説明

平版印刷版の作製方法

【課題】非画像部の汚れのない高画質の画像が形成され、形成された画像部の強度が高く、耐刷性に優れた平版印刷版の作製方法を提供すること。
【解決手段】芳香族基上に置換基を有してもよいフェノール基及び芳香族基上に置換基を有してもよいベンゼンスルホンアミド基から選択される少なくとも1種の酸解離定数(pKa)が5.5以上の酸基、及び、ラジカル付加重合可能な基を含むバインダーポリマーと、光又は熱によりラジカルを生成する化合物と、前記バインダーポリマーとは異なるラジカル重合性化合物と、を含有する重合性組成物を含む記録層を備えてなる平版印刷版原版を、450nm以下の波長のレーザ光を用いて露光した後、現像することを特徴とする平版印刷版の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の作製方法に関する。特に、コンピュータ等のデジタル信号から各種レーザを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なネガ型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、波長300nm〜1200nmの紫外光、可視光、赤外光を放射する固体レーザ及び半導体レーザ、ガスレーザは、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、これらのレーザは、コンピュータ等のデジタルデータから直接製版する際の記録光源として非常に有用である。
これら各種レーザ光に感応する記録材料については種々研究されている。代表的なものとして、例えば、感光波長760nm以上の赤外線レーザで記録可能な材料としては、特許文献1に記載のポジ型記録材料、特許文献2に記載されている酸触媒架橋型のネガ型記録材料等がある。また、300nm〜700nmの紫外光又は可視光レーザ対応型の記録材料としては、特許文献3又は4に記載されているラジカル重合型のネガ型記録材料等が多数ある。
【0003】
ネガ型画像形成材料は、光により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露後部の記録層を硬化させて画像部を形成する記録方式を利用している。このようなネガ型の画像形成材料は、赤外線レーザー照射のエネルギーにより記録層の可溶化を起こさせるポジ型に比較して画像形成性が低く、重合による硬化反応を促進させて強固な画像部を形成するために、現像工程前に加熱処理を行うのが一般的である。
そのような光重合性の記録層を有する画像記録材料としては、特許文献5又は6に記載されるような光重合性組成物を記録層として用いる技術が知られている。これらの記録層は、高感度画像形成性に優れているものの、支持体として親水化処理された基板を用いた場合、記録層と支持体との界面における密着性が低く、印刷版として使用した場合には耐刷性に劣るという問題点があった。逆に親水化処理していない基板を用いた場合には密着性は向上するものの、現像により非画像部が除去されずに残ってしまうことがあった。
【0004】
ネガ型平版印刷版原版おいては、記録層中にアルカリ可溶性の酸基を有するポリマーバインダーを用い、アルカリ現像液により現像し未露光部を除去することで非画像部を形成させており、該アルカリ可溶性の酸基としては、従来、主にカルボン酸基が用いられてきたが、カルボン酸基は、一般に酸解離定数(pKa)が小さいため(例えば、酢酸の場合、pKa=4.74)アルカリ現像液の浸透により解離し易く、硬化した画像部にも現像液が浸透し易くなり、支持体と記録層との界面がダメージを受けて密着性が低下し、延いては耐刷性が悪化しするといった懸念がある。
【0005】
また、記録層と支持体との密着性を上げ、界面への現像液透過を抑制するるために、親水化処理されていない支持体を用いた場合には、非画像部に汚れが発生し易くなり、これを防止するため非画像部を完全に除去するには、特にpH13以上の強いアルカリ現像液を使用する必要が生じる。このような強アルカリ現像液は、硬化した画像部にも浸透し易くなり、画像部がダメージを受けてしまい、耐刷性が悪化してしまうという問題があった。
従って、上述のごとく、従来のネガ型平版印刷版原版においては、耐刷性と汚れ性との両立は困難であり、充分に満足できるものは得られていなかった。
【特許文献1】米国特許第4708925号明細書
【特許文献2】特開平8−276558号公報
【特許文献3】米国特許2850445号明細書
【特許文献4】特公昭44−20189号公報
【特許文献5】特開平8-108621号公報
【特許文献6】特開平9-34110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、非画像部の汚れのない高画質の画像が形成され、形成された画像部の強度が高く、耐刷性に優れた平版印刷版の作製方法を提供することを目的とする。特に、450nm以下の波長の固体レーザ及び半導体レーザ光を用いて記録することによりコンピューター等のデジタルデータから直接製版可能な平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の酸基及びラジカル付加重合可能な基を有するバインダーポリマーを用いることにより上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の平版印刷版の作製方法は、芳香族基上に置換基を有してもよいフェノール基及び芳香族基上に置換基を有してもよいベンゼンスルホンアミド基から選択される少なくとも1種の酸解離定数(pKa)が5.5以上の酸基、及び、ラジカル付加重合可能な基を含むバインダーポリマーと、光又は熱によりラジカルを生成する化合物と、前記バインダーポリマーとは異なるラジカル重合性化合物と、を含有する重合性組成物を含む記録層を備えてなる平版印刷版原版を、450nm以下のレーザ光を用いて露光した後、現像することを特徴とする。
【0008】
本発明の作用機構は明らかではないが、以下のように推測される。
即ち、本発明に係る特定のバインダーポリマーは、pKaが5.5以上の酸基を有していることから、アルカリ現像液の水素イオン指数(pH)との差がより小さくなるため、画像部(露光部)においては、アルカリ現像液に対する解離速度が小さくなり、現像液の記録層中への浸透によるダメージに起因する耐刷性劣化を起こし難いと考えられる。
【0009】
さらに、本発明に係る特定のバインダーポリマーは、ラジカル付加重合可能な基をも有していることから、露光により重合開始剤から発生した活性ラジカルにより該ラジカル付加重合可能な基が反応すると、該バインダーポリマーが高分子量化しその運動が抑制されるため、pKaが5.5以上の酸基が固定化されてアルカリ現像液の記録層中への浸透を抑制しうるものと考えられる。また、露光後の該酸基構造面においては、解離プロトンの周囲が芳香族環基等の疎水性基に囲まれることから、ラジカル重合による酸基固定化による硬化後の疎水性向上効果がさらに大きくなるものと考えられる。これにより、現像液の記録層中への浸透によるダメージに起因する耐刷性劣化を、効果的に抑制しうるものと推測される。
【0010】
一方、非画像部(未露光部)においては、高pH(例えば、pH13以上)の強いアルカリ現像系を用いて現像することができるため、非画像部が完全に除去され、汚れの発生を効果的に抑制することが可能となる。
以上のように、本発明によれば、耐刷性及び汚れ性の両立が達成できるものと推測される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非画像部の汚れのない高画質の画像が形成され、形成された画像部の強度が高く、耐刷性に優れた平版印刷版の作製方法を提供することができる。特に、450nm以下の波長の固体レーザー及び半導体レーザー光を用いて記録することによりコンピューター等のデジタルデータから直接製版可能な、ネガ型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の平版印刷版の作製方法について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版の作製方法は、下記の重合性組成物を含有する記録層を備えたネガ型平版印刷版原版を、450nm以下の波長のレーザ光を用いて露光した後、現像することを特徴とする。
即ち、本発明における重合性組成物は、芳香族基上に置換基を有してもよいフェノール基及び芳香族基上に置換基を有してもよいベンゼンスルホンアミド基から選択される少なくとも1種の酸解離定数(pKa)が5.5以上の酸基、及び、ラジカル付加重合可能な基を含むバインダーポリマーと、光又は熱によりラジカルを生成する化合物と、前記バインダーポリマーとは異なるラジカル重合性化合物と、を含有する。なお、本発明の重合性組成物は、熱重合性であっても、光重合性であってもよい。
また、本発明におけるネガ型平版印刷版原版は、支持体上に、上記重合性組成物を含有する記録層を備えてなり、これにより優れた耐刷性及び汚れ性を発揮するものである。
【0013】
〔(A)酸解離定数(pKa)が5.5以上の酸基、及び、ラジカル付加重合可能な基を含むバインダーポリマー〕
本発明においては、(A)酸解離定数(pKa)が5.5以上の酸基、及び、ラジカル付加重合可能な基を含むバインダーポリマー(特定のバインダーポリマー)を含有することを要する。該特定のバインダーポリマーは、アルカリ現像液に可溶又は膨潤する高分子化合物である。
【0014】
本発明における特定のバインダーポリマーとしては、効果の点から、酸解離定数(pKa)が5.5以上の酸基(以下、適宜「特定の酸基」と称する。)、及び、ラジカル付加重合可能な基が、側鎖として導入されているものが好ましいが、ポリマー主鎖の末端に導入されていてもよい。特定の酸基及びラジカル付加重合可能な基が導入されるポリマー主鎖としては、ビニル樹脂(例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等)、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が好適に挙げられる。
【0015】
<酸解離定数(pKa)が5.5以上の酸基>
本発明において、特定のバインダーポリマーに含まれる特定の酸基は、酸解離定数(pKa)が5.5以上であることを要し、より好ましくは7〜11.5の範囲であり、さらに好ましくは8〜11の範囲である。該特定の酸基として、具体的には、例えば、フェノール基(pKa=9.99)、2−メトキシフェノール基(pKa=9.99)、2−クロロフェノール基(pKa=8.55)、2−ヒドロキシ安息香酸メチル基(pKa=9.87)、4−メチルフェノール基(pKa=10.28)、1,3−ベンゼンジオール基(pKa=9.20)、1−ナフトール基(pKa=9.30)、1,2−ベンゼンジオール基(pKa=9.45)、ベンゼンスルホンアミド基(pKa=10.00)、N−アセチルフェニルベンゼンスルホンアミド基(pKa=6.94)、4−アミノベンゼンスルホンアミド基(pKa=10.58)、N−フェニル−4−アミノベンゼンスルホンアミド基(pKa=6.30)、N−(4−アセチルフェニル)−4−アミノベンゼンスルホンアミド基(pKa=7.61)、アセチル酢酸エチル基(pKa=10.68)、4−ピリジンアミド基(pKa=11.47)等が挙げられる。これらの中でも、芳香族基上に置換基を有してもよいフェノール基、芳香族基上に置換基を有してもよいベンゼンスルホンアミド基がより好ましい。
本発明の平版印刷版の作製方法に用いる平版印刷版原版に適用される特定のバインダーポリマーは、芳香族基上に置換基を有してもよいフェノール基及び芳香族基上に置換基を有してもよいベンゼンスルホンアミド基から選択される少なくとも1種を、酸解離定数(pKa)が5.5以上の酸基として有する。
【0016】
尚、上記具体例に記載の酸解離定数pKaは、E.P.SERJEANTら著、“IONISATION CONSTRANTS OF ORGANIC ACIDS IN AQUEOUS SOLUTION”及びJOHN A.DEAN著、“LANGE’S HANDBOOK OF CHEMISTRY”に記載の数値である。
【0017】
上記特定の酸基を有する構造単位としては、下記一般式(1)で表される構造単位が好ましい。
【0018】
【化18】

【0019】
一般式(1)中、Xは、O、S、又は−NR4−を表す。Yは、2価の有機基を表す。Aは、特定の酸基を表す。R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、シアノ基、又はニトロ基を表す。
【0020】
一般式(1)中、R1、R2、R3、及びR4で表される1価の有機基としては、例えば、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、等が挙げられる。
上記1価の有機基は、更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、等が挙げられる。
【0021】
一般式(1)中、Yで表される2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、等が挙げられる。
上記2価の有機基は、更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、等が挙げられる。
【0022】
また、特定の酸基を有する構造単位としては、下記一般式(2)〜一般式(8)で表される構造単位も好ましい。
【0023】
【化19】

【0024】
一般式(2)中、Xは、アルキレン基、置換アルキレン基、−CH2CH2OCH2CH2−、
【0025】
【化20】

【0026】
を表す。R1は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。R2及びR3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、−OR4、−COOR5、−COONHR6、−COR7又は−CNを表す。R2とR3は互いに結合して環を形成してもよい。R4〜R7は、各々独立に、アルキル基又は芳香族基を表す。nは2又は3を表す。
【0027】
一般式(2)について詳しく説明する。
一般式(2)において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表し、水素原子、塩素原子、又は炭素数1〜4個のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。Xは、アルキレン基、置換アルキレン基、−CH2CH2OCH2CH2−、
【0028】
【化21】

【0029】
を表し、炭素数1〜20個のアルキレン基又は置換アルキレン基が好ましく、炭素数2〜6個のアルキレン基が特に好ましい。
上記置換アルキレン基が有する置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜10個のアルキル基、炭素数1〜10個のアルコキシ基、又は炭素数1〜10個のアシルオキシ基が好ましい。
一般式(2)中のR2及びR3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、−OR4、−COOR5、−COONHR6、−COR7又は−CNを表す。R2とR3は互いに結合して環を形成してもよい。R4〜R7は、各々独立に、アルキル基又は芳香族基を表す。R2及びR3としてより好ましくは、各々独立に、水素原子、塩素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、フェニル基、−OR4、−COOR5、−CONHR6,−COR7,−CNであり、ここでR4〜R7は、炭素数1〜4個のアルキル基、フェニル基である。R2及びR3として特に好ましくは、各々独立に、水素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基である。
【0030】
【化22】

【0031】
一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。Xは2価の連結基を表す。Yは置換基を有してもよい2価の芳香族基を表す。
一般式(3)において、Xが表す2価の連結基としては、例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、又はフェニレン基が挙げられる。Yが表す置換基を有してもよい2価の芳香族基としては、置換基を有してもよいフェニレン基、又はナフチレン基が挙げられる。
【0032】
【化23】

【0033】
一般式(4)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はカルボン酸基を表す。R3は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。R4は、水素原子、アルキル基、フェニル基又はアラルキル基を表す。Xは、窒素原子と芳香環炭素原子とを連結する2価の有機基を表す。nは0又は1を表す。Yは、置換基を有してもよいフェニレン基、又は置換基を有してもよいナフチレン基を表す。
【0034】
一般式(4)について詳しく説明する。
一般式(4)で表される構造単位において、Yは置換基を有してもよいフェニレン基、又は置換基を有してもよいナフチレン基を表すが、置換基の種類によって本発明の重合性組成物の特性が大きく影響を受けることは殆どないので、置換基としては任意の基を用いることができる。代表的な置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、シアノ基、ニトロ基、等が挙げることができる。
【0035】
【化24】

【0036】
一般式(5)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基を表す。R2及びR3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表す。R4、R5及びR6は、各々独立に、水素原子、(C1−C4)アルキル基、又はハロゲン原子を表す。Xは、単環又は多環の、炭素環式芳香族環系を完成させるのに必要な原子を表す。nは、1,2又は3を表す。
【0037】
一般式(5)で表される構造単位としてより好ましくは、R1が水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は(C1−C6)アルキル基であり、R2及びR3が、各々独立に、水素原子、又は(C1−C4)アルキル基であり、R4、R5及びR6が、各々独立に、水素原子、(C1−C4)アルキル基、又はハロゲン原子であり、Xがベンゼン環又はナフタレン環を完成させるのに必要な炭素原子であり、nが1である場合である
【0038】
一般式(5)で表される構造単位として特に好ましくは、R1が水素原子又はメチル基であり、R2、R3及びR4が水素原子であり、R5が水素原子、(C1−C4)アルキル基又はハロゲン原子であり、R6が水素原子、(C1−C4)アルキル基、アリール基又はハロゲン原子であり、Xがベンゼン環又はナフタレン環を完成させるのに必要な炭素原子であり、nが1である場合である。
【0039】
一般式(5)におけるR1がアルキル基である場合、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましい。特に好ましいのは、R1が水素原子又はメチル基である場合である。
【0040】
一般式(5)においては、R2及びR3の少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R2及びR3がアルキル基を表す場合、炭素数1〜6アルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
【0041】
一般式(5)において、R4は、好ましくは水素である。R5は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。R6は、炭素数1〜4のアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
一般的に、アルキル基とは、ここでは、ハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよい、あるいはエーテル基又はケトン基を含んでいてもよい、環状及び開放鎖を有する、枝分かれした及び枝分かれしていない、飽和及び不飽和基を表すものとする。炭素数1〜4の枝分かれしていないアルキル基が好ましい。アリール基とは、単環又は多環式でよく、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい複素環式又は炭素環式芳香族リング系を表すものとする。
【0042】
リング系X上の上記の置換基の位置には特に制限はなく、化合物の調製し易さによってのみ左右される。
【0043】
炭素環式芳香族リング系Xは、単環式でも多環式でもよい。炭素環式リング系の中で、特にベンゼン及びナフタレン系を挙げることができる。
【0044】
一般式(5)におけるハロゲン原子としては、塩素、臭素及びヨウ素原子が好ましく、塩素が特に好ましい。
【0045】
【化25】

【0046】
一般式(6)及び(7)中、X1及びX2は、各々独立に、−O−又は−NR7−を表す。R1及びR4は、各々独立に、−H又は−CH3を表す。R2及びR5は、各々独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基を表す。R3は、−H、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R6は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R7は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。
【0047】
【化26】

【0048】
一般式(8)中、A1は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。B1は、フェニレン基、置換フェニレン基を表す。B2は、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。B3は、2価の有機基を表す。X1及びX2は、各々独立に、−CO−、又は−SO2−を表す。Yは、−CO−R1又は−SO2−R1を表し、R1はアルキル基、置換アルキル基、芳香族基又は置換芳香族基を表す。m及びjは0又は1を表す。
【0049】
以下に、一般式(1)〜一般式(8)で表される構造単位として用いられる共重合モノマーの具体例(A−1〜A−16、B−1〜B−6、C−1〜C−15,D−1〜D−6、E−1〜E−15、F−1〜F−13、G−1〜G−3、H−1〜H−2,J−1〜J−2)を示すが、これに限定されるものではない。なお、これらの共重合モノマーは、特開平7−333839号、特開平8−339080号、特公昭52−28401号、特開平4−212961号、特開平2−866号、特開平8−286369号の各公報に記載の方法により合成した。
【0050】
【化27】

【0051】
【化28】

【0052】
【化29】

【0053】
【化30】

【0054】
【化31】

【0055】
【化32】

【0056】
【化33】

【0057】
【化34】

【0058】
【化35】

【0059】
【化36】

【0060】
【化37】

【0061】
上記特定の酸基を有する構造単位は、特定のバインダーポリマー中に、一種単独で含まれていてもよいし、二種以上が含まれていてもよい。
【0062】
<ラジカル付加重合可能な基を有する構成単位>
本発明における特定のバインダーポリマーに含まれる、ラジカル付加重合可能な基を有する構成単位としては、下記一般式(9)〜一般式(11)で表される構造単位が好ましい。
【0063】
【化38】

【0064】
一般式(9)〜(11)中、A1、A2及びA3は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、−N(R21)−を表し、R21は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。G1、G2及びG3は、各々独立に、2価の有機基を表す。X及びZは、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、−N(R22)−を表し、R22は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Yは、酸素原子、硫黄原子、置換基を有していてもよいフェニレン基、−N(R23)−を表し、R23は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R1〜R20は、各々独立に、1価の有機基を表す。
【0065】
一般式(9)について詳しく説明する。
一般式(9)において、R1〜R3は、各々独立に、1価の有機基を表すが、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、R1、R2としては水素原子が好ましく、R3としては水素原子、メチル基が好ましい。
【0066】
一般式(9)において、R4〜R6は、各々独立に、1価の有機基を表すが、R4としては、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。また、R5及びR6は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有しもよいアリール基が好ましい。
ここで、導入しうる置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピオキシカルボニル基、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられる。
【0067】
一般式(9)において、A1は、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R21)−を表し、R21は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R22)−を表し、R22は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0068】
一般式(9)において、G1は、2価の有機基を表すが、置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜20の置換基を有してもよいアルキル基、炭素数3〜20の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有してもよい芳香族基などが挙げられ、なかでも、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状あるいは分岐アルキル基、炭素数3〜10の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換基を有してもよい芳香族基が強度、現像性等の性能上、好ましい。
【0069】
ここで、G1における置換基としては、水素原子がヘテロ原子に結合した基、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基を含まないものが好ましい。このような水素原子がヘテロ原子に結合した基を連結基部分に有したものと、後述する開始剤としてオニウム塩化合物を併用すると保存安定性が劣化する。
【0070】
一般式(10)について詳しく説明する。
一般式(10)において、R7〜R9はそれぞれ独立に、1価の有機基を表すが、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、R7、R8としては、水素原子が好ましく、R9としては、水素原子、メチル基が好ましい。
一般式(10)において、R10〜R12は、各々独立に、1価の有機基を表すが、該有機基としては、具体的には例えば、水素原子、ハロゲン原子、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
ここで、導入可能な置換基としては、一般式(9)において挙げたものが同様に例示される。
【0071】
一般式(10)において、A2は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R21)を表し、R21は、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。
一般式(10)において、G2は、2価の有機基を表すが、置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。好ましくは、炭素数1〜20の置換基を有してもよいアルキル基、炭素数3〜20の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有してもよい芳香族基などが挙げられ、なかでも、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状あるいは分岐アルキル基、炭素数3〜10の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換基を有してもよい芳香族基が強度、現像性等の性能上、好ましい。
ここで、G2における置換基としては、水素原子がヘテロ原子に結合した基、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基を含まないものが好ましい。このような水素原子がヘテロ原子に結合した基を連結基部分に有したものと、後述する開始剤としてオニウム塩化合物を併用すると保存安定性が劣化する。
【0072】
一般式(10)において、Yは、酸素原子、硫黄原子、−N(R23)−、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表し、R23は、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。
【0073】
一般式(11)について詳しく説明する。
一般式(11)において、R13〜R15は、各々独立に、1価の有機基を表すが、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、R13及びR15としては、水素原子が好ましく、R15としては、水素原子、メチル基が好ましい。
一般式(11)において、R16〜R20は、各々独立に、1価の有機基を表すが、R16〜R20は、例えば、水素原子、ハロゲン原子、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。導入しうる置換基としては、一般式(9)においてあげたものが例示される。A3、Zは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R21)−を表す。R21としては、一般式(9)におけるR21と同様のものが挙げられる。
【0074】
一般式(11)において、G3は、2価の有機基を表すが、置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。好ましくは、炭素数1〜20の置換基を有してもよいアルキル基、炭素数3〜20の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有してもよい芳香族基などが挙げられ、なかでも、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状あるいは分岐アルキル基、炭素数3〜10の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換基を有してもよい芳香族基が強度、現像性等の性能上、好ましい。
ここで、G3における置換基としては、水素原子がヘテロ原子に結合した基、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基を含まないものが好ましい。このような水素原子がヘテロ原子に結合した基を連絡基部分に有したものと、後述する開始剤としてオニウム塩化合物を併用すると保存安定性が劣化する。
【0075】
上述したラジカル付加重合可能な基を有する構造単位は、特定のバインダーポリマー中に、一種単独で含まれていてもよいし、二種以上が含まれていてもよい。
【0076】
また、特定のバインダーポリマー中における、特定の酸基を有する構造単位は、含有比で5〜70モル%が好ましく、10〜60モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。前記ラジカル付加重合可能な基を有する構造単位は、含有比で5〜95モル%が好ましく、20〜80モル%より好ましく、30〜70モル%がさらに好ましい。
【0077】
<その他>
本発明における特定のバインダーポリマーは、上述した、特定の酸基を有する構造単位、及び、ラジカル付加重合可能な基を有する構造単位として挙げらもの以外に、他のラジカル重合性化合物を、共重合成分として含んでいてもよい。該他のラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0078】
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数としては1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類(具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルへキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど);アリールアクリレート(例ば、フェニルアクリレートなど);
【0079】
アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子としては、1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレー卜、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、
【0080】
スチレン、アルキルスチレン等のスチレン類(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロへキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲンスチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0081】
これらは特定のバインダーポリマー中に、一種単独で含まれていてもよいし、二種以上が含まれていてもよい。
また、特定のバインダーポリマー中に、上記他のラジカル重合性化合物が共重合成分として含まれる場合、その含有比としては、10〜90モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましい。
【0082】
本発明における特定のバインダーポリマーは、重量平均分子量で、好ましくは2000〜100万の範囲であり、より好ましくは1万〜50万の範囲であり、さらに好ましくは2万〜20万の範囲である。重量平均分子量が小さすぎると硬化膜強度が不足し、大きすぎると現像性が低下する傾向がある。
また、本発明における特定のバインダーポリマー中には、未反応の単量体を含んでいてもよい。この場合、該単量体の特定のバインダーポリマー中に占める割合は、15質量%以下が望ましい。
【0083】
本発明の重合性組成物における特定のバインダーポリマー((A)成分)は、これを平版印刷版原版の記録層に用いる場合も同様に、全固形分中、5〜95質量%が好ましく、40〜90質量%がより好ましい。含有量が少なすぎる場合には、記録層の強度が不足し、耐刷性が低下する傾向があり、多すぎると画像形成性に影響を与え、画質が低下する可能性があり、いずれ好ましくない。
【0084】
以下に、上記特定のバインダーポリマーの代表的な合成例と、具体的な高分子化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の合成例は、特開2002−062648号公報に記載の方法に従ったものである。
【0085】
(合成例1) 高分子化合物(1)の合成
コンデンサー、撹拌機を取り付けた500mL三口フラスコに、ジメチルアセトアミド240mLを入れ、70℃に加熱した。窒素気流下、ラジカル付加重合可能な基を有する構造単位の前駆体モノマー(下記化合物M−1)33.9g、メチルメタクリレート20.5g、前記例示化合物(A−8)36.3g、V−65(和光純薬製)0.690gのジメチルアセトアミド240mL溶液を2時間半かけて滴下させた。さらに、70℃で2時間反応させた。反応混液を0℃に冷却した後、撹拌しながら、トリエチルアミン38.9gを滴下し、徐々に室温まで昇温させながら、15時間反応させた。反応混液を0℃に冷却した後、撹拌しながら、3M HClを反応混液のpHが6以下になるまで滴下した。反応液を水5.5L中に投じ、重合体を析出させた。これを、濾取、洗浄、乾燥し、高分子化合物(1)を85.2g得た。NMRスペクトルより、(M−1)由来の基がすべてアクリル基に変換されたことが確認された。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、105,000であった。
【0086】
【化39】

【0087】
(合成例2) 高分子化合物(4)の合成
コンデンサー、撹拌機を取り付けた2000mL三口フラスコに、ジメチルアセトアミド750gを入れ、70℃に加熱した。窒素気流下、アリルメタクリレート32.2g、前記例示化合物(E−7)74.3g、メチルメタクリレート4.2g、V−59(和光純薬製)0.679gのジメチルアセトアミド750g溶液を2時間半かけて滴下させた。さらに、70℃で2時間反応させた。室温まで冷却した後に、水4L中に投じ、重合体を析出させた。これを、濾取、洗浄、乾燥し、高分子化合物(4)を100g得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、115,000であった。
【0088】
(合成例3〜18) 高分子化合物(2)、(3)、(5)〜(18)の合成
合成例1及び合成例2と同様にして、仕込みモノマー種、組成比を変えて、高分子化合物(2)、(3)、(5)〜(18)を合成した。これらの重合体の重量平均分子量を、合成例1、2と同じ方法で測定した。
上記合成法により得られた高分子化合物(特定のバインダーポリマー)を、下記表1〜4に、その構成単位の構造、重合モル比で示し、さらに測定した重量平均分子量を併記する(高分子化合物1〜高分子化合物18)。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
〔(B)光又は熱によりラジカルを生成する化合物〕
本発明においては、(B)光又は熱によりラジカルを生成する化合物(重合開始剤)を添加する必要がある。
本発明における(B)光又は熱によりラジカルを生成する化合物とは、光及び/又は熱のエネルギーによってラジカルを発生し、前記したラジカル重合性化合物の重合反応を開始させ、さらに、その化合物の反応機構によっては、重合反応の進行を促進させる化合物を指す。
【0094】
上記(B)成分として好ましくは、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(k)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
(a)芳香族ケトン類
前記(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格あるいはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、下記化合物が挙げられる。
【0096】
【化40】

【0097】
中でも、特に好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0098】
【化41】

【0099】
特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0100】
【化42】

【0101】
特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0102】
【化43】

【0103】
特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報に記載のベンゾインエーテル類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0104】
【化44】

【0105】
特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号明細書、ヨーロッパ特許0284561A1号明細書に記載のα−アミノベンゾフェノン類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0106】
【化45】

【0107】
特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0108】
【化46】

【0109】
特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0110】
【化47】

【0111】
特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0112】
【化48】

【0113】
特公平2−9596号公報に記載のアシルホスフィン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0114】
【化49】

【0115】
また、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報に記載のクマリン類等を挙げることもできる。
【0116】
(b)オニウム塩化合物
前記(b)オニウム塩化合物としては、下記一般式(12)〜(14)で表される化合物が挙げられる。
【0117】
【化50】

【0118】
一般式(12)中、Ar1とAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z2-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、カルボン酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0119】
一般式(13)中、Ar3は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基、又は炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z3-は、一般式(12)中の(Z2-と同義の対イオンを表す。
【0120】
一般式(14)中、R23、R24及びR25は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z4-は一般式(12)中の(Z2-と同義の対イオンを表す。
【0121】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、本願出願人が先に提案した特願平11−310623号明細書の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものや特願2000−160323号明細書の段落番号[0015]〜[0046]に記載されたものを挙げることができる。
【0122】
本発明において用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、さらに360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0123】
(c)有機過酸化物
前記(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリイブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリイブチルパーオキサイド、ターシャリイブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリイブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリイブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリイブチルパーオキシアセテート、ターシャリイブチルパーオキシピバレート、ターシャリイブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリイブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリイブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリイブチルパーオキシラウレート、ターシャリーカーボネート、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0124】
中でも、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0125】
(d)チオ化合物
前記(d)チオ化合物としては、下記一般式(15)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
【0126】
【化51】

【0127】
一般式(15)中、R26はアルキル基、アリール基又は置換アリール基を示し、R27は水素原子又はアルキル基を示す。また、R26とR27は、互いに結合して酸素、硫黄及び窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。
上記一般式(15)におけるアルキル基としては、炭素原子数1〜4個のものが好ましい。またアリール基としてはフェニル、ナフチルのような炭素原子数6〜10個のものが好ましく、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に塩素原子のようなハロゲン原子、メチル基のようなアルキル基、メトシキ基、エトキシ基のようなアルコキシ基で置換されたものが含まれる。R27は、好ましくは炭素原子数1〜4個のアルキル基である。一般式(15)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記表5に示すような化合物が挙げられる。
【0128】
【表5】

【0129】
(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
前記(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0130】
(f)ケトオキシムエステル化合物
前記(f)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0131】
(g)ボレート化合物
前記(g)ボレート化合物の例としては、下記一般式(16)で表される化合物を挙げることができる。
【0132】
【化52】

【0133】
一般式(16)中、R28、R29、R30及びR31は互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、又は置換もしくは非置換の複素環基を示し、R28、R29、R30及びR31はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R28、R29、R30及びR31のうち、少なくとも1つは置換もしくは非置換のアルキル基である。(Z5+はアルカリ金属カチオン又は第4級アンモニウムカチオンを示す。
上記R28〜R31のアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくはフェニル基)、ヒドロキシ基、−COOR32(ここでR32は水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、−OCOR33又は−OR34(ここでR33、R34は炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、及び下記式で表されるものを置換基として有するものが含まれる。
【0134】
【化53】

【0135】
ここでR35、R36は独立して水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す。
上記R28〜R31のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの1〜3環のアリール基が含まれ、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に前述の置換アルキル基の置換基又は、炭素数1〜14のアルキル基を有するものが含まれる。上記R28〜R31のアルケニル基としては、炭素数2〜18の直鎖、分枝、環状のものが含まれ。置換アルケニル基の置換基としては、前記の置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。上記R28〜R31のアルキニル基としては、炭素数2〜28の直鎖又は分枝のものが含まれ、置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。また、上記R28〜R31の複素環基としてはN、S及びOの少なくとも1つを含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられ、この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。更に置換基として前述の置換アリール基の置換基として挙げたものを有していてもよい。一般式(16)で示される化合物例としては具体的には米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号の各明細書に記載されている化合物及び以下に示すものが挙げられる。
【0136】
【化54】

【0137】
(h)アジニウム化合物
前記(h)アジニウム塩化合物としては、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、特開昭63−143537号公報、及び特公昭46−42363号公報記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0138】
(i)メタロセン化合物
前記(i)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報に記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報に記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
【0139】
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン、
【0140】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−エチルヘキシル)−4−トリル−スルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−オキサヘプチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロアセチルアミノ)フェニル〕チタン、
【0141】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,7−ジメチル−7−メトキシオクチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、等を挙げることができる。
【0142】
(j)活性エステル化合物
前記(j)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223号公報に記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号公報、特開昭59−174831号公報に記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
【0143】
(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物
前記(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(17)から一般式(23)のものを挙げることができる。
【0144】
【化55】

【0145】
一般式(17)中、X2はハロゲン原子を表し、Y1は−C(X23、−NH2、−NHR38、−NR38、−OR38を表す。ここでR38はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。またR37は−C(X23、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基、を表す。
【0146】
【化56】

【0147】
一般式(18)中、R39は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基又はシアノ基であり、X3はハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。
【0148】
【化57】

【0149】
一般式(19)中、R40は、アリール基又は置換アリール基であり、R41は、以下に示す基又はハロゲン原子であり、Z5は−C(=O)−、−C(=S)−又は−SO2−である。X3はハロゲン原子であり、mは1又は2である。
【0150】
【化58】

【0151】
上記R42、R43は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基又は置換アリール基であり、R44は一般式(17)中のR38と同じである。
【0152】
【化59】

【0153】
一般式(20)中、R45は置換されていてもよいアリール基又は複素環式基であり、R46は炭素原子1〜3個を有するトリハロアルキル基又はトリハロアルケニル基であり、pは1、2又は3である。
【0154】
【化60】

【0155】
一般式(21)は、トリハロゲノメチル基を有するカルボニルメチレン複素環式化合物であり、式中、L7は水素原子又は式:CO−(R47)q(C(X43)rの置換基であり、Q2はイオウ、セレン又は酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1,2−フェニレン基又はN−R基であり、M4は置換又は非置換のアルキレン基又はアルケニレン基であるか、又は1,2−アリーレン基であり、R48はアルキル基、アラルキル基又はアルコキシアルキル基であり、R47は炭素環式又は複素環式の2価の芳香族基であり、X4は塩素、臭素又はヨウ素原子であり、q=0及びr=1であるか又はq=1及びr=1又は2である。)で表わされる。
【0156】
【化61】

【0157】
一般式(22)は、4−ハロゲノ−5−(ハロゲノメチル−フェニル)−オキサゾール誘導体であり、式中、X5はハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、R49は水素原子又はCH3-t5t基であり、R50はs価の置換されていてもよい不飽和有機基を表す。
【0158】
【化62】

【0159】
一般式(23)は、2−(ハロゲノメチル−フェニル)−4−ハロゲノ−オキサゾール誘導体であり、式中、X6はハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、R51は水素原子又はCH3-v6v基であり、R52はu価の置換されていてもよい不飽和有機基を表す。
【0160】
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、たとえば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2′,4′−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、たとえば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号公報記載の化合物、たとえば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0161】
【化63】

【0162】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、たとえば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。さらに特開昭62−58241号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0163】
【化64】

【0164】
更に、特開平5−281728号公報記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0165】
【化65】

【0166】
あるいは、さらにM.P.Hutt、E.F.Elslager及びL.M.Herbel著「Journalof Heterocyclic chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる次のような化合物群、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0167】
【化66】

【0168】
本発明における重合開始剤のさらにより好ましい例としては、上述の(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)メタロセン化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、を挙げることができ、さらに最も好ましい例としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、チタノセン化合物、一般式(17)で表されるトリハロメチル−S−トリアジン化合物を挙げることができる。
【0169】
本発明の重合性組成物における(B)成分は、これを平版印刷版原版の記録層に用いる場合も同様に、全固形分中、0.1〜50質量%含有されることが好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。
また、本発明における(B)成分は、単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0170】
〔(C)ラジカル重合性化合物〕
本発明においては、感度、画像形成性を向上させる目的で、前記(A)及び(B)成分と共に、(C)ラジカル重合性化合物を併用する。
ここで、(C)ラジカル重合性化合物としては、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0171】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0172】
また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0173】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0174】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0175】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0176】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0177】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0178】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0179】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0180】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0181】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報に記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0182】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(24)で示されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0183】
CH2=C(R34)COOCH2CH(R35)OH 一般式(24)
一般式(24)中、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。
【0184】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
さらに、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いてもよい。
【0185】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0186】
本発明において、(C)ラジカル重合性化合物は、単独で用いても2種以上併用してもよい。これらのラジカル重合性化合物について、どの様な構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。
【0187】
本発明における(C)ラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、(C)ラジカル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80質量%、好ましくは20〜75質量%である。
本発明において、前記(A)特定のバインダーポリマーと、(C)ラジカル重合性化合物とを併用する場合、(A)成分と(C)成分の比率は、質量比で、1:0.05〜1:3の範囲が好ましく、1:0.1〜1:2の範囲がより好ましく、1:0.3〜1:1.5の範囲がさらに好ましい。
【0188】
上記(C)ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面接着性等の観点から、適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
【0189】
〔(D)増感色素〕
本発明においては、所定の波長の光を吸収する増感色素を添加することが好ましい。この増感色素が吸収し得る波長の露光により上記(B)成分のラジカル発生反応や、それによる上記したラジカル重合性の化合物における重合反応が促進されるものである。このような増感色素としては、公知の分光増感色素、又は光を吸収して光重合開始剤と相互作用する染料又は顔料が挙げられる。この増感色素の吸収する光の波長により、重合性組成物は、紫外線から可視光線及び赤外線まで種々の波長に感応する組成物となる。
【0190】
<分光増感色素又は染料>
本発明に用いられる増感色素として好ましい分光増感色素又は染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体(例えば、下記化合物)、アントラキノン類、例えば(アントラキノン)、スクアリウム類、例えば(スクアリウム)、等が挙げられる。
【0191】
【化67】

【0192】
より好ましい分光増感色素又は染料の例を以下に例示する。
特公平37−13034号公報に記載のスチリル系色素。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0193】
【化68】

【0194】
特開昭62−143044号公報に記載の陽イオン染料。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0195】
【化69】

【0196】
特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0197】
【化70】

【0198】
特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0199】
【化71】

【0200】
特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0201】
【化72】

【0202】
特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンテン染料、特開平2−226148号公報及び特開平2−226149号公報記載のアクリジン類。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0203】
【化73】

【0204】
特公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0205】
【化74】

【0206】
特公昭46−42363号公報記載のシアニン類。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0207】
【化75】

【0208】
特開平2−63053号記載のベンゾフラン色素。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0209】
【化76】

【0210】
特開平2−85858号公報、特開平2−216154号公報の共役ケトン色素。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0211】
【化77】

【0212】
特開昭57−10605号公報記載の色素、特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0213】
【化78】

【0214】
特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0215】
【化79】

【0216】
特開昭62−31844号公報、特開昭62−31848号公報、特開昭62−143043号公報記載のキサンテン系色素。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0217】
【化80】

【0218】
特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0219】
【化81】

【0220】
特開平2−179643号公報記載の以下の一般式(25)〜一般式(27)で表される色素。
【0221】
【化82】

【0222】
一般式(25)〜(27)中、A3は、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、テルル原子、アルキル又はアリール置換された窒素原子又はジアルキル置換された炭素原子を表し、Y2は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アシル基、又は置換アルコキシカルボニル基を表し、R53、R54は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、もしくは置換基として、−OR55、−(CH2CH2O)w−R55、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、及び下記式で表される基を有する炭素数1〜18の置換アルキル基(但し、R55は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、B1は、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。wは0〜4の整数を表す。
【0223】
【化83】

【0224】
特開平2−244050号公報記載の以下の一般式(28)で表されるメロシアニン色素。
【0225】
【化84】

【0226】
一般式(28)中、R56及びR57は各々独立して水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、置換アリール基又はアラルキル基を表す。A4は、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、テルル原子、アルキルないしはアリール置換された窒素原子、又はジアルキル置換された炭素原子を表す。X7は含窒素ヘテロ五員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Y3は置換フェニル基、無置換ないし置換された多核芳香環、又は無置換ないしは置換されたヘテロ芳香環を表す。Z7は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、置換アミノ基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基を表しし、Y3と互いに結合して環を形成していてもよい。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0227】
【化85】

【0228】
特公昭59−28326号公報記載の以下の一般式(29)で表されるメロシアニン色素。
【0229】
【化86】

【0230】
一般式(29)中、R58及びR59はそれぞれ水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基又はアラルキル基を表わし、それらは互いに等しくても異ってもよい。X8はハメット(Hammett)のシグマ(σ)値が−0.9から+0.5までの範囲内の置換基を表す。
【0231】
特開昭59−89303号公報記載の以下の一般式(30)で表されるメロシアニン色素。
【0232】
【化87】

【0233】
一般式(30)中、R60及びR61は、各々独立して水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基又はアラルキル基を表す。X9はハメット(Hammett)のシグマ(σ)値が−0.9から+0.5までの範囲内の置換基を表す。Y3は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。好ましい具体例としては、下記に示す化合物が挙げられる。
【0234】
【化88】

【0235】
特願平6−269047号公報記載の以下の一般式(31)で表されるメロシアニン色素。
【0236】
【化89】

【0237】
一般式(31)中、R62、R63、R64、R65、R70、R71、R72及びR73は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル基、スルホ基、スルホナト基、置換スルフィニル基、置換スルホニル基、ホスフォノ基、置換ホスフォノ基、ホスフォナト基、置換ホスフォナト基、シアノ基、ニトロ基を表すか、もしくは、R62とR63、R63とR64、R64とR65、R70とR71、R71とR72、R72とR73が互いに結合して脂肪族又は芳香族環を形成していてもよく、R66は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、又は置換アリール基を表し、R67は置換、又は無置換のアルケニルアルキル基、又は置換もしくは無置換のアルキニルアルキル基を表し、R68、R69はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換カルボニル基を表す。好ましい具体例としては、下記で示す化合物が挙げられる。
【0238】
【化90】

【0239】
特願平7−164583号記載の下記一般式(32)で表されるベンゾピラン系色素。
【0240】
【化91】

【0241】
一般式(32)中、R74〜R77は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアミノ基を表す。またR74〜R77はそれらが各々結合できる炭素原子と共に非金属原子から成る環を形成していてもよい。R78は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ芳香族基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基又はアルケニル基を表す。R79は、R78で表される基、又は−Z7−R78であり、Z7はカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基又はアリーレンジカルボニル基を表す。また、R78及びR79は共に非金属原子から成る環を形成してもよい。A5は、O原子、S原子、NH又は置換基を有するN原子を表す。B2は、O原子、又は=C(G7)(G8)の基を表す。G7、G8は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アリールカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はフルオロスルホニル基を表す。但し、G7、G8は、同時に水素原子となることはない。また、G7及びG8は、炭素原子と共に非金属原子からなる環を形成していてもよい。
【0242】
その他、増感色素として特に以下の赤外線吸収剤(染料又は顔料)も好適に使用される。好ましい前記染料としては、例えば、特開昭58−125246号公報、特開昭59−84356号公報、特開昭59−202829号公報、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0243】
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、さらに、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)公報に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、同58−220143号公報、同59−41363号公報、同59−84248号公報、同59−84249号公報、同59−146063号公報、同59−146061号公報に記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や、特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に記載されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0244】
また、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料、EP916513A2号明細書に記載のフタロシアニン系染料も好ましい染料として挙げることができる。
【0245】
さらに、特願平10−79912号公報に記載のアニオン性赤外線吸収剤も、好適に使用することができる。アニオン性赤外線吸収剤とは、実質的に赤外線を吸収する色素の母核にカチオン構造がなく、アニオン構造を有するものを示す。例えば、(イ)アニオン性金属錯体、(ロ)アニオン性カーボンブラック、(ハ)アニオン性フタロシアニン、さらに(ニ)下記一般式(33)で表される化合物などが挙げられる。これらのアニオン性赤外線吸収剤の対カチオンは、プロトンを含む一価の陽イオン、あるいは多価の陽イオンである。
【0246】
【化92】

【0247】
ここで、(イ)アニオン性金属錯体とは、実質的に光を吸収する錯体部の中心金属及び配位子全体でアニオンとなるものを示す。
【0248】
(ロ)アニオン性カーボンブラックは、置換基としてスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸基等のアニオン基が結合しているカーボンブラックが挙げられる。これらの基をカーボンブラックに導入するには、カーボンブラック便覧第三版(カーボンブラック協会編、1995年4月5日、カーボンブラック協会発行)第12頁に記載されるように、所定の酸でカーボンブラックを酸化する等の手段をとればよい。
【0249】
(ハ)アニオン性フタロシアニンは、フタロシアニン骨格に、置換基として、先に(ロ)の説明において挙げたアニオン基が結合し、全体としてアニオンとなっているものを示す。
【0250】
次に、前記(ニ)一般式(33)で表される化合物、について、詳細に説明する。前記一般式(33)中、G9はアニオン性置換基を表し、G10は中性の置換基を表す。(X10+は、プロトンを含む1〜m価のカチオンを表し、mは1ないし6の整数を表す。M5は共役鎖を表し、この共役鎖M5は置換基や環構造を有していてもよい。共役鎖M5は、下記式で表すことができる。
【0251】
【化93】

【0252】
式中、R80、R81、R82はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基を表し、これらは互いに連結して環構造を形成していてもよい。nは、1〜8の整数を表す。
【0253】
前記一般式(33)で表されるアニオン性赤外線吸収剤のうち、以下のIRA−1〜IRA−5のものが、好ましく用いられる。
【0254】
【化94】

【0255】
また、以下のIRC−1〜IRC−44に示すカチオン性赤外線吸収剤も好ましく使用できる。
【0256】
【化95】

【0257】
【化96】

【0258】
【化97】

【0259】
【化98】

【0260】
【化99】

【0261】
【化100】

【0262】
【化101】

【0263】
【化102】

【0264】
【化103】

【0265】
前記構造式中、T-は、1価の対アニオンを表し、好ましくは、ハロゲンアニオン(F−,Cl−、Br−、I−)、ルイス酸アニオン(BF4−、PF6−、SbCl6−、ClO4−)、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオンである。
【0266】
前記アルキルスルホン酸のアルキルとは、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0267】
また、前記アリールスルホン酸のアリールとは、1個のベンゼン環からなるもの、2又は3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを表し、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0268】
また、以下のIRN−1〜IRN−9に示す非イオン性赤外線吸収剤も好ましく使用できる。
【0269】
【化104】

【0270】
【化105】

【0271】
【化106】

【0272】
前記例示化合物中、特に好ましいアニオン性赤外線吸収剤としてはIRA−1が、カチオン性赤外線吸収剤としてはIRC−7、IRC−30、IRC−40、及びIRC−42が、非イオン性赤外線吸収剤としてはIRN−9が挙げられる。
【0273】
<顔料>
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0274】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0275】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0276】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また10μmを越えると記録層の均一性の点で好ましくない。
【0277】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0278】
なお、本発明の重合性組成物の硬化反応を促進するために添加される増感色素は重合性組成物中に他の成分とともに直接添加してもよいが、これに隣接する別の層を設けて、そこへ添加しても同様の効果を得ることもできる。
特に、本発明の重合性組成物を後述する平版印刷版原版のネガ型記録層に使用する場合、該記録層と同一の層に添加してもよいし、別の層を設け、そこへ添加してもよいが、ネガ型平版印刷版原版を作製した際に、感光層(記録層)の波長300nm〜1200nmの範囲における吸収極大での光学濃度が、0.1〜3.0の間にあることが好ましい。この範囲をはずれた場合、感度が低くなる傾向がある。光学濃度は前記増感色素の添加量と記録層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。
記録層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの記録層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に記録層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0279】
(その他の成分)
本発明の重合性組成物には、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を、画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
【0280】
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、記録層塗布液全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合が好ましい。
【0281】
また、本発明においては、画像形成材料の調製中あるいは保存中において、ラジカル重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が好ましい。
【0282】
また、本発明の重合性組成物は、主として平版印刷版原版の記録層を形成するために用いられるが、そのような記録層の現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0283】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0284】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の記録層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0285】
さらに、本発明に係る記録層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0286】
本発明に用いる平版印刷版原版を製造するには、通常、記録層の構成成分を塗布液に必要な各成分とともにを溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布すればよい。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0287】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、記録層の皮膜特性は低下する。
【0288】
本発明における記録層塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全感光層(記録層)の材料固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0289】
本発明に用いる平版印刷版原版においては、バインダー成分として、速やかに硬化して強固な塗膜を形成することができ、更に外部からの酸素遮断性が高い、前記特定のバインダーポリマーを用いており、酸素などの重合阻害による画像形成性の低下を抑制しうるという利点を有しているため、ネガ型の重合性記録層を有する平版印刷版原版に通常備えられる保護層を特に備える必要はないが、さらに外部からの酸素遮断性を高め、画像形成性、特に、画像強度を高める目的で、酸素等の低分子化合物の透過性が低く、露光後の現像工程で容易に除去できる、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いる保護層を備えてもよい。
【0290】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版における支持体としては、寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。これらは、樹脂フィルムや金属板などの単一成分のシートであっても、2以上の材料の積層体であってもよく、例えば、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙やプラスチックフィルム、異種のプラスチックフィルム同志の積層シート等が含まれる。
【0291】
前記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
前記アルミニウム板の厚みは、およそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.15〜0.4mm、特に好ましくは0.2〜0.3mmである。
【0292】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
このように粗面化されたアルミニウム板は、所望により、アルカリエッチング処理、中和処理を経て、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施すことができる。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0293】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2 以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2 の範囲である。陽極酸化被膜が1.0g/m2 未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
尚、このような陽極酸化処理は平板印刷版の支持体の印刷に用いる面に施されるが、電気力線の裏回りにより、裏面にも0.01〜3g/m2 の陽極酸化被膜が形成されるのが一般的である。
【0294】
支持体表面の親水化処理は、上記陽極酸化処理の後に施されるものであり、従来より知られている処理法が用いられる。このような親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号公報に開示されているようなアルカリ金属珪酸塩(例えば、珪酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号公報に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
これらの中で、本発明において特に好ましい親水化処理は珪酸塩処理である。珪酸塩処理について、以下に説明する。
【0295】
上述の如き処理を施したアルミニウム板の陽極酸化皮膜を、アルカリ金属珪酸塩が0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%であり、25℃でのpHが10〜13である水溶液に、例えば15〜80℃で0.5〜120秒浸漬する。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHが10より低いと液はゲル化し13.0より高いと酸化皮膜が溶解されてしまう。本発明に用いられるアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩もしくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩として、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、蓚酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩もしくは、第IVB族金属塩は単独又は2以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。
珪酸塩処理により、アルミニウム板表面上の親水性が一層改善されるため、印刷の際、インクが非画像部に付着しにくくなり、汚れ性能が向上する。
【0296】
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0297】
(保護層)
本発明に用いる平版印刷版原版が、走査露光用平版印刷版原版の場合には、通常露光を大気中で行うため、記録層の上に、さらに、保護層を設けることができる。保護層は、記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する塩基性物質等の低分子化合物の記録層への混入を防止し、大気中での露光を可能とする。従って、このような保護層に望まれる特性は、低分子化合物の透過性が低いことであり、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
【0298】
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては例えば、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られているが、これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100モル%加水分解され、分子量が重量平均分子量で300から2400の範囲のものを挙げることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0299】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、低分子物質遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程低分子物質遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に低分子物質遮断性を高めると、製造時、生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の重合層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすい。これに対し、これら2層間の接着性を改良すべく種々の提案がなされている。例えば、特開昭49−70702号公報(米国特許出願第292501号明細書)、英国特許出願公開第1303578A号明細書(米国特許出願第44563号明細書)には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、重合層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0300】
さらに保護層には他の機能を付与することもできる。例えば、光源としてレーザー光を使用する場合、感光性組成物としてはその光源波長での感光性には優れるが、他の波長では感光してほしくない場合がある。例えば、光源が750nm以上の赤外領域のものであれば、実質上明室で使用することができるが、実際には蛍光灯の光など短波の光でも感光する場合がある。その場合には、光源の光透過性に優れ、かつ700nm未満の波長光を効率良く吸収しうる着色剤(水溶性染料等)の添加が好ましい。また、別の例として光源が450nm以下の紫外領域のものであれば、実質上セーフライト下で使用することができる。しかし実際には、500nm以上の可視光により感光する場合がある。その場合には、光源の光透過性に優れ、かつ500nm以上の光を効率良く吸収しうる、着色剤(水溶性染料等)の添加により、感度低下を起こすことなく、セーフライト適性をさらに高めることができる。
【0301】
以上のようにして、本発明に用いる平版印刷版原版を作製することができる。この平版印刷版原版は、紫外線ランプ、可視光レーザ、赤外線レーザで記録できる。平版印刷版原版は、波長300nm〜1200nmの紫外〜赤外の領域で活性照射線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光することができる。本発明の平版印刷版の作製方法においては、平版印刷版原版を450nm以下の波長のレーザ光を用いて露光する。
【0302】
本発明における好ましいレーザとしては以下のものが挙げられる。
ガスレーザとして、Arイオンレーザ(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザ(356nm,351nm,10mW〜1W)、He−Cdレーザ(441nm,325nm,1mW〜100mW)、固体レーザーとして、Nd:YAG(YVO4)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm、5mW〜1W)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm,10mW)、
半導体レーザ系として、KNbO3、リング共振器(430nm,30mW)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm、5mW〜100mW)、AlGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)、
その他、パルスレーザとして、N2レーザ(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)が挙げられる。
【0303】
これらの中でも、特にAlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm、5〜30mW)が、波長特性、コストの面で好適である。
【0304】
その他、450nm〜700nmの入手可能な光源としては、Ar+レーザ(488nm)、YAG−SHGレーザ(532nm)、He−Neレーザ(633nm)、He―Cdレーザ、赤色半導体レーザ(650〜690nm)、及び700nm〜1200nmの入手可能な光源としては半導体レーザ(800〜850nm)、Nd−YAGレーザ(1064nm)が好適に利用できる。
【0305】
その他、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、紫外のレーザランプ(ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザーなど)、放射線としては電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線なども利用できるが、安価な点で上述の350nm以上のレーザー光源(好ましくは1200nm以下)が特に好ましい。
【0306】
本発明における重合性組成物を記録層に含有する平版印刷版原版は、700nm〜1200nmの領域で活性照射線を放射する固体レーザ又は半導体レーザによる画像露光にも好適に用いられる。その理由としては、700nm〜1200nmの領域で活性照射線を放射する固体レーザ又は半導体レーザでの画像露光では、記録層下部での硬化が充分に進行しない場合があるが、かかる場合であっても、本発明における特定の酸基の効果が顕著に現れることにより、優れた耐刷性が発揮されるためである。
【0307】
露光後、本発明における記録層は、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液にて現像される。
【0308】
本発明において、現像液として、アルカリ性水溶液を用いる場合、該現像液及び補充液としては、従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0309】
さらに、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液と同じもの、又は、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0310】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。好ましい有機溶剤としてはベンジルアルコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール若しくはその誘導体、又はポリプロピレングリコール若しくはその誘導体等の添加も好ましい。また、アラビット、ソルビット、マンニット等の非還元糖を添加することもできる。
【0311】
さらに、現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸又は亜硫酸水素酸のナトリウム塩及びカリウム塩等の無機塩系還元剤、さらに有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0312】
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された平版印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明における画像形成材料を記録層として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0313】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度をセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0314】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号公報、同55−28062号公報、特開昭62−31859号公報、同61−159655号公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
【0315】
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に、印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布等が適用される。また、塗布した後でスキージ又はスキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
整面液の塗布量は、一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP−1300)等で高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0316】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引き等の従来行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
【0317】
このような処理によって、本発明における平版印刷版原版より得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0318】
また、本発明の重合性化合物の用途としては走査露光用平版印刷版の他、広く、光硬化樹脂の用途として知られるものに制限なく適用できる。例えば、必要に応じカチオン重合性化合物と併用した液状の光重合性組成物に適用することで、高感度な光造形用材料が得られる。また、光重合にともなう、屈折率の変化を利用し、ホログラム材料とすることもできる。光重合に伴う、表面の粘着性の変化を利用して様々な転写材料(剥離感材、トナー現像感材等)にも応用できる。マイクロカプセルの光硬化にも適用できる。フォトレジスト等の電子材料製造、インクや塗料、接着剤等の光硬化樹脂材料にも応用できる。
【実施例】
【0319】
以下、本発明を実施例、比較例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0320】
[実施例1〜4、参考例1〜11、比較例1〜6]
(支持体の作製)
<支持体1:陽極酸化アルミニウム支持体>
厚さ0.30mmの材質1Sのアルミニウム板を8号ナイロンブラシと800メッシュのバミストンの水懸濁液を用い、その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で、水洗後、20%HNO3で中和洗浄後、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.45μm(Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、33℃、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度5A/dm2において50秒間陽極酸化したところ、厚さが2.7g/m2であった。これを支持体1とした。
【0321】
<支持体2>
支持体1に下記の表面処理用下塗り液状組成物1をSi量が約0.001g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させたものを支持体2とした。
【0322】
<下塗り用液状組成物1>
下記成分を混合撹拌し、約5分後に発熱が見られ、60分間反応させた後、内容物を別の容器に移し、メタノールをさらに3万質量部加えたものを液状組成物2とした。
【0323】
・ユニケミカル(株)ホスマーPE 20質量部
・メタノール 130質量部
・水 20質量部
・パラトルエンスルホン酸 5質量部
・テトラエトキシシラン 50質量部
・3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン 50質量部
【0324】
このように処理された基板の裏面に、下記のゾルゲール反応液をバーコーターで塗布し100℃で1分間乾燥し、乾燥後の塗布量が70mg/m2のバックコート層を設けた支持体を作製した。
【0325】
−ゾルゲール反応液−
・テトラエチルシリケート 50質量部
・水 20質量部
・メタノール 15質量部
・リン酸 0.05質量部
【0326】
上記成分を混合、撹拌すると約5分で発熱が開始した。60分間反応させた後、以下に示す液を加えることによりバックコート塗布液を調製した。
【0327】
・ピロガロールホルムアルデヒド縮合樹脂(分子量2000) 4質量部
・ジメチルフタレート 5質量部
・フッ素系界面活性剤 0.7質量部
(N−ブチルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレート/
ポリオキシエチレンアクリレート共重合体:分子量2万)
・メタノールシリカゾル(日産化学工業(株)製,メタノール30重量%)
50質量部
・メタノール 800質量部
【0328】
(感光層(記録層)の形成)
このように処理されたアルミニウム板上に、下記組成の光重合性組成物を乾燥塗布量が1.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分乾燥させ感光層(記録層)を形成した。
【0329】
(感光層用塗布液)
・アルカリ可溶性高分子:(A)成分 (表6〜8に記載の化合物、含有量)
・ラジカル重合性化合物:(C)成分 (表6〜8に記載の化合物、含有量)
・重合開始剤:(B)成分 (表6〜8に記載の化合物、含有量)
・増感色素 (表6〜8に記載の化合物、含有量)
・添加剤[S] (表6〜8に記載の化合物、含有量)
・フッ素系界面活性剤 0.03g
(メガファックF−177:大日本インキ化学工業(株)製)
・熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
・顔料分散物 2.0g
顔料分散物の組成
組成:Pigment Blue 15:6 15質量部
アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 10質量部
(共重合モル比83/17)
シクロヘキサノン 15質量部
メトキシプロピルアセテート 20質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
・メチルエチルケトン 20g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 20g
【0330】
なお、実施例に使用したアルカリ可溶性高分子は、前記合成例により得られた(A)特定のバインダーポリマーである。
比較例に使用したアルカリ可溶性高分子の構成単位(P1〜P6)、重合開始剤(B1〜B3)、増感色素(C1〜C4)、ラジカル重合性化合物、添加剤(S1〜S4)の具体例を以下に示す。
【0331】
【化107】

【0332】
【化108】

【0333】
【化109】

【0334】
【化110】

【0335】
(保護層の形成)
上述のごとく感光層を形成した後、その一部(表6〜8に示す)については、感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥することにより保護層を形成した。
以上のようにして、各平版印刷版原版を得た。
【0336】
(露光)
上記のようにして得られた各平版印刷版原版は、その露光波長に応じてそれぞれ異なる光源を利用して露光した。例えば、波長として、400nmの半導体レーザ、532nmのFD−YAGレーザ、830nmの半導体レーザを用い、大気中で露光した。
【0337】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900NPを用い、現像処理した。現像液としては、下記現像液1又は2のいずれかを用いた。現像浴の温度は30℃、現像時間を12秒で処理した。
以上のようにして、各平版印刷版を得た。
【0338】
<現像液1>
富士写真フイルム(株)製DP−4の1:8水希釈液
<現像液2>
下記組成のアルカリ水溶液
・水酸化カリウム 4g
・炭酸水素カリウム 1g
・炭酸カリウム 2.5g
・亜硫酸ナトリウム 1g
・ポリエチレングリコールモノナフチルエーテル 145g
・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム 55g
・エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩 8g
・水 750g
【0339】
(耐刷性及び汚れ性の評価)
得られた各平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性、非画像部の汚れ性を評価した。結果を表6〜8に示した。
【0340】
【表6】

【0341】
【表7】

【0342】
【表8】

【0343】
表6〜8に示すように、本発明の平版印刷版の作製方法により得られた平版印刷版は、耐刷性及び汚れ性に優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族基上に置換基を有してもよいフェノール基及び芳香族基上に置換基を有してもよいベンゼンスルホンアミド基から選択される少なくとも1種の酸解離定数(pKa)が5.5以上の酸基、及び、ラジカル付加重合可能な基を含むバインダーポリマーと、光又は熱によりラジカルを生成する化合物と、前記バインダーポリマーとは異なるラジカル重合性化合物と、を含有する重合性組成物を含む記録層を備えてなる平版印刷版原版を、450nm以下の波長のレーザ光を用いて露光した後、現像することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【請求項2】
前記バインダーポリマーが、下記一般式(9)、一般式(10)、及び一般式(11)で表される構造単位より選択される構造単位を有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版の作製方法。
【化1】

一般式(9)〜(11)中、A1、A2及びA3は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、−N(R21)−を表し、R21は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。G1、G2及びG3は、各々独立に、2価の有機基を表す。X及びZは、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、−N(R22)−を表し、R22は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Yは、酸素原子、硫黄原子、置換基を有していてもよいフェニレン基、−N(R23)−を表し、R23は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R1〜R20は、各々独立に、1価の有機基を表す。
【請求項3】
前記バインダーポリマーが含む酸解離定数5.5以上の酸基が、芳香族基上に置換基を有してもよいフェノール基であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項4】
前記バインダーポリマーが、下記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)、及び一般式(8)で表される構造単位より選択される構造単位を有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版の作製方法。
【化2】

一般式(2)中、Xは、アルキレン基、置換アルキレン基、−CH2CH2OCH2CH2−、及び以下に示す2価の連結基を表す。R1は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。R2及びR3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、−OR4、−COOR5、−COONHR6、−COR7又は−CNを表す。R2とR3は互いに結合して環を形成してもよい。R4〜R7は、各々独立に、アルキル基又は芳香族基を表す。nは2又は3を表す。
【化3】

【化4】


一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。Xは2価の連結基を表す。Yは置換基を有してもよい2価の芳香族基を表す。
【化5】

一般式(4)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はカルボン酸基を表す。R3は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。R4は、水素原子、アルキル基、フェニル基又はアラルキル基を表す。Xは、窒素原子と芳香環炭素原子とを連結する2価の有機基を表す。nは0又は1を表す。Yは、置換基を有してもよいフェニレン基、又は置換基を有してもよいナフチレン基を表す。
【化6】

一般式(5)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基を表す。R2及びR3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表す。R4、R5及びR6は、各々独立に、水素原子、(C1−C4)アルキル基、又はハロゲン原子を表す。Xは、単環又は多環の、炭素環式芳香族環系を完成させるのに必要な原子を表す。nは、1,2又は3を表す。
【化7】

一般式(6)及び(7)中、X1及びX2は、各々独立に、−O−又は−NR7−を表す。R1及びR4は、各々独立に、−H又は−CH3を表す。R2及びR5は、各々独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基を表す。R3は、−H、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R6は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R7は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。
【化8】

一般式(8)中、A1は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。B1は、フェニレン基、置換フェニレン基を表す。B2は、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。B3は、2価の有機基を表す。X1及びX2は、各々独立に、−CO−、又は−SO2−を表す。Yは、−CO−R1又は−SO2−R1を表し、R1はアルキル基、置換アルキル基、芳香族基又は置換芳香族基を表す。m及びjは0又は1を表す。
【請求項5】
前記バインダーポリマーが、前記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、及び一般式(5)で表される構造単位から選択される構造単位を有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版の作製方法。

【公開番号】特開2008−171010(P2008−171010A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16597(P2008−16597)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【分割の表示】特願2002−241719(P2002−241719)の分割
【原出願日】平成14年8月22日(2002.8.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】