説明

建設機械の油圧制御装置

【課題】ロードセンシングを採用した可変容量型ポンプのポジコン制御における差圧調整部を電磁可変減圧弁で構成し、同減圧弁へ油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号を導入した建設機械の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】差圧調整手段28へはポンプ22の吐出圧力Pdと油圧アクチュエータの圧力Psとがそれぞれ油圧・電気変換部202、204を介して電気信号E(Pd)、E(Ps)として与えられている。演算部200では、差圧に相当する成分(E(Pd)−E(Ps))からばね成分E(Spr)と、外部信号成分E(Z)とが差し引かれる。その場合、E(Z)の符号−、+は油圧制御装置の制御系の特性を応答性の良好さ、安定性の良好さにそれぞれ対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械を操作中、各油圧アクチュエータに圧油を供給する可変容量型ポンプのポジコン制御に関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量型ポンプのポジコン制御は、一般に図7(特許文献1の図15に対応する)に示されるように、センターバイパス通路100を有する切換弁V1、V2、V3にポンプ吐出容量調整機構102を有する可変容量型ポンプPMの吐出油を供給し、当該可変容量型ポンプPMの吐出容量を前記切換弁の操作信号(a1、b1)、(a2、b2)、(a3、b3)にて調整し、各切換弁の操作量の増加に従い、当該可変容量型ポンプPMの吐出流量を増加するよう構成するものである。
【0003】
このポジコンシステムの場合、切換弁の中立および操作途中では、可変容量ポンプPMの吐出油の一部をセンターバイパス通路100からタンクTへ放出しているのでネガコンシステムの場合と同様、操作性においては良好であるもののシステム効率および複合操作時の操作性等においては、問題点を有する。特に可変容量型ポンプPMの吐出容量はセンターバイパス通路100の開度如何にかかわらず、切換弁の操作信号に対応して一義的に定まるので、センターバイパス通路100の開度とシリンダポートへの開口通路との面積およびタイミング調整が難しく、ポンプ供給ラインには異常高圧または供給圧力の立ち遅れ等の問題が生ずる恐れがある。なお、可変容量型ポンプPMの吐出容量は、前記切換弁の操作信号と並行して出力される信号により調整されるのでシステムの応答性は比較的良好である。
【0004】
次に、ネガコンシステムの油圧回路図を図8(特許文献1の図14に対応する)に示す。
【0005】
このシステムでは、センターバイパス100を有する切換弁V3のセンターバイパス出口に圧力発生手段104を設け当該圧力発生手段104の上流側圧力を可変容量ポンプPMの吐出容量調整機構102へ信号圧力Pnとして作用させ、且つ当該吐出流量調整機構102は前記信号圧力の低下に応じて吐出容量を増加するよう構成されている。本システムは切換弁からポンプへフィードバックされる信号が低圧であることや、ポンプ吐出油の一部をブリードオフしつつ油圧アクチュエータへ圧油を供給するので、人が操作する油圧ショベル等には操作性に優れており多用されている。しかし、この場合、可変容量ポンプPMから切換弁へ供給される圧油は、その切換弁が中立又は操作途中では一部がセンターバイパス通路100を経てタンクへ放出されるので、この分のエネルギーが熱に変換され捨てられている。特に、切換弁に接続された油圧アクチュエータの負荷が大きい場合には始動までの切換弁の操作量が大きく、この間に絞り捨てされる圧油は、当該圧油によってポンプPMの吐出容量は小容量に維持されてはいるが、依然としてエネルギーを無駄に捨てている点において問題がある。
【0006】
一方、このセンターバイパス通路100から放出される油量を例えば、切換弁のセンターバイパス通路100を小さくして、比較的小容量とすることは可能であるが、当該シリンダポートへの開口通路との適切な面積およびタイミング調整が非常に困難であり、加工精度や切換弁の操作によってはポンプ吐出油が供給ライン封入されて異常高圧が発生し、却ってエネルギー効率の悪化を招く恐れがある。又、油圧ショベルにおける油圧制御システムでは複数の油圧アクチュエータを同時に操作した場合の操作性つまり可変容量ポンプPMからの各油圧アクチュエータへの流量配分特性が極めて重要であるが、この特性は一般には所定のポンプ回転数における流量に対して各切換弁における開口面積によって一義的に定まるものであり、従って、エンジン回転数や負荷圧力が変化した場合には、良好な操作性が維持されない恐れがあるという問題がある。
【0007】
また、図9(特許文献1の図16に対応する)に示されるように、ロードセンシングシステムにおいては、油圧アクチュエータ106への供給油量は切換弁V1、V2が操作された時、当該切換弁のメータイン側の差圧が一定となる様、可変容量ポンプPMの吐出容量が調整される。従って、ネガコンシステムやポジコンシステムの様に絞り捨てされる油がないのでその分、システム効率は改善される。
【0008】
しかし、ポンプ吐出容量を適切に調整するためには前記メータイン側の差圧はある程度、例えば20bar程度以上維持しなければならず、その結果、各切換弁V1、V2を通過する毎に通過油量に関らず圧力損失が生じ、システム効率上は依然として問題がある。
【0009】
さらには、ポンプ吐出容量の調整に関して、先ず切換弁を操作し、その結果としてポンプ容量が調整されるため、応答遅れが生ずる等の問題がある。
【0010】
こうした問題を解消する方法として、図10(特許文献1の図1に対応する)のブロック線図に示されるように、可変容量型ポンプの吐出流量を吐出容量調整部により制御することが開示されている。この可変容量型ポンプから供給される圧油は、1つまたは複数の切換弁およびその周辺油圧回路を含む切換弁ユニットを介して1つまたは複数の油圧アクチュエータへ与えられる。
【0011】
オペレータ操作指令部からは、前記各油圧アクチュエータの駆動方向および駆動量が前記切換弁ユニットにパイロット圧油として指令される。さらに、オペレータ操作指令部からは信号圧力としての調整信号Xが調整量修正部に与えられている。この調整信号Xは切換弁ユニットの切換弁に与えられるパイロット圧油の中で最高圧が選択される。
【0012】
一方、前記切換弁ユニットを挟んで、可変容量型ポンプの吐出油圧力Pdと油圧アクチュエータへ供給される圧油の圧力Psが検出され、その差圧が差圧生成部で形成される。差圧生成部から信号圧力として出力される調整信号Yは前記調整量修正部に与えられている。調整量修正部では前記調整信号Xに対し調整信号Yを作用させて調整信号Xを低減させるようになっている。そして、調整量修正部の出力が前記吐出流量調整部に与えられている。
【0013】
即ち、切換弁への駆動信号の最高圧が差圧(Pd−Ps)に対応して修正され、吐出流量調整部に与えられるようになっている。(特許文献1)
【0014】
なお、前記調整信号Yを油電変換して得た電気信号を制御信号として、市販の電磁可変減圧弁(電磁比例減圧弁)を用いて前記調整量修正部を構成することも可能である。(特許文献2)
【0015】
しかしながら、前記図10において、調整量修正部の機能は、オペレータ操作指令部からの調整信号Xは差圧生成部からの信号Yにより修正するものである。すなわち、この機能を切換弁スプールの開口特性の点から考察すると、油圧アクチュエータの圧力とポンプ吐出圧力との差圧が一定となるように当該差圧により切換弁スプールの開口特性を見かけ上変化させるものではあるが、この差圧によりオペレータ操作指令部からの調整信号Xを修正する機能だけでは、オペレータの油圧アクチュエータに対する操作性の点からは違和感がある。
【0016】
例えば、図11のQ2に示されるように、オペレータが操作量(Pm)を増加させていく場合、操作量Pm1まではポンプの理論吐出量に対し相対的に少ない流量が供給され、操作量Pm1より大きい範囲では相対的に大きい流量が供給されるよう油圧アクチュエータを駆動させたい場合がある。こうした要求を満たすためには、参照符号Q1で示されるように、単に差圧により操作量(Pm)を修正するだけでは実現できない。こうした切換弁スプールの開口特性を修正するために、スプール外周にノッチなどの切り欠きを設けてその特性を変化させることも行われているが、こうした対策は熟練を要し、ノウハウとして扱われ、明確でなかった。また、特定の切り欠きに形成したスプールを変更しようとしても再加工することは事実上不可能であり、同一のスプールが複数の開口特性を備えるようなことはできない。
【0017】
また、前記図10のシステムにおいては、操作中において、前述した建設機械のブーム、アーム等の構造物がその固有振動数で振動を起こし、スムースな作業を遂行できない場合がある。図11のQ1上に重畳された破線で示す波形Vwは構造物が振動しているとき、ポンプ吐出量が変化する状態を例示するものである。
【0018】
本発明者等の知見に拠れば、この振動の種類(固有振動数)が1つとは限らないが、その振動数はせいぜい数ヘルツ程度である。例えば、ブーム下降操作中に振動が発生すると、同ブームはスムースに下降せず、間歇的な下降動作となり、それに伴い騒音も発生し、こうした現象が頻繁に続くと、ブーム自体やその結合部分の構造物を損傷する恐れがある。
【0019】
また、オペレータにとっては、こうした振動の発生や終息のタイミングが予測できないこともあり、上記の操作上の違和感のみならず、建設機械自体が破損するかもしれないといった恐れを感じることとなる。
【0020】
【特許文献1】特開2004−28333号公報
【特許文献1】特開平5−324092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者等は、上述した点に鑑み、種々検討した結果、前記差圧調整部に対し、差圧信号とは別の油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号を与えることにより前述した問題が基本的に解決できることを見出した。
【0022】
従って、本発明の目的は、ロードセンシングを採用した可変容量型ポンプのポジコン制御における差圧調整部に油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号を導入してオペレータに操作上の違和感を可及的に少なくできるようにした建設機械の油圧制御装置を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、ロードセンシングを採用した可変容量型ポンプのポジコン制御における差圧調整部に油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号を導入して、差圧の変化に対する切換弁スプールの移動を敏捷または緩慢にし、それにより負荷の変動に対し応答性の良好な、または安定性の良好な操作感をオペレータに与えることができる建設機械の油圧制御装置を提供することにある。
【0024】
本発明のさらに他の目的は、ロードセンシングを採用した可変容量型ポンプのポジコン制御における差圧調整部に油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号を導入して、構造物の固有振動を抑制する建設機械の油圧制御装置を提供することにある。
【0025】
本発明のさらに他の目的は、上記の各目的を達成するため、前記差圧調整部を電磁可変減圧弁で構成した建設機械の油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的を達成するため、本発明による建設機械の油圧制御装置は、吐出流量調整機構を備えた可変容量型ポンプの吐出流量が、操作弁から与えられる操作圧信号(X)に基づいて生成される前記吐出流量調整機構への流量調整信号(Pm)に応じて制御されるとともに、油圧アクチュエータ圧力を検出し、切換制御弁のメータイン側ポンプ圧力と油圧アクチュエータ圧力との差圧が予め定めた所定値(α)以下に維持されるよう前記流量調整信号(Pm)を調整する差圧調整手段を有する建設機械の油圧制御装置において、前記差圧調整手段は、前記油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される電気的外部信号(E(Z))ならびに、前記切換制御弁のメータイン側ポンプ圧力(Pd)および油圧アクチュエータ圧力(Ps)のそれぞれ油電変換された信号から演算形成される電気制御信号(iSG)を供給する演算部と、前記操作圧信号(X)を一次圧とし前記流量調整信号(Pm)を二次圧とし、前記演算部からの電気制御信号(iSG)により減圧制御を行う電磁可変減圧弁と、からなることを特徴とする。
【0027】
その場合、前記電気的外部信号(E(Z))は、前記操作弁の操作量に応じて与えられる操作圧信号(X)の油電変換された電気信号(Ein)の関数値として与える関数発生手段により生成される第1外部信号(SG1)であることができる。
【0028】
またその場合、前記電気的外部信号(E(Z))は、前記油圧アクチュエータの操作状況に応じて発生する建設機械構造物の振動を抑制する位相波形を有する第2外部信号(SG2)であることができる。
【0029】
またその場合、前記電気的外部信号(E(Z))は、前記操作弁の操作量に応じて与えられる操作圧信号(X)の油電変換された電気信号(Ein)の関数値として与える関数発生手段により生成される第1外部信号(SG1)と前記油圧アクチュエータの操作状況に応じて発生する建設機械構造物の振動を抑制する位相波形を有する第2外部信号(SG2)とを加算した信号であることができる。
【0030】
さらにその場合、前記演算部において、前記油圧制御装置の制御系の応答性を良好にするか、または安定性を良好にするかに応じて、前記電気的信号(E(Z))の符号を前記メータイン側ポンプ圧力に対応する電気信号(E(Pd))と同符号、または逆符号に指定することができる。
【0031】
さらにその場合、前記演算部において、前記メータイン側ポンプ圧力と油圧アクチュエータ圧力との差圧が所定値(α)を越えた場合には前記差圧として所定値(α)と定義することができる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に記載された本発明によれば、差圧調整手段は、前記油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される電気的外部信号(E(Z))ならびに、前記切換制御弁のメータイン側ポンプ圧力(Pd)および油圧アクチュエータ圧力(Ps)のそれぞれ油電変換された信号から演算形成される電気制御信号(iSG)を供給する演算部と、前記操作信号(X)を一次圧とし前記流量調整信号(Pm)を二次圧とし、前記演算部からの電気制御信号(iSG)により減圧制御を行う電磁可変減圧弁と、から構成されているので、前記演算部中では、前記流量調整信号(Pm)の生成に関わるすべての油圧信号を電気信号として取り扱うことができ各種設定値の調整も容易である。
【0033】
また前記電磁可変減圧弁は汎用性のある市販のものを利用できるので、油圧制御装置の製造コストの点からも有利である。
【0034】
請求項2に記載された本発明によれば、操作弁の操作量に応じて与えられる操作圧信号(X)の油電変換された電気信号(Ein)の関数値として与える関数発生手段を備えているので、当該関数発生手段中に予め種々の関数を用意することにより操作弁の操作量に対する吐出流量特性を種々選択することができ、オペレータの操作中における違和感を解消することができる。
【0035】
請求項3に記載された本発明によれば、電気的外部信号(E(Z))により前記油圧アクチュエータの操作状況に応じて発生する建設機械構造物の振動を抑制することが可能である。
【0036】
請求項4に記載された本発明によれば、電気的外部信号(E(Z))は、操作弁の操作量に応じて与えられる操作圧信号(X)の油電変換された電気信号(Ein)の関数値として与える関数発生手段により生成される第1外部信号(SG1)と前記油圧アクチュエータの操作状況に応じて発生する建設機械構造物の振動を抑制する位相波形を有する第2外部信号(SG2)とを加算した信号であるので、前記第1外部信号により建設機械の運転操作中において、前記構造物に振動が発生した場合でも当該振動を抑制するように第2外部信号が加えられるので、当該振動を直ちに抑制することができ、オペレータに作業進行に対する不安を与えない。
【0037】
請求項5に記載された本発明によれば、演算部において、前記油圧制御装置の制御系の応答性を良好にするか、または安定性を良好にするかに応じて、前記電気的信号(E(Z))の符号を前記メータイン側ポンプ圧力に対応する電気信号(E(Pd))と同符号、または逆符号に指定することができるので油圧制御装置としての柔軟性を備えることができる。
【0038】
請求項6に記載された本発明によれば、演算部において、前記メータイン側ポンプ圧力と油圧アクチュエータ圧力との差圧が所定値(α)を越えた場合には前記差圧として所定値(α)と定義することができるので、当該差圧が前記所定値を越えないように制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態に基づく実施例について添付図面の図1乃至図6Bを参照して詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明が適用される建設機械として代表的な油圧ショベル全体の概略構成を示す。同図1において、油圧ショベルSHVは、油圧モータにより駆動される下部走行体DRVの上に旋回機構RMを介して上部旋回体6が旋回自在に載置されている。上部旋回体6には、その前方一側部にキャブ8が設けられ、且つ、前方中央部にブームBmが俯仰可能に取り付けられている。又、ブームBmの先端にアームAmが上下回動自在に取り付けられ、更にアームAmの先端にバケットBkが取り付けられている。なお、参照符号BCLはブーム駆動用の油圧シリンダ、AmCLはアーム駆動用の油圧シリンダ、BCLはバケット駆動用の油圧シリンダである。同図1から明らかなように、ブームBmが水平な姿勢からブームアップ操作されるときは、ブームシリンダBCLへの負荷圧が非常に大きくなる。参照符号S1、S2、S3は振動検知用のセンサであって、センサS1は運転操縦席近傍に、S2はブームBmに、S3はアームAmにそれぞれ設けられている。
【0041】
図2は、本発明のコンセプトを説明する制御ブロック図である。同図において、建設機械の油圧アクチュエータ10には可変容量型ポンプ22からの圧油が切換制御弁20を介して供給される。オペレータ操作指令部14からは切換制御弁20および差圧調整手段28に操作圧信号Xが与えられる。破線で示すように、差圧調整手段28にはポンプ22の吐出圧力Pdと油圧アクチュエータ10の圧力Psとが与えられている。さらに、差圧調整手段28には外部信号生成部32からの外部信号Zが与えられている。差圧調整手段28の出力Pmは可変容量型ポンプ22の斜板角度を調整する吐出流量調整機構26に与えられるようになっている。外部信号生成部32は、油圧アクチュエータ10の操作状況応じて生成される外部信号Zを生成する。
【0042】
図3A、3Bは、本発明の好適実施例であり、さらに、図4A、4B、4Cは、図3A、3B中の差圧調整手段28の機能・作用の理解を容易にするために例示されたものであり、差圧調整手段28の等価的な油圧回路である。
【0043】
図3Aは、図2に示したコンセプトを可変容量型ポンプのポジコン制御系に適用した電気・油圧回路の模式図である。同図3Aにおいて、参照符号20は、図1のブームBmを駆動する油圧シリンダBmCL用の切換制御弁を模式的に示し、ΔPはそのスプール開口特性に関係する絞りの程度に応じた差圧である。参照符号Qacは図示してない前記油圧シリンダBmCLへの供給流量を示す。可変容量型ポンプ22の斜板24の角度は、吐出流量調整機構26のばね26bの弾発力に対抗する油室26aへの電磁可変減圧弁300からの供給圧力(二次圧)Pmによって一義的に定められる。図示の例では供給圧力Pmが大きくなるとポンプ22の理論吐出量Qthは増大する関係となっている。
【0044】
鎖線で示す参照符号28は図2の差圧調整手段であって、図2中の外部信号生成部32からの外部信号は電気信号E(Z)として示されている。さらに、差圧調整手段28へは前述したポンプ22の吐出圧力Pdと油圧アクチュエータ10の圧力Psとがそれぞれ油圧・電気変換部202、204を介して電気信号E(Pd)、E(Ps)として与えられている。
【0045】
参照符号200は入力信号の演算部であって、差圧に相当する成分(E(Pd)−E(Ps))から、後述するばね成分E(Spr)と、外部信号成分E(Z)とが差し引かれる。なおその場合、E(Z)の符号−、+は後述するように、油圧制御装置の制御系の特性を応答性の良好さ、安定性の良好さにそれぞれ対応する。
【0046】
参照符号300は、本発明で定義された電磁可変減圧弁であって、例えば、市販の電磁比例減圧弁で構成することができる。電磁可変減圧弁300の油圧記号がその中に表示されている。
【0047】
参照符号30は、操作弁の操作圧信号Pa、Pbの高圧選択手段を模式的に示す。以下の説明では操作圧信号Xは、高圧選択された操作圧信号の意としている。
【0048】
図3Bは、外部信号生成部32として、図6Aに具体例が示される関数発生手段32Aと、振動抑制信号発生部100とを備えた場合であって、それぞれ32A、100からの電気信号SG1、SG2が加算部102で加算され電気的外部信号E(Z)を形成している。なお、電気信号SG1、SG2は、それぞれ本発明における第1外部信号、第2外部信号を構成している。
【0049】
前記振動抑制信号発生部100は、ブームBm、アームAm等のショベル構造物に取付けられた振動検知部100a(図1のS1,S2、S3等)と、同検知部100aからの検知信号が前記構造物の固有振動であることを判定する判定部100bと、判定された検知信号の振動波形の位相反転信号波形を生成する波形生成部100cから構成されている。
【0050】
図5に示すように、各センサS1〜S3の検知出力は、常時、判定部100bに与えられる。判定部100bでは、各センサからの振動波形の周波数、振幅、継続時間等により当該構造物の固有振動であるか否かを判定する。図示では、ブームBmに取付けたセンサS2からの振動波形Vw(S2)が固有振動の発生に該当しており、他のS1、S3からは、周波数が高く、振幅の小さい振動波形が供給されている例を示す。
【0051】
これらS1、S3からの振動波形は、例えば建設機械の原動機やポンプの回転軸の回転に伴う振動に相当する。位相反転波形生成部100cでは前記信号Vw(S2)が反転され、破線で示すように、−Vw(S2)となる。同信号はさらに振幅(ゲイン)が調整されて信号SG1が生成される。この際、ゲイン調整は、信号SG1の振幅を徐々に増大し、検知信号Vw(S2)の振幅がゼロになるように自動的に設定できるが、オペレータが手動で調整するようにしてもよい。
【0052】
なお、図3Bにおいて、上述した外部信号生成部32Aからの信号SG2が供給されている状態で、構造物に固有振動が発生したとすると、同固有振動の振動波形が位相反転されそのゲインが調整されて信号SG2が加算部で前記信号SG1に重畳され電気的外部信号E(Z)が生成される。この電気的外部信号E(Z)のうち信号SG2の圧力成分により電磁可変減圧弁300のスプールをその軸方向に振動させ、それによりポンプ流量調整機構26への二次圧力Pmが変化し、その結果として、ポンプ22の吐出圧は、検知された固有振動波形を相殺するように作用することとなる。
【0053】
なお、構造物の固有振動数は、油圧ショベルの大きさ、重量にも拠るが最大でも数ヘルツ程度であり、1周期の時間間隔は、位相反転信号生成の電気的処理や前記スプールの位置変化、二次圧力Pmが斜板24の転動角に反映するまで要する時間すなわち、外部信号E(Z)が電磁可変減圧弁300を経てポンプ吐出量へ反映するまでに要する時間に比べ十分大きいので振動の抑制を正確、迅速に行うことができる。
【0054】
図3Cは、図3A、3Bの演算部200の詳細説明図である。同図において、ケース1は、ポンプ22の吐出圧力Pdと油圧アクチュエータ10の圧力Psとの差圧ΔPが予め定めた所定値αを超えた状態、すなわち、電気信号で表示すれば、E(Pd)−E(Ps)>E(α)のときの電磁可変減圧弁300への電気制御信号iSGが示されている。
【0055】
また、ケース2は、ポンプ22の吐出圧力Pdと油圧アクチュエータ10の圧力Psとの差圧ΔPが予め定めた所定値α以下の状態、すなわち、電気信号で表示すれば、E(Pd)−E(Ps)<=E(α)のときの電磁可変減圧弁300への電気制御信号iSGが示されている。
【0056】
なお、ばね成分E(Spr)は、プリセットされていることを示す。このばね成分E(Spr)は、後述する図4A、4Bに示すばね28bの弾発力に対応しており、スプール28aを圧力Pdに抗して所定のばね力Sprで右方に付勢するものであり、その付勢力を電気的に換算したものである。
【0057】
また、演算部200は、アナログ電気信号を演算処理する演算増幅器を用いて構成することができる。
【0058】
図4Aは、図3A中の差圧調整手段28を、機能的に等価な単一の弁体構造からなる油圧回路で構成した例である。同図4Aにおいて、参照符号28aは弁体内部に形成した開口Hに摺動可能に挿入されているスプールであって、その中間部に3つの径大部D1、D2、D3が設けられている。径大部D1の左側の油室RM1にはばね28bが収納されている。また、同油室RM1には、破線のラインL1で示すように、ポートPT1を介して油圧アクチュエータ側の圧力Psが導かれている。
【0059】
一方、径大部D2の右側には油室RM2が設けられており、同油室RM2に設けられたポートPT5には、破線のラインL2で示すように、ポートPT5を介してポンプ22の吐出口側の圧力Pdが導かれている。
【0060】
径大部D3の左側には油室RM3が設けられており、同油室RM3に隣接して設けられたポートPT2には、破線のラインL3で示すように、ポートPT2を介してオペレータの指令による操作弁からの操作圧信号Xすなわち、高圧選択手段30により選択された最大操作圧力Pmaxが導かれている。さらに、径大部D3の右側には油室RM4が設けられており、同油室RM4に隣接して設けられたポートPT4はタンクラインTに導かれている。スプール28aの右端面は油室RM5に臨んでおり、この油室RM5には、外部信号Zが与えられており、さらにスプール28aの右方向の停止位置を定めるストッパ28cが設けられている。
【0061】
なお、外部信号生成部32へは油電変換部32aで電気信号に変換された前記操作弁からの操作圧信号Xが入力されている。また、外部信号生成部32の出力は電油変換部32bで圧油信号に変換され外部信号Zとなる。
【0062】
外部信号生成部32の具体例を図6Aにて模式的に示す。同図6Aにおいて、関数の波形f1、f2、f3は操作圧信号Xの油電された電気信号Einの値に対する各関数の値SG1の変化の様子を示す。例えば、関数f1では、Einの変化に対するSG1は上に凸の変換特性を有する。これに対し関数f2は、Einの増加の途中まではSG1は緩慢な増加にとどまり、ある値以降の増加に対しSG1は比較的急激に増加する場合である。
【0063】
さらに、関数f3は、Einの増加の途中まではSG1は急激に増加し、それ以降の増加に対しSG1は比較的緩慢な増加にとどまる場合である。なお、関数f0は、SG1が常時ゼロであり、外部信号Z(図4A参照)がない場合である。参照符号34は各関数波形を選択する押しボタンを示す。なお、オペレータがボタン選択を瞬時、正確におこなえるよう記号f0〜f3の代わりに、波形特性そのものや、絵文字などで表示することができる。またその場合、選択ボタンは変換波形そのものではなく、オペレータが要求する操作特性を表示するようにすることが好ましい。さらにその場合、選択操作の代わりに音声で選択するようにしてもよい。
【0064】
図6Aではアナログ電気信号Ein、SG1による関数を例示したが、A/D変換器、D/A変換器によりデジタル処理を行うことも可能である。その場合には、関数f0〜f3はそれぞれ対応するメモリテーブルとして形成されることができる。
【0065】
次に図4A、図6Aを参照して作用を説明する。
【0066】
まず、関数f0が選択されており、したがって、油室RM5には圧油が供給されない場合を説明する。今、油圧アクチュエータへの操作圧信号Xがゼロとすると、圧力PdとPsとの差圧ΔPもゼロで、ばね28bの弾発力によりスプール28aは図示よりも若干右方の、ストッパ28cによる停止位置にあり、油室RM3とポートPT3は導通している。
【0067】
この状態で、油圧アクチュエータを駆動すべく操作圧信号XがポートPT2に与えられると、油室RM3からポートPT3を介して吐出流量調整機構26の油室26aへ操作圧信号Xに対応する圧力Pmが与えられ、斜板24が傾転して可変容量型ポンプ22は吐出口から圧油を吐出する。このときの吐出流量Qacにより切換制御弁20内で差圧ΔPが生じる。この差圧によりポートPT5へは吐出圧力Pdが与えられ、ポートPT1へは圧力Psが与えられる。操作圧信号Xが徐々に増加されて流量Qacが増加するにつれ差圧ΔPも増大する。圧力Pdの値が圧力Psとばね28bの弾発力の加算値より大きくなると、スプール28aは左方へ移動し、その結果、ポートPT3と油室RM4とが導通するので、直ちに油室26aの圧力が降下して可変容量型ポンプ22の吐出流量を減少させるので、差圧ΔPが小さくなり、スプール28aは右方へ戻り油室RM4とポートPT3は遮断される。
【0068】
このようにして、ある操作圧信号Xが与えられると、ポートPT1とPT5での差圧(pd−Ps)とばね28bのばね力とがバランスするようにスプール28aの位置が保持される。すなわち、差圧ΔPがばね28bの弾発力と等しくなるようにスプール位置が制御される。
【0069】
次に、予めf0以外の特定の関数fiが選択されており、操作圧信号Xの関数変換された外部信号Zが油室RM5へ供給される場合について説明する。
【0070】
説明を簡単にするため、今、図3Aに示す状態で操作圧信号Xが与えられ油圧アクチュエータが駆動中であり、スプール28aが前述したように、バランスした位置にあるとする。
【0071】
その場合、油室RM5に関数fiに基づきある大きさの外部信号圧力Zが与えられているとその圧力Zはスプール28aの右端面に作用しているのでばね28bの弾発力を弱めるよう作用しており、したがって、操作圧信号XがさらにΔX増加された場合、それによるポンプ22の流量増加で圧力PdもΔPdだけ増加するよう変化して新たにバランス状態に到るまでに要する時間は、スプール28aに対しΔPdに前記圧力Zが加算された力が作用するので圧力Zが与えられていない場合と比べ短時間となる。このことは、操作圧信号Xの変化に対し応答性が速くなることを意味し、見かけ上、ばね28bのばね定数を小さくしたことに対応している。
【0072】
すなわち、上記関数f0の場合のように、切換制御弁内を通過する吐出流量Qacが過大となった時の差圧の増大化を利用してスプール28aを左方へ移動させ、それによりポートPT3とPT4をタンクラインに連通させ油室26aの圧力が減少することで差圧を所定の範囲に保持する場合において、さらに関数fiによる外部信号Zでスプール28aを右方から押圧しているときは、等価的には、切換制御弁内のスプールの開口特性を見かけ上変化させたこととなり、しかもその変化の様子を操作圧信号Xの指令範囲で圧力Zを可変とすることで任意に設定可能とするものである。
【0073】
図4Bは、図4Aにおいてスプール28aの左端側に外部信号Zを作用させるようにした例である。
【0074】
次に、図4B、図6Bを参照して作用を説明する。今、予めf0以外の特定の関数fiが選択されており、操作圧信号Xの関数変換された外部信号Zが油室RM5へ供給される場合について説明する。
【0075】
説明を簡単にするため、今、図3Aに示す状態で操作指令圧力Xが与えられ油圧アクチュエータが駆動中であり、スプール28aが前述したように、バランスした位置にあるとする。
【0076】
その場合、油室RM5に関数fiに基づきある大きさの外部信号圧力Zが与えられているとその圧力Zはスプール28aの左端面に作用しているのでばね28bの弾発力を増大するよう作用しており、したがって、操作圧信号XがさらにΔX増加指令された場合、それによるポンプ22の流量増加で圧力PdもΔPdだけ増加するよう変化して新たにバランス状態に到る経過は、スプール28aに対しΔPdに前記圧力Zが加算された力が作用するので圧力Zが与えられていない場合と比べ、その間での負荷変動に伴うスプール28aのバランス位置の変化を抑制しつつ、操作圧信号Xに対しより忠実にバランス位置へ到達させることができる。このことは、見かけ上、ばね28bのばね定数を大きくしたことに対応し、操作圧信号Xの変化に対し安定した応答性が得られることを意味している。
【0077】
すなわち、上記関数f0の場合のように、切換制御弁内を通過する吐出流量Qacが過大となった時の差圧の増大化を利用してスプール28aを左方へ移動させ、それによりポートPT3とPT4をタンクラインに連通させ油室26aの圧力が減少することで差圧を所定の範囲に保持する場合において、さらに関数fiによる外部信号Zでスプール28aを左方から押圧しているときは、等価的には、切換制御弁内のスプールの開口特性を見かけ上、増大するよう変化させたこととなり、しかもその変化の様子は操作圧信号Xの指令範囲で圧力Zを可変とすることで任意に設定可能とするものである。
【0078】
図6Bは、こうした作用を説明するグラフである。同図において、横軸Stは切換制御弁20の操作量(スプールストローク量)、縦軸Qは切換制御弁20の流量(開口特性)を示す。q1は外部信号Zを与えない場合で、メータイン側の差圧ΔPが一定となる流量特性を示し、q2は、ポンプへのリモートパイロット圧指令で定まる流量特性すなわち、可変容量ポンプ22自体の流量特性であり、q3は、差圧ΔPを増大させたときのメータイン側の差圧ΔPが一定となるような流量特性を示す。ここで前記特性q3は理論上の特性を示すが、実際に流れる流量はポンプ22の最大吐出流量に対応する特性q2を超えることはない。すなわち、例えば、操作量Stjにおける特性q1上の値Qaに対し、外部信号Zを与え、特性q3上の値Qcとすると、その時の実際の流量はQcとなる。このことは、特性q3で示すように、特性q2よりも大きくなるように外部信号Zを与えると、実際に流れる流量はQbすなわち、操作量Stjに対応するポンプ22の最大流量となり、流量QaからQbへ到達するまでの経過において、負荷等の変動によりスプール28aの位置が影響されることなく安定して到達する。
【0079】
なお、図6Bにおいて、参照符号St1、St2は中間操作の範囲を示す。一般に、この範囲では、オペレータは運転操作中の油圧アクチュエータに対する操作時の違和感を多く感じるため、安定的な、操作指令に忠実な油圧アクチュエータの駆動が求められているところである。
【0080】
図4Cは、図3Bにおける演算部200と電磁可変減圧弁300を図4Bに示す差圧調整手段28の構造とした場合である。この場合の差圧調整手段28の作用については前述した図4Bで説明したので省略する。
【0081】
以上、本発明の好適な実施例について図面を参照して説明したが、当業者であれば、これら開示例に基づき種々変形をすることができる。例えば、信号Einは高圧選択手段30からの操作圧信号Xを用いているが、必ずしもこれに限るものではなく、建設機械の操作中、オペレータが高圧選択手段とは別に設けられた電気信号発生装置を操作して信号Einを形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明が適用される油圧ショベル全体の概略構成を示す図である。
【図2】本発明のコンセプトを説明するブロック図である。
【図3A】図2に示したコンセプトを可変容量型ポンプのポジコン制御系に適用した電気・油圧回路の模式図である。
【図3B】外部信号生成部として、関数発生手段と、振動抑制信号発生部とを備えた場合の電気・油圧回路の模式図である。
【図3C】図3A、3Bにおける演算部の詳細説明図である。
【図4A】図3A中の差圧調整手段を機能的に等価な単一の弁体構造からなる油圧回路で構成した例を示す図である。
【図4B】図4Aにおいてスプール左端側に外部信号を作用させるようにした油圧回路で構成した例を示す図である。
【図4C】外部信号生成部として、関数発生手段と、振動抑制信号発生部とを備えた場合の油圧回路の模式図である。
【図5】振動抑制信号発生部を説明する図である。
【図6A】外部信号生成部の一例として関数発生手段の詳細を説明するグラフである。
【図6B】切換制御弁の流量特性を説明するためのグラフである。
【図7】従来の一般的な可変容量型ポンプのポジコン制御の油圧回路図である。
【図8】従来の一般的な可変容量型ポンプのネガコン制御の油圧回路図である。
【図9】従来の一般的な可変容量型ポンプのロードセンシング制御の油圧回路図である。
【図10】従来の可変容量型ポンプの吐出流量を吐出容量調整部により制御する方式の概念図である。
【図11】オペレータが油圧アクチュエータを操作する際に感じる違和感の存在を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0083】
6 旋回台
8 キャブ
10 油圧アクチュエータ
14 オペレータ操作指令部
20 切換制御弁
22 可変容量型ポンプ
24 斜板
26 吐出流量調整機構(斜板角度調整機構)
26a 油室
26b ばね
28 差圧調整手段
28a スプール
28b ばね
28c ストッパ
30 高圧選択手段
32A 外部信号生成部
32a 油電変換部
32b 電油変換部
34 押しボタン
100 振動抑制信号発生部
100a 振動検知部
100b 固有振動発生の判定部
100c 位相反転波形生成部
102 加算部
200 演算部
300 電磁可変減圧弁
D1、D2、D3 径大部
H 開口
L1、L2、L3 ライン
Pd 吐出圧力
Ps 最大検出負荷圧力
PT1、PT2、PT3、PT4、PT5 ポート
RM1、RM2、RM3、RM4、RM5 油室
S1、S2、S3 センサ
SG1 第1の外部信号
SG2 第2の外部信号
X 操作圧信号
Z 外部信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出流量調整機構を備えた可変容量型ポンプの吐出流量が、操作弁から与えられる操作圧信号(X)に基づいて生成される前記吐出流量調整機構への流量調整信号(Pm)に応じて制御されるとともに、油圧アクチュエータ圧力を検出し、切換制御弁のメータイン側ポンプ圧力と油圧アクチュエータ圧力との差圧が予め定めた所定値(α)以下に維持されるよう前記流量調整信号(Pm)を調整する差圧調整手段を有する建設機械の油圧制御装置において、
前記差圧調整手段は、
前記油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される電気的外部信号(E(Z))ならびに、前記切換制御弁のメータイン側ポンプ圧力(Pd)および油圧アクチュエータ圧力(Ps)のそれぞれ油電変換された信号から演算形成される電気制御信号(iSG)を供給する演算部と、
前記操作圧信号(X)を一次圧とし前記流量調整信号(Pm)を二次圧とし、前記演算部からの電気制御信号(iSG)により減圧制御を行う電磁可変減圧弁と、
からなることを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項2】
前記電気的外部信号(E(Z))は、前記操作弁の操作量に応じて与えられる操作圧信号(X)の油電変換された電気信号(Ein)の関数値として与える関数発生手段により生成される第1外部信号(SG1)であることを特徴とする請求項1に記載された建設機械の油圧制御装置。
【請求項3】
前記電気的外部信号(E(Z))は、前記油圧アクチュエータの操作状況に応じて発生する建設機械構造物の振動を抑制する位相波形を有する第2外部信号(SG2)であることを特徴とする請求項1に記載された建設機械の油圧制御装置。
【請求項4】
前記電気的外部信号(E(Z))は、前記操作弁の操作量に応じて与えられる操作圧信号(X)の油電変換された電気信号(Ein)の関数値として与える関数発生手段により生成される第1外部信号(SG1)と前記油圧アクチュエータの操作状況に応じて発生する建設機械構造物の振動を抑制する位相波形を有する第2外部信号(SG2)とを加算した信号であることを特徴とする請求項1に記載された建設機械の油圧制御装置。
【請求項5】
前記演算部において、前記油圧制御装置の制御系の応答性を良好にするか、または安定性を良好にするかに応じて、前記電気的外部信号(E(Z))の符号を前記メータイン側ポンプ圧力に対応する電気信号(E(Pd))と同符号、または逆符号に指定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載された建設機械の油圧制御装置。
【請求項6】
前記演算部において、前記メータイン側ポンプ圧力と油圧アクチュエータ圧力との差圧が所定値(α)を越えた場合には前記差圧として所定値(α)と定義することを特徴とする請求項5に記載された建設機械の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−108987(P2009−108987A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284621(P2007−284621)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】