説明

建物外壁の改修構造

【課題】断熱材層とその外側に配置された外装材との間に通気層を設けてなる建物外壁において、廃材等を出すことなく、また容易な施工で持って、建物外壁の断熱性能をより高いものとした改修構造とする。
【解決手段】第1の断熱材層22の外側に第1の外装材層25が配置され、その間に通気層26が形成されてなる建物外壁1を改修するに当たり、第1の外装材層25の外側に新たな第2の断熱材層33を配置し、第2の断熱材層33の外側に新たな第2の外装材層34を配置する。好ましくは、前記通気層26の周縁部には外気の流入を抑制できる通気抑制材31を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物外壁の改修構造に関し、特に、内壁材の外側に断熱材層が配置され、該断熱材層の外側に外装材が配置され、前記断熱材層と外装材との間には通気層が形成されている形態の建物外壁に対する改修構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築後10年以上と長い年月を経て古くなった建物外壁は、塗装が劣化し美観性が損なわれる。それを改修するためにいろいろな工法が取られてきており、改修時に既存の外壁構造を、断熱材層を備えた外壁構造とすることも行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、モルタル壁を有する建築物において、床下空間と柱、間柱との間の連結部分を断熱材で閉塞し、外壁面上に断熱性を有する外装材を直接、または胴縁を介して装着する外壁改修工法が記載されている。また、特許文献2には、既存外壁面に断熱材を固定しておき、この断熱材の外表面をプラスチックアンカーで固定した後、断熱材全面を覆うように耐アルカリガラスメッシュを埋設させながら断熱材外表面の全面に渡って樹脂モルタルを塗り付けるようにする木造壁外断熱改修方法が記載されている。また、特許文献3には、古い外装材を取り去り構造材を剥き出しとした後、外表面に通気層を設けた断熱材が充填されたパネルを、該構造材に固定するリフォーム工法が記載されている。
【0004】
一方、近年、建築外壁工法において、断熱材層を有する壁内の温度上昇を抑制し、また湿気排出を目的として、該断熱材層とその外側に配置した外装材の裏面との間に外気を流入させる通気層を設ける工法が普及している。しかし、このような断熱材層とその外側に配置した外装材との間に通気層が形成されてなる建物外壁について、それを改修する工法あるいは改修構造については、現在、特に提案がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−78347号公報
【特許文献2】特公平6−33670号公報
【特許文献3】特開2000−240183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
建物に対するガイドラインの変更に伴い、また省エネルギーの観点から、建物外壁に対してより高い断熱構造(外断熱構造)が求められるようになってきており、上記した断熱材層とその外側に配置された外装材との間に外気を流入させる通気層を設けるようにした建物外壁に対しても、改修と同時に、さらなる断熱性を向上させた構造とすることが求められている。
【0007】
本発明は、上記の要請に応えることを目的および課題としており、より具体的には、改修の目的で、あるいはより断熱性能を向上させる目的で、前記通気層を持つ建物外壁に対して行われる、より効果的な改修構造を開示することを目的および課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による建物外壁の改修構造は、内壁材の外側に第1の断熱材層が配置され、該第1の断熱材層の外側に第1の外装材層が配置され、前記第1の断熱材層と第1の外装材層との間には通気層が形成されてなる建物外壁の改修構造であって、前記第1の外装材層の外側に新たに第2の断熱材層が配置され、該第2の断熱材層の外側に新たに第2の外装材層が配置されてなることを特徴とする。
【0009】
上記の建物外壁の改修構造では、既存の建物外壁における前記第1の外装材層の外側に新たに第2の断熱材層と第2の外装材層を配置するようにしており、改修作業は容易であるとともに、既存の外壁を除去することはないので、廃材が発生することもない。また、第2の断熱材層をさらに配置することで、新たに求められる外壁に対するより高い断熱性能に対する要求にも、迅速かつて的確に答えることができる。
【0010】
本発明による建物外壁の改修構造の一態様において、前記第1の断熱材層と第1の外装材層との間に形成されている通気層の少なくともその周縁部には外気の流入を抑制できる通気抑制材が配置される。
【0011】
改修対象となる既存の建物外壁において、前記通気層の隙間が狭く、流入および流出する外気の量が少ない場合には、格別の問題生じないが、隙間が広く流入および流出する外気量が多い場合には、改修後の建物外壁の構造において、前記隙間を外気が通過することにより、新たに取り付けた第2の断熱材層が断熱材としての機能を果しえないことが起こり得る。上記した態様の本発明による建物外壁の改修構造では、通気層の少なくとも周縁部に外気の流入を抑制できる通気抑制材を配置しており、通気層内への外気の流入および流出を実質的に阻止することができる。そのために、既存の第1の断熱層と新たに取り付けた第2の断熱層の全体が、一つの断熱層として確実に機能することとなり、改修後の建物外壁には、より効果的な外断熱構造が備えられる。なお、外気流入が阻止された通気層内での空気の対流を防ぐため、通気層内の全空間に通気抑制材を充填あるいは注入した態様のものは、より好ましい。
【0012】
上記の建物外壁の改修構造において、前記通気抑制材には、外気の流入を抑制することのできる材料であれば任意の材料を用いることができる。発泡ウレタンを通気層に注入するような態様であってもよい。好ましくは、前記通気抑制材には、グラスウールやロックウールに代表されるような繊維系断熱材が用いられる。繊維系断熱材は通水性を備えており、改修後に、結露等を含む何らかの事情により通気層内に水が生じた場合に、それを外部に排出できる利点がある。
【0013】
本発明による建物外壁の改修構造の一態様において、前記第2の断熱材層および第2の外装材層として、それらが予め接着されて一体化したものが用いられる。この態様では、施工に際し、第2の断熱材層と第2の外装材層とを別々に張り付けることを要しないので、施工工程を簡略化できる利点がある。
【0014】
本発明による建物外壁の改修構造の一態様において、前記第2の外装材層は、耐アルカリガラスメッシュを内包する樹脂モルタル層を含む。このようなモルタル層としては、一例として前記した特許文献2に記載のものを採用することができる。耐アルカリガラスメッシュは、モルタル層のひび割れを抑制するものであり、ラス網や繊維を用いることもできる。この態様では、外装材表面に発生する目地を無くすことができ、目地材を必要としない利点がある。
【0015】
本発明による建物外壁の改修構造において、前記第2の断熱材層は前記第1の外装材層に対して適宜の手段で固着されている。固着方法の例としては、ビス等を用いて固着する方法、接着剤や接着モルタルを用いて全面接着する方法、ビスと接着剤を併用する方法などが挙げられる。1つの好ましい態様として、前記第2の断熱材層は前記第1の外装材層に対して接着モルタルにて団子張りされている態様が挙げられる。この態様では、既存の第1の外装材層表面に凹凸がある場合でも、第2の断熱層を支障なく接着することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、断熱材層とその外側に配置された外装材との間に通気層を設けてなる建物外壁において、廃材等を出すことなく、また容易な施工で持って、建物外壁の断熱性能をより高いものとした改修構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による建物外壁の改修構造の一実施の形態を示す模式的な斜視図。
【図2】改修前の建物外壁を示す断面図(図2(a))と要部の拡大断面図(図2(b))。
【図3】改修後の建物外壁を示す断面図(図3(a))と要部の拡大断面図(図3(b))。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態により説明する。最初に、図2を参照して、改修前の建物外壁を説明する。
図2に示す建物1では、コンクリート基礎2の上に置かれた土台3と天井横架材4との間に外壁20が造られている。なお、図で、5は大引き、6は適宜の床材、7は間柱、8は横胴縁、9は屋根構造、10は水切り、である。より具体的には、この外壁20は、建物内側に適宜の内装材21を備え、該内装材21の外側であって、前記土台3と天井横架材4と間柱7と横胴縁8とで区画される領域には、グラスウールやロックウールに代表されるような繊維系材料からなる断熱材、あるいは発泡ポリスチレンで代表されるようなブロック状の発泡樹脂材料からなる断熱材が埋め込まれていて、第1の断熱材層22を構成している。23は、必要に応じて設けられる第1の断熱材層22に対する保護シートである。
【0019】
各間柱7の外側端面には、通気胴縁24が取り付けてあり、それを利用して、モルタル層やタイル材のような適宜の外装材が、第1の外装材層25として取り付けてある。それにより、第1の断熱材層22の外側面と第1の外装材層25の内側面との間には、前記通気胴縁24の厚さに相当する奥行きの通気層26が形成されている。この通気層26の周囲は外気に開放しており、そこから外気が流入し、また流出することで、第1の断熱材層22を有する壁内の温度上昇を抑制し、また、通気層26内の湿気が排出されることで結露が生じるのを防止している。
【0020】
上記の建物外壁1に対して所要の改修を行うことで、本発明による建物外壁の改修構造30とされる。以下、図1および図3を参照して、それの一例を説明する。施工に際して、最初に、前記した通気層26内に外気が流入するのを阻止あるいは抑制するために、既存の外壁構造1における前記通気層26の周縁部に、グラスウールやロックウールのような繊維系断熱材からなる通気抑制材31を接着剤等を用いて取り付ける。
【0021】
それと平行して、前記第1の外装材層25の外側面に接着剤32を塗布し、そこに、例えば発泡ポリスチレンで代表されるブロック状の発泡樹脂材料からなる断熱材を張り付けることで第2の断熱材層33を形成する。なお、接着剤32として、団子状の接着モルタルを用いることもできる。このモルタル団子を用いる工法は、前記第1の外装材層25の表面に凹凸がある場合に好適である。
【0022】
次に、そのようにして張り付けた第2の断熱材層33の外側面に第2の外装材層34を形成する。第2の外装材層34は、従来の建物外壁で用いられている外装材をそのまま用いることができる。例えば、サイディングボードと呼ばれている軽量コンクリート板やセメントモルタルあるいは樹脂モルタルの塗布層などであってもよい。セメントモルタルや樹脂モルタルの塗布層の上にタイルを張り付けるような工法であってもよい。
【0023】
セメントモルタルや樹脂モルタルの塗布層を形成する場合には、塗布層の表面に耐アルカリガラスメッシュのようなメッシュ状物を埋設することは、特に好ましい。この工法を用いることにより、ひび割れ(目地)のない厚さの厚いモルタル層からなる第2の外装材層34を、第2の断熱材層33の外側面に形成することができる。それにより、新たに形成した第2の外断熱構造の耐久性を向上させることができる。形成したモルタル層の表面に、さらに適宜の外装材を張り付けるようにしてもよい。
【0024】
図示しないが、第2の断熱材の表面に第2の外装材を予め接着一体化したものを用い、それを前記した第1の外装材層25の外側面に張り付けるようにしてもよい。この工法では、現場での施工が簡素化される利点がある。ただし、この場合には、張り付けた第2の断熱材同士の間の目地部分をシーリング処理することが必要となる。
【0025】
なお、上記した建物外壁の改修構造30では、既存の外壁構造1における通気層26の周縁部に通気抑制材31を取り付けるようにしたが、既存の建物外壁の構造上から、通気層26への外気の流入が断熱性能の向上に大きな支障とならない場合には、それを省略することもできる。この場合には、通気抑制材31の取り付けを行わない分だけ、施工を簡素化することができる。
【0026】
また、通気抑制材31として繊維系断熱材を用いるようにしたが、繊維系断熱材に替えて、発泡性ウレタンを注入するようにしてもよく、適宜の発泡樹脂材料を埋め込んでもよい。建物側の適宜の部材によって通気層26の周縁部を閉鎖するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…建物、
7…間柱、
20…外壁、
21…内装材、
22…第1の断熱材層、
24…通気胴縁、
25…第1の外装材層、
26…通気層、
30…本発明による建物外壁の改修構造、
31…通気抑制材、
32…接着剤、
33…第2の断熱材層、
34…第2の外装材層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁材の外側に第1の断熱材層が配置され、該第1の断熱材層の外側に第1の外装材層が配置され、前記第1の断熱材層と第1の外装材層との間には通気層が形成されてなる建物外壁の改修構造であって、
前記第1の外装材層の外側に新たに第2の断熱材層が配置され、該第2の断熱材層の外側に新たに第2の外装材層が配置されてなることを特徴とする建物外壁の改修構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建物外壁の改修構造であって、前記第1の断熱材層と第1の外装材層との間に形成されている通気層の少なくともその周縁部には外気の流入を抑制できる通気抑制材が配置されてなることを特徴とする建物外壁の改修構造。
【請求項3】
請求項2に記載の建物外壁の改修構造であって、前記通気抑制材は繊維系断熱材からなることを特徴とする建物外壁の改修構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物外壁の改修構造であって、前記第2の断熱材層および第2の外装材層として、それらが予め接着されて一体化したものが用いられていることを特徴とする建物外壁の改修構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の建物外壁の改修構造であって、前記第2の外装材層は、耐アルカリガラスメッシュを内包する樹脂モルタル層を含むことを特徴とする建物外壁の改修構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の建物外壁の改修構造であって、前記第2の断熱材層は前記第1の外装材層に対して接着モルタルにて団子張りされていることを特徴とする建物外壁の改修構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−52414(P2011−52414A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200897(P2009−200897)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】