説明

建設機械における走行モータの駆動装置及びこれを備えた建設機械

【課題】一方の走行モータの異常が他方の走行モータに与える影響を軽減することができる建設機械における走行モータの駆動装置及びこれを備えた建設機械を提供すること。
【解決手段】一対の走行モータ10、11と、これら走行モータ10、11にそれぞれ接続されたドレン油路10a、11aと、これらドレン油路10a、11aを合流させるとともにスイベルジョイント17に接続された一対の合流油路16と、前記各ドレン油路10a、11aのうち一方のドレン油路内の圧力が予め設定された基準圧以上となった場合に、当該一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路の接続された走行モータに伝達するのを規制する規制手段21とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に設けられた走行モータの駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、左右一対の走行モータにより走行可能な下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備えた建設機械が知られている。この種の建設機械では、下部走行体の各走行モータと上部旋回体に設けられた油圧機器との間の作動油の流通が、上部旋回体と下部走行体との間に設けられたスイベルジョイントを介して行われる。
【0003】
前記走行モータには、供給された作動油のうちの一部を排出するためのドレン配管が接続されている。前記一対の走行モータにそれぞれ設けられたドレン配管は、合流した1本の配管として前記スイベルジョイントに接続されている。これにより、前記スイベルジョイントには前記各ドレン配管に連通する1の流路を形成すれば済むため、流路を2本形成する場合よりもスイベルジョイントが大きくなるのを抑えることができる。このような構成を採用した建設機械として、例えば特許文献1の建設機械が知られている。図6は、特許文献1の建設機械の油圧構成の概略を示す回路図である。
【0004】
図6を参照して、特許文献1の駆動装置は、走行モータ103を有する第1油圧回路101と、走行モータ104を有する第2油圧回路102と、前記走行モータ103、104のドレン配管同士を合流させる合流ドレン配管110とを備えている。
【0005】
第1油圧回路101は、図外の油圧ポンプから走行モータ103へ作動油を供給するとともに走行モータ103から排出された作動油を図外のタンクに導くメイン管路105と、このメイン管路105に設けられたカウンタバランス弁106と、前記走行モータ103のドレン配管107に接続されたドレン信号管路108と、このドレン信号管路108内の圧力に応じて前記カウンタバランス弁106のパイロット圧を調整可能な切換弁109とを備えている。なお、第2油圧回路102も第1油圧回路101と同様の構成を有している。
【0006】
前記特許文献1の駆動装置において、例えば、走行モータ104のドレン配管107内の圧力が異常に上昇した場合、この圧力がドレン信号管路108を介して切換弁109に伝達し、当該切換弁109が切り換え操作され、カウンタバランス弁106がそれぞれ中立位置に切り換わる(図6の状態)。これにより、各走行モータ103、104から排出される作動油がカウンタバランス弁106により行き場を失い、両走行モータ103、104が停止することになる。これにより、一方の走行モータ104が故障したときに、他方の走行モータ103だけが駆動するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−148419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の駆動装置では、一方の走行モータに異常が生じた際に、その影響が他方の走行モータにも生じてしまうという問題がある。例えば、走行モータ104が故障した場合、走行モータ103、104のドレン配管107内の圧力がそのまま保持されているため、当該ドレン配管107内の圧力がタンク111に逃げるまでの間、前記異常な高圧がドレン配管107及びドレン信号管路108を介して正常動作中の走行モータ103に伝達されて、当該走行モータ103の破損を生じさせるおそれがあった。
【0009】
特に、ドレン配管107及びドレン信号管路108は大流量を予定したものではなく、各ドレン配管107は合流ドレン配管110及びこの合流ドレン配管110が接続されるセンタジョイント(スイベルジョイント:図示せず)によって流量が絞られているため、これら合流ドレン配管110及びセンタジョイントを介してタンク111へ前記異常な高圧を逃がすためには長時間を要することになる。
【0010】
さらに、前記カウンタバランス弁106を中立位置とした後においても、図外の油圧モータから走行モータ103、104への作動油の流通が許容されているため、当該走行モータ103、104に所定の圧力が付加されている状況に変わりはなく、この圧力に伴いドレン配管107及びドレン信号管路108内の圧力がさらに増加してしまうおそれもある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、一方の走行モータの異常が他方の走行モータに与える影響を軽減することができる建設機械における走行モータの駆動装置及びこれを備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、自走式の下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記下部走行体に設けられ当該下部走行体を走行駆動するための一対の走行モータと、前記上部旋回体に設けられた油圧ポンプ及びタンクと、前記上部旋回体と下部走行体との間に設けられたスイベルジョイントと、前記走行モータにそれぞれ設けられ、前記スイベルジョイントを介して前記油圧ポンプから走行モータに対し作動油を供給するとともに当該走行モータから前記タンクに作動油を導くことが可能な一対のメイン回路と、前記下部走行体に設けられ各走行モータのそれぞれに接続された一対のドレン油路と、これらドレン油路同士を合流させるとともに前記スイベルジョイントに接続された合流油路と、前記スイベルジョイントと前記タンクとの間に設けられ、前記合流油路によって導かれた作動油を前記タンクに導くための排出油路と、前記各ドレン油路のうち一方のドレン油路内の圧力が予め設定された基準圧以上となった場合に、当該一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路の接続された走行モータに伝達するのを規制する規制手段とを有する建設機械における前記走行モータを駆動するための駆動装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、一方のドレン油路内の圧力が基準圧以上となったときに当該圧力が正常に動作する走行モータに伝達するのを規制することができるので、一方の走行モータの異常によって他方の走行モータが受ける影響を軽減することができる。
【0014】
前記走行モータの駆動装置において、前記規制手段は、例えば、前記一方のドレン油路を、前記各メイン回路のうちの少なくとも一方のメイン回路における低圧側油路に連通させることにより、前記一方のドレン油路内の圧力を緩和させることができる。
【0015】
この構成によれば、基準圧以上の圧力が発生している一方のドレン油路を、メイン回路の低圧側油路に連通させることができるので、ドレン用の油路(ドレン油路、合流油路、スイベルジョイント内の油路、排出油路等)と比較して格段に大きな流量が予定されたメイン回路を通して前記一方のドレン油路内の作動油を排出することができる結果、当該一方のドレン油路内で発生した高い圧力が正常に動作している走行モータに伝達するのを規制することができる。
【0016】
具体的に、前記規制手段は、前記各メイン回路のそれぞれに設けられた油路選択手段と、これら油路選択手段と前記各ドレン油路との間にそれぞれ接続された連結油路と、これら連結油路にそれぞれ設けられ前記ドレン油路側の圧力が前記基準圧以上となったときに前記油路選択手段側への流通を許容するチェック弁とを備え、前記油路選択手段は、当該油路選択手段に接続された前記連結油路及びメイン回路の低圧側油路を連通可能に構成することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ドレン油路内の圧力が前記基準圧以上となるとチェック弁が開放し、作動油は、連通流路内を油路選択手段側へ流れるとともに、この油路選択手段によって前記メイン回路の低圧側油路へ導かれることになる。
【0018】
前記走行モータの駆動装置において、前記油路選択手段は、前記メイン回路の高圧側油路と低圧側油路との圧力差に応じて、前記連結油路とメイン回路の低圧側油路とが連通する方向に操作される油路選択弁からなることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、高圧側油路と低圧側油路との圧力差に応じて、連結油路が自動的にメイン回路の低圧側油路に連通することになる。
【0020】
前記走行モータの駆動装置において、前記油路選択弁は、前記メイン回路の高圧側油路と低圧側油路との圧力差に応じて当該低圧側油路の流量を制限する機能も有していることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、油路選択弁をカウンタバランス弁としても兼用することができるので、これらの弁を別々に設ける場合と比較して部品を共通化することができる分だけ製造コストを低減することができる。
【0022】
前記走行モータの駆動装置において、前記規制手段は、前記基準圧以上となった前記一方のドレン油路を閉鎖することにより、当該一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路の接続された走行モータに伝達するのを規制する構成とすることができる。
【0023】
この構成によれば、基準圧以上の圧力が発生している一方のドレン油路を閉鎖することにより、当該一方のドレン油路が接続された走行モータと正常に動作している走行モータとの間の油路を遮断することができるため、前記一方のドレン油路内で発生した高い圧力が正常に動作している走行モータに伝達するのを規制することができる。
【0024】
前記走行モータの駆動装置において、前記規制手段は、前記一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路内の圧力よりも大きくなることに応じて当該一方のドレン油路の絞り量を大きくするとともに、両ドレン油路内の差圧が前記基準圧に対応する圧力となった状態で前記一方のドレン油路を閉鎖することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、圧力の増大に応じてドレン油路の絞り量を大きくすることができるので、前記基準圧以下で全開とされ、基準圧を超えたときに全閉とする場合と異なり、ドレン油路内の圧力の相対的な増大分だけ絞りによる圧力損失を大きくすることができるので、当該絞りを挟んだ二次側の圧力(他方のドレン油路側の圧力)を小さくすることができる。
【0026】
具体的に、前記規制手段は、前記一方のドレン油路を開放する切換位置と閉鎖する切換位置とを有する切換弁からなり、この切換弁は前記各ドレン油路内の圧力をパイロット圧として操作されるように構成することができる。
【0027】
前記走行モータの駆動装置において、前記規制手段は、前記各ドレン油路と合流油路との間に設けられ、各ドレン油路と合流油路とを連通させる中立位置と、一方のドレン油路を閉鎖するとともに他方のドレン油路を合流油路に連通させる第1操作位置と、前記他方のドレン油路を閉鎖するとともに前記一方のドレン油路を合流油路に連通させる第2操作位置とを有する切換弁からなり、この切換弁は、前記一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路内の圧力よりも大きい場合に前記第1操作位置側へ操作される一方、前記一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路内の圧力よりも小さい場合に前記第2操作位置側へ操作されることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、3位置切換弁を、中立位置から第1又は第2操作位置に切り換えることにより、何れか一方の走行モータに接続されたドレン油路を閉鎖することができる。
【0029】
また、本発明は、自走式の下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記走行モータの駆動装置とを備えた建設機械を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、一方の走行モータの異常が他方の走行モータに与える影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの全体構成を示す側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルに設けられた油圧系統を概略的に示す回路図である。
【図3】図2の油圧系統の別の実施形態を示す回路図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る油圧系統の回路図である。
【図5】図4の油圧系統の別の実施形態を示す回路図である。
【図6】従来の技術を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベルの全体構成を示す側面図である。図2は、図1の油圧ショベルに設けられた油圧系統を概略的に示す回路図である。
【0034】
図1及び図2を参照して、建設機械の一例としての油圧ショベル1は、自走式の下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、これら下部走行体2と上部旋回体3に跨って設けられた油圧系統4とを備えている。
【0035】
下部走行体2は、左右一対のクローラ5(図1では1つ示している)と、これらクローラ5を支持するロアフレーム6とを備え、後述する走行モータ10、11の回転駆動に応じてクローラ5のクローラベルト5aが循環駆動することにより前後方向に走行することが可能となっている。
【0036】
上部旋回体3は、前記ロアフレーム6上に旋回可能に搭載された旋回フレーム7と、この旋回フレーム7に起伏可能に取付けられた作業アタッチメント8と、この作業アタッチメント8を作動させるための油圧シリンダ9とを備え、旋回フレーム7上に設けられた油圧ポンプ(図示せず)から油圧シリンダ9に作動油が供給されることにより、作業アタッチメント8が起伏又は屈伸動作するようになっている。
【0037】
図2に示すように、油圧系統4は、走行モータ10を有する第1回路14と、走行モータ11を有する第2回路15と、走行モータ10のドレン油路10aと走行モータ11のドレン油路11aとを合流させる合流油路16と、下部走行体2と上部旋回体3との間に設けられたスイベルジョイント17と、上部旋回体3に設けられたタンク18及び油圧ポンプ(図示せず)と、このタンク18とスイベルジョイント17とを連結して前記合流油路16から排出された作動油をタンク18に導く排出油路19とを備えている。なお、前記第1回路14及び第2回路15は同様の構成を有しているため、以下、第1回路14について説明して第2回路15の説明を省略する。
【0038】
第1回路14は、走行モータ10に接続されたメイン回路20と、前記各ドレン油路10a、11aのうち一方のドレン油路内の圧力が予め設定された基準圧以上となった場合に、当該一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路の接続された走行モータに伝達するのを規制する規制手段21とを備えている。
【0039】
メイン回路20は、スイベルジョイント17を介して図外の油圧ポンプから走行モータ10に作動油を供給するとともに、これら走行モータ10から排出された作動油を前記タンク12に導くことが可能な一対の給排油路22及び給排油路23と、これら給排油路22、23に設けられたカウンタバランス弁24とを備えている。
【0040】
このカウンタバランス弁24は、前記給排油路22、23同士の圧力差に応じて操作される3位置切換弁により構成されている。具体的に、カウンタバランス弁24は、走行モータ10を停止させるための中立位置と、給排油路22、23のうちの低圧側の油路の流量を絞ることが可能な一対の切換位置(図2の左右の切換位置)との間で切換可能とされている。
【0041】
規制手段21は、前記メイン回路20に設けられた油路選択弁(油路選択手段)25と、この油路選択弁25とドレン油路10aとの間にそれぞれ接続された連結油路26と、この連結油路26に設けられたチェック弁27とを備えている。
【0042】
油路選択弁25は、前記各給排油路22、23同士の圧力差に応じて操作される3位置切換弁により構成されている。具体的に、油路選択弁25は、各給排油路22、23と連結油路26とが連結される中立位置と、各給排油路22、23のうちの低圧側油路と連結油路26とが連結される一対の切換位置(図2の左右の切換位置)との間で切換可能とされている。
【0043】
チェック弁27は、通常、連結油路26内の作動油の流通を阻止する一方、前記ドレン油路10a、11aのうち何れか一方のドレン油路内の圧力が予め設定された基準圧以上となった場合に開放して、各ドレン油路10a、11aから油路選択弁25側への作動油の流通を許容するようになっている。
【0044】
以下、前記油圧系統4を備えた油圧ショベル1において、走行モータ11が駆動不能となった場合の動作について説明する。
【0045】
走行モータ11が駆動不能となると当該走行モータ11に供給される作動油のうちドレン油路11a側に導かれる作動油の流量が増大し、当該ドレン油路11a内の圧力が増大する。
【0046】
ドレン油路11a内の圧力が前記基準圧以上となると、各チェック弁27、27が開放し、作動油が各油路選択弁25、25へ導かれる。ここで、各油路選択弁25、25は、各メイン回路20、20において給排油路22、23同士の圧力差に応じた操作量で切換操作されているため、各連結油路26、26は、各給排油路22、23の低圧側油路を通ってタンク18に導かれる。
【0047】
ここで、ドレン油路11aは、合流油路16及びスイベルジョイント17を介してタンク18に接続されているが、これらの油路はあくまでドレン用の油路として設けられたものであり大流量を予定した断面積に設定されていないため、当該各油路にはドレン油路11a内のごく一部の作動油しか通過することができない。一方、本実施形態では、ドレン油路11a内の作動油を、大流量が予定されたメイン回路20の低圧側油路を通してタンク18に導くことができるので、当該ドレン油路11a内の圧力を迅速に降下させることができる。
【0048】
なお、前記実施形態では、油路選択弁25とカウンタバランス弁24とを別々に設けた構成について説明したが、図3に示すように、前記2ポートの油路選択弁25と2ポートのカウンタバランス弁24とを兼用にした4ポートの油路選択弁28とすることもできる。
【0049】
このようにした場合、給排油路22、23同士の差圧で操作されるという共通の機能を発揮するための構成について共通化を図ることができるので、その分、製造コストを低減することができるとともに配置スペースも小さくなる。
【0050】
このような実施形態とするか前記実施形態のようにするかは、走行モータ10、11の基本形態に応じて適宜決定することができる。つまり、図2の二点鎖線で示すように、走行モータ10とカウンタバランス弁24とがユニット化された既存のモータをそのまま利用する際には、同図に示すように油路選択弁25を別途設けることにより容易に上述した効果を得ることができる。一方、図3に示すように、走行モータ10、11を単体で利用することができる場合には、これにチェック弁27、連結油路26及び油路選択弁28を加えて新たなユニットを作成することができる。
【0051】
以上説明したように、前記実施形態によれば、各ドレン油路10a、11aのうちの一方の圧力が基準圧以上となったときに当該圧力が正常に動作する走行モータ10、11に伝達するのを規制することができるので、各走行モータ10、11のうちの一方の異常が他方の走行モータに与える影響を軽減することができる。
【0052】
前記実施形態のように、ドレン油路10a、11aのうち基準圧以上の圧力となった一方のドレン油路を、各メイン回路20の低圧側油路(給排油路22又は23)に連通させることにより、前記一方のドレン油路内の圧力を緩和させる構成とすれば、ドレン用の油路(ドレン油路10a、11a、合流油路16、スイベルジョイント17内の油路、排出油路19)と比較して格段に大きな流量が予定されたメイン回路20を通して前記一方のドレン油路内の作動油を排出することができるので、当該一方のドレン油路内で発生した高い圧力が正常に動作している走行モータに伝達するのを規制することができる。
【0053】
なお、前記実施形態では、走行モータ10、11の両メイン回路20における低圧側油路のそれぞれにドレン油路を連通させているが、両メイン回路20のうち少なくとも一方における低圧側油路にドレン油路を連通させれば、上述の効果を得ることができる。
【0054】
前記実施形態のように、油路選択弁25、28と、連結油路26と、チェック弁27とを備えた構成によれば、ドレン油路10a、11a内の圧力が基準圧以上となるとチェック弁27が開放し、作動油は、連結油路26内を油路選択弁25又は28側へ流れるとともに、この油路選択弁25又は28によってメイン回路20の低圧側油路へ導かれることになる。
【0055】
前記実施形態では、前記油路選択弁25、28がメイン回路20の高圧側油路と低圧側油路との圧力差に応じて操作されるように構成されているので、連結油路26が自動的にメイン回路20の低圧側油路に連通することになる。
【0056】
図3に示す実施形態のように、メイン回路20の高圧側油路と低圧側油路との圧力差に応じて当該低圧側油路の流量を制限する機能も有する油路選択弁28を採用した構成によれば、油路選択弁28をカウンタバランス弁としても兼用することができるので、これらの弁を別々に設ける場合と比較して部品を共通化することができる分だけ製造コストを低減することができる。
【0057】
前記実施形態では、規制手段21によりドレン油路10a又は11aをメイン回路20の給排油路22、23に連通させることにより、異常に上昇したドレン油路10a、11a内の圧力が正常に動作している走行モータ10、11に作用するのを規制するようにしているが、圧力が上昇したドレン油路10a又は11a自体を閉鎖することにより、同様の走行モータ10、11の保護を図ることもできる。
【0058】
図4は、本発明の別の実施形態に係る油圧系統29の回路図である。
【0059】
図4を参照して、油圧系統29は、走行モータ30を有する第1回路33と、走行モータ31を有する第2回路34と、走行モータ30のドレン油路30aと走行モータ31のドレン油路31aとを合流させる合流油路35と、下部走行体2と上部旋回体3との間に設けられたスイベルジョイント36と、上部旋回体3に設けられた前記タンク37及び油圧ポンプ(図示せず)と、このタンク37とスイベルジョイント36とを連結して前記合流油路35から排出された作動油をタンク37に導く排出油路38とを備えている。なお、第1回路33と第2回路34は同様の構成を有しているため、以下、第1回路33について説明して第2回路34の説明を省略する。
【0060】
第1回路33は、走行モータ30に接続されたメイン回路39と、前記各ドレン油路30a、31aのうち一方のドレン油路内の圧力が予め設定された基準圧以上となった場合に、当該一方のドレン油路を閉鎖するための切換弁(規制手段)40とを備えている。
【0061】
メイン回路39は、スイベルジョイント36を介して図外の油圧ポンプから走行モータ30に作動油を供給するとともに、これら走行モータ30から排出された作動油を前記タンク37に導くことが可能な一対の給排油路41及び給排油路42と、これら給排油路41、42に設けられたカウンタバランス弁(図示せず)とを備えている。このカウンタバランス弁は前記実施形態と同様のものを利用することができる。
【0062】
切換弁40は、前記ドレン油路30aの途中部に設けられ、その上流側の圧力と下流側の圧力との差圧に応じて切換操作されるようになっている。具体的に、切換弁40は、ドレン油路30aが開放された初期位置(図4の上の切換位置)と、ドレン油路30aを閉鎖する閉鎖位置(図4の下の切換位置)との間で切換操作可能とされている。本実施形態では、ドレン油路30aのうち切換弁40よりも走行モータ30側の圧力と合流油路35側の圧力との差圧が予め設定された基準圧以上となったときに、切換弁40によりドレン油路30aが完全に閉鎖されるようになっている。
【0063】
以下、前記油圧系統29を備えた油圧ショベル1において、走行モータ30が駆動不能となった場合の動作について説明する。
【0064】
走行モータ30が駆動不能となると当該走行モータ30に供給される作動油のうちドレン油路30a側に導かれる作動油の流量が増大し、当該ドレン油路30aのうち切換弁40よりも走行モータ30側の圧力が増大する。
【0065】
ドレン油路30aの走行モータ30側の圧力と合流油路35側の圧力との差圧が前記基準圧以上となると、ドレン油路30aに設けられた切換弁40により当該ドレン油路30aが完全に閉鎖される。したがって、駆動不能となった走行モータ30から正常に駆動している走行モータ31へ作動油が導かれるのを阻止することができる。
【0066】
以上説明したように、前記実施形態によれば、各ドレン油路30a、31aのうち基準圧以上の圧力が発生している一方のドレン油路を閉鎖することにより、当該一方のドレン油路が接続された走行モータと正常に動作している走行モータとの間の油路を遮断することができるため、前記一方のドレン油路内で発生した高い圧力が正常に動作している走行モータに伝達するのを規制することができる。
【0067】
前記実施形態のように、各ドレン油路30a、31aのうち一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路内の圧力よりも大きくなることに応じて当該一方のドレン油路の絞り量を大きくするとともに、両ドレン油路30a、31a内の差圧が予め設定された基準圧となったときに前記一方のドレン油路を閉鎖することが可能な切換弁40を備えた構成によれば、前記差圧の増大に応じてドレン油路の絞り量を大きくすることができるので、前記基準圧以下で全開とされ、基準圧を超えたときに全閉とする場合と異なり、ドレン油路30a、31a内の圧力の相対的な増大分だけ絞りによる圧力損失を大きくできるので、当該絞りを挟んだ二次側の圧力(他方のドレン油路側の圧力)がリアルタイムに調整される。
【0068】
なお、前記実施形態では、各ドレン油路30a、31aにそれぞれ切換弁40、40を設けた構成について説明したが、図5に示すように、各ドレン油路30a、31aと合流油路35との間に設けられた3位置切換弁43によって上述した効果を得ることもできる。
【0069】
具体的に、3位置切換弁43は、各ドレン油路30a、31aと合流油路35とを連通させる中立位置(図5の中央の切換位置)と、一方のドレン油路30aを閉鎖するとともに他方のドレン油路31aを合流油路35に連通させる第1操作位置(図5の左の切換位置)と、前記他方のドレン油路31aを閉鎖するとともに前記一方のドレン油路30aを合流油路35に連通させる第2操作位置(図5の右の操作位置)との間で切換操作可能に構成されている。
【0070】
このように構成すれば、3位置切換弁43を、中立位置から第1又は第2操作位置に切り換えることにより、何れか一方のドレン油路30a又は31aを閉鎖することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4、29 油圧系統
10、11、30、31 走行モータ
10a、11a、30a、31a ドレン油路
16、35 合流油路
17、36 スイベルジョイント
18、37 タンク
19、38 排出油路
20、39 メイン回路
21 規制手段
25、28 油路選択弁
26 連結油路
27 チェック弁
40 切換弁
43 3位置切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式の下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記下部走行体に設けられ当該下部走行体を走行駆動するための一対の走行モータと、前記上部旋回体に設けられた油圧ポンプ及びタンクと、前記上部旋回体と下部走行体との間に設けられたスイベルジョイントと、前記走行モータにそれぞれ設けられ、前記スイベルジョイントを介して前記油圧ポンプから走行モータに対し作動油を供給するとともに当該走行モータから前記タンクに作動油を導くことが可能な一対のメイン回路と、前記下部走行体に設けられ各走行モータのそれぞれに接続された一対のドレン油路と、これらドレン油路同士を合流させるとともに前記スイベルジョイントに接続された合流油路と、前記スイベルジョイントと前記タンクとの間に設けられ、前記合流油路によって導かれた作動油を前記タンクに導くための排出油路と、前記各ドレン油路のうち一方のドレン油路内の圧力が予め設定された基準圧以上となった場合に、当該一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路の接続された走行モータに伝達するのを規制する規制手段とを有し、
前記規制手段は、前記基準圧以上となった前記一方のドレン油路を閉鎖することにより、当該一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路の接続された走行モータに伝達するのを規制することを特徴とする建設機械における前記走行モータを駆動するための駆動装置。
【請求項2】
前記規制手段は、前記一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路内の圧力よりも大きくなることに応じて当該一方のドレン油路の絞り量を大きくするとともに、両ドレン油路内の差圧が前記基準圧に対応する圧力となった状態で前記一方のドレン油路を閉鎖することを特徴とする請求項に記載の建設機械における走行モータの駆動装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記一方のドレン油路を開放する切換位置と閉鎖する切換位置とを有する切換弁からなり、この切換弁は前記各ドレン油路内の圧力をパイロット圧として操作されることを特徴とする請求項に記載の建設機械における走行モータの駆動装置。
【請求項4】
前記規制手段は、前記各ドレン油路と合流油路との間に設けられ、各ドレン油路と合流油路とを連通させる中立位置と、一方のドレン油路を閉鎖するとともに他方のドレン油路を合流油路に連通させる第1操作位置と、前記他方のドレン油路を閉鎖するとともに前記一方のドレン油路を合流油路に連通させる第2操作位置とを有する切換弁からなり、この切換弁は、前記一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路内の圧力よりも大きい場合に前記第1操作位置側へ操作される一方、前記一方のドレン油路内の圧力が他方のドレン油路内の圧力よりも小さい場合に前記第2操作位置側へ操作されることを特徴とする請求項に記載の建設機械における走行モータの駆動装置。
【請求項5】
自走式の下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、請求項1〜の何れか1項に記載の走行モータの駆動装置とを備えた建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137187(P2012−137187A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−79428(P2012−79428)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2007−264065(P2007−264065)の分割
【原出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】