説明

平面光波回路接続装置

【課題】複数の平面光波回路が接続された光部品の小型化が可能な平面光波回路接続装置を提供すること。
【解決手段】平面光波回路接続装置400は、第1の平面光波回路450と第2の平面光波回路460とを接続する。第1の平面光波回路450が、第1の保持治具410により保持され、第2の平面光波回路460が第2の保持治具420により保持される。第1の保持治具410は、6軸移動ステージ430の上に配置されており、第1の平面光波回路450に形成された光導波路と、第2の平面光波回路460に形成された光導波路とを調心可能である。平面光波回路接続装置400では、第1の保持治具410の第1及び第2の光入射手段411、412により、調心に必要な光を第1の平面光波回路450に形成された第1及び第2の調心用光導波路451、452に入射する。そして、第2の平面光波回路460から出射される光を、光受光手段440で受光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面光波回路接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの高度化に伴い、高機能な光モジュール(光部品)の需要が高まっている。平面光波回路は、基板上に光導波路を形成することによって様々な光波回路を実現することができ、光モジュールの構成部品として用いられている。光モジュールの更なる高機能化のために、異なる機能を有する平面光波回路を集積化したり、レンズ・空間位相変調器等の空間光学系部品と平面光波回路とを集積化したハイブリッド光モジュールが実現されている。具体的な光モジュールの例としては、(1)アレイ導波路格子(AWG)と可変光減衰器(VOA)を異なる平面光波回路基板上に形成した後、それらを光結合したV−AWGモジュール、(2)石英系ガラスとニオブ酸リチウム(LN)のように異なる材料で構成された平面光波回路を光結合したRZ−DQPSK(Return to Zero Differential Quadrature Phase Shift Keying)モジュール等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−227936号公報
【特許文献2】特開2001−264576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハイブリッド光モジュールを小さなサイズで作製するためには、作成工程から見直す必要がある。たとえば、特許文献1の技術(図1参照)では、異なる種類の平面光波回路を簡便に接続するために、折り返し構造の導波路16とは別に少なくとも2本の接続用光導波路15を設けているが、第1の平面光波回路11と第2の平面光波回路12とを調心して接続するには、あらかじめ光ファイバ部品17を第1の平面光波回路11に接着固定する必要がある。ここで、光ファイバ部品17は光ファイバ14を1つの光ファイバ固定用ブロック13に配置して作製されている。また、特許文献2の技術(図2参照)には、光ファイバ部品121と光デバイス111との間の調心を高精度、高速に行って、低コストでAWGデバイスを製造することのできるAWG製造装置が開示されているが、ここでも、光ファイバを導波した光を用いた調心が行われている。簡単に調心方法を説明する。アレイ導波路116と、スラブ導波路114、115と、入力用導波路112と、光導波路113から形成された光デバイス111が光デバイス固定手段141に保持され、光ファイバテープ122を整列されている光ファイバ部品121が光デバイス固定手段142に把持されている。受光器134は受光器移動手段143によって移動させることができる。入射光150を光ファイバテープ122に入射し、光導波路112との調心は、両者の光軸がほぼ一致すると信号光152とは別に出射されるモニター光151を受光器134で検出し、この検出結果を制御装置144に入力することによって行われる。
【0005】
このような従来の技術には、次のような問題がある。図3に、従来技術の問題を説明するための図を示す。図3は、第1から第3の平面光波回路301、302、303が突き合わせ接続され、その両端に第1及び第2のファイバ整列部材311、312により第1及び第2の光ファイバ321、322がそれぞれ固定された光部品を、気密封止用ケース330に収納してハイブリッド光モジュール300を作製する状況を示している。図示の気密封止用ケース330のようにファイバ取り出し口331がケースと一体となっている場合、複数の平面光波回路を接続した光部品とケースとの間に第1のファイバ321に許容される曲げ径以上の余地がないと第1のファイバ321にダメージを与え、断線の恐れがあるため、光部品を収納することができない。ファイバに許容される曲げ半径rは一般に半径10mm以上と考えられるため、ケース内寸は複数の平面光波回路を接続した光波回路よりも20mm以上長くする必要があり、光部品を小型化する際の制約となっていた。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の平面光波回路が接続された光部品の小型化を図ることのできる平面光波回路接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、第1の平面光波回路と第2の平面光波回路とを接続するための平面光波回路接続装置であって、前記第1の平面光波回路を保持するための、少なくとも1つの光入射手段を有する第1の保持治具と、前記第2の平面光波回路を保持するための第2の保持治具と、前記少なく1つの光入射手段から前記第1の平面光波回路が有する調心用導波路に入射され、前記第2の平面光波回路が有する調心用導波路から出射される、調心のための光を受光する光受光手段とを備え、前記第1の平面光波回路が有する調心用導波路と、前記第2の平面光波回路が有する調心用導波路とを調心可能な移動ステージをさらに備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記第2の保持治具および前記光受光手段が、前記移動ステージ上に配置されており、前記光受光手段の受光径は、前記第2の平面光波回路が有する調心用光導波路から出射される前記調心のための光のビーム径よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記第1の保持治具が、前記第1の平面光波回路の位置基準となる位置決め部材と、前記第1の平面光波回路を挟持する押さえ部材とを備え、前記光入射手段は、光入射用ファイバまたは光入射用レーザと、前記光入射用ファイバまたは前記光入射用レーザを固定する保持部材とを備え、前記保持部材は、前記第1の平面光波回路の厚さ方向に可動であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様において、前記光入射手段に面する前記第1の平面光波回路の端面に向かって、前記第1の平面光波回路が有する調心用導波路の導波路幅が徐々に広くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の平面光波回路と第2の平面光波回路とを接続するための平面光波回路接続装置において、第1の平面光波回路を保持するための第1の保持治具に少なくとも1つの光入射手段を設け、第1の平面光波回路が有する調心用導波路と、第2の平面光波回路が有する調心用導波路とを調心可能な移動ステージを備えることにより、複数の平面光波回路を接続する際に、平面光波回路に直接光ファイバを接続することが不要となる。この事によって、例えば、気密封止用ケースに収納する際に、複数の平面光波回路を接続した光部品に光ファイバが接続されておらず、光モジュール(光部品)の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】特許文献1の従来技術を示す図である。
【図2】特許文献2の従来技術を示す図である。
【図3】従来技術の問題を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態に係る平面光波回路接続装置を示す図である。
【図5】(a)は、第1から第3の平面光波回路を、本発明による平面光波回路接続装置400により接続して、気密封止用ケースに収納した例を示す図であり、(b)は、気密封止用ケースに収納した光部品に光ファイバを接続した例を示す図である。
【図6】図4の平面光波回路接続装置の変形形態を示す図である。
【図7】(a)は、第1の保持治具の一部の詳細を示す図であり、(b)は、b−b線に沿った断面図である。
【図8】第1の平面光波回路450の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図4に、本発明の実施形態に係る平面光波回路接続装置を示す。平面光波回路接続装置400は、第1の平面光波回路450と第2の平面光波回路460とを接続する。第1の平面光波回路450が、第1の保持治具410により保持され、第2の平面光波回路460が第2の保持治具420により保持される。第1の保持治具410は、移動ステージ430(例えば、6軸移動ステージ)の上に配置されており、第1の平面光波回路450に形成された光導波路と、第2の平面光波回路460に形成された光導波路とを調心することができる。
【0015】
本発明に係る平面光波回路接続装置400では、第1の平面光波回路450に光ファイバ部品を接続固定するのではなく、第1の保持治具410に設けられた第1及び第2の光入射手段411、412により、調心に必要な光を第1の平面光波回路450に形成された第1及び第2の調心用光導波路451、452に入射する。そして、第2の平面光波回路460から出射される光を、光受光手段440で受光することで、第1の平面光波回路450と第2の平面光波回路460を調心、接続することが可能となる。第1及び第2の光入射手段411、412と光受光手段440が対応しないように配置してあるのは、第1及び第2の光入射手段411、412からの光の内、第1及び第2の調心用光導波路451、452に結合しなかった漏れ光が光受光手段440にノイズとして入射するのを抑制する効果がある。
【0016】
図4は、2つの平面光波回路の接続の様子を示しているが、同様の手順を繰り返すことによって、光ファイバを接続することなく、複数の平面光波回路を接続して光部品を作製することが可能である。
【0017】
このようにして作製した複数の平面光波回路を接続した光部品には光ファイバが接続されていないので、ファイバ取り出し口がケースと一体となっている気密封止用ケースに光部品を容易に収納できる。図5(a)に、第1から第3の平面光波回路401、402、403を、本発明による平面光波回路接続装置400により接続して、気密封止用ケース430に収納した例を示す。そして、第1から第3の平面光波回路を接続した光部品を気密封止用ケースに収納した後に光ファイバ421、422をそれぞれ配置したファイバ整列部材511、512を接続することによって、小型のハイブリッド光モジュールを作製することが可能となる。図5(a)は、光ファイバ421、422をあらかじめファイバ取り出し口431に通した後、第1から第3の平面光波回路を接続した光部品を気密封止用ケース430に収納している。ファイバ整列部材が取り出し口を通る大きさであれば、第1から第3の平面光波回路を接続した光部品を先に気密封止用ケースに収納することも可能であり、光部品を気密封止用ケースに収納、固定する際に、光ファイバが邪魔にならないという利点がある。図5(b)に、気密封止用ケースに収納した光部品に光ファイバを接続した例を示す。光部品と光ファイバの接続は、従来の調心工程と同様に一方の光ファイバ421に光を入射し、他方の光ファイバ422からの出射する光が最大になるように調心することで可能となる。
【0018】
上述の説明では、第1及び第2の平面光波回路450、460に調心用光導波路がそれぞれ2本あり、それに対応して、第1の保持治具410にも2つの光入射手段が設けられている例を挙げて説明したが、第1の保持治具410が備える光入射手段の数を2つに限定する意図はないことに留意されたい。すなわち、光入射手段が1つであっても、θz方向に第1の平面光波回路と第2の平面光波回路がずれないように、第1の保持治具と第2の保持治具が調整されていれば、第1の平面光波回路と第2の平面光波回路を調心接続することは可能である。
【0019】
図6は、図4の平面光波回路接続装置の変形形態である。移動ステージ430の上に第1の平面光波回路450を配置するのではなく、第2の保持治具420と光受光手段440を配置している。ここで、光受光手段440の受光径は、第2の平面光波回路460に形成された第1及び第2の調心用光導波路461、462からの出射光のビーム径よりも大きくする。
【0020】
第1及び第2の光入射手段411、412と第1の平面光波回路450との光結合強度は、移動ステージ430が移動する際の振動で僅かに変動する場合がある。光受光手段440の受光径を第2の平面光波回路460の第1及び第2の調心用光導波路461、462からの出射光のビーム径よりも十分大きくし、第2の保持治具420と光受光手段440を6軸移動ステージ430に固定しておけば、6軸移動ステージ430の移動による第1及び第2の調心用光導波路461、462と光受光手段440との光結合強度の変動は十分小さくできる。
【0021】
図7に、第1の保持治具の詳細を示す。第1の保持治具410は、第1の平面光波回路450の位置基準となる位置決め部材413と、第1の平面光波回路450を挟持する押さえ部材414とを備える。図7(a)には、第1の平面光波回路450の片方の側面付近の第1の保持治具410のみを示してあるが、同様の構造が他方の側面付近にも設けられている。第1の光入射手段411は、光入射用ファイバ411Aと、光入射用ファイバ411Aを固定する保持部材411Bとを備える。そして、光入射用ファイバ保持部材411Bは、第1の平面光波回路450の厚さ方向に可動である(図7(b)参照)。
【0022】
第1の調心用導波路451と光入射用ファイバ411Aとの光結合強度は、両者の光軸ずれ量に依存する。各軸の光軸ずれを小さくするために、x方向は、押さえ部材414が第1の平面光波回路450と接する面と光入射用ファイバ411Aの端面との距離で、y方向は、光入射用ファイバ保持部材411Bを可動としていることで調整できる。z方向は、第1の平面光波回路450を位置決め部材413に突き当てたときに第1の調心用導波路451と光入射用ファイバ411Aとの光結合強度が最大となるように、第1の平面光波回路450のz方向の長さを精度良くあらかじめ加工することで光軸ずれを抑制可能である。
【0023】
なお、光入射用ファイバ411Aの代わりに、光入射用レーザを用いてもよい。また、光入射用ファイバ411Aと端面450Aの間にレンズを配置して、光結合強度を改善することも可能である。
【0024】
図8に、第1の平面光波回路450の詳細を示す。第1の光入射手段411に面する第1の平面光波回路450の端面450Aに向かって、第1の調心用導波路451の導波路幅が徐々に広くなっている。第2の調心用導波路452についても同様の構造が考えられる。
【0025】
調心用導波路の導波路幅を拡大することによって、z方向の光軸ずれトレランスも拡大することが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
400 平面光波回路接続装置
410 第1の保持治具
411 第1の光入射手段
411A 光入射用ファイバ
411B 保持部材
412 第2の光入射手段
413 位置決め部材
414 押さえ部材
420 第2の保持治具
430 6軸移動ステージ
440 光受光手段
450 第1の平面光波回路
450A 第1の平面光波回路450の端面
451 第1の調心用導波路
452 第2の調心用導波路
460 第2の平面光波回路
461 第1の調心用導波路
462 第2の調心用導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平面光波回路と第2の平面光波回路とを接続するための平面光波回路接続装置であって、
前記第1の平面光波回路を保持するための、少なくとも1つの光入射手段を有する第1の保持治具と、
前記第2の平面光波回路を保持するための第2の保持治具と、
前記少なく1つの光入射手段から前記第1の平面光波回路が有する調心用導波路に入射され、前記第2の平面光波回路が有する調心用導波路から出射される、調心のための光を受光する光受光手段と
を備え、
前記第1の平面光波回路が有する調心用導波路と、前記第2の平面光波回路が有する調心用導波路とを調心可能な移動ステージをさらに備えることを特徴とする平面光波回路接続装置。
【請求項2】
前記第2の保持治具および前記光受光手段は、前記移動ステージ上に配置されており、
前記光受光手段の受光径は、前記第2の平面光波回路が有する調心用光導波路から出射される前記調心のための光のビーム径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の平面光波回路接続装置。
【請求項3】
前記第1の保持治具は、
前記第1の平面光波回路の位置基準となる位置決め部材と、
前記第1の平面光波回路を挟持する押さえ部材と
を備え、
前記光入射手段は、
光入射用ファイバまたは光入射用レーザと、前記光入射用ファイバまたは前記光入射用レーザを固定する保持部材と
を備え、
前記保持部材は、前記第1の平面光波回路の厚さ方向に可動であることを特徴とする請求項1または2に記載の平面光波回路接続装置。
【請求項4】
前記光入射手段に面する前記第1の平面光波回路の端面に向かって、前記第1の平面光波回路が有する調心用導波路の導波路幅が徐々に広くなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平面光波回路接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−163765(P2012−163765A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23943(P2011−23943)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】