説明

廃棄物溶融炉の連続出湯装置

【課題】炉内圧力が高い廃棄物溶融炉においても連続出湯が可能で、水砕ピットが大幅にコンパクト化され且つ集じん装置および出湯口開閉機が不要となる廃棄物溶融炉の連続出湯装置を提供する。
【解決手段】廃棄物溶融炉の炉底部1の炉床部に設置された出湯口7の出口に外気と遮断するためのシールカバー22を設け、シールカバー22は、溶融物12を水砕化凝固させるための水槽のケーシングと直結し、さらに水槽の底部に溜まる凝固物を水槽外に取り出すためのスクレーパー式コンベア10の出口部分に、外気と連通することなく凝固物を取り出すシール機能17を備えた排出装置を設けた廃棄物溶融炉の連続出湯装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を溶融処理する廃棄物溶融炉の溶融物を炉外へ連続して取り出し凝固させる、廃棄物溶融炉の連続出湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物、産業廃棄物等の廃棄物を溶融処理する廃棄物溶融炉において溶融物を炉外に取り出して、凝固させるまでの過程では、多大な設備と人力を必要としている。
【0003】
図2は従来の出湯口廻りの設備構成を示す図である。
【0004】
図2において、廃棄物溶融炉の炉内に投入された廃棄物6は下降していくに従い溶融炉の炉底部1の炉床部に堆積しているコークスベッド5に到達する。コークスベッド5は、押込送風機2から送られた空気が廃棄物溶融炉の炉底部1に複数個設けられた送風口(羽口)3より炉内に送られ、高温燃焼されている。このため、廃棄物6の灰分は溶融され、炉底部1に溜められる。送風空気量は送風空気流量調整弁4により調整される。この溶融物12は溶融スラグと10〜30%の溶融金属が混在している。
【0005】
炉底部1に溜められた溶融物12は間欠的に、出湯口開閉装置16により出湯口7を開孔して取り出される。出湯口開閉装置16による開孔時の粉じんは集じんフード13で集じんする。溶融物12の排出が完了すると、出湯口7は出湯口開閉装置16に備えられた開塞装置により、不定形耐火材を出湯口7に圧入して閉塞する。
【0006】
炉外に取出された溶融物12は、水槽となっている水砕ピット8に落下し、着水付近の水面直下に設けられた噴射水ノズル9により水槽内で分散され、冷却凝固を促進させることにより、水砕ピット8の底部に到達するまでに完全凝固される。
【0007】
水砕ピット8の底部に溜まった凝固物は、スクレーパー式コンベア10により、水面上に移動し、水砕固化物の取出口11より取出される。
【0008】
水砕固化物は砂状のスラグと粒状のメタルとなっており、後工程で分離し、各々資源として活用されている。
【0009】
前記従来の方法では、炉内の溶融物を間欠的に取り出すための出湯口開閉装置16が必要であるため、そのためのコストがかかりかつ操作するための人力も必要となる。また、出湯している時間が短く、出湯時には一気に水砕ピット8に流れこむが、10〜30%の溶融金属を含む溶融物を水槽内で完全に凝固させるためには噴射ノズル9を強力にする必要があることに加え、十分な水深Hが必要となって水砕ピット8が大きくなる等のコスト的な問題をかかえている。通常この水深は3m程度必要としている。
【0010】
一方、出湯口7からは、出湯口開閉装置16による開孔時の粉じんの発生や、出湯完了時には炉内ガスが噴出し、炉外の作業環境を悪化させるため、出湯口前の集じん装置を必要とする等の問題があった。
【0011】
かかる間欠出湯方式に起因する諸問題を解決する方法として、連続出湯の方式が知られている(特許文献1)。
【0012】
図3は従来技術に係る連続出湯を行うための出湯口廻りの構造を示す断面図である。図1と同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0013】
図3において、出湯口7の出口に炉内と連通する水封筒14を設け、この水封筒14を水砕ピット8の水面下に沈めることにより水封状態とすることにより、完全に外気を遮断して連続的に出湯を可能とする方式である。
【特許文献1】特開平2002−122319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記特許文献1に記載の方式では、廃棄物溶融炉1の炉内圧力に相当する水柱高さ分シールカバー14内の水面は運転状態における水封高さh‘に下げられるため、水封高さhは最大炉内圧を想定して決定されることになる。特に炉内圧が高い場合は非現実的な高さが必要となる。通常、炉内圧力は0〜2.5mHOの間で変動するため、少なくとも3m程度の水封高さが必要となる。そのため、水砕ピット8の水深Hが深くなり、水砕ピット8が大きくなるという問題がある。また、水位が炉内圧力により常に変動することも安定したスラグ品質を確保する上で問題となる。
【0015】
また、コークスベッド式廃棄物溶融炉の場合、溶融物は、高温のため多量に溶融物に溶け込んだガスにより凝固時に発泡状態となり、軽石状で水面に浮くものも発生することがあり、これは水封筒14から取り出せず、浮上スラグ15として水面上に残ることになる。
【0016】
この浮上スラグ15が蓄積すると溶融物の水中への直接侵入が防げられて正常な砂状のスラグの形成ができず、また水封筒14内で閉塞の危険がある。
【0017】
そこで、本発明は、炉内圧力が高い廃棄物溶融炉においても連続出湯が可能で、水砕ピットが大幅にコンパクト化され且つ集じん装置および出湯口開閉装置が不要となる廃棄物溶融炉の連続出湯装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、連続出湯の場合の水封方式での問題を解決する手段として、出湯口を外気と遮断するシールカバーで覆い、水砕ピットと連結するが、シールカバーは水中には入れない方式としたものである。
【0019】
具体的には、本発明の廃棄物溶融炉の連続出湯装置は、廃棄物溶融炉の炉床部に設置された出湯口出口に外気と遮断するためのシールカバーを設け、該シールカバーは、溶融物を水砕化凝固させるための水槽のケーシングと直結し、さらに前記水槽の底部に溜まる凝固物を水槽外に取り出すためのスクレーパー式コンベアの出口部分に、外気と連通することなく凝固物を取り出すシール機能を備えた排出装置を設けた構成とする。
【0020】
また、炉内ガスが水砕ピット内に侵入するのを防止するため、常に炉内圧力より高い圧力源からパージ用として空気を吸込む方式とする。この空気源として押込送風機からの送風空気を分岐させ、調節弁で制御して吹込む方式としている。水砕ピット内に吸込まれた空気は溶融炉下部に設置された送風口と同じく、出湯口から炉内に入ることになる。
【0021】
このため、溶融炉内圧力が変動しても常にパージ空気が送られているため、水砕ピット内に炉内ガスが侵入することはない。また、出湯口から炉内への吹込空気が炉床上のコークス燃焼に寄与することになり炉床温度を上昇させ溶融物の粘性を下げ排出を促進させる効果がある。
【0022】
水砕ピットでは、底部に溜まったスラグがスクレーパー式コンベアにより水面から上にかき上げられ、排出口より排出されるが、水砕ピットは溶融炉炉内圧力と同等以上の圧力を有しているため、固化物を取り出す取り出し口にはガスシール機能を有した排出装置を設けている。排出装置は、一つの手段として2重シールダンパを設けた例を示している。このシール機能により水砕ピット内の圧力維持を行ったまま排出することができる。
【0023】
また、前述の浮上スラグが発生しても、噴射水ノズルにより発生する水流により排出側に移動し、スクレーパー式コンベアにて排出され、水砕ピット水面上に蓄積することはない。
【0024】
さらに、溶融物が持ち込む熱により発生する水温上昇に対しては、例えば、特開2004−50136号公報に示す様に水砕ピット内に間接冷却式の冷却装置21を内設し、冷却水により間接冷却できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、水封方式が困難な炉内圧力が高い廃棄物溶融炉においても、連続出湯が可能となった。
【0026】
また、本発明の連続出湯化の効果としては、水砕ピットが大幅にコンパクト化されかつ外気と完全に遮断されるため、作業環境上の問題がなくなり、集じん装置が不要となるとともに、出湯口開閉機も不要となった。
【0027】
さらに、本発明により、溶融炉側でも連続出湯化によって炉底部に湯溜まりのための空間が不要となり、コンパクトな炉底となり、コークス使用量も大幅に低減できる等の顕著な効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施例を図面により説明する。
【実施例】
【0029】
図1は本発明に係る廃棄物溶融炉の出湯口廻りの構造を示す断面図である。
【0030】
図1において、廃棄物溶融炉1の炉内に投入された廃棄物6は、下降していくに従い溶融炉の炉底部1の炉床部に堆積しているコークスベッド5に到達する。コークスベッド5は、押込送風機2から送られた空気が炉底部1に複数個設けられた送風口(羽口)3より炉内に送られ、高温燃焼されている。このため、廃棄物6の灰分は溶融され、コークスベッド層を滴下し、炉床部に降下する。送風空気量は送風空気流量調整弁4により調整する。
【0031】
出湯口7は、外気と遮断するシールカバー22で覆い、水砕ピット8と連結する。ただし、シールカバー22は水中には挿入しない。水砕ピット8内は常に炉内と連通状態となるため、水砕ピット8は炉内圧力に耐えられるものとする。
【0032】
また、炉内ガスが水砕ピット8内に侵入するのを防止するため、常に炉内圧力より高い圧力源からパージ用として空気を吸込む方式とし、例えば、押込送風機2からの送風空気を分岐させ、調節弁20で制御して吹込む方式とする。水砕ピット8内に吸込まれた空気は溶融炉の炉底部1の下部に設置された送風口3と同じく、出湯口7から炉内に入ることになる。このため、溶融炉内圧力が変動しても常にパージ空気が送られているため、水砕ピット8内に炉内ガスが侵入することはない。また、出湯口からの吹込空気が炉床上のコークス燃焼に寄与することになり、炉床温度を上昇させ溶融物の粘性を下げて排出を促進させる効果がある。
【0033】
水砕ピット8は、底部に溜まったスラグをスクレーパー式コンベア10により水面から上にかき上げられ、排出口11より排出されるが、水砕ピット8は溶融炉炉内圧力と同等以上の圧力を有しているため固化物を取り出す水砕固化物取出口11にはガスシール機能を有した排出装置を設けている。図1の例では2重シールダンパ17を設けることにより、水砕ピット8内の圧力維持を行ったまま固化物を排出することができる。2重シールダンパ17から排出された固化物は移送コンベア18で搬送される。
【0034】
また、浮上スラグが発生しても、浮上スラグは、噴射水ノズル9により発生する水流により排出側に移動し、スクレーパー式コンベア10にて排出され、水砕ピット内に蓄積することはない。
【0035】
さらに、溶融物が侵入することにより発生する水砕ピット8内の水温上昇に対しては、間接冷却式の冷却装置21配置して、冷却水により間接冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る廃棄物溶融炉の出湯口廻りの構造を示す断面図である。
【図2】従来技術に係る廃棄物溶融炉の出湯口廻りの構造を示す断面図である。
【図3】従来技術に係る廃棄物溶融炉の連続出湯を行うための出湯口廻りの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1.炉底部 2.押込送風機
3.送風口 4.送風空気流量調節弁
5.コークスベッド 6.廃棄物
7.出湯口 8.水砕ピット
9.噴射水ノズル 10.スクレーパー式コンベア
11.水砕固化物取出口 12.溶融物
13.集じんフード 14.水封筒
15.浮上スラグ 16.出湯口開閉装置
17.2重シールダンパ 18.移送コンベア
19.パージ用空気ライン 20.パージ用空気流量調節弁
21.水砕ピット水冷却装置 22.シ−ルカバー
H.水深 h.最大水封高さ
h’.運転状態における水封高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物溶融炉の炉床部に設置された出湯口出口に外気と遮断するためのシールカバーを設け、該シールカバーは、溶融物を水砕化凝固させるための水槽のケーシングと直結し、さらに前記水槽の底部に溜まる凝固物を水槽外に取り出すためのスクレーパー式コンベアの出口部分に、外気と連通することなく凝固物を取り出すシール機能を備えた排出装置を設けたことを特徴とする廃棄物溶融炉の連続出湯装置。
【請求項2】
上記連続出湯装置において、水槽のケーシングの水面より上の気相部にパージガスを供給するラインを設けたことを特徴とする請求項1記載の廃棄物溶融炉の連続出湯装置。
【請求項3】
上記パージガスが、廃棄物溶融物溶融炉への送風空気ラインより分岐して取り出された送風空気であることを特徴とする請求項2記載の廃棄物溶融炉の連続出湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−8313(P2009−8313A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169062(P2007−169062)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】