説明

建物の基礎

【課題】建物の基礎を経済的に施工できるようにし、かつ、地震時に前記建物が揺れやすくならないようにすること。
【解決手段】建物の基礎は、第1杭と、該第1杭から第1方向に間隔を置かれた第2杭と、前記第1杭の上及び前記第2杭の上にそれぞれ設けられた第1フーチング及び第2フーチングと、前記第1フーチングと前記第2フーチングとの間に設けられた基礎梁とを含み、前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分は、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、前記第1フーチングが前記第1方向と直交する第2方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の基礎には、地盤に設けられた第1杭と、該第1杭から第1方向に間隔を置いて設けられた第2杭と、前記第1杭から前記第1方向と直交する第2方向に間隔を置いて設けられた第3杭と、前記第1杭の上、前記第2杭の上及び前記第3杭の上にそれぞれ設けられた第1フーチング、第2フーチング及び第3フーチングと、前記第1フーチングと前記第2フーチングとの間に設けられた第1基礎梁と、前記第1フーチングと前記第3フーチングとの間に設けられた第2基礎梁とを含むものがある。
【0003】
前記第1杭は、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが上下方向に伸びる複数の主筋とを有する。各主筋は、前記本体から上方へ伸び、上端部が前記第1フーチングの内部に位置する(特許文献1参照)。このため、前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度(回転剛性)が非常に大きく、前記第1基礎梁及び前記第2基礎梁のそれぞれは前記第1フーチングを介して前記第1杭に剛接合されている。これにより地震時に前記建物が揺れにくい。
【特許文献1】特開平09−242067号公報
【0004】
前記第1フーチングは地震時に前記第1方向の外力及び前記第2方向の外力を受ける。前記第1基礎梁が前記第1フーチングを介して前記第1杭に剛接合されているため、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けることにより、前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分及び前記第1フーチングと前記第1基礎梁との境界部分に比較的大きい曲げモーメントが生じる。また、前記第2基礎梁が前記第1フーチングを介して前記第1杭に剛接合されているため、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けることにより、前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分及び前記第1フーチングと前記第2基礎梁との境界部分に比較的大きい曲げモーメントが生じる。このように前記第1フーチングと前記第1基礎梁との境界部分及び前記第1フーチングと前記第2基礎梁との境界部分の双方に比較的大きい曲げモーメントが生じるため、前記第1基礎梁及び前記第2基礎梁に大きい曲げモーメントを負担させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記第2基礎梁の上に壁が設けられており、前記第1基礎梁の上に壁が設けられていないことがある。この場合、前記第2基礎梁は前記壁により補強されており、前記壁により補強された前記第2基礎梁は、前記第1基礎梁と比べて、曲げ強度が大きい。このため、前記第2基礎梁は、その断面積が小さくても、前記第1フーチングと前記第2基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントを負担することができるが、前記第1基礎梁は、その断面積が小さいと、前記第1フーチングと前記第1基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントを負担することができない。このため、前記第1基礎梁に前記曲げモーメントを負担させるために前記第1基礎梁の断面積を大きくしなければならず、前記第1基礎梁の施工に多くの費用を要し、前記基礎を経済的に施工することができない。
【0006】
従来の他の基礎には、各主筋が前記本体から上方へ伸びておらず、該主筋の上端部が前記本体の内部に位置するものがある。前記他の基礎では、前記主筋の内方に、それぞれが前記本体から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の接合部材が配置されている(特許文献2参照)。前記接合部材が前記主筋の内方に配置されているため、前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度は比較的小さく、前記第1フーチングは半固定の状態で前記第1杭に接合されている。
【特許文献2】特開2006−257710号公報
【0007】
このため、前記第1方向の外力により前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分及び前記第1フーチングと前記第1基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さく、また、前記第2方向の外力により前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分及び前記第1フーチングと前記第2基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さい。これにより、前記第1杭、前記第1フーチング、前記第1基礎梁及び前記第2基礎梁のそれぞれは、その断面積が小さくても、前記曲げモーメントを負担することができ、これらの施工費を低減することができる。
【0008】
しかし、前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度が比較的小さいため、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けることにより、前記第1杭と前記第1基礎梁とがなす角度が変化しやすく、また、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けることにより、前記第1杭と前記第2基礎梁とがなす角度が変化しやすい、すなわち前記第1基礎梁及び前記第2基礎梁のそれぞれが前記第1杭に対して回転しやすい。このため、地震時に前記建物が揺れやすくなる。
【0009】
本発明の目的は、前記基礎を経済的に施工できるようにし、かつ、地震時に前記建物が揺れやすくならないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分における、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が比較的小さく、前記第2方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が比較的大きい。これにより、前記第1杭、前記第1フーチング及び前記第1基礎梁が負担する曲げモーメントを小さくして、これらを大型化することなく前記基礎を経済的に施工できるようにするとともに、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けた場合における前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度を大きくして、地震時に前記建物が揺れやすくなるのを防止する。
【0011】
本発明に係る建物の基礎は、地盤に設けられた第1杭と、該第1杭から第1方向に間隔を置いて設けられた第2杭と、前記第1杭から前記第1方向と直交する第2方向に間隔を置いて設けられた第3杭と、前記第1杭の上に設けられた第1フーチングと、前記第2杭の上に設けられた第2フーチングと、前記第3杭の上に設けられた第3フーチングと、前記第1フーチングと前記第2フーチングとの間に設けられた第1基礎梁と、前記第1フーチングと前記第3フーチングとの間に設けられた第2基礎梁とを含み、前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分は、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。
【0012】
前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分が、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して比較的小さい曲げ剛性を有するため、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けたときに、前記境界部分が曲げ変形しやすく、前記第1杭と前記第1基礎梁とがなす角度が変化しやすい。すなわち、前記第1フーチングは前記第1杭に完全には拘束されておらず、前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度は比較的小さい。このように前記第1フーチングは半固定の状態で前記第1杭に接合されている。このため、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けたときに前記境界部分及び前記第1フーチングと前記第1基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さく、前記第1杭、前記第1フーチング及び前記第1基礎梁の断面積が比較的小さくてもこれらに前記曲げモーメントを負担させることができる。これにより、前記第1杭、前記第1フーチング及び前記第1基礎梁を大型化することなく前記基礎を経済的に施工することができる。
【0013】
前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分が、前記第2方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して比較的大きい曲げ剛性を有するため、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けたときに、前記境界部分が曲げ変形しにくく、前記第1杭と前記第2基礎梁とがなす角度が変化しにくい。すなわち、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けた場合における、前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度は比較的大きい。このため、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けたときに前記境界部分及び前記第1フーチングと前記第2基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントは比較的大きく、前記第2基礎梁に大きい曲げモーメントを負担させることができる。前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けた場合における前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度が比較的大きいため、地震時に前記建物が揺れやすくなることはない。
【0014】
ところで、前記第2基礎梁の曲げ強度が比較的大きく、前記第1基礎梁の曲げ強度が比較的小さいことがある。この場合、前記第2基礎梁は、曲げ強度が比較的大きいため、その断面積を大きくすることなく大きい曲げモーメントを負担することができる。また、前記第1フーチングと前記第1基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントが比較的小さいため、前記第1基礎梁は、曲げ強度が比較的小さくても、その断面積を大きくすることなく前記曲げモーメントを負担することができる。前記第1方向の外力の大きさと前記第2方向の外力の大きさとが同じであっても、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けた場合における前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度と、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けた場合における前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度とが異なるため、前記第1フーチングと前記第1基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントと、前記第1フーチングと前記第2基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントとを異なるものにすることができる。このため、前記第1基礎梁及び前記第2基礎梁の曲げ強度に応じて、前記第1基礎梁及び前記第2基礎梁のそれぞれに異なる大きさの曲げモーメントを負担させることができ、前記第1基礎梁及び前記第2基礎梁のいずれも大型化することを要しない。
【0015】
前記第1杭は、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが上下方向に伸びる複数の主筋とを有し、該主筋は、前記本体の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋とを含み、各第1主筋は、上端部が前記本体の内部に位置し、各第2主筋は、前記本体から上方へ伸び、上端部が前記第1フーチングの内部に位置する。
【0016】
前記第1杭は、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが前記本体から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の主筋とを有し、該主筋は、前記本体の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋とを含み、前記第1主筋の径は前記第2主筋の径より小さい。
【0017】
前記第1杭は、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが前記本体から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の主筋とを有し、該主筋は、前記本体の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋とを含み、前記第1主筋における前記第1フーチングの内部に位置する部分の長さは前記第2主筋における前記第1フーチングの内部に位置する部分の長さより短い。
【0018】
前記第1杭は、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが前記本体から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の主筋とを有し、該主筋は、前記本体の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋とを含み、互いに隣接する2つの第1主筋の間の間隔は、互いに隣接する2つの第2主筋の間の間隔より長い。
【0019】
前記本体の各第1領域と前記第1フーチングとの間に絶縁材が配置されている。前記絶縁材は、前記第1フーチングが前記第1領域に接触するのを妨げ、前記第1フーチングが前記第1領域に付着するのを防止する。これにより、前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分における、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性をさらに低減させることができ、前記曲げモーメントをより小さくすることができる。
【0020】
前記本体の上端部における各第2領域に、前記周方向に間隔を置かれた複数の補強鉄筋が配置されていてもよい。各補強鉄筋は前記上端部から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる。
【0021】
前記第1杭は、コンクリートからなる円筒状の本体と、該本体の上端部に固定され、前記本体の断面形状と等しい環状の平面形状を有する端板と、該端板の前記第1方向における相対する2つの第1領域及び前記第2方向における相対する2つの第2領域のうち各第2領域のみに前記端板の周方向に間隔を置いて取り付けられ、それぞれが前記端板から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の棒状部材とを含む。
【0022】
前記第1杭は、コンクリートからなる円筒状の本体と、該本体の上端部に固定され、前記本体の断面形状と等しい環状の平面形状を有する端板と、該端板の周方向に間隔を置いて取り付けられ、それぞれが前記端板から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の棒状部材とを含み、該棒状部材は、前記端板の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1棒状部材と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2棒状部材とを含み、前記第1棒状部材の径は前記第2棒状部材の径より小さい。
【0023】
前記第1杭は、コンクリートからなる円筒状の本体と、該本体の上端部に固定され、前記本体の断面形状と等しい環状の平面形状を有する端板と、該端板の周方向に間隔を置いて取り付けられ、それぞれが前記端板から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の棒状部材とを含み、該棒状部材は、前記端板の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1棒状部材と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2棒状部材とを含み、前記第1棒状部材の長さは前記第2棒状部材の長さより短い。
【0024】
前記第1杭は、コンクリートからなる円筒状の本体と、該本体の上端部に固定され、前記本体の断面形状と等しい環状の平面形状を有する端板と、該端板の周方向に間隔を置いて取り付けられ、それぞれが前記端板から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の棒状部材とを含み、該棒状部材は、前記端板の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1棒状部材と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2棒状部材とを含み、互いに隣接する2つの第1棒状部材の間の間隔は、互いに隣接する2つの第2棒状部材の間の間隔より長い。
【0025】
前記端板の各第1領域と前記第1フーチングとの間に絶縁材が配置されている。
前記絶縁材は、前記第1フーチングと前記第1領域との接触を妨げ、前記第1フーチングと前記第1領域との付着を防止する。これにより、前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分における、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性をさらに低減させることができ、前記曲げモーメントをより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分が、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して比較的小さい曲げ剛性を有するため、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けたときに前記境界部分が曲げ変形しやすく、前記第1杭と前記第1基礎梁とがなす角度が変化しやすい。すなわち、前記第1フーチングは前記第1杭に完全に拘束されることがなく、前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度は比較的小さい。このため、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けたときに前記境界部分及び前記第1フーチングと前記第1基礎梁との境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さく、前記第1杭、前記第1フーチング及び前記第1基礎梁の断面積が比較的小さくてもこれらに前記曲げモーメントを負担させることができる。これにより、前記第1杭、前記第1フーチング及び前記第1基礎梁を大型化することなく前記基礎を経済的に施工することができる。
【0027】
また、前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分が、前記第2方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して比較的大きい曲げ剛性を有するため、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けたときに前記境界部分が曲げ変形しにくく、前記第1杭と前記第2基礎梁とがなす角度が変化しにくい。すなわち、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けた場合における前記第1フーチングの前記第1杭に対する固定度は比較的大きい。このため、地震時に前記建物が揺れやすくなるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1、2に示すように、地盤10に建物の基礎12が構築されている。基礎12は、地盤10に設けられた第1杭14aと、該第1杭から第1方向(図1における左右方向)に間隔を置いて設けられた第2杭14bと、第1杭14aから前記第1方向と直交する第2方向(図1における上下方向)に間隔を置いて設けられた第3杭14cと、第1杭14aの上に設けられた第1フーチング16aと、第2杭14bの上に設けられた第2フーチング16bと、第3杭14cの上に設けられた第3フーチング16cとを含む。図1に示した例では、第3杭14cが前記第2方向における第1杭14aの両側に設けられているが、これに代え、第3杭14cが第1杭14aの片側にのみ設けられていてもよい。
【0029】
基礎12は、第1フーチング16aと第2フーチング16bとの間に設けられた第1基礎梁18aと、第1フーチング16aと第3フーチング16cとの間に設けられた第2基礎梁18bとを含む。第1フーチング16a、第2フーチング16b及び第3フーチング16cのそれぞれの上に柱20が設けられている。第1フーチング16a、第2フーチング16b、第3フーチング16c、第1基礎梁18a及び第2基礎梁18bのそれぞれは鉄筋コンクリートからなる。
【0030】
図3、4に示すように、第1杭14aは、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体22と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが上下方向に伸びる複数の主筋24、26と、それぞれが該主筋を取り巻く、上下方向に間隔を置かれた複数のフープ筋28とを有する。第1杭14aは場所打ちコンクリート杭からなる。
【0031】
主筋24、26は、本体22の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋24と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋26とを含む。図2に示したように、各第1主筋24は、上端部が本体22の内部に位置し、各第2主筋26は、本体22から上方へ伸び、上端部が第1フーチング16aの内部に位置する。
【0032】
前記第1領域に位置する第1主筋24が本体22から第1フーチング16aの内部へ伸びていないため、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分は、第1フーチング16aが前記第1方向の外力を受けることにより前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して効果的に抵抗することがなく、前記曲げモーメントに対する曲げ剛性が比較的小さい。これに対して、前記第2領域に位置する第2主筋26が本体22から第1フーチング16aの内部へ伸びているため、前記境界部分は、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けることにより前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して効果的に抵抗し、前記曲げモーメントに対する曲げ剛性が比較的大きい。このように、前記境界部分は、第1フーチング16aが前記第1方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。
【0033】
ところで、地震時に第1フーチング16aが前記第1方向の外力を受けることにより、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第1基礎梁18aとの境界部分に曲げモーメントが生じる。第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分が、第1フーチング16aが前記第1方向の外力を受けることにより前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して比較的小さい曲げ剛性を有するため、第1フーチング16aが前記第1方向の外力を受けたときに、前記境界部分が曲げ変形することにより、第1杭14aと第1基礎梁18aとがなす角度が比較的容易に変化する。すなわち、第1フーチング16aが第1杭14aに完全に拘束されることはなく、第1フーチング16aの第1杭14aに対する固定度は比較的小さい。このように第1フーチング16aは半固定の状態で第1杭14aに接合されている。
【0034】
このため、前記第1方向の外力により第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第1基礎梁18aとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さく、第1杭14a、第1フーチング16a及び第1基礎梁18aの断面積が比較的小さくてもこれらに前記曲げモーメントを負担させることができる。これにより、第1杭14a、第1フーチング16a及び第1基礎梁18aを大型化することなく基礎12を経済的に施工することができる。
【0035】
本体22の各第1領域と第1フーチング16aとの間に絶縁材30が配置されている。絶縁材30は、第1フーチング16aが前記第1領域に接触するのを妨げ、第1フーチング16aが前記第1領域に付着するのを防止する。これにより、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分における、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性をさらに低減させることができ、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第1基礎梁18aとの境界部分に生じる曲げモーメントをより小さくすることができる。
【0036】
第1杭14aを施工するとき、まず、地盤10に、円形の断面形状を有する杭孔33を穿つ。次に、前記円形の周方向に間隔を置かれた、それぞれが上下方向に伸びる複数の主筋24、26を杭孔33に配置する。主筋24、26は、前記第1方向における相対する2つの領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋24と、前記第2方向における相対する2つの領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋26とを含み、第2主筋26は第1主筋24より長く、第2主筋26の上端部は第1主筋24の上端部より高い位置にある。主筋24、26の杭孔33への配置は、前記円形の周方向に間隔を置かれた複数の主筋24、26と、該主筋に上下方向に間隔を置いて取り付けられた複数のフープ筋28とからなる鉄筋籠を杭孔33へ挿入することにより行う。主筋24、26を杭孔33に配置した後、図5に示すように、杭孔33にコンクリートを打設して本体22を形成する。
【0037】
第1杭14aは、全ての主筋が本体からフーチングの内部へ伸びている従来の杭と比べて、第1主筋24の長さが異なるのみであり、主筋24、26の数は同じである。このため、第1杭14aを施工するのに要する手間は、前記従来の杭を施工するのに要する手間と同じである。なお、主筋の内方に複数の接合部材が配置されている従来の他の杭のように前記主筋の内方に前記接合部材を配置する手間を要することはない。このため、前記他の杭と比べて、第1杭14aを効率的に施工することができる。
【0038】
第1杭14aを施工した後、第1杭14aの上に第1フーチング16aを設ける。このとき、第2主筋26の前記上端部が第1フーチング16aの内部に位置するようにする。その後、第1フーチング16aと第2フーチング16bとの間及び第1フーチング16aと第3フーチング16cとの間にそれぞれ第1基礎梁18a及び第2基礎梁18bを設ける。
【0039】
図1に示したように、第2基礎梁18bの上に壁32が設けられている。壁32は、地中にあって土圧を受けるものでもよいし、地上にあるものでもよい。第2基礎梁18bは壁32により補強されており、壁32により補強された第2基礎梁18bは、第1基礎梁18aと比べ、曲げ強度が大きい。
【0040】
第1フーチング16aは、地震時に、前記第1方向の外力のみならず、前記第2方向の外力を受ける。これにより、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第2基礎梁18bとの境界部分に曲げモーメントが生じる。第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分が、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けることにより前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して比較的大きい曲げ剛性を有するため、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けたとき、前記境界部分は曲げ変形しにくく、第1杭14aと第2基礎梁18bとがなす角度は変化しにくい。このように、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けた場合において、第1フーチング16aの第1杭14aに対する固定度は比較的大きく、第1フーチング16aは固定の状態で第1杭14aに接合されている。
【0041】
このため、前記第2方向の外力により第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第2基礎梁18bとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的大きく、第2基礎梁18bに比較的大きい曲げモーメントを負担させることができる。これにより、曲げ強度が小さい第1基礎梁18aに負担させる曲げモーメントが小さいにもかかわらず、曲げ強度が大きい第2基礎梁18bに負担させる曲げモーメントを大きくすることができる。
【0042】
このように、第1基礎梁18a及び第2基礎梁18bの曲げ強度の大きさに応じて、第1基礎梁18a及び第2基礎梁18bのそれぞれに負担させる曲げモーメントの大きさを変えることができる。壁32により補強された第2基礎梁18bは、曲げ強度が大きいため、その断面積が小さくても、前記曲げモーメントを負担することができる。このため、第2基礎梁18bを大型化することなく基礎12を施工することができる。また、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けた場合における第1フーチング16aの第1杭14aに対する固定度が比較的大きいため、地震時に前記建物が揺れやすくなることはない。
【0043】
図6、7に示す例では、本体22の上端部における各第2領域に、前記周方向に間隔を置かれた複数の補強鉄筋34が配置されている。各補強鉄筋34は前記上端部から第1フーチング16aの内部へ上下方向に伸びる。補強鉄筋34は主筋24、26の内方に位置する。
【0044】
補強鉄筋34は、第1フーチング16aが受けた前記第2方向の外力により第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分に生じる曲げモーメントに抵抗する。これにより、前記境界部分における前記曲げモーメントに対する曲げ剛性を高めることができ、地震時に前記建物が揺れやすくなるのを効果的に防止することができる。
【0045】
図8、9に示す例では、第1主筋24が本体22から第1フーチング16aの内部へ伸びていない図2に示した例に代え、第1主筋24が本体22から第1フーチング16aの内部へ伸びている。この場合、第1主筋24の径は第2主筋26の径より小さい。このため、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分は、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、前記第2方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。
【0046】
図10に示す例では、第1主筋24の径が第2主筋26の径より小さい図8に示した例に代え、第1主筋24における第1フーチング16aの内部に位置する部分の長さが第2主筋26における第1フーチング16aの内部に位置する部分の長さより短い。すなわち、第1主筋24の第1フーチング16aに対する定着長さが第2主筋26の第1フーチング16aに対する定着長さより短い。
【0047】
第1主筋24の前記定着長さが第2主筋26の前記定着長さより短いため、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分は、前記第2方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに効果的に抵抗するが、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに効果的に抵抗することがない。このため、前記境界部分における前記第1方向の外力による前記曲げモーメントに対する曲げ剛性は前記第2方向の外力による前記曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。
【0048】
図11、12に示す例では、第1主筋24における第1フーチング16aの内部に位置する部分の長さが第2主筋26における第1フーチング16aの内部に位置する部分の長さより短い図10に示した例に代え、互いに隣接する2つの第1主筋24の間の間隔が、互いに隣接する2つの第2主筋26の間の間隔より長い。この場合においても、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分は、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、前記第2方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。
【0049】
図8に示した例、図10に示した例及び図11に示した例のいずれにおいても、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分は、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、前記第2方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さいため、前記第1方向の外力により第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第1基礎梁18aとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さく、第1杭14a、第1フーチング16a及び第1基礎梁18aを大型化しなくてもこれらに前記曲げモーメントを負担させることができる。また、前記第2方向の外力により第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第2基礎梁18bとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的大きく、第2基礎梁18bに大きい曲げモーメントを負担させることができる。
【0050】
図8に示した例では、第1主筋24の径と第2主筋26の径との比を変更することにより、図10に示した例では、第1主筋24における第1フーチング16aの内部に位置する部分の長さと第2主筋26における第1フーチング16aの内部に位置する部分の長さとの比を変更することにより、図11に示した例では、互いに隣接する2つの第1主筋24の間の間隔と互いに隣接する2つの第2主筋26の間の間隔との比を変更することにより、第1フーチング16aと第1基礎梁18aとの境界部分に生じる曲げモーメントの大きさと第1フーチング16aと第2基礎梁18bとの境界部分に生じる曲げモーメントの大きさとの比を任意に変更することができる。これにより、壁32に補強された第2基礎梁18bの曲げ強度と第1基礎梁18aの曲げ強度との比に応じて、壁32に補強された第2基礎梁18bに負担させる曲げモーメントの大きさと第1基礎梁18aに負担させる曲げモーメントの大きさとを変更することができる。
【0051】
図13、14に示す例では、第1杭14aは、場所打ちコンクリート杭からなる図2に示した例に代え、既製コンクリート杭からなる。第1杭14aは、コンクリートからなる円筒状の本体36と、該本体の上端部に固定され、本体36の断面形状と等しい環状の平面形状を有する端板38と、該端板の前記第1方向における相対する2つの第1領域及び前記第2方向における相対する2つの第2領域のうち各第2領域にのみ端板38の周方向に間隔を置いて取り付けられた複数の棒状部材40とを含む。各棒状部材40は端板38から第1フーチング16aの内部へ上下方向に伸びる。棒状部材40は、鉄筋からなるものでもよいし、張力が導入されたPC鋼材からなるものでもよい。
【0052】
前記第1領域に棒状部材40が取り付けられていないため、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分は、第1フーチング16aが前記第1方向の外力を受けることにより前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して効果的に抵抗することがなく、前記曲げモーメントに対する曲げ剛性が比較的小さい。これに対して、前記第2領域に棒状部材40が取り付けられているため、前記境界部分は、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けることにより前記境界部分に生じる曲げモーメントに対して効果的に抵抗し、前記曲げモーメントに対する曲げ剛性が比較的大きい。このように、前記境界部分は、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、前記第2方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。
【0053】
このため、第1フーチング16aが前記第1方向の外力を受けたときに第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第1基礎梁18aとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さく、第1杭14a、第1フーチング16a及び第1基礎梁18aの断面積が比較的小さくてもこれらに前記曲げモーメントを負担させることができる。これにより、第1杭14a、第1フーチング16a及び第1基礎梁18aを大型化することなく基礎12を経済的に施工することができる。また、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分における、前記第2方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が比較的大きいため、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けたときに第1杭14aと第2基礎梁18bとがなす角度は変化しにくく、地震時に前記建物が揺れやすくなることはない。
【0054】
端板38の各第1領域と第1フーチング16aとの間に絶縁材42が配置されている。絶縁材42は、第1フーチング16aと前記第1領域との接触を妨げ、第1フーチング16aと前記第1領域との付着を防止する。これにより、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分における、前記第1方向の外力により前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性をさらに低減させることができ、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第1基礎梁18aとの境界部分に生じる曲げモーメントをより小さくすることができる。
【0055】
第1フーチング16aの下部は、図13に示したように、下向きの凹型の断面形状を有し、第1杭14aの上端部を受け入れている。図2、6、8、10及び11に示した例では、第1フーチング16aの下面が平坦であり、第1フーチング16aの下部は第1杭14aの上端部を受け入れていないが、これらの例においても、図13に示した例と同様に、第1フーチング16aの下部が、下向きの凹型の断面形状を有し、第1杭14aの上端部を受け入れていてもよい。
【0056】
図15、16に示す例では、前記第2領域のみに複数の棒状部材40が取り付けられている図13に示した例に代え、前記第1領域及び前記第2領域の双方に複数の棒状部材40a、40bが取り付けられている。棒状部材40a、40bは端板38の周方向に間隔を置かれ、各棒状部材40a、40bは端板38から第1フーチング16aの内部へ上下方向に伸びる。棒状部材40a、40bは、各第1領域に位置する複数の第1棒状部材40aと、各第2領域に位置する複数の第2棒状部材40bとを含み、第1棒状部材40aの径は第2棒状部材40bの径より小さい。
【0057】
第1棒状部材40aの径が第2棒状部材40bの径より小さい図15に示した例に代え、図17に示す例では、第1棒状部材40aの長さが第2棒状部材40bの長さより短く、図18、19に示す例では、互いに隣接する2つの第1棒状部材40aの間の間隔が、互いに隣接する2つの第2棒状部材40bの間の間隔より長い。図15ないし19に示した例においても、図8ないし12に示した例と同様に、第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分は、第1フーチング16aが前記第1方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。
【0058】
このため、第1フーチング16aが前記第1方向の外力を受けたときに第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第1基礎梁18aとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さく、第1杭14a、第1フーチング16a及び第1基礎梁18aを大型化することなくこれらに前記曲げモーメントを負担させることができる。また、第1フーチング16aが前記第2方向の外力を受けたときに第1杭14aと第1フーチング16aとの境界部分及び第1フーチング16aと第2基礎梁18bとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的大きく、第2基礎梁18bに大きい曲げモーメントを負担させることができる。
【0059】
基礎12は、図20に示すように、前記第1方向(図20における左右方向)における第2杭14bが存在する側と反対側に第1杭14aから間隔を置いて設けられた他の杭14dと、該他の杭の上に設けられた他のフーチング16dと、第1フーチング16aと他のフーチング16dとの間に設けられた他の基礎梁18cとを有するものでもよい。
【0060】
図21に示す例では、互いに平行な一対の縦方向(図21における上下方向)の第1辺及び互いに平行な一対の横方向(図21における左右方向)の第2辺からなる四角形の平面形状を有する建物の基礎44が構築されている。基礎44は、地盤60に間隔を置いて設けられた複数の外側の杭46a、46b、46cであって前記四角形の頂点に位置する4つの杭46aと、各第1辺に位置する少なくとも1つの杭46bと、各第2辺に位置する少なくとも1つの杭46cとを含む外側の杭46a、46b、46cと、第2辺に位置する杭46cを前記縦方向に結ぶ直線と第1辺に位置する杭46bを前記横方向に結ぶ直線との交点に位置する内側の杭46dとを含む。
【0061】
また、基礎44は、外側の杭46a、46b、46c及び内側の杭46dのそれぞれの上に設けられたフーチング48と、互いに隣接する2つの外側の杭46a、46b、46cのうち一方の杭の上に設けられたフーチング48と他方の杭の上に設けられたフーチング48との間に設けられた外側の基礎梁50aと、前記縦方向に互いに隣接する外側の杭46cと内側の杭46dとの間、前記横方向に互いに隣接する外側の杭46bと内側の杭46dとの間及び互いに隣接する2つの内側の杭46dの間のそれぞれに設けられた内側の基礎梁50bと、外側の基礎梁50aの上に設けられた壁52とを含む。
【0062】
前記第1辺に位置する杭46bとフーチング48との境界部分は、フーチング48が前記横方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、フーチング48が前記縦方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。このため、フーチング48が前記横方向の外力を受けたときに杭46bとフーチング48との境界部分及びフーチング48と内側の基礎梁50bとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さく、杭46b、フーチング48及び内側の基礎梁50bの断面積が比較的小さくても、これらに前記曲げモーメントを負担させることができる。このため、杭46b、フーチング48及び内側の基礎梁50bを大型化することなく基礎44を経済的に施工することができる。
【0063】
前記第2辺に位置する杭46cとフーチング48との境界部分は、フーチング48が前記縦方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、フーチング48が前記横方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい。このため、フーチング48が前記縦方向の外力を受けたときに杭46cとフーチング48との境界部分及びフーチング48と内側の基礎梁50bとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的小さく、杭46c、フーチング48及び内側の基礎梁50bの断面積が比較的小さくても、これらに前記曲げモーメントを負担させることができる。このため、杭46c、フーチング48及び内側の基礎梁50bを大型化することなく基礎44を経済的に施工することができる。
【0064】
前記第1辺に位置する杭46bとフーチング48との境界部分が、フーチング48が前記縦方向の外力を受けることにより前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する比較的大きい曲げ剛性を有するため、杭46bとフーチング48との境界部分及びフーチング48と外側の基礎梁50aとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的大きい。また、前記第2辺に位置する杭46cとフーチング48との境界部分が、フーチング48が前記横方向の外力を受けることにより前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する比較的大きい曲げ剛性を有するため、杭46cとフーチング48との境界部分及びフーチング48と外側の基礎梁50aとの境界部分に生じる曲げモーメントは比較的大きい。このため、壁52により補強された外側の基礎梁50aに比較的大きい曲げモーメントを負担させることができ、地震時に前記建物が揺れやすくなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施例に係る建物の基礎の平面図。
【図2】図1の線2における基礎の縦断面図。
【図3】図2の線3における杭の横断面図。
【図4】図2の線4における杭の平面図。
【図5】杭を形成した後における杭の縦断面図。
【図6】本発明の第2実施例に係る基礎の縦断面図。
【図7】図6の線7における杭の平面図。
【図8】本発明の第3実施例に係る基礎の縦断面図。
【図9】図8の線9における杭の平面図。
【図10】本発明の第4実施例に係る基礎の縦断面図。
【図11】本発明の第5実施例に係る基礎の縦断面図。
【図12】図11の線12における杭の平面図。
【図13】本発明の第6実施例に係る基礎の縦断面図。
【図14】図13の線14における杭の平面図。
【図15】本発明の第7実施例に係る基礎の縦断面図。
【図16】図15の線16における杭の平面図。
【図17】本発明の第8実施例に係る基礎の縦断面図。
【図18】本発明の第9実施例に係る基礎の縦断面図。
【図19】図18の線19における杭の平面図。
【図20】本発明の第10実施例に係る基礎の平面図。
【図21】本発明の第11実施例に係る基礎の平面図。
【符号の説明】
【0066】
10、60 地盤
12、44 基礎
14a 第1杭
14b 第2杭
14c 第3杭
16a 第1フーチング
16b 第2フーチング
16c 第3フーチング
18a 第1基礎梁
18b 第2基礎梁
22、36 本体
24 第1主筋
26 第2主筋
30、42 絶縁材
34 補強鉄筋
38 端板
40 棒状部材
40a 第1棒状部材
40b 第2棒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けられた第1杭と、該第1杭から第1方向に間隔を置いて設けられた第2杭と、前記第1杭から前記第1方向と直交する第2方向に間隔を置いて設けられた第3杭と、
前記第1杭の上に設けられた第1フーチングと、前記第2杭の上に設けられた第2フーチングと、前記第3杭の上に設けられた第3フーチングと、
前記第1フーチングと前記第2フーチングとの間に設けられた第1基礎梁と、前記第1フーチングと前記第3フーチングとの間に設けられた第2基礎梁とを含み、
前記第1杭と前記第1フーチングとの境界部分は、前記第1フーチングが前記第1方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性が、前記第1フーチングが前記第2方向の外力を受けて前記境界部分に生じる曲げモーメントに対する曲げ剛性より小さい、建物の基礎。
【請求項2】
前記第1杭は、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが上下方向に伸びる複数の主筋とを有し、
前記主筋は、前記本体の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋とを含み、
各第1主筋は、上端部が前記本体の内部に位置し、
各第2主筋は、前記本体から上方へ伸び、上端部が前記第1フーチングの内部に位置する、請求項1に記載の建物の基礎。
【請求項3】
前記第1杭は、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが前記本体から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の主筋とを有し、
前記主筋は、前記本体の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋とを含み、
前記第1主筋の径は前記第2主筋の径より小さい、請求項1に記載の建物の基礎。
【請求項4】
前記第1杭は、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが前記本体から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の主筋とを有し、
前記主筋は、前記本体の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋とを含み、
前記第1主筋における前記第1フーチングの内部に位置する部分の長さは前記第2主筋における前記第1フーチングの内部に位置する部分の長さより短い、請求項1に記載の建物の基礎。
【請求項5】
前記第1杭は、円形の断面形状を有する、コンクリートからなる本体と、該本体の内部に前記円形の周方向に間隔を置いて配置され、それぞれが前記本体から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の主筋とを有し、
前記主筋は、前記本体の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1主筋と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2主筋とを含み、
互いに隣接する2つの第1主筋の間の間隔は、互いに隣接する2つの第2主筋の間の間隔より長い、請求項1に記載の建物の基礎。
【請求項6】
前記本体の各第1領域と前記第1フーチングとの間に絶縁材が配置されている、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の建物の基礎。
【請求項7】
前記本体の上端部における各第2領域に、前記周方向に間隔を置かれた複数の補強鉄筋が配置されており、各補強鉄筋は前記上端部から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の建物の基礎。
【請求項8】
前記第1杭は、コンクリートからなる円筒状の本体と、該本体の上端部に固定され、前記本体の断面形状と等しい環状の平面形状を有する端板と、該端板の前記第1方向における相対する2つの第1領域及び前記第2方向における相対する2つの第2領域のうち各第2領域のみに前記端板の周方向に間隔を置いて取り付けられ、それぞれが前記端板から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の棒状部材とを含む、請求項1に記載の建物の基礎。
【請求項9】
前記第1杭は、コンクリートからなる円筒状の本体と、該本体の上端部に固定され、前記本体の断面形状と等しい環状の平面形状を有する端板と、該端板の周方向に間隔を置いて取り付けられ、それぞれが前記端板から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の棒状部材とを含み、
前記棒状部材は、前記端板の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1棒状部材と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2棒状部材とを含み、
前記第1棒状部材の径は前記第2棒状部材の径より小さい、請求項1に記載の建物の基礎。
【請求項10】
前記第1杭は、コンクリートからなる円筒状の本体と、該本体の上端部に固定され、前記本体の断面形状と等しい環状の平面形状を有する端板と、該端板の周方向に間隔を置いて取り付けられ、それぞれが前記端板から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の棒状部材とを含み、
前記棒状部材は、前記端板の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1棒状部材と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2棒状部材とを含み、
前記第1棒状部材の長さは前記第2棒状部材の長さより短い、請求項1に記載の建物の基礎。
【請求項11】
前記第1杭は、コンクリートからなる円筒状の本体と、該本体の上端部に固定され、前記本体の断面形状と等しい環状の平面形状を有する端板と、該端板の周方向に間隔を置いて取り付けられ、それぞれが前記端板から前記第1フーチングの内部へ上下方向に伸びる複数の棒状部材とを含み、
前記棒状部材は、前記端板の前記第1方向における相対する2つの第1領域のそれぞれに位置する複数の第1棒状部材と、前記第2方向における相対する2つの第2領域のそれぞれに位置する複数の第2棒状部材とを含み、
互いに隣接する2つの第1棒状部材の間の間隔は、互いに隣接する2つの第2棒状部材の間の間隔より長い、請求項1に記載の建物の基礎。
【請求項12】
前記端板の各第1領域と前記第1フーチングとの間に絶縁材が配置されている、請求項8ないし11のいずれか1項に記載の建物の基礎。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−65422(P2010−65422A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231466(P2008−231466)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】