説明

建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路

【課題】1台の油圧ポンプで複数のコントロールバルブを駆動する油圧アクチュエータの駆動回路において、各コントロールバルブの要求流量が変化した場合であっても、作動油供給流量を不足させない駆動回路を提供する。
【解決手段】2つの油圧アクチュエータ群に圧油を供給する容量可変の油圧ポンプ1と、レギュレータ13と、油圧ポンプから吐出した圧油を入力し一定の流量比に分流して出力する分流弁2と、分流弁から分流した2系統の油路2a,2bにおいて、圧油の方向と流量を各々制御して前記各油圧アクチュエータ群に供給する2台のコントロールバルブユニット5,6とを備え、各コントロールバルブユニットの要求流量をそれぞれ取り込む検出油路と、検出油路で取り込んだ各要求流量の高値を選択する選択手段と、選択手段で選択された最大要求流量を満たすように、油圧ポンプの吐出流量を制御するレギュレータとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路に係り、特に、1台の油圧ポンプから吐出される作動油を複数のコントロールバルブに供給する建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械は、例えばアームの駆動や走行のために数多くの油圧アクチュエータを備えていて、これらの油圧アクチュエータを動作させるために、複数台のコントロールバルブと油圧ポンプとを備えている。
【0003】
これら複数のコントロールバルブを駆動する油圧ポンプの単一化と小型軽量化及びコストの低減を目的として、いわゆるネガティブコントロール機能を備えた油圧アクチュエータの駆動回路がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
この駆動回路は、容量可変ポンプの吐出圧に応動してポンプ傾転角を変化させるレギュレータと、このポンプに並列に接続した複数のコントロールバルブユニットにポンプの吐出流体である作動油を分流する分流弁と、各コントロールバルブユニットからタンクへ還流する作動油の還流量に応じた圧力を取り出す回路と、これらの回路圧力の差圧に応じて分流比を変化させるように前記分流弁を駆動する手段と、前記回路圧力の合成圧に応じてレギュレータのポンプ傾転角調整を補正する手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−229001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した油圧アクチュエータの駆動回路は、コントロールバルブユニットからタンクへ還流する作動油の圧力に応動して分流弁の分流比を変化させるとともに、レギュレータによるポンプ傾転角調整を補正する手段とを備えたので、常にコントロールバルブユニットに必要流量が供給されるように分流比が変化し、油圧ポンプの吐出量もトータルな必要流量に応じて変化している。このため、1台のポンプで複数のコントロールバルブユニットを効率よく駆動でき、上述した目的が達成できる。
【0007】
しかしながら、この油圧アクチュエータの駆動回路は、コントロールバルブユニットからタンクへ還流する作動油の圧力に応動して分流弁の分流比を決定するため、各コントロールバルブの要求流量が変化した場合に分流弁の応答性が悪く、作動油供給流量が不足して、操作性や作業効率を低下させるおそれがあるという問題があった。また、分流弁を構成するスプールを各コントロールバルブユニットからの検出圧力で摺動させることにより分流比を制御するため、油圧回路が複雑になるとともに、分流弁自体のコストも高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、1台の油圧ポンプで複数のコントロールバルブを駆動する油圧アクチュエータの駆動回路において、各コントロールバルブの要求流量が変化した場合であっても、作動油供給流量を不足させないポンプ吐出流量制御手段を備えた油圧アクチュエータの駆動回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、建設機械の作業機を駆動する少なくとも1つのアクチュエータからなる第1油圧アクチュエータ群及び第2油圧アクチュエータ群と、前記油圧アクチュエータ群に圧油を供給する容量可変の油圧ポンプと、前記油圧ポンプのポンプ傾転角を変化させるレギュレータと、前記油圧ポンプから吐出した圧油を入力し一定の流量比に分流して出力する分流弁と、前記分流弁から分流した2系統の油路において、圧油の方向と流量を各々制御して前記各油圧アクチュエータ群に供給する2台のコントロールバルブとを備えた建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路であって、前記各コントロールバルブの要求流量をそれぞれ取り込む2系統の検出油路と、前記各検出油路で取り込んだ各要求流量の最大値を選択する選択手段と、前記選択手段で選択された最大要求流量を満たすように、前記油圧ポンプの吐出流量を制御する前記レギュレータとを備えたものとする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記建設機械の駆動を指令する操作レバー装置と、前記操作レバー装置の操作量に応じて前記各コントロールバルブのスプールを駆動させる2系統の制御油回路とを備え、前記検出油路は、前記各制御油回路の圧力を取り出す2系統の油路であり、前記2系統の油路に入力側が接続され、これらの油路の圧力を比較していずれか高圧側の油路を出力側に連通させるシャトル弁と、前記シャトル弁により連通された油路の圧力を満たすように、前記油圧ポンプの吐出流量を制御するポジコン制御型の前記レギュレータとを備えたことを特徴とする。
【0011】
更に、第3の発明は、第1の発明において、前記検出油路は、前記各コントロールバルブからセンタバイパスを介してタンクへ還流する圧油の還流量に応じた圧力を取り出す2系統の油路であり、前記2系統の油路に入力側が接続され、これらの油路の圧力を比較していずれか低圧側の油路を出力側に連通させる最小圧選択弁と、前記最小圧選択弁により連通された油路の圧力を満たすように、前記油圧ポンプの吐出流量を制御するネガコン制御型の前記レギュレータとを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記最小圧選択弁は、前記各コントロールバルブから前記各センターバイパスを介して前記タンクへ還流する2系統の油路における圧力を弁駆動圧として、前記2系統の油路のうち低圧側の油路を選択する切替弁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分流比固定の分流弁を用いるとともに、各コントロールバルブの最大要求流量を検出し、この最大要求流量に応じてポンプ吐出流量を制御するので、各コントロールバルブの要求流量が変化した場合であっても、作動油供給流量の不足を発生させることはない。この結果、操作性や作業効率を向上させることができる。また、分流弁を制御する油圧回路が省略できるので簡略化された駆動回路となり、コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第1の実施の形態を示す油圧回路図である。
【図2】本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第2の実施の形態を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第1の実施の形態を示す油圧回路図である。
図1において、この油圧駆動回路は、図示しないエンジン等によって駆動される油圧ポンプ1と、油圧ポンプ1から吐出された圧油を常に一定の流量比に分流する分流弁2と、油圧ポンプから吐出された圧油が供給され、図示しないブーム、アーム等の建設機械の作業機をそれぞれ駆動する第1油圧アクチュエータ群3−1,3−2,及び第2油圧アクチュエータ群4−1,4−2と、油圧ポンプ1から分流弁2を介してそれぞれ第1及び第2油圧アクチュエータ群3−1,3−2,4−1,4−2に供給される圧油の方向及び流量を制御する第1流量制御スプール5−1,5−2,及び第2流量制御スプール6−1,6−2と、第1流量制御スプール5−1と5−2とからなる第1コントロールバルブユニット5と、第2流量制御スプール6−1と6−2とからなる第2コントロールバルブユニット6と、第1操作レバー7−1,7−2,及び第2操作レバー8−1,8−2と、最小圧選択弁12と、レギュレータ13とを備えている。
【0017】
油圧ポンプ1は可変容量機構として例えば斜板1aを有している。この斜板1aをレギュレータ13で操作して、その傾転角を調整することにより油圧ポンプ1の容量(押しのけ容積)を変化させ、圧油の吐出流量を制御している。
【0018】
油圧ポンプ1の吐出側には、吐出油路1bの一端側が接続され、吐出油路1bの他端側は、分流弁2の入力側に接続されている。分流弁2の出力側の一方には第1分流油路2aの一端側が接続され、第1分流油路2aの他端側はコントロールバルブユニット5に接続されている。また、分流弁2の出力側の他方には第2分流油路2bの一端側が接続され、第2分流油路2bの他端側はコントロールバルブユニット6に接続されている。
【0019】
分流弁2は、例えば入力ポートから分岐した2つの油路に設けた固定絞りの下流にあるスプールの移動により油路の開口面積を変化させることで、2つの油路の圧力を等しくする機構を有しており、これにより2つの出力ポートの分流比を1:1に保つことができる(例えば実開昭63−145001などに開示される)。
【0020】
第1及び第2コントロールバルブユニット5,6は、その内部に第1流量制御スプール5−1,5−2,及び第2流量制御スプール6−1,6−2を有していて、これらの流量制御スプールは、それぞれが第1操作レバー7−1,7−2,及び第2操作レバー8−1,8−2の操作によって生じるパイロット油の圧力によりその位置を切換える制御がなされている。具体的には、第1操作レバー7−1,7−2の操作量に応じたパイロット油を制御油回路である第1パイロット油路7a,7b,7c,7dを介して第1流量制御スプール5−1,5−2の受圧部へ供給している。同様に、第2操作レバー8−1,8−2の操作量に応じたパイロット油を制御油回路である第2パイロット油路8a,8b,8c,8dを介して第2流量制御スプール6−1,6−2の受圧部へ供給している。
【0021】
第1流量制御スプール5−1,5−2及び第2流量制御スプール6−1,6−2が動くことにより、第1油圧アクチュエータ群3−1,3−2,及び第2油圧アクチュエータ群4−1,4−2に供給される圧油の方向及び流量が制御され、これらの油圧アクチュエータが駆動制御される。
【0022】
第1及び第2流量制御スプール5−1,5−2,6−1,6−2はいずれもセンタバイパス型の切換弁である。第1流量制御スプール5−1と5−2のセンタバイパス油路は、直列に接続されていて、第1流量制御スプール5−2のセンタバイパス油路の排出側には、一端をタンク11に開口した第1排出油路5aの他端が接続されている。第1排出油路5aには、分岐部が設けられていて、この分岐部には、第1還流油路5bの一端側が接続され、第1還流油路5bの他端側は、最小選択弁12の一方の入力ポート12eに接続されている。この分岐部とタンク11側の開口部との間に還流する油路の圧力を取り出すための第1オリフィス9が設けられている。
【0023】
同様に、第2流量制御スプール6−1と6−2のセンタバイパス油路は、直列に接続されていて、第2流量制御スプール6−2のセンタバイパス油路の排出側には、一端をタンク11に開口した第2排出油路6aの他端が接続されている。第2排出油路6aには、分岐部が設けられていて、この分岐部には、第2還流油路6bの一端側が接続され、第2還流油路6bの他端側は、最小圧選択弁12の他方の入力ポート12fに接続されている。この分岐部とタンク11側の開口部との間に還流する油路の圧力を取り出すための第2オリフィス10が設けられている。
【0024】
選択手段としての最小圧選択弁12は、2個の入力ポート12e、12fと1個の出力ポート12aとを有する2位置切換弁である。入力ポート12eには、内部油路12dの一端側が接続されていて、内部油路12dの他端側は、内部スプール12bの下部側に接続されている。一方、入力ポート12fには、内部油路12cの一端側が接続されていて、内部油路12cの他端側は、内部スプール12bの上部側に接続されている。入力ポート12eと12fの圧力差によって、内部スプール12bの位置を切換可能としている。出力ポート12aには、駆動油路12gの一端側が接続され、駆動油路12gの他端側は、レギュレータ13に接続されている。
【0025】
レギュレータ13は、ばね付き単動シリンダタイプのアクチュエータであって、ボトム室に配設されたばね部材13cによってロッド室側に押しつけられるピストンロッド13bと、ピストンシリンダのロッド室側に形成され圧油が流入する油室13aと、ピストンロッド13bの駆動量に応じて油圧ポンプ1の傾転角を変更させる斜板1aとを備えている。
【0026】
次に、本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第1の実施の形態における動作について説明する。
図1において、レギュレータ13内のピストンロッド13bは、油圧ポンプ1の傾転角を制御していて、ピストンロッド13bが右に動くと、油圧ポンプ1の傾転角が大きくなり、ポンプ吐出流量は増加し、左に動くと油圧ポンプ1の傾転角が小さくなり、ポンプ吐出流量は減少する。
【0027】
ピストンロッド13bの駆動量は、ばね部材13cと油室13aに流入した圧油の圧力との大小によって制御されている。このため、油室13aの圧力が下がると、ピストンロッド13bが右に動くとともにポンプ吐出流量は上がり、油室13aの圧力が上がると、ピストンロッド13bが左に動くとともにポンプ吐出流量は下がることになる。換言すると、油室13aへ供給する圧油の圧力を上昇させれば、ポンプ吐出流量を下げることができ、油室13aへ供給する圧油の圧力を下降させれば、ポンプ吐出流量を上げることができる。
【0028】
油圧ポンプ1から吐出される圧油は、分流弁2を介して第1及び第2コントロールバルブユニット5,6に供給される。分流弁2の分流比は固定であるため、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6には一定の流量比の圧油が供給されている。
【0029】
ここで、第1操作レバー7−1,7−2,及び第2操作レバー8−1,8−2を何も操作しない場合は、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6内の第1流量制御スプール5−1,5−2,及び第2流量制御スプール6−1,6−2は中立位置にあるため、供給された圧油はセンタバイパスを介してそのまま、第1排出油路5a及び第2排出油路6aを流れる。
【0030】
一方、第1操作レバー7−1,7−2,及び/又は第2操作レバー8−1,8−2を操作すると、操作した操作レバーに応じて、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6内の第1流量制御スプール5−1,5−2,及び/又は第2流量制御スプール6−1,6−2が駆動し、油圧ポンプ1から供給された圧油は、第1油圧アクチュエータ群3−1,3−2,及び/又は第2油圧アクチュエータ群4−1,4−2に供給される。このとき第1排出油路5a及び第2排出油路6aには、いずれの油圧アクチュエータ群にも供給されなかった余剰分の圧油と、供給された油圧アクチュエータからの戻り油が流れることになる。この際、上述した第1オリフィス9と第2オリフィス10が作用し、還流する圧油の流量に応じた圧力がこれらのオリフィス9,10の上流側で形成される。
【0031】
第1還流油路5b及び第2還流油路6bには、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6それぞれのタンク11への還流体である圧油が満たされている。第1排出油路5a及び/又は第2排出油路6aを流れる圧油の還流量が大きいときには、第1還流油路5b及び/又は第2還流油路6b内の圧力は高くなり、第1排出油路5a及び/又は第2排出油路6aを流れる圧油の還流量が小さいときには、第1還流油路5b及び/又は第2還流油路6b内の圧力は低くなる。
【0032】
また、この圧油の還流量が多いこと、つまり第1還流油路5b及び/又は第2還流油路6b内の圧力が高いことは、いずれの油圧アクチュエータ群にも供給されなかった余剰流量が多いことと同義であり、第1及び/又は第2コントロールバルブユニット5,6の要求流量に対して油圧ポンプ1の吐出流量が過剰であることを示している。
逆に、この圧油の還流量が少ないことは、第1及び/又は第2コントロールバルブユニット5,6の要求流量に対して油圧ポンプ1の吐出流量が不足していることを示している。
【0033】
ここで、例えば、油圧ポンプ1からの圧油が供給されている状態において、第1コントロールバルブユニット5の要求流量が、第2コントロールバルブユニット6の要求流量より多い場合を想定すると、第1排出油路5aを流れる圧油の還流量が、第2排出油路6aを流れる圧油の還流量より少ないため、第2還流油路6bの圧力が第1還流油路5bの圧力より高くなる。この結果、最小圧選択弁22においては、内部油路12cの圧力が内部油路12dの圧力より高くなり、内部スプール12bを上方から下方へ移動させ、第1還流油路5bを駆動油路12gと連通させる。
【0034】
逆に、第2コントロールバルブユニット6の要求流量が、第1コントロールバルブユニット5の要求流量より多い場合は、第2還流油路6bを駆動油路12gと連通させる。つまり、最小圧選択弁12は、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6のいずれかのうち要求流量の多いコントロールバルブユニットに対応する還流油路を駆動油路12gに連通させている。この結果、レギュレータ13の油室13aには、要求流量の多いコントロールバルブユニットの方の還流油路の圧油が導入され、この圧油の圧力に応じて斜板1aの傾転角が制御される。
【0035】
例えば、第2コントロールバルブユニット6の要求流量が、第1コントロールバルブユニット5の要求流量より多い場合は、上述したように第2還流油路6bの圧油が、レギュレータ13の油室13aに導入されて油圧ポンプ1の吐出流量が制御されている。この状態において、さらに、第2コントロールバルブユニット6の要求流量が増加すると、第2還流油路6bの圧油の圧力は低下し、レギュレータ13の油室13aの圧力も低下する。この結果、ピストンロッド13bが右に動くとともに油圧ポンプ1の吐出流量は上がることになり、この増加した吐出流量の圧油が、分流弁2を介して第2コントロールバルブユニット6に供給されることになる。
【0036】
このように、本実施の形態における建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路は、最小圧選択弁12によって、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6の要求流量の多い方のコントロールバルブユニットの還流体を選択し、この選択された還流体でレギュレータ13を制御して油圧ポンプ1の吐出流量の増減を決めている。したがって、油圧ポンプ1から吐出され分流弁2を介して固定の分流比で第1及び第2コントロールバルブユニット5,6へ供給される圧油の供給流量が、それぞれのコントロールバルブユニットの要求流量を下回ることは発生しない。
【0037】
上述した本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第1の実施の形態によれば、分流比固定の分流弁2を用いるとともに、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6の最大要求流量を検出し、この最大要求流量に応じてポンプ吐出流量を制御するので、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6の要求流量が変化した場合であっても、作動油供給流量の不足を発生させることはない。この結果、操作性や作業効率を向上させることができる。また、分流弁2を制御する油圧回路が省略できるので簡略化された駆動回路となり、コストの低減化を図ることができる。
【実施例2】
【0038】
以下、本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図2は本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第1の実施の形態を示す油圧回路図である。図2において、図1に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図2に示す本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、以下の構成が異なる。
【0039】
第1の実施の形態における第1及び第2還流油路5b,6b、第1及び第2オリフィス9,10、及び最小圧選択弁12を省略し、後述する第1及び第2シャトルブロック20,21と、シャトル弁22とを設けて構成した点が異なる。
【0040】
図2において、制御油回路である第1パイロット油路7a,7b,7c,7dにそれぞれ分岐部を設け、これらの分岐部に第1検出油路20a,20b,20c,20dのそれぞれの一端側を接続し、第1検出油路20a,20b,20c,20dのそれぞれの他端側を第1シャトルブロック20の入力側ポートに接続している。
【0041】
同様に、制御油回路である第2パイロット油路8a,8b,8c,8dにそれぞれ分岐部を設け、これらの分岐部に第2検出油路21a,21b,21c,21dのそれぞれの一端側を接続し、第2検出油路21a,21b,21c,21dのそれぞれの他端側を第2シャトルブロック21の入力側ポートに接続している。
【0042】
第1シャトルブロック20は、内部に3個のシャトル弁20e,20f,20gを備えていて、入力された第1検出油路20a,20b,20c,20dの操作指令圧力の中の最高圧力を出力ポートに出力する。この出力ポートには、第1出力油路22aの一端側が接続されている。
【0043】
同様に、第2シャトルブロック21は、内部に3個のシャトル弁21e,21f,21gを備えていて、入力された第2検出油路21a,21b,21c,21dの操作指令圧力の中の最高圧力を出力ポートに出力する。この出力ポートには、第2出力油路22bの一端側が接続されている。
【0044】
シャトル弁22は、2個の入力ポートの一方に第1出力油路22aの他端側を接続し、他方の入力ポートに第2出力油路22bの他端側を接続している。出力ポートには、駆動油路23の一端側が接続され、駆動油路23の他端側は、レギュレータ13に接続されている。シャトル弁22は、入力された第1出力油路22aの操作指令圧力と第2出力油路22bの操作指令圧力との高い方の圧力を出力ポートに出力し、レギュレータ14の油室14aへ圧油を供給する。
【0045】
レギュレータ14は、ばね付き単動シリンダタイプのアクチュエータであって、ボトム室に配設されたばね部材14cによってロッド室側に押しつけられるピストンロッド14bと、ピストンシリンダのロッド室側に形成され圧油が流入する油室14aと、ピストンロッド14bの駆動量に応じて油圧ポンプ1の傾転角を変更させる斜板1aとを備えている。
【0046】
次に、本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第2の実施の形態における動作について説明する。
図2において、レギュレータ14内のピストンロッド14bは、油圧ポンプ1の傾転角を制御していて、ピストンロッド14bが右に動くと、油圧ポンプ1の傾転角が大きくなり、ポンプ吐出流量は増加し、左に動くと油圧ポンプ1の傾転角が小さくなり、ポンプ吐出流量は減少する。
【0047】
ピストンロッド14bの駆動量は、ばね部材14cと油室14aに流入した圧油の圧力との大小によって制御されている。このため、油室14aの圧力が上がると、ピストンロッド14bが右に動くとともにポンプ吐出流量は上がり、油室14aの圧力が下がると、ピストンロッド14bが左に動くとともにポンプ吐出流量は下がることになる。換言すると、油室14aへ供給する圧油の圧力を上昇させれば、ポンプ吐出流量を上げることができ、油室14aへ供給する圧油の圧力を下降させれば、ポンプ吐出流量を下げることができる。
【0048】
本実施の形態においては、第1及び第2シャトルブロック20,21及びシャトル弁22を介して、第1及び第2流量制御スプールの操作指令圧の中で最も高圧の圧油がレギュレータ14の油室14aに連通される。レギュレータ14は、操作指令圧が0の時、つまりいずれの操作レバーも操作されていない時は、油圧ポンプ1にスタンバイ流量を吐出させ、いずれかの操作レバーのフルレバー操作時の操作指令圧が入力された時は、油圧ポンプ1に最大流量を吐出させるように設定されている。
【0049】
油圧ポンプ1から吐出される圧油は、分流弁2を介して第1及び第2コントロールバルブユニット5,6に供給される。分流弁2の分流比は固定であるため、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6には一定の流量比の圧油が供給されている。
【0050】
ここで、第1操作レバー7−1,7−2,及び第2操作レバー8−1,8−2を何も操作しない場合は、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6内の第1流量制御スプール5−1,5−2,及び第2流量制御スプール6−1,6−2は中立位置にあるため、供給された圧油はセンタバイパスを介してそのまま、第1排出油路5aからタンク11へ流れる。
【0051】
一方、第1操作レバー7−1,7−2,及び/又は第2操作レバー8−1,8−2を操作すると、操作した操作レバーに応じて、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6内の第1流量制御スプール5−1,5−2,及び/又は第2流量制御スプール6−1,6−2が駆動し、油圧ポンプ1から供給された圧油は、第1油圧アクチュエータ群3−1,3−2,及び/又は第2油圧アクチュエータ群4−1,4−2に供給される。
【0052】
このとき第1操作レバー7−1,7−2,及び/又は第2操作レバー8−1,8−2の操作量が、大きければ大きいほどそれぞれの操作量に応じた第1パイロット油路7a,7b,7c,7d及び/又は第2パイロット油路8a,8b,8c,8dの圧油の圧力が上昇し、各パイロット油路に対応する第1流量制御スプール5−1,5−2,及び/又は第2流量制御スプール6−1,6−2の開口面積を拡大する。この結果、各操作レバーに対応する油圧アクチュエータへの圧油の供給量を増加させる。
【0053】
換言すると、第1パイロット油路7a,7b,7c,7d及び第2パイロット油路8a,8b,8c,8dのそれぞれの圧油の圧力が高ければ高いほど、これらのパイロット油路に対応する第1及び第2油圧アクチュエータ3−1,3−2,4−1,4−2の要求流量が大きいことを示している。逆に、第1パイロット油路7a,7b,7c,7d及び第2パイロット油路8a,8b,8c,8dのそれぞれの圧油の圧力が低ければ低いほど、これらのパイロット油路に対応する第1及び第2油圧アクチュエータ3−1,3−2,4−1,4−2の要求流量が小さいことを示している。
【0054】
上述したように、第1及び第2シャトルブロック20,21及びシャトル弁22を介して、第1及び第2流量制御スプールの操作指令圧である第1パイロット油路7a,7b,7c,7d及び第2パイロット油路8a,8b,8c,8dの圧油の中で最も高圧の圧油がレギュレータ14の油室14aに連通されている。したがって、最も要求流量が大きい油圧アクチュエータに対応するように油圧ポンプ1の吐出流量が制御されている。
【0055】
本実施の形態においては、各油圧アクチュエータを駆動するための各操作レバーの生成する操作指令圧の中の最大操作指令圧を検出し、この最大操作指令圧によって、油圧ポンプ1の吐出流量を制御するので、油圧ポンプ1から吐出され分流弁2を介して固定の分流比で第1及び第2コントロールバルブユニット5,6へ供給される圧油の供給流量が、それぞれのコントロールバルブユニットの要求流量を下回ることは発生しない。
【0056】
上述した本発明の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、操作レバーの操作量に応じた油圧ポンプ1の吐出流量制御(いわゆるポジティブコントロール回路)であっても、第1及び第2コントロールバルブユニット5,6の要求流量が変化した場合に、作動油供給流量の不足を発生させず、操作性や作業効率を向上させることができる。
【0058】
なお、本発明の実施の形態として、いわゆるネガティブコントロール回路(ネガコン制御型)とポジティブコントロール回路(ポジコン制御型)を用いて説明したが、これに限るものではない。例えば、2個のコントロールバルブユニットにおけるいずれかの最大要求流量を検出する手段を有していればよい。また、分流弁の分流比を1:1に固定した場合であっても、本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 油圧ポンプ
1a 斜板
1b 吐出油路
2 分流弁
2a 第1分流油路
2b 第2分流油路
3−1,2 第1油圧アクチュエータ群
4−1,2 第2油圧アクチュエータ群
5 第1コントロールバルブユニット
5a 第1排出油路
5b 第1還流油路
5−1,2 第1流量制御スプール
6 第2コントロールバルブユニット
6a 第2排出油路
6b 第2還流油路
6−1,2 第2流量制御スプール
7−1,2 第1操作レバー
8−1,2 第2操作レバー
9 第1オリフィス
10 第2オリフィス
11 タンク
12 最小圧選択弁
13 レギュレータ
20 第1シャトルブロック
21 第2シャトルブロック
22 シャトル弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の作業機を駆動する少なくとも1つのアクチュエータからなる第1油圧アクチュエータ群及び第2油圧アクチュエータ群と、
前記油圧アクチュエータ群に圧油を供給する容量可変の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプのポンプ傾転角を変化させるレギュレータと、
前記油圧ポンプから吐出した圧油を入力し一定の流量比に分流して出力する分流弁と、
前記分流弁から分流した2系統の油路において、圧油の方向と流量を各々制御して前記各油圧アクチュエータ群に供給する2台のコントロールバルブとを備えた建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路であって、
前記各コントロールバルブの要求流量をそれぞれ取り込む2系統の検出油路と、
前記各検出油路で取り込んだ各要求流量の最大値を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された最大要求流量を満たすように、前記油圧ポンプの吐出流量を制御する前記レギュレータとを備えた
ことを特徴とする建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路において、
前記建設機械の駆動を指令する操作レバー装置と、
前記操作レバー装置の操作量に応じて前記各コントロールバルブのスプールを駆動させる2系統の制御油回路とを備え、
前記検出油路は、前記各制御油回路の圧力を取り出す2系統の油路であり、
前記2系統の油路に入力側が接続され、これらの油路の圧力を比較していずれか高圧側の油路を出力側に連通させるシャトル弁と、
前記シャトル弁により連通された油路の圧力を満たすように、前記油圧ポンプの吐出流量を制御するポジコン制御型の前記レギュレータとを備えた
ことを特徴とする建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路において、
前記検出油路は、前記各コントロールバルブからセンタバイパスを介してタンクへ還流する圧油の還流量に応じた圧力を取り出す2系統の油路であり、
前記2系統の油路に入力側が接続され、これらの油路の圧力を比較していずれか低圧側の油路を出力側に連通させる最小圧選択弁と、
前記最小圧選択弁により連通された油路の圧力を満たすように、前記油圧ポンプの吐出流量を制御するネガコン制御型の前記レギュレータとを備えた
ことを特徴とする建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路において、
前記最小圧選択弁は、前記各コントロールバルブから前記各センターバイパスを介して前記タンクへ還流する2系統の油路における圧力を弁駆動圧として、前記2系統の油路のうち低圧側の油路を選択する切替弁である
ことを特徴とする建設機械の油圧アクチュエータ駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−141037(P2012−141037A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−584(P2011−584)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】