説明

廃プラスチック破砕片を材質分別する際の前処理方法

【課題】破砕した廃プラスチック破砕片原料を材質分別する際に、純度よく材質分別が行える前処理方法を提供する。
【解決手段】廃プラスチック製品等を分解・破砕して有価物ごとに分別してリサイクル処理する際に得られる廃プラスチック破砕片原料を材質分別する方法において、少なくとも材質分別(プラスチック選別工程)の前工程に、前記廃プラスチック破砕片が熱変形する所定温度で廃プラスチック破砕片を加熱する加熱前処理工程(加熱工程)を設けたので、前記材質分別(プラスチック選別工程)に供給される廃プラスチック破砕片は、前記加熱によって熱変形による延伸作用(復元作用)を受けて、破砕片が互いに結合された状態でなく個々に分離され、かつ、形状が単純形状になされているため、前記材質分別において廃プラスチック破砕片を一つずつ材質分別することが可能となる。よって、純度よく、原料廃プラスチック破砕片を材質分別することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、家庭から廃棄される使用済み廃家電製品等を分解・破砕して有価物をリサイクルする技術に関し、特に、廃プラスチック破砕片を材質(種類)分別する際の前処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯機や冷蔵庫、テレビやエアコンなどの廃家電製品等の廃棄処理については、そのまま埋め立てたり、破砕又は焼却して埋め立てる方法がとられていた。しかし、これらの廃棄処分方法においては、埋め立て地不足の問題や焼却時の有害ガスの発生による地球温暖化の問題があるため、近年においては、廃家電製品から金属やプラスチックなどの有価物を個別に分別して原料に再利用(リサイクル)されている。
【0003】
廃家電製品から金属やプラスチックなどの有価物をそれぞれ個別に分別する方法としては、例えば、特許文献1に開示された技術がある。このものは、廃家電製品からまず環境影響を配慮して冷媒フロンやブラウン管などの特定部品を手作業で分離回収し、残りの廃家電製品を一括破砕する。そして、一括破砕した破砕片(混合物)を磁力選別機や渦電流選別にかけて鉄や非鉄金属(銅やアルミニウムなど)を分別除去し、残った破砕片は再度細かく細破砕して比重選別機にかけ、これまでの工程で選別されなかった金属主体の重量破砕片と廃プラスチック(廃プラスチック破砕片)とに分別し、さらに、分別した前記廃プラスチック破砕片は比重選別機にかけて二種の異材質に比重分別する。このようにして分別された前記廃プラスチック破砕片は、スクリュー式押出機によって混練造粒されて再生樹脂にリサイクルされるというものである。
【0004】
また、前記廃プラスチック破砕片を材質分別する方法については、前記比重選別方法以外にも、光学的選別方法や風力選別方法が知られている。前記光学的選別方法(例えば特許文献2)は、前記原料廃プラスチック破砕片をベルトコンベアによって移送して終端部から放出し、自然落下する廃プラスチック破砕片を個々に光学的に材質判別するとともに、判別した材質ごとに噴風選別手段によって噴風選別するというものである。一方、前記風力選別方法(例えば特許文献3)は、送風機から横方向に供給した送風の中に、被選別原料を上方から繰り落とすことにより、被選別原料中の軽量物、中間重量物及び重量物が送風作用によって吹き飛ばされ、それぞれを飛距離によって分別するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−224652号公報
【特許文献2】特開2002−303575号公報
【特許文献3】特開平7−1455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の廃プラスチック破砕片を材質分別する方法には以下の問題点がある。すなわち、廃プラスチック破砕片を材質分別した際の純度(分別精度)の問題があった。上記方法においては、複合材質からなる廃家電製品等を一括破砕し、その破砕片から金属類を分別除去し、その残りの廃プラスチック破砕片原料を最終的に比重選別、光学的選別又は風力選別等によって材質分別するものであるが、この場合、前記廃プラスチック破砕片の中には、破砕工程において、複雑に折れ曲がって他の異材質の廃プラスチック破砕片と絡み合うなどして異材質の破砕片同士が互いに結合した状態の破砕片(以下、「結合物」という。)が発生することがある。このため、前記結合物については、比重分別、光学的選別及び風力選別のいずれを行っても結合状態を分離して個々の破砕片として分別することができず、このため、分別した廃プラスチック破砕片の中には結合物のまま異なる材質の破砕片が混入してしまい、このため材質分別した廃プラスチック破砕片の純度(分別精度)を低下する要因となっていた。
そこで、本発明は、上記問題点にかんがみ、破砕した原料廃プラスチック破砕片を材質分別する際に、純度よく材質分別が行える前処理方法を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1により、
廃家電製品等を分解・破砕し有価物ごとに分別してリサイクル処理する際の廃プラスチック破砕片原料を材質分別する方法において、少なくとも材質分別する前の工程に、前記廃プラスチック破砕片が熱変形する所定温度で廃プラスチック破砕片を加熱する加熱前処理工程を設ける、という技術的手段を講じるものである。
【0008】
前記加熱前処理工程は、前記廃プラスチック破砕片を熱変形させる温度の液体が入った加熱浴槽に廃プラスチック破砕片を浸漬する加熱浸漬工程よって行うとよい。
【0009】
前記加熱前処理工程は、前記廃プラスチック破砕片を熱変形させる温度に加熱した圧潰手段に廃プラスチック破砕片を供給して圧潰する圧潰工程よって行うとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、廃家電製品等を分解・破砕して有価物ごとに分別してリサイクル処理する際に得られる廃プラスチック破砕片原料を材質分別する方法において、少なくとも材質分別(プラスチック選別工程)の前工程に、前記廃プラスチック破砕片が熱変形する所定温度で廃プラスチック破砕片を加熱する加熱前処理工程(加熱工程)を設けたので、前記材質分別(プラスチック選別工程)に供給される廃プラスチック破砕片は、前記加熱によって熱変形による延伸作用(復元作用)を受けて、結合状態にあった廃プラスチック破砕片は互いに分離され、かつ、形状が単純形状になされるため、前記材質分別において廃プラスチック破砕片を一つずつ互いに絡み合うことなく材質分別することができる。したがって、純度よく、原料廃プラスチック破砕片を材質分別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明における廃家電製品を分解、破砕して有価物ごとに分別してリサイクル処理フローである。
【図2】破砕工程(破砕機)の一例を示した側断面図である。
【図3】鉄選別工程(磁力選別機)の一例を示した側断面図である。
【図4】非鉄金属選別工程(渦電流選別機)の一例を示した側断面図である。
【図5】加熱前処理工程(加熱工程)における実施例1「高温浸漬方法」を示した図である。
【図6】加熱前処理工程(加熱工程)における実施例2「高温圧潰方法」を示した高温圧潰装置の側断面図である。
【図7】プラスチック選別工程における実施例1「比重選別方法」を示した比重選別装置の側断面図である。
【図8】プラスチック選別工程における実施例2「光学的選別方法」を示した光選別装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の廃プラスチック破砕片を材質分別する際の前処理方法について、実施の形態を図1〜図8を参照しながら説明する。
【0013】
本発明は、複数の異なる材質(種類)からなるプラスチック部品が使用された廃プラスチック製品、例えば、洗濯機や冷蔵庫、テレビやエアコン、OA機器などの廃家電製品や、ペットボトル、玩具、自動車部品等をリサイクルする際に適用可能なものである。以下、本願発明の実施形態においては、廃家電製品を例にとって説明する。図1は、廃家電製品を分解、破砕して有価物ごとに分別してリサイクル処理をする際に、本願発明を適用したリサイクル処理フローである。以下に、該リサイクルフローを各ステップ(工程)に分けて説明する(図1参照)。
【0014】
ステップ1(手選別工程):
ステップ1は手選別工程である。該手選別工程は、作業員が手作業によって廃家電製品から冷媒フロンやブラウン管、液晶ユニットや電池、トナーカートリッジや蛍光管、ガラス、金属板及びガラス板など、それ単体でリサイクル可能な特定部品を分解し分別除去する工程である。この手選別工程によって、廃家電製品はプラスチック部品を主とする廃棄物となる。
【0015】
ステップ2(破砕工程):
ステップ2は破砕工程である。該破砕工程は、前記手選別工程(ステップ1)において特定部品を除去し、残ったプラスチック部品を主とする廃棄物を破砕する工程である。該廃棄物を破砕するには周知の破砕機を用いて行うことができ、例えば、図2に示した破砕機1を使用することができる。前記破砕機1は、図2に示したように、機体2の内部に回転軸3を横設してなるカッター式の回転破砕刃4を備えるとともに、これに対向して固定刃5を配設する。また、前記機体2の上部及び下部には、原料供給口6と破砕物排出口7がそれぞれに設けられている。さらに、前記回転破砕刃4の下方には、任意の大きさのメッシュ孔を備えた排出スクリーン8を備え、前記メッシュ孔の大きさについては、例えば直径約6mmとすることができる。
【0016】
このようにして構成された前記破砕機1は、原料の廃棄物を原料供給口6に供給すると、該原料廃棄物は、前記回転破砕刃4と固定刃5との間において剪断作用を受けて順次破砕され、約6mm以下の大きさに破砕されたプラスチックや金属類などの破砕片は前記排出スクリーン8のメッシュ孔を通り抜けて破砕物排出口7から排出されるように構成されている。前記破砕物排出口7から排出された廃棄物は、プラスチック片(廃プラスチック破砕片)を主とし、かつ、金属類の破砕片が混入したものとなっている。なお、前記メッシュ孔の大きさは、適宜変更すればよい。
【0017】
ステップ3(鉄選別工程):
ステップ3は鉄選別工程である。該鉄選別工程は、前記破砕工程(ステップ2)から排出された、廃プラスチック破砕片を主とし、金属類の破砕片を混入した原料破砕片から、まず鉄破砕片を分別除去する工程である。該鉄破砕片を分別除去するには、周知の磁力選別機を用いて行うことができる。図3には、その前記磁力選別機9の一例を示す。前記磁力選別機9は、原料破砕片を順次移送するように横設配置されたベルトコンベア10からなる。該ベルトコンベア10は、搬送ベルト10aを駆動するマグネットプーリー10bを構成する。そして、該マグネットプーリー10bは、例えば、磁力が前記搬送ベルト10a表面で約6000ガウスのものを使用するとよい。また、前記マグネットプーリー10bの下方には、前記搬送ベルト10a表面に残留吸着した鉄破砕片をこそげるスクレイパー11を配設する。さらに、ベルトコンベア10の搬送終端側の側方には、前記マグネットプーリー10bの磁力作用によって分別されて落下する鉄破砕片とその他の破砕片とが混合しないように仕切板12が配設してある。
【0018】
このようにして構成された前記磁力選別機9は、原料破砕片を搬送ベルト10aで搬送して搬送終端部から放出・落下させる際に、鉄破砕片をそのまま放出・落下させずに、前記マグネットプーリー10bの磁力作用によって搬送ベルト10a表面に吸着して搬送ベルト10aの裏側に搬送し、スクレイパー11によってこそげて分別できるように構成してある。これにより、鉄破砕片とその他破砕片(廃プラスチック破砕片を主とする)とを分別することができる(図3参照)。
【0019】
ステップ4(非鉄金属選別工程):
ステップ4は非鉄金属選別工程である。該非鉄金属選別工程は、前記鉄選別工程(ステップ3)によって分別した残りの廃プラスチック破砕片を主とするその他破砕片原料から非鉄金属破砕片(アルミニウムなど)を分別除去する工程である。該非鉄金属破砕片を分別除去するには、周知の渦電流選別機を用いて行うことができる。図4には、その前記渦電流選別機13の一例を示す。前記渦電流選別機13は、ステップ3(鉄選別工程)で選別排出した製品側破砕片である、前記その他破砕片原料を順次移送するように横設配置したベルトコンベア13aを備えるとともに、該ベルトコンベア13aの搬送終端側から原料が放出落下される軌跡の下方位置に配設したマグネット回転体14を備えてなる。また、前記マグネット回転体14の側方位置には、前記マグネット回転体14の作用によって落下軌跡Rを上方側に変更して落下する非鉄金属破砕片と、落下軌跡Rに沿って落下する前記非鉄金属破砕片以外の廃プラスチック破砕片とを仕切る仕切板15を配設する。
【0020】
このようにして構成された前記渦電流選別機13は、前記その他破砕片原料(非鉄金属破砕片と廃プラスチック破砕片の混合)を前記ベルトコンベア13aで搬送して終端部から前記マグネット回転体14上に放出させると、非鉄金属破砕片は内部に渦電流が生じて磁界を有し、該磁界とマグネット回転体14の磁界とが反発しあって非鉄金属破砕片は矢印Hの方向に飛ばし、廃プラスチック破砕片は落下軌跡Rに沿って落下させるように構成してある。これにより、廃プラスチック破砕片から非鉄金属破砕片を分別除去することができる(図4参照)。上記のように、ステップ1〜ステップ4(手選別、破砕、鉄選別、非鉄金属選別)を終えた破砕片は、複数材質からなる廃プラスチック破砕片となる。なお、該廃プラスチック破砕片については、適宜、混入した粉塵等を除去する目的で公知の風力選別装置(サイクロン方式等)に通すようにしてもよい。
【0021】
ステップ5(加熱工程):<加熱前処理工程>
ステップ5は加熱工程である。該加熱工程は、前工程の非鉄金属選別工程(ステップ4)によって分別した廃プラスチック破砕片を該廃プラスチック破砕片が熱変形する所定温度で加熱することで、前記破砕工程(ステップ2)の破砕作用によって複雑に折れ曲がり他の異材質のものと絡み合うなどして異材質の破砕片が互いに結合した結合物を熱変形により各破砕片を延伸させて、前記結合した破砕片を分離させる工程である。該加熱工程は、例えば、実施例1(図5)又は実施例2(図6)で行うことができる。
【0022】
加熱工程の実施例1(図5):
前記加熱工程の実施例1(図5)は、「高温浸漬方法」によるものである。該高温浸漬方法は、プラスチックの各種材質における熱変形温度を考慮し、該各熱変形温度範囲内における任意の熱変形温度に加熱した液体に廃プラスチック破砕片を浸漬するものである。より具体的には図5に示すように、高温浸漬方法は、プラスチックの各種材質における熱変形温度を考慮した温度の液体、例えば熱水を浸漬槽16にためて、これにメッシュ容器17に入れた廃プラスチック破砕片Gを浸漬して撹拌するものである(図5の(1)及び(2))。
【0023】
このとき、前記熱水(液体)の温度を、例えば90℃とした場合には、熱変形温度が90℃以下のプラスチック材質である、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PS(ポリスチレン樹脂)、ABS(ABS樹脂)、PVC(塩化ビニール樹脂)、PP(ポリプロピレン樹脂)及びPE(ポリエチレン樹脂)は熱変形して延伸される。このため、上記材質のプラスチックの組合せによってなる前記結合物Kについては熱変形による延伸作用が生じ、これにより、結合し合った破砕片同士(図5の(1)の材質A及び材質B)は分離されるとともに、複雑に折れ曲がった破砕片は延伸作用及び復元作用により単純形状となる。このようにして加熱・分離を終えた廃プラスチック破砕片Gは、メッシュ容器17ごと浸漬槽16から取り出す(図5の(3))。なお、この取り出した廃プラスチック破砕片Gは湿っているため、適宜乾燥方手法によって乾燥させるとよい。
【0024】
上記では熱水温度を90℃としたが、熱水(液体)温度の設定は以下の各プラスチック材質の熱変形温度に基づいて適宜設定するとよい。各熱変形温度については、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂):55℃〜70℃、PS(ポリスチレン樹脂):70℃〜100℃、ABS(ABS樹脂):90℃〜105℃、PVC(塩化ビニール樹脂):55℃〜80℃、PP(ポリプロピレン樹脂):45℃〜65℃及びPE(ポリエチレン樹脂):55℃〜85℃である。なお、PC(ポリカーボネート樹脂)については、熱変形温度が115℃〜140℃であるため、前記PC(ポリカーボネート樹脂)が混入している廃プラスチック破砕片については下記の実施例2の方法で行うとよい。
【0025】
加熱工程の実施例2(図6):
前記加熱工程の実施例2(図6)は、「高温圧潰(あっかい)方法」によるものである。該高温圧潰方法は、実施例1で述べたと同様に、プラスチックの各種材質における熱変形温度を考慮して、圧潰手段の例えば一対の高温回転ロール18を熱変形温度範囲に加熱して廃プラスチック破砕片Gを高温回転ロール18間に通すことによって、結合物Kの破砕片を分離するとともに偏平状にして単純形状にするものである。前記高温圧潰方法による具体的な高温圧潰装置19は、図6に示すように、前記一対の高温回転ロール18は、互いに異なる方向で、かつ、異なる回転数で回転する鉄製のロール18a,18bを備えるとともに、該ロール18a,18bを加熱する加熱手段18cを備えてなる。また、原料廃プラスチック破砕片を前記ロール18a,18b間に搬送するベルトコンベア19a備えてなる。
【0026】
この高温圧潰方法によると、原料廃プラスチック破砕片Gはベルトコンベア19aによって任意の前記熱変形温度に加熱したロール18a,18b間に供給され、ロール18aとロール18bの回転数の違いによる周速差摩擦作用、圧潰作用、及び加熱延伸作用によって結合物Kは複数の破砕片に分解・分離されるとともに、偏平状となって単純形状となる。また、結合物K以外の、複雑に折れ曲がっていた破砕片も前記ロール18a,18b間を通ることによって、前記同様に周速差摩擦作用、圧潰作用、及び加熱延伸作用を受けて単純形状となる。なお、高温圧潰方法(高温圧潰装置19)によれば、前記鉄製のロール18a,18bは、100℃以上に加熱することが可能であるため、熱変形温度が100℃を超えて115℃〜140℃の前記PC(ポリカーボネート樹脂)に適用できる。
【0027】
ステップ6(プラスチック選別工程):
ステップ6はプラスチック選別工程である。該プラスチック選別工程は、前工程の加熱工程(ステップ5)により、前記結合物Kを分離した破砕片又複雑に折れ曲がっていたものを単純形状にした破砕片からなる廃プラスチック破砕片Gを材質別に分離する工程である。プラスチック選別工程は、例えば、プラスチック選別工程の実施例1(図7)及び実施例2(図8)によって行うことができる。
【0028】
プラスチック選別工程の実施例1(図7):
前記プラスチック選別工程の実施例1(図7)は、「比重選別方法」によるものである。該比重選別手法による比重選別装置20は、図7に示したように、水を貯留した水槽21と、該水槽21内の上面側の水を一方側から他方側に流れるようにする循環装置22と、原料廃プラスチック破砕片Gを水槽21開口部における上流側に供給する供給ベルトコンベア23とを備える。さらに、水槽21開口部における下流側には、比重が軽くて水に浮かんで流れ着いたプラスチックを水槽21の外に搬送・排出する排出ベルトコンベア24が配設してある。前記循環装置22は、水槽21における前記一方側(上流側)に還流水の噴出口24aを備え、水槽21における前記他方側(下流側)に水槽21内の水を吸い込む吸込口24bを備え、前記噴出口24aと吸込口24bとを循環ポンプ24cと連通させる循環路24dを備えてなる。また、前記水槽21は、底部に、前記一方側(上流側)と他方側(下流側)との間に仕切りを設け、これによって第1分別槽21aと第2分別槽21bとが形成してある。そして、該第1分別槽21aと第2分別槽21bの各底面部には、比重選別によって沈下・堆積した廃プラスチック破砕片を水槽21外に排出するための排出スクリューコンベア21c,21dがそれぞれに設けてある。
【0029】
前記比重選別装置20の作用を説明する(図7参照)。前工程から供給される、破砕片が結合なく個々に分離され、かつ、形状が単純形状になされた複数材質からなる廃プラスチック破砕片Gは、前記比重選別装置20の水槽21内に供給して比重により、材質によって複数に分別される。具体的には、前記廃プラスチック破砕片Gは水槽21の一端側に供給ベルトコンベア23によって供給され、水槽21の一端側(上流側)に供給された前記廃プラスチック破砕片Gは、個々の材質・比重によって沈み、また、浮かんだ状態となりながら、前記循環装置22による水槽内の水の流れに沿って水槽21の他方側(下流側)に移送しながら、第1分別槽21a、第2分別槽21b及び水槽21の水面における他方側(下流側)の三つに分別される。
【0030】
前記比重選別装置20は、例えば、廃プラスチック破砕片Gの材質が、前述のPVC、PS、ABS、PE及びPPであった場合には、前記第1分別槽21aには、PVC破砕片(比重1.33〜1.44)が分別され、第2分別槽21bにはPS破砕片(比重1.02〜1.15)、ABS破砕片(比重1.03〜1.09)が分別され、さらに水槽21の水面における他方側(下流側)にはPE破砕片(比重0.90〜0.98)及びPP破砕片(比重0.90〜0.96)が分別される。分別されたPE破砕片及びPP破砕片は、前記排出ベルトコンベア24bによって水槽21外に排出され、また、前記第1分別槽21aに分別されたPVC破砕片は排出スクリューコンベア21cによって水槽21外に排出され、同様に、前記第2分別槽21bに分別されたPE破砕片及びPP破砕片は排出スクリューコンベア21dによって水槽21外に排出される。
【0031】
本発明の特徴的作用1:
前記比重選別装置20(プラスチック選別工程、実施例1)に供給される廃プラスチック破砕片は、前工程の加熱工程(ステップ5)の加熱による熱変形、延伸作用によって廃プラスチック破砕片が互いの結合状態から分離状態にされ、かつ、形状が単純形状になされた破砕片となっているため、水槽21中において比重分別する際に、破砕片は一つずつ確実に分別され互いに絡み合うこともなくなる。このため、純度よく、原料廃プラスチック破砕片を材質分別することができる。
【0032】
なお、前記第2分別槽21bから排出されたPS破砕片及びABS破砕片については、更にこれを材質ごとに分離するため、後述するプラスチック選別工程の実施例2(図8)「光学的選別方法」によって分別が可能である。また、同様に、排出スクリューコンベア21dによって水槽21外に排出したPE破砕片及びPP破砕片についても、前記光学的選別方法によって分別が可能である。
【0033】
プラスチック選別工程の実施例2(図8):
前記プラスチック選別工程の実施例2(図8)は、「光学的選別方法」によるものである。該光学的選別方法による光選別装置25は、原料の前記廃プラスチック破砕片Gを移送・搬送して終端側から放出・落下させるベルトコンベア26と、前記終端側から廃プラスチック破砕片Gが落下する落下軌跡Rに沿った位置に配設した廃プラスチック破砕片の材質判別を行う光学判別部27とを備える。さらに、落下軌跡Rに沿った前記光学判別部27よりも下方位置には、前記光学判別部27の材質判別処理に基づいて、廃プラスチック破砕片をそれぞれ判定材質ごとに噴風(空気銃)によって分別する分別部28も備える。
【0034】
前記光学判別部27は、落下軌跡Rにおける任意の光学検出位置に対して光を照射する照明部27aと、前記光学検出位置において照明部27aから照射されて廃プラスチック破砕片の各反射光を検出する受光部27bと、該受光部27bで検出した反射光に基づいて、各廃プラスチック破砕片の材質を判別する材質判別部27cとから構成する。また、前記分別部28は、落下軌跡Rに向って噴風する複数の噴風ノズル28a,28b,28c,28d,28e,28f,28gをそれぞれ間隔を空けて順次配設するとともに、前記各噴風ノズル28a,28b,28c,28d,28e,28f,28gの噴風によって落下軌跡Rから除去した廃プラスチック破砕片を収容する各収容部29a,29b,29c,29d,29e,29f,29gも配設する。そして、前記噴風ノズル28a,28b,28c,28d,28e,28f,28gと材質判別部27cとの間には、該材質判別部27cからの材質判別信号に基づいて何れかの噴風ノズル28a,28b,28c,28d,28e,28f,28gに噴風駆動信号を出力する高圧空気供給部30も備える。
【0035】
前記光選別装置25の作用を説明する(図8参照)。前工程から供給される、破砕片が結合なく個々に分離され、かつ、形状が単純形状になされた複数材質からなる廃プラスチック破砕片Gは、前記光選別装置25のベルトコンベア26から順次、放出落下される。前記ベルトコンベア26から順次、放出落下された各廃プラスチック破砕片は、前記材質判別部27によって各廃プラスチック破砕片の反射光を検出して材質判別され、判別結果に基づいて材質ごとに噴風分別される。図8の例では、原料の廃プラスチック破砕片Gは、PC破砕片、PET破砕片、PS破砕片、ABS破砕片、PVC破砕片、PP破砕片及びPE破砕片の複数の材質の廃プラスチック破砕片とした場合に、前記PC破砕片は噴風ノズル28aの噴風作用によって収容部29aに選別され、前記PET破砕片は噴風ノズル28bの噴風作用によって収容部29bに選別され、以下同様に、PS破砕片は収容部29c、ABS破砕片は収容部29dに、PVC破砕片は収容部29eに、PP破砕片は収容部29fに、PE破砕片は収容部29gにそれぞれ選別される。
【0036】
本発明の特徴的作用2:
前記光選別装置25(プラスチック選別工程、実施例2)に供給される廃プラスチック破砕片は、前工程の加熱工程(ステップ5)の加熱作用によって破砕片が結合状態でなく個々に分離され、かつ、形状が単純形状になされた破砕片となっているため、前記判別部27において、独立した破砕片から反射光を個々に検出でき、かつ、単純形状化された破砕片によって乱反射等が生じないので正確で安定的に反射光を検出することができるので、破砕片を一つずつ確実に噴風分別することができる。このため、純度よく、原料廃プラスチック破砕片を材質分別することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 破砕機
2 機体
3 回転軸
4 回転刃
5 固定刃
6 原料供給口
7 破砕物排出口
8 排出スクリーン
9 磁力選別機
10 ベルトコンベア
10a 搬送ベルト
10b マグネットプーリー
11 スクレイパー
12 仕切板
13 渦電流選別機
13a ベルトコンベア
14 マグネット回転体
15 仕切板
16 浸漬槽
17 メッシュ容器
18 高温回転ロール
18a 鉄ロール
18b 鉄ロール
18c 加熱手段
19 高温圧潰装置
19a ベルトコンベア
20 比重選別装置
21 水槽
21a 第1分別槽
21b 第2分別槽
21c 排出スクリューコンベア
21d 排出スクリューコンベア
22 循環装置
23 供給ベルトコンベア
24 排出ベルトコンベア
24a 排出口
24b 吸込口
24c 循環ポンプ
24d 循環路
25 光選別装置
26 ベルトコンベア
27 光学判別部
27a 照明部
27b 受光部
27c 材質判別部
28 分別部
28a 噴風ノズル
28b 噴風ノズル
28c 噴風ノズル
28d 噴風ノズル
28e 噴風ノズル
28f 噴風ノズル
28g 噴風ノズル
29a 収容部
29b 収容部
29c 収容部
29d 収容部
29e 収容部
29f 収容部
29g 収容部
G 廃プラスチック破砕片
K 結合物
R 落下軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック製品等を分解・破砕し有価物ごとに分別してリサイクル処理する際の廃プラスチック破砕片原料を材質分別する方法において、少なくとも材質分別する前の工程に、前記廃プラスチック破砕片が熱変形する所定温度で廃プラスチック破砕片を加熱する加熱前処理工程を設けたことを特徴とする廃プラスチック破砕片を材質分別する際の前処理方法。
【請求項2】
前記加熱前処理工程は、前記廃プラスチック破砕片を熱変形させる温度の液体が入った加熱浴槽に廃プラスチック破砕片を浸漬する加熱浸漬工程よりなる請求項1に記載の廃プラスチック破砕片を材質分別する際の前処理方法。
【請求項3】
前記加熱前処理工程は、前記廃プラスチック破砕片を熱変形させる温度に加熱した圧潰手段に廃プラスチック破砕片を供給して圧潰する圧潰工程よりなる請求項1に記載の廃プラスチック破砕片を材質分別する際の前処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−167727(P2010−167727A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13803(P2009−13803)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】