建物の防蟻構造及び建物の基礎防蟻工法
【課題】防蟻シートの使用量を少なくしつつ、建物の外周立ち上がり部に取付けられる板部材の劣化も防ぐことができ、確実にシロアリの侵入を防ぐことができる建物の防蟻構造及び建物の防蟻工法を提供する。
【解決手段】外周立上がり部3の下端に沿って設けられ屋外方向に延出する延出部5が形成された建物基礎の防蟻構造1において、前記延出部5の上面に下端が配置されて、前記外周立上がり部3の屋外側面に沿って並設される複数の防蟻板部材4と、前記防蟻板部材4の屋外側面と前記延出部5の屋外側面とにまたがって被覆する下端側防蟻シート6と、前記防蟻板部材4同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材4の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シート7と、を備える。
【解決手段】外周立上がり部3の下端に沿って設けられ屋外方向に延出する延出部5が形成された建物基礎の防蟻構造1において、前記延出部5の上面に下端が配置されて、前記外周立上がり部3の屋外側面に沿って並設される複数の防蟻板部材4と、前記防蟻板部材4の屋外側面と前記延出部5の屋外側面とにまたがって被覆する下端側防蟻シート6と、前記防蟻板部材4同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材4の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シート7と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布基礎やベタ基礎などの基礎の外周立上がり部の屋外側からのシロアリの侵入を防ぐ建物の防蟻構造及び基礎防蟻工法に関し、詳しくは建物基礎の外周立上がり部と、この外周立上がり部の外側面に設けられる防蟻板部材との間からシロアリが侵入することを防ぐ建物の防蟻構造及び建物の基礎防蟻工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物におけるシロアリ防除技術としては、例えば、建物の床下の地面から1メートル程度の範囲の木材や建物の下の土壌に、シロアリを駆除できる薬剤を処理する方法やシロアリに少量の薬剤を含む毒餌を摂食させて根絶するベイト工法などの方法が知られている。しかし、上述の建物の床下に薬剤を処理する方法においては、建物内の環境が化学物質に汚染される点で問題がある。また、ベイト工法においては、コロニー全体の活力を衰退させることにあり、その開始から終了までに少なくとも数ヶ月から2年程度の長期間を要するという問題がある。
【0003】
そこで、上述の問題を解消するために、薬剤を使用せずにシロアリの侵入を物理的に阻止する工法が種々提案されている。シロアリの侵入を物理的に阻止する工法においては、コンクリートで形成された基礎そのものはシロアリに侵食されないので、基礎の立上がりの表面に取付けられた化粧材や断熱材と、基礎の外周立上がり部との間を通過するシロアリの通過経路に、例えば、シロアリの分泌物に耐性を有し、且つ少なくともショアD70高度以上の耐腐食性材料で編まれた網み目シートからなり、この編み目の孔がいずれの方向においても侵入を阻止すべきシロアリの頭部横断面の最大寸法より小径である防蟻シートを取付けて、シロアリが建物内に侵入することを防いでいる(例えば特許文献1)。
【0004】
ところで、建物の布基礎やベタ基礎などの基礎の外周立上がり部の屋外側には、外装材や断熱材などの種々の板部材が固定されることが多い。そして板部材の内部にシロアリが侵入することを防ぐことができるように、これら板部材には防蟻性を有するものも種々提案されている。具体的には例えば、断熱材の原料に防蟻剤を加えて発泡及び硬化させて形成する防蟻断熱材(特許文献2参照)やシロアリに食侵されない硬度及び密度のポリカーボネート系樹脂発泡体からなる防蟻材(特許文献3参照)が提案されている。
【特許文献1】特許第2652902号公報
【特許文献2】特開2006−183267号公報
【特許文献3】特開平11−236736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような防蟻板部材を建物の布基礎やベタ基礎などの基礎の外周立上がり部の屋外側に取付けた場合には、防蟻板部材自体はシロアリに食侵されないものの、防蟻板部材と基礎の外周立上がり部との間隙を通ってシロアリが建物内部に侵入する虞がある。
【0006】
本発明は、建物の外周立上がり部に取付けられる板部材の劣化も防ぐことができ、確実にシロアリの侵入を防ぐことができる建物の防蟻構造及び建物の防蟻工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の建物の防蟻構造は、地中に埋設された建物基礎の外周面の最下端部に沿って屋外方向に延出する延出部が形成された建物基礎の防蟻構造において、前記延出部の上面に下端が配置されて、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、当該防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の建物の防蟻構造は、地中に埋設された建物基礎の外周面の最下端部に沿って屋外方向に延出する延出部が形成された建物基礎の防蟻構造において、前記延出部に下端が配置されて、上端が地表から所定高さに配置されるように、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、該防蟻板部材の上側において、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の非防蟻板部材と、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の建物の防蟻構造は、前記防蟻板部材の屋外側面と前記延出部の屋外側面とにまたがって被覆する下端側防蟻シートを更に備えることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の建物の防蟻構造は、前記下端側防蟻シートの下端は前記延出部の内部に埋設されることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の建物の防蟻構造は、外周立上がり部が設けられる建物基礎の防蟻構造において、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、当該防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の建物の防蟻構造は、建物基礎の外周面の下端部から屋外方向に突出する突出部が所定間隔を開けて複数設置された建物基礎の防蟻構造において、前記建物の外周面に沿って複数並設され、下端の両隅部に形成された切り欠き同士を突合わせて形成した空間に前記突出部が嵌合する形状の防蟻板部材と、該防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の建物の防蟻構造は、前記建物基礎及び前記防蟻板部材を貫通する配管の前記防蟻板部材の屋外側に突出する側の外周面を被覆する筒部と、該筒部の端部から広がって形成されて前記防蟻板部材の屋外側面を被覆する鍔部とを有する配管用防蟻シートをさらに備えることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の建物の防蟻構造は、前記防蟻板部材は、屋外側にシロアリの侵食を防ぐ防蟻層を含む多層構造であることを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載の建物の防蟻構造は、前記防蟻板部材は、断熱性を有することを特徴としている。
【0016】
請求項10に記載の建物の防蟻構造は、前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であることを特徴としている。
【0017】
請求項11に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、当該基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて前記基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0018】
請求項12に記載の建物の防蟻構造は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、当該基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて前記基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、前記防蟻板部材の屋外側面に、その下端が当該防蟻板部材の下端よりも下方に位置するように、シロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを貼り付けるとともに、当該下端側防蟻シートの下端を前記防蟻板部材の下方で屋内側に突出するように折り曲げて、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、前記下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0019】
請求項13に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0020】
請求項14に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外した後に、前記延出部の屋外側面と前記防蟻板部材とにまたがってシロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0021】
請求項15に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、前記下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外し、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0022】
請求項16に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに前記防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きによって形成される空間により前記建物基礎の外周面の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0023】
請求項17に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤に配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに前記防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きによって形成される空間により前記外周立上がり部の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0024】
請求項18に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記防蟻性板部材を、前記屋外側型枠の内側面に沿って、上端が地表から所定高さに配置され、且つ、下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように複数並設するとともに、該防蟻板部材の上側において前記屋外側型枠の内側面に沿って非防蟻板部材を複数並設することを特徴としている。
【0025】
請求項19に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記防蟻板部材は、断熱性を有することを特徴としている。
【0026】
請求項20に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の建物の防蟻構造によると、シロアリが侵食できない防蟻板部材が延出部の上面に下端が配置されて、建物基礎の外周面に沿って複数並設されており、防蟻板部材同士の間隙には防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートが被覆されるので防蟻板部材同士の間隙からシロアリが侵入することが無い。したがって、シロアリの侵入を防ぐことができる。また、防蟻板部材はシロアリが侵食できない材料で形成されているので、防蟻板部材がシロアリに侵食されて劣化する虞も無い。さらに、防蟻板部材が防蟻性であるので、防蟻板部材全体を防蟻シートで覆う必要がなく、防蟻シートの使用量を減らすことができる。
【0028】
請求項2に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻板部材は、その上端が地表から所定高さに配置されるように建物基礎の外周面に沿って設されており、この防蟻板部材の上側には非防蟻板部材が並設されている。したがって、シロアリが侵食する可能性が高い地中及び地表から所定高さまでには防蟻板部材が取付けられることでシロアリの侵食を防止することができるとともに、シロアリが侵食する可能性が低い地面から所定高さ以上の箇所には安価な非防蟻板部材を並設しているので、安価にシロアリの侵食を防ぐことができる。
【0029】
請求項3に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻板部材の屋外側面と延出部の屋外側面とにまたがって下端側防蟻シートが被覆されているので、この下端側から防蟻板部材と外周立上がり部との間隙にシロアリが侵入することをも防ぐことができ、より確実にシロアリの侵入を防ぐことができる。
【0030】
請求項4に記載の建物の防蟻構造によると、下端側防蟻シートの下端は前記延出部の内部に埋設されるので、より強固に下端側防蟻シートを固定することができる。
【0031】
請求項5に記載の建物の防蟻構想によると、複数の防蟻板部材同士の間隙を覆うように中間部防蟻シートが設けられているので、この間隙からシロアリが侵入することを抑制することができる。
【0032】
請求項6に記載の建物の防蟻構造によると、建物基礎の外周面の下端には、屋外方向に突出する突出部が所定間隔を開けて複数設置されており、外周立上がり部に沿って並設される複数の防蟻板部材には、この突出部の形状に合致する切り欠きが設けられている。さらに、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートが被覆されている。このように構成されることで、シロアリが防蟻板部材同士の間隙に入り込むことがなくなる。したがって、基礎を形成するコンクリートと防蟻板部材とをシロアリが侵入できないように接着することで、シロアリの侵食を防ぐことができる。また、このように構成することで、突出部を除く、外周立上がり部の屋外側面が全て、防蟻板部材で覆われることとなる。したがって、この構成において防蟻板部材を例えば断熱材で構成すれば、外周立上がり部の下端に延出部を設けた場合に比べてもより効率よく断熱することができる。
【0033】
請求項7に記載の建物の防蟻構造によると、外周立上がり部及び防蟻板部材を貫通する配管の防蟻板部材から屋外側に突出する側の外周面に配管用防蟻シートの筒部が被覆するとともに、防蟻板部材の屋外側側面に配管用防蟻シートの鍔部が被覆するので、シロアリが配管と外周立上がり部及び防蟻板部材の貫通孔との間を通過して建物内に侵入することを防ぐことができる。
【0034】
請求項8に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻板部材は、屋外側にシロアリの侵食を防ぐ防蟻層を設けたものであるので、例えば、防蟻板部材の屋外側の面を防蟻層としてシロアリの侵入を防ぎつつ、屋内側を断熱層として断熱材で形成するなど、用途に合わせて様々な材質で形成することができる。
【0035】
請求項9に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻板部材は断熱性を有するので、外断熱工法において断熱性と防蟻性を兼ね備えた建物の防蟻構造とすることができる。
【0036】
請求項10に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であるので、例えばモルタル接着剤などにより防蟻シートを固定する際には、メッシュ状であることによるアンカー効果により確実に固定され、シロアリの通過を確実に防止することができる。
【0037】
請求項11に記載の建物の基礎防蟻工法によると、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、その後、屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を外周立上がり部に固定し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆するので、所謂ベタ基礎の場合に外周立上がり部に防蟻板部材が隙間なく固定され、さらに中間部防蟻シートによりシロアリの侵入を確実に防止することができる。
【0038】
請求項12に記載の建物の基礎防蟻工法によると、防蟻板部材の屋外側面に、その下端が当該防蟻板部材の下端よりも下方に位置するように、シロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを貼り付けるとともに、下端側防蟻シートの下端を防蟻板部材の下方で屋内側に突出するように折り曲げて、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外すので、下端側防蟻シートの下端を簡単に延出部の内部に埋設することができ、より強固に下端側防蟻シートを固定することができる。
【0039】
請求項13に記載の建物の基礎防蟻工法によると、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を外周立上がり部に固定し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆するので、所謂布基礎の場合にも外周立上がり部に防蟻板部材が隙間なく固定され、さらに中間部防蟻シートによりシロアリの侵入を確実に防止することができる。
【0040】
請求項14に記載の建物の基礎防蟻工法によると、延出部の屋外側面と防蟻板部材とにまたがってシロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを被覆するので、延出部と防蟻板部材との間からシロアリが防蟻板部材と建物基礎の外周立上がり部との間に侵入することを確実に防止できる。
【0041】
請求項15に記載の建物の基礎防蟻工法によると、防蟻板部材の屋外側面に、その下端が当該防蟻板部材の下端よりも下方に位置するように、シロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを貼り付けるとともに、下端側防蟻シートの下端を防蟻板部材の下方で屋内側に突出するように折り曲げて、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外すので、下端側防蟻シートの下端を簡単に延出部の内部に埋設することができ、より強固に下端側防蟻シートを固定することができる。
【0042】
請求項16に記載の建物の基礎防蟻工法によると、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きに外周立上がり部の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、その後、屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆するので、所謂ベタ基礎において、請求項4のような構成を施工することができ、シロアリが防蟻板部材同士の間隙に入り込むことがなくなるとともに、突出部を除く、外周立上がり部の屋外側面が全て、防蟻板部材で覆われることとなり、防蟻板部材を例えば断熱材で構成すれば、外周立上がり部の下端に延出部を設けた場合に比べてもより効率よく断熱することができる。
【0043】
請求項17に記載の建物の基礎防蟻工法によると、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が基礎地盤に配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きに外周立上がり部の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を外周立上がり部に固定し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆するので、所謂布基礎において、請求項4のような構成を施工することができ、シロアリが防蟻板部材同士の間隙に入り込むことがなくなるとともに、突出部を除く、外周立上がり部の屋外側面が全て、防蟻板部材で覆われることとなり、防蟻板部材を例えば断熱材で構成すれば、外周立上がり部の下端に延出部を設けた場合に比べてもより効率よく断熱することができる。
【0044】
請求項18に記載の建物の基礎防蟻工法によると、シロアリが侵食する可能性が高い地中及び地表から所定高さまでには防蟻板部材が取付けられることでシロアリの侵食を防止することができるとともに、シロアリが侵食する可能性が低い地面から所定高さ以上の箇所には安価な非防蟻板部材を並設しているので、安価にシロアリの侵食を防ぐことができる。
【0045】
請求項19に記載の建物の基礎防蟻工法によると、防蟻板部材は断熱性を有しているので、外断熱工法において断熱性と防蟻性を兼ね備えた建物の防蟻構造とすることができる。
【0046】
請求項20に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であるので、例えばモルタル接着剤などにより防蟻シートを固定する際には、メッシュ状であることによるアンカー効果により確実に固定され、シロアリの通過を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
〔第1の実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法の第1の実施形態について説明する。まず、図1から図3を参照しつつ、本願の第1の実施形態の建物の防蟻構造1について説明する。第1の実施形態の建物の防蟻構造1は、図1に示すように、ベタ基礎2の外周面34に沿って複数の防蟻板部材4が並設された建物において用いられる。ベタ基礎2の外周面34の下端には屋外方向に延出する延出部5が外周に沿って形成されており、防蟻板部材4の下端はこの延出部5の上面に固定されている。そして、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、シロアリが通過できない下端側防蟻シート6が取付けられており、防蟻板部材4と延出部5との間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。また、防蟻板部材4同士の屋外側面の互いに突き合わせた端部同士にまたがるように、シロアリが通過できない中間部防蟻シート7が取付けられており、隣接する防蟻板部材4同士の間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。なお、図1及び図2などの断面図においては、防蟻板部材4の側端部同士を突合わせた部分に上下方向に被覆する中間部防蟻シート7は図示の都合上省略している。
【0048】
ベタ基礎2は、建物の床下全面的に設けられた基礎スラブ8と、この基礎スラブ8上の外周部分に立設される外周立上がり部3と、基礎スラブ8上に建物の設計上必要に応じて設けられる柱状又は縦横に延びる立上がり部9からなる。そして、この基礎スラブ8の下方には捨てコンクリート10や割栗石11が施工されている。なお、ベタ基礎2の縦断面形状等は特に限定されるものではなく、従来公知の各種の構成を採用できる。また、割栗石11と捨てコンクリート10の間、又は捨てコンクリート10と基礎スラブ8の間には、必要に応じて図示しない防湿シート等を敷設してもよい。
【0049】
外周立上がり部3の屋外側面に沿って複数並設される防蟻板部材4は、例えばシロアリに侵食されない強度を有するポリカーボネート発泡体により形成されたものが挙げられる。このような防蟻板部材4の厚さ、長さ、及び高さは施工性能、断熱性能、防蟻性能の観点から適宜選択できるものであり、例えばその高さは、外周立上がり部3と同じ高さとすることもできるが、本実施形態においては例えば、外周立上がり部3の高さのほぼ半分ほどの高さの防蟻板部材4を用い、上下に2段重ねて取付けている。図3に示すように、この防蟻板部材4はその側端が上側の防蟻板部材4と下側の防蟻板部材4とでずれるように配置されている。
【0050】
なお、防蟻板部材4はこれに限定されるものではなく、クロルピリホス系、有機リン系やピレスロイド系などの防蟻剤を含有したグラスウール、ロックウール、などの繊維系断熱材、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノール樹脂フォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、無機物高充填樹脂フォーム等のシロアリの侵食を防ぐことができ、且つ断熱性能を有する様々な板状部材を防蟻板部材4として用いることができる。また、防蟻性板部材4は断熱材に限定されるものではなく、例えば硬質機材(例えば、タイル、セラミック板、あるいはセメント板、炭酸カルシウム板、珪酸カルシウム板、木片セメント板、炭酸マグネシウム板等、もしくはこれらにガラス繊維、ウィスカー、アラミド繊維、スチール繊維、炭素繊維、各種鉱物繊維、各種骨材等を混入したもの、等を押出成形、プレス成形、射出成形、抄造法、等によって成形した窯業系サイディング材、または各種繊維をクロス状、三次元状に織り、これにセメント、粘土等を含浸してパネル状に成形したものを乾燥、蒸気養生、焼成、等したもの)、さらには金属製パネル、金属製サイディング材(金属製表面材の裏面に合成樹脂発泡体等の芯材を積層した建材、金属製表面材と裏面材間に合成樹脂発泡体等の芯材をサンドイッチした建材、等)、合成樹脂板、プレキャストコンクリート材等の様々な防蟻性板部材4を用いることができる。
【0051】
以上のように、防蟻板部材4が防蟻性を有するとともに断熱性を有する防蟻断熱材で構成されることで、例えば外断熱工法を適用する建物において、建物基礎部分の断熱材として本実施形態の建物の防蟻構造1を用いることができるものであるが、本実施形態の防蟻板部材4は断熱性を有するものに限定されるものではなく、シロアリに侵食されない材料で形成された化粧材等の基礎の外周立上がり部3の外側面に取付けられる様々な防蟻板部材4を用いることができる。
【0052】
また、防蟻板部材4は、単一の材質で形成されるものに限定されるものではなく、例えば図4に示すように、屋外側面に防蟻層としてサイディング材12が取付けられ、屋内側には防蟻性を有さない断熱材13が設けられた2層構造のものであってもよい。このように構成しても、防蟻板部材4と延出部5との間隙は屋外側から下端側防蟻シート6で被覆されており、防蟻板部材4同士の間隙も屋外側から中間部防蟻シート7で被覆されているので、シロアリがサイディング材12の内側の断熱材に到達することはなく、防蟻性を維持することができる。また、このように内側を非防蟻層とすることで、防蟻性を有さない種々の材料を用いることができ、断熱性や材料コストなどの観点から適切な材料を選択することができる。
【0053】
さらにまた防蟻板部材4は、例えば表面に防蟻性能を有する部材を設けていれば3層以上の多層で構成することもでき、例えば、防蟻性及び断熱性を有する各種の防蟻板部材4に防湿シートなどの防湿材、遮音材、吸音材、防振材、タイル、モルタル等などを複合することもできる。また、ポリカーボネート発泡板と、グラスウール、ロックウール、などの繊維系断熱材、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノール樹脂フォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、無機物高充填樹脂フォームなどの発泡樹脂系断熱材を、接着剤等を用いて接着させた複合防蟻断熱材として用いることもできる。このようにすると高価なポリカーボネート発泡材料の使用量を減らした上で、防蟻材の厚さを確保することができ、従来通りの断熱性能を発揮することができる。
【0054】
以上のような、防蟻板部材4を外周立上がり部3へ取付けるに際しては、外周立上がり部3の外側面と防蟻板部材4とを例えば接着モルタルなどのシロアリに侵食されない接着剤を介して固定させることができる。また、防蟻板部材4の接着方法としてはこれに限られるものではなく、例えばコンクリートを打設して外周立上がり部3を形成する前に、外周立上がり部3を形成するために用いる型枠のうち屋外側に配置される型枠の内側面に防蟻板部材4を固定して、その後コンクリートを打設養生することで、防蟻板部材4を外周立上がり部3に固定することもできる。
【0055】
ここで、シロアリとは、ゴキブリに近縁の社会生活をする不完全変態の昆虫であって、シロアリ目(等翅類)Isopteraの総称である。このシロアリは、非変形性の堅い頭部を有している。このようなシロアリとしては、例えば、ヤマトシロアリやイエシロアリ等の各種のものが挙げられる。
【0056】
また、下端側防蟻シート6及び中間部防蟻シート7としては、例えば、「アリ断(商品名,フクビ化学工業株式会社製)」等の防蟻剤を練り込んだ合成樹脂シート、「シロアリシャッター(商品名,大日本木材防腐工業株式会社製)」等の防蟻剤を塗布したガラス繊維シート等の防蟻性を有する従来公知の各種のシート材や板材等が挙げられるが、シロアリから放出されるギ酸等の分泌物に耐性で、かつ、シロアリが噛み砕くことができない硬さである少なくとも約ショアD70硬度を有し、使用環境下で数十年の耐用年数を有する耐用性の耐腐食性材料からなるものが好ましい。
【0057】
上述のような下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7としては、例えば、耐腐食性材料からなる金属製や合成樹脂製等のシート材や板材等が挙げられるが、図5に示すように、ステンレス鋼ワイヤ14から製織され、いずれの方向においてもシロアリの頭部横断面の最大直線寸法より小さい直線寸法の多数の網目(孔)15を有するステンレスメッシュ〔例えば「ターミメッシュ(TERMI−MESH,商品名)」,ターミメッシュジャパン株式会社製〕等、柔軟性に優れ、かつ、切断、折曲による造形、折曲時の輪郭付け等が容易なメッシュシートが好適である。
【0058】
なお、シロアリバリアー材としてのメッシュシートは、ステンレスメッシュの他、例えば、セラミックス・ガラス・合成樹脂・金属(特にステンレス)等の繊維・フィラメント・ストランド等から製織又は製編等されたワイヤーラス等や不織布、あるいはパンチングメタル、メタルラス等の各種のものを使用できる。要するに、網目15等の多数の孔を有していればよい。この孔の形状は特に限定されるものではなく、矩形状や円状等の適宜の形状とすることができる。
【0059】
以上のように構成される下端側防蟻シート6は、図1から図3に示すように、ベタ基礎2の外周面34の下端から屋外側に延出する延出部5の屋外側面と防蟻板部材4の屋外側面の下端付近とにまたがって被覆される。また、中間部防蟻シート7は、図3に示すように、複数並設される防蟻板部材4の互いに突合わせる側端部同士、及び互いに突合わせる上下端同士の屋外側面にまたがって被覆される。これら下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7を取付けるときには、防蟻シートを所定の長さにカットして、被覆する箇所に例えば釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止する。そして下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7の屋外側から、モルタルに適宜のポリマー等を配合した接着モルタル等を塗布することによって外周立上がり部3及び防蟻板部材4に接着等すればよい。
【0060】
このように、延出部5と防蟻板部材4との間隙は下端側防蟻シート6で被覆されており、防蟻板部材4同士の間隙は中間部防蟻シート7で被覆されているので、シロアリが外周立上がり部3と防蟻板部材4との間隙に侵入することはできず、建物内にシロアリが侵入することを阻止できる。したがって、建物内の環境を汚染することなく軸組や床組等をシロアリによる食害から確実に保護できる。
【0061】
ここで、耐腐食性材料からなる下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7を使用した場合は、シロアリによって食い破られるおそれがないので、シロアリの床下空間への侵入をより確実に阻止できるという利点がある。また、下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7としてメッシュシートを使用した場合でも、網目15等の孔の直線寸法をいずれの方向においてもシロアリの頭部横断面の最大直線寸法より小さく形成することで、シロアリがメッシュシートを通り抜けることを防止できる。また、メッシュシートは多数の孔14を有しているので、接着モルタルによる接着等の際にアンカー効果によってより強固に取付けできるという利点がある。
【0062】
なお、このように下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7として用いられるメッシュシートの網目15の寸法は、イエシロアリの職蟻で1.1〜1.25mm程度、ヤマトシロアリの職蟻で1.0〜1.2mm程度であるので、ヤマトシロアリが生息する地域では、孔の直線寸法をいずれの方向においても1.0mm程度以下としておくのが望ましい。また、接着モルタルに含まれる細骨材としては、シロアリが噛み砕くことができない砂等が挙げられるが、塗布した接着モルタルがいずれの部分においてもシロアリによって食い破られないように、孔15を通過する大きさのものを使用すると共に、互いの間隔が1.0mmより小さくなるように配合するのが望ましい。
【0063】
また、外周立上がり部3及びこの外周立上がり部3の屋外側面を含むベタ基礎2の外周面34に固定される防蟻板部材4には建物内部への給排水を行う配管16が貫通しており、この配管16を通して建物内部への給水や建物内部からの排水を行う。この外周立上がり部3の貫通孔及び防蟻板部材4の貫通孔と配管16の外周面との間に間隙ができると、そこを通過してシロアリが建物内に侵入する虞が生じる。そこで、この配管16と外周立上がり部3との間隙から建物内部にシロアリが侵入することを防ぐために、配管用防蟻シート17を用いる。
【0064】
この配管用防蟻シート17は、図6に示すようにハット形であり、上述の下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7と同様のステンレスメッシュシート、防蟻剤を練り込んだ合成樹脂シート、防蟻剤を塗布したガラス繊維シート、耐腐食性材料からなる金属製や合成樹脂製等のシート材等の防蟻性を有する各種のシート材を配管16の外周に外挿される大きさの円筒形に加工して筒部18を形成し、更に一端側に上述と同様の防蟻材料で形成されて広がる鍔部19を形成したものである。
【0065】
この配管用防蟻シート17を取り付けるときには、図7に示すように、この配管用防蟻シート17の筒部16を防蟻板部材4の屋外側に突出している配管16に外挿して、その鍔部19を防蟻板部材4の屋外側面に当接させる。そして、配管用防蟻シート17を接着モルタル等の接着剤で配管16の外周面及び防蟻板部材4の屋外側面に接着する。このようにすると、シロアリが防蟻板部材4及び外周立上がり部3の貫通孔と、配管16の外周面との間隙に入り込むことができず、建物内部への侵入を阻止することができる。
【0066】
次に、以上のように構成される第1の実施形態に係る建物の防蟻構造1を施工する第1の基礎防蟻工法について図8から図11を参照しつつ説明する。
【0067】
第1の基礎防蟻工法は、図8に示すように、まず地表から所定深さまで掘り下げて、地盤改良等を行って整地した上で、割栗石11を敷き詰め、さらにその上から捨てコンクリート10を流し入れる。そして、建物の外周を囲うように屋外側型枠20を設置して、その内側に図示しない鉄筋等を配置する。そして屋外側型枠20の屋内側の面に沿って防蟻板部材4を隙間なく並設する。このとき下側の防蟻板部材4の下端は、捨てコンクリート10から所定距離をあけて上方に位置するように配置する。その後、図9に示すように、屋外側型枠20に囲まれた内部にコンクリートを打設して、基礎スラブ8を形成する。基礎スラブ8の外周側は屋外側型枠20の屋外側に並設されている防蟻板部材4の屋内側面に密着することになり、防蟻板部材4の下端と捨てコンクリートとの間にもコンクリートが流入して延出部5を形成する。
【0068】
そして次に、図10に示すように、基礎スラブ8上に屋外側型枠20と平行に屋内側型枠21を設置し、さらに必要に応じて柱状又は縦横に延びる立上がり部用型枠22を設置し、屋外側型枠20と屋内側型枠21の間及び立上がり部用型枠22の内部にコンクリートを打設する。そして所定時間養生して、屋外側型枠20、屋内側型枠21、立上がり部用型枠22を取り外して、基礎スラブ8、基礎スラブ8の外周下端から屋外方向に延びる延出部5、外周立上がり部3、及び立上がり部9からなるベタ基礎2を形成するとともに、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材4を基礎スラブ8及び外周立上がり部3の屋外側面に固定する。
【0069】
そして、図3及び図11に示すように、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように下端側防蟻シート6をを例えば図示しないが、釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止するとともに、防蟻板部材4の互いに突合わせた側端部同士及び上下端部同士にまたがるように、中間部防蟻シート7を、同様に釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止する。そして、接着モルタルをその屋外側から塗布する等して、下端側防蟻シート6及び中間部防蟻シート7を防蟻板部材4に固定する。
【0070】
〔第2の実施形態〕
次に第2の実施形態に係る建物の防蟻構造1及び建物の基礎防蟻工法について、図12及び図13を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
第2の実施形態に係る建物の防蟻構造1は第1の実施形態と同様に、例えばベタ基礎2を有する建物の防蟻構造1であって、ベタ基礎2の外周面34に沿って上下2段に複数設けられる板部材のうち、下側に複数並設される板部材を防蟻板部材4とし、この防蟻板部材4の上側に複数並設される板部材を非防蟻板部材23としたものである。
【0072】
防蟻板部材4は、ベタ基礎2の外周面34に沿って設けられるものであり、ベタ基礎2の外周の下端に形成された延出部5の上面に下端が密着して固定されつつ地中に埋設されているとともに、上端は外周立上がり部3の屋外側面の上下方向の中間位置であって、少なくとも地表よりも上方に位置している。そして、この防蟻板部材4の上端に下端が当接するように、上側にシロアリが侵食可能な非防蟻板部材23が設けられており、この非防蟻板部材23としては、例えば防蟻性能を有さないグラスウール、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等を上げることができるが、これに限定されるものではなく化粧材や防湿材などの様々な材料を用いることができる。
【0073】
そして、第1の実施形態と同様に、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近と延出部5の屋外側面とにまたがって下端側防蟻シート6が被覆しており、図13に示すように、防蟻板部材4同士の互いに突合わせる側端部とにまたがって中間部防蟻シート7が被覆している。このように構成することで、地中及び地表から所定高さまでは防蟻板部材4、下端側防蟻シート6、中間部防蟻シート7で覆われているので、シロアリが防蟻板部材4と外周立上がり部3との間隙に侵入することが無い。シロアリは生態上地表に出て活動することは稀であるので、この第2の実施形態の建物の防蟻構造1を用いても、第1の実施形態の建物の防蟻構造1と同様に、地中からの侵入を防止することで、シロアリが板部材に覆われた外周立上がり部3の表面を伝って建物内部に侵入することを防止することができる。また、この第2の実施形態においては、防蟻板部材4の上側には非防蟻板部材23が固定されている。このようにシロアリに侵食される虞が無い部分には防蟻性を有していない板部材を選択することができるので、例えば安価なものやより断熱性能に優れる板部材を選択して用いることができる。また、図13に示すように、防蟻板部材4の突合わせる部分のみを中間部防蟻シート7で覆うことでシロアリの侵入を防ぐことができるので、施工作業が簡略化できるとともに、使用する中間部防蟻シート7を少なくすることができる。
【0074】
なお、このような第2の実施形態の建物の防蟻構造1の施工方法は、第1の基礎防蟻工法と同様であるので説明を省略する。
【0075】
〔第3の実施形態〕
次に第3の実施形態の建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法について図14から図18を参照しつつ説明する。なお第1の実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略する。図14に示すように、第3の実施形態の建物の防蟻構造1は、布基礎24の外周面35に沿って複数防蟻板部材4が並設された建物において用いられる。布基礎24の外周に沿って立設される外周立上がり部3の下端は屋外方向に延出する延出部5が設けられており、屋内側方向に延びる内側延出部25とともにフーチング26を形成している。そして防蟻板部材4の下端はこの延出部5の上面に固定されている。さらに、この防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、シロアリが通過できない下端側防蟻シート6が取付けられており、防蟻板部材4と延出部5との間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。また、防蟻板部材4同士の屋外側面の互いに突き合わせた端部同士にまたがるように、シロアリが通過できない中間部防蟻シート7が取付けられており、隣接する防蟻板部材4同士の間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。
【0076】
布基礎24は、建物の床下に外周部分に立設される外周立上がり部3と、建物の設計上必要に応じて設けられる柱状又は縦横に延びる立上がり部9とからなる。そして、これら外周立上がり部3及び立上がり部9の下方には捨てコンクリート10や割栗石11が施工されている。なお、布基礎24の形状はこれに限定されるものではなく、従来公知の各種の構成を採用できる。また、割栗石11と捨てコンクリート10の間、又は捨てコンクリート10と外周立上がり部3及び立上がり部9の間には、必要に応じて図示しない防湿シート等を敷設してもよい。
【0077】
次に、以上のように構成される第3の実施形態に係る建物の防蟻構造1を施工する第3の基礎防蟻工法について図15から図18を参照しつつ説明する。
【0078】
第3の基礎防蟻工法は、図15に示すようにまず建物の設計上立上がり部3、9が必要な箇所を地表から所定深さまで掘り下げて溝27を形成し、地盤改良等行った上で、割栗石11を敷き詰め、さらにその上から捨てコンクリート10を流し入れる。そして、建物の外周を囲うように布基礎用の屋外側型枠28を設置するとともに屋外側型枠28と平行に屋内側型枠29を設置する。この屋外側型枠28及び屋内側型枠29の下端は、例えば予めフーチング形成部30を形成できるように膨らんで形成されたものを用いる。なお、図面では屋外側型枠28及び屋内側型枠29の下端にフーチング形成部30が一体形成されているが、フーチング形成部30が別体で形成されており、布基礎24施工時に合体されるものであってもよい。同様に、立上がり部9用に形成された溝27に立上がり部用型枠31を設置する。立上がり部型枠31は、立上がり部9の形状に合わせて、円柱状あるいは、平行に設けられる。
【0079】
次に、屋外側型枠28の内側面に沿って、捨てコンクリート10から所定距離をあけて防蟻板部材4を複数並設する。このとき防蟻板部材4の下端はちょうどフーチング26の上面に位置するように配置する。そして、図16に示すように、屋外側型枠28と屋内側型枠29の間、及び立上がり部用型枠31の内側に図示しない鉄筋を配置して、コンクリートを打設養生する。このようにして布基礎24の外周立上がり部3及び立上がり部9を形成するとともに、フーチング形成部30及び防蟻板部材4の下端によりフーチング26が形成され、フーチング26の屋外側である延出部5に防蟻板部材4の下端が固定される、そして、コンクリートのアンカー効果により、防蟻板部材4は外周立上がり部3の屋外側面に固定される。
【0080】
そして、図17に示すように、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように下端側防蟻シート6をを例えば図示しないが、釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止するとともに、防蟻板部材4の互いに突合わせた側端部同士及び上下端部同士にまたがるように、中間部防蟻シート7を、同様に釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止する。そして、接着モルタルをその屋外側から塗布する等して、下端側防蟻シート6及び中間部防蟻シート7を防蟻板部材4に固定する。その後、フーチング26等を埋め戻して、布基礎24を完成させる。
【0081】
なお、第1の実施形態から第3の実施形態に記載した構成は、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、シロアリが通過できない下端側防蟻シート6が取付けられていることで、防蟻板部材4の下端と延出部5の上面との間からシロアリが侵入することを確実に防止できる構成であるが、コンクリートのアンカー効果により、防蟻板部材4の下端が延出部5の上面にシロアリが侵入できない程度に隙間なく密着している場合は、下端側防蟻シート6を取付けない構成としてもよい。この場合は、より使用する防蟻シートの量を減らすことができる効果がある。
【0082】
〔第4の実施形態〕
次に第4の実施形態の建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法について図18から図20を参照しつつ説明する。なお第1の実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略する。第4の実施形態の建物の防蟻構造1は、図18に示すようにベタ基礎2の外周立上がり部3の屋外側面に沿って複数の防蟻板部材4が並設された建物において用いられる。外周立上がり部3の下端には屋外方向に延出する延出部5が外周に沿って形成されており、防蟻板部材4の下端はこの延出部5の上面に固定されている。そして、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、下端側防蟻シート6が取付けられており、防蟻板部材4と延出部5との間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。この下端側防蟻シート6は、下端が延出部5の中間位置で屋外側面の屋内側に折曲されて延出部5の内部に埋設されている。そしてこの下端側防蟻シート6の先端はやや上方に突き出して形成されている。このように下端側防蟻シートは延出部5の内部に埋設されることで、そのアンカー効果により強固に固定されシロアリの侵入をより確実に防ぐことができる。
【0083】
以上のように構成される第4の実施形態に係る建物の防蟻構造1を施工する第4の基礎防蟻工法は図19に示すように、まず、まず地表から所定深さまで掘り下げて、地盤改良等を行って整地した上で、割栗石11を敷き詰め、さらにその上から捨てコンクリート10を流し入れる。そして、建物の外周を囲うように屋外側型枠20を設置して、その内側に図示しない鉄筋を配置する。そして屋外側型枠20の屋内側の面に沿って防蟻板部材4を隙間なく並設する。このとき下側の防蟻板部材4の下端は、捨てコンクリート10から所定距離をあけて上方に位置するように配置する。そして、この防蟻板部材4の下端に下端側防蟻シート6をその下端が防蟻板部材4の下端よりの下方に位置するように仮固定する。そして、仮固定した下端側防蟻シート6の下端を防蟻板部材4の下方で屋内側に突出するように折り曲げる。
【0084】
そして、図20に示すように、屋外側型枠20に囲まれた内部にコンクリートを打設して、基礎スラブ8を形成する。基礎スラブ8の外周側は屋外側型枠20の屋外側に並設されている防蟻板部材4の屋内側面に密着することになり、防蟻板部材4の下端と捨てコンクリート10との間にもコンクリートが流入して延出部5を形成する。このとき防蟻板部材4と捨てコンクリート10との間には、下端側防蟻シート6の下端が配置されているので、このようにしてコンクリートを打設することで下端側防蟻シート6の下端が延出部5の内部に埋設される。
【0085】
その後第1の基礎防蟻工法と同様の処理を行って、外周立上がり部3を形成し、中間部防蟻シート7を固定する。
【0086】
〔第5の実施形態〕
次に第5の実施形態の建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法について図21から図23を参照しつつ説明する。なお第1の実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略する。第5の実施形態の建物の防蟻構造1は、図21に示すように布基礎24の外周面35に沿って複数の防蟻板部材4が並設された建物において用いられる。布基礎24の外周面35の下端には屋外方向に延出する延出部5を含むフーチング26が形成されており、防蟻板部材4の下端はこの延出部5の上面に固定されている。そして、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、下端側防蟻シート6が取付けられており、防蟻板部材4と延出部5との間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。この下端側防蟻シート6は、下端が延出部5の中間位置で屋外側面の屋内側に折曲されて延出部5の内部に埋設されている。そしてこの下端側防蟻シート6の先端はやや上方に突き出して形成されている。このように下端側防蟻シート6は延出部5の内部に埋設されることで、そのアンカー効果により強固に固定されシロアリの侵入をより確実に防ぐことができる。
【0087】
以上のように構成される第5の実施形態に係る建物の防蟻構造1を施工する第5の基礎防蟻工法は図22に示すように、第3の基礎防蟻工法と同様に、溝27を形成した地盤改良等行った後、布基礎用の屋外側型枠28を設置するとともに屋外側型枠28と平行に屋内側型枠を設置する。そして、防蟻板部材4を屋外側型枠28の内側面に沿って、捨てコンクリート10から所定距離をあけて下端がフーチング26の上面と同じ高さになるように複数並設する。このとき防蟻板部材4の下端付近の屋外側面に下端側防蟻シート6をその下端が防蟻板部材4の下端よりの下方に位置するように仮固定する。そして、仮固定した下端側防蟻シート6の下端を防蟻板部材4の下方で屋内側に突出するように折り曲げる。
【0088】
そして、次に図23に示すように、屋外側型枠28と屋内側型枠29の間に図示しない鉄筋を配置して、コンクリートを打設養生する。このようにして布基礎24の外周立上がり部3及び立上がり部9を形成するとともに、フーチング形成部30及び防蟻板部材4の下端によりフーチング26が形成され、このフーチング26の屋外側である延出部5に防蟻板部材4の下端が固定される。そして、防蟻板部材4の下方に配置されていた下端側防蟻シート6はこのフーチング26の内部に埋設される。そしてその後、第3の基礎防蟻工法同様に、各型枠28、29、30を取り外して、中間部防蟻シート7を取付ける。
【0089】
〔第6の実施形態〕
次に第6の実施形態の建物の防蟻構造1について図24から図25を参照しつつ説明する。なお第1の実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略する。図24に示すように、第6の実施形態の建物の防蟻構造1においては、防蟻板部材4として、下端の両隅部にはそれぞれ切り欠き32が設けられている。
【0090】
そして、図25に示すように外周立上がり部3にはこの切り欠きに合致する形状の突出部33が設けられており、これらが嵌合するように、外周立上がり部3の屋外側面に防蟻板部材4が取り付けられている。さらに、防蟻板部材4同士を突合わせる端部にまたがるように中間部防蟻シート7が固定されている。防蟻板部材4は、第1の基礎防蟻工法と同様に、コンクリートを打設して外周立上がり部3を形成する際に屋外側型枠20の内側に取付けられて、コンクリートを養生することで外周立上がり部3に隙間なく固定されるものであり、このときに、防蟻板部材4の下端に形成された切り欠き32にもコンクリートが打設されることで突出部33が形成されるものであるので、突出部33と切り欠き32とも隙間なく固定される。したがって、シロアリが侵入する可能性がある唯一のルートは、防蟻板部材4同士を突合わせた部分であるが、この部分には中間部防蟻シート7が取付けられておりシロアリが侵入できない。
【0091】
以上のように第6の実施形態に係る建物の防蟻構造1は、建物内部へのシロアリの侵入を確実に防ぐことができるとともに、下端側防蟻シート6を必要としないので、施工コストを削減することができる。
【0092】
なお、第6の実施形態に係る建物の防蟻構造1における建物の基礎防蟻工法は、第1の実施形態と同様のものであるので説明を省略する。
【0093】
なお、本発明の実施の形態は、本実施形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明に係る建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法は、例えば外断熱工法を用いる住宅等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造の全体構成を示す図。
【図2】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造を示す一部省略拡大断面図。
【図3】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造を示す簡略斜視図。
【図4】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造の変形例を示す省略拡大断面図。
【図5】下端側防蟻シート及び中間部防蟻シートの構成を説明する図。
【図6】配管用防蟻シートの構成を説明する図。
【図7】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造において、配管用防蟻シートを用いた例を説明する図。
【図8】第1の基礎防蟻工法を説明する図であって、屋外側型枠に防蟻板部材を取付けた状態を説明する図。
【図9】第1の基礎防蟻工法を説明する図であって、基礎スラブ及び延出部を形成した状態を説明する図。
【図10】第1の基礎防蟻工法を説明する図であって、外周立上がり部を形成した状態を説明する図。
【図11】第1の基礎防蟻工法を説明する図であって、下端側防蟻シート及び中間部防蟻シートを取付けた状態を説明する図。
【図12】第2の実施形態に係る建物の防蟻構造を説明する一部省略拡大断面図。
【図13】第2の実施形態に係る建物の防蟻構造の構成を示す簡略斜視図。
【図14】第3の実施形態に係る建物の防蟻構造を説明する断面図。
【図15】第3の基礎防蟻工法を説明する図であって、屋外側型枠及び屋内側型枠を設置して、防蟻板部材を取付けた状態を説明する図。
【図16】第3の基礎防蟻工法を説明する図であって、コンクリートを打設して、外周立上がり部を形成した状態を示す図。
【図17】第3の基礎防蟻工法を説明する図であって、下端側防蟻シート及び中間部防蟻シートを取付けた状態を説明する図。
【図18】第4の実施形態に係る建物の防蟻構造を説明する一部省略拡大断面図。
【図19】第4の基礎防蟻工法を説明する図であって、屋外側型枠に防蟻板部材を取付けた状態を説明する図。
【図20】第4の基礎防蟻工法を説明する図であって、基礎スラブ及び延出部を形成した状態を説明する図。
【図21】第5の建物の防蟻構造の構成を説明する断面図。
【図22】第5の基礎防蟻工法を説明する図であって、屋外側型枠及び屋内側型枠を設置して、防蟻板部材を取付けた状態を説明する図。
【図23】第5の基礎防蟻工法を説明する図であって、コンクリートを打設して、外周立上がり部を形成した状態を示す図。
【図24】第6の建物の防蟻構造に用いる防蟻板部材4の構成を説明する図。
【図25】第6の建物の防蟻構造を説明する簡略斜視図
【符号の説明】
【0096】
1 建物の防蟻構造
3 外周立上がり部
4 防蟻板部材
5 延出部
6 下端側防蟻シート
7 中間部防蟻シート
8 基礎スラブ
17 配管用防蟻シート
18 筒部
19 鍔部
20 屋外側型枠(ベタ基礎)
21 屋内側型枠(ベタ基礎)
28 屋外側型枠(布基礎)
29 屋内側型枠(布基礎)
32 切り欠き
33 突出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、布基礎やベタ基礎などの基礎の外周立上がり部の屋外側からのシロアリの侵入を防ぐ建物の防蟻構造及び基礎防蟻工法に関し、詳しくは建物基礎の外周立上がり部と、この外周立上がり部の外側面に設けられる防蟻板部材との間からシロアリが侵入することを防ぐ建物の防蟻構造及び建物の基礎防蟻工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物におけるシロアリ防除技術としては、例えば、建物の床下の地面から1メートル程度の範囲の木材や建物の下の土壌に、シロアリを駆除できる薬剤を処理する方法やシロアリに少量の薬剤を含む毒餌を摂食させて根絶するベイト工法などの方法が知られている。しかし、上述の建物の床下に薬剤を処理する方法においては、建物内の環境が化学物質に汚染される点で問題がある。また、ベイト工法においては、コロニー全体の活力を衰退させることにあり、その開始から終了までに少なくとも数ヶ月から2年程度の長期間を要するという問題がある。
【0003】
そこで、上述の問題を解消するために、薬剤を使用せずにシロアリの侵入を物理的に阻止する工法が種々提案されている。シロアリの侵入を物理的に阻止する工法においては、コンクリートで形成された基礎そのものはシロアリに侵食されないので、基礎の立上がりの表面に取付けられた化粧材や断熱材と、基礎の外周立上がり部との間を通過するシロアリの通過経路に、例えば、シロアリの分泌物に耐性を有し、且つ少なくともショアD70高度以上の耐腐食性材料で編まれた網み目シートからなり、この編み目の孔がいずれの方向においても侵入を阻止すべきシロアリの頭部横断面の最大寸法より小径である防蟻シートを取付けて、シロアリが建物内に侵入することを防いでいる(例えば特許文献1)。
【0004】
ところで、建物の布基礎やベタ基礎などの基礎の外周立上がり部の屋外側には、外装材や断熱材などの種々の板部材が固定されることが多い。そして板部材の内部にシロアリが侵入することを防ぐことができるように、これら板部材には防蟻性を有するものも種々提案されている。具体的には例えば、断熱材の原料に防蟻剤を加えて発泡及び硬化させて形成する防蟻断熱材(特許文献2参照)やシロアリに食侵されない硬度及び密度のポリカーボネート系樹脂発泡体からなる防蟻材(特許文献3参照)が提案されている。
【特許文献1】特許第2652902号公報
【特許文献2】特開2006−183267号公報
【特許文献3】特開平11−236736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような防蟻板部材を建物の布基礎やベタ基礎などの基礎の外周立上がり部の屋外側に取付けた場合には、防蟻板部材自体はシロアリに食侵されないものの、防蟻板部材と基礎の外周立上がり部との間隙を通ってシロアリが建物内部に侵入する虞がある。
【0006】
本発明は、建物の外周立上がり部に取付けられる板部材の劣化も防ぐことができ、確実にシロアリの侵入を防ぐことができる建物の防蟻構造及び建物の防蟻工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の建物の防蟻構造は、地中に埋設された建物基礎の外周面の最下端部に沿って屋外方向に延出する延出部が形成された建物基礎の防蟻構造において、前記延出部の上面に下端が配置されて、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、当該防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の建物の防蟻構造は、地中に埋設された建物基礎の外周面の最下端部に沿って屋外方向に延出する延出部が形成された建物基礎の防蟻構造において、前記延出部に下端が配置されて、上端が地表から所定高さに配置されるように、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、該防蟻板部材の上側において、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の非防蟻板部材と、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の建物の防蟻構造は、前記防蟻板部材の屋外側面と前記延出部の屋外側面とにまたがって被覆する下端側防蟻シートを更に備えることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の建物の防蟻構造は、前記下端側防蟻シートの下端は前記延出部の内部に埋設されることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の建物の防蟻構造は、外周立上がり部が設けられる建物基礎の防蟻構造において、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、当該防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の建物の防蟻構造は、建物基礎の外周面の下端部から屋外方向に突出する突出部が所定間隔を開けて複数設置された建物基礎の防蟻構造において、前記建物の外周面に沿って複数並設され、下端の両隅部に形成された切り欠き同士を突合わせて形成した空間に前記突出部が嵌合する形状の防蟻板部材と、該防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の建物の防蟻構造は、前記建物基礎及び前記防蟻板部材を貫通する配管の前記防蟻板部材の屋外側に突出する側の外周面を被覆する筒部と、該筒部の端部から広がって形成されて前記防蟻板部材の屋外側面を被覆する鍔部とを有する配管用防蟻シートをさらに備えることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の建物の防蟻構造は、前記防蟻板部材は、屋外側にシロアリの侵食を防ぐ防蟻層を含む多層構造であることを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載の建物の防蟻構造は、前記防蟻板部材は、断熱性を有することを特徴としている。
【0016】
請求項10に記載の建物の防蟻構造は、前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であることを特徴としている。
【0017】
請求項11に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、当該基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて前記基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0018】
請求項12に記載の建物の防蟻構造は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、当該基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて前記基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、前記防蟻板部材の屋外側面に、その下端が当該防蟻板部材の下端よりも下方に位置するように、シロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを貼り付けるとともに、当該下端側防蟻シートの下端を前記防蟻板部材の下方で屋内側に突出するように折り曲げて、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、前記下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0019】
請求項13に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0020】
請求項14に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外した後に、前記延出部の屋外側面と前記防蟻板部材とにまたがってシロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0021】
請求項15に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、前記下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外し、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0022】
請求項16に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに前記防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きによって形成される空間により前記建物基礎の外周面の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0023】
請求項17に記載の建物の基礎防蟻工法は、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤に配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに前記防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きによって形成される空間により前記外周立上がり部の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴としている。
【0024】
請求項18に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記防蟻性板部材を、前記屋外側型枠の内側面に沿って、上端が地表から所定高さに配置され、且つ、下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように複数並設するとともに、該防蟻板部材の上側において前記屋外側型枠の内側面に沿って非防蟻板部材を複数並設することを特徴としている。
【0025】
請求項19に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記防蟻板部材は、断熱性を有することを特徴としている。
【0026】
請求項20に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の建物の防蟻構造によると、シロアリが侵食できない防蟻板部材が延出部の上面に下端が配置されて、建物基礎の外周面に沿って複数並設されており、防蟻板部材同士の間隙には防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートが被覆されるので防蟻板部材同士の間隙からシロアリが侵入することが無い。したがって、シロアリの侵入を防ぐことができる。また、防蟻板部材はシロアリが侵食できない材料で形成されているので、防蟻板部材がシロアリに侵食されて劣化する虞も無い。さらに、防蟻板部材が防蟻性であるので、防蟻板部材全体を防蟻シートで覆う必要がなく、防蟻シートの使用量を減らすことができる。
【0028】
請求項2に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻板部材は、その上端が地表から所定高さに配置されるように建物基礎の外周面に沿って設されており、この防蟻板部材の上側には非防蟻板部材が並設されている。したがって、シロアリが侵食する可能性が高い地中及び地表から所定高さまでには防蟻板部材が取付けられることでシロアリの侵食を防止することができるとともに、シロアリが侵食する可能性が低い地面から所定高さ以上の箇所には安価な非防蟻板部材を並設しているので、安価にシロアリの侵食を防ぐことができる。
【0029】
請求項3に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻板部材の屋外側面と延出部の屋外側面とにまたがって下端側防蟻シートが被覆されているので、この下端側から防蟻板部材と外周立上がり部との間隙にシロアリが侵入することをも防ぐことができ、より確実にシロアリの侵入を防ぐことができる。
【0030】
請求項4に記載の建物の防蟻構造によると、下端側防蟻シートの下端は前記延出部の内部に埋設されるので、より強固に下端側防蟻シートを固定することができる。
【0031】
請求項5に記載の建物の防蟻構想によると、複数の防蟻板部材同士の間隙を覆うように中間部防蟻シートが設けられているので、この間隙からシロアリが侵入することを抑制することができる。
【0032】
請求項6に記載の建物の防蟻構造によると、建物基礎の外周面の下端には、屋外方向に突出する突出部が所定間隔を開けて複数設置されており、外周立上がり部に沿って並設される複数の防蟻板部材には、この突出部の形状に合致する切り欠きが設けられている。さらに、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートが被覆されている。このように構成されることで、シロアリが防蟻板部材同士の間隙に入り込むことがなくなる。したがって、基礎を形成するコンクリートと防蟻板部材とをシロアリが侵入できないように接着することで、シロアリの侵食を防ぐことができる。また、このように構成することで、突出部を除く、外周立上がり部の屋外側面が全て、防蟻板部材で覆われることとなる。したがって、この構成において防蟻板部材を例えば断熱材で構成すれば、外周立上がり部の下端に延出部を設けた場合に比べてもより効率よく断熱することができる。
【0033】
請求項7に記載の建物の防蟻構造によると、外周立上がり部及び防蟻板部材を貫通する配管の防蟻板部材から屋外側に突出する側の外周面に配管用防蟻シートの筒部が被覆するとともに、防蟻板部材の屋外側側面に配管用防蟻シートの鍔部が被覆するので、シロアリが配管と外周立上がり部及び防蟻板部材の貫通孔との間を通過して建物内に侵入することを防ぐことができる。
【0034】
請求項8に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻板部材は、屋外側にシロアリの侵食を防ぐ防蟻層を設けたものであるので、例えば、防蟻板部材の屋外側の面を防蟻層としてシロアリの侵入を防ぎつつ、屋内側を断熱層として断熱材で形成するなど、用途に合わせて様々な材質で形成することができる。
【0035】
請求項9に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻板部材は断熱性を有するので、外断熱工法において断熱性と防蟻性を兼ね備えた建物の防蟻構造とすることができる。
【0036】
請求項10に記載の建物の防蟻構造によると、防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であるので、例えばモルタル接着剤などにより防蟻シートを固定する際には、メッシュ状であることによるアンカー効果により確実に固定され、シロアリの通過を確実に防止することができる。
【0037】
請求項11に記載の建物の基礎防蟻工法によると、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、その後、屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を外周立上がり部に固定し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆するので、所謂ベタ基礎の場合に外周立上がり部に防蟻板部材が隙間なく固定され、さらに中間部防蟻シートによりシロアリの侵入を確実に防止することができる。
【0038】
請求項12に記載の建物の基礎防蟻工法によると、防蟻板部材の屋外側面に、その下端が当該防蟻板部材の下端よりも下方に位置するように、シロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを貼り付けるとともに、下端側防蟻シートの下端を防蟻板部材の下方で屋内側に突出するように折り曲げて、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外すので、下端側防蟻シートの下端を簡単に延出部の内部に埋設することができ、より強固に下端側防蟻シートを固定することができる。
【0039】
請求項13に記載の建物の基礎防蟻工法によると、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を外周立上がり部に固定し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆するので、所謂布基礎の場合にも外周立上がり部に防蟻板部材が隙間なく固定され、さらに中間部防蟻シートによりシロアリの侵入を確実に防止することができる。
【0040】
請求項14に記載の建物の基礎防蟻工法によると、延出部の屋外側面と防蟻板部材とにまたがってシロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを被覆するので、延出部と防蟻板部材との間からシロアリが防蟻板部材と建物基礎の外周立上がり部との間に侵入することを確実に防止できる。
【0041】
請求項15に記載の建物の基礎防蟻工法によると、防蟻板部材の屋外側面に、その下端が当該防蟻板部材の下端よりも下方に位置するように、シロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを貼り付けるとともに、下端側防蟻シートの下端を防蟻板部材の下方で屋内側に突出するように折り曲げて、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外すので、下端側防蟻シートの下端を簡単に延出部の内部に埋設することができ、より強固に下端側防蟻シートを固定することができる。
【0042】
請求項16に記載の建物の基礎防蟻工法によると、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きに外周立上がり部の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、その後、屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆するので、所謂ベタ基礎において、請求項4のような構成を施工することができ、シロアリが防蟻板部材同士の間隙に入り込むことがなくなるとともに、突出部を除く、外周立上がり部の屋外側面が全て、防蟻板部材で覆われることとなり、防蟻板部材を例えば断熱材で構成すれば、外周立上がり部の下端に延出部を設けた場合に比べてもより効率よく断熱することができる。
【0043】
請求項17に記載の建物の基礎防蟻工法によると、地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が基礎地盤に配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、屋外側型枠と屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きに外周立上がり部の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材を外周立上がり部に固定し、次いで、屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、その後に、防蟻板部材同士の間隙を覆うように、防蟻板部材の屋外側面の互いに突き合せた端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆するので、所謂布基礎において、請求項4のような構成を施工することができ、シロアリが防蟻板部材同士の間隙に入り込むことがなくなるとともに、突出部を除く、外周立上がり部の屋外側面が全て、防蟻板部材で覆われることとなり、防蟻板部材を例えば断熱材で構成すれば、外周立上がり部の下端に延出部を設けた場合に比べてもより効率よく断熱することができる。
【0044】
請求項18に記載の建物の基礎防蟻工法によると、シロアリが侵食する可能性が高い地中及び地表から所定高さまでには防蟻板部材が取付けられることでシロアリの侵食を防止することができるとともに、シロアリが侵食する可能性が低い地面から所定高さ以上の箇所には安価な非防蟻板部材を並設しているので、安価にシロアリの侵食を防ぐことができる。
【0045】
請求項19に記載の建物の基礎防蟻工法によると、防蟻板部材は断熱性を有しているので、外断熱工法において断熱性と防蟻性を兼ね備えた建物の防蟻構造とすることができる。
【0046】
請求項20に記載の建物の基礎防蟻工法は、前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であるので、例えばモルタル接着剤などにより防蟻シートを固定する際には、メッシュ状であることによるアンカー効果により確実に固定され、シロアリの通過を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
〔第1の実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法の第1の実施形態について説明する。まず、図1から図3を参照しつつ、本願の第1の実施形態の建物の防蟻構造1について説明する。第1の実施形態の建物の防蟻構造1は、図1に示すように、ベタ基礎2の外周面34に沿って複数の防蟻板部材4が並設された建物において用いられる。ベタ基礎2の外周面34の下端には屋外方向に延出する延出部5が外周に沿って形成されており、防蟻板部材4の下端はこの延出部5の上面に固定されている。そして、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、シロアリが通過できない下端側防蟻シート6が取付けられており、防蟻板部材4と延出部5との間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。また、防蟻板部材4同士の屋外側面の互いに突き合わせた端部同士にまたがるように、シロアリが通過できない中間部防蟻シート7が取付けられており、隣接する防蟻板部材4同士の間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。なお、図1及び図2などの断面図においては、防蟻板部材4の側端部同士を突合わせた部分に上下方向に被覆する中間部防蟻シート7は図示の都合上省略している。
【0048】
ベタ基礎2は、建物の床下全面的に設けられた基礎スラブ8と、この基礎スラブ8上の外周部分に立設される外周立上がり部3と、基礎スラブ8上に建物の設計上必要に応じて設けられる柱状又は縦横に延びる立上がり部9からなる。そして、この基礎スラブ8の下方には捨てコンクリート10や割栗石11が施工されている。なお、ベタ基礎2の縦断面形状等は特に限定されるものではなく、従来公知の各種の構成を採用できる。また、割栗石11と捨てコンクリート10の間、又は捨てコンクリート10と基礎スラブ8の間には、必要に応じて図示しない防湿シート等を敷設してもよい。
【0049】
外周立上がり部3の屋外側面に沿って複数並設される防蟻板部材4は、例えばシロアリに侵食されない強度を有するポリカーボネート発泡体により形成されたものが挙げられる。このような防蟻板部材4の厚さ、長さ、及び高さは施工性能、断熱性能、防蟻性能の観点から適宜選択できるものであり、例えばその高さは、外周立上がり部3と同じ高さとすることもできるが、本実施形態においては例えば、外周立上がり部3の高さのほぼ半分ほどの高さの防蟻板部材4を用い、上下に2段重ねて取付けている。図3に示すように、この防蟻板部材4はその側端が上側の防蟻板部材4と下側の防蟻板部材4とでずれるように配置されている。
【0050】
なお、防蟻板部材4はこれに限定されるものではなく、クロルピリホス系、有機リン系やピレスロイド系などの防蟻剤を含有したグラスウール、ロックウール、などの繊維系断熱材、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノール樹脂フォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、無機物高充填樹脂フォーム等のシロアリの侵食を防ぐことができ、且つ断熱性能を有する様々な板状部材を防蟻板部材4として用いることができる。また、防蟻性板部材4は断熱材に限定されるものではなく、例えば硬質機材(例えば、タイル、セラミック板、あるいはセメント板、炭酸カルシウム板、珪酸カルシウム板、木片セメント板、炭酸マグネシウム板等、もしくはこれらにガラス繊維、ウィスカー、アラミド繊維、スチール繊維、炭素繊維、各種鉱物繊維、各種骨材等を混入したもの、等を押出成形、プレス成形、射出成形、抄造法、等によって成形した窯業系サイディング材、または各種繊維をクロス状、三次元状に織り、これにセメント、粘土等を含浸してパネル状に成形したものを乾燥、蒸気養生、焼成、等したもの)、さらには金属製パネル、金属製サイディング材(金属製表面材の裏面に合成樹脂発泡体等の芯材を積層した建材、金属製表面材と裏面材間に合成樹脂発泡体等の芯材をサンドイッチした建材、等)、合成樹脂板、プレキャストコンクリート材等の様々な防蟻性板部材4を用いることができる。
【0051】
以上のように、防蟻板部材4が防蟻性を有するとともに断熱性を有する防蟻断熱材で構成されることで、例えば外断熱工法を適用する建物において、建物基礎部分の断熱材として本実施形態の建物の防蟻構造1を用いることができるものであるが、本実施形態の防蟻板部材4は断熱性を有するものに限定されるものではなく、シロアリに侵食されない材料で形成された化粧材等の基礎の外周立上がり部3の外側面に取付けられる様々な防蟻板部材4を用いることができる。
【0052】
また、防蟻板部材4は、単一の材質で形成されるものに限定されるものではなく、例えば図4に示すように、屋外側面に防蟻層としてサイディング材12が取付けられ、屋内側には防蟻性を有さない断熱材13が設けられた2層構造のものであってもよい。このように構成しても、防蟻板部材4と延出部5との間隙は屋外側から下端側防蟻シート6で被覆されており、防蟻板部材4同士の間隙も屋外側から中間部防蟻シート7で被覆されているので、シロアリがサイディング材12の内側の断熱材に到達することはなく、防蟻性を維持することができる。また、このように内側を非防蟻層とすることで、防蟻性を有さない種々の材料を用いることができ、断熱性や材料コストなどの観点から適切な材料を選択することができる。
【0053】
さらにまた防蟻板部材4は、例えば表面に防蟻性能を有する部材を設けていれば3層以上の多層で構成することもでき、例えば、防蟻性及び断熱性を有する各種の防蟻板部材4に防湿シートなどの防湿材、遮音材、吸音材、防振材、タイル、モルタル等などを複合することもできる。また、ポリカーボネート発泡板と、グラスウール、ロックウール、などの繊維系断熱材、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノール樹脂フォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、無機物高充填樹脂フォームなどの発泡樹脂系断熱材を、接着剤等を用いて接着させた複合防蟻断熱材として用いることもできる。このようにすると高価なポリカーボネート発泡材料の使用量を減らした上で、防蟻材の厚さを確保することができ、従来通りの断熱性能を発揮することができる。
【0054】
以上のような、防蟻板部材4を外周立上がり部3へ取付けるに際しては、外周立上がり部3の外側面と防蟻板部材4とを例えば接着モルタルなどのシロアリに侵食されない接着剤を介して固定させることができる。また、防蟻板部材4の接着方法としてはこれに限られるものではなく、例えばコンクリートを打設して外周立上がり部3を形成する前に、外周立上がり部3を形成するために用いる型枠のうち屋外側に配置される型枠の内側面に防蟻板部材4を固定して、その後コンクリートを打設養生することで、防蟻板部材4を外周立上がり部3に固定することもできる。
【0055】
ここで、シロアリとは、ゴキブリに近縁の社会生活をする不完全変態の昆虫であって、シロアリ目(等翅類)Isopteraの総称である。このシロアリは、非変形性の堅い頭部を有している。このようなシロアリとしては、例えば、ヤマトシロアリやイエシロアリ等の各種のものが挙げられる。
【0056】
また、下端側防蟻シート6及び中間部防蟻シート7としては、例えば、「アリ断(商品名,フクビ化学工業株式会社製)」等の防蟻剤を練り込んだ合成樹脂シート、「シロアリシャッター(商品名,大日本木材防腐工業株式会社製)」等の防蟻剤を塗布したガラス繊維シート等の防蟻性を有する従来公知の各種のシート材や板材等が挙げられるが、シロアリから放出されるギ酸等の分泌物に耐性で、かつ、シロアリが噛み砕くことができない硬さである少なくとも約ショアD70硬度を有し、使用環境下で数十年の耐用年数を有する耐用性の耐腐食性材料からなるものが好ましい。
【0057】
上述のような下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7としては、例えば、耐腐食性材料からなる金属製や合成樹脂製等のシート材や板材等が挙げられるが、図5に示すように、ステンレス鋼ワイヤ14から製織され、いずれの方向においてもシロアリの頭部横断面の最大直線寸法より小さい直線寸法の多数の網目(孔)15を有するステンレスメッシュ〔例えば「ターミメッシュ(TERMI−MESH,商品名)」,ターミメッシュジャパン株式会社製〕等、柔軟性に優れ、かつ、切断、折曲による造形、折曲時の輪郭付け等が容易なメッシュシートが好適である。
【0058】
なお、シロアリバリアー材としてのメッシュシートは、ステンレスメッシュの他、例えば、セラミックス・ガラス・合成樹脂・金属(特にステンレス)等の繊維・フィラメント・ストランド等から製織又は製編等されたワイヤーラス等や不織布、あるいはパンチングメタル、メタルラス等の各種のものを使用できる。要するに、網目15等の多数の孔を有していればよい。この孔の形状は特に限定されるものではなく、矩形状や円状等の適宜の形状とすることができる。
【0059】
以上のように構成される下端側防蟻シート6は、図1から図3に示すように、ベタ基礎2の外周面34の下端から屋外側に延出する延出部5の屋外側面と防蟻板部材4の屋外側面の下端付近とにまたがって被覆される。また、中間部防蟻シート7は、図3に示すように、複数並設される防蟻板部材4の互いに突合わせる側端部同士、及び互いに突合わせる上下端同士の屋外側面にまたがって被覆される。これら下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7を取付けるときには、防蟻シートを所定の長さにカットして、被覆する箇所に例えば釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止する。そして下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7の屋外側から、モルタルに適宜のポリマー等を配合した接着モルタル等を塗布することによって外周立上がり部3及び防蟻板部材4に接着等すればよい。
【0060】
このように、延出部5と防蟻板部材4との間隙は下端側防蟻シート6で被覆されており、防蟻板部材4同士の間隙は中間部防蟻シート7で被覆されているので、シロアリが外周立上がり部3と防蟻板部材4との間隙に侵入することはできず、建物内にシロアリが侵入することを阻止できる。したがって、建物内の環境を汚染することなく軸組や床組等をシロアリによる食害から確実に保護できる。
【0061】
ここで、耐腐食性材料からなる下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7を使用した場合は、シロアリによって食い破られるおそれがないので、シロアリの床下空間への侵入をより確実に阻止できるという利点がある。また、下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7としてメッシュシートを使用した場合でも、網目15等の孔の直線寸法をいずれの方向においてもシロアリの頭部横断面の最大直線寸法より小さく形成することで、シロアリがメッシュシートを通り抜けることを防止できる。また、メッシュシートは多数の孔14を有しているので、接着モルタルによる接着等の際にアンカー効果によってより強固に取付けできるという利点がある。
【0062】
なお、このように下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7として用いられるメッシュシートの網目15の寸法は、イエシロアリの職蟻で1.1〜1.25mm程度、ヤマトシロアリの職蟻で1.0〜1.2mm程度であるので、ヤマトシロアリが生息する地域では、孔の直線寸法をいずれの方向においても1.0mm程度以下としておくのが望ましい。また、接着モルタルに含まれる細骨材としては、シロアリが噛み砕くことができない砂等が挙げられるが、塗布した接着モルタルがいずれの部分においてもシロアリによって食い破られないように、孔15を通過する大きさのものを使用すると共に、互いの間隔が1.0mmより小さくなるように配合するのが望ましい。
【0063】
また、外周立上がり部3及びこの外周立上がり部3の屋外側面を含むベタ基礎2の外周面34に固定される防蟻板部材4には建物内部への給排水を行う配管16が貫通しており、この配管16を通して建物内部への給水や建物内部からの排水を行う。この外周立上がり部3の貫通孔及び防蟻板部材4の貫通孔と配管16の外周面との間に間隙ができると、そこを通過してシロアリが建物内に侵入する虞が生じる。そこで、この配管16と外周立上がり部3との間隙から建物内部にシロアリが侵入することを防ぐために、配管用防蟻シート17を用いる。
【0064】
この配管用防蟻シート17は、図6に示すようにハット形であり、上述の下端側防蟻シート6、及び中間部防蟻シート7と同様のステンレスメッシュシート、防蟻剤を練り込んだ合成樹脂シート、防蟻剤を塗布したガラス繊維シート、耐腐食性材料からなる金属製や合成樹脂製等のシート材等の防蟻性を有する各種のシート材を配管16の外周に外挿される大きさの円筒形に加工して筒部18を形成し、更に一端側に上述と同様の防蟻材料で形成されて広がる鍔部19を形成したものである。
【0065】
この配管用防蟻シート17を取り付けるときには、図7に示すように、この配管用防蟻シート17の筒部16を防蟻板部材4の屋外側に突出している配管16に外挿して、その鍔部19を防蟻板部材4の屋外側面に当接させる。そして、配管用防蟻シート17を接着モルタル等の接着剤で配管16の外周面及び防蟻板部材4の屋外側面に接着する。このようにすると、シロアリが防蟻板部材4及び外周立上がり部3の貫通孔と、配管16の外周面との間隙に入り込むことができず、建物内部への侵入を阻止することができる。
【0066】
次に、以上のように構成される第1の実施形態に係る建物の防蟻構造1を施工する第1の基礎防蟻工法について図8から図11を参照しつつ説明する。
【0067】
第1の基礎防蟻工法は、図8に示すように、まず地表から所定深さまで掘り下げて、地盤改良等を行って整地した上で、割栗石11を敷き詰め、さらにその上から捨てコンクリート10を流し入れる。そして、建物の外周を囲うように屋外側型枠20を設置して、その内側に図示しない鉄筋等を配置する。そして屋外側型枠20の屋内側の面に沿って防蟻板部材4を隙間なく並設する。このとき下側の防蟻板部材4の下端は、捨てコンクリート10から所定距離をあけて上方に位置するように配置する。その後、図9に示すように、屋外側型枠20に囲まれた内部にコンクリートを打設して、基礎スラブ8を形成する。基礎スラブ8の外周側は屋外側型枠20の屋外側に並設されている防蟻板部材4の屋内側面に密着することになり、防蟻板部材4の下端と捨てコンクリートとの間にもコンクリートが流入して延出部5を形成する。
【0068】
そして次に、図10に示すように、基礎スラブ8上に屋外側型枠20と平行に屋内側型枠21を設置し、さらに必要に応じて柱状又は縦横に延びる立上がり部用型枠22を設置し、屋外側型枠20と屋内側型枠21の間及び立上がり部用型枠22の内部にコンクリートを打設する。そして所定時間養生して、屋外側型枠20、屋内側型枠21、立上がり部用型枠22を取り外して、基礎スラブ8、基礎スラブ8の外周下端から屋外方向に延びる延出部5、外周立上がり部3、及び立上がり部9からなるベタ基礎2を形成するとともに、コンクリートのアンカー効果により防蟻板部材4を基礎スラブ8及び外周立上がり部3の屋外側面に固定する。
【0069】
そして、図3及び図11に示すように、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように下端側防蟻シート6をを例えば図示しないが、釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止するとともに、防蟻板部材4の互いに突合わせた側端部同士及び上下端部同士にまたがるように、中間部防蟻シート7を、同様に釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止する。そして、接着モルタルをその屋外側から塗布する等して、下端側防蟻シート6及び中間部防蟻シート7を防蟻板部材4に固定する。
【0070】
〔第2の実施形態〕
次に第2の実施形態に係る建物の防蟻構造1及び建物の基礎防蟻工法について、図12及び図13を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
第2の実施形態に係る建物の防蟻構造1は第1の実施形態と同様に、例えばベタ基礎2を有する建物の防蟻構造1であって、ベタ基礎2の外周面34に沿って上下2段に複数設けられる板部材のうち、下側に複数並設される板部材を防蟻板部材4とし、この防蟻板部材4の上側に複数並設される板部材を非防蟻板部材23としたものである。
【0072】
防蟻板部材4は、ベタ基礎2の外周面34に沿って設けられるものであり、ベタ基礎2の外周の下端に形成された延出部5の上面に下端が密着して固定されつつ地中に埋設されているとともに、上端は外周立上がり部3の屋外側面の上下方向の中間位置であって、少なくとも地表よりも上方に位置している。そして、この防蟻板部材4の上端に下端が当接するように、上側にシロアリが侵食可能な非防蟻板部材23が設けられており、この非防蟻板部材23としては、例えば防蟻性能を有さないグラスウール、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等を上げることができるが、これに限定されるものではなく化粧材や防湿材などの様々な材料を用いることができる。
【0073】
そして、第1の実施形態と同様に、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近と延出部5の屋外側面とにまたがって下端側防蟻シート6が被覆しており、図13に示すように、防蟻板部材4同士の互いに突合わせる側端部とにまたがって中間部防蟻シート7が被覆している。このように構成することで、地中及び地表から所定高さまでは防蟻板部材4、下端側防蟻シート6、中間部防蟻シート7で覆われているので、シロアリが防蟻板部材4と外周立上がり部3との間隙に侵入することが無い。シロアリは生態上地表に出て活動することは稀であるので、この第2の実施形態の建物の防蟻構造1を用いても、第1の実施形態の建物の防蟻構造1と同様に、地中からの侵入を防止することで、シロアリが板部材に覆われた外周立上がり部3の表面を伝って建物内部に侵入することを防止することができる。また、この第2の実施形態においては、防蟻板部材4の上側には非防蟻板部材23が固定されている。このようにシロアリに侵食される虞が無い部分には防蟻性を有していない板部材を選択することができるので、例えば安価なものやより断熱性能に優れる板部材を選択して用いることができる。また、図13に示すように、防蟻板部材4の突合わせる部分のみを中間部防蟻シート7で覆うことでシロアリの侵入を防ぐことができるので、施工作業が簡略化できるとともに、使用する中間部防蟻シート7を少なくすることができる。
【0074】
なお、このような第2の実施形態の建物の防蟻構造1の施工方法は、第1の基礎防蟻工法と同様であるので説明を省略する。
【0075】
〔第3の実施形態〕
次に第3の実施形態の建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法について図14から図18を参照しつつ説明する。なお第1の実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略する。図14に示すように、第3の実施形態の建物の防蟻構造1は、布基礎24の外周面35に沿って複数防蟻板部材4が並設された建物において用いられる。布基礎24の外周に沿って立設される外周立上がり部3の下端は屋外方向に延出する延出部5が設けられており、屋内側方向に延びる内側延出部25とともにフーチング26を形成している。そして防蟻板部材4の下端はこの延出部5の上面に固定されている。さらに、この防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、シロアリが通過できない下端側防蟻シート6が取付けられており、防蟻板部材4と延出部5との間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。また、防蟻板部材4同士の屋外側面の互いに突き合わせた端部同士にまたがるように、シロアリが通過できない中間部防蟻シート7が取付けられており、隣接する防蟻板部材4同士の間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。
【0076】
布基礎24は、建物の床下に外周部分に立設される外周立上がり部3と、建物の設計上必要に応じて設けられる柱状又は縦横に延びる立上がり部9とからなる。そして、これら外周立上がり部3及び立上がり部9の下方には捨てコンクリート10や割栗石11が施工されている。なお、布基礎24の形状はこれに限定されるものではなく、従来公知の各種の構成を採用できる。また、割栗石11と捨てコンクリート10の間、又は捨てコンクリート10と外周立上がり部3及び立上がり部9の間には、必要に応じて図示しない防湿シート等を敷設してもよい。
【0077】
次に、以上のように構成される第3の実施形態に係る建物の防蟻構造1を施工する第3の基礎防蟻工法について図15から図18を参照しつつ説明する。
【0078】
第3の基礎防蟻工法は、図15に示すようにまず建物の設計上立上がり部3、9が必要な箇所を地表から所定深さまで掘り下げて溝27を形成し、地盤改良等行った上で、割栗石11を敷き詰め、さらにその上から捨てコンクリート10を流し入れる。そして、建物の外周を囲うように布基礎用の屋外側型枠28を設置するとともに屋外側型枠28と平行に屋内側型枠29を設置する。この屋外側型枠28及び屋内側型枠29の下端は、例えば予めフーチング形成部30を形成できるように膨らんで形成されたものを用いる。なお、図面では屋外側型枠28及び屋内側型枠29の下端にフーチング形成部30が一体形成されているが、フーチング形成部30が別体で形成されており、布基礎24施工時に合体されるものであってもよい。同様に、立上がり部9用に形成された溝27に立上がり部用型枠31を設置する。立上がり部型枠31は、立上がり部9の形状に合わせて、円柱状あるいは、平行に設けられる。
【0079】
次に、屋外側型枠28の内側面に沿って、捨てコンクリート10から所定距離をあけて防蟻板部材4を複数並設する。このとき防蟻板部材4の下端はちょうどフーチング26の上面に位置するように配置する。そして、図16に示すように、屋外側型枠28と屋内側型枠29の間、及び立上がり部用型枠31の内側に図示しない鉄筋を配置して、コンクリートを打設養生する。このようにして布基礎24の外周立上がり部3及び立上がり部9を形成するとともに、フーチング形成部30及び防蟻板部材4の下端によりフーチング26が形成され、フーチング26の屋外側である延出部5に防蟻板部材4の下端が固定される、そして、コンクリートのアンカー効果により、防蟻板部材4は外周立上がり部3の屋外側面に固定される。
【0080】
そして、図17に示すように、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように下端側防蟻シート6をを例えば図示しないが、釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止するとともに、防蟻板部材4の互いに突合わせた側端部同士及び上下端部同士にまたがるように、中間部防蟻シート7を、同様に釘、止めワッシャ付き釘、ステープル等の止着部材で仮止する。そして、接着モルタルをその屋外側から塗布する等して、下端側防蟻シート6及び中間部防蟻シート7を防蟻板部材4に固定する。その後、フーチング26等を埋め戻して、布基礎24を完成させる。
【0081】
なお、第1の実施形態から第3の実施形態に記載した構成は、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、シロアリが通過できない下端側防蟻シート6が取付けられていることで、防蟻板部材4の下端と延出部5の上面との間からシロアリが侵入することを確実に防止できる構成であるが、コンクリートのアンカー効果により、防蟻板部材4の下端が延出部5の上面にシロアリが侵入できない程度に隙間なく密着している場合は、下端側防蟻シート6を取付けない構成としてもよい。この場合は、より使用する防蟻シートの量を減らすことができる効果がある。
【0082】
〔第4の実施形態〕
次に第4の実施形態の建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法について図18から図20を参照しつつ説明する。なお第1の実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略する。第4の実施形態の建物の防蟻構造1は、図18に示すようにベタ基礎2の外周立上がり部3の屋外側面に沿って複数の防蟻板部材4が並設された建物において用いられる。外周立上がり部3の下端には屋外方向に延出する延出部5が外周に沿って形成されており、防蟻板部材4の下端はこの延出部5の上面に固定されている。そして、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、下端側防蟻シート6が取付けられており、防蟻板部材4と延出部5との間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。この下端側防蟻シート6は、下端が延出部5の中間位置で屋外側面の屋内側に折曲されて延出部5の内部に埋設されている。そしてこの下端側防蟻シート6の先端はやや上方に突き出して形成されている。このように下端側防蟻シートは延出部5の内部に埋設されることで、そのアンカー効果により強固に固定されシロアリの侵入をより確実に防ぐことができる。
【0083】
以上のように構成される第4の実施形態に係る建物の防蟻構造1を施工する第4の基礎防蟻工法は図19に示すように、まず、まず地表から所定深さまで掘り下げて、地盤改良等を行って整地した上で、割栗石11を敷き詰め、さらにその上から捨てコンクリート10を流し入れる。そして、建物の外周を囲うように屋外側型枠20を設置して、その内側に図示しない鉄筋を配置する。そして屋外側型枠20の屋内側の面に沿って防蟻板部材4を隙間なく並設する。このとき下側の防蟻板部材4の下端は、捨てコンクリート10から所定距離をあけて上方に位置するように配置する。そして、この防蟻板部材4の下端に下端側防蟻シート6をその下端が防蟻板部材4の下端よりの下方に位置するように仮固定する。そして、仮固定した下端側防蟻シート6の下端を防蟻板部材4の下方で屋内側に突出するように折り曲げる。
【0084】
そして、図20に示すように、屋外側型枠20に囲まれた内部にコンクリートを打設して、基礎スラブ8を形成する。基礎スラブ8の外周側は屋外側型枠20の屋外側に並設されている防蟻板部材4の屋内側面に密着することになり、防蟻板部材4の下端と捨てコンクリート10との間にもコンクリートが流入して延出部5を形成する。このとき防蟻板部材4と捨てコンクリート10との間には、下端側防蟻シート6の下端が配置されているので、このようにしてコンクリートを打設することで下端側防蟻シート6の下端が延出部5の内部に埋設される。
【0085】
その後第1の基礎防蟻工法と同様の処理を行って、外周立上がり部3を形成し、中間部防蟻シート7を固定する。
【0086】
〔第5の実施形態〕
次に第5の実施形態の建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法について図21から図23を参照しつつ説明する。なお第1の実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略する。第5の実施形態の建物の防蟻構造1は、図21に示すように布基礎24の外周面35に沿って複数の防蟻板部材4が並設された建物において用いられる。布基礎24の外周面35の下端には屋外方向に延出する延出部5を含むフーチング26が形成されており、防蟻板部材4の下端はこの延出部5の上面に固定されている。そして、防蟻板部材4の屋外側面の下端付近から延出部5の屋外側面にまたがるように、下端側防蟻シート6が取付けられており、防蟻板部材4と延出部5との間隙にシロアリが侵入することを防いでいる。この下端側防蟻シート6は、下端が延出部5の中間位置で屋外側面の屋内側に折曲されて延出部5の内部に埋設されている。そしてこの下端側防蟻シート6の先端はやや上方に突き出して形成されている。このように下端側防蟻シート6は延出部5の内部に埋設されることで、そのアンカー効果により強固に固定されシロアリの侵入をより確実に防ぐことができる。
【0087】
以上のように構成される第5の実施形態に係る建物の防蟻構造1を施工する第5の基礎防蟻工法は図22に示すように、第3の基礎防蟻工法と同様に、溝27を形成した地盤改良等行った後、布基礎用の屋外側型枠28を設置するとともに屋外側型枠28と平行に屋内側型枠を設置する。そして、防蟻板部材4を屋外側型枠28の内側面に沿って、捨てコンクリート10から所定距離をあけて下端がフーチング26の上面と同じ高さになるように複数並設する。このとき防蟻板部材4の下端付近の屋外側面に下端側防蟻シート6をその下端が防蟻板部材4の下端よりの下方に位置するように仮固定する。そして、仮固定した下端側防蟻シート6の下端を防蟻板部材4の下方で屋内側に突出するように折り曲げる。
【0088】
そして、次に図23に示すように、屋外側型枠28と屋内側型枠29の間に図示しない鉄筋を配置して、コンクリートを打設養生する。このようにして布基礎24の外周立上がり部3及び立上がり部9を形成するとともに、フーチング形成部30及び防蟻板部材4の下端によりフーチング26が形成され、このフーチング26の屋外側である延出部5に防蟻板部材4の下端が固定される。そして、防蟻板部材4の下方に配置されていた下端側防蟻シート6はこのフーチング26の内部に埋設される。そしてその後、第3の基礎防蟻工法同様に、各型枠28、29、30を取り外して、中間部防蟻シート7を取付ける。
【0089】
〔第6の実施形態〕
次に第6の実施形態の建物の防蟻構造1について図24から図25を参照しつつ説明する。なお第1の実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略する。図24に示すように、第6の実施形態の建物の防蟻構造1においては、防蟻板部材4として、下端の両隅部にはそれぞれ切り欠き32が設けられている。
【0090】
そして、図25に示すように外周立上がり部3にはこの切り欠きに合致する形状の突出部33が設けられており、これらが嵌合するように、外周立上がり部3の屋外側面に防蟻板部材4が取り付けられている。さらに、防蟻板部材4同士を突合わせる端部にまたがるように中間部防蟻シート7が固定されている。防蟻板部材4は、第1の基礎防蟻工法と同様に、コンクリートを打設して外周立上がり部3を形成する際に屋外側型枠20の内側に取付けられて、コンクリートを養生することで外周立上がり部3に隙間なく固定されるものであり、このときに、防蟻板部材4の下端に形成された切り欠き32にもコンクリートが打設されることで突出部33が形成されるものであるので、突出部33と切り欠き32とも隙間なく固定される。したがって、シロアリが侵入する可能性がある唯一のルートは、防蟻板部材4同士を突合わせた部分であるが、この部分には中間部防蟻シート7が取付けられておりシロアリが侵入できない。
【0091】
以上のように第6の実施形態に係る建物の防蟻構造1は、建物内部へのシロアリの侵入を確実に防ぐことができるとともに、下端側防蟻シート6を必要としないので、施工コストを削減することができる。
【0092】
なお、第6の実施形態に係る建物の防蟻構造1における建物の基礎防蟻工法は、第1の実施形態と同様のものであるので説明を省略する。
【0093】
なお、本発明の実施の形態は、本実施形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明に係る建物の防蟻構造1及び基礎防蟻工法は、例えば外断熱工法を用いる住宅等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造の全体構成を示す図。
【図2】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造を示す一部省略拡大断面図。
【図3】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造を示す簡略斜視図。
【図4】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造の変形例を示す省略拡大断面図。
【図5】下端側防蟻シート及び中間部防蟻シートの構成を説明する図。
【図6】配管用防蟻シートの構成を説明する図。
【図7】第1の実施形態に係る建物の防蟻構造において、配管用防蟻シートを用いた例を説明する図。
【図8】第1の基礎防蟻工法を説明する図であって、屋外側型枠に防蟻板部材を取付けた状態を説明する図。
【図9】第1の基礎防蟻工法を説明する図であって、基礎スラブ及び延出部を形成した状態を説明する図。
【図10】第1の基礎防蟻工法を説明する図であって、外周立上がり部を形成した状態を説明する図。
【図11】第1の基礎防蟻工法を説明する図であって、下端側防蟻シート及び中間部防蟻シートを取付けた状態を説明する図。
【図12】第2の実施形態に係る建物の防蟻構造を説明する一部省略拡大断面図。
【図13】第2の実施形態に係る建物の防蟻構造の構成を示す簡略斜視図。
【図14】第3の実施形態に係る建物の防蟻構造を説明する断面図。
【図15】第3の基礎防蟻工法を説明する図であって、屋外側型枠及び屋内側型枠を設置して、防蟻板部材を取付けた状態を説明する図。
【図16】第3の基礎防蟻工法を説明する図であって、コンクリートを打設して、外周立上がり部を形成した状態を示す図。
【図17】第3の基礎防蟻工法を説明する図であって、下端側防蟻シート及び中間部防蟻シートを取付けた状態を説明する図。
【図18】第4の実施形態に係る建物の防蟻構造を説明する一部省略拡大断面図。
【図19】第4の基礎防蟻工法を説明する図であって、屋外側型枠に防蟻板部材を取付けた状態を説明する図。
【図20】第4の基礎防蟻工法を説明する図であって、基礎スラブ及び延出部を形成した状態を説明する図。
【図21】第5の建物の防蟻構造の構成を説明する断面図。
【図22】第5の基礎防蟻工法を説明する図であって、屋外側型枠及び屋内側型枠を設置して、防蟻板部材を取付けた状態を説明する図。
【図23】第5の基礎防蟻工法を説明する図であって、コンクリートを打設して、外周立上がり部を形成した状態を示す図。
【図24】第6の建物の防蟻構造に用いる防蟻板部材4の構成を説明する図。
【図25】第6の建物の防蟻構造を説明する簡略斜視図
【符号の説明】
【0096】
1 建物の防蟻構造
3 外周立上がり部
4 防蟻板部材
5 延出部
6 下端側防蟻シート
7 中間部防蟻シート
8 基礎スラブ
17 配管用防蟻シート
18 筒部
19 鍔部
20 屋外側型枠(ベタ基礎)
21 屋内側型枠(ベタ基礎)
28 屋外側型枠(布基礎)
29 屋内側型枠(布基礎)
32 切り欠き
33 突出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された建物基礎の外周面の最下端部に沿って屋外方向に延出する延出部が形成された建物基礎の防蟻構造において、
前記延出部の上面に下端が配置されて、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、
前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、当該防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴とする建物の防蟻構造。
【請求項2】
地中に埋設された建物基礎の外周面の最下端部に沿って屋外方向に延出する延出部が形成された建物基礎の防蟻構造において、
前記延出部に下端が配置されて、上端が地表から所定高さに配置されるように、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、
該防蟻板部材の上側において、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の非防蟻板部材と、
前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴とする建物の防蟻構造。
【請求項3】
前記防蟻板部材の屋外側面と前記延出部の屋外側面とにまたがって被覆する下端側防蟻シートを更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物の防蟻構造。
【請求項4】
前記下端側防蟻シートの下端は前記延出部の内部に埋設されることを特徴とする請求項3に記載の建物の防蟻構造。
【請求項5】
外周立上がり部が設けられる建物基礎の防蟻構造において、
前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、
前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、当該防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴とする建物の防蟻構造。
【請求項6】
建物基礎の外周面の下端部から屋外方向に突出する突出部が所定間隔を開けて複数設置された建物基礎の防蟻構造において、
前記建物の外周面に沿って複数並設され、下端の両隅部に形成された切り欠き同士を突合わせて形成した空間に前記突出部が嵌合する形状の防蟻板部材と、
該防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴とする建物の防蟻構造。
【請求項7】
前記建物基礎及び前記防蟻板部材を貫通する配管の前記防蟻板部材の屋外側に突出する側の外周面を被覆する筒部と、該筒部の端部から広がって形成されて前記防蟻板部材の屋外側面を被覆する鍔部とを有する配管用防蟻シートをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の建物の防蟻構造。
【請求項8】
前記防蟻板部材は、屋外側にシロアリの侵食を防ぐ防蟻層を含む多層構造であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の建物の防蟻構造。
【請求項9】
前記防蟻板部材は、断熱性を有することを特徴とする請求項1から請求項8に記載の防蟻構造。
【請求項10】
前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の建物の防蟻構造。
【請求項11】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、当該基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、
その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて前記基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、
その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の基礎防蟻工法。
【請求項12】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、当該基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて前記基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、
前記防蟻板部材の屋外側面に、その下端が当該防蟻板部材の下端よりも下方に位置するように、シロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを貼り付けるとともに、当該下端側防蟻シートの下端を前記防蟻板部材の下方で屋内側に突出するように折り曲げて、
その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、前記下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の防蟻工法。
【請求項13】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、
その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の基礎防蟻工法。
【請求項14】
前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外した後に、前記延出部の屋外側面と前記防蟻板部材とにまたがってシロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを被覆することを特徴とする請求項11又は請求項13に記載の建物の基礎防蟻工法。
【請求項15】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、
その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、前記下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外し、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の防蟻工法。
【請求項16】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに前記防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きによって形成される空間により前記建物基礎の外周面の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、
その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、
その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の基礎防蟻工法。
【請求項17】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤に配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに前記防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きによって形成される空間により前記外周立上がり部の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、
前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、
その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の基礎防蟻工法。
【請求項18】
前記防蟻性板部材を、前記屋外側型枠の内側面に沿って、上端が地表から所定高さに配置され、且つ、下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように複数並設するとともに、該防蟻板部材の上側において前記屋外側型枠の内側面に沿って非防蟻板部材を複数並設することを特徴とする請求項11から請求項17のいずれかに記載の建物の防蟻工法。
【請求項19】
前記防蟻板部材は、断熱性を有することを特徴とする請求項11から請求項18に記載の建物の基礎防蟻工法。
【請求項20】
前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であることを特徴とする請求項11から請求項19のいずれかに記載の建物の基礎防蟻工法。
【請求項1】
地中に埋設された建物基礎の外周面の最下端部に沿って屋外方向に延出する延出部が形成された建物基礎の防蟻構造において、
前記延出部の上面に下端が配置されて、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、
前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、当該防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴とする建物の防蟻構造。
【請求項2】
地中に埋設された建物基礎の外周面の最下端部に沿って屋外方向に延出する延出部が形成された建物基礎の防蟻構造において、
前記延出部に下端が配置されて、上端が地表から所定高さに配置されるように、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、
該防蟻板部材の上側において、前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の非防蟻板部材と、
前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴とする建物の防蟻構造。
【請求項3】
前記防蟻板部材の屋外側面と前記延出部の屋外側面とにまたがって被覆する下端側防蟻シートを更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物の防蟻構造。
【請求項4】
前記下端側防蟻シートの下端は前記延出部の内部に埋設されることを特徴とする請求項3に記載の建物の防蟻構造。
【請求項5】
外周立上がり部が設けられる建物基礎の防蟻構造において、
前記建物基礎の外周面に沿って並設される複数の防蟻板部材と、
前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、当該防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴とする建物の防蟻構造。
【請求項6】
建物基礎の外周面の下端部から屋外方向に突出する突出部が所定間隔を開けて複数設置された建物基礎の防蟻構造において、
前記建物の外周面に沿って複数並設され、下端の両隅部に形成された切り欠き同士を突合わせて形成した空間に前記突出部が嵌合する形状の防蟻板部材と、
該防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって被覆する中間部防蟻シートと、を備えることを特徴とする建物の防蟻構造。
【請求項7】
前記建物基礎及び前記防蟻板部材を貫通する配管の前記防蟻板部材の屋外側に突出する側の外周面を被覆する筒部と、該筒部の端部から広がって形成されて前記防蟻板部材の屋外側面を被覆する鍔部とを有する配管用防蟻シートをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の建物の防蟻構造。
【請求項8】
前記防蟻板部材は、屋外側にシロアリの侵食を防ぐ防蟻層を含む多層構造であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の建物の防蟻構造。
【請求項9】
前記防蟻板部材は、断熱性を有することを特徴とする請求項1から請求項8に記載の防蟻構造。
【請求項10】
前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の建物の防蟻構造。
【請求項11】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、当該基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、
その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて前記基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、
その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の基礎防蟻工法。
【請求項12】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに、当該基礎スラブの下端の外周から屋外方向に延出する延出部を形成し、その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて前記基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、
前記防蟻板部材の屋外側面に、その下端が当該防蟻板部材の下端よりも下方に位置するように、シロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを貼り付けるとともに、当該下端側防蟻シートの下端を前記防蟻板部材の下方で屋内側に突出するように折り曲げて、
その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、前記下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の防蟻工法。
【請求項13】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、
その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の基礎防蟻工法。
【請求項14】
前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外した後に、前記延出部の屋外側面と前記防蟻板部材とにまたがってシロアリの通過を防ぐ下端側防蟻シートを被覆することを特徴とする請求項11又は請求項13に記載の建物の基礎防蟻工法。
【請求項15】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように防蟻板部材を複数並設して、
その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、前記外周立上がり部を形成するとともに当該外周立上がり部の下端から屋外方向に延出する延出部を形成し、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定するとともに、前記下端側防蟻シートの下端を前記延出部の内部に埋設し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外し、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の防蟻工法。
【請求項16】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に屋外側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、前記屋外側型枠の内側にコンクリートを打設養生して基礎スラブを形成するとともに前記防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きによって形成される空間により前記建物基礎の外周面の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、
その後、前記屋外側型枠と平行に所定間隔をあけて基礎スラブ上に屋内側型枠を配置してから、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに、前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、
その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の基礎防蟻工法。
【請求項17】
地表を整地して所定深度まで掘り下げて基礎地盤を形成した後、建物基礎の外周となる部分に外周立上がり部用の屋外側型枠を配置するとともに、当該屋外側型枠と平行に屋内側型枠を配置し、
前記屋外側型枠の内側面に沿って、その下端が前記基礎地盤に配置されるように両隅部が切り欠かれた防蟻板部材を複数並設して、その後、内側面に沿って防蟻板部材を複数並設している前記屋外側型枠と前記屋内側型枠との間にコンクリートを打設養生して、外周立上がり部を形成するとともに前記防蟻板部材の両隅部に設けられた切り欠きによって形成される空間により前記外周立上がり部の下端から屋外方向に突出する突出部を形成し、
前記コンクリートのアンカー効果により前記防蟻板部材を当該外周立上がり部に固定し、次いで、前記屋外側型枠及び屋内側型枠を取り外して、
その後に、前記防蟻板部材同士の間隙を覆うように、前記防蟻板部材の屋外側面の互いに隣接した端部同士にまたがって中間部防蟻シートを被覆することを特徴とする建物の基礎防蟻工法。
【請求項18】
前記防蟻性板部材を、前記屋外側型枠の内側面に沿って、上端が地表から所定高さに配置され、且つ、下端が前記基礎地盤から所定距離をあけて配置されるように複数並設するとともに、該防蟻板部材の上側において前記屋外側型枠の内側面に沿って非防蟻板部材を複数並設することを特徴とする請求項11から請求項17のいずれかに記載の建物の防蟻工法。
【請求項19】
前記防蟻板部材は、断熱性を有することを特徴とする請求項11から請求項18に記載の建物の基礎防蟻工法。
【請求項20】
前記防蟻シートが、シロアリの分泌物に対する耐性を有する材料で形成され、且つシロアリが通過できない大きさの孔を有するメッシュ状であることを特徴とする請求項11から請求項19のいずれかに記載の建物の基礎防蟻工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−84358(P2010−84358A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252576(P2008−252576)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(501439194)ティーエムエー・コーポレイション・プロプライエタリ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(501439194)ティーエムエー・コーポレイション・プロプライエタリ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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