説明

廃棄物回収システム及び廃棄物回収車

【課題】ゴミ袋などの廃棄対象物回収の現場での実際作業を考慮して,一度に2個の廃棄対象物を投入できると共に,2個の廃棄対象物を別個に検出することができる検知精度の高い廃棄物回収システムなどを提供すること。
【解決手段】 廃棄物回収車の廃棄物投入口に設けられる廃棄対象物検知部からの情報に基づいて廃棄対象物の投入数を算出し,算出された投入廃棄対象物の数に基づいて廃棄物回収車が廃棄対象物の回収を行った地域のごみ排出量を管理すると共に,廃棄物投入口の中央に設けられた仕切り部材の左右側面に設けられた背景表示手段と,廃棄物回収車の廃棄物投入口の左右に設けられたカメラと,を備え,背景表示手段の画像上に,第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域と,前記カメラによる撮像画像における背景表示手段の画像より廃棄物投入口の内側の第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域を設定。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ゴミ袋及その他の廃棄物(以下、廃棄対象物という。)を回収する廃棄物回収システム及び廃棄物回収車に関し,特に,廃棄対象物の検知精度の向上を図った廃棄物回収システム及び廃棄物回収車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような廃棄物回収システムについては,種々のものが知られている。
例えば,特許文献1には,廃棄物の容器の回収場所などに設置され,非接触識別素子に共振する電磁波を発信用アンテナ及び受信用アンテナから発信及び受信するID読取装置とを備えてなる廃棄物回収システムが開示されている。このシステムは,前記非接触識別素子が内蔵する共振回路が,共振回路毎に異なる複数段階の共振周波数によって個性化されたものであり,前記ID読取装置に備えられた発信用アンテナ及び受信用アンテナから発信及び受信される電磁波の共振周波数が,前記複数段階に個性化された共振回路の共振周波数に対応して,複数段階に設定されてなる廃棄物回収システムである。
このようなID読取装置に備えられた発信用アンテナ及び受信用アンテナから発信及び受信される電磁波の共振周波数が,前記複数段階に個性化された共振回路の共振周波数に対応して,複数段階に設定されてなるので,同様に個性化されたIDからなる廃棄物を識別することが出来,廃棄対象物の種類など多くの情報に対応することが出来,極めて有益である。
しかしながら,廃棄対象物回収の実際に当たっては,上記のような無線装置での廃棄対象物の検知はコストがかかり,実現が困難である。
【0003】
そこで廃棄物回収車の廃棄物投入口にカメラを設置し,このカメラで撮像される廃棄対象物投入口を通過する廃棄対象物を検知する方法が実際的である。
また廃棄物回収車において,廃棄対象物は,1人または2人の作業者によって次々に廃棄物投入口から投げ込まれる。その際,廃棄物投入口の間口の広さからして,3人の作業者が同時に廃棄対象物を投入することは考えられないが,作業の効率を考慮すると,2人の作業者が2人の作業者が同時に廃棄対象物を投入することが頻繁に発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−067551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように2人の作業者が廃棄対象物を廃棄物投入口から同時に投入する場合を考えると,これら複数の廃棄対象物が廃棄物投入口の間口幅方向に重なる状況が発生するので,1台のカメラでは,重なった廃棄対象物の数を計測することはできない。たとえ複数のカメラを用いても,廃棄対象物が投入口の幅方向に重なった場合,それが1個の廃棄対象物であるか,2個の廃棄対象物であるかを検知することは,特殊な構成を用いなければ不可能である。
従って,本発明は上記したような廃棄対象物回収の現場での実際作業を考慮して,一度に2個の廃棄対象物を投入できると共に,それらの2個の廃棄対象物を別個に検出することができる検知精度の高い廃棄物回収システム及びこれに用いられる廃棄物回収車の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明にかかる廃棄物回収システムは,廃棄物回収車と,該廃棄物回収車の廃棄物投入口に設けられる廃棄対象物検知部からの情報に基づいて廃棄対象物の投入数を算出する廃棄対象物数算出手段と,該廃棄対象物数算出手段によって算出された投入廃棄対象物の数に基づいて廃棄物回収車が廃棄対象物の回収を行った地域のごみ排出量を管理する廃棄物管理手段とを備えた廃棄物回収システムであって,前記廃棄対象物検知部は,前記廃棄物回収車の廃棄物投入口の中央に該廃棄物投入口を左右に仕切る位置に設けられた仕切り部材と,上記仕切り部材の左右側面に設けられた背景表示手段と,廃棄物回収車の廃棄物投入口の左右にそれぞれ設けられ,上記背景表示手段を視野に含むと共に,上記背景表示手段との間に廃棄対象物の投入を許容する空間を挟んで設けられたカメラと,を備え,前記廃棄対象物数算出手段は,前記カメラによる撮像画像における背景表示手段の画像上に,第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域を設定すると共に,前記カメラによる撮像画像における背景表示手段の画像より廃棄物投入口の内側に,第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域を設定するものである廃棄物回収システムとして構成されている。
従って,廃棄物投入口に2個の廃棄対象物が同時に投入されても,それらを明確に別の廃棄対象物として判別してカウントすることが出来る。
前記廃棄対象物数算出手段は,前記カメラによる撮像画像における背景表示手段の画像より廃棄物投入口の外側に,第3の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域を設定するものが考えられる。このような第3の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域が設定されれば,前記第1及び第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域のみによる廃棄対象物の検知よりも更に廃棄対象物の検知精度が向上する。
本システムで検出される廃棄対象物は,予め定められた所定の認識マークが複数設けられたものであってもよい。
この場合,前記廃棄対象物数算出手段は,前記カメラによる撮像画像を解析して,撮像画像内に含まれる前記所定の認識マークが認識された時にのみ投入された物体が廃棄対象物であると判断する廃棄対象物認識手段を備えてなるものが望ましい形態として考えられる。
さらに,前記背景表示手段の画像と上記所定の認識マークとが紛らわしいと,投入されたものが,廃棄対象物であることを正確に認識することが出来ない。それゆえ,前記背景表示手段が,前記所定の認識マークと差別化可能な背景マークを含むものであることが望ましい。
所定の認識マークと差別化可能な背景マークの一例として,前記所定の認識マークに含まれない色彩を含むものが考えられる。
前記廃棄対象物数算出手段は,前記外側検知用ソフト的検知領域内に交通信号に含まれる所定の色彩の羅列を検出した時は,検出された物体を廃棄対象物ではないと判断することが望ましい。交通信号機は,廃棄対象物の回収路線に多数設置されているので,これを外乱として拾わないようにすることで,廃棄対象物の検出精度が向上するであろう。
前記廃棄物回収システムに用いられる廃棄物回収車も本出願により保護される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上述べたように構成されているので,廃棄対象物回収の現場での実際作業を考慮して,一度に2個の廃棄対象物を投入できると共に,それらの2個の廃棄対象物を別個に検出することができる検知精度の高い廃棄物回収システム及びこれに用いられる廃棄物回収車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る廃棄物回収システムに用いられる送・受信アンテナの回収車両への取り付け位置を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る廃棄物回収システムの概要を説明するためのブロック図
【図3】本発明の一実施形態にかかる廃棄物回収システムに用いられる廃棄物回収車の廃棄物投入口の部分を示す斜視図。
【図4】廃棄物回収車に設けられたカメラによる撮像画像を示す図。
【図5】廃棄対象物数検出のための情報伝達系統を示すブロック図。
【図6】廃棄対象物の表面に貼り付けられた複数の認識マークの撮像画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,添付した図面を参照して,本発明を具体化した実施形態について説明し,本発明の理解に供する。
この実施形態にかかる廃棄物回収システムXは,図2に示されるように
サーバなどからなり廃棄物管理手段の一例である管理装置Cを中心に構成され,上記管理装置Cは無線を含む回線を介して廃棄物回収車1に搭載された廃棄対象物数算出手段の一例としての制御部10に接続されている。
上記管理装置Cは,上記制御部10によって算出された投入廃棄対象物の数に基づいて廃棄物回収車1が廃棄対象物Bの回収を行った地域のごみ排出量を管理する。
【0010】
図1は,廃棄物回収車1(いわゆるパッカー車)の側面図(a),後面図(b)である。また,図3は,廃棄物回収車1の後部の廃棄物投入口2の部分を斜め後ろから描いた斜視図である。これらの図のように,廃棄物回収車1の後部には,図2(b)に示される廃棄物投入口2が開口しており,ここから廃棄対象物が投入される。図3に示すように,上記廃棄物投入口2の左右には,左側カメラ3Lと右側カメラ3Rからなるカメラ3が設けられている。
【0011】
前記制御部10は,図5に示されるように,該廃棄物回収車1の廃棄物投入口2に設けられた前記カメラ3を含む廃棄対象物検知部12(図5参照)からの情報に基づいて廃棄対象物の投入数を算出する。
上記のように廃棄対象物検知部12は,廃棄物回収車1の廃棄物投入口2に設けられるカメラ3(3L,3R)を含み,このカメラ3で撮像される廃棄物投入口2を通過する廃棄対象物を検知する。
【0012】
廃棄対象物は,1人または2人の作業者によって次々に廃棄物投入口から投げ込まれる。その際,廃棄物投入口の間口の広さからして,3人の作業者が同時に廃棄対象物を投入することは考えられないが,作業の効率を考慮すると,2人の作業者が同時に廃棄対象物を投入することが頻繁に発生する。
【0013】
このように2人の作業者が廃棄対象物を廃棄物投入口2から同時に投入する場合を考えると,これら複数の廃棄対象物が廃棄物投入口2の間口幅方向に重なる状況が発生するので,1台のカメラ3では,重なった廃棄対象物Bの数を計測することはできない。たとえ複数のカメラを用いても,廃棄対象物Bが廃棄物投入口2の幅方向に重なった場合,それが1個の廃棄対象物であるか,2個の廃棄対象物であるかを検知することは,特殊な構成を用いなければ不可能である。
【0014】
そのため,この実施形態では,図3に示すように,廃棄物回収車1の廃棄物投入口2の中央部であって該廃棄物投入口2を左右(左側投入口2L及び右側投入口2R)に仕切る位置に仕切り部材14を備えると共に,上記仕切り部材14の左右側面に貼り付けられた背景表示手段の一例としての背景表示部材16を備える。
更に,この実施形態では,前記カメラ3L,3Rは,廃棄物回収車1の廃棄物投入口2の左右にそれぞれ設けられ,上記仕切り部材14の左右側面にそれぞれ設けられた背景表示部材16を視野に含むと共に,上記背景表示部材16との間に廃棄対象物の投入を許容する空間を挟んだ位置に設けられる。
【0015】
別言すると,前記廃棄対象物検知部12は,仕切り部材14によって左右に仕切られた左側投入口2Lと右側投入口2Rに対応して,それぞれ仕切り部材14の方を向いた左側カメラ2Lと右側カメラ2Lと,各カメラに対応した背景表示部材16とを備える。すなわち,図3に示されるように,左側カメラ3Lと左側の背景表示部材16(不図示)とは,左側投入口2Lを間に挟んで向かい合っており,右側カメラ3Rと右側の背景表示部材16とは,右側の廃棄物投入口2を間に挟んで向かい合っている。
更に,カメラ3による撮像画像を表す図4に示すように,前記制御部10は,前記カメラ3Lあるいは3Rによって撮像された撮像画像Fにおける上記背景表示部材16の画像を内部に含む縦長の部分に,第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1を設定する。
【0016】
即ち,図4あるいは図5におけるFは,カメラ3によって撮像された1フレーム分の画像を示す。カメラ3は,1秒間に例えば30コマのフレームを作成する。
カメラ3は前記のように仕切り部材14の側面に貼り付けられた背景表示部材16と向かい合っているので,画像F内には,仕切り部材14の側面と,その中に存在する背景表示部材16が写っている。
そして,制御部10は,前記カメラ3Lあるいは3Rによって撮像された撮像画像Fにおける上記背景表示部材16の画像の上に,第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1を設定する。
【0017】
高度の画像処理を施して,上記第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1に侵入したゴミの先頭や後尾が判断できれば,上記第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1だけで,ここにおける廃棄対象物の通過を認識できる。
しかしながらそのような高度の画像処理を高速で行うことはコストや装置の安定性などを考慮すると実際的ではない。
【0018】
そのためにこの実施形態では,前記制御部10は,上記第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1に加えて,前記カメラ3による撮像画像Fにおける「背景表示部材の16画像より廃棄物投入口の内側(奥側)に,第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z2を設定する。
通過する廃棄対象物を確実に検出するために,上記第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1は,廃棄物投入口2の上下方向の幅L(図3参照)のほぼ全域にわたる長細い矩形状を形成することが望ましい。また,同様な理由から,上記第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z2もまた,廃棄物投入口2の上下方向の幅Lのほぼ全域にわたり,前記第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1とほぼ同じ形状の長細い矩形状にすることが望ましい。
【0019】
この実施形態では,上記第1及び第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1,Z2の画像の部分を廃棄対象物Bが横切ることによって,これらの画像が変化する。従ってこれらの廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1,Z2の部分の画像の変化だけに着目(検出)して,廃棄対象物が通過したかどうかを判断することで,高度の画像処理が不要となる。通過したと判断された廃棄対象物の数だけが通過した廃棄対象物の数として計数(カウント)される。
【0020】
即ち,廃棄物投入口2から投入された廃棄対象物Bを一方のカメラが捕らえた時に,それが,左側投入口2Lに投入された廃棄対象物Bか,あるいは右側投入口2Rから投入された廃棄対象物Bかを見分けるために,前記のように,仕切り部材14の側面に所定の背景表示部材16が貼り付けられている。これによって,上記背景表示部材16の画像を横切る(画像が変化する)ものだけを,カウントすればよい。仕切り部材14の向こう側の投入口に投入された廃棄対象物は,カメラ3が対向する背景表示部材16の画像を横切らないので,そのような廃棄対象物Bはカウントしない。これによって,左右の投入口2L及び2Rの両方から,廃棄対象物Bが投入された場合,あるいはいずれか一方の投入口に投入された場合であっても,正確に廃棄対象物Bをカウントすることができる。
【0021】
廃棄対象物Bは通常,図3に示されるように,廃棄物投入口2の外から中に向かって投入される。中から外に向かって移動する動体を検知した場合は,異常物であり,人の手などが写ったことによる外乱と判断できるので,廃棄対象物としてはカウントしない。
【0022】
処理の仕方としては,次のような処理手順で処理される。
1.カメラ3L及び3Rが起動されると,制御部10は,両カメラ3L及び3Rからの撮像画像Fを取り込む。この時,まだ廃棄対象物Bが投入されていないので,カメラ3L及び3Rの撮像画像Fは,図4に示すように中央に仕切り部材14の側面に貼り付けられた長細い背景表示部材16を含むものである。制御部10は,これを初期画像として記憶する。
この初期画像には,上記背景表示部材16のほかに,その車両内側に廃棄物投入口2の内部が,また,車両外側に,外界の画像が写っている。
2.次に制御部10は,前記カメラ3L及び3Rによる撮像画像Fにおける背景表示部材16の画像上に,それぞれ第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1を設定する。
3.また制御部10は,同時に,前記カメラ3L及び3Rによる撮像画像Fにおける背景表示部材16の画像より廃棄物投入口2の内側に,第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z2を設定する。
上記のように「ソフト的検知領域Z1,Z2を設定する」とは,上記のような予め定められた画像領域の部分の画素だけに着目して,その変化を検出するという意味である。
4.上記のように第1及び第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1及びZ2がそれぞれ設定されると,制御部10は,これらの第1及び第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1及びZ2の画像が変化したかどうかを検出する。画像の変化がない限り,待ち時間となる。
5.例えば,一方のカメラ3Lからの撮像画像F内の第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1の画像が前記初期画像と較べて変化した(即ち,何らかの物体がカメラの前を通過した)後,所定時間以内に第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z2の画像が変化した場合には,廃棄対象物Bが投入されたものとして,廃棄対象物の投入数をカウントする。
第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1の画像が変化した後,所定時間(例えば2秒以上の時間)を経過してから第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z2の画像が変化した場合には,通常の廃棄対象物Bの投入行為とは考えられないので,廃棄対象物とは判断せず,廃棄対象物の投入数をカウントしない。
【0023】
また,撮像画像F内の第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z2の画像が変化した後,所定時間以内に第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1の画像が変化した場合には,操作者の手などの移動が撮像されたものと判断し,廃棄対象物が投入されたものではないとして,廃棄対象物の投入数をカウントしない。
【0024】
上記第1あるいは第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1あるいはZ2の画像が変化したという判断は,画像が所定画素数以上の広さにわたって変化した場合をいい,あまり狭い範囲の変化については,単なるゴミが通過して廃棄対象物が通過したわけではないので,廃棄対象物の数としてはカウントしない。
【0025】
上記のように例えば1秒間に30駒(フレーム)といった高速で撮像する場合には,相当早い投入も検出できるが,廃棄対象物の検出精度を高めるには,前記制御部10が,前記カメラ3による撮像画像における背景表示部材16の画像より廃棄物投入口2の外側に,さらに第3の検知用ソフト的検知領域Z3を設定することが望ましい。
即ち,廃棄対象物検知用ソフト的検知領域における画像の変化について,第3の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z3→第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1→第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z2の順に画像が変化した場合にのみ,廃棄対象物の投入が行われたと判断し,廃棄対象物の数をカウントするのである。
【0026】
上記のような廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1,Z2,Z3での画像の変化を見ていれば,廃棄対象物の投入個数をカウントすることができるが,これらの廃棄対象物検知用ソフト的検知領域での画像の変化だけでは,廃棄対象物が本当に通過したかどうかの判断精度をあまり高めることが出来ない。
そのため,この実施形態においては,前記廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1,Z2,Z3での画像の変化による判断に加えて,カメラ3による撮像画像全体中を通過する物体の画像解析を行って,通過しつつある物体が廃棄対象物であるかどうかを判断することが望ましい。
具体的には,本システムで検出される廃棄対象物には,図2に示すように,予め定められた所定の認識マークAを複数,印刷や貼り付けなどにより設けておき,上記所定の認識マークAの通過を制御部10が撮像画像F内に検出した場合に,廃棄対象物が通過したと判断する。この時,前記廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z1,Z2,Z3での画像の変化の順番から,通過したのが投入方向か,それ以外かを判断して廃棄対象物が正常に外部から内部に投入された場合にのみ廃棄対象物の投入をカウントすることが望ましい。
【0027】
図2は,カメラ3の前を通過しつつある廃棄対象物に貼られた複数の認識マークAの画像の一例である。
この場合,認識マークAは,種々の形態が予め定められており,その形態に応じて廃棄対象物の種類が判断される。
例えば,認識マークとして3個の○が並んだものを考える。この場合,赤●,緑●,青●の順に並んだ認識マークは,生ゴミ,緑●,赤●,青●の順に並んだ認識マークは燃えるゴミ,青●,赤●,緑●の順に並んだ認識マークは,医療用ゴミといった具合である。
ただし,前記第3の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域Z3のように外界を撮像する場合には,外界に存在する種々の色彩の画像を撮像ししまうことが生じるので,これを認識マークと誤判断することを避ける必要がある。
誤判断の典型例は,外界に配置された交通信号である。交通信号の場合,カメラの画角内に複数の信号機が写ることはほぼありえず,写ったとしても2個までであると推測される。そこで例えば,認識マークの定義として,上記のように3色の組合せにしておけば,認識マークと交通信号機を峻別することができる。
更に,前記外側検知用ソフト的検知領域Z3内に交通信号に含まれる所定の色彩の羅列を検出した時は,検出された物体を廃棄対象物ではないと判断することで,交通信号機を検出しても外乱として排除することができる。
【0028】
また,前記背景表示部材16自体が,上記認識マークAと同じあるいは紛らわしい表示であった場合には,撮像された画像が,廃棄対象物に付された認識マークAであるのか,背景表示部材16に付されたマークであるのか峻別できない可能性がある。このようなことを避けるために,前記背景表示部材16が,前記所定の認識マークAと差別化可能な背景マークを含むものであることが望ましい。
例えば,前記所定の認識マークAには,黄色を使用しないようにしておき,背景表示部材を黄色の帯状に構成したり,黄色の●を含む●の列としておけば,両者は常に峻別できる。あるいは,背景表示部材16側を前記認識マークAでは使用されていない色彩の順番からなるマークとしてもよい。すなわち,前記背景表示部材16を,前記所定の認識マークに含まれない色彩を含むものとすることで,所定の認識マークAと背景表示部材を差別化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
上記したように,この発明は,廃棄物回収車と,該廃棄物回収車の廃棄物投入口に設けられる廃棄対象物検知部からの情報に基づいて廃棄対象物の投入数を算出する廃棄対象物数算出手段と,該廃棄対象物算出手段によって算出された投入廃棄対象物の数に基づいて廃棄物回収車が廃棄対象物の回収を行った地域のごみ排出量を管理する廃棄物管理手段とを備えた廃棄物回収システムであって,前記廃棄対象物検知部は,前記廃棄物回収車の廃棄物投入口の中央に該廃棄物投入口を左右に仕切る位置に設けられた仕切り部材と,上記仕切り部材の左右側面に設けられた背景表示手段と,廃棄物回収車の廃棄物投入口の左右にそれぞれ設けられ,上記背景表示手段を視野に含むと共に,上記背景表示手段との間に廃棄対象物の投入を許容する空間を挟んで設けられたカメラと,を備え,前記廃棄対象物数算出手段は,前記カメラによる撮像画像における背景表示手段の画像上に,第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域を設定すると共に,前記カメラによる撮像画像における背景表示手段の画像より廃棄物投入口の内側に,第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域を設定するものである廃棄物回収システムであるから,廃棄対象物やゴミ缶,などの回収に用いること,あるいはその回収車に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…廃棄物回収車
2…廃棄物投入口
3(3L,3R)…カメラ
10…制御部
12…廃棄対象物検知部
14…仕切り部材
16…背景表示部材
Z1…第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域
Z2…第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域
Z3…第3の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域
F…撮像画像
X…廃棄物回収システム
A…認識マーク
B…廃棄対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物回収車と,
該廃棄物回収車の廃棄物投入口に設けられる廃棄対象物検知部からの情報に基づいて廃棄対象物の投入数を算出する廃棄対象物数算出手段と,
該廃棄対象物数算出手段によって算出された投入廃棄対象物の数に基づいて廃棄物回収車が廃棄対象物の回収を行った地域のごみ排出量を管理する廃棄物管理手段とを備えた廃棄物回収システムであって,
前記廃棄対象物検知部は,前記廃棄物回収車の廃棄物投入口の中央に該廃棄物投入口を左右に仕切る位置に設けられた仕切り部材と,
上記仕切り部材の左右側面に設けられた背景表示手段と,
廃棄物回収車の廃棄物投入口の左右にそれぞれ設けられ,上記背景表示手段を視野に含むと共に,上記背景表示手段との間に廃棄対象物の投入を許容する空間を挟んで設けられたカメラと,を備え,
前記廃棄対象物数算出手段は,前記カメラによる撮像画像における背景表示手段の画像上に,第1の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域を設定すると共に,前記カメラによる撮像画像における背景表示手段の画像より廃棄物投入口の内側に,第2の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域を設定するものである廃棄物回収システム。
【請求項2】
前記廃棄対象物数算出手段は,前記カメラによる撮像画像における背景表示手段の画像より廃棄物投入口の外側に,第3の廃棄対象物検知用ソフト的検知領域を設定するものである請求項1に記載の廃棄物回収システム。
【請求項3】
本システムで検出される廃棄対象物には,予め定められた所定の認識マークが複数設けられており,
前記廃棄対象物数算出手段は,前記カメラによる撮像画像を解析して,撮像画像内に含まれる前記所定の認識マークが認識された時にのみ投入された物体が廃棄対象物であると判断する廃棄対象物認識手段を備えてなるものである請求項1あるいは2のいずれかに記載の廃棄物回収システム。
【請求項4】
前記背景表示手段が,前記所定の認識マークと差別化可能な背景マークを含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物回収システム。
【請求項5】
前記背景マークは,前記所定の認識マークに含まれない色彩を含むものである請求項4に記載の廃棄物回収システム。
【請求項6】
前記廃棄対象物数算出手段は,前記外側検知用ソフト的検知領域内に交通信号に含まれる所定の色彩の羅列を検出した時は,検出された物体を廃棄対象物ではないと判断する交通信号除外手段を備えてなる請求項2〜5のいずれかに記載の廃棄物回収システム。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の廃棄物回収車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219235(P2011−219235A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91309(P2010−91309)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(510101815)株式会社 武田環境 (1)
【Fターム(参考)】