説明

廃棄物の処理方法及び処理設備

【課題】2以上の処理系統を含む廃棄物の処理において、設備の省スペース化を図るとともに効率の良い脱窒を可能とし、さらに処理設備にて発生する臭気ガスを効果的に脱臭可能な廃棄物処理方法及び処理設備を提供する。
【解決手段】溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10と固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20とを複合的に処理する廃棄物の処理設備において、前記溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10を生物処理した生物処理液を固液分離し、分離液を高度処理する第1処理系統と、前記固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20を固液分離しその分離液を電解処理する第2処理系統とを備え、前記電解装置23にて発生した電解処理液の少なくとも一部を直接若しくは還元処理後に前記高度処理設備14に導入するとともに処理設備で発生する臭気ガスを電解で発生するガスで脱臭することにより効率的な装置群となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素分等の汚濁物質を含有する廃棄物(各種排水を含む)の処理に関し、特に、廃棄物を電解処理する処理系統を含む2以上の処理系統からなり、さらに前記汚濁物質とともに廃棄物の処理過程にて発生する臭気成分を効果的に処理する廃棄物の処理方法及び処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
し尿、浄化槽汚泥、生ごみ、家畜糞尿等の液状有機性廃棄物中には、SS(浮遊物質)、窒素分、リン分、BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)などの環境や人体に悪影響を及ぼす汚濁物質が含まれており、従来これらを除去する様々な方法が開発、実用化されている。
液状有機性廃棄物の処理は、主として固液分離によるSSの除去、BOD及びCODの酸化分解、リン、窒素化合物等の無機栄養塩類の除去、汚泥固形物の処理等が単独若しくは複数組み合わせて行われる。
一般的な液状有機性廃棄物の処理として、例えば汚泥再生処理センター等の液状有機性廃棄物処理施設の場合、受け入れられた液状有機性廃棄物を前処理して夾雑物等を除去した後に、全量を硝化脱窒素処理設備などの生物処理設備に投入して、液状有機性廃棄物中に含有されるBOD、T−N(全窒素)を処理した後、膜分離等により固液分離し、さらに凝集膜分離、活性炭処理等を施して系外に排出する方法が採られている。
【0003】
有機性廃棄物を生物処理する方法は広く用いられているが、該生物処理は微生物の分解作用を利用した処理であるため処理槽内を適正な条件に保持する必要がある。従って、処理対象とされる有機性廃棄物の性状、含有される汚濁物質の含有比率等を十分に考慮することが重要である。各種有機性廃棄物を統合的に処理する設備では、夫々の処理対象に適した装置を適宜組み合わせて処理を行う。例えば、特許文献1(特開2001−62495号)では、し尿及び浄化槽汚泥を脱水して分離液を生物処理し、生物処理にて発生した余剰汚泥と生ごみ等の有機性廃棄物とをメタン発酵させる2つの処理系統を含む処理方法が開示されている。前記生物処理では、処理対象のC/N比(有機物/窒素比)を脱窒が効率よく行われる値に維持する必要があるため、従来はメタノール等の易分解性の有機物を添加する必要があった。そこで特許文献1では、前記メタン発酵後の発酵汚泥を可溶化し、易分解性有機物として生物処理に返送する構成を提案している。これにより、メタノール等の外部投入を減少若しくは皆無とするようにしている。
【0004】
しかし、従来の液状有機性廃棄物処理施設では、水理学的滞留時間を数日間(5〜10日程度)必要とする生物処理を主体としているものであり、この水槽容量が施設の敷地面積に占める割合が多いため、受入物全量を生物処理に投入した場合、施設のコンパクト化が困難であった。特に特許文献1のように、し尿のような溶解性の汚濁物質の割合が高い廃棄物と浄化槽汚泥のような固形性の汚濁物質の割合が高い廃棄物とを同時に処理する場合には、前処理された廃棄物の全量を生物処理に投入するため、生物処理槽及び後段の固液分離装置、高度処理設備が大型化し、施設全体のコンパクト化が困難となる。特に、固液分離装置に膜分離を採用した場合は、膜面積が大きくなり膜交換などのメンテナンスコストが嵩むという問題を有していた。
【0005】
また、特許文献2(特開2004−202484号公報)には、電解処理により脱窒を行う方法が開示されている。特許文献2は統合的な処理を目的としたものではないが、電解処理という物理化学的な脱窒処理を備えることにより、生物処理を設けない、或いは生物処理への負荷を軽減することを可能とする。
しかし、電解処理を採用する場合の問題点として、処理の過程にて発生する排ガス中には酸化力が非常に強く、人体への影響がある塩素、オゾン等が含まれるという問題がある。さらに、電解処理中に次亜塩素酸等が残留することもあり、電解処理水を何らかの後処理することなく公共水域へ放流することは困難なものとなっている。
【0006】
一方、排水をも含むあらゆる廃棄物の処理における他の問題点として、臭気の発生が挙げられる。廃棄物の受入槽、貯留槽及びその処理過程にて発生するガスには、硫化水素、メチルカプタン類等の酸性ガス、アンモニア、アミン類等の塩基性ガス、及びアルデヒド類等の中性ガスなどの悪臭成分が含有される。これらの臭気ガスは公害の要因となるため、処理設備内で除去する必要がある。従来は、発生した臭気ガスを捕集し、脱臭装置にて悪臭成分を除去し、基準値以下の濃度とした後、大気放出していた。前記脱臭装置は、例えば生物脱臭方式、薬液洗浄方式、活性炭吸着方式等が挙げられ、生物脱臭方式は悪臭成分を含んだ臭気ガスを強制的に生物層を通過させ、臭気のない物質に変換させるものであり、薬液洗浄方式は酸、アルカリ等の薬液により中和させる方法或いは次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤により洗浄する方法である。
【0007】
【特許文献1】特開2003−53395号公報
【特許文献2】特開2004−202484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、2以上の処理系統を含む廃棄物の処理において、設備のコンパクト化、省スペース化を図るとともに効率の良い脱窒を可能とし、さらに処理設備にて発生する臭気ガスを効果的に脱臭可能な廃棄物処理方法及び処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、し尿等の溶解性汚濁物質の割合が高い液状廃棄物と、浄化槽汚泥等の固形性汚濁物質の割合が高い液状廃棄物とを統合的に処理する技術を提案する。
一例として、し尿と浄化槽汚泥を例に挙げて説明すると、下記表1に示されるように、その成分比率には明らかな相違がみられる。ここで、処理設備にて処理される収集し尿とは、排出されたし尿、紙類、便器の洗浄排水等が便槽で一定期間貯留された後、バキューム車等によって汲み取られたものであり、収集浄化槽汚泥とは、浄化槽の清掃の際にバキューム車によって汲み取られた清掃汚泥であり、一般に収集浄化槽汚泥は、収集し尿に比べて濃度が低く、変動幅が大きいことが特徴である(参考文献;汚泥再生処理センター等施設整備の計画・設計要領 社団法人全国都市清掃会議 2001/09)。
【0010】
【表1】

【0011】
一般的に、収集し尿には溶解性汚濁物質の含有率が高く、収集浄化槽汚泥は固形性汚濁物質の含有率が高いことが知られている。このように性状の異なる有機性廃棄物を同じ処理系統で処理すると、生物処理設備、固液分離設備等の装置の大型化、処理効率の低下に繋がるため、本発明では2以上の処理系統を効果的に組み合わせることにより設備のコンパクト化、省スペース化が可能で、且つ処理効率の向上が達成できる廃棄物の処理方法及び処理設備について提案する。
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物と、固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物とを複合的に処理する廃棄物の処理方法において、
前記溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物を生物処理する生物処理工程と、該生物処理後の生物処理液を高度処理する高度処理工程とを含む第1処理系統と、
前記固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物を固液分離する固液分離工程と、該固液分離した分離液を電解処理する電解処理工程とを含む第2処理系統と、を備え、
前記電解処理工程にて発生した電解処理液の少なくとも一部を、直接若しくは還元処理した後前記高度処理工程に導入することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物のみを生物処理し、固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物については固液分離した後に電解処理するようにしたため、生物処理槽にかかる負荷が大幅に軽減され、また後段の固液分離設備等も小型化できるため、施設全体が大幅にコンパクト化される。
また、前記電解処理工程にて発生した電解処理液を前記高度処理工程にて合流させて同時に処理することにより、電解処理液の中に僅かに残留する次亜塩素酸イオン、オゾン等、又はOH・(ヒドロキシラジカル)等の活性酸素により、第1処理系統における分離液中のCOD、色度成分等の汚濁物質を一部分解することができ、高度処理工程における負荷が減少し、凝集剤や活性炭使用量の低減が可能となる。
さらに、電解処理液中に残留する次亜塩素酸イオン、オゾン等、OH・等の活性酸素により、前記第1処理系統における処理液の滅菌ができ、高度処理工程の後段に設けられる消毒設備(不図示)を縮小又は、不要とすることができる。
尚、前記溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物とは、例えばし尿、家畜糞尿が挙げられる。また、前記固形性汚濁物質の含有率が高い含む液状廃棄物とは、例えば浄化槽汚泥等が挙げられる。
また、電解処理中に、後段の処理に悪影響を及ぼすレベルの活性酸素が残留する場合は、還元剤であるチオ硫酸ナトリウムを添加するなどの手法により、還元処理を行った後、後段に導入しても良い。
【0013】
また、前記第2処理系統にて、前記電解処理工程の後段に前記電解処理液を、直接若しくは還元処理した後生物処理する第2生物処理工程を設け、
前記第2生物処理工程にて発生した生物処理液を前記高度処理工程に導入することを特徴とする。
本発明では、前記第2処理系統に第2の生物処理工程を設けることにより、前記電解処理液中に僅かに窒素分、BOD等が残留した場合においても、これらの汚濁物質を確実に排出基準以下まで低減することができ、且つ前記溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物の生物処理工程、固液分離工程にて装置を大型化する必要がなく、施設全体のコンパクト化を図ることができる。
【0014】
また、前記第1処理系統にて、前記生物処理工程にて発生した生物処理液を固液分離する汚泥分離工程と、該汚泥分離した分離汚泥を脱水する脱水工程とを備え、該脱水工程にて発生した脱水分離液を前記電解処理工程に導入することを特徴とする。
これにより、汚濁物質濃度が希薄な脱水分離液を前記生物処理工程に流入させる必要がなく、より一層生物処理工程及び汚泥分離工程にて装置の小型化が可能となる。
この場合は、前記分離汚泥を固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物と混合し、第2処理系統の固液分離工程において、固液分離を行うと同時に脱水し、発生した脱水分離液を電解処理工程に導入するようにしても良く、これにより脱水装置を一元化でき、装置がコンパクト化する。
さらにまた、前記第2処理系統の前記電解処理工程にて発生した電解処理液の少なくとも一部を、直接若しくは還元処理した後前記第1処理系統の前記生物処理工程に導入することを特徴とする。
これによれば、前記電解処理工程から排出される電解処理液を前記生物処理工程に導入しているため、該電解処理液中に僅かに残留する窒素分、BODを前記生物処理工程にて同時に除去することができる。
【0015】
また、2以上の処理系統からなる廃棄物の処理方法において、
一の処理系統が、排水を電解処理する電解処理工程を含み、
これらの処理系統にて発生する臭気ガスを捕集して該臭気ガスの臭気成分を除去する脱臭工程を備え、
前記電解処理工程にて発生する電解排ガスを前記脱臭工程に導入し、該脱臭工程にて前記電解排ガスと前記臭気ガスとを気気接触させることを特徴とする。
また別の方法として、2以上の処理系統からなる廃棄物の処理方法において、
一の処理系統が、排水を電解処理する電解処理工程を含み、
これらの処理系統にて発生する臭気ガスを捕集して該臭気ガスの臭気成分を除去する脱臭工程を備え、
前記電解処理工程にて発生する電解処理液を前記脱臭工程に導入し、該脱臭工程にて前記電解処理液と前記臭気ガスとを気液接触させることを特徴とする。
【0016】
これらの発明によれば、前記脱臭工程にて、前記捕集された臭気ガスと前記電解排ガス若しくは前記電解処理液を気気接触若しくは気液接触させることにより、電解排ガス若しくは電解処理液中に含まれる塩素、オゾン等の作用により臭気ガス中の臭気成分濃度を低減することができ、施設全体の臭気を処理する脱臭設備のコンパクト化を図ることができる。このとき前記脱臭工程にて、電解排ガス若しくは前記電解処理液中に含有される塩素、オゾンも同時に無害化されるため、これらを処理するための装置を不要とすることができる。
【0017】
また、前記電解処理工程、若しくは該電解処理工程より上流側にてオゾンを導入することが好ましい。
このようにオゾン含有水を電解処理することで、OH・が発生し、排水に対しては、PCB、ダイオキシンなど内分泌撹乱化学物質を分解することも可能となるとともに、臭気処理としては、アンモニア、硫化水素より、難分解である有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸)、メチルカプタン等の分解も可能となる。
さらに、前記臭気ガスが、アンモニア成分を多く含む臭気ガスであることを特徴とする。これは、アンモニアと塩素の反応は非常に速いため、堆肥化設備等のアンモニア成分を多く含有する臭気ガスに対して本発明が有効に適用できるものである。
さらにまた、前記臭気ガスが、硫黄系臭気成分を多く含む臭気ガスであることを特徴とする。これは、硫化水素はオゾンによる酸化により硫酸となり、排水中に吸収されるため、廃棄物の受入・前処理設備や生物処理における余剰汚泥の貯留槽などの硫黄系臭気成分を多く含む臭気ガスに対して本発明が有効に適用できる。
【0018】
また、溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物と固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物とを複合的に処理する廃棄物の処理設備において、
前記溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物を生物処理する生物処理設備と、該生物処理設備にて発生した生物処理液汚泥を分離する汚泥分離設備と、該汚泥分離された汚泥分離液を高度処理する高度処理設備とを含む第1処理系統と、
前記固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物を固液分離する固液分離設備と、該固液分離された固液分離液を電解処理する電解装置とを含む第2処理系統と、を備え、
前記電解装置にて発生した電解処理液の少なくとも一部を、直接若しくは還元処理した後、前記高度処理設備に導入する導入ラインを設けたことを特徴とする。
【0019】
また、前記第2処理系統にて、前記電解装置の後段に前記電解処理液を、直接若しくは還元処理した後生物処理する第2生物処理設備を設け、
前記第2生物処理設備にて発生した生物処理液を前記高度処理設備に導入することを特徴とする。
さらに、前記第1処理系統の汚泥分離設備にて発生した分離汚泥を脱水する脱水機を備え、該脱水機にて発生した脱水分離液を前記電解装置に導入することを特徴とする。この場合は、前記汚泥分離設備における分離汚泥と、固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物とを混合し、前記第2処理系統の固液分離設備にて脱水機能を有する装置を設け、混合物を固液分離設備にて脱水し、この分離液を前記電解装置に導入しても良い。
さらにまた、前記第2処理系統の前記電解装置にて発生した電解処理液の少なくとも一部を、直接若しくは還元処理した後、前記第1処理系統の前記生物処理設備に導入することを特徴とする。
【0020】
また、2以上の処理系統からなる廃棄物の処理設備において、
一の処理系統が、排水を電解処理する電解装置を含み、
これらの処理系統にて発生する臭気ガスをダクトを介して捕集し、該臭気ガスの臭気成分を除去する脱臭装置を備え、
前記脱臭装置が、前記電解装置にて発生する電解排ガスが導入され、装置内にて前記電解排ガスと前記臭気ガスとを気気接触させる構成であることを特徴とする。
さらに、2以上の処理系統からなる廃棄物の処理設備において、
一の処理系統が、排水を電解処理する電解装置を含み、
これらの処理系統にて発生する臭気ガスをダクトを介して捕集し、該臭気ガスの臭気成分を除去する脱臭装置を備え、
前記脱臭装置が、前記電解装置にて発生する電解処理液が導入され、装置内にて前記電解処理液と前記臭気ガスとを気液接触させる構成であることを特徴とする。
また、前記電解装置内、若しくは該電解装置より上流側にオゾンを導入することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上記載のごとく本発明によれば、複数の処理系統を効果的に組み合わせて複合的な処理方法としたため、設備のコンパクト化、省スペース化が図れるとともに、処理効率の向上が達成できる。
また、電解処理を行う構成としたため、生物処理にかかる負荷を軽減することができるとともに、該電解処理にて発生する電解処理液、電解排ガスを脱臭に用いることにより臭気成分を効率良く除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施例にて処理対象とされる廃棄物は、例えばし尿、家畜糞尿の溶解性汚濁物質を多く含有する液状廃棄物、及び浄化槽汚泥等の固形性汚濁物質を多く含有する液状廃棄物、生ごみ、家畜糞などの固形性廃棄物、及びこれらの処理過程から発生するもしくは、場合によっては、外部から搬入される排水である。
図1〜図6は本実施例1〜6に係る廃棄物の処理設備のブロック図、図7は本実施例の電解装置の一例を示す概略構成図、図8は脱臭装置の一例を示す概略構成図である。
【実施例1】
【0023】
図1に示されるように、本実施例1に係る廃棄物の処理設備は、溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10の処理を行う第1処理系統と、固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20の処理を行う第2処理系統からなる2つの処理系統を備える。
前記第1処理系統は、処理工程の上流側から順に、溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物10が導入される前処理設備11と、該前処理後の液状廃棄物10が導入される生物処理設備12と、生物処理後の処理液が導入される汚泥分離設備13と、汚泥分離液が導入される高度処理設備14と、分離汚泥15が導入される脱水機16と、から構成される。
一方、前記第2処理系統は、処理工程の上流側から順に、固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物20が導入される前処理設備21と、前処理液が導入される固液分離設備22と、固液分離液が導入される電解処理装置23と、固液分離汚泥27が前記脱水機16からの汚泥15とともに導入される汚泥処理設備24と、から構成される。
【0024】
前記溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10及び前記固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物20の前処理設備11、21は、廃棄物中に含有される夾雑物を除去するスクリーン等が挙げられる。
また、前記汚泥分離設備13、前記固液分離設備22は例えば、ダイナミックろ過、重力沈殿、凝集分離、膜分離、砂ろ過等の分離手段や遠心分離、ベルトプレス、スクリュープレスなどの脱水機能を有するものを単独もしくは二つ以上組み合わせて用いることができる。前記膜分離では、UF膜、MF膜、RO膜等が用いられる。
さらに、前記第1処理系統において、前記生物処理設備12は、嫌気槽と好気槽と沈殿槽が複数組み合わされた構成を有し、主に硝化菌と脱窒菌の作用により液中のBOD、窒素化合物等を分解除去する装置、或いは調整槽とメタン発酵槽とから構成され、メタン菌の作用により有機物を分解してメタンガスを回収する装置、等が挙げられる。
前記高度処理設備14としては凝集分離装置、オゾン酸化装置、活性炭吸着塔等が挙げられる。
【0025】
前記第2処理系統において、前記汚泥処理設備24は、分離汚泥27の脱水、乾燥、焼却、堆肥化等を行なう設備であり、好適には汚泥の堆肥化等により廃棄物の資源化を促進する設備とする。
前記電解装置23は、固液分離液を電解処理する電解槽と、該電解槽内に貯留された分離液に浸漬される陽極及び陰極と、該陽極及び陰極に接続される直流電源と、から構成され、本実施例に適用できる電解の種類としては、直流電解、オゾン電解、触媒電解、パルス電解、メッシュ状、粒状電極を用いた電解等が挙げられる。
【0026】
図7に本実施例に係る電解装置の一例を示す。図7に示される電解装置23は、鉛直上下方向を長手方向とする縦長状の処理槽31を備え、該処理槽31の底部には被処理水入り口31a、上部には被処理水出口31bが設けられるとともに、所定の電圧、電流密度が得られるように陽極と陰極からなる板状電極対32を多数本、槽内全域に亘って垂設されている。
電極対32には、直流電圧を印加する直流安定化電源33が、電極対32間の電圧、電流、抵抗値などを監視するマルチメータ34を介して接続されている。処理槽31は、循環ポンプ35と循環管路36が接続されており、これらからなる循環経路35〜36により所定時間液循環されるように構成されている。
【0027】
前記処理槽31内では、前記固液分離液を電気分解することによって、下記反応式により主として次亜塩素酸系の強酸化物質が生成される。
(陽極) 2Cl → Cl+2e
Cl+HO → HClO+HCl
(陰極) NO+6HO+8e → NH+9OH
2HO+2e → 2OH+H
陽極では、塩素が発生し、さらにその塩素が水と反応し、強力な酸化力を有する次亜塩素酸(HClO)を生成する。一方、陰極では分離液中に硝酸イオンが含まれる場合は、アンモニアへ還元され、また硝酸イオンが含まれない場合は、水の電解により水素が発生する。
分離液中に含まれるアンモニア、若しくは電気分解によって生成したアンモニアは、陽極で生成した次亜塩素酸によって、下記反応式により分解、除去される。
2NH+3HClO → N↑+3HCl+3H
前記電解装置23により、分離液中に含有される窒素分の大部分は分解除去される。
陽極にはあらゆる前記陽極材反応が可能とするあらゆる材質が採用できるが、Clの発生効率を向上させる為、チタンなどを基体とし、白金、白金複合材を被覆したものが好適である。
また、陰極は鋼板、ステンレス板、チタン板などが採用できるが、NOの還元性が良い銅板、銅合金板などが好適である。
【0028】
次に、本実施例に係る処理装置における有機性廃棄物の作用を説明する。
第1処理系統では、まず溶解性汚濁物質の含有率の高い廃棄物10は前処理装置11にて夾雑物除去等の前処理を施された後、生物処理設備12に導入され、前記溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10中に含有される窒素分、BOD等が除去される。該生物処理設備12から排出された生物処理水は汚泥分離設備13に導入され、該汚泥分離設備13にて汚泥分離液と汚泥分離汚泥15とに分離され、該分離液は高度処理設備14に導入されて高度処理が施され、前記汚泥15は脱水機16にて脱水される。
一方、第2処理系統では、固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20は前処理設備21にて夾雑物除去等の前処理を施された後、固液分離設備22に導入され、固液分離された固液分離液は電解装置23に導かれ、該電解装置23により分離液中の窒素分が除去される。さらに、前記電解装置23から排出される電解処理液は、前記第1処理系統の前記高度処理設備14の入口若しくは出口に送給され、ここで前記第1処理系統の汚泥分離液と合流されて高度処理を施された後に放流される。
【0029】
また、前記第2処理系統における前記固液分離設備22にて分離された固液分離汚泥27は、前記第1処理系統における前記汚泥分離設備13にて分離され、脱水機16にて脱水された脱水汚泥とともに汚泥処理設備24に導入され、処理される。
さらに、前記第2処理系統において、前記電解装置23から排出した電解処理液を第2の生物処理設備(不図示)に導入し、この生物処理水を前記高度処理設備14の入口若しくは出口に合流するようにしても良く、前記電解処理液中に僅かに残留する窒素、BODを、水質に応じた生物処理により除去するようにしても良い。このとき、前記電解処理液はSS、BOD等の汚濁物質濃度が低いため、前記第2の生物処理設備は、生物固定床による方式が好適である。
【0030】
このように、本実施例では、固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20を固液分離し、固形性汚濁物質を除去することにより汚濁物質の負荷を低減し、負荷の小さい固液分離液を電解処理することにより、施設全体が大幅にコンパクト化される。また、本実施例では溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10と固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20とを分けて処理しているため、前記汚泥分離設備13又は前記固液分離設備22として沈殿槽を採用した場合には水面積を大幅に縮小でき、膜分離装置を採用した場合には膜面積を大幅に縮小することができ、施設のコンパクト化、メンテナンス費用の低減が達成できる。
また、前記第1処理系統における前記電解装置23から排出される電解処理液を、前記第2処理系統の前記高度処理設備14にて合流させて同時に処理することにより、電解処理液の中に僅かに残留する次亜塩素酸イオン、オゾン等、又はOH・(ヒドロキシラジカル)等の活性酸素により、前記第1処理系統における分離液中のCOD、色度成分等の汚濁物質を一部分解することができ、高度処理設備14の負荷が減少し、凝集剤や活性炭使用量の低減が可能となる。
【0031】
また、電解処理液中に残留する次亜塩素酸イオン、オゾン等、OH・等の活性酸素により、前記第1処理系統における分離液の滅菌ができ、高度処理設備14の後段に設置される消毒設備(不図示)を縮小又は、不要とすることができる。
さらに、前記第2処理系統に、前記第2の生物処理設備を設けることにより、前記電解処理液に僅かに窒素分、BODが残留した場合においても、これらの汚濁物質を確実に排出基準以下まで低減することができ、且つ前記溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10の生物処理設備12、汚泥分離設備13等を大型化する必要がなく、施設全体のコンパクト化を図ることができる。
【実施例2】
【0032】
図2に本実施例2に係る有機性廃棄物の処理設備のブロック図を示す。尚、以下の図2〜図6に示す実施例2〜実施例6に関し、上記した実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
図2に示されるように、本実施例2に係る処理設備は、溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10の処理を行う第1処理系統と、固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20の処理を行う第2処理系統からなる2つの処理系統を備え、前記第1処理系統は、処理工程の上流側から順に、溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10が導入される前処理設備11と、該前処理後の液状廃棄物10が導入される生物処理設備12と、生物処理後の生物処理液が導入される汚泥分離設備13と、汚泥分離液が導入される高度処理設備14と、分離汚泥15が導入される脱水機16と、から構成される。
一方、前記第2処理系統は、処理工程の上流側から順に、固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20が導入される前処理設備21と、前処理後の液状廃棄物20が導入される脱水機16と、脱水処理液が導入される電解処理装置23と、脱水汚泥が導入される汚泥処理設備24と、から構成される。
【0033】
本実施例に係る処理装置の作用を説明すると、第1処理系統では、まず該溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10は前処理装置11にて夾雑物除去等の前処理を施された後、生物処理設備12に導入され、前記溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10中に含有される窒素分、BOD等が除去される。該生物処理設備12から排出された生物処理液は汚泥分離設備13に導入され、該汚泥分離設備13にて汚泥分離液と分離汚泥15とに分離され、該分離液は高度処理設備14に導入されて高度処理が施され、前記汚泥15は脱水機16にて脱水される。
一方、第2処理系統では、固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20は前処理設備21にて夾雑物除去等の前処理を施された後に脱水機16にて脱水され、脱水分離液は電解装置23に導入され、該電解装置23により液状廃棄物中の窒素分が除去される。さらに、前記電解装置23から排出される電解処理液は、前記第1処理系統の前記高度処理設備14の入口若しくは出口に送給され、ここで前記溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10の分離液と合流されて高度処理を施された後に放流される。
また、前記脱水機16にて脱水された脱水汚泥は汚泥処理設備24に導入され、処理される。
【0034】
本実施例2では、第1処理系統の汚泥脱水工程にて発生した脱水分離液を、前記第2処理系統の電解装置23に導入するようにしたため、汚濁物質濃度が希薄な脱水分離液を生物処理設備12に流入させる必要がなく、生物処理設備12、汚泥分離設備13をコンパクト化することができる。
また、本実施例2では、前記実施例1と同様に、前記高度処理設備14にて2の処理系統を合流させることにより、電解処理液の中に僅かに残留する次亜塩素酸イオン、オゾン等、又はOH・等の活性酸素により、前記第1処理系統における分離液中のCOD、色度成分等の汚濁物質を一部分解することができ、高度処理設備14の負荷が減少し、凝集剤や活性炭使用量の低減が可能となる。
さらに、電解処理液中に残留する次亜塩素酸イオン、オゾン等、OH・等の活性酸素により、前記第1処理系統における分離液の滅菌ができ、高度処理設備14の後段に設置される消毒設備(不図示)を縮小又は、不要とすることができる。
【実施例3】
【0035】
図3に本実施例3に係る有機性廃棄物の処理設備のブロック図を示す。
図3に示されるように、本実施例3に係る有機性廃棄物の処理設備は、溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10の処理を行う第1処理系統と、固形成汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20の処理を行う第2処理系統からなる2つの処理系統を備え、前記第1処理系統は、処理工程の上流側から順に、溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10が導入される前処理設備11と、該前処理液が導入される生物処理設備12と、生物処理液が導入される汚泥分離設備13と、分離液が導入される高度処理設備14と、分離汚泥15が導入される脱水機16と、から構成される。
一方、前記第2処理系統は、処理工程の上流側から順に、固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物20が導入される前処理設備21と、前処理後の液状廃棄物20が導入される脱水機16と、脱水後の脱水分離液が導入される電解処理装置23と、脱水汚泥が導入される汚泥処理設備24と、から構成される。
【0036】
本実施例に係る処理装置の作用を説明すると、第1処理系統では、まず溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10は前処理装置11にて夾雑物除去等の前処理を施された後、生物処理設備12に導入され、前処理液中に含有される窒素分、BOD等が除去される。該生物処理設備12から排出された処理液は汚泥分離設備13に導入され、該汚泥分離設備13にて汚泥分離液と分離汚泥15とに分離され、該分離液は高度処理設備14に導入されて高度処理が施され、前記分離汚泥15は脱水機16にて脱水される。
一方、第2処理系統では、固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物20は前処理設備21にて夾雑物除去等の前処理を施された後に脱水機16にて脱水され、脱水分離液は電解装置23に導入され、該電解装置23により液状廃棄物中の窒素分が除去される。さらに、前記電解装置23から排出される電解処理液は、前記第1処理系統の前記生物処理設備12に送給され、ここで溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物10と合流されて生物処理される。
また、前記脱水機16にて脱水された脱水汚泥は汚泥処理設備24に導入され、処理される。
本実施例3によれば、前記電解処理設備23から排出される電解処理液を前記生物処理設備12に導入しているため、該電解処理液中に僅かに残留する窒素分、BODを前記生物処理設備12にて同時に除去することが可能である。
【実施例4】
【0037】
図4に本実施例4に係る廃棄物の処理設備のブロック図を示す。
図4に示されるように、本実施例4に係る処理設備は排水30の処理系統と固形性廃棄物40の処理系統の2系統を含むが、これに限定されるものではなく、2種類以上の有機性廃棄物を処理する2以上の処理系統を含む設備であれば良い。
前記固形性廃棄物40の処理を行う第2処理系統は、該固形性廃棄物40が導入される堆肥化設備25を備え、前記排水30の処理を行う第1処理系統は、該排水30が導入される前処理設備11と、前処理後の排水の少なくとも一部が導入される電解装置23と、前記前処理後の廃棄物のうち他の一部が導入される生物処理設備12と、を備えている。
前記堆肥化設備25は、有機性廃棄物を原料として微生物の発酵作用を利用して堆肥を製造する周知の装置である。
【0038】
本実施例では、前記堆肥化設備25、前処理設備11、若しくは前記生物処理設備12等の臭気発生源からダクトを介して臭気ガスが捕集され、これらの臭気ガスが導入される脱臭装置18を備えている。さらに、前記脱臭装置18には、前記電解装置23にて発生した電解排ガスの少なくとも一部が導入される構成となっている。
前記脱臭装置18は、前記捕集された臭気ガスと、前記電解排ガスを気気接触させることにより、電解排ガス中に含まれる塩素、オゾン等の作用により臭気ガス中の臭気成分濃度を低減することができ、設備全体の臭気を処理する脱臭設備18のコンパクト化を図ることができる。この脱臭装置18により、電解排ガス中に含有される塩素、オゾンも同時に無害化され、電解排ガスを処理するための水吸収等の処理を不要とすることができる。
【0039】
尚、本実施例において好適に処理可能な臭気ガスは、固形性廃棄物40を好気的な微生物発酵による堆肥化設備25で発生したガスであり、アンモニアを多量に含むガスである。これはアンモニアと塩素の反応は非常に速く、本実施例が有効に適用できるものである。
さらに、前記臭気ガスが、硫化水素、メチルカプタン、二硫化メチル等の硫黄系の臭気成分を多量に含むものであっても良い。このとき、臭気発生源としては、排水30及び固形性廃棄物40の受入・前処理設備や生物処理における余剰汚泥の貯留槽などが挙げられる。
これは、硫化水素はオゾンによる酸化により硫酸となり、排水中に吸収されるため、本実施例が有効に適用できる。
【実施例5】
【0040】
図5に本実施例5に係る廃棄物の処理設備のブロック図を示す。
図5に示されるように、本実施例5に係る処理設備は排水30の処理を行う第1処理系統と、固形性廃棄物20の処理を行う第2処理系統の2系統を含む。
前記第2処理系統は、該固形性廃棄物40が導入される堆肥化設備25を備え、前記第1処理系統は、排水30が導入される前処理設備11と、前処理後の廃棄物の少なくとも一部が導入される電解装置23と、前記前処理後の廃棄物のうち他の一部が導入される生物処理設備12と、を備えている。
前記堆肥化設備25は、有機性廃棄物を原料として微生物の発酵作用を利用して堆肥を製造する周知の装置である。
【0041】
本実施例では、前記堆肥化設備25、前処理設備11、若しくは前記生物処理設備12等の臭気発生源からダクトを介して臭気ガスが捕集され、これらの臭気ガスが導入される薬液洗浄塔19を備えている。さらに、前記薬液洗浄塔19には、前記電解装置23にて発生した電解処理液の少なくとも一部が導入される構成となっている。
前記薬液洗浄塔19の一例を図8に示す。同図に示されるように、前記薬液洗浄塔19は、本体41の底部に設けられた臭気ガス導入口42と、上部に設けられた処理ガス出口43と、本体41内部のガス流断面に亘って配設された充填層44と、該充填層44の上方に設けられた電解処理液散布ノズル45と、電解処理液を循環させるポンプ46と、を備えている。
前記本体41内には、前記ポンプ46により汲み上げられた電解処理液が、前記散布ノズル45から散布され、底部に溜まった電解処理液は再度前記ポンプ46により循環されるようになっている。
前記臭気ガス導入口42より導入される臭気ガスは、充填層を通過する際に、前記散布ノズル45より散布される電解処理液と均一に接触され、該電解処理液中に残留する次亜塩素酸イオン、オゾン等の活性酸素により、臭気成分が低減される。
【0042】
本実施例によれば、施設内にて発生する臭気ガスを、電解処理液と接触させることにより、電解処理液中に僅かに残留する次亜塩素酸イオン、オゾン等の活性酸素により、臭気成分が低減され、施設全体の臭気ガスを処理する脱臭設備のコンパクト化が可能となる。
【実施例6】
【0043】
図6に本実施例6に係る有機性廃棄物の処理設備のブロック図を示す。
図6に示されるように、本実施例6に係る処理設備は前記実施例5と略同様の構成を有する。本実施例における特徴的な構成は、水又は前記電解装置23にて発生した電解処理液の少なくとも一部を前記薬液洗浄塔19に導入し、前記堆肥化設備25、前記前処理設備11、前記生物処理設備12にて発生した臭気ガスと気液接触させ、臭気成分を吸収した廃液を前記電解装置23に導入する構成である。
本実施例によれば、C/N比の低い排水を効率的に処理することが可能となる。
【0044】
また、電解装置23の前段、装置内若しくは電解装置23の循環ラインにオゾン28を吹き込むことが好適である。
このように、オゾン含有水を電解することにより、OH・が発生し、排水に対しては、PCB、ダイオキシンなど内分泌撹乱化学物質を分解することも可能となるとともに、臭気処理としては、アンモニア、硫化水素より、難分解である有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸)、メチルカプタン等の分解も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、小型化及び省スペース化が可能で、高効率で以って脱窒、脱臭等の処理を行うことができるため、下水処理、し尿処理、浄化槽汚泥処理、畜産排水処理、水産加工排水処理、洗浄排水処理、工場排水処理等の何れにも有効に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1に係る処理設備のブロック図である。
【図2】本発明の実施例2に係る処理設備のブロック図である。
【図3】本発明の実施例3に係る処理設備のブロック図である。
【図4】本発明の実施例4に係る脱臭装置を備えた処理設備のブロック図である。
【図5】本発明の実施例5に係る脱臭装置を備えた処理設備のブロック図である。
【図6】本発明の実施例6に係る脱臭装置を備えた処理設備のブロック図である。
【図7】本実施例の電解装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】脱臭装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0047】
10 溶解性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物(し尿)
11 前処理設備
12 生物処理設備
13 汚泥分離設備
14 高度処理設備
16 脱水機
18 脱臭装置
19 薬液洗浄塔
20 固形性汚濁物質の含有率の高い液状廃棄物(浄化槽汚泥)
21 前処理設備
22 固液分離設備
23 電解装置
24 汚泥処理設備
25 堆肥化設備
28 オゾン
30 排水
40 固形性廃棄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物と、固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物とを複合的に処理する廃棄物の処理方法において、
前記溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物を生物処理する生物処理工程と、該生物処理後の生物処理液を高度処理する高度処理工程とを含む第1処理系統と、
前記固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物を固液分離する固液分離工程と、該固液分離した分離液を電解処理する電解処理工程とを含む第2処理系統と、を備え、
前記電解処理工程にて発生した電解処理液の少なくとも一部を、直接若しくは還元処理した後前記高度処理工程に導入することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記第2処理系統にて、前記電解処理工程の後段に前記電解処理液を、直接若しくは還元処理した後生物処理する第2生物処理工程を設け、
前記第2生物処理工程にて発生した生物処理液を前記高度処理工程に導入することを特徴とする請求項1記載の廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記第1処理系統にて、前記生物処理工程にて発生した生物処理液を固液分離する汚泥分離工程と、該汚泥分離した分離汚泥を脱水する脱水工程とを備え、該脱水工程にて発生した脱水分離液を前記電解処理工程に導入することを特徴とする請求項1記載の廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記分離汚泥を固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物と混合し、第2処理系統の固液分離工程において、固液分離を行うと同時に脱水し、発生した脱水分離液を電解処理工程に導入することを特徴とする請求項3記載の廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記第2処理系統の前記電解処理工程にて発生した電解処理液の少なくとも一部を、直接若しくは還元処理した後前記第1処理系統の前記生物処理工程に導入することを特徴とする請求項1若しくは3記載の廃棄物の処理方法。
【請求項6】
2以上の処理系統からなる廃棄物の処理方法において、
一の処理系統が、排水を電解処理する電解処理工程を含み、
これらの処理系統にて発生する臭気ガスを捕集して該臭気ガスの臭気成分を除去する脱臭工程を備え、
前記電解処理工程にて発生する電解排ガスを前記脱臭工程に導入し、該脱臭工程にて前記電解排ガスと前記臭気ガスとを気気接触させることを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項7】
2以上の処理系統からなる廃棄物の処理方法において、
一の処理系統が、排水を電解処理する電解処理工程を含み、
これらの処理系統にて発生する臭気ガスを捕集して該臭気ガスの臭気成分を除去する脱臭工程を備え、
前記電解処理工程にて発生する電解処理液を前記脱臭工程に導入し、該脱臭工程にて前記電解処理液と前記臭気ガスとを気液接触させることを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項8】
前記電解処理工程、若しくは該電解処理工程より上流側にてオゾンを導入することを特徴とする請求項6若しくは7記載の廃棄物の処理方法。
【請求項9】
前記臭気ガスが、アンモニア成分を多く含む臭気ガスであることを特徴とする請求項6若しくは7記載の廃棄物の処理方法。
【請求項10】
前記臭気ガスが、硫黄系臭気成分を多く含む臭気ガスであることを特徴とする請求項6若しくは7記載の廃棄物の処理方法。
【請求項11】
溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物と固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物とを複合的に処理する廃棄物の処理設備において、
前記溶解性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物を生物処理する生物処理設備と、該生物処理設備にて発生した生物処理液汚泥を分離する汚泥分離設備と、該汚泥分離された汚泥分離液を高度処理する高度処理設備とを含む第1処理系統と、
前記固形性汚濁物質の含有率が高い液状廃棄物を固液分離する固液分離設備と、該固液分離された固液分離液を電解処理する電解装置とを含む第2処理系統と、を備え、
前記電解装置にて発生した電解処理液の少なくとも一部を、直接若しくは還元処理した後、前記高度処理設備に導入する導入ラインを設けたことを特徴とする廃棄物の処理設備。
【請求項12】
前記第2処理系統にて、前記電解装置の後段に前記電解処理液を、直接若しくは還元処理した後生物処理する第2生物処理設備を設け、
前記第2生物処理設備にて発生した生物処理液を前記高度処理設備に導入することを特徴とする請求項11記載の廃棄物の処理設備。
【請求項13】
前記第1処理系統の汚泥分離設備にて発生した分離汚泥を脱水する脱水機を備え、該脱水機にて発生した脱水分離液を前記電解装置に導入することを特徴とする請求項11記載の廃棄物の処理設備。
【請求項14】
前記第2処理系統の前記電解装置にて発生した電解処理液の少なくとも一部を、直接若しくは還元処理した後、前記第1処理系統の前記生物処理設備に導入することを特徴とする請求項11若しくは13記載の廃棄物の処理設備。
【請求項15】
2以上の処理系統からなる廃棄物の処理設備において、
一の処理系統が、排水を電解処理する電解装置を含み、
これらの処理系統にて発生する臭気ガスをダクトを介して捕集し、該臭気ガスの臭気成分を除去する脱臭装置を備え、
前記脱臭装置が、前記電解装置にて発生する電解排ガスが導入され、装置内にて前記電解排ガスと前記臭気ガスとを気気接触させる構成であることを特徴とする廃棄物の処理設備。
【請求項16】
2以上の処理系統からなる廃棄物の処理設備において、
一の処理系統が、排水を電解処理する電解装置を含み、
これらの処理系統にて発生する臭気ガスをダクトを介して捕集し、該臭気ガスの臭気成分を除去する脱臭装置を備え、
前記脱臭装置が、前記電解装置にて発生する電解処理液が導入され、装置内にて前記電解処理液と前記臭気ガスとを気液接触させる構成であることを特徴とする廃棄物の処理設備。
【請求項17】
前記電解装置内、若しくは該電解装置より上流側にオゾンを導入することを特徴とする請求項15若しくは16記載の廃棄物の処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−239626(P2006−239626A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61199(P2005−61199)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】