説明

廃熱利用装置

【課題】ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上を図りつつ、内燃機関の出力の向上を実現し、かつ耐久性と搭載性とが高い廃熱利用装置を提供する。
【解決手段】実施例の廃熱利用装置は、駆動系1に用いられるランキンサイクル3を備えている。駆動系1は、エンジン5と、外気を吸入してエンジン5に対して加圧空気を供給するターボチャージャ7と、配管9とを有する駆動系1とを有している。配管9は、エンジン5で生じた排気の一部をエンジン5に還流排気として還流させる。この配管9を流通する還流排気は、加圧空気と混合されて混合空気とされる。ランキンサイクル3は、電動ポンプP1と、ボイラ19と、膨張機21と、凝縮器23とを有しており、これらの間で作動流体が循環する。ボイラ19では、混合空気と作動流体との熱交換が行われ、作動流体が加熱されるとともに、混合空気が冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図2に従来の廃熱利用装置が開示されている。この廃熱利用装置は、駆動系に用いられ、第1、2ボイラを有して作動流体を循環させるランキンサイクルを備えている。駆動系は、エンジンと、エンジンに加圧空気を供給するターボチャージャとを有している。ランキンサイクルにおける第1ボイラは、加圧空気と作動流体との間で熱交換を行うことで作動流体を加熱させる。第2ボイラは、エンジンの冷却水と作動流体との間で熱交換を行うことで作動流体を加熱させる。第2ボイラは、第1ボイラよりも作動流体の循環方向の下流側に位置している。また、第2ボイラの下流には膨張機が設けられている。
【0003】
このような廃熱利用装置では、第1、2ボイラによって作動流体を加熱することが可能であることから、膨張機に流入する作動流体の温度を高くすることが可能となる。また、この廃熱利用装置では、第1、2ボイラにおける熱交換により、加圧空気や冷却水を冷却することが可能となるため、エンジンの出力を向上させることも可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−8224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ランキンサイクルにおいて回収可能なエネルギーの量を大きくするためには、膨張機内で膨張した後でも作動流体が気化された状態が維持されている必要がある。このことは、膨張機を保護して廃熱利用装置の耐久性を向上させる観点からも必要とされる。膨張機内における作動流体の膨張が不完全な場合、回収可能なエネルギーの量が小さくなるばかりか、膨張機から液相の作動流体が流出する液バック現象が生じ、膨張機が損傷するおそれも生じるためである。
【0006】
そこで、膨張機内で作動流体を好適に膨張させるために、膨張機に流入させる作動流体について、飽和蒸気となる温度を超えた過熱蒸気温度(スーパーヒート)程度まで十分に加熱することが好ましい。
【0007】
この点、上記従来の廃熱利用装置では、第2ボイラが第1ボイラよりも作動流体の循環方向の下流側に位置しているため、膨張機に流入する作動流体の温度が第2ボイラ内で放熱された熱量、すなわち、エンジンのような内燃機関の冷却水の温度に依存することとなる。一般的に、冷却水の温度は加圧空気の温度よりも低温となるため、上記の廃熱利用装置では、第1ボイラによって加熱された作動流体が逆に第2ボイラ内で冷却水に対して放熱を行うことで、膨張機に流入する作動流体の温度が低下してしまう事態が生じるからである。このため、上記の廃熱利用装置では、スーパーヒートの状態まで作動流体を加熱し難く、ランキンサイクルにおいて回収可能なエネルギーの量が不十分となるとともに、その耐久性の低下も懸念される。
【0008】
また、上記の廃熱利用装置は、第1、2ボイラの二つが存在することから、大型化し、車両等への搭載性が低下するという問題も生じることとなる。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上を図りつつ、内燃機関の出力の向上を実現し、かつ耐久性と搭載性とが高い廃熱利用装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の廃熱利用装置は、内燃機関を有する駆動系に用いられ、ボイラを有して作動流体を循環させるランキンサイクルを備えた廃熱利用装置において、
前記駆動系は、外気を吸入して前記内燃機関に対して加圧空気を供給する過給器と、該内燃機関で生じた排気の一部を該内燃機関に還流排気として還流させる排気還流路とを有し、
該外気又は該加圧空気と該還流排気とが混合されて混合空気とされ、
前記ボイラは、該混合空気と前記作動流体との間で熱交換を行うことを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の廃熱利用装置はランキンサイクルを備えている。このランキンサイクルは、駆動系に用いられ、ボイラを有して作動流体を循環させる。駆動系は、内燃機関と、外気を吸入して内燃機関に対して加圧空気を供給する過給器と、内燃機関で生じた排気の一部を内燃機関に還流排気として還流させる排気還流路とを有している。そして、この還流排気は外気又は加圧空気と混合されて混合空気とされる。なお、外気と還流排気とが混合されて混合空気となった場合、この混合空気は過給器によって圧縮されることとなる。
【0012】
発明者らの知見によれば、内燃機関で生じた排気、すなわち還流排気の温度は約500°C程度となっている。また、加圧空気の温度は約150°C程度となっている。このため、還流排気が外気と混合された混合空気であっても、還流排気が加圧空気と混合された混合空気であっても、これらの混合空気は高温となる。
【0013】
そして、この廃熱利用装置のランキンサイクルでは、ボイラにおいて、上記のような高温の混合空気と作動流体とが熱交換される。これにより、ボイラによって作動流体を十分に加熱でき、膨張機に流入する作動流体をスーパーヒートの状態又はスーパーヒートに近い状態とすることが可能となる。このため、この廃熱利用装置では、膨張機における作動流体の膨張及び減圧時によって生じる圧力エネルギーを大きくすることが可能となる。また、このように作動流体が十分に加熱された状態であることから、膨張機内で作動流体が液化することが防止される。これらのため、この廃熱利用装置では、ランキンサイクルにおいて回収可能なエネルギーの量が多くなるとともに、液バック現象が抑制されて膨張機も損傷し難くなる。
【0014】
一方、ボイラにおける熱交換により混合空気は冷却されるため、混合空気の密度が大きくなる。このため、この廃熱利用装置では、内燃機関に対してより多くの混合空気(加圧空気)を供給可能となる。また、このように混合空気が冷却されることで、還流排気も冷却されることとなる。このため、この廃熱利用装置では、内燃機関の出力を向上できる他、最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることも可能となる。
【0015】
さらに、この廃熱利用装置では、ボイラにおいて混合空気と作動流体とが熱交換を行うことで、一つのボイラにおいて、外気又は加圧空気と作動流体との熱交換と、還流排気と作動流体との熱交換とを同時に行うことが可能となっている。このため、この廃熱利用装置では、省スペース化を実現することが可能となる。
【0016】
したがって、本発明の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上を図りつつ、内燃機関の出力の向上が実現可能であるとともに、耐久性及び搭載性を高くすることができる。
【0017】
なお、本発明の廃熱利用装置において、外気又は加圧空気と還流排気とはいずれも気相であり、加圧空気(外気)と還流排気とを混合させた後に、一つのボイラにおいて、加圧空気と作動流体との熱交換と、還流排気と作動流体との熱交換とを同時に行うことが可能となっている。この点、上記従来の廃熱利用装置では、作動流体と熱交換を行う対象が気相である加圧空気と、液相である冷却水とである。このため、上記従来の廃熱利用装置では、加圧空気と冷却水とを混合させた後、一つのボイラで作動流体と加圧空気及び冷却水との熱交換を同時に行うということが不可能である。
【0018】
本発明の廃熱利用装置において、内燃機関としては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の他、種々の形式のエンジンを採用することができる。また、これらのエンジンはモータを組み合わせたハイブリッドエンジンでも良い。さらに、これらのエンジンは空冷式でも水冷式でも良い。一方、過給器としては、ターボチャージャやスーパーチャージャ等を採用することができる。なお、内燃機関や過給機は複数であっても良い。
【0019】
上記のように、本発明の廃熱利用装置において、外気と還流排気とが混合されて混合空気となった場合、この混合空気は過給器のコンプレッサ部に吸引されて、圧縮されることとなる。排気である還流排気には硫黄成分が含まれる。このため、混合空気中に硫黄成分が含まれることとなり、混合空気を吸引する過給器のコンプレッサ部は、硫黄成分に対して耐性を有する材質とする必要がある。この場合、過給器の製造コストが上昇し、ひいては、廃熱利用装置の製造コストが上昇することとなる。
【0020】
このため、ボイラにおいて作動流体と熱交換される混合空気は、加圧空気と還流排気とが混合されていることが好ましい(請求項2)。この場合、過給器のコンプレッサ部には外気のみが吸引されるため、過給器のコンプレッサ部に用いられる材質に対する制限を緩和することが可能となる。このため、廃熱利用装置の製造コストの上昇を抑制することが可能となる。また、上記のように、加圧空気の温度は150°C程度であり、外気の温度よりもはるかに高くなっている。このため、外気と還流排気とが混合された場合よりも混合空気の温度をより高い状態とすることができる。このため、ランキンサイクルで回収可能なエネルギーの量をより多くすることが可能となる。
【0021】
また、ボイラでは、混合空気と作動流体との熱交換が行われるため、ボイラ自体も混合空気中の硫黄成分の影響を受けることとなる。このため、ボイラはステンレス製であることが好ましい(請求項3)。ステンレスは硫黄成分に対する耐性が高いため、ボイラの耐久性を高くすることができ、ひいては、廃熱利用装置の耐久性を高くすることができる。ここで、上記のように、加圧空気と還流排気とを混合して混合空気とすれば、ボイラのみステンレス製とし、過給器のコンプレッサ部がアルミニウム合金製の公用品の過給器を採用することができる。このため、ボイラをステンレス製とした場合であっても、廃熱利用装置の製造コストの上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上を図りつつ、内燃機関の出力の向上が実現可能であるとともに、耐久性及び搭載性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図2】実施例の廃熱利用装置に係り、作動中の状態を示す模式構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(実施例)
実施例の廃熱利用装置は、車両に搭載され、図1に示すように、車両の駆動系1に用いられている。この廃熱利用装置は、ランキンサイクル3と、制御装置10とを備えている。
【0026】
駆動系1は、内燃機関としてのエンジン5と、過給器としてのターボチャージャ7と、排気還流路としての配管9とを有している。エンジン5は、公知の水冷式ディーゼルエンジンである。エンジン5の内部には冷却水が流通可能なウォータジャケット(図示略)が形成されている。エンジン5には、このウォータジャケットとそれぞれ連通する流出口と流入口と(いずれも図示を省略する。)が形成されている。さらに、エンジン5には、排気を排出する排気口5aと、後述する混合空気を吸入する吸気口5bとが形成されている。
【0027】
ターボチャージャ7にはコンプレッサ部(図示略)がアルミニウム合金製で、かつ、タービン部(図示略)が耐熱合金製の公用品が採用されている。ターボチャージャ7は、エンジン5から生じた排気によって作動され、外気を吸入してエンジン5に対して加圧空気を供給する。
【0028】
エンジン5とターボチャージャ7とは配管11〜13によって接続されている。また、配管12と配管13とには後述するボイラ19が接続されている。配管11は内部を排気が流通可能となっており、エンジン5の排気口5aとターボチャージャ7とに接続されている。配管12は内部を加圧空気と混合空気とが流通可能となっており、ターボチャージャ7と、ボイラ19の第1流入口19aとに接続されている。配管13は内部を混合空気が流通可能となっており、ボイラ19の第1流出口19bと、エンジン5の吸気口5bとに接続されている。
【0029】
さらに、ターボチャージャ7には、配管14、15の各一端側が接続されている。配管14の他端側は、図示しないマフラと接続されている。配管15の他端側は図示しない車両のエアインテークに開口している。配管14は、ターボチャージャ7を介して配管11と連通している。同様に、配管15は、ターボチャージャ7を介して配管12と連通している。
【0030】
排気還流路としての上記の配管9は、エンジン5で生じた排気の一部をエンジン5に還流排気として還流させる。この配管9の一端側は配管11に接続されている。より詳細には、配管9の一端側は、配管11とターボチャージャ7との接続位置よりも排気の流通方向の上流側で配管11と接続されている。これにより、配管9には、配管11を流通する排気の一部が還流排気として流通可能となっている。そして、配管9の他端側は配管12と接続されている。より詳細には、配管9の他端側は、配管12とボイラ19の第1流入口19aとの接続位置よりも加圧空気の流通方向の上流側で配管12と接続している。これにより、配管9を流通する還流排気は配管12において加圧空気と合流し、配管12において互いに混合されることで混合空気となる。また、配管9には可変バルブ17が設けられている。この可変バルブ17は制御装置10と電気的に接続されている。
【0031】
ランキンサイクル3は、電動ポンプP1と、ボイラ19と、膨張機21と、凝縮器23と、配管25〜27とを有している。配管25〜27には、作動流体としてのHFC134aが流通可能となっている。
【0032】
ボイラ19はステンレス製である。このボイラ19には、第1流入口19a及び第1流出口19bと、第2流入口19c及び第2流出口19dとが形成されている。また、ボイラ19内には、両端側でそれぞれ第1流入口19a及び第1流出口19bと連通する第1通路19eと、両端側でそれぞれ第2流入口19c及び第2流出口19dと連通する第2通路19fとが設けられている。このボイラ19では、第1通路19e内の混合空気と、第2通路19f内の作動流体との熱交換により、混合空気の冷却と作動流体の加熱とを行う。
【0033】
膨張機21には、その内部に作動流体を流入させる流入口21aと、作動流体を流出させる流出口21bとが形成されている。膨張機21では、ボイラ19を経て加熱された作動流体を膨張させることにより回転駆動力を発生させる。この膨張機21には図示しない公知の発電機が接続されている。発電機は膨張機21の回転駆動力によって発電を行い、図示しないバッテリに電力を充電する。
【0034】
凝縮器23には、その内部に作動流体を流入させる流入口23aと、作動流体を流出させる流出口23bとが形成されている。凝縮器23は、その内部を流通する作動流体と車外の空気との間で熱交換を行い、膨張機21での膨張によって気化された作動流体を冷却して液化させる。凝縮器23の近傍には電動ファン23cが設けられている。この電動ファン23cは制御装置10に電気的に接続されている。
【0035】
これらのボイラ19、膨張機21及び凝縮器23は、配管25〜27によって接続されている。具体的には、凝縮器23の流出口23bと、ボイラ19の第2流入口19cとは配管25によって接続されている。ボイラ19の第2流出口19dと、膨張機21の流入口21aとは配管26によって接続されている。そして、膨張機21の流出口21bと凝縮器23の流入口23aとは配管27によって接続されている。
【0036】
電動ポンプP1は配管25に設けられている。この電動ポンプP1を作動させることにより、作動流体は、図2に示すように、電動ポンプP1からボイラ19及び膨張機21を経て凝縮器23に至る順で配管25〜27内を循環する。
【0037】
図1に示すように、制御装置10は、可変バルブ17の開度を調整するマップを記憶している。制御装置10はこのマップに基づき配管9に流入する排気(還流排気)の流量を調整する。また、制御装置10は電動ファン23cの作動制御を行うことで、作動流体が外気に放熱する熱量の調整を行う。さらに、制御装置10は、電動ポンプP1の作動制御を行う。
【0038】
このように構成された廃熱利用装置では、車両を駆動させることにより以下のように作動する。
【0039】
図2に示すように、車両が駆動されることにより、駆動系1ではエンジン5が作動する。これにより、排気口5aから排出された排気が配管11内を流通する。この際、制御装置10は可変バルブ17を開制御し、配管11内を流通する排気の一部を配管9内に流入させる(同図の一点鎖線矢印参照)。なお、上記のマップに基づき可変バルブ17の開度を制御する。
【0040】
配管9へ流入せずに配管11を流通する排気は、ターボチャージャ7及び配管14を経てマフラから車外に排出される(同一点鎖線矢印参照)。この際、排気によってターボチャージャ7が作動される。これにより、外気が配管15よりターボチャージャ7に吸引され、圧縮される。この外気は加圧空気として、配管12を流通する(同図の二点鎖線矢印参照)。
【0041】
一方、配管9に流入した排気は還流排気として配管9を流通し、配管9と配管12との接続箇所において、配管12内を流通する加圧空気と合流する。これにより、加圧空気と還流排気とが混合されて混合空気となる。ここで、還流排気は約500°C程度の温度となっており、また、加圧空気は約150°C程度の温度となっていることから、この混合空気は非常に高温となっている。そして、この混合空気は、ボイラ19の第1通路19e及び配管13を経てエンジン5の吸気口5bに至る(同図の破線矢印参照)。つまり、加圧空気は混合空気としてエンジン5に吸入されるとともに、還流排気は混合空気としてエンジン5に還流することとなる。
【0042】
また、制御装置10は、電動ポンプP1及び電動ファン23cをそれぞれ作動させる。これにより、ランキンサイクル3では、同図の実線矢印に示すように、電動ポンプP1によって吐出された作動流体が配管25を経て、ボイラ19の第2流入口19cから第2通路19fに至る。そして、作動流体はボイラ19において、第1通路19eを流通する混合空気との間で熱交換を行い、加熱される。一方、作動流体との熱交換により、混合空気は冷却される。
【0043】
ボイラ19において加熱された作動流体は、高温高圧の状態で第2流出口19dから流出し、配管26を経て膨張機21の流入口21aから膨張機21内へ至る。そして、高温高圧の作動流体は膨張機21内で膨張し、減圧される。この際の圧力エネルギーにより、膨張機21に接続された発電機は発電を行う。
【0044】
膨張機21内で減圧された作動流体は流出口21bから流出し、配管27を経て凝縮器23の流入口23aから凝縮器23内へ至る。凝縮器23の作動流体は、凝縮器23の周りの空気に放熱を行い、冷却される。この際、制御装置10は電動ファン23cの作動量を適宜変更して、作動流体を好適に放熱させて液化させる。冷却された作動流体は流出口23bから流出し、配管25を経て再びボイラ19に至ることとなる。
【0045】
これらのように、この廃熱利用装置のランキンサイクル3では、ボイラ19において、上記のような高温の混合空気と作動流体とが熱交換される。これにより、ボイラ19によって作動流体を十分に加熱でき、膨張機21に流入する作動流体をスーパーヒートの状態又はスーパーヒートに近い状態とすることが可能となっている。このため、この廃熱利用装置では、膨張機21における作動流体の膨張及び減圧時によって生じる圧力エネルギーを大きくすることが可能となる。また、このように作動流体が十分に加熱された状態であることから、膨張機21内で作動流体が液化することが防止される。これらのため、この廃熱利用装置では、ランキンサイクル3において回収可能なエネルギー、すなわち、電力の量が多くなるとともに、液バック現象が抑制されて膨張機21も損傷し難くなっている。
【0046】
一方、凝縮器23において放熱され、液化された作動流体、すなわち、低温の作動流体が配管25を経てボイラ19に流入するため、ボイラ19における熱交換において、混合空気は十分に冷却される。これにより混合空気の密度が十分に大きくなることから、この廃熱利用装置では、エンジン5に対してより多くの混合空気(加圧空気)を供給可能となっている。また、このように混合空気が冷却されることで、還流排気も冷却されることとなる。このため、この廃熱利用装置では、エンジン5の出力を向上できる他、配管14及びマフラを経て、最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることも可能となっている。
【0047】
さらに、この廃熱利用装置では、ボイラ19において混合空気と作動流体とが熱交換を行うことで、一つのボイラ19において、加圧空気と作動流体との熱交換と、還流排気と作動流体との熱交換とを同時に行うことが可能となっている。このため、この廃熱利用装置では、省スペース化を実現している。また、例えば、ボイラ内に加圧空気用通路と還流排気用通路をそれぞれ設け、それらを個別に作動流体で冷却(熱交換)する場合に比べて、ボイラの出入り口に必要な継ぎ手の数を減少させることもできる。
【0048】
したがって、この廃熱利用装置によれば、ランキンサイクル3における電力の回収量の向上を図りつつ、エンジン5の出力の向上が実現可能であるとともに、耐久性及び搭載性を高くすることができる。
【0049】
特に、この廃熱利用装置では、ボイラ19において作動流体と熱交換を行なう混合空気は、加圧空気と還流排気とが混合されている。このため、ターボチャージャ7のコンプレッサ部には外気のみが吸引されることから、ターボチャージャ7のコンプレッサ部に用いる材質に対する制限を緩和することが可能となっている。また、上記のように、加圧空気の温度は150°C程度であり、外気の温度よりもはるかに高くなっている。このため、この廃熱利用装置では、還流排気と混合した際の混合空気の温度を高い状態とすることが可能となっている。このため、この廃熱利用装置では、ランキンサイクル3で回収可能な電力の量が多くなっている。
【0050】
また、ボイラ19はステンレス製となっている。ステンレスは混合空気中に含まれる硫黄成分に対する耐性が高いため、ボイラ19の耐久性が高くなり、ひいては、廃熱利用装置の耐久性が高くなっている。ここで、上記のように、加圧空気と還流排気とを混合して混合空気となるため、ボイラ19のみステンレス製とし、ターボチャージャ7には、そのコンプレッサ部がアルミニウム合金製である公用品を採用することができる。このため、ボイラ19をステンレス製とした場合であっても、廃熱利用装置の製造コストの上昇を抑制することが可能となっている。
【0051】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0052】
例えば、ランキンサイクル3において、ボイラ19の他に、冷却水と作動流体との間で熱交換を行う第2のボイラや、配管14を流通する排気と作動流体との間で熱交換を行う第3のボイラ等を設けても良い。このような第2、第3のボイラ等を設ける場合、ボイラ19において低温の作動流体によって、好適に混合空気の冷却を行うため、ランキンサイクル3において、これらの各ボイラより作動流体の循環方向の上流にボイラ19を設けることが好ましい。また、これら第2のボイラや第3のボイラを作動流体が迂回可能なバイパス路を設けることで、ボイラ19に低温の作動流体を流入させることも可能である。
【0053】
また、ボイラ19において作動流体と熱交換される混合空気として、配管15において外気と還流排気とが混合されたものとしてもよい。この場合、ターボチャージャ7のコンプレッサ部に還流排気が吸引されるため、コンプレッサ部を硫黄成分に対して耐性を有する材質とする必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は車両等に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…駆動系
3…ランキンサイクル
5…エンジン(内燃機関)
7…ターボチャージャ(過給器)
9…配管(排気還流路)
19…ボイラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を有する駆動系に用いられ、ボイラを有して作動流体を循環させるランキンサイクルを備えた廃熱利用装置において、
前記駆動系は、外気を吸入して前記内燃機関に対して加圧空気を供給する過給器と、該内燃機関で生じた排気の一部を該内燃機関に還流排気として還流させる排気還流路とを有し、
該外気又は該加圧空気と該還流排気とが混合されて混合空気とされ、
前記ボイラは、該混合空気と前記作動流体との間で熱交換を行うことを特徴とする廃熱利用装置。
【請求項2】
前記混合空気は、前記加圧空気と前記還流排気とが混合されている請求項1記載の廃熱利用装置。
【請求項3】
前記ボイラはステンレス製である請求項1又は2記載の廃熱利用装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−68139(P2013−68139A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206671(P2011−206671)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】