説明

廃水中の農薬の分解方法

【課題】 水中において、二酸化チタン粒子に、超音波を照射して水中のフェニトロチオン等の汚染物質を分解する方法を提供する。
【解決手段】 フェニトロチオン等の汚染物質を含有する水中に、過酸化水素及びルチル型の二酸化チタン粒子を存在させて、28乃至45kHzの周波数の超音波を照射することを特徴とする水中のフェニトロチオン等の汚染物質の分解方法にあり、過酸化水素及び二酸化チタン粒子の存在する水中で、二酸化チタン粒子に35乃至45kHzの周波数の超音波を照射することにより、フェニトロチオン等の汚染物質を酸化分解又は変質させて無害化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化チタン光触媒の存在下の超音波照射による、廃水中に含まれる、例えば農薬及び/又は環境ホルモン物質等の汚染物質の分解方法に関し、特に、二酸化チタン光触媒の存在下の超音波照射による廃水中に含まれる農薬のフェニトロチオン(MEP)、バイジット(MPP)又はトリフルミゾール(EBI)、ペフラゾエート、フラジオキソニール若しくはTPN又はその他農薬及び/又はビスフェノール、ペンタクロロフェノール若しくはその他環境ホルモン物質又はそれら農薬及び環境ホルモン物質の混合物の分解方法に関する。また、本発明は、廃水中に含まれる殺虫剤及び殺菌剤等の汚染物質の二酸化チタン光触媒の存在下の超音波照射による分解方法に関し、特に、廃水中に含まれる例えば有機リン系殺虫剤等の殺虫剤、並びに例えばイミダゾール系エルゴステロール生合成阻害剤(EBI剤)及び有機塩素剤等の殺菌剤の二酸化チタン光触媒の存在下の超音波照射による分解方法に関する。さらに、本発明は、殺虫剤及び殺菌剤を含む廃水の超音波照射による浄化処理方法に関し、特に、有機リン系殺虫剤のフェニトロチオン若しくはバイジット又は殺菌剤のイミダゾール系エルゴステロール生合成阻害剤のトリフルミゾール若しくは有機塩素剤等の農薬又は前記二以上の農薬を含む廃水の超音波照射による浄化処理方法に関する。また本発明は、種籾等の被子植物の種子の消毒発芽工程から排出される殺虫剤及び殺菌剤等を含む廃水の廃水処理方法に関し、特に稲等の種籾の消毒発芽工程から排出される農薬のフェニトロチオン、バイジット又はトリフルミゾール又はこれら二以上の農薬を含有する廃水についての廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種籾には、ばか苗病菌、いもち病菌、ごま葉枯れ病菌などの病原菌や稲しんがれ線虫などの害虫が付着しており、これらの病気や害虫の発生を防止するために、種籾を発芽させる前に殺菌剤や殺虫剤により消毒している。このような種籾の消毒においては、殺虫剤として、例えば、有機リン系殺虫剤のフェニトロチオン剤(MEP(ジメチル 4−ニトロ−m−トリル フォスフォロチオネート)剤)、バイジット剤及びフェンチオン剤(MPP(ジメチル 4−メチルチオ−m−トリル フォスフォロチオネート)剤)、カーバメート殺虫剤のイソプロカルプ剤、ネライストキシン系殺虫剤のカルタップ水溶剤及びチオシクラム水和剤が使用されている。また、殺菌剤としては、有機硫黄剤のチウラム剤、有機塩素剤のTPN、イミダゾール系エルゴステロール生合成阻害剤のトリフルミゾール乳剤、ベンゾイミダゾール系剤のチオファネートメチル剤、チアベンダゾール剤及びべノミル剤が使用されている。ここで使用される例えば、有機リン系殺虫剤のフェニトロチオン及びバイジットは、例えば、稲しんがれ線虫に対しては、共に1000倍に希釈して使用されている。また、イミダゾール系エルゴステロール生合成阻害剤のトリフルミゾールは、抗菌スペクトラムが広く、例えば、ばか苗病菌、いもち病菌、ごま葉枯れ病菌に対しては、30乃至300倍に希釈して使用されており、予防効果及び治療効果を果たすものである。このように、上記殺虫剤若しくは殺菌剤又は該殺虫剤及び殺菌剤(以下、フェニトロチオン等の農薬という)は、被子植物の種子消毒工程において、被子植物の種子消毒に使用されて、廃水として大量に排出される。この排出された廃水中のフェニトロチオン等の農薬は、殺虫又は殺菌作用を有し、また、化学的に安定しており、長期に亘ってその効力を有しており、活性汚泥法により処理し難いために、例えば、活性炭等に吸着させて除去されている。(特開平7−214052号公報参照)。また、農薬や防腐剤や界面活性剤を含有する廃水を、光触媒の存在下に、紫外線を照射して光化学反応処理して、廃水中に含まれる農薬や防腐剤を分解し、農薬や防腐剤が分解された廃水を活性汚泥法で処理する廃水処理方法が提案されている(特開平10−151498号公報参照)。
【特許文献1】特開平7−214052号公報
【特許文献2】特開平10−151498号公報
【特許文献3】特開2003−26406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、農薬を含有する廃水、例えば、フェニトロチオン等の農薬を含有する廃水を活性炭により処理して、水中に分散又は溶存する農薬を活性炭に吸着して除去する方法では、活性炭処理工程で農薬を吸着した活性炭が大量に生成するので、この農薬を吸着した活性炭を再生賦活して、農薬の吸着除去工程に循環使用している。このように廃活性炭を再生して循環使用する場合、廃活性炭は、農薬を吸着した状態で乾燥され、この乾燥された農薬を吸着した活性炭を高温に加熱して、農薬を吸着した活性炭から、吸着されたフェニトロチオン等の農薬を脱着分離し、次いで、この脱着処理された活性炭を更に加熱して、賦活して、再度、農薬の吸着除去工程に使用している。このような農薬を吸着した活性炭の再生工程における農薬を吸着した活性炭の乾燥及び加熱分解処理には、多くの熱量を必要とし、問題とされている。また、廃水中で光触媒の存在下に紫外線を照射して光化学反応による農薬の分解反応では、光触媒粒子の存在により、紫外線が遮られることとなるので、総ての光触媒に紫外線を効率よく当てて、効率よく農薬を分解することが難しく、高い分解効率を得ることができず問題とされている。
本発明は、フェニトロチオン等の農薬で汚染されている廃水の浄化処理において、浄化処理に付随する活性炭の再生処理及び光触媒による光化学処理効率に係る問題点を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
既に、本発明者らは、二酸化チタン触媒粒子が存在する水中で超音波を照射して、該水中にヒドロキシラジカルを発生させ、これにより水中に存在する被酸化物質を酸化させる方法(特開2003−26406号公報)を提案した。そして、本発明者らは、廃水中に微量に含まれるフェニトロチオン等の農薬が、二酸化チタン触媒及び過酸化水素の存在下において35乃至45kHzの周波数の超音波を照射することにより、高い効率で分解されることを発見した。本発明者らは、この発見に基づきさらに研究を重ねて、フェニトロチオン等の農薬を使用した後に排出される、希釈されてフェニトロチオン等の農薬を微量に含有する廃水に、廃水中の汚染物質に対して大量の過酸化水素を混合させると共に二酸化チタン触媒粒子を混合させて、超音波を照射することにより、廃水中の微量に含まれる、汚染物質であるフェニトロチオン等の農薬を高い分解率で且つ比較的短い日数で分解することができることを発見して、本発明に至った。
本発明は、廃水中に含まれるフェニトロチオン等の農薬を効率よく分解する、フェニトロチオン等の農薬で汚染されている廃水の超音波処理方法を提供することを目的としている。
【0005】
即ち、本発明は、廃水に、過酸化水素を混合し、この過酸化水素を混合した廃水を、二酸化チタン光触媒の存在下に、28乃至45kHzの周波数の超音波を照射して前記廃水中に含有される汚染物質を分解除去することを特徴とする廃水処理方法にあり、また、本発明は、廃水に凝集剤を混合して凝集物を形成し、この凝集物が形成された廃水を濾過し、この濾過廃水に過酸化水素を混合し、この過酸化水素を混合した濾過廃水を、二酸化チタン光触媒の存在下に、28乃至45kHzの周波数の超音波を照射して廃水中に含有される汚染物質を分解除去することを特徴とする廃水処理方法にある。本発明は、廃水中に含有される汚染物質が、農薬の一以上の殺虫剤若しくは一以上の殺菌剤又は前記一以上の殺虫剤若しくは一以上の殺菌剤を混合した農薬、又はビスフェノール若しくはペンタクロロフェノール又はその他の環境ホルモンであっても処理することができる。また、本発明は、廃水が被子植物の種子の消毒発芽工程から排出される農薬の一以上の殺虫剤及び/又は一以上の殺菌剤を含有していても処理可能であり、農薬が、フェニトロチオン剤(MEP剤)のスミチオン、EBI剤のトリフルミゾール、即ち、(E)−4−クロローα,α,α−トリフルオロ−N―(1−イミダゾール−1−イル−2−プロポキシエチリデン)O−トルイジン、若しくはフェンチオン剤(MPP剤)のバイジット、テトラクロルイソフタロニトリル(TPN)、フルジオキソニル若しくはペフラゾエート又はこれら二以上の農薬であっても処理可能である。本発明において、廃水中の汚染物質の濃度が、0.05ミリモル/リットル以下の濃度であることが好ましい。本発明において、二酸化チタン光触媒の存在下に、28乃至45kHzの周波数の超音波を照射して廃水中に含有される汚染物質を分解除去するときに、過酸化水素の混合させることにより、超音波照射農薬の分解が促進されることが分かった。過酸化水素の混合量は、廃水中に含有される農薬の種類により変わり、また、希釈された廃水中の過酸化水素濃度が限度内で高い方が農薬の分解を促進することも分かった。廃水中の過酸化水素濃度は、市販の過酸化水素で廃水に対し2000分の1以上の容量比とすることができ、また、過酸化水素の混合量は廃水含有される汚染物質1モルに対し、2モル以上の量であることが好ましい。本発明において、二酸化チタン光触媒は、ルチル型の二酸化チタン光触媒とすることができ、特に、二酸化チタン光触媒の混合時における凝集を避けて農薬の分解をし易くするために、二酸化チタン光触媒が、廃水中の汚染物質を予め吸着した二酸化チタン光触媒粒子であるのが好ましい。
【0006】
本発明の廃水処理方法は、被子植物の種子の消毒発芽工程から排出される農薬の一以上の殺虫剤若しくは一以上の殺菌剤又は一以上の殺虫剤及び一以上の殺菌剤を含む混合物を含有する廃水を扱うことができる。また、本発明の廃水処理方法において、汚染物質として、農薬の一以上の殺虫剤若しくは一以上の殺菌剤又は前記一以上の殺虫剤及び一以上の殺菌剤を混合した農薬、又はビスフェノール若しくはペンタクロロフェノール又はその他の環境ホルモンであってもよく、例えば、フェニトロチオン、トリフルミゾール、はバイジット、ダコニール若しくはモミガード又はこれら二以上の農薬を含有する廃水を扱うことができる。本発明の廃水中のこれら汚染物質の分解処理において、廃水に対する過酸化水素の混合量が多いほど、分解に要する時間を短縮できるので、特に、廃水に含有される汚染物質1モルに対し、2モル以上とすることが汚染物質の分解に要する時間を短縮できるので好ましい。また、本発明において、廃水中の汚染物質の濃度が低いほど分解除去が短時間で行えるので、廃水中の汚染物質の量を0.05ミリモル/リットル以下の濃度とすることが好ましく、過酸化水素の混合量を、廃水に対し、2000分の1以上とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、例えば、農薬の殺虫剤若しくは殺菌剤又はこれら二以上の農薬、又はビスフェノール若しくはペンタクロロフェノール又はその他の環境ホルモン等の汚染物質により汚染されている廃水に、過酸化水素を含有させ、過酸化水素を含有する廃水中に、ルチル型の二酸化チタン粒子を存在させて、35乃至45kHzの周波数の超音波を照射することにより、廃水中の微量の汚染物質を分解できるので、例えば、稲籾等の被子植物の種子の消毒発芽工程から大量に排出され、毒性を有するフェニトロチオン等の汚染物質により汚染されている廃水を、ルチル型の二酸化チタン粒子を存在させて、28乃至45kHzの周波数の超音波を照射することにより無害化でき、河川等に放流することを可能にする。また、本発明は、田圃等に残留するフェニトロチオン等の農薬により汚染された灌漑水の無害化処理にも使用でき、さらに、汚染された河川水の浄化にも使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、汚染物質には、例えば、種籾の消毒において使用される農薬がある。このような農薬としては、例えば、殺虫剤として、有機リン系殺虫剤のフェニトロチオン剤、バイジット剤及びフェンチオン剤、カーバメート殺虫剤のイソプロカルプ剤、ネライストキシン系殺虫剤のカルタップ水溶剤及びチオシクラム水和材などがあり、また、殺菌剤としては、有機硫黄剤のチウラム剤、有機塩素剤のTPN、イミダゾール系エルゴステロール生合成阻害剤のトリフルミゾール乳剤、ベンゾイミダゾール系剤のチオファネートメチル剤、チアベンダゾール剤及びべノミル剤などがある。また、本発明において、汚染物質は、これらの他に、ビスフェノール若しくはペンタクロロフェノール又はその他の環境ホルモンを包含する。本発明において、汚染物質については、特に、以上の記載を総合してフェニトロチオン等の汚染物質といい、また、農薬についてはフェニトロチオン等の農薬という。
【0009】
本発明において、有機リン系殺虫剤の例えばフェニトロチオン又はバイジット等の殺虫剤は、化学的に比較的安定した化合物であり、例えば種籾の消毒発芽工程においては、例えば、1000倍の水で希釈されて使用されるが、発芽段階での給水によりさらに希釈されて排出されるので、その濃度はさらに低下し、きわめて低濃度のものとなる。本発明において、廃水中のフェニトロチオン等の汚染物質は、過酸化水素が混合されルチル型の二酸化チタン粒子が存在する廃水中で、超音波を照射することによって、酸化分解されて除去することができる。この場合、超音波の周波数を28乃至45kHz好ましくは35乃至45kHzとすると、分解率を大きくできるので好ましい。本発明においては、1000倍の水で希釈された高濃度の汚染物質を含む廃水よりも、さらに大量の水で希釈された、例えば2000倍以上の水で希釈された極めて低濃度の汚染物質を含む廃水の方が、汚染物質1モルに対して2モル以上の過酸化水素と、二酸化チタンとの共存下に、超音波照射により、廃水中の汚染物質を高い分解率で分解除去でき、且つ比較的短期間で無害化することができる。本発明において、二酸化チタン粒子は、廃水中のフェニトロチオン等の分解に使用する前に、フェニトロチオン等を含む液に浸漬して、予めフェニトロチオン等を吸着させておくと、フェニトロチオン等の分解開始に至る時間を短縮できるので好ましい。
【0010】
本発明において、汚染物質の分解は、汚染物質を含有する水中に過酸化水素水及び二酸化チタン触媒粒子を共存させて、超音波を照射することにより生成するヒドロキシラジカルによる酸化反応によるものと考えられる。汚染物質の酸化分解による除去は、過酸化水素(H)及び二酸化チタン触媒粒子の存在する液中で超音波エネルギーが到達する領域で行われる。本発明において、分解に要する時間を短縮するために、反応液即ち廃水に含有される汚染物質1モル当たり、2モル以上とされるが、この過酸化水素の量を増加させることにより、さらに分解に要する時間を短縮することができる。本発明において、廃水中の汚染物質の量が少ないほど、汚染物質を分解除去できるので、廃水中の汚染物質の量は、0.05ミリモル以下の濃度であるのが好ましい。本発明においては、このように過酸化水素は比較的大量に使用するので、市販の30%以上の濃い過酸化水素水を直接使用することができ、希釈する工程を特に必要としない。本発明においては、過酸化水素水を希釈する工程を特に必要としないので、過酸化水素の混合作業が簡単且つ容易となる。過酸化水素は、比較的短時間に分解消費されるので、必要に応じて分解消費された分を適宜補うことが好ましい。
【0011】
本発明において、廃水中の汚染物質の例えばフェニトロチオン等の農薬は、過酸化水素が存在する水中で、前記汚染物質を予備吸着させた二酸化チタン粒子の存在下に、超音波振動を印加して、即ち該水中に超音波を照射して、該廃水中で、汚染物質の例えばフェニトロチオン等の農薬、水及び前記二酸化チタン粒子を接触させることにより分解することができる。この場合、汚染物質の例えばフェニトロチオン等の農薬は、水に溶けた溶液の形態であっても、また、水に分散した形態であってもよい。一般に、水中で、二酸化チタン粒子の面に、超音波を照射すると、ヒドロキシラジカル又は活性酸素が生成し、この生成するヒドロキシラジカル又は活性酸素は、強力な酸化分解力を有するので、本発明においても、廃水中の汚染物質の例えばフェニトロチオン等の農薬は、二酸化チタン粒子の面に、超音波を照射して、過酸化水素を介して生成するヒドロキシラジカル又は活性酸素により、酸化されて分解するものと考えられる。
【0012】
本発明において、水中の汚染物質が分解除去されることは、汚染物質を含む水中に二酸化チタン粒子及び過酸化水素を存在させて、超音波を照射して、水中の汚染物質の酸化生成物又は汚染物質の濃度を求めて確認することができる。例えば、汚染物質が、例えばサリチル酸である場合は、二酸化チタン粒子及び過酸化水素の存在下において超音波の照射によるヒドロキシラジカルの酸化作用により生成するサリチル酸の酸化生成物の2,3−ジヒドロキシベンゼン及び2,5−ジヒドロキシベンゼンの量を電気化学検出器を備える高速液体クロマトグラフにより測定して、これらの酸化生成物の量の増加を求めることにより、水中の汚染物質が分解除去されたことを、確認することができる。
【0013】
また、本発明において、汚染物質がメチレンブルーである場合は、二酸化チタン粒子及び過酸化水素の存在下に超音波を照射して、酸化除去されて変化するメチレンブルーの濃度を、メチレンブルーの吸収波長の665nmの光の吸光度を分光光度計により測定し、測定されたメチレンブルーの濃度の経時変化を求めて、水中の汚染物質が分解除去されたことを確認することができる。
【0014】
汚染物質、例えばフェニトロチオン等を含む農薬の水溶液又は農薬の水懸濁液の場合は、二酸化チタン粒子及び過酸化水素が混合された、汚染物質の農薬を含む水溶液又は水懸濁液を反応容器内に入れて、超音波を照射することにより、水に溶解又は懸濁する汚染物質の例えばフェニトロチオン等の農薬は分解されるが、汚染物質に対して比較的大量に過酸化水素を存在させると、過酸化水素を介してヒドロキシラジカル又は活性酸素を生成して、酸化反応を容易にさせ、分解反応の反応時間を短縮することができ、分解反応を連続式に行うことが可能である。反応容器内の二酸化チタン触媒粒子の量は、反応をバッチ式又は連続式に行うかにより最適の充填量を求めることができる。反応容器内の水の量は、容器内の汚染物質を含む水の深さが、少なくとも超音波の波長の長さの4分の1の奇数倍とすることができるようにするのが、超音波の音圧を最大にできるので好ましい。汚染物質のフェニトロチオン等の農薬の分解量は、超音波を照射する二酸化チタン粒子及び過酸化水素を含む水中に残存する汚染物質のフェニトロチオン等の農薬の量を、例えばガスクロマトグラフィ又は高速液体クロマトグラフィーにより、測定することにより求めて算出することができる。
【0015】
本発明において、触媒の二酸化チタン粒子として、ルチル構造の二酸化チタン粒子が使用される。二酸化チタンは、比重が4.12と大きいので、触媒となる二酸化チタン粒子の粒径は、二酸化チタンの沈降分離が容易となるように、水中での二酸化チタン粒子の沈降時間から又はストークス沈降式から求めることができる。しかし、個々の事例に応じて、実験的に求めておくのが好ましい。本発明において、超音波照射による汚染物質の分解量は、照射する超音波の周波数により相違し、また、汚染物質により照射される超音波の最適周波数が相違するので、汚染物質毎に、予め求めておくのが好ましい。メチレンブルー場合は、超音波照射によるメチレンブルーの分解量からみて、35乃至45kHz、特に45kHzに設定しておくのが好ましい。例えば、メチレンブルーについて、28、35、45及び100kHzの周波数の超音波を照射した場合、その分解量は、35kHz及び45kHzの周波数の超音波照射の場合には、メチレンブルーの分解が確認されたが、28及び100kHzの周波数の超音波照射の場合には、メチレンブルーの分解は、殆ど確認することができなかった。しかし、例えばトリフミンについての28kHzの周波数の超音波照射であっても、過酸化水素の存在下で例えば48時間で分解率が58.7重量%となり、分解可能である。このように、照射する超音波の周波数により、汚染物質の分解率が相違するので、汚染物質を分解する超音波の最適周波数は、事前に試験等により求めておくのが好ましい。
【0016】
本発明は、汚染物質を含有する廃水を、二酸化チタン粒子が入れられ又は充填された反応容器内に導入し、過酸化水素を混合して、この二酸化チタン粒子が入れられ、また過酸化水素が混合された廃水を入れた反応容器を、超音波照射用容器内の水に浸漬して、反応容器内の液面が、所定の反応容器内の水深となるように配置し、このように配置された反応容器に超音波照射用容器を通して間接的に超音波を照射して汚染物質を酸化又は分解することにより除去して、浄化をはかることができる。このように、本発明においては、廃水の超音波処理を行う場合に、超音波を超音波照射用容器を介して反応容器に照射する、所謂、超音波の間接照射方式とすることができ、また、超音波を照射容器を介さずに直接反応容器に照射する、所謂、超音波の直接照射方式とすることができる。本発明において、例えば、汚染物質の酸化分解反応は比較的時間を要するので、連続して反応させるか又は繰り返し反応させるのが好ましい。本発明は、汚染物質の酸化分解反応を連続して又は繰り返し行う場合には、回分式とすることができるが、例えば、二酸化チタン触媒粒子が充填された反応管又は反応容器等の反応空間内に、汚染物質を含む廃水に過酸化水素を混合しながら超音波を照射させて、連続式とすることができる。例えば、過酸化水素が混合されたフェニトロチオン等の汚染物質を含有する廃水を、分解消費される過酸化水素を補いながら、所定時間滞留させるか、又は繰り返し流通させて、廃水中のフェニトロチオンの酸化分解を行うことができる。二酸化チタン触媒粒子が入れられた反応管又は反応容器を使用して、超音波の照射下に汚染物質を含む廃水を通しながら酸化分解する場合には、超音波が照射される超音波照射用容器内に、二酸化チタン触媒粒子を入れた反応管を複数設けて、各反応管の流路長を、例えば、フェニトロチオン等の汚染物質を含有する廃水が所定時間滞留できるような長さとし、フェニトロチオンを含有する廃水の流量及び混合される過酸化水素量を制御して、フェニトロチオンを連続的に酸化分解することができる。反応容器内の二酸化チタン触媒粒子を入れる量は、反応をバッチ式又は連続式に行うかにより最適の量を求めることができる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の一実施例を説明するが、本発明は、以下の実施例及び説明により、何ら限定されるものではない。
例1
実施例1
本例において、底部に超音波振動子を配置した超音波照射用容器を、反応容器を浸す容器として使用した。超音波照射用容器としては、横及び幅が夫々内寸で484mm、高さが内寸で252mmの大きさの、アクリルガラス製の枡形の容器を使用した。超音波照射用容器内に配置される汚染物質分解反応容器は、アクリルガラス製の二重円筒容器であり、外側円筒壁と内側円筒壁の間に形成された空間は冷却水が流れる冷却用套部となっており、内側空間が分解反応容器部となっている。前記汚染物質分解反応容器は、直径が内寸で136mmで、高さが内寸で350mmの円筒状の容器である。外側円筒壁には、冷却水入口及び冷却水出口が一箇宛て設けられており、外側円筒壁と内側円筒壁の間には、前記冷却水入口及び冷却水出口に接続して空間が形成されており、冷却水が一方の側の冷却水入口から流入して他方の側の冷却水出口から流出して、分解反応容器部内を所定温度に冷却する冷却用套部となっている。前記外側円筒壁と内側円筒壁の間に形成された冷却用套部空間には、前記外側円筒壁と内側円筒壁に両側が接続して、上方から下方に延びる8枚の仕切り板が設けられている。この仕切り板は、仕切り板で仕切られた隣接する空間を連絡するために、本例においては、1枚おきの4枚の仕切り板には連絡流路となる切欠き部が上方に形成されており、冷却液の連絡流路が上方に形成されている前記4枚の仕切り板の間に、冷却液の連絡流路となる切欠き部が下方に形成されている仕切り板が、夫々配設されている。本例においては、冷却用套部内は、このように、冷却液の連絡流路の切欠き部が上方に設けられている仕切り板と、冷却液の連絡流路の切欠き部が下方に設けられている仕切り板が交互に設けられており、冷却水は、例えば、上方切欠き部から隣接する下流側の空間に流れ、該空間から下方の切欠き部を通って隣接する下流側の空間に流れて、即ち、冷却用套部内を上下に蛇行して流れて、前記汚染物質分解反応容器内を冷却することができる。本例においては、分解反応容器は、直径が内寸で56mmで、高さが内寸で350mmのアクリルガラス製の円筒容器となっている。本例において、超音波発生器は、本田電子株式会社製W−118Nが使用された。外筒内の仕切りを内筒外壁面から外筒内壁面に接して横方向に複数段に形成し上下段の仕切り板に少なくとも一箇所に冷却水の流入口を設けて、例えば下方から上方に冷却水を流して分解反応容器内を冷却することができる。
【0018】
本例において、水にメチレンブルーを溶解して、濃度が0.0125M(モル)のメチレンブルー溶液を調製した。このメチレンブルー溶液を水で1000倍に希釈して、濃度が0.0125mM(ミリモル)のメチレンブルー溶液を調製し、この濃度をメチレンブルー溶液の初期濃度とした。このメチレンブルー溶液500ミリリットルを、前記分解反応容器に入れた。メチレンブルー溶液を入れた分解反応容器を超音波照射用容器内の水中に浸漬して、分解反応容器内のフェニトロチオン希釈液の液面が、超音波照射用容器内の水深で204mmとなるようにした。
一方、2乃至3mmの粒径のルチル型の二酸化チタン触媒粒子6.8グラムを、メチレンブルーの濃度が800ppmのメチレンブルー水溶液に浸漬して、メチレンブルーを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を調製した。このメチレンブルーを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を、メチレンブルー溶液が入れられている分解反応溶液に入れ、次いで、市販の過酸化水素水を500マイクロリットル(μl)加えた。本例においては、分解反応容器は、超音波照射用容器の超音波振動子の上に位置させるように配置された。
【0019】
メチレンブルー分解反応容器を、超音波照射用容器内の水に浸して、超音波を6時間に亘って照射した。照射した超音波の周波数は、28kHz、45kHz及び100kHzであり、夫々の放射エネルギーは、300Wであった。夫々の超音波の照射実験において、20分間隔で超音波照射されたメチレンブルー水溶液を分解反応容器から、20μl採取し、ガスクロマトグラフィ分析装置(GC−17株式会社島津製作所製)を使用して、超音波が照射されたメチレンブルー水溶液中のメチレンブルー濃度を測定した。この測定は、3回行い、その平均値を求めた。本例において使用したルチル型の二酸化チタン触媒粒子は、日進ケムコ株式会社製のチタニアビーズであり、その組成は、TiO:77.7重量%、Al:17.4重量%、SiO:4.6重量%、Fe:0.09重量%、Nb:0.07重量%、NaO:0.04重量%、KO:0.02重量%及びCaO:0.02重量%であった。
周波数が28kHzの超音波をメチレンブルー溶液に照射した照射実験の結果を表1に示し、周波数が45kHzの超音波をメチレンブルー溶液に照射した照射実験の結果を表2に示し、周波数が100kHzの超音波をメチレンブルー溶液に照射した照射実験の結果を表3に示す。
【0020】
表1(照射した超音波の周波数:28kHz)
【表1】

【0021】
表2(照射した超音波の周波数:45kHz)
【表2】

【0022】
表3(照射した超音波の周波数:100kHz)
【表3】

【0023】
表1及び表3においては、照射時間が経過するに従い、メチレンブルー溶液中のメチレンブルー濃度の変動が殆ど見られないので、波長が28kHz及び100kHzの超音波の照射ではメチレンブルーが酸化分解されないことを示している。しかし、表2においては、照射時間が経過するに従い、メチレンブルー溶液中のメチレンブルーの濃度の減少が顕著に現れているので、波長が45kHzの光の照射によってメチレンブルーが分解されることを示している。
【0024】
例2
本例において、水にフェニトロチオン粉(和光純薬株式会社製)をアセトンに溶解して、濃度が500ppmのフェニトロチオン希釈液を2mlを調製した。このフェニトロチオン希釈液2mlを、前記分解反応容器に入れた。前記分解反応容器を超音波照射用容器内の水に、分解反応容器内のフェニトロチオン希釈液の液面が、超音波照射用容器内の水深で204mmとなるように浸漬した。
一方、2乃至3mmの粒径のルチル型の二酸化チタン触媒粒子1グラムを、フェニトロチオン濃度が800ppmの希釈液に浸漬して、フェニトロチオンを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を調製した。このフェニトロチオンを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を、フェニトロチオン希釈液が入れられている分解反応溶液に入れ、次いで、市販の過酸化水素水10マイクロリットル(μl)を加えた。本例においても、分解反応容器は、超音波照射用容器の超音波振動子の上に位置するように配置された。
【0025】
フェニトロチオン分解反応容器を、超音波照射用容器内の水に浸して、超音波を24時間に亘って照射した。照射した超音波の周波数は、45kHzであり、夫々の放射エネルギーは、300Wであった。夫々の超音波の照射実験において、20分間隔で超音波照射されたフェニトロチオン希釈液を分解反応容器から、20μl宛採取し、ガスクロマトグラフィ分析装置(GC−17株式会社島津製作所製)を使用して、超音波が照射されたフェニトロチオン希釈液中のフェニトロチオン濃度を測定した。この測定は、3回行い、その平均値を求めた。本例において使用したルチル型の二酸化チタン触媒粒子は、例1で使用したルチル型の二酸化チタン触媒粒子の、日進ケムコ株式会社製のチタニアビーズであった。
【0026】
本例において、フェニトロチオン希釈液のフェニトロチオンの初期濃度は、500ppmであった。このフェニトロチオン希釈液に周波数が45kHzの超音波を1時間照射して測定した結果は、フェニトロチオン希釈液のフェニトロチオンの濃度は303.5ppmに減少し、フェニトロチオンの分解除去率は39.3%であった。さらに、周波数が45kHzの超音波をフェニトロチオン希釈液に3時間照射した測定した結果は、フェニトロチオン希釈液のフェニトロチオンの濃度は292.1ppmに減少し、フェニトロチオンフェニトロチオンの分解除去率は41.6%であった。さらに、周波数が45kHzの超音波をフェニトロチオン希釈液に24時間照射した測定した結果は、フェニトロチオン希釈液のフェニトロチオンは著しく減少しており、フェニトロチオンのピークを確認できなかった。したがって、フェニトロチオンの残留濃度はゼロであり、分解除去率は略100%である。
【0027】
例3
本例は、トリフミン水和剤(トリフルミゾール水和剤)の分解の例であり、前記例1に倣って、即ち、前記例1において、メチレンブルー溶液に代えて、トリフミン水和剤希釈液を使用して超音波照射による分解実験を行った事例である。本例において、トリフミン水和剤希釈溶液は、トリフミン(EBI)の濃度を変えて行われた。
本例において、水にトリフミン水和剤を300倍の水に希釈して、370.5ppm、362.5ppm及び414.6ppmの初期濃度のトリフミン水和剤希釈液を調製した。このトリフミン水和剤希釈液500ミリリットルを、夫々、前記分解反応容器に入れた。前記分解反応容器を超音波照射用容器内の水に、分解反応容器内のトリフミン水和剤希釈液の液面が、超音波照射用容器内の水深で204mmとなるように浸漬した。
一方、2乃至3mmの粒径のルチル型の二酸化チタン触媒粒子6.8グラムを、トリフミンの濃度が1000ppmの希釈液に浸漬して、トリフミンを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を調製した。このトリフミンを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を、トリフミン水和剤希釈液が入れられている夫々の分解反応溶液に入れ、次いで、夫々の分解反応溶液に市販の過酸化水素水500マイクロリットル(μl)を加えた。本例においては、夫々の分解反応容器は超音波照射用容器の超音波振動子の上に位置するように配置された。
【0028】
トリフミン分解反応容器を、超音波照射用容器内の水に浸して、超音波を6時間に亘って照射した。照射した超音波の周波数は、28kHz、35kHz及び45kHzであり、夫々の放射エネルギーは、300Wであった。本例の照射実験においては、40℃付近までの温度上昇がみられたが、貯留槽に溜めて放熱させることにより、簡単に20〜25℃にできるので、問題にはならない。夫々の超音波の照射実験において、20分間隔で超音波照射されたトリフミン水和剤希釈液を分解反応容器から、20μl宛採取し、ガスクロマトグラフィ分析装置(GC−17株式会社島津製作所製)を使用して、トリフミン濃度を測定した。この測定は、所定の経過時間ごとに、夫々3回行い、その平均値を求めた。本例において使用したルチル型の二酸化チタン触媒粒子は、例1及び例2の場合と同様であり、日進ケムコ株式会社製のチタニアビーズであった。
周波数が28kHzの超音波をトリフミン水和剤の希釈液に照射した照射実験の結果を表4に示し、周波数が35kHzの超音波をトリフミン水和剤の希釈液に照射した照射実験の結果を表5に示し、周波数が45kHzの超音波をトリフミン水和剤の希釈液に照射した照射実験の結果を表6に示す。
【0029】
表4(照射した超音波の周波数:28kHz)
【表4】

表5(照射した超音波の周波数:35kHz)
【表5】

表6(照射した超音波の周波数:45kHz)
【表6】

表4乃至表6に示す照射実験の結果からみて、波長が28kHz、35kHz及び45kHzの何れの超音波の照射実験においても、照射時間の経過に伴って、トリフミン水和剤希釈液中のトリフミン濃度の減少がみられ、トリフミン水和剤希釈液中のトリフミンが、28kHz、35及び100kHzの波長の超音波の照射により酸化分解されることを示している。28kHz、35kHz及び45kHzの波長の超音波照射によるトリフミン濃度の減少を比較すると、35kHzの波長の超音波の照射においても最もよくトリフミン濃度の減少がみられるところから、35kHzの波長の超音波の照射により最もよくトリフミンが分解されることを示している。
【0030】
例4
本例において、水にトリフルミゾール水和剤を6500倍の水に希釈して、トリフルミゾール初期濃度が991.7ppmの、トリフルミゾール水和剤希釈液を調製した。このトリフルミゾール水和剤希釈液500ミリリットルを、分解反応容器に入れた。前記分解反応容器を、超音波照射用容器内の水に浸漬して、反応容器内のトリフルミゾール水和剤希釈液の液面が、超音波照射用容器内の液深で204mmになるようにした。
一方、2乃至3mmの粒径のルチル型の二酸化チタン触媒粒子6.8グラムを、トリフルミゾール濃度が1000ppmのトリフルミゾール水和剤希釈液に浸漬して、トリフルミゾールを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を調製した。このトリフルミゾールを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を、トリフルミゾール水和剤希釈液が入れられている前記分解反応溶液に入れ、次いで、市販の過酸化水素水の量を夫々変えて混合した。混合された過酸化水素水の量は、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾール1モル当たり、過酸化水素の量が8.6モル、20モル、50モル、及び100モルとなるように加えた。本例においても、例1と同様に、分解反応容器を、超音波照射用容器内の水に浸して配置して、超音波を6時間以上に亙って照射した。照射した超音波の周波数は、45kHzであり、夫々、放射エネルギーは、300Wであった。
【0031】
超音波の照射実験において、超音波照射されたトリフルミゾール水和剤希釈液を分解反応容器から、超音波照射後所定の経過時間毎に、20μl宛採取し、ガスクロマトグラフィ分析装置(GC−17株式会社島津製作所製)を使用して、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾール濃度を測定した。この測定は、所定の経過時間毎に3回行い、その平均値を求めた。その結果を表7乃至表10に示す。表7乃至10に示す例は、何れもトリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの初期濃度を991.7ppmとし、これに混合する過酸化水素の量を変えて行われている。表7の例は、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾール1モル当たりに添加混合された過酸化水素の量が2.7モルの例であり、表8の例は、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾール1モル当たりに添加混合された過酸化水素の量が8.6モルの例であり、表9の例は、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾール1モル当たりに添加混合された過酸化水素の量が20モルの例であり、表10の例は、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾール1モル当たりに添加混合された過酸化水素の量が50モルの例である。表7乃至表10の例は、添加混合された過酸化水素水の量が増加するに従い、トリフルミゾール水和剤希釈液の分解に要する時間が短縮されることを示している。
【0032】
表7(過酸化水素2.7モル添加)
【表7】

表8(過酸化水素8.6モル添加)
【表8】

表9(過酸化水素20モル添加)
【表9】

表10(過酸化水素50モル添加)
【表10】

【0033】
表7乃至表10に示す例において、何れの例もトリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾール(EBI)初期濃度は共に991.7ppmであった。表7の例は、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの1モル当たり8.6モルの過酸化水素が混合された事例であり、54時間に亘る超音波照射後のトリフルミゾール水和剤溶液のトリフルミゾールの含有量は、156ppmに減少し、除去率は84.3重量%であった。表8の例では、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの1モル当たり20モルの過酸化水素が混合され、54時間に亘る超音波照射後のトリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの含有量は、6.8ppmに減少し、除去率は99.3重量%であった。例9の例では、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの1モル当たり50モルの過酸化水素が混合され、54時間に亘る超音波照射後のトリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの含有量は、5.9ppmに減少し、除去率は99.4重量%であった。例10の例では、トリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの1モル当たり100モルの過酸化水素が混合され、54時間に亘る超音波照射後のトリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの含有量は、0ppmとなり、除去率は100.0重量%であった。
以上の結果は、混合する過酸化水素の量を増すと、酸化分解処理時間を短縮できることを示しているが、過酸化水素の混合量をトリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの1モル当たり20モル以上にすると、除去率が99重量%以上であることを示し、過酸化水素の混合量をトリフルミゾール水和剤希釈液のトリフルミゾールの1モル当たり100モル以上にすると、除去率が100重量%に達することを示しており、過酸化水素の混合量には効率的な使用限度量があることも示している。したがって、農薬のトリフルミゾール等を分解する場合に、過酸化水素の使用量については事前に実験により求めておくのが好ましい。
【0034】
例5
本例において、水にバイジット乳剤を5000倍の水で希釈して、MPP濃度が100ppmのバイジット乳剤希釈液を調製した。このバイジット乳剤希釈液500ミリリットルを、前記分解反応容器に入れた。このバイジット乳剤希釈液を入れた分解反応容器を、超音波照射用容器内の水中に浸漬して、該分解反応容器内のバイジット乳剤希釈液の液面が、超音波照射用容器内の液深で204mmになるようにした。
一方、2乃至3mmの粒径のルチル型の二酸化チタン触媒粒子6.8グラム(希釈液の1.36%)を、バイジット濃度が1000ppmの溶液の500ミリリットルに浸漬して、バイジットを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を調製した。このバイジットを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を、バイジット乳剤希釈液が入れられている分解反応溶液に入れ、次いで、市販の過酸化水素水の500μlを前記バイジット乳剤希釈液に加えて、過酸化水素濃度を0.1%に調整した。本例においては、バイジット分解反応容器は、超音波照射用容器の超音波振動子の上に位置するように配置された。
【0035】
例1と同様に、バイジット分解反応容器を、超音波照射用容器内の水に浸して、超音波を100時間に亙って照射した。照射した超音波の周波数は、45kHzであり、夫々、放射エネルギーは、300Wであった。本例の超音波の照射実験において、超音波照射されたバイジット乳剤希釈液を分解反応容器から、超音波照射後の所定経過時間毎に、20μl宛採取し、ガスクロマトグラフィ分析装置(GC−17株式会社島津製作所製)を使用して、バイジット濃度を測定した。この測定において、所定経過時間毎に、夫々3回行い、その平均値を求めた。また、本例において、バイジット乳剤希釈液のバイジットの初期濃度を変えて、バイジットの初期濃度による分解時間の相違を求めた。その結果を表11乃至表13に示す。
表11(バイジット乳剤溶液中のMPP初期濃度が31.1ppm)
【表11】

表12(バイジット乳剤溶液中のMPP初期濃度が58.1ppm)
【表12】

表13(バイジット乳剤溶液中のMPP初期濃度が116.4ppm)
【表13】

【0036】
表11に示す例は、バイジット乳剤希釈液のMPP初期濃度が31.1ppmの事例であり、27時間の酸化分解で分解除去率は100.0%であった。表12に示す例は、バイジット乳剤希釈液のMPP初期濃度が58.1ppmの事例であり、42時間の酸化分解で分解除去率は100.0%であった。表13に示す例は、バイジット乳剤希釈液のMPP初期濃度が116.4ppmの事例であり、100時間の酸化分解で分解除去率は76.5%であった。表11乃至13によると、バイジット乳剤希釈液のMPP濃度が高くなるに従って、酸化分解処理時間が長くなることが示されている。したがって、MPP濃度の高いバイジット乳剤希釈液を酸化分解処理するには、多くの日数を要することが分かる。
【0037】
例6
本例において、水にバイジット乳剤を400倍の水で希釈して、MPP濃度が1153.6ppm及び1430.2ppmのバイジット乳剤希釈液を調製した。このバイジット乳剤希釈液500ミリリットルを、分解反応容器に入れた。このバイジット乳剤希釈液を入れた分解反応容器を、超音波照射用容器内の水中に浸漬して、該分解反応容器内のバイジット乳剤希釈液の液面が、超音波照射用容器内の水深で204mmになるようにした。
一方、2乃至3mmの粒径のルチル型の二酸化チタン触媒粒子6.8グラムを、バイジット濃度が1000ppmの溶液に浸漬して、バイジットを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を調製した。このバイジットを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を、バイジット乳剤希釈液が入れられている前記分解反応溶液に入れ、次いで、市販の過酸化水素水を量を変えて夫々混合した。混合する過酸化水素水の過酸化水素濃度は、夫々、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり30モル、50モル及び70モルとなるように加えた。本例においても、例1と同様に、バイジット分解反応容器を、超音波照射用容器内に水に浸して配置して、超音波を6時間以上に亙って照射した。照射した超音波の周波数は、35kHzであり、夫々、放射エネルギーは、300Wであった。その結果を表14乃至16に示す。
表14(過酸化水素30モル添加、波長35kHzの超音波を照射)
【表14】

表15(過酸化水素50モル添加、波長35kHzの超音波を照射)
【表15】

表16(過酸化水素70モル添加、波長35kHzの超音波を照射)
【表16】

【0038】
超音波の照射実験において、超音波照射されたバイジット乳剤希釈液を分解反応容器から、超音波照射後所定の経過時間毎に、20μl宛採取し、ガスクロマトグラフィ分析装置(GC−17株式会社島津製作所製)を使用して、バイジット濃度を測定した。この測定は、所定の経過時間毎に3回行い、その平均値を求めた。その結果を表7乃至表10に示す。表14及び15に示す例は、何れもバイジット乳剤希釈液のバイジットの初期濃度を1153.6ppmとし、表16に示す例は、バイジット乳剤希釈液のバイジットの初期濃度を1430.2ppmとした。分解反応は、これらバイジット乳剤希釈液に混合する過酸化水素の量を変えて行われた。表14の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり、混合された過酸化水素の量が30モルの例であり、表15の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり、混合された過酸化水素の量が50モルの例であり、表16の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり、混合された過酸化水素の量が70モルの例である。表14乃至表16の例において、バイジット乳剤希釈液に混合された過酸化水素水の量が増加するに従い、バイジット乳剤希釈液のバイジットの分解に要する時間が短縮されることを示している。
【0039】
例7
本例において、水にバイジット乳剤を6500倍の水で希釈して、MMP濃度が64.1ppmのバイジット乳剤希釈液を調製した。このバイジット乳剤希釈液500ミリリットルを、バイジット分解反応容器に入れた。このバイジット乳剤希釈液を入れた分解反応容器を、超音波照射用容器内の水中に浸漬して、該分解反応容器内のバイジット乳剤希釈液の液面が、超音波照射用容器内の液深(水深)で204mmになるようにした。
一方、2乃至3mmの粒径のルチル型の二酸化チタン触媒粒子6.8グラムを、バイジット濃度が1000ppmの溶液に浸漬して、バイジットを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を調製した。このバイジットを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を、バイジット乳剤希釈液が入れられている前記分解反応容器に入れ、次いで、市販の過酸化水素水を夫々量を変えて分解反応容器に混合した。混合する過酸化水素水の量は、夫々、混合された過酸化水素の量が、バイジット乳剤希釈液のバイジットの1モルあたり8.6モル、20モル、50モル、及び100モルとなるように加えた。本例においても、例1と同様に、バイジット分解反応容器を、超音波照射用容器内に水に浸して配置して、超音波を6時間以上に亙って照射した。照射した超音波の周波数は、45kHzであり、夫々、放射エネルギーは、300Wであった。
【0040】
超音波の照射実験において、超音波照射されたバイジット乳剤溶液を分解反応容器から、超音波照射後所定の経過時間毎に、20μl採取し、ガスクロマトグラフィ分析装置(GC−17株式会社島津製作所製)を使用して、バイジット濃度を測定した。この測定は、所定の経過時間毎に3回行い、その平均値を求めた。その結果を表17乃至表20に示す。表17乃至20に示す例は、何れもバイジット乳剤希釈液のバイジットの初期濃度を64.1ppmとし、これに混合する過酸化水素の量を変えて行われている。表17の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり混合された過酸化水素の量が8.6モルの例であり、表18の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり混合された過酸化水素の量が20モルの例であり、表19の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり混合された過酸化水素の量が50モルの例であり、表20の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり混合された過酸化水素の量が100モルの例である。
【0041】
表17(過酸化水素8.6モル添加、波長45kHzの超音波を照射)
【表17】

表18(過酸化水素20モル添加、波長45kHzの超音波を照射)
【表18】

表19(過酸化水素水50モル添加、波長45kHzの超音波を照射)
【表19】

表20(過酸化水素100モル添加、波長45kHzの超音波を照射)
【表20】

【0042】
表17乃至表20に示す例は、何れもバイジット乳剤希釈液のバイジットの初期濃度を64.1ppmとした。表17の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり、8.6モルの過酸化水素を混合した事例であり、100時間の照射後、バイジット乳剤希釈液中のバイジットの量は、9.5ppmに減少した。バイジットの除去率は85.2重量%であった。表18の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり、20モルの過酸化水素を混合した事例であり、78時間の照射後、バイジット乳剤希釈液中のバイジットの量は、0ppmであった。バイジットの除去率は100.0重量%であった。表19の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり50モルの過酸化水素が混合された事例であり、54時間経過後、バイジット乳剤希釈液中のバイジットの量は、0ppmであった。バイジットの除去率は100.0重量%であった。表20の例は、バイジット乳剤希釈液のバイジット1モル当たり100モルの過酸化水素が混合された事例であり、54時間経過後、バイジット乳剤希釈液中のバイジットの量は、0ppmとなり、除去率は100.0重量%であった。以上の結果は、過酸化水素の使用量を増すと、酸化分解処理時間を短縮できることを示しているが、過酸化水素の混合量を50モル以上に増加させても、分解時間及び除去率が大きく変わらないことを示しており、過酸化水素の混合量には効率的に使用限度量があることも示している。したがって、バイジットを分解する場合に、過酸化水素の使用量については事前に実験により求めておくのが好ましい。
【0043】
例8
本例において、主成分のテトラクロルイソフタロニトリル(TPN)40%含有のダコニール1000を1333倍の水で希釈して、TPN濃度が363.4ppm及び238.1ppmのダコニール1000希釈液を調製した。このダコニール1000希釈液500ミリリットルを、前記分解反応容器に入れた。反応容器を超音波照射用容器内の水に浸して、前記分解反応容器内のダコニール1000希釈液の液面が超音波照射用容器内の水深で204mmに相当するようにした。
一方、2乃至3mmの粒径のルチル型の二酸化チタン触媒粒子6.8グラム(希釈液の1.36%)を、TPN濃度が1000ppmのダコニール1000希釈液の500ミリリットルに浸漬して、TPNを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を調製した。このTPNを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を、ダコニール1000希釈液が入れられている分解反応溶液に入れ、次いで、市販の過酸化水素水を前記ダコニール1000希釈液に加えた。この中、2個の反応容器には、夫々、ダコニール1000希釈液のTPN1モル当たり、過酸化水素80モルを加え、他の1個の反応容器には、ダコニール1000希釈液のTPN1モル当たり、過酸化水素100モルを加えて、夫々、分解試験に供した。本例においては、分解反応容器は、夫々、超音波照射用容器の超音波振動子の上に位置するように配置された。
【0044】
本例においても、分解反応容器を、超音波照射用容器内の水に浸して、超音波を100時間に亙って照射した。本例においては、照射した超音波の周波数は、35kHzであり、夫々、放射エネルギーは、300Wであった。本例において、ダコニール1000希釈液は、含有するダコニール1000の濃度、即ちTPN濃度及び過酸化水素の混合量を変えて行われている。
超音波の照射実験において、超音波照射されたダコニール1000希釈液を、分解反応容器から、超音波照射後所定の経過時間毎に、20μlづつ採取し、ガスクロマトグラフィ分析装置(GC−17株式会社島津製作所製)を使用して、超音波照射されたダコニール1000希釈液のTPN濃度を測定した。この測定は、所定の経過時間ごとに、夫々3回行い、その平均値を求めた。その結果を表21乃至表23に示す。
【0045】
表21(ダコニール1000希釈液中のTPN初期濃度:363.4ppm、添加過酸化水素量:80モル)
【表21】

表22(ダコニール1000希釈液中のTPN初期濃度:238.1ppm、添加過酸化水素量:80モル)
【表22】

表23(ダコニール1000希釈液中のTPN初期濃度:363.4ppm、添加過酸化水素量:100モル)
【表23】

【0046】
表21及び表23に示す例においては、ダコニール1000希釈液中のTPN初期濃度は、共に363.4ppmであり、表22に示す例においては、ダコニール1000希釈液中のTPN初期濃度は238.1ppmであった。表21の例は、ダコニール1モル当たり80モルの過酸化水素を混合させた事例であり、6時間照射後、ダコニール1000希釈液中のTPN濃度は、112.1ppmに減少し、除去率は69.2重量%であった。表22の例は、表21の例と同様に80モルの過酸化水素を混合させた事例であるが、表21の例に比してダコニール1000希釈液中のTPN初期濃度を238.1ppmと低くしてあり、25時間照射後、ダコニール1000希釈液中のTPN濃度は、117.9ppmに減少し、除去率は50.5重量%であり、ダコニールの濃度が低い分、分解量が少なくなることを示している。表23の例は、100モルの過酸化水素を混合させた事例であり、10時間照射後、ダコニール1000希釈液中のTPN濃度は、122.4ppmに減少し、除去率は66.3重量%であり、38時間照射後、ダコニール1000希釈液中のTPN濃度は、102.0ppmに減少し、除去率は71.9重量%であった。表21及び表23に示す例は、ダコニール1,000の場合、過酸化水素の混合量を80モル以上としても大きな変化が得られないことを示している。
【0047】
例9
本例において、ペフラゾエート12%、フルジオキソニル2%及び塩基性塩化銅を含有するモミガードC(北興化学工業株式会社製)を50倍の水で希釈して、フルジオキソニル濃度が388.1ppmのモミガードC希釈液を調製した。このモミガードC希釈液500ミリリットルを、前記分解反応容器に入れた。モミガードC希釈液を入れた反応容器を超音波照射用容器内の水に浸して、前記分解反応容器内のモミガードC希釈液の液面が超音波照射用容器内の液深で204mmに相当するようにした。
一方、2乃至3mmの粒径のルチル型の二酸化チタン触媒粒子6.8グラム(希釈液の1.36%)を、フルジオキソニル濃度が1000ppmのモミガードC希釈液の500ミリリットルに浸漬して、フルジオキソニルを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を調製した。このフルジオキソニルを予備吸着させたルチル型の二酸化チタン粒子を、モミガードC希釈液が入れられている分解反応容器に入れ、次いで、一方の分解反応容器に市販の過酸化水素水の9.14ml(50モル)を加え、もう一方の分解反応容器には過酸化水素水の18.2ml(100モル)加えた。本例においては、モミガードCの分解反応容器は超音波照射用容器の超音波振動子の上に位置するように配置された。
【0048】
例1と同様に、モミガードCの分解反応容器を、超音波照射用容器内の水に浸して、超音波を100時間に亙って照射した。照射した超音波の周波数は、35kHzであり、夫々、放射エネルギーは、300Wであった。
超音波の照射実験において、超音波照射されたモミガードC希釈液を分解反応容器から、超音波照射後所定の経過時間毎に、20μl宛採取し、ガスクロマトグラフィ分析装置(GC−17株式会社島津製作所製)を使用して、超音波照射されたモミガードC希釈液のモミガードCのフルジオキソニル濃度を測定した。この測定は、所定の照射時間ごとに、夫々3回行い、その平均値を求めた。その結果を表24及び表25に示す。
【0049】
表24(過酸化水素添加量:50モル)
【表24】

表25(過酸化水素添加量:100モル)
【表25】

【0050】
表24の例は、モミガードC希釈液のフルジオキソニル1モル当たり50モルの過酸化水素を混合させた事例であり、39時間照射させた後のモミガードC希釈液中のフルジオキソニル濃度は、119.0ppmに減少し、除去率は69.3重量%であった。表25の例は、モミガードC希釈液のフルジオキソニル1モル当たり100モルの過酸化水素を混合させた事例であり、39時間照射させた後のモミガードC希釈液中のフルジオキソニル濃度は、109.1ppmに減少し、除去率は71.9重量%であった。表24の例に比して表25の例は、混合させた過酸化水素の量が倍になっているが、過酸化水素の使用量の割には、フルジオキソニルの分解除去率が大きく変化しておらず、過酸化水素の混合量は50モルで充分であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によると、例えばフェニトロチオン等の農薬及び/又はフェニトロチオン等の汚染物質を含有する水中に、ルチル型の二酸化チタン粒子及び過酸化水素を存在させて、35乃至45kHzの周波数の超音波を照射することにより、水中の汚染物質を分解除去できるので、例えば、稲籾等の被子植物の種子の消毒発芽工程から大量に排出されるフェニトロチオン等の農薬及び/又はフェニトロチオン等の汚染物質を含有する排水に含まれる、毒性を有するフェニトロチオン等の汚染物質を分解して無害化でき、河川等に放流することを可能にする。また本発明の方法は、田圃等に残留するフェニトロチオン等の農薬及び/又はフェニトロチオン等の汚染物質の分解除去にも使用でき、河川や水資源の汚染物質の浄化に使用でき、産業上有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈されて低濃度の汚染物質を含む廃水に、過酸化水素を混合し、この過酸化水素を混合した廃水を、二酸化チタン光触媒の存在下に、28乃至45kHzの周波数の超音波を照射して前記廃水中に含有される汚染物質を分解除去することを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
希釈されて低濃度の汚染物質を含む廃水に凝集剤を混合して凝集物を形成し、この凝集物が形成された廃水を濾過し、この濾過廃水に過酸化水素を混合し、この過酸化水素を混合した濾過廃水を、二酸化チタン光触媒の存在下に、28乃至45kHzの周波数の超音波を照射して廃水中に含有される汚染物質を分解除去することを特徴とする廃水処理方法。
【請求項3】
廃水に含有される低濃度の汚染物質が、農薬の一以上の殺虫剤若しくは一以上の殺菌剤又は前記一以上の殺虫剤及び一以上の殺菌剤を混合した農薬、又はビスフェノール若しくはペンタクロロフェノール又はその他の環境ホルモンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項4】
廃水が被子植物の種子の消毒発芽工程から排出される農薬の一以上の殺虫剤及び/又は一以上の殺菌剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項5】
農薬が、フェニトロチオン、トリフルミゾール、バイジット、ペフラゾエート、フラジオキソニール若しくはTPN又はこれら二以上の農薬であることを特徴とする請求項3又は4に記載の廃水処理方法。
【請求項6】
廃水中の汚染物質の濃度が、0.05ミリモル/リットル以下の濃度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項7】
過酸化水素の混合量が廃水に含有される汚染物質1モルに対し、2モル以上の量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項8】
二酸化チタン光触媒が、ルチル型の二酸化チタン光触媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項9】
二酸化チタン光触媒が、廃水中の汚染物質を予め吸着した二酸化チタン光触媒粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃水処理方法。

【公開番号】特開2006−35140(P2006−35140A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220700(P2004−220700)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(592141053)明和工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】