説明

建設機械の排ガス処理装置

【課題】フィルタ再生操作の開始時に、フィルタ内温度が設定値以下であれば自動的に昇温させて燃焼条件を整え、フィルタ再生操作を確実に遂行するととも燃料の浪費を防止する。
【解決手段】排ガスフィルタ15内に燃料を供給して有害物質を燃焼させる強制燃焼方式を前提として、フィルタ内温度を温度センサ23で検出し、再生開始スイッチ22の操作によるフィルタ再生開始時において、フィルタ内温度が燃焼に適した設定値以下のときに、アンロード通路開閉弁12を閉じてリリーフ弁10を作動させることにより、ポンプ圧を上げてエンジン負荷を増加させる昇温操作を自動的に行った上で燃料を供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械において、エンジンからの排ガス中の有害物質を排ガスフィルタで除去するとともに、適時、同フィルタに堆積した有害物質を焼却して同フィルタを再生させる排ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械において、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを排ガスフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)に導入し、有害物質、とくに煤等のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を除去して浄化する排ガス処理装置が用いられている(特許文献1,2参照)。
【0003】
この種の排ガス浄化装置において、特許文献2に示されているように、排ガスフィルタの目詰まりを防止して浄化作用を一定に保つために、適時、排ガスフィルタに堆積したPMを燃焼させて除去するフィルタ再生(自己再生ともいう)操作が行われる。
【0004】
また、このフィルタ再生法として、排ガスフィルタ内にエンジン燃料を供給することにより有害物質を強制的に燃焼させる強制燃焼方式が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3073380号公報
【特許文献2】特開2005−299436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、公知技術では、強制燃焼方式によるフィルタ再生時に、実際のフィルタ内温度に関係なく同フィルタ内に燃料を供給するため、フィルタ内温度が燃焼に適した温度(以下、燃焼温度という)まで上がっていない状態のまま燃料供給が行われる可能性があった。こうなると、フィルタ再生ができない上に燃料の浪費となる。
【0007】
そこで本発明は、フィルタ再生操作の開始時に、フィルタ内温度が設定値(上記燃焼温度)以下であれば自動的に昇温させて燃焼条件を整え、フィルタ再生操作を確実に遂行できるとともに燃料の浪費を防止することができる建設機械の排ガス処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、エンジンと、このエンジンから出た排ガス中の有害物質を除去する排ガスフィルタと、オペレータにより操作されて上記排ガスフィルタの再生開始を指令する再生開始スイッチと、上記排ガスフィルタに燃料を供給する燃料供給手段と、上記排ガスフィルタの有害物質の堆積量を検出する堆積量検出手段と、上記排ガスフィルタ内の温度を検出する温度検出手段と、制御手段とを備え、この制御手段は、上記再生開始スイッチが操作されたときに、上記堆積量検出手段によって検出される堆積量が再生を要する値としての設定値以上であること、及び上記温度検出手段によって検出される排ガスフィルタ温度が有害物質の燃焼に適した値としての設定値以上であることを条件として、上記燃料供給手段により上記排ガスフィルタに燃料を供給して、同フィルタに堆積した有害物質を燃焼させるフィルタ再生操作を行い、上記排ガスフィルタ温度が設定値以下のときに、同フィルタ温度を設定値以上まで上昇させる昇温操作を行った後、再生操作を開始するように構成されたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記エンジンによって駆動される油圧ポンプの吐出管路に、リリーフ弁を備えたリリーフ管路と、油圧ポンプの吐出油のうち余剰油をアンロードするアンロード通路とが接続されるとともに、このアンロード通路に、同通路を閉じるアンロード通路遮断手段が設けられ、上記制御手段は、上記昇温操作として、上記アンロード通路遮断手段により上記アンロード通路を遮断して上記リリーフ弁を作動させるように構成されたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、上記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段を備え、上記制御手段は、昇温操作として、エンジン回転数を増加させるように構成されたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの構成において、上記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段を備え、上記制御手段は、上記再生操作中、エンジン回転数を設定範囲に制限するように構成されたものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの構成において、上記エンジンにより駆動される油圧ポンプとして可変容量型の油圧ポンプが用いられ、上記制御手段は、再生操作中に上記油圧ポンプの容量を設定値以下に制限するように構成されたものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの構成において、上記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプを油圧源とする油圧アクチュエータの作動を制御するコントロールバルブと、このコントロールバルブを操作する操作手段と、上記操作手段の操作による上記コントロールバルブの作動を停止させる操作停止手段とを備え、制御手段は、再生操作中、上記操作停止手段によってコントロールバルブの作動を停止させるように構成されたものである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかの構成において、上記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプを油圧源とする油圧アクチュエータの作動を制御するコントロールバルブと、このコントロールバルブを操作する操作手段と、上記操作手段の操作の有無を検出する操作検出手段と、上記油圧ポンプの吐出圧を検出するポンプ圧検出手段と、上記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段とを備え、上記制御手段は、再生操作中に、
(I)上記操作手段が操作されたとき、
(II)上記油圧ポンプの吐出圧の変動幅が設定値以上のとき、
(III)上記エンジン回転数の変動幅が設定値以のとき、
(IV)上記堆積量検出手段によって検出される堆積量が上記設定値以下となったとき
の再生停止条件のうち少なくとも一つが適合するときに、上記燃料供給手段による上記排ガスフィルタへの燃料供給を停止させて再生操作を停止するように構成されたものである。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれかの構成において、上記排ガスフィルタの有害物質の堆積量及び同フィルタ内温度を表示する表示手段を具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、強制燃焼方式を前提として、フィルタ内温度を検出し、このフィルタ内温度が燃焼に適した温度(燃焼温度)である設定値以下のときに、フィルタ内温度を設定値以上まで昇温させる昇温操作(請求項2ではリリーフ作用によりポンプ圧を上げてエンジン負荷を増加させる操作、請求項3ではエンジン回転数を増加させる操作)を自動的に行った上で燃料を供給するため、フィルタ再生作用を確実に遂行できるとともに、燃料の浪費を防止することができる。
【0017】
また、請求項4の発明によると、再生操作中、エンジン回転数を設定範囲に制限するため、エンジン回転数を、燃焼が不安定とならないで、かつ、騒音が過大とならない範囲に保つことができる。
【0018】
請求項5の発明によると、再生操作中、エンジンで駆動される油圧ポンプの容量を設定値以下に制限するため、再生操作中のポンプ容量の変化によるエンジン回転数の変化を防止し、燃焼安定化を図ることができる。
【0019】
一方、請求項6の発明によると、再生操作中、操作停止手段によってコントロールバルブの作動を停止させるため、燃焼を安定化させることができる。
【0020】
請求項7の発明によると、再生操作中に、操作手段が操作されたとき、上記油圧ポンプの吐出圧の変動幅が設定値以上のとき、エンジン回転数の変動幅が設定値以上のとき、及び堆積量検出手段によって検出される堆積量が上記設定値以下となったときの再生停止条件のうち少なくとも一つが適合するとき、すなわち、オペレータに機械操作(再生停止)の意思があるとき、またはポンプ圧またはエンジン回転数の変動が大きくて安定した再生操作が困難なときに、再生操作を停止するようにしたから、オペレータの意思に応え、あるいは燃料の浪費を防止することができる。
【0021】
請求項8の発明によると、排ガスフィルタの有害物質の堆積量及び同フィルタ内温度を表示手段によって表示するため、堆積量の表示によってオペレータに再生時期を予報することができる。また、フィルタ内温度を表示することにより、再生開始スイッチの操作後、昇温操作が行われていることをオペレータに認識させることができる。
【0022】
なお、これらの表示を、それぞれの設定値と比較する形式(たとえば堆積量が設定値の何%か、フィルタ内温度が設定値よりどれだけ低いか)で行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態にかかる排ガス処理装置の回路及びブロック構成図である。
【図2】同装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施形態にかかる排ガス処理装置の全体構成を図1によって説明する。
【0025】
エンジン1によって可変容量型の油圧ポンプ2が駆動され、この油圧ポンプ2の吐出油がコントロールバルブ3を介して複数の油圧アクチュエータ(ここでは一つの油圧シリンダのみを示す)4に供給される。
【0026】
コントロールバルブ3は、操作手段としてのリモコン弁5,5からのパイロット圧により切換わり作動して油圧アクチュエータ4に対する圧油供給の方向と流量を制御する油圧パイロット切換弁として構成されている。
【0027】
リモコン弁5,5とその油圧源となるパイロットポンプ6とを結ぶパイロット圧供給ライン7に、同ライン7を開閉してリモコン弁5,5に対してパイロット一次圧を供給/遮断する操作停止弁(電磁弁)8が設けられている。Tはタンクである。
【0028】
また、油圧ポンプ2の吐出管路9に、回路の最高圧力を規制するリリーフ弁10が接続されるとともに、ポンプ吐出油の余剰分をタンクTにアンロードするアンロード通路11が接続され、このアンロード通路11に、同通路11を開閉するアンロード通路遮断手段としてのアンロード通路開閉弁12と絞り13とが設けられている。
【0029】
一方、エンジン1からの排ガスを外部に放出する排気通路14に排ガスフィルタ15が設けられ、排ガス中のPM等の有害物質がこの排ガスフィルタ15によって除去される。
【0030】
また、フィルタ再生(燃焼)のために燃料タンク16内の燃料を排ガスフィルタ15に供給する燃料供給手段としての燃料供給ライン17と同ライン17を開閉する燃料供給弁18とが設けられ、同弁18が開いた状態で図示しないポンプによって排ガスフィルタ15内に燃焼のための燃料が供給される。
【0031】
制御手段は、エンジン1の回転数を制御するエンジン制御部19と、油圧ポンプ2の吐出量(傾転)を制御するポンプレギュレータ20と、コントローラ21とから成り、このコントローラ21から再生開始制御及び再生制御のための各種指令、すなわち、操作停止弁8及びアンロード通路開閉弁12に対する開閉指令、エンジン制御部19に対するエンジン回転数指令、ポンプレギュレータ20に対するポンプ傾転(ポンプ容量=ポンプ流量)指令がそれぞれを出力される。
【0032】
さらに、オペレータの意思に基づいてフィルタ再生操作を開始させるための再生開始スイッチ22が設けられるとともに、フィルタ再生開始等のための情報を得る検出手段として、排ガスフィルタ15内の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ23と、同フィルタ15へのPM等の有害物質の堆積量を検出する堆積量検出手段としての堆積量センサ24と、リモコン弁5,5とコントロールバルブ3とを結ぶパイロットライン25,25のパイロット圧によってリモコン弁5,5の操作の有無を検出する操作検出手段としてのパイロット圧センサ26,26と、ポンプ吐出圧を検出するポンプ圧センサ27とが設けられている。
【0033】
なお、温度検出手段として、上記温度センサ23によって排ガスフィルタ内温度を直接検出する方式に代えて、エンジン制御部19からエンジン1に送られる回転数指令とその指令に対するエンジン回転数の状態からエンジン負荷を演算し、このエンジン負荷からフィルタ内温度を推測する方式を用いてもよい。
【0034】
また、排ガスフィルタ15への有害物質の堆積量を検出する手段として、上記堆積量センサ24によって直接検出する方式に代えて、排ガスフィルタ15の前後の差圧やエンジン負荷の累積に基づく見込み値を求める方式を採用してもよい。
【0035】
さらに、コントローラ21には表示手段28が接続され、温度センサ23及び堆積量センサ24で検出された堆積量とフィルタ内温度がこの表示手段28に表示される。この表示は、単に数値をモニタ表示するだけでもよいし、検出値をそれぞれの設定値と比較する形式(たとえば堆積量が設定値の何%か、フィルタ内温度が設定値よりどれだけ低いか)で表示し、さらには堆積量については警報を出してオペレータに再生開始を促すようにしてもよい。
【0036】
コントローラ21は、上記各検出手段からの信号に基づいて、フィルタ再生を開始し、再生制御を行う。この点の作用を図2のフローチャートを併用して説明する。
【0037】
ステップS1で再生開始スイッチ22が操作されたか否かが判断され、YESとなると、堆積量センサ24によって検出された堆積量が再生を要する値として記憶された設定値以上か否か(ステップS2)、及び温度センサ23によって検出されたフィルタ内温度が、有害物質の燃焼に適した値として記憶された設定値以上か否か(ステップS3)がそれぞれ判断される。
【0038】
両ステップS2,S3でともにYES(堆積量>設定値でかつ温度>設定値)のときは、再生の条件が整っているとして、ステップS4でアンロード通路開閉弁12を開くとともに、ステップS5で燃料供給弁18を開く。
【0039】
これにより、排ガスフィルタ15に燃料が供給され、有害物質の燃焼(フィルタ再生)が開始される。
【0040】
この後、ステップS6でポンプ圧の変動幅が、安定した再生(燃焼)作用を確保し得る値として定められた設定値と比較される。
【0041】
ここで、ポンプ圧変動幅が設定値以下(NO)であれば、次にステップS7でリモコン弁5,5が操作(機械操作)されたか否かが判断され、NO(非操作)のときに、ステップS8でエンジン回転数の変動幅が、ポンプ圧の変動幅と同様に安定した再生作用を確保するための設定値を超えているか否かが判断される。
【0042】
ここでNO(超えていない)の場合にステップS9に移り、操作停止弁8を閉じて再生中の機械操作を禁止する。
【0043】
続くステップS10で、燃焼の安定化と騒音抑制のためにエンジン回転数を高過ぎず低過ぎない設定値に制限し、ステップS11で燃焼の安定化のためにポンプ容量を設定値に制限した後、ステップS1に戻る。
【0044】
一方、ステップS3でNOのとき、すなわち、再生開始時にフィルタ温度が設定値に達していない場合は、昇温操作が必要としてステップS12に移り、昇温操作としてアンロード通路開閉弁12を閉じる。
【0045】
この点を詳述すると、フィルタ再生は、作業終了後等に、オペレータが再生開始の意思をもって再生開始スイッチ22をオン操作することによって開始される。従って、リモコン弁5,5は非操作状態でコントロールバルブ3は中立状態にあり、油圧ポンプ2はスタンバイ流量のみを吐出し、このスタンバイ流量は、アンロード通路開閉弁12を通ってタンクTにアンロードされる。
【0046】
この状態で上記のようにアンロード通路開閉弁12を閉じると、スタンバイ流量の行き場がなくなってポンプ吐出管路9の圧力が最高圧まで上がり、リリーフ弁10がリリーフ作用を行う。
【0047】
このリリーフ作用によりエンジン負荷を増加させ、再生開始に向けてフィルタ内温度を上げる。
【0048】
ステップS13では、この段階ではまだ再生不可として燃料供給弁18を開じ、ステップS14で操作停止弁8を開くとともに、ステップS15,S16でエンジン回転数の制限及びポンプ容量の制限を解除する。
【0049】
この後、上記昇温操作によってフィルタ内温度が設定値以上となるとステップS3でYESとなってステップS4でアンロード通路開閉弁12を開き、ステップS5で燃料供給弁18を開いて再生が開始される。
【0050】
なお、ステップS1(再生開始スイッチ22がオン操作されたか否か)でNOの場合、ステップS2(堆積量が設定値を超えたか否か)でNOの場合、それにステップS6〜S8でYESの場合も、再生の必要なし、または再生継続不適としてステップS13に移行する。
【0051】
説明を加えると、ステップS1でNOの場合はオペレータに再生開始、または再生継続の意思がないため再生操作が開始されない。
【0052】
ステップS2でNOの場合は、堆積量が少なくて再生の必要がないため再生操作が開始されず、あるいは再生操作の結果、堆積量が設定値以下に減少した(再生完了)として再生操作が停止する。
【0053】
一方、ステップS6〜S8でYESの場合、すなわち、再生操作中に、機械操作(リモコン弁5,5の操作)が行われたとき、ポンプ圧の変動幅が設定値以上のとき、エンジン回転数の変動幅が設定値以上のときのうち少なくとも一つが適合するとき、すなわち、オペレータに機械操作(再生停止)の意思があるとき、またはポンプ圧またはエンジン回転数の変動が大きくて安定した再生操作が困難なときに、再生操作を停止する。
【0054】
このように、強制燃焼方式を前提として、フィルタ内温度を検出し、このフィルタ内温度が燃焼に適した温度(燃焼温度)である設定値以下のときに、フィルタ内温度を設定値以上まで昇温させる昇温操作(リリーフ作用によりポンプ圧を上げてエンジン負荷を増加させる操作)を自動的に行った上で燃料供給(フィルタ再生操作)を開始するため、フィルタ再生作用を確実に遂行できるとともに、燃料の浪費を防止することができる。
【0055】
また、再生操作中、エンジン回転数及びポンプ容量を設定範囲に制限し、かつ、操作停止弁8によってコントロールバルブ3の作動(機械操作)を停止させるため、再生作用を安定させることができる。さらに、エンジン回転数の制限によってエンジン騒音を抑制することができる。
【0056】
一方、再生操作中に、機械操作が行われたとき、上記油圧ポンプの吐出圧の変動幅が設定値以上のとき、エンジン回転数の変動幅が設定値以のとき、及び堆積量検出手段によって検出される堆積量が設定値以下となったときの再生停止条件のうち少なくとも一つが適合するとき、すなわち、オペレータに機械操作(再生停止)の意思があるとき、またはポンプ圧またはエンジン回転数の変動が大きくて安定した再生操作が困難なときに、再生操作を停止するようにしたから、オペレータの意思に応え、あるいは燃料の浪費を防止することができる。
【0057】
さらに、排ガスフィルタの有害物質の堆積量及び同フィルタ内温度を表示手段によって表示するため、堆積量の表示によってオペレータに再生時期を予報することができる。また、フィルタ内温度を表示することにより、再生開始スイッチの操作後、昇温操作が行われていることをオペレータに認識させることができる。
【0058】
なお、フローチャートでは省略したが、検出される堆積量及びフィルタ内温度は、表示手段28によって常時表示される。
【0059】
ところで、再生開始時にフィルタ内温度が設定値以下のときの昇温操作として、上記実施形態ではリリーフ作用を利用する構成をとったが、エンジン回転数を増加させる方法をとってもよい。この場合は、図2のフローチャートにおいて、ステップS4で、上記実施形態の「アンロード通路開閉弁を開く」に代えて「エンジン回転数を増加させる」処理を行うことになる。
【0060】
あるいは、リリーフ作用とエンジン回転数増加の双方を同時に行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン
2 油圧ポンプ
T タンク
3 コントロールバルブ
4 油圧アクチュエータ
5,5 リモコン弁(操作手段)
6 パイロットポンプ
7 パイロット圧供給ライン
8 操作停止弁(操作停止手段)
9 ポンプ吐出管路
10 リリーフ弁
11 アンロード通路
12 アンロード通路開閉弁(アンロード通路遮断手段)
14 排気通路
15 排ガスフィルタ
16 燃料供給手段を構成する燃料タンク
17 同、燃料供給ライン
18 同、燃料供給弁
19 制御手段を構成するエンジン制御部
20 同、ポンプレギュレータ
21 同、コントローラ
22 再生開始スイッチ
23 温度センサ(温度検出手段)
24 堆積量センサ(堆積量検出手段)
25 パイロットライン
26 パイロット圧センサ(操作検出手段)
27 ポンプ圧センサ(ポンプ圧検出手段)
28 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンから出た排ガス中の有害物質を除去する排ガスフィルタと、オペレータにより操作されて上記排ガスフィルタの再生開始を指令する再生開始スイッチと、上記排ガスフィルタに燃料を供給する燃料供給手段と、上記排ガスフィルタの有害物質の堆積量を検出する堆積量検出手段と、上記排ガスフィルタ内の温度を検出する温度検出手段と、制御手段とを備え、この制御手段は、上記再生開始スイッチが操作されたときに、上記堆積量検出手段によって検出される堆積量が再生を要する値としての設定値以上であること、及び上記温度検出手段によって検出される排ガスフィルタ温度が有害物質の燃焼に適した値としての設定値以上であることを条件として、上記燃料供給手段により上記排ガスフィルタに燃料を供給して、同フィルタに堆積した有害物質を燃焼させるフィルタ再生操作を行い、上記排ガスフィルタ温度が設定値以下のときに、同フィルタ温度を設定値以上まで上昇させる昇温操作を行った後、再生操作を開始するように構成されたことを特徴とする建設機械の排ガス処理装置。
【請求項2】
上記エンジンによって駆動される油圧ポンプの吐出管路に、リリーフ弁を備えたリリーフ管路と、油圧ポンプの吐出油のうち余剰油をアンロードするアンロード通路とが接続されるとともに、このアンロード通路に、同通路を閉じるアンロード通路遮断手段が設けられ、上記制御手段は、上記昇温操作として、上記アンロード通路遮断手段により上記アンロード通路を遮断して上記リリーフ弁を作動させるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の建設機械の排ガス処理装置。
【請求項3】
上記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段を備え、上記制御手段は、昇温操作として、エンジン回転数を増加させるように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械の排ガス処理装置。
【請求項4】
上記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段を備え、上記制御手段は、上記再生操作中、エンジン回転数を設定範囲に制限するように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械の排ガス処理装置。
【請求項5】
上記エンジンにより駆動される油圧ポンプとして可変容量型の油圧ポンプが用いられ、上記制御手段は、再生操作中に上記油圧ポンプの容量を設定値以下に制限するように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の建設機械の排ガス処理装置。
【請求項6】
上記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプを油圧源とする油圧アクチュエータの作動を制御するコントロールバルブと、このコントロールバルブを操作する操作手段と、上記操作手段の操作による上記コントロールバルブの作動を停止させる操作停止手段とを備え、制御手段は、再生操作中、上記操作停止手段によってコントロールバルブの作動を停止させるように構成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建設機械の排ガス処理装置。
【請求項7】
上記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプを油圧源とする油圧アクチュエータの作動を制御するコントロールバルブと、このコントロールバルブを操作する操作手段と、上記操作手段の操作の有無を検出する操作検出手段と、上記油圧ポンプの吐出圧を検出するポンプ圧検出手段と、上記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段とを備え、上記制御手段は、再生操作中に、
(I)上記操作手段が操作されたとき、
(II)上記油圧ポンプの吐出圧の変動幅が設定値以上のとき、
(III)上記エンジン回転数の変動幅が設定値以のとき、
(IV)上記堆積量検出手段によって検出される堆積量が上記設定値以下となったとき
の再生停止条件のうち少なくとも一つが適合するときに、上記燃料供給手段による上記排ガスフィルタへの燃料供給を停止させて再生操作を停止するように構成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の建設機械の排ガス処理装置。
【請求項8】
上記排ガスフィルタの有害物質の堆積量及び同フィルタ内温度を表示する表示手段を具備することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の建設機械の排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−223158(P2010−223158A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73341(P2009−73341)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】