説明

廃培地を用いたリサイクル固形燃料と廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置

【課題】茸の栽培直後における廃培地を原料にしたり、茸の一部が残存している廃培地を原料に採用したとしても、低コストで製造することができる構成の廃培地を用いたリサイクル固形燃料と廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置を提供すること。
【解決手段】茸のうち少なくとも石突きが混合している状態の廃培地と、廃棄樹脂と、を加熱混合したことにより形成されていることを特徴とする廃培地を用いたリサイクル固形燃料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は茸の廃培地を用いたリサイクル固形燃料と廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
茸の人工栽培には、おが屑やコーンコブ等の植物由来の培地が用いられていることが多い。このような植物由来の培地を用いて茸の人工栽培を行った後は、一部の廃培地については堆肥化されることにより再利用がなされているものの、ほとんどの廃培地は廃棄処分されている。
【0003】
近年では、廃培地の廃棄処分に対する制約が多くなったことに加え、廃培地の廃棄処分には多額の費用をかけなければならず、茸栽培業者の生産コストが増大し、茸栽培業者の経営環境を悪化させている。そこで、茸の人工栽培後に発生する廃培地を原材料にしたいわゆるバイオマス燃料の製造方法が提案されている(特許文献1)。このようにして得られたバイオマス燃料により廃培地の廃棄処分量の削減および茸の人工栽培時に必要な燃料費の軽減が可能になった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−120890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においても開示されているように、茸の人工栽培を終えた後の廃培地の含水率は60%以上と高いことがほとんどである。したがって廃培地を乾燥させるために、ストックヤードに一定期間貯蔵する方法が採用されることが多い。この場合、リサイクル固形燃料の製造現場の近くに、ストックヤードの確保が必要になるといったスペース的な課題や管理コストに関する課題がある。
これに対して、廃培地をストックヤードで乾燥させる工程を省略し、栽培直後の廃培地を原材料に用いて燃料化を試みようとする際には、含水率の高い廃培地を乾燥処理しなければならならない。すなわち、リサイクル燃料を製造するために燃料が必要になるといった状況になってしまうといったリサイクル固形燃料を製造する上でのコストに関する課題がある。さらに、茸の種類によっては、栽培容器内に茸の一部である石突きや子実体の一部を培地内に残した状態で栽培されることがある。このように培地に茸の一部が残存することにより、廃培地の含水率はさらに高くなり、廃培地を用いたリサイクル固形燃料の製造コスト増大の問題は甚大になる。
【0006】
そこで本願発明は、茸の人工栽培直後における廃培地を原料にしたり、茸の一部が残存している廃培地を原料に採用したとしても、低コストで製造することができる構成の廃培地を用いたリサイクル固形燃料と、廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、鋭意研究を行った結果、茸の人工栽培後における廃培地を用いたリサイクル固形燃料の製造において好適な構成に想到した。
すなわち、茸のうち少なくとも石突きが混合している状態の廃培地と、廃棄樹脂と、を加熱混合したことにより形成されていることを特徴とする廃培地を用いたリサイクル固形燃料である。
【0008】
また、ホッパーと、該ホッパーに投入された廃培地および廃棄樹脂を加熱混合する加熱混合機と、該加熱混合機に連設され、前記加熱混合機により加熱混合して得たリサイクル固形燃料を排出する排出口が複数形成された排出口ブロックとを有していることを特徴とする廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置としての発明もある。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる廃培地を用いたリサイクル固形燃料と廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置によれば、廃棄樹脂が混合されている廃培地を加熱混合しているため、廃棄樹脂が溶融した際の発熱により廃培地の乾燥処理を行うことができ、茸の人工栽培直後における含水率が高い廃培地であっても、直ちにしかも低コストでリサイクル固形燃料を得ることが可能になる。
このように含水率が高い状態の廃培地であってもリサイクル固形燃料が得られるので、従来のようにスペース的な課題や製造コスト的な課題を解決することができる。また、化石燃料の代替品としての利用の拡大が期待でき、二酸化炭素排出量の削減や産業廃棄物処分場の長寿命化にも貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態における廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置の概略正面図である。
【図2】排出口ブロックの拡大透視正面図である。
【図3】排出路の配設状態を説明するための拡大透視正面図である。
【図4】他の実施形態の一例を示す樹脂廃棄物処理装置の概略正面図である。
【図5】図4の排出口ブロック部分の拡大正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかる廃培地を用いたリサイクル固形燃料の製造装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態においては、廃棄樹脂の一例として、いわゆる農業用マルチと呼ばれる合成樹脂製シート体を例示しているが、本願発明における廃棄樹脂は農業用マルチに限定されるものではなく、いわゆるビニールハウスに用いられた後の廃ビニールシートや、使用済みの樹脂容器(廃棄樹脂容器)等を用いることができるのはもちろんである。
また、本実施形態における廃培地とは、エリンギ茸の人工栽培後に発生した廃培地のことを指し、廃培地中には、子実体の一部、石突き、菌床部分が混合した状態のものを想定している。
【0012】
図1は、本実施形態における廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置の概略正面図である。図2は、排出口ブロックの拡大透視正面図である。図3は、排出路の配設状態を説明するための拡大透視正面図である。本実施形態における廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置50は、材料投入口であるホッパー10と、加熱混合機であるスクリューコンベア20と、排出口ブロック30とを有している。
【0013】
ホッパー10には、エリンギ茸の人工栽培を終え、栽培容器から取り出された直後の廃培地と、使用後の農業用マルチの廃棄品が投入される。原材料の一部としてホッパー10に投入される原材料の一部である廃培地には、エリンギ茸の石突きや子実体の一部の他、エリンギ茸の菌床部分といった含水率が高い残存物が混合していることがあるが、これら高含水率の残存物を廃培地から分離する必要はない。また、廃培地と共に原材料としてホッパー10に投入される廃棄樹脂である農業用マルチの廃棄品は、予め破砕機等により所要長さに切断処理されたものを投入することが好ましい。含水率が60%程度である廃培地の投入質量に対して農業用マルチの廃棄物の投入質量は、質量比で90:10〜95:5程度であることが好ましい。
ホッパー10には投入口を覆う蓋(図示せず)を配設してもよい。ホッパー10に蓋を配設することにより、廃培地および農業用マルチの廃棄品からの臭いの発散を防止することができ好都合である。
【0014】
ホッパー10に投入されたエリンギ茸の一部が混入した廃培地(以下、単に廃培地という)は、ホッパー10の底部に連設されたスクリューコンベア20により加熱処理と混合処理が並行して行われる。一般にスクリューコンベア20は、図1に示すように被搬送物が搬送されるにしたがって搬送経路22の断面積が減少する(搬送経路22の下流側の断面積が減少する)構成に形成されている。したがってスクリューコンベア20内を搬送される廃培地と農業用マルチの廃棄品からは圧縮熱が発生する。この圧縮熱によって廃培地および農業用マルチの廃棄品が加熱され、廃培地と農業用マルチの廃棄品との混合物の含水率を低下させることができる。このようにして含水率の低減処理がなされた廃培地と農業用マルチの廃棄品とを圧縮処理することによって固形燃料の成形が可能になっている。
スクリューコンベア20には、スクリューコンベア20内の搬送経路22の中を圧縮搬送された際に発生する水蒸気をスクリューコンベア20の外部に排出する蒸気排出部24が配設されていることが好ましい。また、搬送経路22の下流側には、搬送経路22を閉塞する配置で鉄製の排出口ブロック30が取り付けられている。
【0015】
図2に示すように、排出口ブロック30には、スクリューコンベア20側から部材厚さ方向に排出口ブロック30を貫通する排出路32が複数箇所に形成されている。
また、図3に示すように、搬送方向に直交する方向の搬送経路22の断面内を、搬送経路22の中心軸AXから各排出路32,32,・・・の中間位置を通って搬送経路22の断面の外方に延びる線L1,L2,L3,L4により区切った場合、各区分A1,A2,A3,A4の面積がそれぞれ均等になる配置で排出口32が配設されている。また、各排出路32は、排出路32,32,・・・の中心軸ax,ax,・・・と搬送経路22の中心軸AXとが平行になるように形成されている。
【0016】
先述のとおり、排出口ブロック30は鉄製であるから排出ブロック30の比熱は高い。これにより、スクリューコンベア20の搬送経路22の中で発生した圧縮熱を排出口ブロック30に蓄積することができる。また、スクリューコンベア20の搬出経路22の中で加熱混合(加熱圧縮)された廃培地と農業用マルチの廃棄品の混合物は、複数の排出路32,32,・・・に分岐されることになる。以上により、廃培地と農業用マルチの廃棄品の混合物のうち、スクリューコンベア20の搬送経路22において搬送経路22の内壁面に直接接触していなかった部分を、排出口ブロック30内の各排出路32,32,・・・の内壁面に接触させて加熱処理を十分に行うことが可能になる。
【0017】
本実施形態においては、排出口ブロック30に複数の排出路32,32,・・・を設けているので、スクリューコンベア20の搬送経路22の断面積に対する排出路32の断面積の減少量を抑えることができる。これにより、排出口ブロック30内における廃培地と農業用マルチの廃棄品の混合物の搬送速度を可及的に低速にすることができ、排出口ブロック30内においても廃培地と農業用マルチの廃棄品の混合物に充分な加熱処理を行うことができる。このように本実施形態に係るリサイクル固形燃料製造装置50によれば、廃培地と農業用マルチの廃棄品の混合物の全体に対して満遍なくしかも十分に加熱処理することができ、均一な状態のリサイクル固形燃料を得ることができる。したがってきわめて高品質なリサイクル固形燃料を得ることができる。
【0018】
(実施例)
エリンギ茸の子実体の一部(石突き)が残留した状態であり、含水率が60%である廃培地の投入質量100kgに対して農業用マルチの廃棄品の投入質量を7kgとした条件でリサイクル固形燃料を製造した事例について説明する。
ホッパー10に投入した廃培地と農業用マルチの廃棄品はスクリューコンベア20により加熱混合されながら搬送経路22の中を搬送される。搬送経路22を通過した後は排出口ブロック30に形成された複数の排出路32に分岐され、排出口ブロック30内で再び加熱処理がなされた後、排出路32の出口側(排出口)から排出される。このようにして製造されたリサイクル固形燃料の含水率を計測したところ7%程度であった。
【0019】
また、本実施形態により製造したリサイクル固形燃料の単位質量あたりの発生熱量を分析したところ、石炭の単位質量あたりの発生熱量と同程度の発生熱量を有していることが判明した。これは、本実施形態に係るリサイクル固形燃料は、農業用マルチの廃棄品を混合させた状態で形成を行っているので、単に廃培地のみを用いて製造したリサイクル固形燃料の発生熱量に比較して、本実施形態におけるリサイクル固形燃料の発生熱量を大幅に増大させることができるためと考えられる。
【0020】
本実施例に対して、廃培地に混合する農業用マルチの廃棄品の投入比率を高めることにより、排出路32の出口側から排出されるリサイクル固形燃料の側表面全体に、農業用マルチの廃棄品を溶融させて得た溶融樹脂を被覆させた状態にすることもできる。このようにリサイクル固形燃料の外表面に樹脂被覆を施すことで、リサイクル固形燃料への湿気の吸収を防止することができる。これにより長期間にわたり製造時におけるリサイクル固形燃料の含水率を維持することに加え、被覆部分の樹脂によりリサイクル固形燃料としての熱量をさらに増加させることもできる点においてきわめて好都合である。
【0021】
以上に、本願発明に係るリサイクル固形燃料とリサイクル固形燃料製造装置50について、実施形態に基づいて詳細に説明してきたが、本願発明は以上の実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては、排出口ブロック30にはスクリューコンベア20の搬送経路22の中心軸AXに対して排出路32の中心軸axが平行な配列になる配置で排出路32を形成しているが、排出路32の中心軸axを搬送経路22の中心軸AXの上流側又は下流側のいずれかの延長方向で交差する配列で形成しても良い。これにより、排出路32の延長を長くすることができ、排出口ブロック30における加熱処理時間を延ばすことができ、より確実に乾燥処理(加熱処理)されたリサイクル固形燃料を得ることができる。
【0022】
搬送経路22と排出路32の中心軸線を混合物の搬送方向の延長上で交差させる形態を採用すれば、各々の排出路32から排出させるリサイクル固形燃料を一体化することができる。これとは逆に、搬送経路22と排出路32の中心軸線を混合物の搬送方向とは反対側(上流側)の延長上で交差させる形態を採用すれば、各々の排出路32から排出させるリサイクル固形燃料を確実に分離させることができる。
搬送経路22と排出路32の中心線を交差させる条件は、リサイクル固形燃料に要求される形態に応じて適宜選択すればよい。
【0023】
また、図4に示すように、リサイクル固形燃料製造装置50の排出側端部(排出口ブロック30の端部)に排出路32から排出されたリサイクル固形燃料を切断するための切断装置40を配設してもよい。この切断装置40は、図5に示すように、排出路32の開口部分で、排出経路22の軸線AXに平行な回転軸周りに回転する回転刃42と回転刃42の回転動力部44とを有している。図5には回転動力部44としてモータを採用している。回転動力部44の出力を調整可能に設定することで、回転刃42の回転速度を変更し、リサイクル固形燃料の長さ寸法(大きさ)を適宜変更することができる。また、回転刃42はブレード形の刃を図示しているが、鋼の線材等を保持部に張設して形成したいわゆる糸鋸方式の回転刃を採用すれば、回転刃42へのリサイクル固形燃料の付着による切れ味の劣化を防止することができる。
【0024】
また、図5には、切断装置40の回転動力部44としてモータを用いた形態を示しているが、回転動力部44の変形例として、スクリューコンベア20の動力を回転動力として用いる動力変換機構を採用することもできる。この動力変換機構としては減速機を用いることができる。ここで、減速比が調整可能な減速機を採用すれば、リサイクル固形燃料の長さ寸法(大きさ)を適宜変更することができるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0025】
10 ホッパー
20 スクリューコンベア
22 搬送経路
24 蒸気排出部
30 排出口ブロック
32 排出路
40 切断装置
42 回転刃
44 回転動力部
50 リサイクル固形燃料製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茸のうち少なくとも石突きが混合している状態の廃培地と、廃棄樹脂と、を加熱混合したことにより形成されていることを特徴とする廃培地を用いたリサイクル固形燃料。
【請求項2】
前記加熱混合は、スクリューコンベアにより行われたものであることを特徴とする特徴とする請求項1記載の廃培地を用いたリサイクル固形燃料。
【請求項3】
前記茸は、エリンギ茸であることを特徴とする請求項1または2記載の廃培地を用いたリサイクル固形燃料。
【請求項4】
ホッパーと、該ホッパーに投入された廃培地および廃棄樹脂を加熱混合する加熱混合機と、該加熱混合機に連設され、前記加熱混合機により加熱混合して得たリサイクル固形燃料を排出する排出口が複数形成された排出口ブロックとを有していることを特徴とする廃培地を用いたリサイクル固形燃料製造装置。
【請求項5】
前記排出口のリサイクル固形燃料の排出方向における中心軸は、前記加熱混合機内における前記廃培地および前記廃棄樹脂の搬送方向における中心軸と交差する配列に形成されていることを特徴とする請求項4記載のリサイクル固形燃料製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−132469(P2011−132469A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295130(P2009−295130)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(504376289)豊田興産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】