説明

建具

【課題】防犯性を高めつつ利便性や意匠性を向上させることができる建具を提供すること。
【解決手段】上枠3の屋内見付け部30に設けた施錠ユニットRUの規制部材43と扉10の係合ピン40とが係合して施錠されるので、この規制部材43と係合ピン40との係合位置に対し、屋外側から不正操作することができず、さらに係合位置が屋外側から判別できないことから、防犯性を格段に向上させることができる。さらに、係合位置を覆うような突片を扉10に設ける必要がなくなることから、玄関ドア1の意匠性を向上させることができるとともに、突片に物などが引っ掛かることがなくなって利便性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体に開閉自在に支持された扉体を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、玄関ドアなどの建具として、枠体に開閉自在に支持された扉体を備え、扉体が屋外側に開放されるものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された従来の建具では、枠体の縦枠と扉体の吊り元側端縁とを連結して扉体を支持する丁番の回動軸が扉体の室外面よりも室外側に設けられ、扉体が屋外側に向かって開放されるようになっている。そして、枠体の屋内よりの位置から見付け方向内側に突出した気密材保持部に気密材が取り付けられ、これらの気密材に扉体の屋内面を当接させて閉鎖されるようになっている。また、扉体の戸先側端縁部には開閉操作用のノブやハンドルと錠装置とが設けられ、戸先側の縦枠には錠受けが設けられ、錠装置のデッドボルトが見付け方向外側に突出して錠受けに挿入されることで施錠されるようになっている。そして、扉体の戸先側端縁部には、当該端縁部と縦枠との隙間を覆う突片が設けられ、屋外側から錠装置の位置に工具等が挿入できないように構成され、防犯性が高められている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−46919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の建具では、扉体の戸先側端縁部に設けた突片によって防犯性を高めることができるものの、この突片が破壊されてしまうと、扉体と縦枠との隙間から錠装置に工具が届いてしまい、防犯性の向上効果に限界がある。さらに、扉体から突出した突片が設けられることで、建具の意匠性が劣ってしまうとともに、出入りの際に突片に物などが引っ掛かるなどの不都合もある。
【0005】
本発明の目的は、防犯性を高めつつ利便性や意匠性を向上させることができる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、上枠および左右の縦枠を少なくとも有した枠体と、この枠体に開閉自在に支持される扉体とを備えた建具であって、前記扉体は、左右の縦辺のうちの一方の縦辺が前記縦枠の一方に回動自在に支持され、他方の縦辺が前記縦枠の他方に当接または近接して閉じるとともに、当該他方の縦辺が屋外側に向かって開放可能に構成されており、前記上枠および縦枠のうちのいずれかには、閉鎖状態の前記扉体の端縁に沿った見込み面部と、この見込み面部よりも見付け方向内側に延びるとともに前記扉体の屋内側に位置する屋内見付け部とが設けられ、前記屋内見付け部は、中空状に形成されて中空内部に前記扉体の一部と係合可能な錠装置が設けられるとともに、この錠装置と扉体との係合位置よりも見付け方向外側において、当該屋内見付け部の屋外側側面には、前記扉体の屋内側側面に当接可能な気密材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、上枠や縦枠の屋内見付け部に錠装置を設け、この錠装置と扉体の一部とを係合させることで施錠されるので、この錠装置と扉体との係合位置を上枠や縦枠の見込み面部と扉体の端縁との隙間から離すことができる。さらに、見込み面部よりも見付け方向内側に延びる屋内見付け部に錠装置を設けたことで、見込み面部と扉体の端縁との隙間を介して屋外側から係合位置に直線的に到達不能となり、係合位置に工具などが届かないようにできるとともに、屋外側からは錠装置の設置位置自体が判別できなくなることから、防犯性を格段に向上させることができる。また、従来の建具のように、錠装置と扉体との係合位置を覆うような突片を扉体に設ける必要がなくなることから、建具の意匠性を向上させることができるとともに、突片に物などが引っ掛かることもなくなって利便性を向上させることができる。さらに、上枠や縦枠の屋内見付け部において、錠装置と扉体との係合位置よりも見付け方向外側に気密材を設けたことで、つまり係合位置が気密材よりも屋内空間側に位置していることで、係合位置が屋外側から一層判別しにくくできるとともに、係合位置に対する埃などの付着も防止することができる。
【0008】
この際、本発明の建具では、前記屋内見付け部の屋外側側面には、前記錠装置と扉体との係合位置よりも見付け方向内側において、前記扉体の屋内側側面に当接可能または近接可能な見切り材が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、屋内見付け部の屋外側側面における錠装置と扉体との係合位置よりも見付け方向内側に見切り材を設けたことで、屋内側から係合位置を見切り材で隠蔽することができ、屋内側の意匠性も良好にすることができる。
【0009】
さらに、本発明の建具では、前記錠装置は、前記扉体の屋内側側面に設けた係合ピンと係合することで当該扉体を施錠するものであって、前記屋内見付け部の屋外側側面には、前記係合ピンを挿通させる挿通孔が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、扉体に設けた係合ピンを屋内見付け部の挿通孔に挿通して錠装置に係合させることで、扉体に取り付けられる部品としては係合ピンだけになるとともに、錠装置の一部を屋内見付け部から屋外側に突出させる必要もなくなることから、扉体を開放した際の扉体の外観や枠体の外観を良好にすることができる。さらに、屋内見付け部に設けた挿通孔が気密材よりも屋内空間側に位置することから、挿通孔が外気に曝されることがなく、挿通孔から屋内見付け部の内部に外気が流入することも防止できる。
【0010】
また、本発明の建具では、前記錠装置が設けられる屋内見付け部は、前記上枠および縦枠のうちの上枠に設けられており、前記左右の縦枠のうちの他方の縦枠には、前記錠装置の施錠および解錠を切り換える錠操作部が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、上枠の屋内見付け部に錠装置を設けたことで、この錠装置と扉体との係合位置に対して屋外側から不正操作しにくくでき、防犯性をさらに向上させることができる。また、錠装置と係合する部品が扉体の上部に設けられることから、この部品が目立たなくでき、扉体開放時の意匠性を向上させることができる。そして、錠装置を上枠に設けた場合でも錠操作部が他方(戸先側)の縦枠に設けられているので、施錠および解錠の操作が容易に実施でき、利便性を高めることができる。さらに、錠装置を上枠に設け、錠操作部を縦枠に設けたことで、従来のように扉体に操作部を含む錠装置を設けたものと比較して、扉体の屋外面、屋内面に取り付けられる部品が少なくでき、その外観をフラットにして意匠性が向上できる。
【0011】
さらに、本発明の建具では、前記扉体の一方の縦辺は、前記一方の縦枠に固定される第1支持部材と、この第1支持部材に第1回動軸を介して回動自在に連結される第2支持部材と、この第2支持部材に第2回動軸を介して回動自在に連結されて前記扉体の一方の縦辺に固定される第3支持部材とを有した支持装置を介して前記縦枠の一方に支持されており、前記支持装置の第2支持部材は、前記扉体の閉鎖状態において、当該扉体の一方の縦辺と前記一方の縦枠の見込み面との間に位置して設けられ、前記第2回動軸は、前記扉体の一方の縦辺における屋内側に位置して設けられ、前記扉体は、前記第2支持部材が前記一方の縦枠から他方の縦枠に向かうとともに屋外側に向かって回動し、この第2支持部材の回動によって前記第2回動軸が前記一方の縦枠よりも屋外側に突出する第1開放動作と、この突出した第2回動軸を中心として当該扉体が屋外側に回動する第2開放動作とによって開放され、前記錠装置は、前記一方の縦枠から他方の縦枠に向かう前記扉体の移動を規制する規制部材を有して構成されていることが好ましい。
【0012】
ここで、本発明の建具において、前記扉体は、前記開放動作と逆の閉鎖動作によって閉鎖され、具体的には、前記突出した第2回動軸を中心として当該扉体が屋内側に回動して当該扉体の他方の縦辺が前記他方の縦枠に近接する第1閉鎖動作と、前記支持装置の第2支持部材が屋内側に向かって回動するとともに前記他方の縦枠から一方の縦枠に向かって回動する第2閉鎖動作とによって閉鎖されるようになっている。
以上の構成によれば、扉体を開放する初期の動作において、第1開放動作によって第2支持部材が前記一方の縦枠から他方の縦枠に向って回動することで、この移動に伴って扉体も他方の縦枠に向かって移動することとなるが、錠装置の規制部材が扉体の他方の縦枠に向かう移動を規制することで、扉体が施錠されることとなる。従って、扉体と枠体の屋内見付け部とが互いに見込み方向に対向する閉鎖状態において、見込み方向と交差する方向(一方の縦枠から他方の縦枠に向かう方向)の移動を規制することで、扉体と錠装置の規制部材との係合に要する係合力が小さくても確実に施錠することができ、錠装置の構造が簡単化できるとともに小型化を図ることができる。
【0013】
この際、本発明の建具では、前記支持装置には、前記第1開放動作において前記第2支持部材を電動で回動させる電動駆動手段が連結されており、前記屋内見付け部には、前記電動駆動手段を駆動制御する制御手段が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、第1開放動作を電動駆動手段によって実施することで、利便性を向上させることができるとともに、錠装置が設置される屋内見付け部に制御手段も設けたことで、屋内見付け部の中空内部の空間を有効利用することができる。また、錠装置における施解錠の動作を電動で実施する場合などには、その制御を制御手段によって行うようにすれば、制御手段を統合して一貫したスムーズな制御が可能になり、扉体の開閉動作を安定させつつ円滑に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る建具である玄関ドア1を示す縦断面図である。図2は、玄関ドア1を示す横断面図である。図3は、玄関ドア1における扉10の開閉動作(第1開放動作および第2閉鎖動作)を示す横断面図である。図4は、玄関ドア1における扉10の開閉動作(第2開放動作および第1閉鎖動作)を示す横断面図である。
図1および図2において、玄関ドア1は、外壁開口部に固定される枠体2と、この枠体2に開閉自在に支持される扉(扉体)10とを備えて構成されている。枠体2は、上枠3、下枠4および左右の縦枠5,6を有して構成されている。
【0015】
扉10は、四周枠組みされた上枠材11、下枠材12および左右の縦枠材13,14と、これらの各枠材11,12,13,14の屋内外にそれぞれ固定された内外一対の金属製のパネル15,16と、屋内外のパネル15,16間に設けられた樹脂製の断熱材17とを備えて構成されている。また、左右の縦枠材13,14のうち、一方(図2の左側であり吊り元側)の縦枠材13には、当該縦枠材13に沿って上下に延びる吊元端縁部材18が固定され、他方(図2の右側であり戸先側)の縦枠材14には、当該縦枠材14に沿って上下に延びる戸先端縁部材19が固定されている。そして、縦枠材13および吊元端縁部材18によって扉10の一方の縦辺が構成され、縦枠材14および戸先端縁部材19によって扉10の他方の縦辺が構成されている。また、吊元端縁部材18には、樹脂製のカバー部材18Aが取り付けられ、戸先端縁部材19には、樹脂製のカバー部材19Aが取り付けられている。
【0016】
上枠3は、図1に示すように、略矩形中空断面を有して建物躯体に固定される上枠本体3Aと、この上枠本体3Aの屋内側に設けられる上枠屋内部材3Bと、これらの上枠本体3Aと上枠屋内部材3Bとを連結する上下2つの断熱部材3Cと、上枠本体3Aの上部屋外側に連結されて建物躯体に固定される上枠固定部材3Dと、上枠本体3Aの上部屋外側かつ上枠固定部材3Dの下側に取り付けられる上枠屋外部材3Eとを有して構成されている。さらに、上枠屋内部材3Bの屋内側側面には、上枠カバー部材3Fが取り付けられ、この上枠カバー部材3Fを上枠屋内部材3Bに取り付けることで中空状の屋内見付け部30が形成されている。そして、上枠屋内部材3Bの下部屋外面部33(後述)には、気密材3Gが取り付けられており、この気密材3Gが閉鎖状態における扉10のパネル15の上端縁屋内面に当接可能になっている。さらに、上枠屋内部材3Bの下部屋外面部33下端部には、屋外側に突出した軟質樹脂製の見切り材3Hが取り付けられ、この見切り材3Hが閉鎖状態における扉10のパネル15に近接して位置するようになっている。また、上枠本体3Aの中空内部には、扉10の開閉速度を抑制するとともに扉10を閉鎖方向に付勢する閉鎖装置50(図6〜図8参照)の装置本体51が設けられ、装置本体51と扉10の上枠材11に設けたスライダ53とがアーム52を介して連結されている。また、下枠4には、扉10のパネル15の下端縁屋内面に当接可能な気密材4Gが取り付けられている。
【0017】
次に、一方の縦枠である縦枠5は、図2に示すように、略矩形中空断面を有して建物躯体に固定される縦枠本体5Aと、この縦枠本体5Aとともに建物躯体に固定される縦枠固定部材5Bと、縦枠本体5Aおよび縦枠固定部材5Bの屋内側に設けられる縦枠屋内部材5Cと、縦枠本体5Aおよび縦枠固定部材5Bと縦枠屋内部材5Cとを連結する2つの断熱部材5Dとを有して構成されている。さらに、縦枠本体5Aは、その屋外側位置にて見付け方向内側に延びる見付け片部5Eと、この見付け片部5Eの屋外側に取り付けられる縦枠屋外部材5Fとを有して構成されている。また、縦枠屋内部材5Cの先端部屋外側には、気密材5Gが取り付けられており、この気密材5Gが閉鎖状態における扉10のパネル15の吊り元側端縁屋内面に当接可能になっている。さらに、縦枠本体5Aの見付け片部5E先端部には、屋内側に突出した軟質樹脂製の見切り材5Hが取り付けられ、この見切り材5Hが閉鎖状態における扉10のパネル16に近接して位置するようになっている。また、縦枠本体5Aと縦枠屋内部材5Cとで囲まれた内部には、後述する支持装置20と、この支持装置20の第2支持部材23を駆動して扉10を開閉動作させる電動駆動手段としての電動駆動ユニットDU(図5および図7参照)とが設けられている。この電動駆動ユニットDUは、前記上枠3に設けた扉開閉制御ユニットCUからの指令を受けて作動するものであって、支持装置20の第2支持部材23を回転駆動するモータ等を有して構成されている。
【0018】
次に、他方の縦枠である縦枠6は、前記縦枠本体5Aよりも見付け寸法が大きな略矩形中空断面を有して建物躯体に固定される縦枠本体6Aと、この縦枠本体6Aとともに建物躯体に固定される縦枠固定部材6Bと、縦枠本体6Aおよび縦枠固定部材6Bの屋内側に設けられる縦枠屋内部材6Cと、縦枠本体6Aおよび縦枠固定部材6Bと縦枠屋内部材6Cとを連結する3つの断熱部材6Dとを有して構成されている。さらに、縦枠本体6Aは、その屋外側位置にて見付け方向内側に延びる見付け片部6Eと、この見付け片部6Eの屋外側に取り付けられる前記縦枠屋外部材5Fと同様の縦枠屋外部材6Fとを有して構成されている。また、縦枠屋内部材6Cの先端部屋外側には、気密材6Gが取り付けられており、この気密材6Gが閉鎖状態における扉10のパネル15の戸先側端縁屋内面に当接可能になっている。さらに、縦枠本体6Aの見付け片部6E先端部には、屋内側に突出した軟質樹脂製の見切り材6Hが取り付けられ、この見切り材6Hが閉鎖状態における扉10のパネル16に近接して位置するようになっている。また、縦枠本体6A内部と縦枠屋内部材6C内部とを連通した中空空間内部には、施錠ユニットRUや電動駆動ユニットDUを操作するための錠操作部としての操作ユニットOUが設けられている。この操作ユニットOUは、屋外側または屋内側から押しボタンを押し込んだり、あるいは非接触型カードをかざしたりすることで、施錠ユニットRUの施解錠を切り換え操作したり、電動駆動ユニットDUによる扉10の開閉駆動を操作したりなどができるようになっている。
【0019】
次に、扉10は、一方の縦枠である縦枠5に支持装置20を介して支持され、屋外側に開放されるようになっている。支持装置20は、一方の縦枠5に固定される第1支持部材21と、この第1支持部材21に第1回動軸22を介して回動自在に連結される第2支持部材23と、この第2支持部材23に第2回動軸24を介して回動自在に連結される第3支持部材25とを有して構成されている。そして、第3支持部材25が扉10の一方の縦枠材13および吊元端縁部材18に固定されている。この支持装置20において、第1支持部材21は、縦枠5における縦枠本体5Aの見込み面に固定されて見付け片部5Eの内側に沿って延び、この先端に設けられた第1回動軸22を中心にして第2支持部材23が回動自在に支持されている。そして、第2支持部材23は、平面略U字形に曲がった形態を有するとともに、扉10閉鎖状態において、吊元端縁部材18と縦枠本体5Aとの間に位置して設けられ、その先端の第2回動軸24は、扉10の吊元端縁部材18における屋内側に位置して設けられている。
【0020】
以上のような支持装置20に支持された扉10は、閉鎖状態において、図2および図3の仮想線(二点鎖線)で示すように、縦枠5,6の見付け片部5E,6Eよりも屋内側に位置するとともに、扉10の左右側端縁が見付け片部5E,6E先端と見込み方向に重なった状態となっている。この際、縦枠5,6に設けた見切り材5H,6Hの先端がパネル16に近接することで、扉10の左右側端縁が屋外側から見えないとともに、扉10と縦枠本体5A,6Aとの間の空間も屋外側から見えないようになっている。さらに、閉鎖状態において扉10の屋内側のパネル15は、上枠3の気密材3G、下枠4の気密材4Gおよび左右の縦枠5,6の気密材5G,6Gに当接することで、玄関ドア1の気密性、水密性が確保されるようになっている。また、上枠3の見切り材3Hの先端が屋内側のパネル15上端部に近接することで、扉10と上枠屋内部材3Bとの隙間が屋内側から見えないようになっている。
【0021】
次に、操作ユニットOUの操作に基づき扉開閉制御ユニットCUからの駆動指令を受けた電動駆動ユニットDUの駆動によって、図3の実線で示すように、支持装置20の第2支持部材23が回動され、第2回動軸24が縦枠5よりも屋外側に移動されることで、扉10の吊り元側の側端縁が縦枠5よりも屋外側に突出した位置に移動される(第1開放動作)。この第1開放動作では、支持装置20の第2支持部材23が図3における反時計回りに回動し、すなわち、第2支持部材23が一方の縦枠5から他方の縦枠6に向かいつつ屋外側に向かって回動することで、扉10は、先ず他方の縦枠6に向かって押されて移動し、次に吊り元側の側端縁が屋外側に突出しつつ一方の縦枠5側に戻るように動作することとなる。そして、第1開放動作によって、支持装置20の第2支持部材23は、縦枠5の見付け片部5Eの先端部を囲むように位置し、扉10の一方の側端縁は、見付け片部5Eの屋外側に重なって位置するとともに、扉10の戸先側の側端縁は、見付け片部6Eよりも屋内側でかつ見付け片部6Eの先端よりも見付け方向内側に離れて位置することになる。
【0022】
次に、図4に示すように、縦枠5よりも屋外側に移動された支持装置20の第2回動軸24を中心として、扉10が屋外側に回動される(第2開放動作)。この第2開放動作では、電動駆動ユニットDUによって支持装置20の第2支持部材23の回動がロックされ、第2回動軸24が移動しないようになっており、扉10のハンドルを利用者が屋内側から押したり屋外側から引いたりなどの手動によって、扉10が屋外側に開放できるようになっている。そして、第2開放動作によって全開位置まで開放された扉10は、前記閉鎖装置50のアーム52がロックされることで全開位置に保持できるようになっている。
一方、扉10の閉鎖動作としては、縦枠5よりも屋外側に移動された第2回動軸24を中心として、手動により扉10が屋内側に回動して扉10の戸先側の側端縁が縦枠6の見付け片部6Eよりも屋内側まで移動する(第1閉鎖動作)。この第1閉鎖動作に続いて、操作ユニットOUの操作に基づき扉開閉制御ユニットCUからの駆動指令を受けた電動駆動ユニットDUの駆動によって、図3に示すように、支持装置20の第2支持部材23が時計回りに回動され、これにより扉10の吊り元側の側端縁が屋内側に回動し、扉10の左右側端縁が縦枠5,6の見付け片部5E,6Eよりも屋内側で見込み方向に重なる閉鎖状態まで移動する(第2閉鎖動作)。以上の第1閉鎖動作および第2閉鎖動作によって扉10が閉鎖されるようになっている。
【0023】
次に、上枠3の構造および扉10の施錠構造について、図5〜図8も参照して説明する。ここで、図5は、上枠3を屋内側から見た正面図である。図6は、上枠3を拡大して示す縦断面図である。図7は、扉10を開放した状態を屋外側から見た斜視図である。図8は、扉10を開放した状態を上方から見た平面図である。
上枠3における屋内見付け部30の内部には、図5に示すように、錠装置としての施錠ユニットRU、認証ユニットAU、制御手段としての扉開閉制御ユニットCUが設けられ、一方の縦枠5の上部には、電動駆動ユニットDUが設けられている。施錠ユニットRUは、操作ユニットOUの操作によって扉開閉制御ユニットCUから出力される指令に基づき解錠動作するとともに、扉10が閉鎖された際に自動的に施錠するように構成されている。また、認証ユニットAUは、操作ユニットOUに設けた指紋読み取り装置やカード読み取り装置などからの信号を受け、この信号を解析して解錠の可否を認証し、認証結果の信号を扉開閉制御ユニットCUに送信するものである。
【0024】
上枠3の上枠屋内部材3Bは、図6に示すように、屋内側に開口した断面略コ字形に形成され、上面部31と、上下の断熱部材3C間に位置する上部屋外面部32と、この上部屋外面部32の下方に連続して上枠本体3Aの底面で構成される見込み面部39よりも下方(見付け方向内側)に延びる下部屋外面部33と、下部屋外面部33の下端縁から屋内側に延びる上枠底面部34とを有して形成されている。そして、上枠カバー部材3Fは、上面部31の屋内側端部に係止されるとともに、上枠底面部34の屋内側端部にビス止め固定されて、上枠屋内部材3Bに取り付けられている。また、前記気密材3Gは、下部屋外面部33の上部に取り付けられ、見切り材3Hは、下部屋外面部33の下端部に取り付けられるとともに、これらの気密材3Gと見切り材3Hとの間において施錠ユニットRUの前方位置には、扉10の係合ピン40を挿通させる挿通孔35が形成されている。
【0025】
また、図6〜図8に示すように、扉10の上部における屋内側側面には、施錠ユニットRUに係合される係合ピン40が固定されている。この係合ピン40は、扉10の上枠材11に固定されるベース41と、このベース41から屋内側に突出する突出ピン42とを有して構成されている。一方、施錠ユニットRUには、挿通孔35の内部側に位置する規制部材43が設けられ、扉10を閉鎖した際に挿通孔35から挿通された突出ピン42が規制部材43に係合することで、扉10が移動不能に施錠されるようになっている。ここで、挿通孔35は、左右に長尺に形成され、つまり前述のように第1開放動作時の扉10が一方の縦枠5から他方の縦枠6に向かって移動する際、および第2閉鎖動作時に他方から一方に移動する際に、係合ピン40が左右に移動する距離に応じた長さ寸法を有して形成されている。
【0026】
そして、扉10の第2閉鎖動作時において、係合ピン40の突出ピン42は、挿通孔35の他方の縦枠6側に挿通されてから一方の縦枠5に向かって移動し、施錠ユニットRUの規制部材43は、一方側に移動する突出ピン42を受け止めつつ係合し、係合ピン40つまり扉10の他方側への移動を規制するように構成されている。また、規制部材43は、操作ユニットOUの操作に基づき扉開閉制御ユニットCUからの駆動指令を受けた施錠ユニットRUに駆動されて回動し、これにより規制部材43と突出ピン42との係合が外れ、扉10の移動規制が解除されるようになっている。また、施錠ユニットRUには、図7に示すように、非常開放部44が設けられており、図示しない操作ユニットOU内部の非常開放操作部を操作することで、非常開放部44の突出しアームが扉10を屋外側に押し出し、これにより電動駆動ユニットDUが動作不能になった場合であっても、扉10が開放できるようになっている。
【0027】
一方、閉鎖装置50は、図6および図8に示すように、上枠3の上枠本体3A内部に設けられる装置本体51と、この装置本体51から下方に突出する回動軸に一端が連結されたアーム52と、このアーム52の他端に連結されたスライダ53と、扉10の上枠材11に設けられてスライダ53をスライド自在に案内するレール54とを有して構成されている。装置本体51は、その内部にばねとオイルダンパーあるいはエアダンパーとを備え、回動軸を介してアーム52を付勢することで扉10を閉鎖方向に引き寄せるとともに、回動軸の回転に伴うダンパーの減衰力によって扉10の開閉速度を減速させるものである。また、レール54が設けられる上枠材11は、図6に示すように、上方に開口した断面略コ字形に形成され、屋内外の立上片11A,11Bと底面部11Cとを有して構成されている。この上枠材11における屋内側の立上片11Aは、屋外側の立上片11Bよりも上端位置が低く形成され、扉10開閉時のアーム52が屋内側の立上片11Aの上方を通過できるように構成されている。そして、扉10の閉鎖状態においては、屋外側の立上片11Bによってアーム52が覆われて、屋外側から閉鎖装置50が見えないようになっている。
【0028】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、上枠3の屋内見付け部30に施錠ユニットRUが設けられ、この施錠ユニットRUの規制部材43と扉10の係合ピン40とが係合することで施錠されるので、この規制部材43と係合ピン40との係合位置に対し、屋外側から上枠3の見込み面部39と扉10の上端縁との隙間を介して直線的に到達できない。さらに、施錠ユニットRUの規制部材43と扉10の係合ピン40との係合位置が、屋外側から判別できないことも併せて、係合位置を屋外側から不正操作できないようにでき、防犯性を格段に向上させることができる。
【0029】
(2)さらに、施錠ユニットRUの規制部材43と扉10の係合ピン40との係合位置が屋外側から見えないことで、従来の建具のように、係合位置を覆うような突片を扉10に設ける必要がなくなることから、玄関ドア1の意匠性を向上させることができるとともに、突片に物などが引っ掛かることがなくなって利便性を向上させることができる。また、施錠ユニットRUの他に認証ユニットAUや扉開閉制御ユニットCUも屋内見付け部30に内蔵したことで、屋内見付け部30の中空内部空間を有効利用することができる。
【0030】
(3)また、規制部材43と係合ピン40との係合位置よりも上側に気密材3Gが設けられ、係合位置が気密材3Gよりも屋内空間側に位置していることで、この係合位置が屋外側から一層判別しにくくできるとともに、係合位置に対する埃などの付着も防止することができる。そして、上枠3の屋内見付け部30に設けた挿通孔35が気密材3Gよりも屋内空間側に位置することから、挿通孔35から屋内見付け部30の内部への外気の流入が防止できる。また、屋内見付け部30の下端部に見切り材3Hが設けられているので、屋内側から係合ピン40が見えないようにでき、屋内側の意匠性も良好にすることができる。
【0031】
(4)また、施錠ユニットRUの規制部材43によって係合ピン40および扉10の移動を規制して施錠する際に、他方の縦枠6側(扉10の開放方向と交差する方向)への扉10の移動が規制されることで、係合ピン40と規制部材43との係合に要する係合力が小さくても確実に施錠することができ、施錠ユニットRUの構造が簡単化できるとともに小型化を図ることができる。そして、扉10の開放方向への移動を規制する施錠構造ではないため、屋外側から扉10のハンドルを引っ張って無理に開こうとするような不正操作が行われたとしても、その力が施錠ユニットRUの規制部材43にかかることがなく、施錠ユニットRUの破損を防止することができ、この点でも防犯性を向上させることができる。
【0032】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、玄関ドア1を例示して説明したが、本発明の建具としては、玄関ドア1に限らず、扉体が回動開閉可能に設けられた建具であればよく、例えば、任意の窓や出入り口、屋内に設けられる可動間仕切りなどであってもよい。
また、前記実施形態では、扉10の第1開放動作および第2閉鎖動作が電動駆動ユニットにより実施される半自動(電動)の玄関ドア1について説明したが、本発明の建具としては、手動操作のみによって扉体が開閉されるものであってもよく、また全自動(電動)で扉体が開閉されるものであってもよい。
【0033】
また、前記実施形態では、縦枠5,6に見付け片部5E,6Eを設け、これらの見付け片部5E,6Eの屋内側に閉鎖状態の扉10の側端縁が隠蔽される構成を採用したが、縦枠5,6の見付け片部5E,6Eは必須ではなく、省略することができる。
さらに、前記実施形態では、上枠3の屋内見付け部30に設けた施錠ユニットRUによって扉10の施錠、解錠を切り換えるとともに、縦枠6に設けた操作ユニットOUによって施錠ユニットRUを操作する構成としたが、本発明の建具における錠装置は、上枠に限らず、縦枠に設けられていてもよい。また、錠装置やその操作手段の構成は、前記実施形態のものに限定されず、一般的な玄関ドアに用いられるデッドボルトおよびボルト受けを有した構成であってもよい。
【0034】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す縦断面図である。
【図2】前記建具を示す横断面図である。
【図3】前記建具における扉体の開閉動作を示す横断面図である。
【図4】前記扉体の開閉動作を示す横断面図である。
【図5】前記建具における上枠を屋内側から見た正面図である。
【図6】前記上枠を拡大して示す縦断面図である。
【図7】前記扉体を開放した状態を屋外側から見た斜視図である。
【図8】前記扉体を開放した状態を上方から見た平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…玄関ドア(建具)、2…枠体、3…上枠、3G…気密材、3H…見切り材、5,6…縦枠、10…扉(扉体)、20…支持装置、21…第1支持部材、22…第1回動軸、23…第2支持部材、24…第2回動軸、25…第3支持部材、30…屋内見付け部、35…挿通孔、40…係合ピン、43…規制部材、CU…扉開閉制御ユニット(制御手段)、DU…電動駆動ユニット(電動駆動手段)、OU…操作ユニット(錠操作部)、RU…施錠ユニット(錠装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠および左右の縦枠を少なくとも有した枠体と、この枠体に開閉自在に支持される扉体とを備えた建具であって、
前記扉体は、左右の縦辺のうちの一方の縦辺が前記縦枠の一方に回動自在に支持され、他方の縦辺が前記縦枠の他方に当接または近接して閉じるとともに、当該他方の縦辺が屋外側に向かって開放可能に構成されており、
前記上枠および縦枠のうちのいずれかには、閉鎖状態の前記扉体の端縁に沿った見込み面部と、この見込み面部よりも見付け方向内側に延びるとともに前記扉体の屋内側に位置する屋内見付け部とが設けられ、
前記屋内見付け部は、中空状に形成されて中空内部に前記扉体の一部と係合可能な錠装置が設けられるとともに、この錠装置と扉体との係合位置よりも見付け方向外側において、当該屋内見付け部の屋外側側面には、前記扉体の屋内側側面に当接可能な気密材が設けられている建具。
【請求項2】
前記屋内見付け部の屋外側側面には、前記錠装置と扉体との係合位置よりも見付け方向内側において、前記扉体の屋内側側面に当接可能または近接可能な見切り材が設けられている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記錠装置は、前記扉体の屋内側側面に設けた係合ピンと係合することで当該扉体を施錠するものであって、前記屋内見付け部の屋外側側面には、前記係合ピンを挿通させる挿通孔が設けられている請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記錠装置が設けられる屋内見付け部は、前記上枠および縦枠のうちの上枠に設けられており、前記左右の縦枠のうちの他方の縦枠には、前記錠装置の施錠および解錠を切り換える錠操作部が設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の建具。
【請求項5】
前記扉体の一方の縦辺は、前記一方の縦枠に固定される第1支持部材と、この第1支持部材に第1回動軸を介して回動自在に連結される第2支持部材と、この第2支持部材に第2回動軸を介して回動自在に連結されて前記扉体の一方の縦辺に固定される第3支持部材とを有した支持装置を介して前記縦枠の一方に支持されており、
前記支持装置の第2支持部材は、前記扉体の閉鎖状態において、当該扉体の一方の縦辺と前記一方の縦枠の見込み面との間に位置して設けられ、前記第2回動軸は、前記扉体の一方の縦辺における屋内側に位置して設けられ、
前記扉体は、前記第2支持部材が前記一方の縦枠から他方の縦枠に向かうとともに屋外側に向かって回動し、この第2支持部材の回動によって前記第2回動軸が前記一方の縦枠よりも屋外側に突出する第1開放動作と、この突出した第2回動軸を中心として当該扉体が屋外側に回動する第2開放動作とによって開放され、
前記錠装置は、前記一方の縦枠から他方の縦枠に向かう前記扉体の移動を規制する規制部材を有して構成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の建具。
【請求項6】
前記支持装置には、前記第1開放動作において前記第2支持部材を電動で回動させる電動駆動手段が連結されており、
前記屋内見付け部には、前記電動駆動手段を駆動制御する制御手段が設けられている請求項5に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−243124(P2009−243124A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90181(P2008−90181)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】