10mmにて、試料に強制的に100Vの電圧を印加し、表面抵抗率を測定した。表面抵抗率が1×1012Ω以下の場合、帯電防止性を有すると判断した。
【実施例1】
【0025】
低密度ポリエチレン(密度0.922g/cm、メルトフローレート2.1g/10min)70重量部と、エチレン−酢酸ビニル共重合体(メルトフローレート1.5g/10min、酢酸ビニル含有量15%)30重量部、高分子型帯電防止剤(商品名:ペレスタット300、三洋化成工業株式会社製)15重量部、アゾジカルボンアミド9重量部、ジクミルパーオキサイド0.4重量部からなる組成物を100℃のニーダーにて混練し、155℃に加熱されたプレス内の金型(160×160×20)に充填し、50kg/cmの圧力で30分間加熱し、発泡剤及び架橋剤を分解後、除圧して発泡体を得た。
【0026】
得られた発泡体の見掛け密度は52kg/mであり、表面抵抗率を測定したところ1×1011Ωであり、帯電防止性を有していた。
また、1ヶ月放置後表面抵抗率を測定したところ、5×1011Ωであり、帯電防止性が維持できていた。
【実施例2】
【0027】
高分子型帯電防止剤(前述)の添加量を7重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0028】
得られた発泡体の見掛け密度は50kg/mであり、表面抵抗率を測定したところ3×1011Ωであり、帯電防止性を有していた。
また、1ヶ月放置後表面抵抗率を測定したところ、8×1011Ωであり、帯電防止性が維持できていた。
【実施例3】
【0029】
低密度ポリエチレン(密度0.920 g/cm、メルトフローレート1.1g/10min、)70重量部と、エチレン−酢酸ビニル共重合体(前述)30重量部、高分子型帯電防止剤(前述)15重量部、アゾジカルボンアミド17重量部、ジクミルパーオキサイド0.5重量部からなる組成物を100℃のニーダーにて混練し、150℃に加熱されたプレス内の金型(170×360×28)に練和物を充填し、50分間加圧下で加熱し、発泡剤及び架橋剤を一部分解し、一次発泡体を取り出した。
【0030】
次いで、該一次発泡体を加熱水蒸気の流路を周囲に設けた気密でない開閉式金属金型(100×500×500mm)の略中央に載置し、160℃の加熱水蒸気を該流路に流して60分間加熱して残存する発泡剤及び架橋剤を分解して冷却後、発泡体得た。
【0031】
得られた発泡体の見掛け密度は29kg/mであり、表面抵抗率を測定したところ1×1011Ωであり、帯電防止性を有していた。
また、1ヶ月放置後表面抵抗率を測定したところ、5×1011Ωであり、帯電防止性が維持できていた。
比較例1
【0032】
実施例1において、高分子型帯電防止剤(前述)を3重量部に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び発泡条件で発泡体を得、表面抵抗率を測定したところ、1×1013Ωであり、帯電防止性を有しなかった。
比較例2
【0033】
実施例3において、高分子型帯電防止剤(前述)を3重量部に変えた以外は、実施例3と同じ配合及び発泡条件で発泡体を得、表面抵抗率を測定したところ、2×1013Ωであり、帯電防止性を有しなかった。
比較例3
【0034】
実施例1において、高分子型帯電防止剤(前述)を50重量部に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び発泡条件で発泡体を成形しようとしたが、帯電防止剤の添加部数が多すぎて満足な気泡体を得ることが出来なかった。
比較例4
【0035】
実施例3において、高分子型帯電防止剤(前述)50重量部に変えた以外は、実施例2と同じ配合及び発泡条件で発泡体を成形しようとしたが、帯電防止剤の添加部数が多すぎて満足な気泡体を得ることが出来なかった。
比較例5
【0036】
低密度ポリエチレン(前述)100重量部、グリセリン脂肪酸エステル(商品名:リケマールS−100、理研ビタミン株式会社製)1.5重量部、アゾジカルボンアミド17重量部、ジクミルパーオキサイド0.6重量部からなる組成物を100℃のニーダーにて混練し、150℃に加熱されたプレス内の金型(170×360×28)に練和物を充填し、50分間加圧下で加熱し、発泡剤及び架橋剤を一部分解し、一次発泡体を取り出した。
【0037】
次いで、該一次発泡体を加熱水蒸気の流路を周囲に設けた気密でない開閉式金属金型(100×500×500mm)の略中央に載置し、160℃の加熱水蒸気を該流路に流して60分間加熱して残存する発泡剤及び架橋剤を分解して冷却後、発泡体得た。
【0038】
得られた発泡体の見掛け密度は28kg/mであり、表面抵抗率を測定したところ1×1012Ωであり、帯電防止性を有していたが、1ヶ月放置後表面抵抗率を測定したところ、5×1013Ωであり、帯電防止性が維持できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明の方法によれば、帯電防止性に優れた帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体を製造できる。本発明の方法によって製造された帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体は、静電気によるゴミの付着などの汚れが問題になる、電気製品や電子機器の断熱材、緩衝材等に適用できる


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂に高分子型帯電防止剤、発泡剤及び架橋剤を添加混練して加熱、発泡させてなる帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体。
【請求項2】
前記高分子型帯電防止剤がポリエーテル系高分子型帯電防止剤である請求項1記載の発泡体。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂100重量部に高分子型帯電防止剤5〜30重量部、発泡剤及び架橋剤を添加混練して発泡性架橋性組成物を得、該組成物を密閉式金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤及び架橋剤を分解させた後除圧して発泡させることを特徴とする帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂100重量部に高分子型帯電防止剤5〜30重量部、発泡剤及び架橋剤を添加混和して発泡性樹脂組成物を得、該組成物を密閉金型中に充填して加圧下に加熱し、発泡剤及び架橋剤を部分的に分解させた後除圧して中間発泡体を得、次いで該中間発泡体を常圧下に加熱して残存する発泡剤及び架橋剤を分解させて発泡させることを特徴とする帯電防止性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記高分子型帯電防止剤がポリエーテル系高分子型帯電防止剤である請求項3及び4記載の発泡体の製造方法。


【公開番号】特開2006−117739(P2006−117739A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304989(P2004−304989)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000177380)三和化工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】