説明

建設機械のキャブ、同キャブを搭載した建設機械及びモータグレーダ

【課題】着座状態における作業者の前方方向に対する目線位置において、前面窓の左右方向の横幅を広く構成でき、しかも、フロアの下方にある作業領域に対する作業視界を増大させることのできる建設機械のキャブを提供する。
【解決手段】一対のAピラー30の上端部間に上部窓枠35aが下部窓枠35bよりも幅広の台形形状とした前面窓35を配設し、フロア22及びルーフ21が矩形形状の先端部における左右両端部を大きくカットした形状に構成する。前記フロア22とルーフ21との間を連結するAピラー30及びBピラー31を、それぞれ各カット部の前方側の端部間及び後方側の端部間に配設する。前記フロア22とルーフ21との各カット部に沿って、左右一対の側部前面窓24,25における上下の窓枠をそれぞれ配設し、各側部前面窓24,25の側部窓枠をAピラー30及びBピラー31に沿って配設する。また、一方の側部前面窓24をドアとして兼用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ブルドーザ、モータグレーダを代表とするような、路面、地面などに対する作業を行う建設機械のキャブ、同キャブを搭載した建設機械及びモータグレーダに関するものである。特に、作業状況の確認をキャブ内から行うことができる建設機械において、前方視界の向上及び作業箇所に対する作業視界の向上を図った建設機械のキャブ、同キャブを搭載した建設機械及びモータグレーダに関するものである。
尚、本発明において、前方とは建設機械の前方側を示す用語として用い、左右方向とは、建設機械の後方側からキャブを見たときの左右方向を示す用語として用いている。また、上下方向については、鉛直方向の上空側を上方向として用い、地面側を下方向として用いている。
【背景技術】
【0002】
本発明に係わるキャブを備えた建設機械としては、モータグレーダ、ブルドーザなどが用いられているが、以下ではモータグレーダを例に挙げて説明を行う。一般にモータグレーダは、路面、地面などを平滑な地面となるように整地する車輪式の土木機械である。地面を整地するブレードは、上下方向への昇降、上下方向に対しての傾斜、車輌の前後方向に対しての傾斜、車輌の左右方向へのスライド、所定の旋回軸周りの旋回等を行うことができるように構成されている。
【0003】
モータグレーダを用いて路面や地面を精度良くかつ能率的に仕上げ作業を行うために作業者は、作業後における作業状況やこれから作業を行う前方の作業場所の様子を良く見ながら作業を行っている。特に、ブレードで作業を行った後の整地状態が平らに形成されているか否かを目視によって確認しながら、ブレードの設定角度等の修正を行ったりしている。
また、一般に、モータグレーダにおいては、一般道路を高速で走行することも多い。このため、整地作業時におけるブレード後方の整地路面の視認性、及び走行時における前方視界の確保が必要とされる。
【0004】
このため、前方視界を確保するため、前面窓を大きく拡げた構成のものが多く用いられている。また、作業後の整地状況等を確認するため、側面の窓ガラスもフロア付近まで延長して前方下部の視界を確保できる構成のものが用いられている。このような構成となったモータグレーダのキャブの例としては、特許文献1(特開平11-158922号公報)、特許文献2(特開平10-167125号公報)、特許文献3(米国意匠特許第D531,647号公報)などに開示されている。
また、特許文献4(特開平5-106240公報)には、ブレードの両端に対する視界性の良いブルドーザ用キャブが開示される。
【特許文献1】特開平11−158922号公報
【特許文献2】特開平10−167125号公報
【特許文献3】米国意匠特許第D531,647S号公報
【特許文献4】特開平5−106240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に開示される従来のモータグレーダ用キャブにおいては、前方視界を確保するために前面窓を大きく拡げて、これをフロア付近まで延長した構成となっている。このため、フロア前方の幅は必然的に大きくなってしまう。そして、フロア前方の幅が大きくなるほど、ブレード後方における整地路面の視認性は悪化してしまうことになる。
【0006】
一方、ブレード後方における整地路面の視認性を確保するために、特許文献4に開示されるようなキャブを用いた場合には、前面窓の面積は小さくなってしまう。そのため、前面窓の両側部のピラーが前方視界の邪魔となり、高速走行時の前方視界が悪化してしまうことになる。
【0007】
本願発明では、建設機械のキャブ内からの前方視界及び作業視界を充分に確保することができ、特に、着座した作業者の前方方向に対する目線位置において、上部窓の左右方向の横幅を広く構成することができ、しかも、フロア前縁部の下方にある作業領域に対する作業視界を増大させることのできる建設機械のキャブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の課題は請求項1〜3に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願第1発明では建設機械のキャブにおいて、キャブのフロアにおける前方側の左右両端部が、それぞれ前方側にかけて斜めにカットされた形状に形成されてなり、キャブのルーフにおける前方側の左右両端部が、それぞれ前方側にかけて斜めにカットされた形状に形成されてなり、キャブ前面部に前面窓を備え、
前記前面窓が、正面視において上部窓枠を上辺とし下部窓枠を下辺としたとき、前記上辺の幅が前記下辺の幅よりも幅広となった台形形状に形成され、側面視において前記上部窓枠が前記下部窓枠よりも後方側に配されてなり、フロアにおける前方側に向けて斜めにカットされた左右の両端部、及びルーフにおける前方側に向けて斜めにカットされた左右の両端部に沿って上下の窓枠が配設される、左右一対の側部前面窓を備え、前記各側部前面窓の側部窓枠のうちでそれぞれの前方側における側部窓枠の上端部側が、前記前面窓の左右両側部窓枠に沿ってそれぞれ配設されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0009】
本願第2発明では、前面窓の配置構成を特定したことを主要な特徴となしている。
本願第3発明及び第4発明では、キャブを搭載している機械を特定したことを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、前面窓の面積を大きく構成して、走行時における前方視界を確保しつつ、フロア前方の幅を小さく構成してブレード後方における整地路面の視認性を向上させることができる。即ち、整地作業時におけるブレード後方における整地路面の視認性の確保と、走行時における前方視界の両方を同時に向上させることができる。
【0011】
前面窓は、側面視で鉛直方向に対して後方に15度乃至20度の傾きをもって配設しておくことが望ましい。これにより、太陽光による前面窓への映りこみが生じることなく前面窓の面積も大きく確保することができるので、前方視界を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明の建設機械の構成としては、以下ではモータグレーダを例に挙げて説明を行うが、本願発明の適用範囲はモータグレーダに限定されるものではなく、路面、地面などに対する作業を行う建設機械であればよく、例えば、ブルドーザなどにも好適に適用することができる。
【0013】
また、以下で説明する形状、配置構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0014】
図1は、モータグレーダ1を側方から見た車体前部の外観図である。即ち、モータグレーダ1におけるフロントフレーム2の前方側での外観図を示している。車体後部における運転部17の外観図は図2に示している。また、キャブ20内からフロア22と下部前面窓32を通して見えるブレード5の様子は、図3の前方斜視図で示している。
【0015】
モータグレーダの車体の前部には、図1に示すように前輪4や土を切削したりする作業を行うブレード5等が設けられ、車体の後部には、図2に示すように後輪18やキャブ20等が設けられた構成となっている。車体の前部は、フロントフレーム2によって車体の後部に連結している。そして、フロントフレーム2は、車体の後部に対して水平方向に相対的な回動を可能として車体後部に連結されている。
【0016】
本願発明では、後述するようにキャブ20の前面部における前面窓35及び左右一対の側部前面窓24の配置構成を特徴としている。このため、図2においては後輪18とキャブ20との概略図を示しており、バックミラー、エンジンルーム等の構成については省略している。また、図3では、操縦レバー等の構成を省略するとともに、ブレード5の左側を前方に右側を後方にして、前後方向に傾けた状態を示している。
【0017】
一般に整地作業時には、ブレード5は左右方向に対して30度〜45度程度に傾けられた状態で用いられており、図示例においてはブレード5を左右方向に対して約30度傾けた状態を示している。
【0018】
尚、キャブの前面部における配置構成を除くモータグレーダとしての他の構成については、以下で説明する構成に限定されることなく、モータグレーダとして使用されている他の構成を採用することができるものである。
【0019】
図1に示すように、後端部が図示せぬ車輌後部に対して水平方向に回動自在に連結されたフロントフレーム2は、前端部においてフロントアクスル装置19を介して一対の前輪4を支持している。また、フロントフレーム2は、支持手段15を介してドローバ3の先端部を連結している。ドローバ3は支持手段15を支点として、上下方向、左右方向及び支持手段を中心とした揺動を行うことができるように配設されている。
【0020】
支持手段15は、少なくとも2軸以上の回動を許容する回動機構によって構成されている。回動機構としては、例えば、ボールジョイント機構、トラニオン機構あるいはユニバーサルジョイント機構を用いることができる。
【0021】
ドローバ3とフロントフレーム2との間には、一対のリフトシリンダ11a,11bとリフタブラケット7とが配設されている。各リフトシリンダ11a,11bの一端は、それぞれ支持手段を介してドローバ3に連結されており、各リフトシリンダ11a,11bの他端は、それぞれ支持手段を介してフロントフレーム2に支持されたリフタブラケット7に連結されている。
【0022】
図1では、リフタブラケット7にそれぞれ連結される各リフトシリンダ11a,11bの部位として、各リフトシリンダ11a,11bの端部がリフタブラケット7に連結されている構成を示している。しかし、各リフトシリンダ11a,11bとリフタブラケット7との配置構成としては、各リフトシリンダ11a,11bの端部をリフタブラケット7よりも上方に突出させて、各リフトシリンダ11a,11bの中間部がリフタブラケット7に連結されている構成としておくこともできる。
【0023】
各リフトシリンダ11a,11bをドローバ3及びリフタブラケット7に連結する各支持手段は、支持手段15と同様に少なくとも2軸以上の回動を許容する回動機構によって構成されている。
また、リフタブラケット7は、フロントフレーム2に対して図示せぬ油圧モータ等により回動可能に配設されている。リフタブラケット7が回動するときの回転軸は、フロントフレーム2とドローバ3との連結点である支持手段15における回動点を略通る直線となるように配設されている。
【0024】
更に、ドローバ3とリフタブラケット7との間には、ドローバシフトシリンダ12が配設されている。リフタブラケット7は、ドローバシフトシリンダ12の一端を連結するドローバシフトブラケット8としての機能も兼ねている。ドローバシフトシリンダ12の一端とリフタブラケット7とは、支持手段を介して連結されている。
【0025】
また、ドローバシフトシリンダ12の他端とドローバ3とは、支持手段を介して連結されている。これらの支持手段も、支持手段15と同様に少なくとも2軸以上の回動を許容する回動機構によって構成されている。
【0026】
ドローバ3には、旋回サークル9が旋回可能に配設されている。旋回サークル9は、ドローバ3に取り付けられたサークル回転機16によって、旋回駆動される。旋回サークル9には、ブレード5が横方向にスライド自在に支持されている。ブレード5にはスライドレール5aが設けられており、同スライドレール5aは旋回サークル9に取り付けたブレードサポート9aによってスライド可能に支持されている。
【0027】
ブレードサポート9aとブレード5との間には、サイドシフトシリンダ13が配設されている。サイドシフトシリンダ13の伸縮作動により、ブレード5はブレードサポート9aに支持された状態のまま、横方向にスライドすることができる。更に、ブレード5と旋回サークル9との間には、チルトシリンダ14が設けられており、ブレード5のチルト角を制御することができる。
【0028】
次に、図2、図3を用いて、本願発明における特徴部の構成であるキャブ20の前面部の構成、キャブ20の前面部に設けられた上部前面窓及び左右一対の下部前面窓の配置構成について説明する。
【0029】
フロントフレーム2の後部に搭載されたキャブ20は、六角形形状に構成されたフロア22と、六角形形状に構成されたルーフ21と、フロア22とルーフ21との間を連結する左右一対のAピラー30、Bピラー31及びCピラー32と、Aピラー30乃至Cピラー32に配された窓等から構成されている。フロア22は、矩形形状の前方側における左右両端部を斜めにカットした六角形形状に構成されている。
【0030】
ルーフ21も、矩形形状の前方側における左右両端部を斜めにカットした六角形形状に構成されている。
尚、ルーフ21における斜めにカットされた左右両端部と、フロア22における斜めにカットされた左右両端部とは、それぞれ平行となるよう構成されている。これは、後述する一対の側部前面窓24,25をこの部位に装着させるためである。また、正面視において、ルーフ21の幅はフロア22の幅よりも大きくなるように形成されている。
【0031】
キャブ20内には、運転席23、ハンドル36、図示せぬ操作レバー、操縦機器、計器類等が配設されている。また、キャブ20の前面部における正面には、前面窓35が配設されており、前面窓35の左右側部には、一対の側部前面窓24,25が配設されている。
【0032】
キャブ20の側部における前部寄り側には、一対の側部前面窓24,25が配設され、キャブ20の側部における後部寄り側には、一対の側部窓37が配設されている。キャブ20の後部には、後部窓33が配設されている。そして、側部前面窓24は、キャブ20内への出入りを行うドアとして兼用されている。
【0033】
即ち、一対のAピラー30における上部部位の間には、前面窓35が配設されており、Aピラー30とBピラー31との間には、側部前面窓24,25が配設されている。また、Bピラー31とCピラー32との間には、側部窓37が配設されており、Cピラー32間には、後部窓33が配設されている。
【0034】
そして、側部前面窓24は、Aピラー30とBピラー31との間を開閉するドアとして構成されており、ドアの外枠を構成するドア窓枠26の固定側縦窓枠26aが、Bピラー31に対してヒンジを介して開閉自在に取り付けられている。
【0035】
尚、ドアとしては、キャブ20の両側面に設けておくことも、図2に示すように片面側に設けておくこともできる。図2では、キャブ20の左側に配設したドアを兼用した側部前面窓24は、実線状態が開放された状態を示し、点線状態が閉じられた状態を示している。
【0036】
また、一対のBピラー31間及び一対のCピラー32間は、上部に行くに従ってそれぞれの間隔が広がった構成となっている。即ち、フロア22の外形形状よりも、ルーフ21における外形形状の方が大きな外形形状となっている。この構成によって、キャブ20内の上空側において作業者の腕を動かすことのできる空間を広げて構成しておくことができ、作業者は圧迫感なくキャブ20内での操作を行うことができる。
【0037】
尚、図2においては、図示せぬロック機構によって、側部前面窓24がキャブ20の側部における後部寄り側にロックされた状態を実線で示しており、ドアとしての側部前面窓24を閉じてロックした状態を、二点鎖線で示している。
【0038】
前面窓35は、上部窓枠35aの幅寸法が下部窓枠35bの幅寸法よりも幅広の逆向きの台形形状に構成されている。下部窓枠35bの幅寸法としては、フロントフレーム2の幅寸法よりも多少大きめの幅寸法として構成しておくことができる。例えば、フロントフレーム2の幅寸法が約350mmで構成されているときには、下部窓枠35bの幅寸法として約400mm前後の幅寸法として構成しておくことができる。
【0039】
また、下部窓枠35bの配設高さ位置としては、図1に示すドローバシフトブラケット8の水平な部位の上面よりも下方となるように配設しておくことができる。この構成によって、下部窓枠35bによって、前方視界が阻害されるのを防止しておくことができるとともに、前面窓35の下方には窓を形成しておかなくてすむ。
【0040】
下部窓枠35bの幅寸法を小さく構成しておくことによって、前方下方における視界を確保しつつ、前面窓35の上部窓枠35aの幅寸法を広く構成することができる。即ち、図3に示すように、着座した作業者の前方方向に対する目線位置で、左右方向の横幅を広く構成しておくことができるので、走行時の前方確認を安全に、しかも容易に行うことができる。また、ブレード後方における整地路面の視認性も良好となる。
【0041】
尚、正面視においてルーフ21の幅は、フロア22の幅よりも大きくなるように形成されているため、下部窓枠35bと上部窓枠35aとの幅寸法における差は更に一層大きくなり、この構成に伴う効果はより顕著なものとなる。
【0042】
Aピラー30の上部部位は、前面窓35の両側部窓枠35c、35dとして兼用されている。また、前面窓35の上部窓枠35aは、ルーフ21の前縁部に取り付けられており、下部窓枠35bは、Aピラー30の中間部30bにおいてAピラー30間を連結する横桟を兼用して構成されている。
【0043】
尚、前面窓35の上部窓枠35aとして、ルーフ21の一部を兼用して構成しておくことも、前面窓35の両側部窓枠35c、35dとAピラー30とを別体の構成として、両側部窓枠35c、35dをAピラー30に取り付けた構成としておくこともできる。
【0044】
ルーフ21における左右両端部は斜めにカットされているため、前面窓35の傾斜角度が小さくなるほど前面窓35の上部窓枠35aの幅は短くなってしまい、前方視界が悪くなってしまう。
前面窓35の後傾角度を大きく構成し過ぎると、前面窓35において太陽光の反射が強くなってしまい、太陽光による影響で前面窓を通しての前方視界が悪くなってしまう。
【0045】
このため、前面窓35の後傾角度、即ち、側面視において鉛直方向と前面窓35とのなす傾き角度、としては15度乃至20度の後傾角度をもって構成しておくことが望ましい。このように構成されているので、Aピラー30をキャブ20の右側方の側から見ると「逆くの字」状に構成されており、左側方の側から見ると「くの字」状に構成されている。
【0046】
Aピラー30において、上部30aから中間部30bの部位に対する中間部30bから底部30cの部位における傾き角度としては、側部前面窓24,25の前方側の側部窓枠とフロントフレーム2の幅寸法との関係によって設定しておくことができる。
【0047】
ドア機能を兼ねた側部前面窓24を閉めた状態においては、側部前面窓24の開放側縦窓枠26b,26cは、Aピラー30に沿って当接した状態に配設され、図示せぬヒンジを介してBピラー31に取り付けられている固定側縦窓枠26aは、Bピラー31に隣接して平行に配設されることになる。また、側部前面窓24の上部窓枠はルーフ21に当接した状態に配設され、側部前面窓24の下部窓枠はフロア22に当接した状態に配設されることになる。
【0048】
同様に、側部前面窓25の前方側の側部窓枠は、Aピラー30に当接するよう構成されており、側部前面窓25の後方側の側部窓枠は、Bピラー31に当接するよう構成されている。また、側部前面窓25の上部窓枠は、ルーフ21の前側における斜めにカットされた左右両端部に当接するよう構成されており、側部前面窓25の下部窓枠は、フロア22の前側における斜めにカットされた左右両端部に当接するよう構成されている。
【0049】
このように、一対の側部前面窓24,25としては、一枚の平板状ガラスを用いて窓を大きく構成しておくことができる。また、図4、図5に示すように、一対の側部前面窓24,25としては、一枚板のガラスを用いる代わりに、側部窓枠間に横桟25a,26dを構成して二枚の平板状ガラスを用いた構成としておくこともできる。
【0050】
尚、図4は図2において横桟25a,26dが構成されている点で相違しているが、他の構成は図2に示した構成と同様の構成となっている。また、図5は図3において横桟25a,26dが構成されている点で相違しているが、他の構成は図3に示した構成と同様の構成となっている。
【0051】
次に、図3、図5を用いて、キャブ20内からの前方視界、作業視界について説明する。図3、図5において示すように、前面窓35は下部窓枠35bの幅寸法をフロントフレーム2の幅寸法と略同程度の小さな幅寸法に構成することができ、上部窓枠35a(図3、図5では不図示。)を幅広に構成しておくことができる。この構成によって、着座した作業者の前方方向に対する目線位置における左右方向の横幅を広く構成しておくことができる。
【0052】
このため、前面窓35を通して走行時の前方確認を広範囲に亘って確認することができるので、走行時の安全確認を容易に行うことができる。また、Aピラー30の影響によって、走行時において常に確認しておきたい前方視界が分断されることがないので、作業者は運転席に着座した状態のまま、身体を左右に傾けることなく走行制御を行うことができる。
【0053】
また、側部前面窓24,25としては大きな窓として構成しておくことができ、しかも、フロア22の前端部側に形成したカット部22bを利用して、フロア22下部の前方視界を広く構成した機能を有効利用することができるようになり、ブレード5の後方視界を広く視認することができる。これにより、作業者は運転席に着座した状態のままでブレード5による整地作業状況を的確に判断することができ、整地作業を効率的に行うことができる。
【0054】
尚、図5で示すように、横桟25a,26dを側部前面窓24,25に構成したとしても、横桟25a,26dによって、前方視界及び作業視界が阻害されることがない。
このように本願発明に係わるキャブ構成とすることによって、作業の操縦性が大幅に向上し、作業者が安全に、しかも、疲れなく建設機械を操縦することができるようになる。
更に、前面窓35及び左右一対の側部前面窓24,25を大型の窓として構成しておくことができ、大型の窓をキャブ20の前面部に配しておくことができるので、キャブ20内における居住スペースを広く、しかも開放的に感じさせることができる。また、前面窓及び側部前面窓の大きさとしては、ワイパーを取り付けて作動できる大きさに構成しておくことができるので、雨天時においても、前方視界や作業視界を十分に確保しておくことができる。
【0055】
一方の側部前面窓24は、キャブ20内への出入りを兼ねたドアとして構成しておくことができるので、大型のドアをキャブ20に設けておくことができる。また、一対のCピラー32間には大型の後部窓29を配設しておくことができるので、キャブ20内からの後方視界を良好に保つことができる。
尚、Aピラー30の中間部30bから底部30cにかけての構成は、平板状の側部前面窓24,25との間で立体的な構成が得られるようにすることによって、設計的に求めておくことができる。
【0056】
また、図示例では、車体前後軸を含む鉛直面に対して一対の側部前面窓24,25を左右対称に配設した構成例を示しているが、左右の側部前面窓24,25の大きさを異ならせて配設することも、左右の側部前面窓24,25における水平方向、垂直方向、あるいは左右方向における傾き角度をそれぞれ異ならせて配設しておくこともできる。
【0057】
例えば、フロア22の先端部側の両端部を斜めにカットするとき、左右におけるカット形状を異ならせて構成しておくことで、左右の側部前面窓24,25の大きさや左右方向における傾き角度を異ならせて構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本願発明は、本願発明の技術思想を適用することができる装置等に対しては、本願発明の技術思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】モータグレーダの作業機部を示す斜視図である。(実施例1)
【図2】モータグレーダの運転部を示す斜視図である。(実施例1)
【図3】キャブ内からフロアと下部前面窓を通して見えるブレードの様子とを示した斜視図である。(実施例1)
【図4】運転部を示す他の斜視図である。(実施例1)
【図5】他のキャブ内から見た斜視図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0060】
1・・・モータグレーダ、2・・・フロントフレーム、5・・・ブレード、17・・・運転部、20・・・キャブ、22・・・フロア、22b・・・カット部、24・・・側部前面窓(ドア兼用)、25・・・側部前面窓、25a・・・横桟、26・・・ドア窓枠、30・・・Aピラー、31・・・Bピラー、32・・・Cピラー、35・・・前面窓。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のキャブにおいて、
キャブのフロアにおける前方側の左右両端部が、それぞれ前方側にかけて斜めにカットされた形状に形成されてなり、
キャブのルーフにおける前方側の左右両端部が、それぞれ前方側にかけて斜めにカットされた形状に形成されてなり、
キャブ前面部に前面窓を備え、
前記前面窓が、正面視において上部窓枠を上辺とし下部窓枠を下辺としたとき、前記上辺の幅が前記下辺の幅よりも幅広となった台形形状に形成され、側面視において前記上部窓枠が前記下部窓枠よりも後方側に配されてなり、
フロアにおける前方側に向けて斜めにカットされた左右の両端部、及びルーフにおける前方側に向けて斜めにカットされた左右の両端部に沿って上下の窓枠が配設される、左右一対の側部前面窓を備え、
前記各側部前面窓の側部窓枠のうちでそれぞれの前方側における側部窓枠の上端部側が、前記前面窓の左右両側部窓枠に沿ってそれぞれ配設されてなることを特徴とする建設機械のキャブ。
【請求項2】
側面視において前記前面窓が鉛直方向に対して後方に15度乃至20度の傾きをもって配設されてなることを特徴とする請求項1記載の建設機械のキャブ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のキャブを搭載した建設機械。
【請求項4】
請求項1又は2記載のキャブを搭載したモータグレーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−279852(P2008−279852A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124534(P2007−124534)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】