説明

廃石膏の加熱装置

【課題】廃石膏からβ半水石膏を効率的に生成できる加熱装置を得ること。
【解決手段】供給ホッパから供給された廃石膏を搬送するスクリュー式供給部と、供給部から廃石膏の供給を受け回転駆動される円筒状回転体と、回転体の外側において該回転体外周面に近接して設置された高周波加熱部と、円筒状回転体の終端からβ半水石膏を排出する排出部と、上記円筒状回転体の終端近傍に接続され回転体内に発生する水蒸気を排気する排気手段とを備えた廃石膏の加熱装置であって、上記高周波加熱部は上記回転体の下側に複数分割して設け、上記円筒状回転体の内壁面に横断面略L字形状の石膏攪拌用羽根を設け、回転体の回転に伴って攪拌羽根により回転体上側に持ち上げられた石膏が回転体内下部の回転方向上流側に落下するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば廃石膏ボード等を破砕し紙等の不要物を取り除いた二水石膏、或いは陶器型、歯科形、模型等の廃石膏を破砕した二水石膏を、円筒状回転体に入れて外部から高周波加熱し、水和反応が可能なβ半水石膏又は無水石膏に加熱脱水する廃石膏の加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃石膏ボードから水和硬化する焼石膏(3型無水石膏等)を得る技術として、従来、圧縮、衝撃、せん断、摩擦および切断で廃石膏ボードを破砕し、破砕した廃石膏を振動篩や回転篩等で紙と分別し、分別された廃石膏(二水石膏)を好ましくは280〜320℃で1〜4時間加熱して3型無水石膏に加熱脱水し、石膏中の紙と有機混和剤を炭化する技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
回転胴型焼却炉乾燥炉としては、円筒状回転体の内部にバーナ熱風を直接吹き込み被加熱物を乾燥する装置(特許文献2)、単一の高周波加熱部を回転ドラム下側に配置しその高周波加熱部で被加熱物を乾燥するバッチ処理式の乾燥装置(特許文献3)、円筒状回転体の外側の円周方向全周に高周波加熱コイルを巻き、円筒状回転体の外部から複数台の高周波加熱部で被加熱物を連続処理する加熱炉(特許文献4,5)等が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3221940
【特許文献2】特開2001−327845
【特許文献3】特開昭59−176573
【特許文献4】特開昭57−115670
【特許文献5】特開平11−226542
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の技術は、篩を通過した廃石膏には紙が混入しており、石膏中の紙と有機混和剤は炭化する温度以下で温度制御しないと、加熱脱水した石膏に炭化物が混ざり変色するという課題がある。
【0006】
上記特許文献2のようなバーナ熱風を円筒状回転体の内部に直接吹き込む装置では、回転体内において温度分布の大きなばらつきが生じるため、二水石膏を加熱脱水する装置として使用すると、二水石膏の加熱脱水状態が安定せず、二水石膏を水和反応が可能なβ半水石膏又は3型無水石膏に加熱脱水する装置としては生成物の品質がばらつくという問題がある。また、同文献2の装置によると、高温であるバーナ吹出部において一部の石膏の温度が360℃以上になると水和しにくい2型無水石膏となり、水和反応がばらつく。さらに、化石燃料の燃焼によるスス等の石膏への混入による変色の問題と、熱風での粉末石膏の飛散処理のため排気側に集塵機等を取付ける等装置が大型化するという課題もある。
【0007】
上記特許文献3は、高周波加熱部を回転ドラム下側に配置し、単一の高周波加熱部でバッチ処理する乾燥装置であるが、回転ドラム内の掻上板は垂直なフラット板であるため、下側の高周波加熱部の位置に対して回転方向の一部にしか非加熱物を落下できず、粒子間に隙間がある石膏では高周波加熱コイルで回転ドラムに渦電流を発生させ誘導加熱するため石膏に接触する高温の部分の伝熱面積が減少して熱伝達率が悪くなり、また、回転方向の最下部から下流の4分の1の範囲での被加熱物の厚みが厚くなり、石膏の場合加熱脱水の水蒸気が石膏上面より抜けにくく熱伝達率が悪くなる。
【0008】
上記特許文献4,5は、円筒状回転体の外部から複数台の高周波加熱部で被加熱物を連続処理する加熱炉であるが、円筒状回転体の外側の円周方向全周に高周波加熱コイルを巻いているものであり、石膏の場合、加熱脱水で発生した水蒸気を、円筒状回転体と両端固定部との回転摺動においてシールする必要があり、高周波加熱コイルを下部に配置することに対し円周方向全周に巻くと組立と取外し作業に時間がかかるという課題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、円筒状回転体の下側に取付けた複数台の高周波加熱部により、二水石膏を効率的に加熱して温度制御により二水石膏が混ざらないβ半水石膏または無水石膏を効率的に得ることを目的とする。また、石膏の加熱脱水により発生する水蒸気と排出する加熱脱水石膏からの排熱利用及び放熱量の削減を行なうことで省エネ化を図ることを目的とする。また装置構成も簡単な石膏の加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、
第1に、破砕された廃石膏を加熱する廃石膏の加熱装置において、供給ホッパーから供給された上記廃石膏を搬送するスクリュー式供給部と、該スクリュー式供給部から上記廃石膏の供給を受けるものであって傾斜して設置された状態で駆動手段により回転駆動される円筒状回転体と、該円筒状回転体の外側において該回転体外周面に近接して設置された高周波加熱部と、円筒状回転体の終端からβ半水石膏又は無水石膏を排出する排出部と、上記円筒状回転体内に発生する水蒸気を排気する排気手段とを備えた廃石膏の加熱装置であって、上記高周波加熱部は、上記回転体の下側外周面に対向する位置に複数に分割して設け、上記円筒状回転体の内壁面に、横断面略L字形状の石膏攪拌用羽根を複数設け、回転体の回転に伴って上記攪拌羽根により回転体上側に持ち上げられた石膏を回転体内下部の回転方向上流側に落下し得るように構成したものであることを特徴とする廃石膏の加熱装置により構成されるものである。
【0011】
このように構成すると、円筒状回転体の下側に取付けた複数台の高周波加熱部により、二水石膏を効率的に加熱して温度制御により二水石膏が混ざらないβ半水石膏または無水石膏を効率的に得ることができる。また円筒状回転体内において攪拌羽根により石膏を効率的に攪拌し得る。上記排気手段は、例えば供給装置(12)の中空パイプ(9a)、外側通路(12a)、排気パイプ(12’)等により構成される。この排気手段は円筒状回転体の始端近傍、或は始端近傍又は終端近傍、或は始端近傍及び終端近傍位置に設けることが好ましい。
【0012】
第2に、上記スクリュー式供給部は、上記供給ホッパーからの廃石膏を上記円筒状回転体内に搬送するスクリューを備えた供給管と、上記回転体内で発生した水蒸気を上記石膏の搬送方向とは逆方向に排出する排出管とを具備するものであり、さらに上記供給管と上記排出管とが伝熱面を介して熱交換し得るように構成したものであることを特徴とする上記第1記載の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0013】
このように構成すると、加熱脱水石膏からの排熱利用を図ることができ、また放熱量の削減を行なうことで省エネ化を実現し得る。また、排出管の水蒸気通路に、凝縮水の排水構造(例えば図1の凝縮タンク(14)、図8の熱交タンク(43))、と洗浄構造(例えば図8の熱交タンク43の洗浄構造)を設けることもできる。
【0014】
第3に、上記排気手段から排気された水蒸気の熱を利用して熱媒体を加熱する熱交換手段を設け、上記スクリュー式供給部は、上記供給ホッパーからの廃石膏を上記円筒状回転体内に搬送するスクリューを備えた供給管と、上記熱媒体を上記石膏の搬送方向とは逆方向に排出する排出管と具備するものであり、さらに上記供給管と上記排出管とが伝熱面を介して熱交換し得るように構成したものであることを特徴とする上記第1記載の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0015】
第4に、上記排気手段から排気された水蒸気中の石膏粉塵を捕集する集塵部を設け、上記スクリュー式供給部は、上記供給ホッパーからの廃石膏を上記円筒状回転体内に搬送するスクリューを備えた供給管と、上記集塵部を通過した水蒸気を上記石膏の搬送方向とは逆方向に排出する排出管と具備するものであり、さらに上記供給管と上記排出管とが伝熱面を介して熱交換し得るように構成したものであることを特徴とする上記第1記載の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0016】
第5に、外気を円筒状回転体に給気するファンを設けると共に、円筒状回転体における加熱脱水後の石膏の排出部に、加熱脱水後の石膏を上記給気で冷却すると共に給気を上記加熱脱水後の石膏により加熱する熱交換機構を設けたものであることを特徴とする上記第1又は4の何れかに記載の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0017】
このように構成すると、排出後の脱水石膏を冷却しながら給気を加熱して、円筒状回転体内の温度低下を防止し得る。
【0018】
第6に、上記円筒状回転体の回転方向上流側又は回転方向下流側の外周面位置の温度を測定し得る非接触型温度センサーを上記各高周波加熱部に対応して各々設け、上記温度センサーで計測した回転体外周面温度に基づいて、上記高周波加熱部の出力と上記スクリュー式供給部による石膏供給量とを制御し得るように構成したものであることを特徴とする上記第1〜5の何れかに記載の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0019】
このように構成すると、例えば上記温度センサーの検出温度に基づいて、石膏の供給開始と終了時等に高周波加熱出力と石膏供給量等を制御することにより、効率的な加熱処理を行うことができる。
【0020】
第7に、上記石膏攪拌用羽根は、横断面略L型を形成する接合板部と基板部とから構成し、さらに上記基板部の端縁に該基板部に対して接合板部の方向に所定角度を以って突設された突出板部を有しており、上記石膏攪拌用羽根の両端部と上記円筒状回転体の左右閉止壁面との間に空間を設けたものであることを特徴とする上記第1〜6の何れかに記載の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0021】
このように構成すると、回転体の回転に基づいて石膏攪拌羽根で石膏を持ち上げて、上部より回転体の回転方向上流側に落下させることができ、これにより効率的な石膏の加熱を実現することができる。
【0022】
第8に、上記円筒状回転体及び上記高周波加熱部を保温用筐体により覆う構成とし、上記保温用筐体内部における上記高周波加熱部の上部近傍に仕切板を設け、上記保温用筐体の内部空間を高周波加熱部の設置空間と上記円筒状回転体側の空間とに分割したものであることを特徴とする上記第1〜7の何れかに記載の廃石膏の加熱装置により構成されるものである。
【0023】
このように構成すると、保温用筐体内の高温空気が対流により高周波加熱部側に流れることを防止することができ、高周波加熱部の冷却効率を高めることができる。
【0024】
第9に、上記円筒状回転体の外側に厚さ9mm以下のセラミックファイバ製断熱シートを、耐熱テープ又は耐熱接着材で巻き着け固定し、上記シートにおける上記回転体外周の非接触型温度センサーの測定点を含む部分を切欠いたものであることを特徴とする上記第1〜8の何れかに記載の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0025】
このように構成すると、円筒状回転体内の温度低下を効率的に防止することができる。
【0026】
第10に、複数台の高周波加熱部の各高周波加熱コイルの上記円筒状回転体の軸方向の長さを、円筒状回転体の供給側のコイルより排出側のコイルの方が長くなるように構成したものであることを特徴とする上記第1〜9の何れかに記載の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0027】
このように構成すると、高周波加熱コイルの円筒状回転体長手方向の単位長さ当りの高周波加熱量を、供給側のコイルに比べて排出側のコイルを低くすることができ、これにより温度制御を実行し易くなり、高品質の加熱脱水石膏を得ることができる。
【0028】
第11に、円筒状回転体の内部に傾斜板を設け、上記石膏攪拌用羽根から落下した石膏を傾斜板上面を移動させ高周波加熱部の設置位置より回転方向上流側に落下させる構造を有することを特徴とする上記第1〜10の何れかに記載の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0029】
このように構成することにより、回転体内の石膏を回転方向上流側に確実に落として攪拌することができ、石膏の効率的な加熱処理を行うことができる。
【0030】
第12に、上記円筒状回転体の端面側固定端の外側にバーナ燃焼部を取付けて、固定端から円筒状回転体内にバーナ放熱筒を固定し取付け、バーナによる熱風をバーナ放熱筒に流して石膏を間接加熱し、供給装置において燃焼ガスを石膏と熱交換して排気し、バーナ加熱を円筒状回転体の供給側の石膏の加熱に用いることを特徴とする上記第1の廃石膏の加熱装置により構成される。
【0031】
このように構成すると、バーナ加熱を併用しながら温度分布のばらつきを生じさせることなく、効率的な加熱を実現し得る。上記供給装置は、例えば図9における供給装置(63)等をいう。
【発明の効果】
【0032】
このように本発明によれば、高品質なβ半水石膏を得ることができる。
【0033】
さらに、石膏の加熱脱水により発生する水蒸気を石膏の加熱に利用することができ、省エネを実現し得る。
【0034】
また、装置構成も簡単な廃石膏の加熱装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に係る石膏の加熱装置の構成を詳細に説明する。
【0036】
図1において、1は内部で石膏を加熱脱水する中空の円筒状回転体であり、該円筒状回転体1の材質は円筒状の鋼板(比透磁率が大きい)、または鋼板の錆が石膏に混入するのを避けるため外側が鋼板で内側が比透磁率の小さいステンレス板を接合したもの、もしくは、鋼板の内と外側にステンレス板を接合したもの、鋼板の表面にセラミックや樹脂等をコーティングしたものを使用する。
【0037】
該円筒状回転体1は円筒状の形状であり、回転体1下部の両側付近に設けたローラ2で4点以上を支持され、回転駆動モータ(駆動手段)3で歯車又はチェーン2a等を介してローラ2を回転させ、当該ローラ2により当該円筒状回転体1を矢印m方向に回転させる。上記回転駆動モータ3は、インバータにより回転数を可変制御できるように構成する。
【0038】
円筒状回転体1は、供給側Aから排出側Bに向かい下り勾配を0〜数度の角度で設ける。これにより、回転体1の供給側Aと排出側Bに高低差ができ石膏は供給側から出口側に流れる。
【0039】
円筒状回転体1の内面には長手方向に持上げ部(石膏攪拌用羽根)4を溶接等で取付ける。この持上げ部4の個数は8個から16個で、円周方向にほぼ均等に配置する。
【0040】
供給ホッパー6には二水石膏7を貯蔵し、定期的にバイブレータ8を作動して貯蔵された二水石膏をスクリューコンベア9に落下させ、スクリューコンベア9の回転により上記二水石膏を円筒状回転体1内に供給していく。スクリューコンベア9の中心回転軸は中空パイプ9aにより構成されており、当該スクリューコンベア9は上記中空パイプ9aを歯車またはチェーン10aを介してモータ10で駆動することにより、上記二水石膏を上記円筒状回転体1内に供給し得る方向に回転駆動される。上記モータ10はインバータにより回転数可変制御ができるものであり、これにより上記スクリューコンベア9の回転数制御を行うことで上記二水石膏の回転体1への供給量を制御し得るように構成する。
【0041】
供給ホッパー6の二水石膏の出口部分には、静電容量式等の材料検知センサー11を設け、ホッパー6内に二水石膏の貯蔵がなくなったか否かを検知できるようにしている。
【0042】
12は上記スクリューコンベア9及び中空パイプ9aを含む二水石膏の供給装置(スクリュー式供給部)であり、全体として2重管構造をなしている。この供給装置12の外側管(排出管)には円筒状回転体1内で加熱脱水して生じた水蒸気が通る外側通路12aが形成され、内側管(供給管)には上記ホッパー6からの二水石膏がスクリューコンベア9で送られる内側通路12bが形成されている。この供給装置12と上記円筒状回転体1の外周端縁の接続部1aの隙間はパッキン12cでシールされている。
【0043】
加熱乾燥中における上記回転体1内の水蒸気は、スクリューコンベア9の中空パイプ9aの内部を通り排気され、回転する中空パイプ9aはロータリージョイント13を介して回転しないホース13aと接続されている。よって、上記中空パイプ9aは排気管としても機能するものである。ここで、外側通路12aと内側通路12bの境界面、内側通路12bと中空パイプ9aの境界面が伝熱面となる。
【0044】
中空パイプ9a外面又はスクリューコンベア9に、該パイプ9a又はスクリューコンベア9と一体で回転するようにパドル9bを取付け、スクリューコンベア9で移送される石膏を通路内で撹拌し、水蒸気の通路と伝熱面を介して石膏へ熱交換する熱伝達を向上することもできる。
【0045】
ホース13a及び外側通路12aを通過した水蒸気と一部が凝縮した凝縮水は、凝縮タンク14に入って凝縮水は溜まり、排気出口15aから外気に自然排気するか、または排気ファン15を取付け強制排気する。
【0046】
上記円筒状回転体1の終端には、終端固定蓋16を固定設置し、円筒状回転体1と終端固定蓋16の間の隙間はパッキン16aでシールされる。
【0047】
加熱脱水された石膏は、円筒状回転体1の終端の本体排出口17から落下し、排出装置18内の排出スクリューコンベア19の回転で移送され上部の排出口21から排出され、例えば袋22に入れ貯蔵されていく。排出スクリューコンベア19の回転はモータ20で行なう。
【0048】
上記凝縮水タンク14に排気ファン(ファン)15を設け、排気ファン15で強制排気し円筒状回転体1内を負圧にする。この場合、排出装置18の上部に設けた給気口23から外気が排出装置18の内面上部と排出スクリューコンベア19の上面を通り円筒状回転体1内に給気(入力)する。本体排出口(排出部)17での温度が130℃以上の加熱脱水石膏と上記給気口23からの給気(空気)は排出装置18内で熱交換を行ない、給気(空気)の温度は上昇し加熱脱水石膏は給気空気により冷却される。このように、排気ファン15、排出装置18、スクリューコンベア19、給気口23等により熱交換機構が構成される。
【0049】
円筒状回転体1内の水蒸気の排気を終端部から行なうために、終端固定蓋16の上部に排気パイプ12’を接続し、供給装置12の外側通路12aに連結することも可能である。尚、回転体1始端近傍の中空パイプ9a、外側通路12a、回転体1の終端近傍の排気パイプ12’等により排気手段が構成されている。
【0050】
排気ファン15の代わりに、給気口23に給気ファン(図示せず)を設けて、円筒状回転体1内に強制給気し、水蒸気と共に供給装置12の熱交換器を通り排気することも可能である。
【0051】
図3において、高周波加熱部5は、内部に渦巻き状の高周波加熱コイル24を持ち、高周波インバータ(図示せず)から数10KHzの高周波電流を流すと、円筒状回転体1には電磁誘導作用により誘導電流が流れてジュール熱により発熱する。高周波加熱部5の加熱コイル24と円筒状回転体1の金属表面との隙間は、加熱コイル材の断面にもよるが10〜17mm程度離して設置し、渦巻き状の加熱コイル24は円筒状回転体1の曲率に添って隙間を保ちながら円弧状(楕円形状)に成型する(図3(b)参照)。また、加熱コイル24の上面(円筒状回転体1側)は加熱コイル24の熱劣化防止と加熱コイル24の成形のため、エポキシ樹脂やテフロン(登録商標)等の耐熱薄板シート25を上記コイル24上に被覆して熱遮断を行なう。
【0052】
高周波加熱部5の加熱コイル24は通常銅線であり、ファン27で外気をフィルタ28から吸込み空冷するが、加熱コイル24の下側には空気通路穴を有した多孔成形板シート26を設け、空冷後の排気は排気ダクト29で排気する。また、多孔成形板シート26の下側にはフェーライトコア等(図示せず)を取付けて磁気シールドを行なう。
【0053】
上記高周波加熱コイル24に中空銅管を用い、内部に冷却水を循環して水冷することも可能である。
【0054】
上記円筒状回転体1の下側に高周波加熱部5を設置することで、円筒状回転体1と加熱コイル24との隙間距離が調整ボルト30等を用いて容易に調整でき、取付けや製作がし易くなる。
【0055】
この高周波加熱部5は、図4に示すように、3つの高周波加熱部5a、5b、5cにより構成する。これらの高周波加熱部5a、5b、5cは、円筒状回転体1の長手方向に複数台設け、円筒状回転体1の長手方向の加熱量と温度分布を制御可能にする。本実施形態では高周波加熱部5は3個設けているが、その個数は、加熱総出力や円筒状回転体1の長さ、直径等により適宜増減することができる。
【0056】
石膏の転移のピーク温度は、微量の不純物や添加物や昇温スピードにより影響されるが、二水石膏(CaSO・2H2O)からβ半水石膏(CaSO・1/2H2O)へは約150℃で吸熱して転移し、3/2H2Oの結晶水を離脱する。また、約170℃で吸熱して1/2H2Oの結晶水を離脱し3型無水石膏(CaSO)に転移するが、吸湿や水和時の接水でβ半水に戻り水和反応には影響がない。さらに温度を上昇させると、約360℃で2型無水石膏(CaSO)に転移するが、水和がしにくい特性を持っている。
【0057】
水和作用がある加熱脱水石膏を生産する場合は、2型無水石膏が混在しないように、円筒状回転体1の石膏と接する部分の温度を上げないように温度制御する必要がある。
【0058】
図4に示すように、複数台の高周波加熱部5a、5b、5cは、これらの加熱部の出力が同じ場合、石膏排出側の高周波加熱部5cは、高周波加熱部5a、5bより円筒状回転体1の長手方向の長さが長く、長手方向の単位長さ当りの高周波加熱量の最大値が低くなる。
【0059】
水和作用があるβ半水石膏または3型無水石膏を生産する場合は、供給側の高周波加熱部5a、5bでは、約150℃で二水石膏がβ半水化するので石膏の温度上昇が抑えられ円筒状回転体1の長手方向単位長さ当りの高周波加熱量の最大値を大きくしても加熱脱水石膏はβ半水化が進むだけで品質低下とならない。これに対して、排出側の高周波加熱部5cでは二水石膏の単位体積当りの割合が少なくなるため、長手方向単位長さ当りの高周波加熱量の最大値を低くすることで、温度を制御し易くし加熱脱水石膏の品質の安定性を良くすることができる。
【0060】
図4に示すように、上記円筒状回転体1は、高周波加熱部5と共にその全体が保温用筐体31で覆われている。この保温用筐体31の内面に保温剤32を取付けた保温壁32’を設け、かつ該筐体31内における高周波加熱部5の上部に仕切板33を設けて当該筐体31内の高周波加熱部5側と回転体1側の空間を分割し、冷却が必要な高周波加熱部5が存在する保温用筐体31内の下部の空気と、円筒状回転体1の外側上部の温度が高い空気が対流により混ざることを抑制して、放熱量を減少させることとが可能となる。
【0061】
図4の円筒状回転体1の外周に、厚み9mm以下のセラミックファイバ製断熱シート34(34a乃至34d)を、耐熱テープ又は耐熱接着材で巻き着け固定する。これにより、円筒状回転体1自体から外部への放熱量を減少させることができ、冷却が必要な高周波加熱部5への伝熱量を減少できる。
【0062】
円筒状回転体1の外周壁の温度は、上記保温壁32’に設けた赤外線式非接触センサー(非接触型温度センサー)35aにより測定する。この赤外線式非接触センサー35aは高温環境での使用が難しく、図4の非接触センサー35aは、保温壁32’の外部に設置した例であり、赤外線通過穴35’を通り円筒状回転体1の表面温度を計測する。また、非接触センサー35bは、保温壁32’の内部で仕切板33下側に設置した例である。非接触センサー35a、35bの設置位置は、高周波加熱部5に対して回転方向上流側でも下流側でも温度制御は可能である。非接触センサー35a、35bはレーザー式を用いても良い。
【0063】
上記非接触センサー35a又は35bは、複数の高周波加熱部5a、5b、5c毎に3個設け、円筒状回転体1の表面温度を測定するセンサー測定点36(3箇所)には、断熱シート34を切欠くように構成する。即ち、上記断熱シート34は、上記センサー測定点の3箇所の間隙を設けた4枚のシート34a,34b、34d,34eにより構成している。センサー測定点36の位置の間隙に対応する高周波加熱部5の表面位置は、円筒状回転体1からの伝熱量が多く表面の温度上昇を抑制するため断熱用の保護シート34’を円周方向に貼る。
【0064】
石膏の場合、供給側の高周波加熱部5a、5bでは、約150℃で二水石膏がβ半水化する熱量が多く石膏の温度上昇が抑えられるので、例えば高周波加熱部5bに対応する位置の非接触センサー35a1台で、高周波加熱部5a、5bの出力制御を行なうことも可能である。
【0065】
図5に示すように、円筒状回転体1の内面に持上げ部(石膏攪拌用羽根)4を等間隔で複数設ける(図5では12個)。尚、以下の説明において、図5に示すように供給側Aから円筒状回転体1内部を見て、高周波加熱部5に対して右手側を回転方向上流側R1、高周波加熱部5に対して左手側を回転方向下流側R2という。
【0066】
この持上げ部4は、一枚の長板を横断面略L型に折曲加工して形成したものであり(図7参照)、該長板を所定位置で一方向(回転方向と同一方向)に折り曲げることにより上記回転体1の内面に全周溶接される接合板部4’と該接合板部4’と鈍角をなす基板部4”を形成し、該基板部4”の端縁をさらに同方向に折り曲げて該基板部4”とは鈍角をなす突出板部4aを形成する。これにより、全体として横断面略L字型に加工形成されるものである。そして、この持上げ部4の上記接合板部4’の端縁4bを上記回転体1内面に全周溶接するものである。かかる持上げ部4の上記回転体1内壁への取り付け角度は、上記突出板部4aを回転方向m側に位置させると共に、上記基板部4”が鉛直線に対して直角となるように位置させた状態で上記接合板部4’の端縁4bを上記回転体1内壁に全周溶接する。よって、取り付け状態において、上記接合板部4’の上記回転体1内壁に対する取り付け角度は、鉛直線に対して角度θ1だけ反回転方向に後退した位置となる。このように角度θ1を設けることは上記持上げ部4内の石膏の持上げ量を増加し得るという効果を奏する。
【0067】
さらに、石膏の持上げ量を増すために、基板部4”の端縁に突出板部4aを延在させる。即ち、基板部4”とは直角より開いた角度θ2を以って突出板部4aを設けて持上げ部4はコップ状(略L字状)の横断面形状にする。尚、上記角度θ2は、基板部4”に直交する鉛直線に対する角度である。上述のように接合板部4’と基板部4”と突出板部4aは、板の曲げ加工で一体で製作しても良く、曲げ部分の曲率半径を大きくしても良い。
【0068】
円筒状回転体1の下側下流部位置(円筒状回転体1の最下部から回転方向1/8円の範囲)付近での持上げ部4では石膏の積層厚みが大きく、突出板部4aが、上記回転体1内で発生する水蒸気に蓋をしたような状態になるので(図4の位置Kの持上げ部4参照)、回転体1供給側における持上げ部4端部と、同じく回転体1排出側における持上げ部4端部、即ち持上げ部4の両端部より水蒸気が抜ける構造とし(図1矢印d参照)、即ち、上記持上げ部4の両端部と上記円筒状回転体1の左右閉止壁面との間に空間を設けて上記水蒸気が抜ける構造とし、さらに持上げ部4の基板部4”に数mm程度の小穴38を、例えば数10cm間隔で設けて、当該持上げ部4の長手方向長さが長い場合に上記小穴38から水蒸気が抜け易くすることも考えられる。小穴38は、長穴等のスリットでも同様の効果がある。また、図7(c)に示すように、持上げ部4を回転体1の長手方向に複数に分割し、周方向の分割列4c毎に円周方向にずらして全体として千鳥配列に取り付けることも考えられる。
【0069】
高周波加熱による二水石膏の加熱脱水の運転方法としては、非接触センサー35a又は35bからの測定温度で出力を制御する温度コントローラ(図示せず)の目標温度を、複数の高周波加熱部5毎に所定温度に設定する。β半水石膏を生産する場合は、石膏と接する円筒状回転体1の表面温度が2型無水石膏が生じない温度以下に設定し、石膏ボードを処理する場合はβ半水石膏の用途によるが紙の炭化が問題な場合は炭化する温度以下に設定する。
【0070】
運転を開始すると回転駆動モータ3を回転させ円筒状回転体1は回転を始め、高周波加熱部5を通電し、円筒状回転体1は誘導加熱される。一定時間後または供給側Aの高周波加熱部5aに対応する測定点36の温度が目標温度に近付くと、供給装置12のスクリューコンベア9をモータ10により駆動し、該コンベア9の回転により円筒状回転体1内に石膏を供給開始する。
【0071】
上記円筒状回転体1が矢印m方向に回転すると、石膏は下部の持上げ部4の接合板部4’の内面側により掬われて行き(図5位置k1)、位置k2、k3において上記持上げ部4の内側全域に石膏が入り込んだ状態で、上方に石膏を持ち上げていく。位置k2においては、上記小穴38から水蒸気が排出される。さらに回転していくと、位置k4、k5以降の位置において、徐々に石膏が溢れるように下方に落下し始め、位置k7から位置k10において、回転方向上流側R1に石膏を落とすことで、効率的に石膏を攪拌することができる。
【0072】
円筒状回転体1からの加熱脱水石膏の排出量が一定になった時点で、排出側の高周波加熱部5c(高周波加熱部5が3台の場合)が、100%運転していない場合(高周波インバータからの信号等による)は加熱余力があると判断し、二水石膏の供給量を増すためモータ10のインバータ周波数を上げる。但し、排出側の高周波加熱部5cは、供給される二水石膏の含水率による熱負荷の変動に対応するため、最大出力に対して数%程度の余力を持たせて安定した品質の加熱脱水石膏を排出することも考えられる。
【0073】
二水石膏の含水率(自由水)は供給前に確認し、供給量を設定する事も考えられる。特に、含水率が2%以上の場合は、供給前に自動または手動で確認をし供給量を調整する。石膏の滞留時間は円筒状回転体1の回転数と傾き角度で調整し、β半水石膏を排出する場合は、粒子の粒径ばらつきや安息角にもよるが、例えば滞留時間を8分から40分の範囲で調整する。
【0074】
排出装置18に水分計を取付け、排出される加熱脱水石膏の少量(20g以下程度)をサンプリングし、ヒータで加熱し無水石膏までの重量変化を測定する方法で、目安として6.2%程度の重量減であればβ半水石膏であり、それ以上の重量減であれば二水石膏が混じっており、それ以下であれば半水石膏の中に無水石膏が混在する状態であり、水分減少がなければほぼ無水石膏の状態であると判断する。
【0075】
β半水石膏を生産したい場合には、二水石膏が混在していると加熱脱水が不十分と判断して、高周波加熱部5の出力を最大限にする制御と二水石膏の供給量を減らす制御を行ない、さらに円筒状回転体1の回転数を落とし円筒状回転体1内の石膏の滞留時間を延ばす制御も考えられる。また、3型無水石膏が混在していると、加熱脱水余力があると判断し、二水石膏の供給量を増す制御を行なう。
【0076】
2型の無水石膏を生産したい場合は、円筒状回転体1から排出される加熱脱水石膏の品温を温度センサーで計測して、石膏の供給量の制御と高周波加熱部5等の温度管理を行なう。
【0077】
運転の終了時に、供給装置12のスクリュー9の回転を止めると、円筒状回転体1内への二水石膏の供給が止まり、高周波加熱部5の加熱負荷が減少始める。定常運転時の円筒状回転体1内の滞留時間Tに対して、T時間内に供給側の高周波加熱部5aから出力を下げる制御や、T時間内に高周波加熱部5を全部停止し円筒状回転体1の予熱で加熱脱水を続ける制御等が考えられる。
【0078】
石膏供給量制御、円筒状回転体1の回転数制御、高周波加熱部5の加熱制御、および装置の稼動始動時と終了時の制御においては、シーケンサやインバータや温度コントローラに学習機能を持たせることも考えられる。
【0079】
排気ファン15で強制排気または給気口23の給気ファンで強制給気する場合、円筒状回転体1内の温度と、本体排出口17から排出する加熱脱水石膏の品温を測定し、装置の稼動始動時や外気温変化等における熱損失を抑制させるためにファンの風量を減少させる風量制御を行なうことも可能である。
【0080】
円筒状回転体1内に固定端から温度センサーTSを、円筒状回転体1の長手方向で中央から排出側の間の持上げ部4に干渉しない位置に取付け(図1参照)、半水石膏を得たい場合は、円筒状回転体1の温度が、取り付け高さにより変化するが170℃以上であれば無水石膏が混在していると判断し、石膏の供給量を増加させる制御または高周波加熱出力を減少させる制御を行ない、円筒状回転体1の温度が130℃以下であれば二水石膏が含まれると判断し、石膏の供給量を減少させる制御または高周波加熱出力を増加させる制御を行なう等、庫内温度による供給量と高周波加熱出力も有効である。
【0081】
円筒状回転体1内で生じた水蒸気の排気通路は、外側通路12a、中空パイプ9aの内部、ホース13aおよび図8の排気パイプ24’、24”であるが、通路の適当な位置に、通路内部にエルボ継手とノズルを設けてそれに接続する通路外部に配管を設け、エアーコンプレッサにより加圧された圧縮空気を開閉弁およびチャッキ弁(通路外部から内部の方向にしか流れない方向弁)を介して流れる構造にし、水蒸気の排気中に含まれる石膏の微粒子が通路内に堆積した場合、装置の稼動始動時または終了時にエアーブローして石膏の堆積物を吹き飛ばす。排気通路のエアーブローの方向は、排気の流れ方向でも逆方向でもかまわない。供給装置12内の外側通路12a等は、エアー洗浄の代わりに水洗浄する場合もある。
【0082】
図6に示すように、円筒状回転体1の内部に傾斜板39(図6では3枚)を設けることもできる。この傾斜版39は回転体1の回転方向下流側R2から回転方向上流側R1に下り傾斜を以って固定されている。円筒状回転体1の上部位置の持上げ部4から落下した石膏は、傾斜板39の上面を傾斜に沿って移動し、高周波加熱部5の回転方向上流側R1に落下する。傾斜板39は板状であり、円筒状回転体1の長手方向に配置されて両端部を回転体1の両側面に固定されている。傾斜板39は、図6に示すように複数枚設けることもでき、複数枚の場合、水蒸気通路のため、各傾斜板39間に隙間40を設けて、隙間40から石膏が落下しないように垂直方向に重なりを持つ構成とする。また、傾斜板39はヒータHを内蔵して石膏を加熱することも可能である。さらに、傾斜板39に角パイプを用い、内部に高温ガスを流して石膏を加熱することも可能である。
【0083】
図8は、回転体1から排気される水蒸気を浄化して排気するための他の実施形態である。同図に示すように、円筒状回転体1から発生した水蒸気は、終端固定蓋16の上部または供給側のスクリュー9’の先端部の上面の蒸気通路42から排気管24’、24”を通り、熱交タンク43に流入する。該タンク43内の水はシャワーポンプ44で循環されノズル45から噴霧され排気管24’、24”からの水蒸気と接触する。噴霧水が排気管24’、24”に浸入しないように飛散防止板46を熱交タンク43の入口に取付ける。噴霧水により水に復水しなかった水蒸気および空気は排気通路47を通り排気口48から排気され、排気口48から噴霧水が飛散しないようにパンチングメタル等のたれ壁49を排気通路47に設ける。
【0084】
二水石膏の加熱脱水で発生する石膏の微粒子を含んだ水蒸気の排気であるため、水の噴霧により石膏の微粒子は大部分が水に水溶化し沈殿する。沈殿した石膏はシャワーポンプ44の停止時に、排水弁50から排出するか掬い上げるかして定期的に除去する。
【0085】
熱交タンク(熱交換手段)43内には熱交換器51を水没させて取付け、熱交換器51内には水または不凍液の熱媒体を循環ポンプ52で流し、熱交換器51、熱交換器53とスクリュー外筒9”との間、循環ポンプ52、循環タンク54の順序で流れる。熱媒体は、供給装置12の熱交換器53における外側通路12a(排出管)及び内側通路12b(供給管)において石膏とを伝熱面(スクリュー外筒9”等)を介して熱交換して二水石膏を昇温し、熱媒体の温度は低下し、熱交タンク43にて水蒸気が保持している熱で昇温する。熱媒体は、供給ホッパ6’の周囲や内部にパイプ配管して二水石膏を昇温しても良い。また、熱交タンク43内の水を直接循環させることも考えられる。タンク43、54には、給水管55から水道水等を給水でき、ボールタップ56で自動給水可能である。弁57はタンク掃除時等のための開閉弁である。タンク54,43には水があふれないように、オーバーフロー管58,58’を設けている。循環タンク54の上部には通気用の開口部59を設けている。
【0086】
熱媒体による熱交タンク43での水蒸気からの熱回収量が、熱交換器53での放熱量より多い場合に、排気口48からの水蒸気量を減らすために冷却ファン60で熱交タンク43を空冷することも考えられる。運転開始時に熱交タンク43の水をヒータ47’で昇温することも考えられる。尚、回転体1の終端近傍の上記排気パイプ24’、回転体1の始端近傍の蒸気通路42、外側通路12a等により排気手段が構成されている。
【0087】
図9はバーナー加熱を併用する実施形態であり、上記円筒状回転体1の端面側固定端の外側にバーナ燃焼部を取付けて、固定端から円筒状回転体1内にバーナ放熱筒を固定し取付け、バーナによる熱風をバーナ放熱筒に流して石膏を間接加熱し、供給装置において燃焼ガスを石膏と熱交換して排気し、バーナ加熱を円筒状回転体の供給側の石膏の加熱に用いるものである。同図に示すように、回転する円筒状回転体1の石膏供給側に、始端固定蓋61を水蒸気が漏れないためのシール62を介して固定し、始端固定蓋61には供給装置63を固定し、回転スクリューコンベヤ9によりホッパー6”から二水石膏を円筒状回転体1内に供給する。化石燃料を燃料とするバーナ(バーナ燃焼部)64で熱風を発生し、熱風は熱風管往65を通り熱風ヘッダー66で折り返し、多管等の熱風管戻67を通り熱風戻ヘッダー68に流れ、熱風排気口69から排気する。ここで、バーナ熱風往管65、熱風ヘッダー66、熱風管戻67等によりバーナ放熱筒が形成されている。
【0088】
熱風の通路は回転せず固定であり、熱風戻ヘッダー68と熱風管往65は始端固定蓋61に気密性を保ち固定する。
【0089】
熱風排気口69から排気された燃焼ガスは、熱交入口70から排ガス熱交換器71を通り供給装置63内の石膏と熱交換した後、排気口72から排気することも可能である。
【0090】
バーナ64で発生した熱風は、熱風ヘッダー66で折り返さずに、終端固定蓋16から排気する構成にしても良い。このように構成すると、バーナ加熱の高温熱風を供給側の石膏の加熱に用い、温度低下(β半水石膏の場合150℃以上)した熱風を排出側から排気することで、バーナ加熱を円筒状回転体の排出側より供給側の石膏の加熱に用いることと同様の効果がある。
【0091】
図10は、終端固定盤16の上部より排気管24aを通り石膏粉塵を含んだ水蒸気を集塵部73に導入し、ろ布74で石膏粉塵を捕集し、水蒸気のみをファン75によりスクリュー式供給部における熱交換器53のスクリュー外筒(外側通路12a)に導入し、排気口12a’から排気される構成としている。この場合も上記水蒸気は石膏と伝熱面(スクリュー外筒(外側通路12a))を介して熱交換し、二水石膏を昇温する。圧縮空気タンク77内の圧縮空気を数十秒間隔でパルス的(1秒以下)に電磁弁78を開けて圧縮空気配管79を通り、ノズル80からろ布74内に噴射し、ろ布74の外側に捕集した石膏粉塵を集塵部73の底部に振るい落とす。集塵部73の底に溜まった石膏粉塵は粉塵排出口81から定期的に取り出すか、スクリュー等により連続的に取り出す。
【0092】
図8から図10に示す加熱装置では図1の排出装置18、排出スクリューコンベア19、給気口23、モータ20等から構成される熱交換機構を設けることができる。また、上記回転体1の終端近傍の排気管24a、上記回転体1の始端近傍の外側通路12a等により排気手段が構成されている。
【0093】
上述のように、本発明によると、円筒状回転体1の下側に取付けた複数台の高周波加熱部5により、二水石膏を効率的に加熱して温度制御により二水石膏が混ざらないβ半水石膏または無水石膏を得ることができる。
【0094】
また、石膏の加熱脱水により発生する水蒸気と排出する加熱脱水石膏からの排熱利用、および放熱量の削減を行なうことで省エネ化を図ることができる。
【0095】
また、装置構成も簡単な石膏の加熱装置を提供することができる。
【0096】
また、円筒状回転体1の外側からの高周波加熱と、円筒状回転体1の内側からのバーナ燃焼熱による加熱を併用し、温度制御がし易く始動時の温度立上りが速い高周波加熱の特徴と燃料費が安いバーナ加熱の特徴を兼ね備えた熱効率の高い加熱装置を実現し得る。
【0097】
また、回転体1下部の高周波加熱部と回転ドラム外側上部とを仕切板により分離することで、回転体1上部と下部の空気の対流による放熱量を減少させることと、回転体1自体から外部への放熱量を減少させることができる。
【0098】
また、二水石膏は約150℃で結晶水が外れて半水化するので、複数台の高周波加熱部を円筒状回転体の長手方向に配置することにより、長手方向の単位長さ当りの加熱量の出力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に係る廃石膏の加熱装置の側面断面図である。
【図2】同上装置の円筒状回転体の横断面図である。
【図3】(a)は同上装置の高周波加熱部の断面図、(b)は同上高周波加熱部の斜視図である。
【図4】(a)は同上装置の円筒状回転体の側面図、(b)は同上装置の回転体の横断面図である。
【図5】同上装置の円筒状回転体の横断面図である。
【図6】同上装置の円筒状回転体の他の実施形態の横断面図である。
【図7】(a)は同上装置の持上げ部の正面図、(b)は同上持上げ部の側面図、(c)は持上げ部を分割し千鳥配列した円筒状回転体の断面図である。
【図8】同上装置の他の実施形態を示す側面断面図である。
【図9】同上装置の他の実施形態を示す側面断面図である。
【図10】同上装置の他の実施形態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1 円筒状回転体
4 持上げ部
4’ 接合板部
4” 基板部
4a 突出板部
5 高周波加熱部
5a〜5c 高周波加熱部
6 供給ホッパー
9 スクリューコンベア
12 供給装置
12a 外側通路
12b 内側通路
15 給気ファン
17 排出口
18 排出装置
19 スクリューコンベア
31 保温用筐体
33 仕切板
34a〜34d セラミックファイバ製断熱シート
35a,35b 赤外線式非接触温度センサー
39 傾斜板
64 バーナ
73 集塵部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕された廃石膏を加熱する廃石膏の加熱装置において、
供給ホッパーから供給された上記廃石膏を搬送するスクリュー式供給部と、
該スクリュー式供給部から上記廃石膏の供給を受けるものであって傾斜して設置された状態で駆動手段により回転駆動される円筒状回転体と、
該円筒状回転体の外側において該回転体外周面に近接して設置された高周波加熱部と、
円筒状回転体の終端からβ半水石膏又は無水石膏を排出する排出部と、
上記円筒状回転体内に発生する水蒸気を排気する排気手段とを備えた廃石膏の加熱装置であって、
上記高周波加熱部は、上記回転体の下側外周面に対向する位置に複数に分割して設け、
上記円筒状回転体の内壁面に、横断面略L字形状の石膏攪拌用羽根を複数設け、回転体の回転に伴って上記攪拌羽根により回転体上側に持ち上げられた石膏を回転体内下部の回転方向上流側に落下し得るように構成したものであることを特徴とする廃石膏の加熱装置。
【請求項2】
上記スクリュー式供給部は、上記供給ホッパーからの廃石膏を上記円筒状回転体内に搬送するスクリューを備えた供給管と、上記回転体内で発生した水蒸気を上記石膏の搬送方向とは逆方向に排出する排出管と具備するものであり、さらに上記供給管と上記排出管とが伝熱面を介して熱交換し得るように構成したものであることを特徴とする請求項1記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項3】
上記排気手段から排気された水蒸気の熱を利用して熱媒体を加熱する熱交換手段を設け、上記スクリュー式供給部は、上記供給ホッパーからの廃石膏を上記円筒状回転体内に搬送するスクリューを備えた供給管と、上記熱媒体を上記石膏の搬送方向とは逆方向に排出する排出管と具備するものであり、さらに上記供給管と上記排出管とが伝熱面を介して熱交換し得るように構成したものであることを特徴とする請求項1記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項4】
上記排気手段から排気された水蒸気中の石膏粉塵を捕集する集塵部を設け、上記スクリュー式供給部は、上記供給ホッパーからの廃石膏を上記円筒状回転体内に搬送するスクリューを備えた供給管と、上記集塵部を通過した水蒸気を上記石膏の搬送方向とは逆方向に排出する排出管と具備するものであり、さらに上記供給管と上記排出管とが伝熱面を介して熱交換し得るように構成したものであることを特徴とする請求項1記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項5】
外気を円筒状回転体に給気するファンを設けると共に、
円筒状回転体における加熱脱水後の石膏の排出部に、加熱脱水後の石膏を上記給気で冷却すると共に給気を上記加熱脱水後の石膏により加熱する熱交換機構を設けたものであることを特徴とする請求項1又は4の何れかに記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項6】
上記円筒状回転体の回転方向上流側又は回転方向下流側の外周面位置の温度を測定し得る非接触型温度センサーを上記各高周波加熱部に対応して各々設け、
上記温度センサーで計測した回転体外周面温度に基づいて、上記高周波加熱部の出力と上記スクリュー式供給部による石膏供給量とを制御し得るように構成したものであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項7】
上記石膏攪拌用羽根は、横断面略L型を形成する接合板部と基板部とから構成し、さらに上記基板部の端縁に該基板部に対して接合板部の方向に所定角度を以って突設された突出板部を有しており、
上記石膏攪拌用羽根の両端部と上記円筒状回転体の左右閉止壁面との間に空間を設けたものであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項8】
上記円筒状回転体及び上記高周波加熱部を保温用筐体により覆う構成とし、
上記保温用筐体内部における上記高周波加熱部の上部近傍に仕切板を設け、上記保温用筐体の内部空間を高周波加熱部の設置空間と、上記円筒状回転体側の空間とに分割したものであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項9】
上記円筒状回転体の外側に厚さ9mm以下のセラミックファイバ製断熱シートを、耐熱テープ又は耐熱接着材で巻き着け固定し、上記シートにおける上記回転体外周の非接触型温度センサーの測定点を含む部分を切欠いたものであることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項10】
複数台の高周波加熱部の各高周波加熱コイルの上記円筒状回転体の軸方向の長さを、円筒状回転体の供給側のコイルより排出側のコイルの方が長くなるように構成したものであることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項11】
円筒状回転体の内部に傾斜板を設け、上記石膏攪拌用羽根から落下した石膏を傾斜板上面を移動させ高周波加熱部の設置位置より回転方向上流側に落下させる構造を有することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の廃石膏の加熱装置。
【請求項12】
上記円筒状回転体の端面側固定端の外側にバーナ燃焼部を取付けて、固定端から円筒状回転体内にバーナ放熱筒を固定し取付け、バーナによる熱風をバーナ放熱筒に流して石膏を間接加熱し、供給装置において燃焼ガスを石膏と熱交換して排気し、バーナ加熱を円筒状回転体の供給側の石膏の加熱に用いることを特徴とする請求項1記載の廃石膏の加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−132552(P2007−132552A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324061(P2005−324061)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(591095823)株式会社九電工 (17)
【出願人】(392024699)株式会社川島製作所 (6)
【出願人】(500311059)株式会社マシンプランニング (2)
【Fターム(参考)】