説明

建設機械における電磁切換弁の配置構造

【課題】運転室の操作手段からできる限り近い位置に電磁切換弁を配置し、電気ケーブルおよび油圧ホースを短くすることによって油圧アクチュエータの応答性を向上するともに、電磁切換弁に雨水がかかって故障するのを防止する。
【解決手段】エンジン等の機関部4と、運転室3と、ブーム6、アーム7等からなるフロントアタッチメントと、該フロントアタッチメントを動かすブームシリンダ9、アームシリンダ10等の油圧アクチュエータとを備え、運転室3内の操作手段12により電磁切換弁29を切り換えて前記油圧アクチュエータを駆動する建設機械において、前記電磁切換弁29を運転室3の内部または下部に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械における電磁切換弁の配置構造に関するものであり、特に、運転室内の操作手段により電磁切換弁を切り換えて油圧アクチュエータを駆動する油圧ショベル等の建設機械における電磁切換弁の配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は一般的な建設機械の一例を示し、下部走行体1の上に上部旋回体2を旋回自在に載置し、上部旋回体2にはその前方一側部に運転室3が設けられ、且つ、運転室3の後部にエンジン等の機関部4を搭載してハウスカバー5にて被蔽する。また、上部旋回体2の前方中央部にブーム6を俯仰可能に取り付け、このブーム6の先端にアーム7を上下回動自在に取り付けるとともに、該アーム7の先端に圧砕機8を装着する。
【0003】
前記ブーム6、アーム7、圧砕機8等からなるフロントアタッチメントには、それぞれブームシリンダ9、アームシリンダ10、バケットシリンダ11等の油圧アクチュエータが設けられ、運転室3内に設置されている操作手段12の操作に応じて、電磁切換弁が切り換え制御され、油圧アクチュエータに圧油が給排されてフロントアタッチメントを動かすように構成されている。
【0004】
従来の建設機械では、図5にて符号Aに示す位置、すなわち運転室3後部のハウスカバー5内に電磁切換弁が設けられており、運転室3内に設置されている操作手段12とA位置に設けられた電磁切換弁とが電気ケーブルにて接続されている。また、運転室3の床下に設けられているパイロット圧給排用マニホールド(図示せず)とA位置に設けられた電磁切換弁とが油圧ホースにて接続される。
【0005】
また、次のような油圧ショベルの方向切換弁配置構造が知られている。これは、ブームシリンダやアームシリンダ等の油圧アクチュエータの駆動を制御する各方向制御弁を、2つの弁ブロック内にスプールを鉛直方向にして、旋回体の2つのフレーム間でかつ旋回モータの後部空間に配置してある(特許文献1参照)。
【0006】
また、油圧アクチュエータの作動を制御する複数の油圧制御弁をテールフレームの一対のフレーム部材間に配設し、油圧制御弁の各パイロットポートと操作レバーにより操作される複数のパイロット弁との接続関係を複数の組み合わせに変更可能な切換弁を、操作レバーに近い側のフレーム部材の上フランジ上に配設した切換弁配置構造も知られている(特許文献2参照)
【特許文献1】実開平8−705号公報
【特許文献2】特開2001−262616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示した建設機械において、フロントアタッチメントを動かす油圧アクチュエータへ圧油を給排するために、従来は符号A位置すなわち運転室後部のハウスカバー内に電磁切換弁を配置してあるが、運転室の内部に設置されている操作手段から電磁切換弁までの距離が遠いので、電気ケーブルを長く配線しなければならない。また、パイロット圧給排用マニホールドと電磁切換弁との距離も遠くなって油圧ホースが長くなる。このため、操作手段を操作してから油圧アクチュエータが開閉するまでの応答性が悪かった。また、電磁切換弁はハウスカバーで被蔽されてはいるものの、風雨の強いときや洗車のときのように横方向からの水に対しては防護が不十分であり、該電磁切換弁に雨水がかかって故障の原因となる。
【0008】
また、特許文献1記載の発明は、各方向制御弁を旋回モータの後部空間位置に配置したので、各方向制御弁の交換作業や配管の接続作業が容易となるが、図5にて前述した構成と同様に、運転室の操作手段から各方向制御弁までの距離が遠いので電気ケーブルおよび油圧ホースが長くなり、油圧アクチュエータの応答性が悪いという不具合がある。
【0009】
また、特許文献2記載の発明は、切換弁を運転室後方のフレーム部材に配置したので、図5および特許文献1と同様に、運転室の操作手段から切換弁までの距離が遠く、電気ケーブルおよび油圧ホースが長くなり、油圧アクチュエータの応答性が悪いという不具合がある。
【0010】
そこで、運転室の操作手段からできる限り近い位置に電磁切換弁を配置し、電気ケーブルおよび油圧ホースを短くすることによって油圧アクチュエータの応答性を向上するとともに、電磁切換弁に雨水がかかって故障するのを防止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、エンジン等の機関部と、運転室と、ブーム、アーム等からなるフロントアタッチメントと、該フロントアタッチメントを動かす油圧アクチュエータとを備え、運転室内の操作手段により電磁切換弁を切り換えて前記油圧アクチュエータを駆動する建設機械において、前記電磁切換弁を運転室の内部に設けたことを特徴とする建設機械における電磁切換弁の配置構造を提供する。
【0012】
この構成によれば、油圧アクチュエータを駆動する電磁切換弁が運転室の内部に配置され、運転室の操作手段から電磁切換弁までの距離が近いので電気ケーブルが短くなり、パイロット圧給排用マニホールドと電磁切換弁との距離も近くなって油圧ホースが短くなる。
【0013】
請求項2記載の発明は、エンジン等の機関部と、運転室と、ブーム、アーム等からなるフロントアタッチメントと、該フロントアタッチメントを動かす油圧アクチュエータとを備え、運転室内の操作手段により電磁切換弁を切り換えて前記油圧アクチュエータを駆動する建設機械において、前記電磁切換弁を運転室の下部に設けたことを特徴とする建設機械における電磁切換弁の配置構造を提供する。
【0014】
この構成によれば、油圧アクチュエータを駆動する電磁切換弁が運転室の下部に配置され、運転室の操作手段から電磁切換弁までの距離が近いので電気ケーブルが短くなり、パイロット圧給排用マニホールドと電磁切換弁との距離も近くなって油圧ホースが短くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述したように、油圧アクチュエータを駆動する電磁切換弁が運転室の内部または下部に配置されているので、運転室の操作手段から電磁切換弁までの距離が近くなって電気ケーブルが短くなり、パイロット圧給排用マニホールドと電磁切換弁との距離も近くなって油圧ホースが短くなる。このため、操作手段を操作してから油圧アクチュエータが開閉するまでの応答性が良好となる。
【0016】
また、電磁切換弁が運転室の内部または下部に配置されているので、電磁切換弁に雨水や洗車等の水がかかることがなく、水濡れによる電磁切換弁の故障を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る建設機械における電磁切換弁の配置構造について、好適な実施例をあげて説明する。運転室の操作手段からできる限り近い位置に電磁切換弁を配置し、電気ケーブルおよび油圧ホースを短くすることによって油圧アクチュエータの応答性を向上するともに、電磁切換弁に雨水がかかって故障するのを防止するという目的を、エンジン等の機関部と、運転室と、ブーム、アーム等からなるフロントアタッチメントと、該フロントアタッチメントを動かす油圧アクチュエータとを備え、運転室内の操作手段により電磁切換弁を切り換えて前記油圧アクチュエータを駆動する建設機械において、前記電磁切換弁を運転室の内部または下部に設けることにより実現した。
【実施例1】
【0018】
一般的な建設機械の概要については、図5にて前述してあるので重複説明は省略するが、本発明では、図5にて符号Bに示す位置、すなわち運転室3の内部または下部に電磁切換弁が設けられている。そして、運転室3内に設置されている操作手段12とB位置に設けられた電磁切換弁とが電気ケーブルにて接続され、また、運転室3の床下に設けられているパイロット圧給排用マニホールド(図示せず)とB位置に設けられた電磁切換弁とが油圧ホースにて接続される。
【0019】
図1は上部旋回体の旋回フレーム20の前方左側部分を示す斜視図、図2は運転室床板の下面図である。旋回フレーム20の中央部にブーム取付ブラケット21が設けられ、該ブーム取付ブラケット21の後部に油圧アクチュエータのコントロール弁22が取り付けられている。コントロール弁22には油圧アクチュエータへ圧油を給排するメインポートと、スプールを切り換えるパイロットポートと、オイルクーララインを接続するポート等が設けられている。
【0020】
前記ブーム取付ブラケット21の側部に運転室床板23が設けられ、該運転室床板23には所々にペダル取付孔24と電気ケーブル挿通孔25が開穿され、該運転室床板23の前方中央部に走行レバー用切換弁26が取り付けられている。なお、符号27は運転室3への電気ケーブルをまとめたメインハーネスである。運転席床板23の下面には、ブラケット28を介して電磁切換弁29が取り付けられ、また、パイロット圧給排用マニホールド33が取り付けられている。
【0021】
図3は運転室床板23の要部拡大図、図4はF−F矢視図であり、前記メインハーネス27が電気ケーブル挿通孔25を通って運転室床板23の上面から下面へ配線され、適宜間隔でクランプあるいはバンド等の止め具30にて運転室床板23の下面に固定されている。そして、メインハーネス27から各電気ケーブル27aが分岐され、電磁切換弁29のソレノイドに接続している。
【0022】
電磁切換弁29の各ポートにはホースアダプタ31を介して油圧ホース32の一端が接続され、これら油圧ホース32の他端は、パイロット圧給排用マニホールド33を介してそれぞれコントロール弁22のパイロットポートへ接続されている。運転室3内に設けた操作手段12の操作により、電磁切換弁29のソレノイドに通電されてスプールが切り換わると、前記油圧ホース32を通ってコントロール弁22のパイロットポートにパイロット圧が供給され、コントロール弁22が何れかの位置に切り換わって油圧アクチュエータへ圧油が供給される。
【0023】
なお、前記電磁切換弁29を運転室3の下部に設けるのではなく、運転室3の内部に設けてもよい。何れの場合でも、前記操作手段12から電磁切換弁29までの距離が近くなって電気ケーブル27aの長さが短くなり、パイロット圧給排用マニホールド33と電磁切換弁29との距離も近くなって油圧ホース32が短くなる。このため、操作手段12を操作してから油圧アクチュエータが開閉するまでの応答性が良好となる。また、電磁切換弁29に雨水や洗車等の水がかかることがなく、水濡れによる電磁切換弁29の故障を防止することができる。
【0024】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用された上部旋回体の旋回フレームの斜視図。
【図2】図1に示す運転室床板の下面図。
【図3】図2に示す運転室床板の要部拡大図。
【図4】図2のF−F矢視図。
【図5】一般的な建設機械の一例を示す側面図。
【符号の説明】
【0026】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 運転室
4 機関室
5 ハウスカバー
6 ブーム
7 アーム
8 クラムバケット
9 ブームシリンダ
10 アームシリンダ
11 バケットシリンダ
12 操作手段
20 旋回フレーム
21 ブーム取付ブラケット
22 コントロール弁
23 運転室床板
24 ペダル取付孔
25 電気ケーブル挿通孔
26 走行レバー用切換弁
27 メインハーネス
27a 電気ケーブル
28 ブラケット
29 電磁切換弁
30 止め具
31 ホースアダプタ
32 油圧ホース
33 パイロット圧給排用マニホールド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン等の機関部と、運転室と、ブーム、アーム等からなるフロントアタッチメントと、該フロントアタッチメントを動かす油圧アクチュエータとを備え、運転室内の操作手段により電磁切換弁を切り換えて前記油圧アクチュエータを駆動する建設機械において、
前記電磁切換弁を運転室の内部に設けたことを特徴とする建設機械における電磁切換弁の配置構造。
【請求項2】
エンジン等の機関部と、運転室と、ブーム、アーム等からなるフロントアタッチメントと、該フロントアタッチメントを動かす油圧アクチュエータとを備え、運転室内の操作手段により電磁切換弁を切り換えて前記油圧アクチュエータを駆動する建設機械において、
前記電磁切換弁を運転室の下部に設けたことを特徴とする建設機械における電磁切換弁の配置構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−77633(P2007−77633A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265233(P2005−265233)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】