説明

建築用シール部材

【課題】例えば木造住宅やビル等の建築構造物の窓や出入口等の開口部などに用いる建築用シール部材に係り、火災による熱や火炎で炭化したり脆弱化してもシール性能を良好に維持できるようにする。
【解決手段】シール本体50を耐火性または難燃性の材料で形成し、そのシール本体50内に耐火性または難燃性の芯材51を埋設させて設けたことを特徴とする。上記シール本体50は例えば耐火性または難燃性の合成樹脂で形成することができる。また 上記芯材51としては、例えば耐火性または難燃性の網状体を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木造住宅やビル等の建築構造物の窓や出入口等の開口部などに用いる建築用シール部材に関する。更に詳しくは、上記の開口部を塞ぐ障子やガラス戸等の建具と、それを立て込む窓枠や戸枠等の開口枠との間に介在されるウエザーストリップ等のシール材、もしくはガラス戸等におけるサッシ等の建具枠とガラスとの間に介在されるグレージングチャンネルやグレージングビード等のパッキンまたはガスケットなどの建築用シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば木造住宅やビル等の建築構造物における窓や出入口等の開口部には、それらを塞ぐために障子やガラス戸等の建具が設けられ、それらの建具は上記開口部内に設けた窓枠や戸枠等の開口枠内に立て込むのが一般的である。また、ガラス戸等の建具においては、サッシ等の建具枠とガラスとの間にグレージングチャンネルやグレージングビード等のパッキンまたはガスケットなどの建築用シール部材を介在させるのが一般的である。
【0003】
ところが、上記のような開口部を有する建築構造物に火災等が発生した場合には、上記開口部における建具と開口枠との間、建具と建具の間、またガラス戸等にあってはガラスと框との間の隙間から火炎や煙が侵入し易く、防火対策上の難点であり、例えばJIS−A1321に準拠した建築物の内装材料及び工法の難燃性試験やJIS−A1311に準拠した建築用防火戸の防火試験をクリアするためにも重要な検討部位となっている。
【0004】
そこで、これまでにも種々の研究や対策および提案等がなされており、例えば下記特許文献1および特許文献2においては、上記の隙間内に耐火断熱材や耐火熱膨張材を介在させたり、それらとは別に若しくはそれらと併用して耐火性のシール部材を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−169453号公報
【特許文献2】特開平5−133170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなシール部材、特に舌片状のリップ部等を有するシール部材にあっては、耐火性といえども火災による熱や火炎で炭化したり脆弱化してシール部材の形状、特にリップ部等の形状を維持させるのが難しく、往々にして大きく変形したり、崩れてシール性能が大幅に低下し、例えば上記のJIS−A1321に準拠した難燃性試験やJIS−A1311に準拠した防火試験をクリアするのが難しい等の問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、火災による熱や火炎で炭化したり脆弱化してもシール性能を良好に維持することのできる建築用シール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明による建築用シール部材は、以下の構成としたものである。即ち、シール本体を耐火性または難燃性の材料で形成し、そのシール本体内に耐火性または難燃性の芯材を埋設させて設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように本発明による建築用シール部材は、シール本体を耐火性または難燃性の材料で形成し、そのシール本体内に耐火性または難燃性の芯材を埋設させて設けたから、上記シール本体が火災による熱や火炎で炭化したり脆弱化した場合にも、上記シール本体内に埋設させて設けた芯材によって、上記シール本体の形状が維持され、シール性能を良好に維持させることが可能となる。
【0010】
なお、上記シール本体は、耐火性または難燃性を有するものであれば材質は適宜であるが、例えば耐火性または難燃性の樹脂、具体的には例えばセラミックファイバ等の耐熱性繊維入りのPVC等の樹脂を用いることができる。また上記芯材も耐火性または難燃性のものであれば材質は適宜であるが、好ましくは各種のネット等の網状体を用いるとよく、具体的には例えばステンレス等の金属ネットもしくはグラスファイバやセラミックファイバもしくはロックウール等の耐火性または難燃性の繊維で形成したネット等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明による建築用シール部材を用いた建築物の開口部構造の横断平面図、(b)はその一部の拡大図。
【図2】(a)は図1(a)におけるA−A断面図、(b)はその一部の拡大図。
【図3】図1(a)におけるシール部材による開口枠と建具とのシール部の拡大図。
【図4】図3におけるシール部材の自由状態における拡大断面図。
【図5】他のシール部材に適用した例の断面図。
【図6】更に他のシール部材に適用した例の断面図。
【図7】更に他のシール部材に適用した例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による建築用シール部材を、図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。図1および図2は住宅やビル等の建築物の出入口や窓等の開口部に設けたサッシや木枠等の開口枠1と、その開口枠1内に建て込んだガラス戸や障子等の建具2,3との間に介在されるシール部材5に適用したもので、特に図の場合はサッシよりなる開口枠1と、その内方に水平方向に移動可能に設けた引き違い式のガラス戸よりなる建具2,3との間の隙間Sを塞ぐ舌状シール5a等のシール部材5に適用したものである。
【0013】
上記開口枠1は、図1および図2に示すように上下の横枠11,12と、縦枠13,14とで方形枠状に形成され、その開口枠1内に上記建具2,3が建て込まれている。その建具2,3は、図1および図2に示すように、それぞれ上下の横框21・22,31・32と縦框23・24,33・34とで形成される方形枠状の建具枠20,30の内方に、それぞれガラス板4を設けた構成であり、その各ガラス板4は、それぞれ上記各框21〜24,31〜34の内周面側の凹部に係合保持させた横断面略コ字形のグレージングチャンネル5dを介して上記各建具枠20,30に嵌合保持されている。
【0014】
また図1に示すように上記開口枠1の縦枠13と建具枠20の縦框23との間、および開口枠1の縦枠14と建具枠30の縦框34との間には、それぞれ一枚舌よりなる舌状シール5aが設けられ、建具枠20の縦框24と建具枠30の縦框34との間には、二枚舌よりなる舌状シール5bが設けられている。さらに図2に示すように開口枠1の上側の横枠11の下面側に設けた一対の上レール11a・11aと、建具枠20,30の上側の横框21,31との間にはそれぞれ下向きの一枚舌よりなる舌状シール5cが一対ずつ設けられ、開口枠1の下側の横枠12と、建具枠20,30の下側の横框22,32との間にはそれぞれ下向きの一枚舌よりなる舌状シール5cが1つずつ設けられている。
【0015】
図2において、12a・12aは上記開口枠1の下側の横枠12の上面側に設けた一対の下レール、6は上記各下レール12aに沿って建具枠20,30を移動させるための戸車である。図1において、7は上記開口枠1と建具3との間に介在させた耐火性熱膨張材で、本実施形態においてはアルミナ繊維等の耐熱性繊維入りのPVC等の樹脂が用いられている。その耐火性熱膨張材7は、図の場合は屋内側に建て込まれる建具2の縦框23と開口枠1の縦枠13との間、および屋外側に建て込まれる建具3の縦框34と開口枠1の縦枠14との間にそれぞれ介在させた構成であるが、必要に応じて上記開口枠1の内側の周方向ほぼ全長にわたって設けるようにしてもよく、更に必要に応じて上記両建具2,3の閉時に互いに隣接する縦框24・33との間にも介在させるようにしてもよい。
【0016】
図3は前記図1(a)における舌状シール5aによるシール部の拡大図、図4はその舌状シール5aに本発明を適用した例の自由状態における拡大断面図であり、上記舌状シール5aのシール本体50を耐火性または難燃性の材料で形成し、そのシール本体50内に耐火性または難燃性の芯材51を埋設させて設けたものである。特に図の場合は上記舌状シール5aの縦枠13等に対する取付部を構成するシール本体50の基部50aおよび舌状部(リップ部)50b内にも万遍なく芯材51を埋設したものである。
【0017】
上記シール本体50は、耐火性または難燃性を有するものであれば各種材質のものが使用可能であり、例えば耐火性または難燃性の樹脂、具体的には例えばセラミックファイバ等の耐熱性繊維入りのPVC等の樹脂を用いることができる。また芯材51も耐火性または難燃性のものであれば各種材質のものが使用可能であるが、好ましくは各種ネット等の網状体を用いるとよく、具体的には例えばステンレス等の金属ネットもしくはグラスファイバやセラミックファイバもしくはロックウール等の耐火性または難燃性の繊維で形成したネット等を用いることができる。
【0018】
上記シール本体50内に埋設される芯材51は、全体を一体に形成したもの、または部分的にそれぞれ別体に形成したものを縫合または接着その他適宜の手段で一体に連結した状態でシール本体50内に埋設するか、或いは部分的に別体に形成したものを、そのままシール本体50内に埋設するようにしてもよい。
【0019】
上記のように本発明による建築用シール部材である上記舌状シール5aは、耐火性または難燃性の材料で形成したシール本体50内に耐火性または難燃性の芯材51を埋設させて設けたから、万一火災等が発生して上記シール51全体が焼けた場合にも上記シール本体50を耐火性または難燃性の材料で形成したから炭化したり脆弱化すること等はあっても消失することはなく、また上記シール本体50が炭化したり脆弱化しても、そのシール本体50内に埋設した耐火性または難燃性の芯材51によってシール部材としての形状を維持させることができる。
【0020】
その結果、例えば前記図1における開口枠1の縦枠13と建具枠20の縦框23との間に上記舌状シール51を設けた場合には、そのシール51の形状が火災発生後も維持されて、上記縦枠13と縦框23との間の隙間Sから建物の屋内外に煙や火炎が流通するのを良好に防止することができる。その結果、例えば前記のようなJIS−A1321に準拠した建築物の内装材料及び工法の難燃性試験やJIS−A1311に準拠した建築用防火戸の防火試験をクリアすることが可能となる。
【0021】
また上記のようなシール部材5、特にシール本体50は、合成ゴムや天然ゴムを含めた各種樹脂による押出成形によって製造するのが一般的であるが、上記芯材51としてネット等の網状体を用いて同時押し出しを行うと、その芯材51の両側のシール本体50・50を上記網状体の網目内に浸透したシール本体50の樹脂を介して一体化することが可能となり、耐久性のよいシール部材を得ることができる。
【0022】
なお、上記実施形態は、前記図1および図2における縦枠13と縦框23との間に介在される一枚舌よりなる舌状シール5aに適用したが、縦枠14と縦框34との間に介在さ舌状シール5aにも適用可能であり、また前記縦框24と縦框34との間に介在される二枚舌よりなる舌状シール5bにも適用できる。さらに前記上レール11aと横框21,31との間、または/および前記横枠11と横框22,32との間に介在される下向きの一枚舌よりなる舌状シール5cにも適用可能である。
【0023】
図5はその一例を示すもので、同図(a)は上記の二枚舌よりなる舌状シール5bに適用した例、同図(b)は上記下向きの一枚舌よりなる舌状シール5cに適用した例である。上記いずれの場合にも前記例と同様に舌状シール5b,5cの縦框24や横框21等に対する取付部を構成するシール本体50の基部50aおよび舌状部(リップ部)50b内にも万遍なく芯材51を埋設したものである。上記シール本体50および芯材51の材質および配置構成等は前記実施形態の場合と同様であり、同様の作用効が得られる。
【0024】
また本発明は上記のような舌状シールに限らず、前記図1および図2に示すようなグレージングチャンネル5d等のシール部材にも適用可能であり、図6はその一例を示すもので、グレージングチャンネル5dを構成するシール本体50内に芯材51を埋設させて設けたものである。本例においても上記シール部材(グレージングチャンネル)の縦框23等に対する取付部を構成するシール本体50の基部50aおよび底部50c内にも万遍なく芯材51を埋設した構成であり、また上記シール本体50および芯材51の材質および配置構成等も前記実施形態の場合と同様であり、同様の作用効果が得られる。
【0025】
さらに上記のようなグレージングチャンネル5dを係合保持させる縦框23等の突出部23aは、縦框23の中空部23b(図3および図7参照)に比べ、中空部による空気断熱作用が少ないため火災等による熱影響を受け易い、そこで例えば図7に示すように上記突出部23aの内側に図のような遮熱用のシール部材5eを上記グレージングチャンネル5dと別体または一体に設けるのが望ましいが、そのような遮熱用のシール部材5eについても上記と同様にシール本体50内に芯材51を埋設した構成とすると、上記と同様の作用効果が得られる。
【0026】
また本発明は前記の各図に示すようなシール部材に限らず、図に省略した各種のウエザーストリップやその他種々のシール部材もしくはグレージングビード等の各種パッキン類やガスケット類を始め各種の建築用シール部材にも適用可能であり、上記と同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように本発明による建築用シール部材によれば、万一火災等が発生してシール部材全体が焼けた場合にもシール部材5のシール本体50を耐火性または難燃性の材料で形成したから炭化したり脆弱化することはあっても消失することはなく、また上記シール本体50が炭化して脆弱化しても、そのシール本体50内に埋設した耐火性または難燃性の芯材51によってシール部材としての形状を維持させることができる。その結果、上記シール部材5を介在させた部材間の隙間から建物の屋内外に煙りや火炎が流通するのを良好に防止することが可能となるもので、産業上も有効に利用することができるものである。
【符号の説明】
【0028】
1 開口枠
11、12 横枠
13、14 縦枠
2、3 建具
20、30 建具枠
21、22、31、32 横框
23、24 33、34 縦框
4 ガラス板
5 シール部材
5a〜5c 舌状シール
5d グレージングチャンネル
50 シール本体
51 芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール本体を耐火性または難燃性の材料で形成し、そのシール本体内に耐火性または難燃性の芯材を埋設させて設けたことを特徴とする建築用シール部材。
【請求項2】
上記シール本体を耐火性または難燃性の樹脂で形成してなる請求項1に記載の建築用シール部材。
【請求項3】
上記芯材として耐火性または難燃性の網状体を用いた請求項1または2に記載の建築用シール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−285791(P2010−285791A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139819(P2009−139819)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(591073751)大信工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】