説明

建築物開閉体の自動開閉装置

【課題】構成部材が集合されて装置が小形化されるとともに製作コストが低減され、さらにセキュリティ装置としても利用することのできる建築物開閉体の自動開閉装置を提供する。
【解決手段】建築物の開口部を開閉可能に動作する開閉体(サッシ窓2)と、前記開閉体(2)を開閉操作する操作手段(開操作ワイヤ3、閉操作ワイヤ4)と、前記操作手段(3、4)を駆動する駆動源(駆動源部5)と、前記操作手段(3、4)の操作状況及び前記駆動源(5)の駆動状況のいずれかを検知し、この検知結果を動作情報として出力する動作検知手段(動作検知基板6)と、前記動作情報を基にして前記開閉体(2)の位置を演算し、前記位置を参照しながら前記駆動源(5)を制御する制御部7と、を備える。なお、前記動作検知手段(6)は、前記駆動源(5)を収容する駆動箱51の内部に収容されている、ことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に設けられる引き違い窓などの開閉体を自動的に開閉する建築物開閉体の自動開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータなどの駆動源を利用して建築物の窓やドアを自動的に開閉する自動開閉装置が広く普及しており、一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の自動ドア装置は、ガイド装置に沿って直線運動して開閉するドアと、モータを含むドア駆動部と、ドアの開閉に関する情報を検出する開閉情報検出手段と、開閉状態に基づいてドア駆動部を制御する制御部とを備えており、制御部は書き換え可能な制御パラメータを有して自己学習機能を備えることを特徴としている。開閉情報検出手段としては、ドアの閉じ方向前端に搭載されてドアと縦枠部材との距離を測定する測距センサが例示されている。そして、制御部は、閉じ動作において測定された距離が短くなったときに、ドア駆動部を開き動作に反転させるようにしている。つまり、減速させることにより、ドアが完全に閉じる瞬間のショックやノイズを低減するようにしている。この作用を効果的にするために自己学習機能を備え、開き動作に反転するタイミングや、反転力の大きさを学習しながら最適化することを目的としている。
【0003】
一方、住宅や事務所などでは、窓やドアの開閉状態を検出して、不法な侵入者を監視するセキュリティシステムの導入が進められている。セキュリティシステムでは、自動開閉装置とは別に、窓やドアに開閉検出センサを設けている場合が多い。
【特許文献1】特開2000−145280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1ではドア駆動部と開閉情報検出手段とが離れているので、これらの構成部材を組み付けるための取付部材や電気配線部材が別々に必要となり、それぞれに取付スペースが必要となって、自動ドア装置が大形化している。また、部品点数が多く取付の手間もかかるので、材料費及び人件費の両面で製作コストが嵩んでいる。一方、自動ドア装置の開閉情報検出手段は、機能的にはセキュリティシステムの開閉検出センサに類似しているため、自動ドア装置をセキュリティ装置としても利用できれば好ましい。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、構成部材が集合されて装置が小形化されるとともに製作コストが低減され、さらにセキュリティ装置としても利用することのできる建築物開閉体の自動開閉装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建築物開閉体の自動開閉装置は、建築物の開口部を開閉可能に動作する開閉体と、前記開閉体を開閉操作する操作手段と、前記操作手段を駆動する駆動源と、前記操作手段の操作状況及び前記駆動源の駆動状況のいずれかを検知し、この検知結果を動作情報として出力する動作検知手段と、前記動作情報を基にして前記開閉体の位置を演算し、前記位置を参照しながら前記駆動源を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明は、開閉動作する開閉体の位置を直接的に検知するのでなく、動作検知手段により操作手段の操作状況及び駆動源の駆動状況のいずれかを検知し、制御部の演算によって開閉体の位置を間接的に求めることにより、従来離れて配設されていた駆動源と動作検知手段とを集合させるようにしたことを主旨としている。本発明の建築物開閉体の自動開閉装置は、開閉体と、操作手段と、駆動源と、動作検知手段と、制御部と、で構成することができる。
【0008】
開閉体は、建築物の開口部を開閉可能に動作する部材である。開口部と開閉体の組み合わせは、一般的な窓枠と窓や、出入り口とドアなどであり特別な制約はないが、次の態様は好ましい一例である。すなわち、前記開口部は窓枠であり、前記開閉体は直線動作する引き違い窓である、ことが好ましい。動作する引き違い窓の数量は1個でも複数個でもよい。本発明は、一辺が枢支されて回転動作する開閉体にも適用することができるが、特に直線動作する開閉体で装置小形化の効果が顕著となる。
【0009】
操作手段は、駆動源から駆動力を与えられ、開閉体に直接的に接して開閉操作する手段である。前記操作手段は、ロープ状あるいはベルト状でそれぞれの一端が前記開閉体に係止されるとともにそれぞれの他端が前記駆動源に係合される開操作部材及び閉操作部材からなり、前記駆動源が前記開操作部材を引くことにより前記開閉体が開方向に動作し、前記駆動源が前記閉操作部材を引くことにより前記開閉体が閉方向に動作する、ことが好ましい。
【0010】
開操作部材及び閉操作部材には、所要の駆動力に対して十分な強度を有する、例えばワイヤやチェーンを用いることができる。開操作部材及び閉操作部材のそれぞれの一端は開閉体に係止して固定することができ、それぞれの他端は駆動源に係合して引かれるように構成することができる。また、開閉体の開操作と閉操作とを選択的に行うために、駆動源が開操作部材及び閉操作部材の一方を選択して引くように構成することができる。
【0011】
駆動源は、駆動力を発生して操作手段を駆動する手段であり、次に述べるモータなどの電動機構のほか、油圧や圧縮空気圧を利用した圧力機構などを用いることができる。前記駆動源は、出力軸の回転方向を正転及び逆転に切り替え可能なモータと、前記出力軸に設けられて回転するとともに前記回転方向により前記開操作部材及び前記閉操作部材の一方を選択して巻き取る巻取体と、を有する、ことが好ましい。
【0012】
出力軸の回転方向を正転及び逆転に切り替え可能なモータには、電源の極性を切り替えて用いる直流モータや、相順を入れ替えて用いる三相誘導モータなどを適用することができる。あるいは、出力軸の回転方向が一定のモータと、回転方向を選択的に正転または反転して伝達するギヤ機構とを組み合わせても、同様の作用を得ることができる。巻取体は開操作部材及び閉操作部材の形態に適合したものが好ましく、例えば、ロープを巻き取る巻取ドラムや、チェーンを巻き取るスプロケットなどを用いることができる。なお、巻取体は開操作用と閉操作用とを別々に設けてもよく、あるいは一つの回転体を軸方向に分割して共用するようにしてもよい。さらには、開操作部材及び閉操作部材の駆動すべき他端同士を連結して一つの環状操作部材とし、巻取体で環状操作部材を輪転させるように構成してもよい。
【0013】
動作検知手段は、操作手段の操作状況及び駆動源の駆動状況のいずれかを検知し、この検知結果を動作情報として出力する手段である。本発明では、従来のように開閉体の位置を直接的に検知するのでなく、操作手段及び駆動源のいずれかを対象として検知を行うので、動作検知手段の配設位置の自由度が大きい。
【0014】
前記動作検知手段は、前記操作手段あるいは前記駆動源に列設されて交互に異なる極性を有する複数個の磁極と、前記磁極の変位を検知してパルス信号を出力するホールICと、を有する、ようにしてもよい。動作検知手段には、ホール効果を利用して磁界の変化を検出するホールICを適用することができる。詳述すると、操作手段あるいは駆動源の直動する部分や回動する部分に極性の異なる磁極を交互に等間隔に列設し、磁極により形成される磁界内にホールICを配置することができる。すると、操作手段あるいは駆動源の動作に同期して磁極が変位するので、ホールICは作用する磁界の方向が反転するたびにパルス信号を出力する。したがって、パルス信号の出力数をカウントすることにより、操作手段あるいは駆動源が変位した状況を検知することができる。
【0015】
なお、動作検知手段は磁極とホールICの組み合わせに限定されず、直線変位または回転変位を検知する他の方式のセンサを用いることができる。
【0016】
前記動作検知手段は、前記駆動源を収容する駆動箱の内部に収容されている、ことが好ましい。本発明では、駆動源と動作検知手段とを駆動箱の内部に一緒に収容することができるので、動作検知手段専用の単独の収納箱や取付部材は不要となる。このとき、配線ボックスや端子台などの電気配線部材を共用して、両者の電気配線を一緒に行えるようにすることもできる。したがって、構成部材をコンパクトに配置することができ、また取付部材や電気配線部材の部品点数を従来から減らすことができて、製作コストを低減することができる。
【0017】
制御部は、動作検知手段から動作情報を受け取り、あらかじめ定めた演算方法にしたがって開閉体の位置を演算し、演算によって求めた位置を参照しながら駆動源を制御する装置である。演算方法は、開閉体の開閉動作範囲と、動作検知手段が設けられる位置の構造と、動作検知手段自体の構造及び出力仕様と、から定めることができる。例えば、磁極とホールICを適用した態様では、開閉体の開閉動作範囲全体が何個のパルス信号に対応するか、あるいは逆に、1パルス信号はどれだけの動作長に対応するかを知ることで、演算式を定めることができる。また、制御方法としては、例えば、直流モータの極性を切り替えたり、印加電圧を昇降することにより、駆動源の駆動方向や駆動力の大きさを可変に制御することができる。
【0018】
前記制御部は、前記駆動源を制御する自動モードとは別に、前記駆動源を制御することなく前記開閉体の前記位置を演算する手動モードを有し、前記手動モードにおいて前記開閉体は手動操作により開閉可能とされている、ことでもよい。
【0019】
制御部には、例えばモード選択スイッチを設けて、自動モードと手動モードとを選択できるように構成することができる。そして、手動モードが選択されたときに、制御部は駆動源を開放するとともに、開閉体の位置を求める演算は行うように構成することができる。駆動源を開放するのは、操作手段や駆動源が操作時の負担にならないようにして、開閉体の自重分の操作力だけで手動操作を行えるようにするためである。また、開閉体の位置を求めておくことにより、手動操作で開閉体が任意の位置に停止されていても、自動モードに戻った際に適切な制御を行うことができる。
【0020】
前記制御部は、前記駆動源を制御する自動モードとは別に、前記駆動源を制御することなく前記開閉体の前記位置を演算して動作の有無を監視する侵入監視モードを有する、ようにしてもよい。
【0021】
制御部では、自動モードや手動モードとは別に、侵入監視モードを選択できるように構成することができる。侵入監視モードでは、自動操作も手動操作も行われないことを前提とし、通常開閉体を閉じた位置として、動作検知手段の動作情報を参照し開閉体が動作しないことを確認するように構成することができる。そして、開閉体が動作すれば侵入者ありと判定して、警報を発するように構成することができる。
【0022】
この侵入監視モードを例えば住宅用の自動開閉装置に設けて、住人が外出する場合や就寝するときにモード選択することにより、セキュリティ装置として利用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では動作検知手段の配設位置の自由度が大きく、例えば駆動箱の内部に収容することができるので、コンパクトな配置が可能になって装置が小形化されるとともに、取付部材や電気配線部材の部品点数を従来よりも減らすことができて、製作コストを低減することができる。
【0024】
また、手動モードを有する態様では、手動操作による開閉体の任意の停止位置を求めるようにしているので、自動モードに戻った際に適切な制御を行うことができる。さらに、侵入監視モードを有する態様では、動作検知手段の動作情報を参照して開閉体が動作しないことを確認するようにしているので、侵入者の有無を監視するセキュリティ装置として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の実施例のサッシ窓自動開閉装置を模式的に説明する図である。実施例のサッシ窓自動開閉装置1は、サッシ窓2と、開操作ワイヤ3及び閉操作ワイヤ4と、駆動源部5と、動作検知基板6と、制御部7と、で構成されている。
【0026】
サッシ窓2は開閉体を構成する部材であり、建築物の開口部を構成するサッシ窓枠を開閉するものである。サッシ窓2は、サッシレール21に沿って図中左右方向に直線動作するように構成されており、左方向が開方向、右方向が閉方向である。サッシ窓2の幅方向略中央の上部寄りには、ワイヤ固定部材22が設けられている。
【0027】
開操作ワイヤ3及び閉操作ワイヤ4は、操作手段である開操作部材及び閉操作部材を構成するものであり、金属製の可撓性を有する撚線材で形成されている。開操作ワイヤ3の一端31はサッシ窓2のワイヤ固定部材22に係止され、中間部32は左方に延設された後に後述の巻取ドラム56に巻き取られ、他端33は巻取ドラム56に固定されている。一方、閉操作ワイヤ4の一端41はワイヤ固定部材22に係止され、中間部42は右方に延設された後に建築物壁に回動自在に設けられたプーリー49によって往復動自在に左方に折り返されて巻取ドラム56に巻き取られ、他端43は巻取ドラム56に固定されている。巻取ドラム56における巻き取り方向は、図示されるように、開操作ワイヤ3とび閉操作ワイヤ4とで逆方向とされている。そして、巻取ドラム56が時計回りに駆動されると、開操作ワイヤ3が巻き上げられて閉操作ワイヤ4が引き出され、逆に、巻取ドラム56が反時計回りに駆動されると、開操作ワイヤ3が引き出されて閉操作ワイヤ4が巻き上げられるように構成されている。
【0028】
駆動源部5は、開操作ワイヤ3及び閉操作ワイヤ4の一方を選択的に巻き取る手段であり、図1に示されるように、サッシ窓2の左上方の建築物壁に配設された駆動箱51内に大部分の構成部材が内蔵されている。図2は駆動源部5の構成を説明する外観斜視図であり、図3は駆動源部5の大部分の構成部材が内蔵された駆動箱51の内部を説明する斜視図である。図2及び図3に示されるように、駆動箱51内下部には直流モータ52が配設され、上向きの出力軸にはウォームギヤ53が設けられている。直流モータ52に印加される直流電圧の極性は可変とされて出力軸の回転方向は正転及び逆転に切り替え可能となっており、また、電圧値も可変とされて駆動力を調節できるようになっている。
【0029】
駆動箱51内の略中央には、回動自在に枢支された回転体部54が配設されている。図3に示されるように、回転体部54の軸体は駆動箱51の外部に突設されて駆動円板55が設けられ、駆動円板55には軸心を共通とする円筒状の巻取ドラム56が固定されている。巻取ドラム56は開操作及び閉操作で共用とされ、開操作ワイヤ3及び閉操作ワイヤ4のそれぞれの他端33、43が固定されている。そして、開操作ワイヤ3及び閉操作ワイヤ4は、軸方向に並んで互いに逆方向に巻き取られるようになっている。回転体部54は、また、駆動箱51内に同軸配置の大小2個の筒状部を有しており、内側の小さな筒状部の外周にはホイールギヤ57が形成されてウォームギヤ53と噛合している。回転体部54の外側の大きな筒状部の外周には、極性の異なる磁極が交互に等間隔に列設されて、被検知磁石体58が形成されている。
【0030】
動作検知基板6は、駆動源部5の駆動状況を検知し動作情報として出力する動作検知手段を構成する部材である。動作検知基板6は、駆動箱51内の回転体部54の被検知磁石体58の外側に配設され、被検知磁石体58と対向する箇所にホールIC61を有している。そして、被検知磁石体58が回動すると磁極に形成される磁界の方向が反転するので、ホールIC61は磁界の反転を検知することができる。なお、動作検知基板6上には、ホールIC61を動作させるために必要な周辺回路の電気部品や電子部品の一式が実装されており、磁界の反転に伴いパルス信号が出力されるようになっている。
【0031】
制御部7は、サッシ窓2の位置を求めるとともに直流モータ52を制御する装置である。制御部7は、駆動箱51内に配設されており、ソフトウェアで動作する演算部と、入力部及び出力部とを備えている。詳述すると、入力部は動作検知基板6に配線接続されてパルス信号を取り込むことができ、演算部はパルス信号をカウントして所定の演算を行うことによりサッシ窓2の位置を求め、さらに出力すべき制御信号を求めることができ、出力部は直流モータ52に配線接続されて制御信号を出力することにより直流モータ52に印加される直流電圧の極性及び電圧値を可変に制御することができる。
【0032】
また、制御部7は、気象条件や利用者の設定などに基いて開操作指令または閉操作指令を送出する上位制御装置8に連係されており、上位制御装置8から指令を受け取ったときに直流モータ52の制御を実行するようになっている。さらに、制御部7は、上位制御装置8から動作モード選択の指令を受け取るようになっており、自動モード、手動モード、侵入監視モードのいずれかの指令された動作モードに基づいて制御を行うようになっている。なお、各動作モードで行う処理内容は、制御部7の演算部に内蔵されるソフトウェアで規定されている。
【0033】
図4は、制御部7の処理内容を説明するフローチャートの図である。なお、図中の括弧付番号は、以降の説明に付した番号と対応している。
【0034】
制御部7は、一定時間間隔で動作モードを確認する。このとき、上位制御装置8から新たな動作モード選択の指令を受けていなければ今までの動作モードを維持し、指令を受けたときには動作モードを変更する(1)。自動モード、手動モード、侵入監視モード、いずれの場合にも、サッシ窓2の位置を演算する(2)。自動モードにおいては、演算された位置を参照しながら直流モータ52を制御する(3)。手動モードにおいては、演算された位置を記憶するだけで、直流モータ52の制御は行わない。侵入監視モードにおいては、演算された位置の変化がないことを確認し(4)、万一変化した場合には異常状態と判定して所定の「侵入者検知」の警報処理を行う(5)。侵入監視モードにおいて、実際には、開閉体の動作特性上ある程度のマージンを見込み、位置の変化しない正常範囲に幅を設けて判定を行う。
【0035】
次に、上述のように構成された実施例のサッシ窓自動開閉装置1の動作、作用について説明する。まず、動作モードの如何に関わらず常に、制御部7は動作検知基板6からパルス信号を受け取り、サッシ窓2の位置を演算して把握している。
【0036】
そして、自動モードにおいて上位制御装置8から開操作指令または閉操作指令を受け取ると、制御部7は把握している現在のサッシ窓2の位置を基にして、適正な制御信号を求め直流モータ52に出力し制御する。すると、ウォームギヤ53及びホイールギヤ57が回転し、回転体部54及び巻取ドラム56が回転して、開操作ワイヤ3及び閉操作ワイヤ4のいずれかが巻き取られて、サッシ窓2が動作する。次に、一定の時間間隔が経過した時点で、制御部7は、動作検知基板6からのパルス信号に基づいて再度サッシ窓2の位置を演算し、新たな位置を参照しながら制御信号を変更して直流モータ52を制御する。以降、サッシ窓2が目的となる開位置または閉位置に達するまで、このフィードバック制御が繰り返される。なお、開操作指令に基づいて、巻取ドラム56は図1で時計回りに駆動され、開操作ワイヤ3を巻き取るとともに、閉操作ワイヤ4は引き出されて、サッシ窓2は左の開方向に動作する。逆に閉操作指令では、巻取ドラム56は反時計回りに駆動され、閉操作ワイヤ4を巻き取るとともに、開操作ワイヤ4は引き出されて、サッシ窓2は右の開方向に動作する。
【0037】
手動モードにおいては、たとえ開操作または閉操作の指令を受け取っても、制御部7は直流モータ52の制御は行わない。そして、制御部7は、手動操作によるサッシ窓2の位置の変化を、動作検知基板6からのパルス信号に基づいて一定時間間隔ごとに演算して、把握している。したがって、自動モードに戻った際にサッシ窓2の位置を把握できているので、直ちに適切な制御を行うことができる。
【0038】
侵入監視モードにおいては、サッシ窓2を閉め切った位置とし、直流モータ52の制御は行わない。そして、制御部7は、動作検知基板6からのパルス信号に基づいて一定時間間隔ごとにサッシ窓2の位置を演算して閉め切った位置から変化していないことを確認し、万一わずかでも開いていれば異常状態と判定して所定の「侵入者検知」の警報処理を行う。
【0039】
実施例のサッシ窓自動開閉装置1によれば、駆動源部5を収容する駆動箱51の内部に動作検知基板6及び制御部7が集合されて収容されているので省スペースとすることができ、また収納箱や取付部材や電気配線部材などの部品点数を削減することができて製作コストを低減することができる。また、手動モードでサッシ窓2が任意の位置に停止されていても、自動モードに戻った際に適切な制御を行うことができる。さらには、侵入監視モードを選択することにより、サッシ窓自動開閉装置1をセキュリティ装置として利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、サッシ窓自動開閉装置やドア自動開閉装置の他にも、駆動源で動作する換気口や採光ルーフなどの自動開閉装置に利用することができる。また、建築物に限定されず、電車やバスなどの乗降口の自動ドアにも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例のサッシ窓自動開閉装置を模式的に説明する図である。
【図2】図1の実施例において、駆動源部の構成を説明する外観斜視図である。
【図3】図2の駆動源部の内部構成を説明する斜視図である。
【図4】図1の実施例において、制御部の処理内容を説明するフローチャートの図である。
【符号の説明】
【0042】
1:サッシ窓自動開閉装置
2:サッシ窓(開閉体)
21:サッシレール 22:ワイヤ固定部材
3:開操作ワイヤ(操作手段)
31:一端 32:中間部 33:他端
4:閉操作ワイヤ(操作手段)
41:一端 42:中間部 43:他端
5:駆動源部(駆動源)
51:駆動箱 52:直流モータ 53:ウォームギヤ
54:回転体部 55:駆動円板 56:巻取ドラム
57:ホイールギヤ 58:被検知磁石体
6:動作検知基板(動作検知手段)
61:ホールIC
7:制御部
8:上位制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の開口部を開閉可能に動作する開閉体と、
前記開閉体を開閉操作する操作手段と、
前記操作手段を駆動する駆動源と、
前記操作手段の操作状況及び前記駆動源の駆動状況のいずれかを検知し、この検知結果を動作情報として出力する動作検知手段と、
前記動作情報を基にして前記開閉体の位置を演算し、前記位置を参照しながら前記駆動源を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする建築物開閉体の自動開閉装置。
【請求項2】
前記開口部は窓枠であり、前記開閉体は直線動作する引き違い窓である、請求項1に記載の建築物開閉体の自動開閉装置。
【請求項3】
前記操作手段は、ロープ状あるいはベルト状でそれぞれの一端が前記開閉体に係止されるとともにそれぞれの他端が前記駆動源に係合される開操作部材及び閉操作部材からなり、前記駆動源が前記開操作部材を引くことにより前記開閉体が開方向に動作し、前記駆動源が前記閉操作部材を引くことにより前記開閉体が閉方向に動作する、請求項1または2のいずれか一項に記載の建築物開閉体の自動開閉装置。
【請求項4】
前記駆動源は、出力軸の回転方向を正転及び逆転に切り替え可能なモータと、前記出力軸に設けられて回転するとともに前記回転方向により前記開操作部材及び前記閉操作部材の一方を選択して巻き取る巻取体と、を有する請求項3に記載の建築物開閉体の自動開閉装置。
【請求項5】
前記動作検知手段は、前記操作手段あるいは前記駆動源に列設されて交互に異なる極性を有する複数個の磁極と、前記磁極の変位を検知してパルス信号を出力するホールICと、を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の建築物開閉体の自動開閉装置。
【請求項6】
前記動作検知手段は、前記駆動源を収容する駆動箱の内部に収容されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の建築物開閉体の自動開閉装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記駆動源を制御する自動モードとは別に、前記駆動源を制御することなく前記開閉体の前記位置を演算する手動モードを有し、前記手動モードにおいて前記開閉体は手動操作により開閉可能とされている請求項1〜6のいずれか一項に記載の建築物開閉体の自動開閉装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記駆動源を制御する自動モードとは別に、前記駆動源を制御することなく前記開閉体の前記位置を演算して動作の有無を監視する侵入監視モードを有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の建築物開閉体の自動開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−7805(P2009−7805A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169291(P2007−169291)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】