説明

建築用複合シート及びその製造方法

【課題】従来から建築資材として用いられているアスファルトシートと合成樹脂シートとを一体的に接合して両者を複合化した建築用複合シートを提供する。
【解決手段】原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造のアスファルトシート1と、このアスファルトシート1の下面側に配置され、少なくとも下面には紙が一体的に接合された合成樹脂シート2とを、該合成樹脂シート2の熱融着性により融着して一体的に接合したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば屋根下葺材、壁用のラス下地材又は床下の防湿シート等に用いる建築用複合シートに関し、詳しくは、従来から建築資材として用いられているアスファルトシートと合成樹脂シートとを一体的に接合して両者を複合化した建築用複合シート及びその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の建築資材としてのアスファルトシートは、古紙と天然繊維、合成繊維とを混合して抄造した原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルトから成っていた。このアスファルトシートでは、引張り、引裂き強度等の物理的性質がやや弱く、破れることがあった。また、ビス、釘、タッカーなどの打ち込みによる穴の水密性が弱いものであった。そして、従来から、アスファルトシートは、油分を含んでいるので接着剤では接着しにくいと言われていた。
【0003】
また、合成樹脂シートは、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの軟質性合成樹脂の下面又は上下両面に紙が一体的に接合されて構成されていた。この合成樹脂シートでは、引張り、引裂き強度等の物理的性質が向上する。また、ビス、釘、タッカーなどの打ち込みによる穴の水密性も向上する。そして、従来から、合成樹脂シートも、特にポリエチレンでは接着剤による接着がしにくいと言われていた。
【0004】
このような状況において、従来、アスファルトシートと合成樹脂シートとを組み合わせたものとして、片面がアスファルト含浸されたアスファルト半含浸紙が、アスファルト含浸された面と逆の面において接着剤により合成樹脂シートに積層一体化された防水シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の例として、微粒子体を含有する防滑性合成樹脂層と、第1の基材層と、改質アスファルトコンパウンド層と、第2の基材層と、合成樹脂フィルム層とよりなり、合成樹脂フィルム層がクレープ加工された屋根下地材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−270005号公報
【特許文献2】特開2002−220900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1記載の防水シートでは、アスファルト半含浸紙のアスファルト含浸された面と逆の面において、合成樹脂シートを接着剤により接着しているだけであるので、接着強度が強くなく、剥がれてしまう虞がある。また、上記特許文献2記載の屋根下地材では、合成樹脂層と改質アスファルトコンパウンド層との間に別の基材層を介在させなければ接着することができず、その接着だけでは一体的に接合できず、剥がれてしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、従来から用いられているアスファルトシートと合成樹脂シートとを一体的に接合して両者を複合化した建築用複合シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明による建築用複合シートは、原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルトから成るアスファルトシートと、このアスファルトシートの下面側に配置され、少なくとも下面には紙が一体的に接合された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合したものである。
【0009】
このような構成により、アスファルトシートとこのアスファルトシートの下面側に配置された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合する。
【0010】
また、第2の発明による建築用複合シートは、原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造のアスファルトシートと、このアスファルトシートの下面側に配置され、少なくとも下面には紙が一体的に接合された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合したものである。
【0011】
このような構成により、多層構造のアスファルトシートとこのアスファルトシートの下面側に配置された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合する。
【0012】
さらに、第3の発明による建築用複合シートは、ストレートアスファルトに合成ゴム又は合成樹脂を混合して成る改質アスファルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造の改質アスファルトシートと、この改質アスファルトシートの下面側に配置され、少なくとも下面には紙が一体的に接合された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合したものである。
【0013】
このような構成により、多層構造の改質アスファルトシートとこの改質アスファルトシートの下面側に配置された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合する。
【0014】
そして、第1〜第3の発明による建築用複合シートにおいて、上記合成樹脂シートの少なくとも下面に、複数の突起部を形成してもよい。これにより、建築用複合シートの下面側に適宜の空間を形成する。
【0015】
また、第4の発明による建築用複合シートの製造方法は、原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルトから成るアスファルトシート又はストレートアスファルトに合成ゴム若しくは合成樹脂を混合して成る改質アスファルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造の改質アスファルトシートと、所定温度で溶融された合成樹脂と、長尺状に形成された紙とを、圧着部位に送り込んでそれらを上記溶融状の合成樹脂により融着すると共に他の所定温度まで急冷却することにより、上記アスファルトシート又は多層構造の改質アスファルトシートと合成樹脂と紙とを一体的に接合するものである。
【0016】
さらに、第5の発明による建築用複合シートの製造方法は、原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造のアスファルトシート又はストレートアスファルトに合成ゴム若しくは合成樹脂を混合して成る改質アスファルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造の改質アスファルトシートと、所定温度で溶融された合成樹脂と、長尺状に形成された紙とを、圧着部位に送り込んでそれらを上記溶融状の合成樹脂により融着すると共に他の所定温度まで急冷却することにより、上記多層構造のアスファルトシート又は多層構造の改質アスファルトシートと合成樹脂と紙とを一体的に接合するものである。
【0017】
そして、第4及び第5の発明による建築用複合シートの製造方法において、上記圧着部位にて溶融状の合成樹脂により融着する際に、上記合成樹脂の少なくとも下面に、複数の突起部を形成してもよい。これにより、下面側に適宜の空間を形成する建築用複合シートを製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、アスファルトシートとこのアスファルトシートの下面側に配置された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合することができる。したがって、上記アスファルトシートと合成樹脂シートとを複合化して接合強度を向上することができる。このことから、複合シート全体として、引張り、引裂き強度等の物理的性質を向上し、また、ビス、釘、タッカーなどの打ち込みによる穴の水密性を向上することができる。
【0019】
また、請求項2に係る発明によれば、多層構造のアスファルトシートとこのアスファルトシートの下面側に配置された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合することができる。したがって、上記多層構造のアスファルトシートと合成樹脂シートとを複合化して接合強度を向上することができる。このことから、複合シート全体として、引張り、引裂き強度等の物理的性質を向上し、また、ビス、釘、タッカーなどの打ち込みによる穴の水密性を向上することができる。
【0020】
さらに、請求項3に係る発明によれば、多層構造の改質アスファルトシートとこの改質アスファルトシートの下面側に配置された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合することができる。したがって、上記多層構造の改質アスファルトシートと合成樹脂シートとを複合化して接合強度を向上することができる。このことから、複合シート全体として、引張り、引裂き強度等の物理的性質を向上し、また、ビス、釘、タッカーなどの打ち込みによる穴の水密性を向上することができる。
【0021】
そして、請求項4に係る発明によれば、建築用複合シートの下面側に適宜の空間を形成することができる。したがって、複合シートの下面が直接、野地板や壁材等に接することなく、その間に空気層ができるので、通気をよくしてカビの発生や、木材の腐食等を防止することができる。
【0022】
また、請求項5に係る発明によれば、アスファルトシート又は多層構造の改質アスファルトシートと、溶融状の合成樹脂と、長尺状の紙とを、上記溶融状の合成樹脂により融着すると共に他の所定温度まで急冷却して一体的に接合することができる。したがって、上記アスファルトシート又は多層構造の改質アスファルトシートと合成樹脂シートとを複合化して、複合シートを製造することができる。このことから、複合シート全体として、接合強度を向上することができる。また、引張り、引裂き強度等の物理的性質を向上し、また、ビス、釘、タッカーなどの打ち込みによる穴の水密性を向上することができる。
【0023】
さらに、請求項6に係る発明によれば、多層構造のアスファルトシート又は多層構造の改質アスファルトシートと、溶融状の合成樹脂と、長尺状の紙とを、上記溶融状の合成樹脂により融着すると共に他の所定温度まで急冷却して一体的に接合することができる。したがって、上記多層構造のアスファルトシート又は多層構造の改質アスファルトシートと合成樹脂シートとを複合化して、複合シートを製造することができる。このことから、複合シート全体として、接合強度を向上することができる。また、引張り、引裂き強度等の物理的性質を向上し、また、ビス、釘、タッカーなどの打ち込みによる穴の水密性を向上することができる。
【0024】
そして、請求項7に係る発明によれば、下面側に適宜の空間を形成する建築用複合シートを製造することができる。したがって、複合シートの下面が直接、野地板や壁材等に接することなく、その間に空気層ができるので、通気をよくしてカビの発生や、木材の腐食等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、第1の発明による建築用複合シートの実施形態を示す断面図である。この建築用複合シートは、例えば屋根下葺材、壁用のラス下地材又は床下の防湿シート等に用いるもので、アスファルトシート1と合成樹脂シート2とを一体的に接合して成る。
【0026】
上記アスファルトシート1は、この建築用複合シートを構成する一つの材料となるもので、古紙と天然繊維、合成繊維とを混合して抄造した原紙にストレートアスファルトを含浸し、さらに表面にアスファルト層が残らないように絞り製品としたアスファルトフェルトから成る。
【0027】
上記アスファルトシート1の下面側には、合成樹脂シート2が配置接合されている。この合成樹脂シート2は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの軟質性合成樹脂の下面又は上下両面にクラフト紙若しくはクレープ紙等の紙が一体的に接合されて構成されている。
【0028】
そして、上記アスファルトシート1と合成樹脂シート2とは、該合成樹脂シート2の熱融着性により融着して一体的に接合されている。このとき、アスファルトシート1と、所定温度(例えば約200℃)で溶融された合成樹脂と、長尺状に形成された紙(例えばクラフト紙若しくはクレープ紙等)とを、図示外の圧着部位に送り込んでそれらを上記溶融状の合成樹脂により融着すると共に他の所定温度(例えば約80〜90℃)まで急冷却することにより、上記アスファルトシート1と合成樹脂シート2とが一体的に接合される。これにより、上記アスファルトシート1と合成樹脂シート2とを複合化して接合することができる。
【0029】
図2は、第1の発明による建築用複合シートの他の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、上記合成樹脂シート2の少なくとも下面に、複数の突起部3,3,…を形成したものである。この突起部3,3,…は、例えばエンボス状に形成され、図3に示すように、合成樹脂シート2の下面側にて四方八方に散点状に形成されている。これにより、合成樹脂シート2の下面側に適宜の空間を形成することができる。したがって、複合シートの下面が直接、野地板や壁材等に接することなく、その間に空気層ができるので、通気をよくしてカビの発生や、木材の腐食等を防止することができる。
【0030】
この場合、建築用複合シートを対象物に打ち付けた状態で、仮に釘穴やタッカー穴から水が浸入したとしても、上記突起部3により野地板や壁材等との間に空間を形成しているので、上記浸入した水が野地板や壁材等に付着することはない。さらに、上記突起部3を形成している面には紙を融着させているので、浸入した水がゆっくりと下方へ流れ落ちることになる(合成樹脂のシートだけであれば、浸入した水は急激に流れ落ちることになる)。また、上記のように野地板や壁材等との間に空間があるために、浸入した水も徐々に乾燥していく。
【0031】
なお、上記複数の突起部3は、合成樹脂シート2の下面だけでなく、上面にも形成してもよい。この場合は、合成樹脂シート2の上面に形成された複数の突起部3は、アスファルトシート1を突き破ってその上面側まで突出することになる。このようにすると、例えば屋根下葺材において、上面側まで突出した突起部3,3,…は、複合シートの上にのって作業をする人の滑り止めの効果を発揮することができる。また、上記複数の突起部3は、エンボス状に限られず、複数本の平行又は交差する突条としてもよい。
【0032】
図4は、第2の発明による建築用複合シートの実施形態を示す断面図である。この実施形態は、多層構造のアスファルトシート11とこのアスファルトシート11の下面側に配置された前記合成樹脂シート2とを一体的に接合して成る。上記多層構造のアスファルトシート11は、原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルト層5を含みそれ以外に他の材料層を含んで成るもので、略中心に配置されたアスファルトフェルト層5の上下両面に、ブローンアスファルト層6,6をコーティングし、上側のブローンアスファルト層6の上面に珪砂などの鉱物質粉粒層7を塗布し、下側のブローンアスファルト層6の下面にクラフト紙又は不織布(合成繊維不織布を含む)層8を貼り合わせ、上記鉱物質粉粒層7の上面に塗料9が塗布されている。この塗料9は、建築用複合シートの表面に色付けをすると共に、上記鉱物質粉粒層7の珪砂が表面に出ているとその上にのった作業者が滑らないようにするためである。
【0033】
これにより、多層構造のアスファルトシート11と前記合成樹脂シート2とを、前述と同様に合成樹脂シート2の熱融着性により融着して一体的に接合することができる。したがって、上記多層構造のアスファルトシート11と合成樹脂シート2とを複合化して接合強度を向上することができる。
【0034】
図5は、第3の発明による建築用複合シートの実施形態を示す断面図である。この実施形態は、多層構造の改質アスファルトシート21とこのアスファルトシート21の下面側に配置された前記合成樹脂シート2とを一体的に接合して成る。上記多層構造の改質アスファルトシート21は、ストレートアスファルトに合成ゴム又は合成樹脂を混合して成る改質アスファルト層10を含みそれ以外に他の材料層を含んで成るもので、略中心に配置されたアスファルトフェルト層5の上下両面に、改質アスファルト層10,10をコーティングし、上側の改質アスファルト層10の上面に鉱物質粉粒層7を塗布し、下側の改質アスファルト層10の下面にクラフト紙又は不織布層8を貼り合わせ、上記鉱物質粉粒層7の上面に塗料9が塗布されている。
【0035】
これにより、多層構造の改質アスファルトシート21と前記合成樹脂シート2とを、前述と同様に合成樹脂シート2の熱融着性により融着して一体的に接合することができる。したがって、上記多層構造の改質アスファルトシート21と合成樹脂シート2とを複合化して接合強度を向上することができる。
【0036】
図6は、第3の発明による建築用複合シートの第2の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、図5に示す多層構造の改質アスファルトシート21内の層構造を変えたものである。この実施形態では、略中心に配置された改質アスファルト層10の上面に不織布(合成繊維不織布を含む)層12を貼り合わせ、上記改質アスファルト層10の下面にクラフト紙又は不織布層8を貼り合わせ、上記不織布層12の上面に塗料9が塗布されている。
【0037】
図7は、第3の発明による建築用複合シートの第3の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、図5に示す多層構造の改質アスファルトシート21内の層構造を変えたものである。この実施形態では、略中心に配置された不織布層12の上下両面に、改質アスファルト層10,10をコーティングし、上側の改質アスファルト層10の上面に鉱物質粉粒層7を塗布し、下側の改質アスファルト層10の下面にクラフト紙又は不織布層8を貼り合わせ、上記鉱物質粉粒層7の上面に塗料9が塗布されている。
【0038】
図8は、第3の発明による建築用複合シートの第4の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、図5に示す多層構造の改質アスファルトシート21内の層構造を変えたものである。この実施形態では、略中心に配置された改質アスファルト層10の上面に不織布層12を貼り合わせ、上記改質アスファルト層10の下面にアスファルトフェルト層5を貼り合わせ、上記不織布層12の上面に塗料9が塗布されている。
【0039】
図9は、第3の発明による建築用複合シートの第5の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、図5に示す多層構造の改質アスファルトシート21内の層構造を変えたものである。この実施形態では、略中心に配置された改質アスファルト層10の上面に鉱物質粉粒層7を塗布し、上記改質アスファルト層10の下面にクラフト紙又は不織布層8を貼り合わせ、上記鉱物質粉粒層7の上面に塗料9が塗布されている。
【0040】
図10は、第3の発明による建築用複合シートの第6の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、図5に示す多層構造の改質アスファルトシート21内の層構造を変えたものである。この実施形態では、略中心に配置された不織布層12の上下両面に、改質アスファルト層10,10をコーティングし、上側の改質アスファルト層10の上面に不織布層12を貼り合わせ、下側の改質アスファルト層10の下面にクラフト紙又は不織布層8を貼り合わせ、上記不織布層12の上面に塗料9が塗布されている。
【0041】
図11は、第3の発明による建築用複合シートの第7の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、図5に示す多層構造の改質アスファルトシート21内の層構造を変えたものである。この実施形態では、略中心に配置された不織布層12の上面にアルミフィルム層13を貼り合わせ、上記不織布層12の下面に改質アスファルト層10をコーティングし、上記アルミフィルム層13の上面に上側の不織布層12を貼り合わせ、上記改質アスファルト層10の下面にクラフト紙又は不織布層8を貼り合わせ、上側の不織布層12の上面に塗料9が塗布されている。ここで、上記アルミフィルム層13は、屋根下葺材や壁用のラス下地材において、建物内外の遮熱効果を発揮しようとするものである。
【0042】
図12は、第3の発明による建築用複合シートの第8の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、図5に示す多層構造の改質アスファルトシート21内の層構造を変えたものである。この実施形態では、略中心に配置された改質アスファルト層10の上面にアスファルトフェルト層5を貼り合わせ、上記改質アスファルト層10の下面にクラフト紙又は不織布層8を貼り合わせ、上記アスファルトフェルト層5の上面に塗料9が塗布されている。
【0043】
図13は、第3の発明による建築用複合シートの第9の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、図5に示す多層構造の改質アスファルトシート21内の層構造を変えたものである。この実施形態では、略中心に配置された不織布層12の上面に鉱物質粉粒層7を塗布し、上記不織布層12の下面に改質アスファルト層10をコーティングし、この改質アスファルト層10の下面にクラフト紙又は不織布層8を貼り合わせ、上記鉱物質粉粒層7の上面に合成樹脂14が塗布されている。ここで、上記合成樹脂14は、塗料9の代わりとなるものである。
【0044】
なお、図示は省略したが、図4〜図13の実施形態のいずれにおいても、図2及び図3に示すように、合成樹脂シート2の少なくとも下面に、複数の突起部3,3,…を形成してもよい。
【0045】
図14は、上記のように構成された建築用複合シートを製造する製造方法の工程を説明する装置概要図である。図14において、第1の供給ロール25には、原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルトから成るアスファルトシート1(図1参照)又はストレートアスファルトに合成ゴム若しくは合成樹脂を混合して成る改質アスファルト層10を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造の改質アスファルトシート21(図5〜図13参照)が巻き付けられており、第1の圧着ロール26へ上記アスファルトシート1又は多層構造の改質アスファルトシート21を供給するようになっている。
【0046】
また、第2の供給ロール27には、長尺状に形成されたクラフト紙又はクレープ紙が巻き付けられており、第2の圧着ロール28へ上記クラフト紙又はクレープ紙を供給するようになっている。そして、上記第1の圧着ロール26と第2の圧着ロール28とは、その回転軸が平行とされ、互いの回転周面間にわずかな間隔をあけて回転するようになっている。
【0047】
さらに、上記第1の圧着ロール26と第2の圧着ロール28とが隣接する境界部の上方には、ダイス29が設置されており、このダイス29の内部には所定温度(例えば約200℃)で溶融されたポリエチレン又はポリプロピレンなどの軟質性合成樹脂が収容されている。そして、このダイス29から、上記第1の圧着ロール26と第2の圧着ロール28とが隣接する境界部に、上記溶融された合成樹脂が押し出されるようになっている。
【0048】
このような状態で、上記第1の供給ロール25から第1の圧着ロール26へ上記アスファルトシート1又は多層構造の改質アスファルトシート21を供給すると共に、第2の供給ロール27から第2の圧着ロール28へ上記クラフト紙又はクレープ紙を供給する。このとき、図15に示すように、上記第1の供給ロール25及び第2の供給ロール27の回転シャフト30は、両端のシャフト受け31で支持されており、上記回転シャフト30の両端部に設けられたブレーキ32の動作により回転が制動されるようになっている。このブレーキ32の制動動作により、上記第1及び第2の供給ロール25,27から第1及び第2の圧着ロール26,28へ供給する資材のテンションを制御して、それぞれの資材を第1の圧着ロール26及び第2の圧着ロール28に密着させながら供給する。
【0049】
これと同時に、上記ダイス29から、上記第1の圧着ロール26と第2の圧着ロール28とが隣接する境界部に、上記溶融された合成樹脂を押し出して圧着部位に送り込む。これにより、上記アスファルトシート1又は多層構造の改質アスファルトシート21と、所定温度で溶融された合成樹脂と、長尺状に形成されたクラフト紙又はクレープ紙とが圧着部位に送り込まれ、それらを上記溶融状の合成樹脂により融着する。
【0050】
これと同時に、この融着された資材は、上記第1の圧着ロール26及び第2の圧着ロール28の間を通過する際に、他の所定温度(例えば約80〜90℃)まで急冷却される。この急冷却するための構造は、例えば図16に示すように、上記第1の圧着ロール26及び第2の圧着ロール28の回転軸をパイプ状に形成し、その内部に矢印26a,26b;28a,28bのように冷却水を流すようになっている。その水温は、入り口側で19℃前後とし、出口側で22℃前後に保つようにする。これにより、約200℃で溶融状の合成樹脂が、約80〜90℃まで急冷却されることとなる。さらに、このときの第1の圧着ロール26及び第2の圧着ロール28の回転による成形速度は、例えば4〜7m/min程度とする。
【0051】
このようにして、上記アスファルトシート1又は多層構造の改質アスファルトシート21と、合成樹脂と、紙(クラフト紙又はクレープ紙)とを一体的に接合することができる。このとき、上記合成樹脂と紙とで、少なくとも下面には紙が一体的に接合された合成樹脂シート2(図1〜図13参照)が形成される。なお、上記第1の圧着ロール26と第2の圧着ロール28とのわずかな間隔は、上記一体的に接合された資材の厚みが通過し得る隙間とされている。
【0052】
このとき、図16に示すように、例えば第2の圧着ロール28の外周面に例えば円形の凹部33を散点状に形成しておくことにより、図3に示すように、合成樹脂シート2の下面側に突起部3を四方八方に散点状に形成することができる。なお、上記円形の凹部33の代わりに、複数本の直線状の凹溝を形成してもよい。
【0053】
上記第1の圧着ロール26及び第2の圧着ロール28の間を通過した後の資材は、矢印A,B,…,Eのように進んで、最後は巻取りローラ34に巻き取られる。その前に、上記第1の圧着ロール26及び第2の圧着ロール28の間を出てきたばかりでは、まだ資材の温度が高いので、第1の圧着ロール26及び第2の圧着ロール28の後段に冷却工程部35が設けられている。この冷却工程部35には、スポットクーラーや扇風機などが設置されており、ここにおいて移動する資材に対して冷気や風を送って例えば約60℃まで冷却する。なお、この冷却工程部35では、季節によっては自然冷却でもよい。
【0054】
次に、矢印C,Dと進んできたところには、ロール36とカッター37が対向して設けられている。このロール36とカッター37とは、図17及び図18に示すように、上記第1の圧着ロール26及び第2の圧着ロール28の間を通過して出てきた資材38の両側辺に不規則に残っているバリ38a,38bを切断する切断装置となるものである。これにより、上記バリ38a,38bが切断された建築用複合シート39が製造される。
【0055】
図14において、符号40,41,42はテンションローラを示しており、ローラ40は下向きに付勢するものであり、ローラ41,42はその一方又は両方がゴムローラ若しくは滑り止め加工されたローラであり、上記建築用複合シート39をあるテンションで引っ張るようになっている。そして、最後に上記建築用複合シート39を巻取りローラ34で巻き取って製品として完成する。
【0056】
なお、図14においては、第1の供給ロール25には、アスファルトシート1又は多層構造の改質アスファルトシート21を巻き付けるものとして説明したが、本発明はこれに限られず、図4に示す多層構造のアスファルトシート11又は多層構造の改質アスファルトシート21を巻き付けるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の発明による建築用複合シートの実施形態を示す断面図である。
【図2】上記建築用複合シートの他の実施形態を示す断面図である。
【図3】図2に示す建築用複合シートの下面に形成された複数の突起部を示す説明図である。
【図4】第2の発明による建築用複合シートの実施形態を示す断面図である。
【図5】第3の発明による建築用複合シートの実施形態を示す断面図である。
【図6】上記建築用複合シートの第2の実施形態を示す断面図である。
【図7】上記建築用複合シートの第3の実施形態を示す断面図である。
【図8】上記建築用複合シートの第4の実施形態を示す断面図である。
【図9】上記建築用複合シートの第5の実施形態を示す断面図である。
【図10】上記建築用複合シートの第6の実施形態を示す断面図である。
【図11】上記建築用複合シートの第7の実施形態を示す断面図である。
【図12】上記建築用複合シートの第8の実施形態を示す断面図である。
【図13】上記建築用複合シートの第9の実施形態を示す断面図である。
【図14】上記のように構成された建築用複合シートを製造する製造方法の工程を説明する装置概要図である。
【図15】第1及び第2の供給ロールの回転シャフトの制動機構を示す説明図である。
【図16】第1及び第2の圧着ロールで融着された資材を急冷却するための構造を示す説明図である。
【図17】融着され急冷却された資材両側辺のバリを切断する切断装置を示す正面図である。
【図18】上記切断装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…アスファルトシート
2…合成樹脂シート
3…突起部
5…アスファルトフェルト層
6…ブローンアスファルト層
7…鉱物質粉粒層
8…クラフト紙又は不織布層
9…塗料
10…改質アスファルト層
11…多層構造のアスファルトシート
12…不織布層
13…アルミフィルム層
14…合成樹脂
21…多層構造の改質アスファルトシート
25,27…供給ロール
26,28…圧着ロール
29…ダイス
33…凹部
34…巻取りローラ
36…ロール
37…カッター
38…資材
39…建築用複合シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルトから成るアスファルトシートと、このアスファルトシートの下面側に配置され、少なくとも下面には紙が一体的に接合された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合したことを特徴とする建築用複合シート。
【請求項2】
原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造のアスファルトシートと、このアスファルトシートの下面側に配置され、少なくとも下面には紙が一体的に接合された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合したことを特徴とする建築用複合シート。
【請求項3】
ストレートアスファルトに合成ゴム又は合成樹脂を混合して成る改質アスファルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造の改質アスファルトシートと、この改質アスファルトシートの下面側に配置され、少なくとも下面には紙が一体的に接合された合成樹脂シートとを、該合成樹脂シートの熱融着性により融着して一体的に接合したことを特徴とする建築用複合シート。
【請求項4】
上記合成樹脂シートの少なくとも下面に、複数の突起部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建築用複合シート。
【請求項5】
原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルトから成るアスファルトシート又はストレートアスファルトに合成ゴム若しくは合成樹脂を混合して成る改質アスファルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造の改質アスファルトシートと、所定温度で溶融された合成樹脂と、長尺状に形成された紙とを、圧着部位に送り込んでそれらを上記溶融状の合成樹脂により融着すると共に他の所定温度まで急冷却することにより、上記アスファルトシート又は多層構造の改質アスファルトシートと合成樹脂と紙とを一体的に接合することを特徴とする建築用複合シートの製造方法。
【請求項6】
原紙にストレートアスファルトを含浸したアスファルトフェルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造のアスファルトシート又はストレートアスファルトに合成ゴム若しくは合成樹脂を混合して成る改質アスファルト層を含みそれ以外に他の材料層を含んで成る多層構造の改質アスファルトシートと、所定温度で溶融された合成樹脂と、長尺状に形成された紙とを、圧着部位に送り込んでそれらを上記溶融状の合成樹脂により融着すると共に他の所定温度まで急冷却することにより、上記多層構造のアスファルトシート又は多層構造の改質アスファルトシートと合成樹脂と紙とを一体的に接合することを特徴とする建築用複合シートの製造方法。
【請求項7】
上記圧着部位にて溶融状の合成樹脂により融着する際に、上記合成樹脂の少なくとも下面に、複数の突起部を形成することを特徴とする請求項5又は6記載の建築用複合シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−112055(P2007−112055A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307307(P2005−307307)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(595180051)ガムスター株式会社 (2)
【出願人】(391064614)株式会社チャンピオン (5)
【Fターム(参考)】