説明

平面基板の支持部材

【課題】平面基板の形状測定時に、被測定基板の下端面形状の影響を低減し被測定基板に発生する平面の反りを低減させる支持部材を提供することを目的とする。
【解決手段】平面基板Pの形状測定において、前記平面基板Pの下端面27を支持することにより前記平面基板Pを垂直状態に位置決めする支持部材17であって、上方に凸型形状からなる断面と、該断面が一方向に延在する湾曲面形状17bと、を備え、前記支持部材17に設けられた湾曲面形状17bの稜線部と、前記平面基板Pの下端面27の板厚方向略中央部が当接するように載置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面基板の支持部材に係り、特に、液晶用石英ガラス製フォトマスク等の平面基板面の形状測定において、該平面基板面を垂直(鉛直)に支持する支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶用フォトマスクに限らず基板面の形状が重要な要素となる平面基板において、その表面あるいは裏面の面形状を高精度に測定することができる平面基板の形状測定装置あるいは基板面の形状測定方法が提示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4に示されるように、このような平面基板面の形状測定に用いられる測定装置本体10は、金属製のベッド11上の一端部に例えば鋳物から成る縦型定盤12が配置されている。ここで、この縦型定盤12の垂直面は、すり合わせ加工あるいはラップ加工されその表面がニッケルメッキされて、基準平面13が形成されている。このようにして、基準平面13は、その表面粗さが400nm以下のほぼ0に近く極めて高い精度の平滑面に仕上げられている。
【0004】
上記ベッド11上における縦型定盤12の手前には、縦横の長さが例えば2100mm×2400mm程度で、板厚が20mm程度の大型液晶用石英ガラス製フォトマスクなどの被測定基板Pを保持し、位置決めする保持機構(アライメント組みコラム)14が配置されている。このコラムは金属製あるいはセラミックス製の保持部材15を有している。この保持部材15の一部である一対の側柱15aの間には、それぞれコラム用モータ15cによって駆動され上下動可能に横架された横桁15bが備えられており、この横桁15bの上下動によって、被測定基板Pのサイズに合わせて支持調整できるようになっている。
【0005】
また、保持部材15の下部の長手方向に離間して配置された一対の下部支持部材16aと、保持部材15の上部に位置する横桁15bの長手方向のほぼ中央部に配置された上部支持部材16bとを具備している。詳細は後述されるが下部支持部材16aの上部には、被測定基板Pを載置するための台座17が備えられている。そして、被測定基板Pはこれ等の支持部材16a、16bにより支持される。支持部材16a、16bは、サーボモータによって駆動され、縦型定盤12の基準平面13に対して直交する方向に移動可能となっており、サーボモータを駆動することによって、被測定基板Pの平面が垂直になるように高精度に位置決めできる。なお、上記一対の下部支持部材16aの離間距離は自動あるいは手動で調整できるようになっている。
【0006】
そして、ベッド11上において、縦型定盤12の基準平面13における水平軸方向(X軸方向)に移動する構造の変位計走査コラム18(X軸移動機構)が配置されている。この変位計走査コラム18は、ベッド11の上面に設けた一対のV溝19に沿って直線運動するV−Vころがり案内により、X軸方向に高精度に移動可能となっている。
【0007】
更に、制御部20が測定装置本体10の底部に配置されている。この制御部20からの指令信号によって、上述したようなV−Vころがり案内による変位計走査コラム18のX軸駆動機構、変位計走査コラム18に取り付けられたエアスライド21により垂直方向(Y軸方法)に移動するスライダ22のY軸駆動機構が、それぞれ所定のシーケンスにしたがって駆動するように制御される。ここで、上記X軸駆動機構およびY軸駆動機構の駆動部は、ステッピングモータ、DCサーボモータあるいはACサーボモータ等を有している。
【0008】
また、測定装置本体10に隣接しケーブル23によって接続されたコンピュータ24が配置されており、上記制御部20に指令を与えて上記X軸駆動機構およびY軸駆動機構を制御する。そして、後述されるようにスライダ22に取り付けられた変位計から得られる種々の距離データに基づいて、被測定基板Pの両面の平坦度あるいは被測定基板Pの板厚を算出し、ディスプレイ25またはプリンタ26より、その結果等を出力するように構成されている。
【0009】
このような平面基板の形状測定装置を用いて、例えば大型液晶用石英ガラス製フォトマスクなどの平面基板の形状を測定する場合、図5(a)に模式的に示されるように、平面基板である被測定基板Pは、下部支持部材16aの台座17上に載置され、上部支持部材16bによる支持と共に保持機構14に垂直に保持される。そして、上記スライダ22に取り付けられた、例えば、レーザダイオードを備えた非接触レーザ変位計等により、被測定基板Pの表面あるいは裏面の基準平面13を基準面にした変位量が計測され、被測定平面Pの平坦度等あるいは基板の板厚等が測定される。
【0010】
しかしながら、図5(b)に模式的に示されるように、被測定基板Pの台座17上への載置において、台座17に当接する被測定基板Pの下端面27の形状、あるいは台座17の形状精度に左右され、被測定基板Pの自重による歪みが生じ、その平面に反り28が発生する。そして、この反り量は被測定基板Pの下端面27と台座17との当接位置により変化する。
【0011】
この被測定基板Pに発生する平面の反り28は、被測定基板Pの自重が大きいことから、その下端面27の僅かな切り取り角度の偏差等により影響を受け、被測定基板Pにおける平面の形状測定が高精度にできないという問題があった。更に、被測定基板Pが大型化しその重量が増大すると共に、その被測定基板Pの下端面27の影響は大きくなる。この影響が大きくなることにあわせ、被測定基板Pの下端面27の形状仕上げ精度を上げることにより反り28を低減させることも考えられるが、形状仕上げ精度の向上には技術的な限界がありコストアップにもつながることから、被測定基板Pの下端面形状の影響に対する解決手段が強く望まれていた。
【0012】
【特許文献1】特開2007−46946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したような事情に鑑みて本発明はなされたものであり、平面基板の形状測定のため支持部材による平面基板の垂直方向への位置決めにおいて、平面基板の下端面形状の影響を低減し平面基板に発生する平面の反りを低減させることにある。そして、平面基板の重量が増大しても、平面基板における高精度な平面形状測定を可能にする平面基板の支持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するために、本発明にかかる平面基板の支持部材は、平面基板の形状測定において前記平面基板の下端面を支持することにより前記平面基板を垂直状態に位置決めする支持部材であって、上方に凸型形状、もしくは略円弧形状からなる断面と、該断面が一方向に延在する湾曲面形状と、を備え、前記支持部材に設けられた湾曲面形状の稜線部と、前記平面基板の下端面の板厚方向略中央部が当接するように載置される、構成となっている。
【0015】
上記構成にすることで、平面基板の垂直方向への位置決めにおいて、その基板の自重による歪みが減少し、上記基板面の反りが低減する。そして、平面基板における平面の高精度の形状測定が可能となる。
【0016】
本発明の好適な一態様では、前記支持部材は、あらかじめ定められた任意の凸型曲線形状、もしくは略円弧形状からなる断面に形成され、あるいは前記平面基板の硬度より低い硬度を有する高分子材料からなり、前記平面基板の下端面に対して高摩擦係数を有する表面からなる。そして、前記湾曲面形状の稜線部が、前記平面基板の下端面において、前記平面基板の板厚方向略中央部の領域に接して支持する、構成になっている。
【0017】
上記構成にすることで、前記平面基板の下端面の形状、例えば切り取り角度等に影響されないで、前記平面基板の垂直方向への位置決め時における前記平面基板面の反りを低減させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、平面基板の形状測定のために必要な平面基板の垂直方向へのアライメントにおいて、平面基板の下端面形状の影響が低減され、平面基板に発生する平面の反りが少なくなる。そして、平面基板の重量が増大してもその平面の高精度の形状測定を可能とする平面基板の支持部材を提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好適な実施形態について図1および図2を参照して説明する。図1は本実施形態において図4に説明したような平面基板の形状測定装置に用いられる台座17の説明に供する図である。ここで、図1(a)は、平面基板として被測定基板Pを垂直にアライメントした状態を模式的に示した斜視図であり、図1(b)はそれに使用された本実施形態の台座17の一例を拡大して示した斜視図である。そして、図2は本実施形態の台座17に被測定基板Pを載置した状態を模式的に示した断面図である。以下、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は一部省略する。
【0020】
図1(b)に示されるように、被測定基板Pが載置される台座17は、例えば台座基部17aとその上部に取り付けられた台座頭部17bにより構成されている。ここで、好適な台座頭部17bは、その上面が例えば、略円弧形状凸型に成形されており、台座頭部17bの凸型湾曲面の稜線部に沿って、被測定基板Pの下端面27が接する構成となっている。そして、この台座頭部17bとして好適な素材としては、硬質樹脂あるいは硬質ゴムが挙げられる。その他に、硬質なプラスチック等の高分子材料であっても構わない。但し、その硬度は、被測定基板Pのそれよりも小さく、被測定基板Pにキズ等の損傷を与えない程度が好ましい。
【0021】
図2に示されるように、被測定基板Pを台座17に載置した状態では、被測定基板Pの下端面27においてその板厚の略中央部の領域が、台座頭部17bの湾曲面の稜線部に沿い当接するのが好ましい。そこで、被測定基板Pを台座17に載置した状態において、台座頭部17bは被測定基板Pの重量に抗しその湾曲面が変形しない程度の硬度を有していると好適である。
【0022】
更に、台座頭部17bの湾曲面は、それに接する被測定基板Pの下端面27が滑らないような粗面に形成されていると好適である。あるいは、台座頭部17bの湾曲面が被測定基板Pの下端面に対する摩擦係数の高い材質により形成されていると好適である。
【0023】
なお、具体的な被測定基板Pの形状測定装置では、例えば図4で説明したように下部支持部材16aにおいて、上記台座17はサーボモータによって駆動される下部支持部材16a上に固着されることになる。この下部支持部材16aは図4に示したような矩形盤状であってもよいし、あるいは円盤状になっていても構わない。
【0024】
一方、上部支持部材16bは、図1(a)に示されるように、被測定基板Pの上端面29を動かないようにすればよく、その被測定基板Pの上端面29に接する部位が柔軟性のあるスポンジ等の樹脂材あるいはゴム材で構成される。
【0025】
本実施形態では、被測定基板Pの形状測定のために行われる被測定基板Pの垂直方向へのアライメントにおいて、被測定基板Pは、その下端面27におけるその板厚方向略中央部の領域が、台座頭部17bの湾曲面の一方向に延在する稜線部にほぼ沿って当接することから、その被測定基板Pの自重による歪みが減少する。そして、従来技術で多発していた被測定基板Pの反りは、下端面27の形状もしくは台座17の形状精度に左右されないでほぼ無関係に大幅に低減することとなる。このようにすれば、例え被測定基板Pの重量が更に増加しても、被測定基板Pにおける平面の高精度の形状測定が可能となる。
【0026】
上記台座頭部17bの形状は、その湾曲面が略円弧形状凸型を有する断面に限定されるものではなく、その他に種々の曲面が可能である。いずれにしても、台座頭部17bの上面が、上方に凸型の山形になりしかもその稜線部が一方向に延在するような湾曲面になっていればよい。
【0027】
本実施の形態においては、被測定基板Pの下端面27が、被測定基板Pの板厚方向略中央部の領域で台座頭部17b湾曲面の稜線部に沿ってほぼ線状に接するようになると好適である。ここで、台座基部17aは台座頭部17bと異なるステンレス等の金属材料からなっていてもよいし、台座基部17aは台座頭部17bと一体構造に成形されていても構わない。
【0028】
次に、本実施形態にかかる台座17の変形例について図3を参照して説明する。ここで、図3は台座17の変形例の構造を示し、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)におけるX−X矢視の断面図である。
【0029】
台座17は、図3(a)に示すように、例えば台座基部17aとその上部に取り付けられた台座頭部17bおよびガード壁17cにより構成されている。ここで、台座基部17aの上面には、図1および図2を参照して説明したのと同様な例えば、略円弧形状の断面を有する台座頭部17bが形成されている。そして、その両脇に並行に一対のガード壁17cが付設されている。このガード壁17cは、台座頭部17bよりも高くなるように設けられる。そして、この一対のガード壁17cは、それ等の離間距離が被測定基板Pの板厚より大きくなるように付設され、台座頭部17bに当接して載置された被測定基板Pが台座17から脱落することを防止するために、被測定基板Pの下端面27近傍を板厚方向両側からガードするようになっている。
【0030】
このガード壁17cとして好適な素材としては、台座頭部17bと同様な硬質樹脂あるいは硬質ゴムが挙げられる。また、硬質なプラスチック等の高分子材料であっても構わない。但し、その硬度は、被測定基板Pに対してキズ等の損傷を与えない程度に被測定基板Pの硬度よりも低いと好適である。なお、上述したような台座17において、台座基部17a、台座頭部17bおよびガード壁17cは一体構造になっていても構わない。
【0031】
本実施形態の変形例では、ガード壁17cにより被測定基板Pが台座17から脱落することを防止することから、被測定基板Pの下端面27の板厚方向略中央部領域が台座頭部17b湾曲面の稜線部に安定して位置決めされ載置されるようになる。このようにして、上述した被測定基板Pの反りは、下端面27の形状や台座17の形状精度に関係なく大幅に低減し、被測定基板Pにおける平面の高精度の形状測定が可能となる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。例えば、被測定基板として上記液晶用石英ガラス製フォトマスク以外にも、基板の形状が重要な要素となる被測定基板には同様に適用できる。
【0033】
また、平面基板の形状測定装置は、図4で説明したようなもの以外であっても、平面基板面の形状測定のために基板面を垂直方向にアライメントするような装置であれば、本発明にかかる平面基板の支持部材は同様にして適用することができる。
【0034】
そして、台座基部17a、台座頭部17bあるいはガード壁17cの外形は種々のものがある。いずれにしても、台座頭部17bは、その上面が上方に凸型になりその稜線部が一方向に延在する湾曲面からなっていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は本実施形態にかかる形状測定装置において被測定基板を垂直に位置決めした状態を模式的に示した斜視図であり、(b)は本実施形態にかかる形状測定装置に使用する台座の一例を拡大して示した斜視図である。
【図2】本実施形態にかかる台座に被測定基板を載置した状態を模式的に示した断面図である。
【図3】(a)は本実施形態にかかる形状測定装置に使用する台座の変形例の構造を示す上面図であり、(b)は本実施形態にかかる形状測定装置に使用する台座の変形例の構造を示す図3(a)X−X矢視の断面図である。
【図4】本実施形態にかかる形状測定装置の一例を示した全体構成図である。
【図5】従来技術における課題の説明に供するための台座に被測定基板を載置した状態を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 測定装置本体
11 ベース
12 縦型定盤
13 基準平面
14 保持機構(アライメント組みコラム)
15 保持部材
15a 側柱
15b 横桁
15c コラム用モータ
16a 下部支持部材
16b 上部支持部材
17 台座
17a 台座基部
17b 台座頭部
17c ガード壁
18 変位計走査コラム
19 V溝
20 制御部
21 エアスライド
22 スライダ
23 ケーブル
24 コンピュータ
25 ディスプレイ
26 プリンタ
27 下端面
28 反り
29 上端面
P 被測定基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面基板の形状測定において前記平面基板の下端面を支持することにより前記平面基板を垂直状態に位置決めする支持部材であって、上方に凸型形状からなる断面と、該断面が一方向に延在する湾曲面形状と、を備え、
前記支持部材に設けられた湾曲面形状の稜線部と、前記平面基板の下端面の板厚方向略中央部が当接するように載置されることを特徴とする支持部材。
【請求項2】
前記湾曲面形状は、あらかじめ定められた任意の凸型曲線形状、もしくは略円弧形状からなる断面を有することを特徴とする請求項1に記載の支持部材。
【請求項3】
前記支持部材は、前記平面基板の硬度より低い硬度を有する高分子材料からなることを特徴とする請求項1乃至2のうちいずれかに記載の支持部材。
【請求項4】
前記支持部材は、前記平面基板の下端面に対して高摩擦係数を有する表面を備え、該表面を前記平面基板の下端面に当接するように載置されることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の支持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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