説明

建設機械の油圧制御装置

【課題】建設機械に装設した作業機の応答性を選択可能とするとともに各作業の応答性を更に調整可能とし、緩やかな動きが求められる掘削作業と機敏な動きが求められる土羽打ち等の作業とを選択的に実行できる建設機械の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】建設機械の油圧制御装置において、ショックレス弁と制御弁のパイロット操作部との間のパイロット二次圧油路にそれぞれ設けたバイパス油路と、各バイパス油路における制御弁のパイロット操作部側とパイロット二次圧油路との連結部にそれぞれ設けられ、各パイロット二次圧油路を前記バイパス油路にそれぞれ切換える電磁弁と、各バイパス油路間のパイロット二次圧油路に設けられ、パイロット二次圧油路を排油路にそれぞれ切換える方向制御弁と、電磁弁を外部信号により、切換える制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機を装設した建設機械の油圧制御装置に係り、更に詳しくは、建設機械に装設した作業機の応答性を変更可能とし、掘削作業のような滑らかかつ緩やかな動きと、土羽打ち作業のような機敏な動きのいずれにも対応可能とする建設機械の油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械においては、例えば、掘削バケットを有する多関節構造の作業機(フロント)を滑らかかつ緩やかに動作可能とする油圧回路が望まれている。作業機を滑らかかつ緩やかに動作させるためには、操作レバーによって操作されるパイロット操作弁からのパイロット圧油を制御弁のパイロット操作部に供給するパイロット回路に、ショックレス弁を設ける場合がある。この結果、操作レバーを急に動作させた場合や、急に停止させた場合であっても、作業機は滑らかに作動、又は停止するので、建設機械の本体に与える衝撃が軽減し、建設機械の運転室内における操作者の乗り心地は良好となる。
【0003】
しかし、上述したように、パイロット回路にショックレス弁を設けた場合、作業機の先端に設けた掘削バケットによる通常の掘削作業時には、作業機が滑らかかつ緩やかに動作するが、掘削バケットの背面で地面を突き固める作業(土羽打ち作業)や、スケルトン形式のバケットによってバケット内の土砂を篩い分けする篩作業等の機敏性を必要とする作業においては、操作レバーの入力に対して、作業機の応答が遅れるため、操作者の意図する作業を行うことが難しく、良好な作業効率が望めないということが指摘されていた。
【0004】
この点を改善するために、制御弁の一方側のパイロット操作部にパイロット圧油を供給した場合に、制御弁の他方側のパイロット操作部に作用しているパイロット圧油を素早く作動油タンクに戻すことにより、作業機を機敏に作動させ、その応答性を向上させているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−343925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油圧ショベル等の建設機械においては、特に建設機械の容量、及び建設機械の稼動時間が土木事業の計画性、生産性に関連するので、一般に、建設機械の使用者の多くは、建設機械が、連続して長時間稼働できることと共に、多種多様な作業をこなせることを望む。
【0007】
例えば、掘削作業のように、建設機械に装設した掘削バケットを有する多関節構造の作業機(フロント)を緩やかに動かすような作業や、土羽打ち、篩作業等のように、作業機を機敏に作動させるような作業が、一つの建設機械によって、共に効率良く実行できることが望まれている。
【0008】
そこで、通常の掘削作業のように作業機を緩やかに作動させる作業と、土羽打ち、篩作業等のような作業機を機敏に作動させる作業のいずれかに合致した作業機の応答性を選択可能とし、各作業の応答性を更に調整可能とすれば、建設機械による土木事業の計画性、生産性が更に向上する。
【0009】
しかしながら、現段階において、上記観点からの油圧回路の改善施工の例は、多くなされていない。
【0010】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的とするところは、建設機械に装設した作業機の応答性を選択可能とするとともに各作業の応答性を更に調整可能とし、緩やかな動きが求められる掘削作業と機敏な動きが求められる土羽打ち等の作業とを選択的に実行できる建設機械の油圧制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、建設機械の作業機を駆動操作するシリンダと、前記シリンダに圧油を供給する主油圧ポンプと、前記主油圧ポンプからの圧油を前記シリンダに切換え供給する制御弁と、前記制御弁を切換え操作する操作レバーと、前記操作レバーにより操作されるパイロット弁と、前記パイロット弁にパイロット一次圧油を供給する補助油圧ポンプと、前記パイロット弁からのパイロット二次圧油を前記制御弁のパイロット操作部にそれぞれ供給するパイロット二次圧油路と、前記パイロット二次圧油路にそれぞれ設けたショックレス弁とを備えた建設機械の油圧制御装置において、前記ショックレス弁と前記制御弁のパイロット操作部との間の前記パイロット二次圧油路にそれぞれ設けたバイパス油路と、前記各バイパス油路における前記制御弁のパイロット操作部側と前記パイロット二次圧油路との連結部にそれぞれ設けられ、前記各パイロット二次圧油路を前記バイパス油路にそれぞれ切換える電磁弁と、前記各バイパス油路間の前記パイロット二次圧油路に設けられ、前記パイロット二次圧油路を排油路にそれぞれ切換える方向制御弁と、前記電磁弁を外部信号により、切換える制御手段とを備えたものとする。
【0012】
(2)上記(1)において。好ましくは、前記電磁弁は、3ポート2位置形の電磁弁であり、前記方向制御弁は、パイロット操作形で、3ポート2位置形の方向制御弁であるものとする。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記制御手段は、作業機を緩やかに制御する外部指令を取込み、前記各電磁弁に前記パイロット二次圧油路を前記バイパス油路に連結するような切換え信号を出力し、作業機を機敏に制御する外部指令を取込み、前記各電磁弁に前記パイロット二次圧油路と前記バイパス油路との連結を閉じ、前記パイロット二次圧油路を連通状態とするような切換え信号を出力するとともに、前記主油圧ポンプの斜板調整器にポンプ流量調整用の信号を出力するものとする。
【0014】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記制御手段は、前記パイロット二次圧油路の圧力を検出する圧力検出手段と、前記パイロット二次圧油路に対する前記主油圧ポンプ流量の特性信号を記憶した記憶部とを備え、前記圧力検出手段から入力された検出値から、前記記憶部に記憶された前記主油圧ポンプ流量を算出し、この算出値を前記主油圧ポンプの斜板調整器にポンプ流量調整用の信号として出力するものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、建設機械に装設した作業機の応答性を選択可能とし、各作業における応答性を更に調整することができるので、緩やかな動きが求められる掘削作業と土羽打ち等の機敏な作業とを選択的に実行でき、建設機械の機能性が向上する。この結果、建設機械による土木事業の計画性、生産性が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態を備えた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図3】図2に示す本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態を構成する制御装置の構成を示す図である。
【図4】図2に示す本発明の建設機械の油圧制御装置に用いるパイロット圧とポンプ流量との関係を示す特性図である。
【図5】本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態の通常動作を説明する説明図である。
【図6】本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態の機敏動作を説明する説明図である。
【図7】本発明の建設機械の油圧制御装置の他の形態に用いるパイロット圧とポンプ流量との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の建設機械の油圧制御装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1乃至図4は本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態を示すもので、図1は本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態を備えた油圧ショベルを示す側面図、図2は本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態を示す構成図、図3は図2に示す本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態を構成する制御装置の構成を示す図、図4は図2に示す本発明の建設機械の油圧制御装置に用いるパイロット圧とポンプ流量との関係を示す特性図である。
【0018】
図1において、建設機械の作業機1は、建設機械の本体2の前部に装着されている。作業機1は、建設機械の本体2の前部に俯仰動可能に設けたブーム3と、ブーム3の先端に回動可能に設けたアーム4と、アーム4の先端に回動可能に設けた掘削バケット5とを備えている。ブーム3、アーム4及び掘削バケット5は、ブームシリンダ6、アームシリンダ7及びバケットシリンダ8によりそれぞれ操作される。
【0019】
図2に示す実施の形態においては、ブーム3を操作するブームシリンダ6の油圧制御装置9のみを示してある。油圧制御装置9は、油圧源装置として可変容量形の主油圧ポンプ10と、パイロット圧油を供給する補助油圧ポンプ11と、作動油タンク12とを備えている。可変容量形の主油圧ポンプ10は、吐出量を調整するための斜板角調整器13を備えている。
【0020】
主油圧ポンプ10とブームシリンダ6とを連結する油圧回路には、センタバイパス形の制御弁14が設けられている。制御弁14は、そのパイロット操作部14aへのパイロット圧油の供給により、中立位置イからロ位置に切換えられて、主油圧ポンプ10からの圧油をブームシリンダ6のピストンロッド側の油室6Aに供給するとともに、ブームシリンダ6の基部側の油室6B内の圧油を作動油タンク12に排出して、ブームシリンダ6のピストンロッドを縮小操作する。また、そのパイロット操作部14bへのパイロット圧油の供給により、中立位置イからハ位置に切り換えられて、主油圧ポンプ10からの圧油をブームシリンダ6の基部側の油室6Bに供給するとともに、ブームシリンダ6のピストンロッド側の油室6A内の圧油を作動油タンク12に排出して、ブームシリンダ6のピストンロッドを伸長操作する。
【0021】
制御弁14は、操作レバー15の傾動によって切換え操作される。操作レバー15には、パイロット弁15Aとパイロット弁15Bとが設けられている。パイロット弁15Aは、操作レバー15の矢印A方向の傾動操作により、補助油圧ポンプ11、パイロット一次側油路16を通して供給されるパイロット一次圧油を、パイロット二次側油路17を通して制御弁14のパイロット操作部14aに供給する。また、パイロット弁15Bは、操作レバー15の矢印B方向の傾動操作により、補助油圧ポンプ11、パイロット一次側油路16を通して供給されるパイロット一次圧油を、パイロット二次側油路18を通して制御弁14のパイロット操作部14bに供給する。
【0022】
パイロット弁15A側のパイロット二次側油路17には、逆止弁19aと、この逆止弁19aに並設された絞り19bと、この絞り19bに直列して設けた切換弁19cとからなるショックレス弁19が設けられている。また、パイロット弁15B側のパイロット二次側油路18にも同様に、逆止弁20aと、この逆止弁20aに並設された絞り20bと、この絞り20bに直列して設けた切換弁20cとからなるショックレス弁20が設けられている。
【0023】
また、ショックレス弁19と制御弁14のパイロット操作部14aとの間には、バイパス油路21が設けられている。同様に、ショックレス弁20と制御弁14のパイロット操作部14bとの間には、バイパス油路22が設けられている。
【0024】
更に、バイパス油路21と並列するパイロット弁15A側のパイロット二次側油路17には、パイロット弁15A側のパイロット二次側油路17を作動油タンク12に接続する排油路23が、また、バイパス油路22と並列する及びパイロット弁15B側のパイロット二次側油路18には、パイロット弁15B側のパイロット二次側油路18を作動油タンク12に接続する排油路24がそれぞれ設けられている。
【0025】
排油路23と、バイパス油路21と並列するパイロット弁15A側のパイロット二次側油路17には、パイロット弁15A側のパイロット二次側油路17をショックレス弁19側のパイロット二次側油路17、又は排油路23に切換えるためのパイロット操作形の3ポート2位置の方向切換弁25が設けられている。また、排油路24と、バイパス油路22と並列するパイロット弁15B側のパイロット二次側油路18とには、パイロット弁15b側のパイロット二次側油路18をショックレス弁20側のパイロット二次側油路18、又は排油路24に切換えるためのパイロット操作形の3ポート2位置の方向切換弁26が設けられている。
【0026】
方向切換弁25及び方向切換弁26は、常時、ばねによってパイロット弁15A側のパイロット二次側油路17を排油路23に、またパイロット弁15B側のパイロット二次側油路18を排油路24にそれぞれ接続するように、位置している。
【0027】
バイパス油路21におけるパイロット弁15A側とパイロット弁15A側のパイロット二次側油路17との連結部には、制御弁14のパイロット操作部14a側のパイロット二次側油路17を、パイロット弁15A側のパイロット二次側油路17又はバイパス油路21に切換える電磁操作形の3ポート2位置の電磁弁27が設けられている。また、バイパス油路22におけるパイロット弁15B側とパイロット弁15B側のパイロット二次側油路18との連結部には、制御弁14のパイロット操作部14b側のパイロット二次側油路18を、パイロット弁15B側のパイロット二次側油路18又はバイパス油路22に切換える電磁操作形の3ポート2位置の電磁弁28が設けられている。
【0028】
電磁弁27及び電磁弁28は、常時、ばねによって制御弁14のパイロット操作部14a側のパイロット二次側油路17とバイパス油路21とを連通状態に、また制御弁14のパイロット操作部14b側のパイロット二次側油路18とバイパス油路22とを連通状態にそれぞれ接続するように、位置している。
【0029】
パイロット弁15A,15B側のパイロット二次側油路17,18には、パイロット操作圧を検出する圧力センサ29,30がそれぞれ設けられている。圧力センサ29,30は、検出したパイロット操作圧を制御手段31に出力するように、制御手段31に接続されている。制御手段31には、作業機を通常の掘削作業等の緩やかな作業、又は土羽打ち等の機敏な作業として実行するように選択するための作業選択スイッチ32が接続されている。作業選択スイッチ32は、実線で示す位置では、通常の掘削作業等の緩やかな作業を選択する指令を制御手段31に出力し、2点鎖線示す位置では、土羽打ち等の機敏な作業を選択する指令を制御手段31に出力する。また、上記作業選択スイッチ32において、機敏な作業が選択された場合には、さらに、各種応答性の選択が可能となる調整器33が制御手段31に接続されている。
【0030】
制御手段31は、コンピュータで構成され、演算を行う演算部31aと、記憶部として各種処理(プログラム)を保存する読み込み専用のメモリ(ROM)31bと、演算結果等を保存するランダムアクセスメモリ(RAM)31cと、センサ入力や通信を行う入力インターフェース31dと、演算部31aの演算結果に基づいて電磁弁27,電磁弁28へのオン、オフ信号、及び主油圧ポンプ10の斜板角調整器13への操作信号を出力する出力インターフェース31eとを有している。
【0031】
制御手段31のROM31bは、図4に示すパイロット圧Pに対するポンプ流量Lの特性A,Bを記憶している。特性Aは、前述した通常の掘削作業等の緩やかな作業が選択された場合におけるパイロット圧Pに対するポンプ流量Lの特性を示し、特性Bは、前述した土羽打ち等の機敏な作業を選択された場合におけるパイロット圧Pに対するポンプ流量Lの特性を示している。
【0032】
次に、上述した本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態の動作を図2乃至図7を用いて説明する。図5は本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態の通常動作を説明する説明図、図6は本発明の建設機械の油圧制御装置の一実施の形態の機敏動作を説明する説明図、図7は本発明の建設機械の油圧制御装置に用いるパイロット圧とポンプ流量との関係を示す他の特性図である。なお、図5乃至図7において、図1乃至図4に示す符合と同符号のものは同一又は相当する部材であるのでその部分の説明を省略する。
【0033】
作業機1に通常の掘削作業等のような緩やかな作業を実行させる場合、図5に示すように、まず、作業選択スイッチ32を実線で示す位置に操作する。これにより、作業選択スイッチ32からは、通常の掘削作業等のような緩やかな作業を実行させるための信号が、制御手段31に出力される。制御手段31は、上記の信号の入力により、電磁弁27,電磁弁28への励磁信号を遮断し、電磁弁27,電磁弁28の駆動を防止する。これにより、電磁弁27は図2に示すパイロット弁15A側のパイロット二次側油路17とバイパス油路21との連通状態を保持する。同様に、電磁弁28はパイロット弁15B側のパイロット二次側油路18とバイパス油路22との連通状態を保持する。
【0034】
また、制御手段31は、上記の作業選択スイッチ32の操作指令に基づいて、ROM31b内に記憶されている、図4に示すパイロット圧Pに対するポンプ流量Lの特性Aを選択する。
【0035】
この状態において、例えば、操作レバー15を矢印A方向に傾動すると、図5の矢印に示すように、補助油圧ポンプ11からのパイロット圧油がパイロット弁15A、ショックレス弁19の逆止弁19a、バイパス油路21、電磁弁27及びパイロット二次側油路17を通して、制御弁14のパイロット操作部14aに供給される。一方、制御弁14のパイロット操作部14bは、パイロット二次側油路18、電磁弁28、バイパス油路22、ショックレス弁20の絞り弁20b、パイロット弁15Bを通して作動油タンク12に連通するので、制御弁14のパイロット操作部14bの戻りパイロット圧油は、ショックレス弁20の絞り弁20bにより、絞られる。
【0036】
これにより、制御弁14は中立位置イからロ位置への切換えが緩やかに行われるので、主油圧ポンプ10からの圧油は、ブームシリンダ6のピストンロッド側の油室6Aに緩やかに流入する。この結果、ブームシリンダ6のピストンロッドは、緩やかに、且つ滑らかに縮小する。また、操作レバー15を矢印B方向に傾動させれば、上述した動作とは逆に、ブームシリンダ6のピストンロッドは、緩やかに、且つ滑らかに伸長する。
【0037】
なお、上述の通常の掘削作業等のような緩やかな作業の際、制御手段31は、圧力センサ29又は30からのパイロット圧検出信号と図4に示す特性Aとに基づいて、パイロット圧に対応したポンプ流量が得られるように、主油圧ポンプ10の斜板角調整器13を操作制御するので、その緩やかな作業の応答性が向上する。つまり、パイロット圧Pの上昇に対して、ポンプ流量Lを緩やかに上昇させているため、作業機の応答性も緩やかな上昇が図れる。
【0038】
次に、作業機1に土羽打ち等の機敏な作業を実行させる場合、図6に示すように、まず、作業選択スイッチ32を2点鎖線で示す位置に操作する。これにより、作業選択スイッチ32からは、土羽打ち等の機敏な作業を実行させるための信号が、制御手段31に出力される。制御手段31は、上記の信号の入力により、電磁弁27,電磁弁28に励磁信号を出力し、電磁弁27,電磁弁28を駆動する。これにより、電磁弁27は図5に示すパイロット弁15A側のパイロット二次側油路17とバイパス油路21とが連通している状態から、図6に示すパイロット二次側油路17の制御弁14のパイロット操作部14a側とパイロット弁15A側が連通する状態に切換える。同様に、電磁弁28はパイロット弁15B側のパイロット二次側油路18とバイパス油路22とが連通している状態から、パイロット二次側油路18の制御弁14のパイロット操作部14b側とパイロット弁15B側が連通する状態に切換える。
【0039】
また、制御手段31は、上記の作業選択スイッチ32の操作指令に基づいて、ROM31b内に記憶されている、図4に示すパイロット圧Pに対するポンプ流量Lの特性Bを選択する。
【0040】
この状態において、例えば、操作レバー15を矢印A方向に傾動すると、図6の矢印に示すように、補助油圧ポンプ11からのパイロット圧油がパイロット弁15A、ショックレス弁19の逆止弁19a、方向切換弁25、電磁弁27、及びパイロット二次側油路17を通して、制御弁14のパイロット操作部14aに供給される。
【0041】
この際、方向切換弁25は、ショックレス弁19からのパイロット圧油により、ばねに抗してパイロット二次側油路17を連通する位置(図2の上側の位置)に切換えられ、また、方向切換弁26は、パイロット圧油が低圧となるので、ばねによりパイロット二次側油路18を排油路24に連通する位置(図2の下側の位置)に切換えられる。
【0042】
これにより、制御弁14のパイロット操作部14b内の背圧が低下するので、制御弁14は中立位置イからロ位置への切換えが速やかに行われる。この結果、主油圧ポンプ10からの圧油は、ブームシリンダ6のピストンロッド側の油室6Aに速やかに流入するので、ブームシリンダ6のピストンロッドは、素早く縮小する。また、操作レバー15を矢印B方向に傾動させれば、上述した動作とは逆に、ブームシリンダ6のピストンロッドは、素早く伸長する。
【0043】
なお、上述の機敏な作業の際、制御手段31は、圧力センサ29又は30からのパイロット圧検出信号と図4に示す特性Bとに基づいて、パイロット圧に対応したポンプ流量が得られるように、主油圧ポンプ10の斜板角調整器13を操作制御するので、ブームシリンダ6の伸縮動作を早くすることができ、その機敏な作業の応答性が向上する。つまり、パイロット圧Pの上昇に対して、ポンプ流量Lを急峻に上昇させているため、作業機の応答性が向上し、より機敏な動作が可能となる。
【0044】
上述した本発明の実施の形態によれば、作業機の緩やかな動きが求められる通常の掘削作業と、作業機の機敏な応答が求められる土羽打ち等の作業とを、応答性を向上させた状態で選択することができるので、建設機械の機能性が更に向上する。その結果、建設機械による土木事業の計画性、生産性が更に向上する。
【0045】
また、作業機の応答性を優先させる場合に、制御弁のパイロット操作部の一方側を作動油タンク側に常に開放させているので、制御弁のスプールが機敏に動作する。
【0046】
更に、主油圧ポンプのポンプ流量を上述した作業に対応して制御可能にしたので、油圧回路だけでは限界があった応答性を更に向上させることができる。
【0047】
なお、上述の実施の形態においては、ブームシリンダに適用した例を示したが、アームシリンダ7及びバケットシリンダ8にも、適用することができる。
【0048】
次に、本発明の建設機械の油圧制御装置の他の実施の形態を図7を用いて説明する。図7は、本発明の建設機械の油圧制御装置の他の形態に用いるパイロット圧とポンプ流量との関係を示す特性図である。なお、以下の説明において、上述した本発明の一実施の形態と同じ構成要素には同一の符合を付し、その部分の説明を省略する。
【0049】
この実施の形態は、上述した機敏な作業が選択された場合に、パイロット圧Pとポンプ流量Lの特性を変更可能とする調整器33を設け、作業機の応答性を操作者の感覚に適合させ得るように構成したものである。
【0050】
具体的には、制御手段31のROM31bに、上述した特性A,Bの他に図7に示すパイロット圧Pに対するポンプ流量Lの特性a〜lが記憶されている。図7(a)に示す特性は、いわゆる操作レバーと作業機とのタイムラグ特性に相当するものである。ポンプ流量Pが上昇開始するパイロット圧Pの値を可変設定とすることにより、操作レバーの操作量に対する作業機の応答性の上昇開始点を調整可能としている。この結果、操作者個々の操作感覚に作業器の応答性を適合させ得る。また、図7(b)に示す特性は、いわゆる操作レバーと作業機との応答性のゲイン特性に相当するものである。ポンプ流量Pのパイロット圧Pに対する上昇勾配を可変設定とすることにより、操作レバーの操作量に対する作業機の応答性の上昇感度を調整可能としている。この結果、操作者個々の操作感覚に作業器の応答性を適合させ得る。これらの特性の選択は、上述した機敏な作業のモードが選択された後、調整器33の操作により選択されるものである。
【0051】
この実施の形態によれば、上述した実施の形態と同様に、作業機の機敏な応答が求められる土羽打ち等の作業を、より応答性を向上させた状態で選択することができるので、建設機械の機能性が更に向上する。
【0052】
また、操作者それぞれの感覚に適合した作業機の応答性が選択できるので、土羽打ち等の機敏な作業に対しても、操作者の負担の軽減が可能となり、生産性が向上する。
【符号の説明】
【0053】
1 作業機
2 建設機械本体
3 ブーム
4 アーム
5 掘削バケット
6 ブームシリンダ
7 アームシリンダ
8 バケットシリンダ
9 油圧制御装置
10 主油圧ポンプ
11 補助油圧ポンプ
12 作動油タンク
13 斜板角調整器
14 制御弁
15 操作レバー
16 パイロット一次側油路
17,18 パイロット二次側油路
19,20 ショックレス弁
21,22 バイパス油路
23,24 排油路
25,26 方向切替弁
27,28 電磁弁
29,30 圧力センサ
31 制御手段
32 作業選択スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の作業機を駆動操作するシリンダと、前記シリンダに圧油を供給する主油圧ポンプと、前記主油圧ポンプからの圧油を前記シリンダに切換え供給する制御弁と、前記制御弁を切換え操作する操作レバーと、前記操作レバーにより操作されるパイロット弁と、前記パイロット弁にパイロット一次圧油を供給する補助油圧ポンプと、前記パイロット弁からのパイロット二次圧油を前記制御弁のパイロット操作部にそれぞれ供給するパイロット二次圧油路と、前記パイロット二次圧油路にそれぞれ設けたショックレス弁とを備えた建設機械の油圧制御装置において、
前記ショックレス弁と前記制御弁のパイロット操作部との間の前記パイロット二次圧油路にそれぞれ設けたバイパス油路と、
前記各バイパス油路における前記制御弁のパイロット操作部側と前記パイロット二次圧油路との連結部にそれぞれ設けられ、前記各パイロット二次圧油路を前記バイパス油路にそれぞれ切換える電磁弁と、
前記各バイパス油路間の前記パイロット二次圧油路に設けられ、前記パイロット二次圧油路を排油路にそれぞれ切換える方向制御弁と、
前記電磁弁を外部信号により、切換える制御手段とを備えた
ことを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の油圧制御装置において、
前記電磁弁は、3ポート2位置形の電磁弁であり、前記方向制御弁は、パイロット操作形で、3ポート2位置形の方向制御弁である
ことを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械の油圧制御装置において、
前記制御手段は、
作業機を緩やかに制御する外部指令を取込み、前記各電磁弁に前記パイロット二次圧油路を前記バイパス油路に連結するような切換え信号を出力し、作業機を機敏に制御する外部指令を取込み、前記各電磁弁に前記パイロット二次圧油路と前記バイパス油路との連結を閉じ、前記パイロット二次圧油路を連通状態とするような切換え信号を出力するとともに、前記主油圧ポンプの斜板調整器にポンプ流量調整用の信号を出力する
ことを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械の油圧制御装置において、
前記制御手段は、
前記パイロット二次圧油路の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記パイロット二次圧油路に対する前記主油圧ポンプ流量の特性信号を記憶した記憶部とを備え、
前記圧力検出手段から入力された検出値から、前記記憶部に記憶された前記主油圧ポンプ流量を算出し、この算出値を前記主油圧ポンプの斜板調整器にポンプ流量調整用の信号として出力する
ことを特徴とする建設機械の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−190368(P2010−190368A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37148(P2009−37148)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】