説明

廃棄鉛蓄電池の回収電極ペーストスライム又は鉛鉱石から高純度鉛化合物の形で鉛を再生する方法

【課題】 新規な鉛再生方法を提供する。
【解決手段】 (a)酢酸ナトリウム、酢酸カリウム又は酢酸アンモニウム水溶液に不純鉛含有材料を懸濁させ、(b)この懸濁液に、全鉛酸化物をアセテート塩溶液に可溶性の硫酸鉛に変換させるのに十分な量の硫酸を添加し、かつ、この懸濁液に、全二酸化鉛を、硫酸により最終的に可溶性硫酸鉛に変換される酸化鉛に変換するのに適合する、過酸化水素又は亜硫酸塩の何れかを徐々に添加するか、又はこの懸濁液中に無水亜硫酸を吹き込み、(c)溶解された硫酸鉛を含有する明澄なアセテート塩溶液を、全ての未溶解化合物及び不純物を含有する固相残留物から分離し、(d)高純度の炭酸鉛/オキシ炭酸鉛又は酸化鉛若しくは水酸化鉛をそれぞれ沈殿させ、一方、アセテート塩溶液に可溶性のカチオンの硫酸塩を生成させるために、硫酸鉛の分離溶液に、硫酸鉛溶解性溶液のアセテート塩と同じカチオンの炭酸塩又は水酸化物の何れかを添加し、(e)アセテート塩と同じカチオンの硫酸塩も含有するアセテート塩溶液から、沈殿高純度鉛化合物を分離することからなる鉛再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄鉛蓄電池(バッテリー)の回収電極ペーストスライム又は鉛鉱石のような夾雑混合物から高純度鉛化合物を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、古くから行われてきた廃棄鉛蓄電池の回収電極ペーストスライム又は鉛鉱石から有用な鉛含有物を再生する方法は焼鉱法に基づくものであったが、特許文献1には、ほぼ完全な湿式処理に基づく新規な方法が開示されている。特許文献1に開示された方法は、有害残留物の廃棄量が激減され、試薬類を効率的に使用しながら高純度の炭酸鉛を高収率で生産できる廃棄鉛蓄電池の回収電極ペーストスライム又は鉛鉱石の湿式処理方法からなる。にも拘わらず、新規なバッテリーペーストの製造用に再生鉛を使用するためには、炭酸鉛を約400〜450℃の温度に加熱することにより、炭酸鉛を酸化鉛に分解させなければならない。この方法はエネルギー消費量が莫大なため高コストである。
【0003】
特許文献1に開示された方法によれば、電極ペーストスライム又は微粉砕され、最終的に予備処理された鉛鉱石の形の出発原料を硫酸と異なる酸で侵出し、過酸化水素又はその他の還元剤若しくは出発原料中に含まれているかもしれない二酸化鉛及び硫酸を添加する。硫酸は全ての鉛化合物を不溶性の硫酸鉛に変換する。この不溶性の硫酸鉛はその他の不溶性物質と共に分離され、そして、その後、可溶化剤の水溶液中に選択的に溶解される。硫酸鉛の分離された明澄溶液に、鉛のカーボネート/オキシカーボネート沈殿用のカーボネート塩を添加する。
【0004】
最後にカーボネートを酸化鉛に変換するために必要なエネルギーの他に、夾雑出発原料の酸侵出ステップに多大なコストが掛かるばかりか、処理プラントも複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010-516891号公報(PCT/IT2008/000022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、処理容器及び関連する攪拌機、加熱器又は冷却器、濾過器などのプラント構成、処理プラントの複雑性、輸送及びエネルギー費用などに換算される鉛再生コストを大幅に軽減することができ、実現可能であるばかりか効率的な全湿式鉛再生プロセスを著しく効果的に単純化した新規な鉛再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、酢酸塩の硫酸鉛溶解水溶液中に夾雑出発原料を直接懸濁させ、そして、夾雑出発原料中に存在すると思われる全ての二酸化鉛を酸化鉛に還元するのに適合する過酸化水素又は亜硫酸塩を添加するか若しくは別法として、この懸濁液中に無水亜硫酸を吹き込み、そして、全ての酸化鉛を、選択された溶解溶液中に溶解されたまま残る硫酸鉛に変換するのに適合する硫酸を添加することからなる新規な著しく効率的な鉛再生方法を提供する。
【0008】
次いで、溶解された硫酸鉛を含有する明澄溶液を固相残留物から分離させる。固相残留物は夾雑出発原料中に含有された全ての非溶解不純物を含有する。
【0009】
処理されるべき夾雑出発原料の起源に応じて、硫酸鉛溶解酢酸塩溶液から分離された全ての不溶性物質の固相と共に、オキシスルフェートのような特定の鉛化合物又は酢酸塩溶液に溶解されないであろうその他の酸化物が存在することがある。
【0010】
酢酸塩溶液により溶解されないこれら化合物の鉛であっても、経済学的に検討されるか又はそうすべきことが望まれる他の理由があれば、最終的に再生させることができる。これは、不純物及び鉛の不溶性化合物からなる分離固相を、これらの化合物を分解し、可溶性亜ナマリ酸塩に変換する酢酸塩の同じカチオン(陽イオン)の水酸化物の濃厚溶液中に懸濁させることにより行うことができる。亜ナマリ酸塩は温水酸化物溶液に溶解し、次いで、残った不溶性不純物から分離させることができる。従前に分離された不純物の固相から分離された残留鉛を含有する水酸化物溶液を、硫酸鉛含有酢酸塩水溶液中に導入し、酢酸塩と同じカチオンの水酸化物を導入し、酢酸塩水溶液中に硫酸鉛として含有される鉛を酸化鉛又は水酸化鉛として沈殿させる。
【0011】
次いで、明澄な硫酸鉛溶液からの高純度鉛化合物の沈殿は、(1)特許文献1に開示された方法で企図されるような、鉛の不溶性カーボネート/オキシカーボネートの沈殿用に硫酸鉛を選択的に溶解させるために使用される酢酸塩の同じカチオンのカーボネートを溶液に添加するか、又は(2)一層好ましくは、別実施態様により、カーボネート塩の代わりに、硫酸鉛の明澄な溶液に、沈殿浴の温度に応じて、鉛の酸化物又は水酸化物の何れかの沈殿を起こさせるための選択的に溶解された硫酸鉛について使用される酢酸塩の同じカチオンの水酸化物を添加することにより行われる。斯くして、最終的にカーボネートをオーブン(加熱炉)中で加熱することにより再生炭酸鉛を酸化鉛に変換させなければならないような余計な負担が避けられる。
【0012】
本発明者らは、沈殿を起こさせるためにカーボネート又は水酸化物を使用するか否かに拘わらず、溶液中の全ての鉛の高純度鉛化合物としての沈殿が実際に完全であることを発見した。従って、アセテート溶液からの高純度鉛化合物の固相の分離は、夾雑出発原料が懸濁されている同じアセテート溶液から行われる。
【0013】
アセテート塩の明澄な溶液は、硫酸鉛を選択的に溶解させるために使用されたアセテート塩の同じカチオンのスルフェートが徐々に増加していくが、硫酸ナトリウムの濃度が飽和点以下に維持されている限り、夾雑出発原料の懸濁ステップで再使用できる。明澄なアセテート塩溶液のスルフェート濃度が飽和点に近づいたら、この溶液を約10℃にまで冷却し、使用されているアセテート塩のカチオンのスルフェートにより構成される固相を選択的に結晶化させ、そして沈殿させる。この固相は濾過により分離される。スルフェートが除かれた明澄なアセテート塩溶液はその後、夾雑出発原料の懸濁浴に再循環させることができる。
【0014】
好ましくは、使用されているアセテート塩のカチオンのスルフェートにより構成される固相を選択的に結晶化させ、そして沈殿させるためにアセテート塩の明澄な溶液を冷却する前に、より広範に市場で受け入れられる副生物として鉛を含まないスルフェート塩を製造するために、溶液冷却前に溶液中の全ての残留鉛イオンを隔離するためのキレート樹脂が充填されたカラムを通してアセテート溶液を濾過する。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、処理容器及び関連する攪拌機、加熱器又は冷却器、濾過器などのプラント構成、処理プラントの複雑性、輸送及びエネルギー費用などに換算される鉛再生コストを大幅に軽減することができ、実現可能であるばかりか効率的な全湿式鉛再生プロセスを著しく効果的に単純化した新規な鉛再生方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の、純粋な炭酸鉛/オキシ炭酸鉛又は純粋な酸化鉛/水酸化鉛の何れかを製造するための、廃棄蓄電池電極スライム又は鉛鉱石から高純度の酸化鉛を再生させる処理の主要ステップのフローシートである。
【図2】図1のフローシートに従って、純粋な炭酸鉛/オキシ炭酸鉛又は純粋な酸化鉛/水酸化鉛の何れかを製造するための、廃棄蓄電池電極スライム又は鉛鉱石から高純度の酸化鉛を再生させるプラントの概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
【0018】
本発明の方法の第1の実施態様による図1のフローシートを参照する。この実施態様は、最終的には極僅かな適合性しか無いが有用である粉砕廃棄蓄電池から回収された電極ペーストスライム原料又は微粉砕された鉛鉱石(例えば、亜硫酸鉛を硫酸鉛に変換させるために一般的に焙焼される方鉛鉱、硫酸鉛鉱及び低品位な一般的鉱物等)などの処理に特に好適である。夾雑出発固体原料を、例えば、酢酸のナトリウム、アンモニウム、カリウム、尿素、モノ−、ジ−、トリ−エタノールアミン塩などのような、硫酸鉛を溶解させることができる塩の水溶液に懸濁させる。
【0019】
この懸濁液に、出発原料中に存在する全酸化物をスルフェートに変換するのに必要な量の硫酸と、過酸化水素、亜硫酸塩及び無水亜硫酸から選択される還元剤とを徐々に添加するか、若しくは、懸濁浴中に、(廃棄鉛蓄電池からのスライムの場合のような)出発原料中に含有されるであろう全ての二酸化鉛を酸化鉛に還元するのに必要な量を吹き込む。
【0020】
従って、図1のプロセスフローシートの第1のステップ(1)では、出発原料の懸濁浴中で下記で詳細に説明するような化学反応が起こる。全ての鉛化合物が、前記の特定の溶解性塩を含有する水溶液に溶解されるスルフェートに変換される反応が同時におこるような化学反応が生起する。
【0021】
硫酸鉛の溶解により電極ペーストに元々親密に結合していた酸化鉛が遊離され、酸化物が迅速に反応してそれ自体がスルフェートに変換する結果として3PbOPbSO及び4PbOPbSOのようなタイプの化合物を生成するという事実を考慮すれば、下記に記載される反応は、化学変換プロセスの速度の相当な増大を生じる相乗作用の存在を明確に認めさせ得る。前記スルフェートは次いで酢酸ナトリウムなどのようなアセテート塩溶液に溶解し、一方、前記オキシスルフェートの凝固物内に物理的に埋め込まれている二酸化鉛は反応種により一層容易に到達されるようになり、その結果、酸化鉛に一層簡単に還元される。
【0022】
下記の反応は、硫酸鉛が主要成分(約60重量%程度)として夾雑出発原料中に存在し、酢酸ナトリウムの水溶液に溶解される、廃棄蓄電池の電極ペーストスライムからの高純度鉛化合物の再生の一例的実施態様に関する。
【0023】
反応1:硫酸鉛の溶解
PbSO(不溶性)+4CHCOONa→PbSOの可溶性錯体
【0024】
反応2:酸化鉛の溶解
2CHCOONa+HSO→2CHCOOH+NaSO
PbO(不溶性)+2CHCOOH→Pb(CHCOOH)(可溶性)+H
Pb(CHCOOH)+NaSO→PbSO(不溶性)+2CHCOONa
PbSO(不溶性)+4CHCOONa→PbSOの可溶性錯体
【0025】
反応3:二酸化鉛の還元及び溶解
2CHCOONa+HSO→2CHCOOH+NaSO
PbO(不溶性)+H→PbO(不溶性)+HO+1/2O
PbO(不溶性)+2CHCOOH→Pb(CHCOOH)(可溶性)+H
Pb(CHCOOH)+NaSO→PbSO(不溶性)+2CHCOONa
PbSO(不溶性)+4CHCOONa→PbSOの可溶性錯体
【0026】
(随意)反応4:少量の鉛のような再生用不純物と一緒に分離された夾雑出発原料中に存在する可能性のある不溶性鉛化合物の可溶化
4PbOPbSO(不溶性)+12NaOH→5NaPbO(可溶性)+NaSO+6H
【0027】
一例として、粉砕廃棄鉛蓄電池から回収された電極ペーストスライムを処理するために、37.5重量%〜54.5重量%の範囲内の濃度で水中に溶解された酢酸ナトリウム三水和物の水溶液を申し分無く使用することができる。処理されるべき夾雑出発原料について事前に評価されたように、全ての酸化鉛を硫酸鉛に変換するための化学量論的必要量に対応する量又は化学量論的必要量を丁度越える量の硫酸を添加する。好ましくは、必要量の硫酸が添加された後、この懸濁浴に、出発原料中に含まれる二酸化鉛を還元するための化学量論的必要量に事前に換算された量の過酸化水素を添加する。
【0028】
特定の容量の溶液内で処理できる電極ペーストの量は、選択された酢酸鉛の溶液への硫酸鉛の可溶化容量及び硫酸の添加量に応じて変化する。アセテート(酢酸)塩溶液の硫酸鉛溶解能力はその塩濃度に応じて変化する。一例として、濃度37.5重量%の酢酸ナトリウム1リットルは硫酸鉛100gを溶解させることができる。酢酸ナトリウムの濃度を増大させることにより、溶解させることができる硫酸鉛の量も正比例して増大する。懸濁浴中で前記反応を実施できる温度は10℃〜沸点の範囲内である。鉛化合物凝集体の崩壊を促進させるために、懸濁液は手桶又はタービンミキサーで撹拌できる。
【0029】
選択された操作条件(例えば、出発固体原料のタイプ及び微細度、硫酸鉛可溶化塩溶液のタイプ及び濃度、最終的二酸化鉛還元剤の添加、温度、撹拌方法等)の組合せは、全湿式再生方法の第1のステップ(1)の完了に必要な時間に影響する。溶液中の全酸化鉛の硫化に使用される硫酸は、好ましくは、硫酸鉛可溶化溶液を過度に希釈しないために、高濃度を有するべきである。
【0030】
多数のパラメータの組合せに応じて変化するが一般的に、6分間〜15分間の範囲内の反応時間が経過したら、例えば、濾過により、固相残留物から、硫酸鉛を含有する澄んだアセテート溶液を分離することができる。従って、全ての不溶性不純物及び不溶性物質は溶液から分離される(図1のフローシートのステップ(2)参照)。
【0031】
水酸化鉛(白色外観)の形の代わりにPbO(黄色外観)の形で溶液中に存在する全ての鉛を確実に沈殿させるのに十分に高い温度で、図1のフローシートのステップ(3)について企図された好ましい代替法に従って、選択されたアセテート塩の同じカチオン(すなわち、ナトリウム、カリウム又はアンモニアの何れか)の水酸化物を溶液に添加することにより、硫酸鉛の形の出発原料中の概ね全ての鉛成分を含有する明澄アセテート溶液中で行われるその後の反応は、硫酸鉛の溶解度よりも遙かに低い溶解度のために、酸化鉛を選択的に沈殿させる。一般的に、臨界温度は70℃付近である。従って、(何らかの理由で、最終的に酸化鉛に熱的に変換され得る高純度水酸化鉛の回収を望まないならば)沈殿は約72℃〜73℃で実施できる。
【0032】
図1のフローシートのステップ(3)について企図された別の代替法は、硫酸鉛の形で出発原料の概ね全ての鉛成分を含有するアセテート水溶液に、水酸化物の代わりに、選択されたアセテート塩と同じカチオン(すなわち、ナトリウム、カリウム又はアンモニアの何れか)のカーボネートを添加することからなる。これにより、炭酸鉛又は炭酸鉛とオキシ炭酸鉛の混合物が選択的に沈殿される。その理由は、これらの溶解度が硫酸鉛の溶解度よりも著しく低いからである。この代替法では、沈殿は室温〜沸点の範囲内からなる任意の温度で行わせることが出来る。
【0033】
ステップ(3)の反応が完了したら、図1のフローシートのステップ(4)において、濾過することにより溶液から沈殿酸化鉛又は水酸化鉛若しくはカーボネート/オキシカーボネートを分離させる。一方、不溶性酸化物(又は水酸化物)若しくはカーボネート(又はオキシカーボネート)として鉛を沈殿させるために使用した水酸化物のカチオンのスルフェート又はカーボネートは溶液中に留まる。
【0034】
アセテート塩と同じカチオンを含有する明澄なアセテート溶液は、スルフェート含量が飽和点(この飽和点は硫酸鉛の溶解化塩溶液のタイプ及び加工条件に応じて変化する)以下に維持されている限りは、本発明のプロセスの硫酸鉛(ステップ(1)参照)の選択的溶解の懸濁浴に統合的に再循環(リサイクル)させることができる。
【0035】
言うまでもなく、酸化鉛又は水酸化鉛若しくはカーボネート/オキシカーボネートと共に過剰量のスルフェート塩が沈殿することは防止しなければならない。従って、過剰量のスルフェート塩は、好ましくは、飽和点に接近する前(図1のフローシートのステップ(8)参照)に、溶液から最終的に除去されなければならない。これは簡単に行うことができる。例えば、スルフェートの選択的結晶化及びアセテート溶液からのその分離のために使用される対応するアセテート塩の温度と異なるスルフェート塩(すなわち、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム又は硫酸アンモニウム)の温度で異なる溶解度を利用することにより行われる。
【0036】
可溶化塩水溶液の濃度及び硫酸鉛を可溶化塩水溶液に溶解させるときの温度は必須要件的パラメーターではない。なぜなら、これらのパラメーターは、前記の反応を完了するのに必要な時間及び可溶化塩水溶液に溶解させるべき硫酸鉛の品質に殆ど影響を与えないからである。実際、溶解された鉛が酸化物又は水酸化物若しくはカーボネート/オキシカーボネートとして沈殿された後、可溶化溶液は再循環される。従って、再循環溶液で操業する場合、所定品質の硫酸鉛を完全に溶解させるためには可溶化溶液を何回も再循環(リサイクル)しなければならない。
【0037】
本発明の方法は、3種類の主要鉛化合物(すなわち、硫酸鉛、酸化鉛及び二酸化鉛)の量が約2重量%の可変性範囲内までの平均値付近で変動する電極ペーストスライムの処理に著しく好適であることが証明された。この主要鉛化合物の量の変動は実際問題として、夾雑出発原料中に存在する全ての鉛酸化物をスルフェートに変換するために必要な硫酸溶液の量を正確に計算することを妨げる。
【0038】
それにも拘わらず、本発明の方法を実施する際に、化学量論的に必要な量よりも過剰量の硫酸が添加されると、選択されたアセテート塩と同じカチオンの水酸化物又はカーボネートを添加することにより純粋な鉛化合物を沈殿させた後、硫酸鉛の沈殿に関して厳密な量に較べて、添加化合物のカーボネートのスルフェートが過剰量生成される。その理由は、溶液中に遊離硫酸が存在するためである。これとは逆に、化学量論的に必要な量よりも過小量の硫酸が添加されると、酸化物のスルフェートへの変換は不完全になり、その結果、固形不純物を分離した時に、残留量の酸化物がアセテート溶液中に未溶解状態のまま残ってしまう。このような事態が図らずも起こってしまった場合、分離固相を単に懸濁浴に再導入するだけでよく、過剰量の硫酸を導入することにより最終的にスルフェートに変換させることができる。
【0039】
明澄なアセテート塩溶液中のスルフェート濃度が飽和点に接近したら、連続的に又は断続的に、溶液をキレート樹脂が充填されたカラムを通して濾過し、全ての残留鉛イオンは溶液中に隔離しておく(図1のフローシートのステップ(5)参照)。次いで、この溶液を約10℃にまで冷却し、使用されたアセテート塩のカチオンのスルフェートにより構成される結晶固相を沈殿させる(図1のフローシートのステップ(6)参照)。次いで、この固相を濾過することにより回収する(図1のフローシートのステップ(7)参照)。その後、スルフェート塩を含まない明澄なアセテート塩溶液を夾雑出発原料の懸濁浴に再循環させ、一方、鉛を含有しないスルフェート塩は市場価値のある副生物として利用される。
【実施例1】
【0040】
金属当量として表すと72%の鉛含量を有する回収乾燥電極ペーストスライム80gを撹拌しながら、83℃の温度で、濃度94重量%〜96重量%の濃硫酸12.2gを添加しながら、濃度37.5重量%の酢酸ナトリウム三水和物の水溶液1000mLで処理した。続いて、濃度32重量%の過酸化水素を懸濁液に(約10分間かけて滴下するように)ゆっくりと添加し、懸濁液の更なる明澄化が見られなくなるまで添加し続けた。
【0041】
次いで、温懸濁液を濾過し、固相を分離した。この固相は、不溶性鉛化合物及び鉛化合物凝固物、電極グリッドフラグメント及び電極ペーストを形成するために使用される様々な添加物{例えば、カーボンブラック、硫酸バリウム、ファイバー及び不純物(例えば、砂、プラスチック材料等)など}により構成されている。この鈍色固相の量は、乾燥電極ペーストの固体塊の重量を基準にして約4〜12%であった。
【0042】
硫酸鉛を含有する濾過された明澄な溶液に83℃で水酸化ナトリウムを撹拌しながら添加し、酸化鉛の形の鉛がほぼ完全に沈殿されるまで添加し続けた。その後、懸濁液を濾過し、酢酸ナトリウムの可溶化溶液から沈殿物を分離した。この可溶化溶液はこの時点で硫酸ナトリウムを大量に含み、溶液中の硫酸ナトリウムの含量が飽和点以下に維持されている限り、撹拌硫酸鉛溶解浴に再循環させた。
【0043】
酢酸ナトリウム溶液中の硫酸ナトリウム含量が飽和限界に接近してきたら、例えば、Chelex-100又はDowex A-1の商品名で市販されているキレート樹脂が充填されたカラムを通してこの溶液を濾過する。前記以外の樹脂も当然使用できる。樹脂充填材はスルフェート溶液中に残留物として存在する極微量の鉛イオンであってもほぼ完全に隔離した。
【0044】
続いて、精製スルフェート溶液(実際的に鉛不含有)をゆっくりと撹拌しながら10℃にまでゆっくりと冷却し、硫酸ナトリウムにより構成される結晶質固相を沈殿させた。次いで、懸濁液を濾過することにより結晶質固相を回収し、一方、明澄な溶液は硫酸鉛の溶解浴へ再循環させた。
【0045】
濾過された酸化鉛を脱イオン水で厳密に濯ぎ、重量が一定に達するまで、160℃で乾燥させた。
【0046】
分離された鈍色固相を濃度40重量%の水酸化ナトリウムに50℃で15分間かけて懸濁させた。分離された明澄な液相を、明澄なアセテート溶液に導入した。このアセテート溶液も、亜ナマリ酸ナトリウムとして溶液中に存在する鉛自体も酸化鉛(又は水酸化鉛)に変換されるという事実を考慮して、(好ましい実施態様によれば)酸化鉛又は水酸化鉛として溶液中の全ての鉛を沈殿させるために必要な量の水酸化ナトリウムの一部として、硫酸鉛を含有する。
【0047】
試験の終了時点で、下記の質量バランスが記録された。
【0048】
実験に使用された回収電極ペーストの量80gのうち、金属鉛と外来物質(例えば、砂、カーボンブラック、硫酸バリウム及び少量のその他の物質)を含有する鈍色の不溶性物質4gが存在した。
【0049】
回収可能な酸化鉛の計算上の最大量は62.05gであり、一方、有効に回収された酸化鉛の量は62.03gであった。従って、回収収率は99.96%であった。
【0050】
回収された固体生成物を化学分析したところ、この固体生成物は純度99.99%のPbOによりもっぱら構成されており、一方、最終的に回収された硫酸ナトリウムの純度は約99.90%であることが確認された。
【0051】
下記の表1は、前記の実施例1のプロセスの他の例示的実施例2〜4の関連実験条件、特性及び結果を要約して示す。しかし、表示された代替条件及び得られた結果は、粉砕廃棄蓄電池から回収された同じロットの電極ペーストを常に出発原料として使用した。
【0052】
表1

実施例 硫酸鉛溶解 反応時間 沈殿用 得られた精製 収 率
番 号 溶 液 及び温度 化合物 鉛化合物
2 濃度37.5重量% 10分間 NaOH Pb(OH) 99.94
酢酸ナトリウム 65℃
1000mL

3 濃度40.0重量% 8分間 NaOH PbO 99.95
酢酸ナトリウム 90℃
1000mL

4 濃度40.0重量% 12分間 NaCO PbCO 99.91
酢酸ナトリウム 45℃
1000mL
【0053】
(完全湿式法により直接生成されたか、又は完全湿式法により生成された炭酸鉛/オキシ炭酸鉛を加熱することにより得られたかに拘わらず)酸化鉛は新たな蓄電池用の電極ペーストを製造するのに完全に好適である。
【0054】
鉛鉱石又は鉛鉱石混合物を出発原料として使用する本発明の方法の実施は前記実施態様と殆ど同様に行うことができる。必須の事前ステップは鉱石内に存在する鉛の全ての異なる塩を出来るだけ多く硫酸鉛又は酸化鉛に変換することである。例えば、最も一般的な鉛鉱石である方鉛鉱の場合、一般的技術である焙焼技術により、亜硫酸鉛が硫酸鉛に酸化されるまで、鉱石を空気中で加熱しなければならない。その他の一般的鉱石である硫酸鉛鉱は、それ自体が既に硫酸鉛により構成されているので、事前処理は全く不要である。言うまでも無く、鉱石はこれらの加工を容易にするために、微粉砕されなければならない。
【0055】
図2は、廃棄蓄電池の回収電極ペースト又は出来るだけ多くの鉛化合物を硫酸鉛に変換させるための事前処理が施された微粉砕鉛鉱石から高純度化合物の形で可変鉛を再生する工業用プラントの一例のブロック図である。
【0056】
図2のブロック図は前記の加工代替法の多数の実施態様に関する例示を提供する。但し、図2のブロック図では、アセテート塩の選択カチオンとして、また、各種代替法により鉛の所望の純粋化合物の沈殿用に添加される代替化合物の選択カチオンとして共通してナトリウムが例示されている。
【0057】
操業する場合、プラントは必ず3個の攪拌機と温度制御反応器が必要である。夾雑出発原料がアセテート塩水溶液に懸濁される第1の反応器RAC(1)には、夾雑出発原料の不溶性不純物により構成される固相から溶液含有硫酸鉛を分離するための第1の固-液分離器F(1)が付随されている。
【0058】
図2の多数の代替法において反応器RAC(2)、RAC(3)及びRAC(4)の何れかで示される、高純度の所望鉛化合物を沈殿させるために第2の反応器に対して、第2の固-液分離器、すなわちF(2)、F(3)及びF(4)が付随されている。
【0059】
第3及び最後の反応器RAC(5)及びこれに付随される第3及び最後の固-液分離器F(5)は、再循環アセテート塩溶液を少なくとも周期的(一層好ましくは、連続的)に処理し、これを第1のスルフェート溶解用反応器RAC(1)に再循環させることが求められる。この処理は、アセテート塩の溶解度と、このアセテート塩と同じカチオンのスルフェートの溶解度との顕著な差を利用して選択的に結晶化させることからなる。例えば、所望の鉛化合物を沈殿させるために第2の反応器に導入し、そして、これを装置から取り出すことからなる。このステップは、同じカチオンのスルフェートにより再循環アセテート塩溶液が飽和されることを防ぐために、(連続的又は断続的に)実施されなければならない。同じカチオンのスルフェートにより再循環アセテート塩溶液が飽和されると、硫酸鉛と一緒にアセテート塩が共沈し、精製プロセスを無益なものにしてしまう。
【0060】
好ましい実施態様によれば、“副生物”のスルフェート塩(例えば、硫酸ナトリウム)を概ね鉛不含有にし、その結果、一般市販可能にするために、図2のプラントは適当なキレート樹脂が充填された交換樹脂カラムC(1)を含むことができる。溶液が選択されたスルフェート結晶化反応器RAC(5)に(連続的又は断続的に拘わらず)配向されたときに、溶液はこの交換樹脂カラムC(1)を通過することにより、溶液中に存在するかもしれない残留鉛イオンを隔離する。
【0061】
言うまでも無く、キレート樹脂充填剤は徐々にその活性を失う。従って、カラムC(1)に所定の周期で酢酸を循環させることにより、可溶化された鉛イオンの抜き取りを定期的に実施しなければならない。交換樹脂の定期的再活性化に使用された酢酸の鉛だらけの抜き取り溶液(即ち、酢酸鉛を含有する溶液)は、図2における点線で示されるように、単に第1の反応器RAC(1)に導入することにより“処分”することができる。
【0062】
図2の複数実施態様対応プラントのブロック図は、任意反応器RAC(2bis)も図示している。この任意反応器RAC(2bis)では、所望により、処理すべき夾雑出発原料の組成を考慮して、第1の反応器RAC(1)における夾雑出発原料の処理中に溶解させることができなかった化合物又は凝固物の形の不純物の分離固相に付随して残る残留量の鉛が処理される。鉛のこれら化合物又はその凝固物も溶解させる選択されたアセテートと同じカチオンの水酸化物の温濃厚溶液中に分離固相を懸濁させる。付属の固-液分離器F(2bis)は、溶解された亜ナマリ酸ナトリウムを含有する水酸化物溶液から全ての非鉛不純物を分離させることができる。この水酸化物溶液は、好ましい実施態様に従って、溶液中の全ての鉛を酸化鉛又は水酸化鉛として沈殿させるために使用できる第2の反応器RAC(2)又はRAC(3)において添加される水酸化物の一部として都合良く使用することができる。
【0063】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0064】
図1:

ステップ ←物質送入; →物質取出
(1)還元、 ←原料電極スライム
スルフェート化、 ←酢酸ナトリウム作成
可溶性化 ←硫酸
←過酸化水素
←アセテート飽和溶液再循環

(2)濾過 →不溶性化合物及び固体不純物

(3)酸化物生成 ←水酸化ナトリウム
>72℃〜73℃
水酸化物生成 ←水酸化ナトリウム
<72℃〜73℃
カーボネート生成 ←炭酸ナトリウム

(4)濾過 →酸化鉛又は
→水酸化鉛又は
→炭酸鉛

(5)溶液浄化 →酢酸鉛(ステップ(1)へ)
←酢酸

(6)結晶化

(7)濾過 →硫酸鉛

(8)可溶化塩溶液再循環
(ステップ(1)へ)

(2bis)ステップ(2)からの ←水酸化ナトリウム
不溶性化合物及び固体不純物

(2bis)濾過 →不溶性化合物
→可溶性亜ナマリ酸鉛(ステップ(3)へ)

図2:

凡例:撹拌反応器:(RAC)加熱撹拌反応器
(RAF)冷却撹拌反応器
□\ :固/液分離器(F)

RAC(1)←原料電極スライム、過酸化水素、酢酸ナトリウム作成、硫酸

F(1)→固体不純物; RAC(2bis)←水酸化ナトリウム

RAC(2)←水酸化ナトリウム;←亜ナマリ酸鉛

F(2)→酸化鉛; F(2bis)→固体不活性不純物

RAC(3)←水酸化ナトリウム

F(3)→水酸化鉛

RAC(4)←炭酸ナトリウム

F(4)→炭酸鉛

交換樹脂カラムC(1)←酢酸; →酢酸鉛(RAC(1)へ)

RAF(5)→アセテート溶液再循環; →硫酸ナトリウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄蓄電池からの夾雑電極ペースト又はスライム若しくは鉛鉱石の鉛成分を高純度鉛化合物の形で再生する方法であって、
(a)酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及び酢酸アンモニウムからなる群に属する酢酸塩の硫酸鉛溶解性水溶液に不純鉛含有材料を懸濁させるステップと、
(b)全ての鉛酸化物をアセテート塩溶液に可溶性の硫酸鉛に変換させるのに十分な量の硫酸を、この懸濁液に添加し、かつ、この懸濁液に、全ての二酸化鉛を、硫酸により最終的に可溶性硫酸鉛に変換される酸化鉛に変換するの主に適合する、過酸化水素又は亜硫酸塩の何れかをゆっくりと添加するか、若しくはこの懸濁液中に無水亜硫酸を吹き込むステップと、
(c)溶解された硫酸鉛を含有する明澄なアセテート塩溶液を、全ての未溶解化合物及び不純物を含有する固相残留物から分離するステップと、
(d)高純度の炭酸鉛/オキシ炭酸鉛又は酸化鉛若しくは水酸化鉛をそれぞれ沈殿させ、一方、アセテート塩溶液に可溶性のカチオンの硫酸塩を生成させるために、硫酸鉛の分離溶液に、硫酸鉛溶解性溶液のアセテート塩と同じカチオンの炭酸塩又は水酸化物の何れかを添加するステップと、
(e)アセテート塩と同じカチオンの硫酸塩も含有するアセテート塩溶液から、沈殿高純度鉛化合物を分離するステップとからなる、
ことを特徴とする鉛再生方法。
【請求項2】
鉛の沈殿化合物から分離されたアセテート塩と同じカチオンの硫酸塩も含有する前記アセテート塩溶液を前記ステップ(a)に再循環させ、アセテート塩と同じカチオンのスルフェート塩の選択的沈殿を生起させ、そして、それを副生物として除去するために、沈殿鉛化合物から分離された溶液の少なくとも一部を連続的に又は定期的に冷却することにより、この溶液内の同じカチオンのスルフェート含量の増大を飽和限界以下に維持する、
ことを特徴とする請求項1記載の鉛再生方法。
【請求項3】
アセテート塩と同じカチオンのスルフェート塩を選択的に沈殿させるために冷却する前に、冷却後のアセテート塩と同じカチオンの概ね鉛不含有のスルフェート塩の選択的沈殿用の溶液からの全ての鉛イオンを隔離するのに適合するキレート樹脂にこの溶液を接触させる、
ことを特徴とする請求項2記載の鉛再生方法。
【請求項4】
硫酸鉛の選択的溶解は、水100g中に塩10g〜120gを含む濃度の酢酸ナトリウムの水溶液に、20℃〜沸点の範囲内の温度で、5分間〜180分間の範囲内の撹拌時間で、不純材料を懸濁させることにより行われる、
ことを特徴とする請求項1記載の鉛再生方法。
【請求項5】
硫酸鉛の選択的溶解は、水100g中に塩20g〜120gを含む濃度の酢酸アンモニウムの水溶液に、20℃〜沸点の範囲内の温度で、5分間〜180分間の範囲内の撹拌時間で、不純材料を懸濁させることにより行われる、
ことを特徴とする請求項1記載の鉛再生方法。
【請求項6】
硫酸鉛の選択的溶解は、水100g中に塩20g〜120gを含む濃度の酢酸カリウムの水溶液に、20℃〜沸点の範囲内の温度で、5分間〜180分間の範囲内の撹拌時間で、不純材料を懸濁させることにより行われる、
ことを特徴とする請求項1記載の鉛再生方法。
【請求項7】
(f)アセテート溶液に溶解させることができなかった鉛化合物又はその凝固物を水酸化物カチオンの亜ナマリ酸塩の形に変換して溶解させるために、全ての未溶解化合物及び不純物を含有する前記分離固相残留物を選択されたアセテート塩と同じカチオンの温濃厚水酸化物中に懸濁させるステップと、
(g)出発原料中に含まれる不純物の固相から亜ナマリ酸鉛含有アルカリ性溶液を分離するステップと、
(h)分離された鉛含有溶液を分離されたアセテート溶液に添加して全ての再生可能鉛を高純度酸化鉛又は水酸化鉛として沈殿させるステップとを、
更に有することを特徴とする請求項1記載の鉛再生方法。
【請求項8】
廃棄蓄電池からの夾雑電極ペースト又はスライム若しくは鉛鉱石の鉛成分を高純度鉛化合物の形で再生するプラントであって、
(a)第1の反応器(RAC(1))と、
この第1の反応器は、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及び酢酸アンモニウムの酢酸塩からなる群に属する塩の硫酸鉛溶解性水溶液に不純材料を懸濁させるための撹拌及び加熱手段と、硫酸を制御しながら添加する手段と、過酸化水素、亜硫酸ナトリウム及び無水亜硫酸からなる群に属する試薬を制御しながら添加する手段とを有する、
(b)第1の固-液分離器(F(1))と、
この第1の固-液分離器は、明澄なアセテート塩溶液及び硫酸鉛溶液から、鉛の不溶性化合物又は鉛化合物及び不純物の未溶解凝固物を分離する、
(c)第2の反応器(RAC(2)、RAC(3)、RAC(4))と、
この第21の反応器は、アセテート塩の明澄な水溶液及び硫酸鉛溶液を保持するのに適合し、撹拌及び加熱手段を有し、かつ、不溶性炭酸鉛/オキシ炭酸鉛又は酸化鉛若しくは水酸化鉛をそれぞれ沈殿させるための前記アセテート塩と同じカチオンのカーボネート又は水酸化物の何れかを添加し、そして、水溶液に可溶性の、アセテート塩と同じカチオンのスルフェートを生成させる手段とを有する、
(d)第2の固-液分離器(F(2)、F(3)、F(4))と、
この第2の固-液分離器は、アセテート塩と同じカチオンのスルフェートも含有するアセテート塩の水溶液から、前記沈殿鉛化合物により構成される固相を分離する、
(e)分離された溶液を前記第1の反応器(RAC(1))へ再循環させる手段と、
(f)第3の反応器(RAC(3))と、
この第3の反応器は、撹拌手段と、溶液中に含まれるアセテート塩と同じカチオンのスルフェートを選択的に結晶化させるために、前記再循環溶液の連続的に又は定期的に処理された部分を制御しながら冷却又は加熱する手段とを有する、
(g)第3の固-液分離器(F(5))と、
この第2の固-液分離器は、前記第1の反応器(RAC(1))へ再循環される再循環溶液の前記処理部分のアセテート塩と同じカチオンの前記結晶化されたスルフェートを分離する、
からなることを特徴とする鉛再生プラント。
【請求項9】
(h)キレート樹脂が充填されたカラムを更に有し、
このカラムには、溶液中に含まれるアセテートと同じカチオンのスルフェートを選択的に結晶化させるための前記第4の反応器(RAC(5))へ再循環溶液の連続的又は定期的処理部分を導入する前に、溶液からの残留鉛イオンを隔離するために、前記再循環溶液の連続的又は定期的処理部分が通される、
ことを特徴とする請求項8記載の鉛再生プラント。
【請求項10】
(i)カラム内に酢酸を循環させることにより前記キレート樹脂から隔離鉛イオンを定期的に抜き取る手段と、及び
(j)循環された量の酢酸を前記第1の反応器(RAC(1))へ導入する手段とを更に有する、
ことを特徴とする請求項9記載の鉛再生プラント。
【請求項11】
(k)第4の反応器(RAC(2bis))と、
この第4の反応器は、鉛の不溶性化合物又は鉛化合物の未溶解凝固体からなる前記分離固相を選択されたアセテート塩と同じカチオンの温濃水酸化物中に懸濁させ、そして、前記鉛化合物又は鉛化合物の未溶解凝固物を可溶性亜ナマリ酸塩に変換させるための攪拌手段と加熱手段を有し、
(l)不純物の固相から鉛含有アルカリ性溶液を分離するための第4の固-液分離器(F(2bis))と、
(m)高純度酸化鉛又は水酸化鉛の形で全ての再生可能鉛を沈殿させるために、鉛含有アルカリ性溶液を前記第2の反応器(RAC(2)、RAC(3))へ導入するための手段とを更に有する、
ことを特徴とする請求項8記載の鉛再生プラント。
【請求項12】
(n)分離された鉛化合物が炭酸鉛又はオキシ炭酸鉛若しくは水酸化鉛の形の場合、分離された鉛化合物を酸化鉛、二酸化鉛又は水にそれぞれ分解させるためのオーブンを更に有する、
ことを特徴とする請求項8記載の鉛再生プラント。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500566(P2013−500566A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522342(P2012−522342)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/IT2009/000344
【国際公開番号】WO2011/013149
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(509198158)ミルブロック レッド リサイクリング テクノロジーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】