説明

建設機械の油圧駆動装置

【課題】走行以外のアクチュエータ動作では、従来通り、必要な最大流量を供給して必要なアクチュエータ速度を得ることができるとともに、走行時はエネルギーのロスを低減し、エネルギ効率の向上を可能とする建設機械の油圧駆動装置を提供する。
【解決手段】走行検出回路33と減トルク制御ピストン35と減トルク制御解除切替弁36を設け、走行時は走行検出回路33の第1パイロット油路32に制御パイロット圧が発生し、減トルク制御ピストン35に駆動圧力が作用して減トルク制御が行われる。これにより油圧ポンプの吐出流量が減少し油圧ポンプのサチュレーション状態が発生し、圧力補償弁の目標補償差圧が低下して流量制御弁の前後差圧も低下し、流量制御弁の内部圧損が低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の走行モータを備えた建設機械の油圧駆動装置に係わり、特に、油圧式ミニショベルの走行時のエネルギ効率を向上することができる建設機械の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプ(メインポンプ)の吐出圧が複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるよう油圧ポンプの吐出流量を制御する油圧駆動装置はロードセンシングシステムと呼ばれている。このロードセンシングシステムでは、複数の流量制御弁の前後差圧をそれぞれ圧力補償弁により所定差圧に保持し、複数のアクチュエータを同時に駆動する複合操作時に負荷圧の大小に係わらず流量制御弁の開口面積に応じた比率で圧油を供給できるようにしている。
【0003】
このようなロードセンシングシステムでは、油圧ポンプの吐出圧と複数のアクチュエータの最高負荷圧との差圧(以下差圧ΔPLSという)を圧力補償弁に導き、圧力補償弁のそれぞれの目標補償差圧を差圧ΔPLSにより設定して、流量制御弁の前後差圧をその差圧ΔPLSに保持するよう制御することが行われている(例えば特許文献1)。これにより複数のアクチュエータを同時に駆動する複合動作時に、油圧ポンプの吐出流量が不足するサチュレーション状態になったとき、サチュレーションの程度に応じて差圧ΔPLSが低下し、圧力補償弁の目標補償差圧すなわち流量制御弁の前後差圧が小さくなるため、油圧ポンプの吐出流量をそれぞれのアクチュエータが要求する流量の比に再分配することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−193705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のロードセンシングシステムにおいては、定常走行時も油圧ポンプの吐出圧がアクチュエータの最高負荷圧よりも目標差圧だけ高くなるように油圧ポンプ吐出流量を制御するとともに、油圧ポンプの吐出圧と最高負荷圧との差圧ΔPLSを圧力補償弁に導き、流量制御弁の前後差圧が同じ差圧ΔPLSに保持されるように制御している。この流量制御弁の前後差圧ΔPLSの保持は、複雑な複合操作時に、負荷圧の異なる各アクチュエータに流量制御弁の開口面積比に応じた流量を分配するために必要なものである。しかし、定常走行時は、その差圧ΔPLSがエネルギのロスになってしまう。
【0006】
すなわち、走行モータが必要とする最大流量とブームシリンダ、アームシリンダ等の他のアクチュエータが必要とする最大流量を比べた場合、走行モータの方が他のアクチュエータよりも最大流量が少ないという関係にある。従来は、走行時においても流量制御弁の前後差圧を走行以外のアクチュエータ動作を行う場合と同じに制御していたため、走行モータが必要とする最大流量を他のアクチュエータが必要とする最大流量よりも少なくするために、走行用の流量制御弁の最大開口面積を他のアクチュエータの流量制御弁よりも小さく設定していた。この場合、走行以外のアクチュエータ動作では、流量制御弁の最大開口面積が大きいため、比較的少ない圧損でアクチュエータに必要な最大流量を供給し、必要なアクチュエータ速度を得ることができる。しかし、走行時は、流量制御弁の最大開口面積が他のアクチュエータのものよりも小さいため、流量制御弁を介して走行モータに圧油が供給されるとき、最大開口面積が小さくなった分、流量制御弁の内部圧損が増加し、エネルギロスが増加する。
【0007】
本発明の目的は、走行以外のアクチュエータ動作では、従来通り、必要な最大流量を供給して必要なアクチュエータ速度を得ることができるとともに、走行時はエネルギーのロスを低減し、エネルギ効率の向上を可能とする建設機械の油圧駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される走行用の油圧モータを含む複数のアクチュエータと、前記油圧ポンプから前記複数のアクチュエータに供給される圧油の流量を制御する走行用の流量制御弁を含む複数の流量制御弁と、前記複数の流量制御弁の前後差圧をそれぞれ制御する複数の圧力補償弁と、前記油圧ポンプの吐出圧が上昇すると前記油圧ポンプの押しのけ容積を減らし、前記油圧ポンプの吸収トルクが予め設定した最大吸収トルクを超えないように制御するポンプトルク制御部及び前記油圧ポンプの吐出圧が前記複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるよう前記油圧ポンプの押しのけ容積を制御するポンプ流量制御部を有するポンプ制御装置とを備え、前記複数の圧力補償弁は、前記流量制御弁の前後差圧が前記メインポンプの吐出圧と前記複数のアクチュエータの最高負荷圧との差圧に保持されるようにそれぞれの流量制御弁の前後差圧を制御する建設機械の油圧駆動装置において、前記エンジンにより駆動されるパイロットポンプと、このパイロットポンプの吐出油が供給される圧油供給油路に絞りを介して接続された第1パイロット油路を有し、前記走行用の油圧モータが駆動される走行時に前記第1パイロット油路に制御パイロット圧を発生させる走行検出回路と、前記第1パイロット油路に第2パイロット油路を介して接続され、前記第1パイロット油路に制御パイロット圧が発生したときにその制御パイロット圧が駆動圧力として導かれ、前記油圧ポンプの最大吸収トルクを減らす減トルク制御を行う減トルク制御ピストンと、前記第2パイロット油路に接続され、前記走行用の油圧モータの負荷圧が所定圧力を超えて上昇するときに前記第2パイロット油路をタンクに開放して、前記減トルク制御ピストンによる減トルク制御を解除する切替弁とを備えるものとする。
【0009】
このように構成した本発明においては、走行以外のアクチュエータ動作では、第1パイロット油路に制御パイロット圧が発生せず、減トルク制御ピストンに駆動圧力は発生しないため、減トルク制御は行われず、ポンプ制御装置のポンプトルク制御部は、通常通り、油圧ポンプの吸収トルクが予め設定した最大吸収トルクを超えないように制御し、油圧駆動装置は通常通り動作する。これにより従来通り、必要な最大流量を供給して必要なアクチュエータ速度を得ることができる。
【0010】
定常走行等の走行時は、走行検出回路は第1パイロット油路に制御パイロット圧が発生し、減トルク制御ピストンに駆動圧力が作用して減トルク制御が行われる。この減トルク制御により油圧ポンプの最大吸収トルクが減少し、油圧ポンプの吐出流量が減少する。この油圧ポンプの吐出流量の減少により油圧ポンプのサチュレーション状態が発生し、油圧ポンプの吐出圧と最高負荷圧との差圧がポンプ流量制御部の目標差圧よりも小さくなり、圧力補償弁により制御される流量制御弁の前後差圧も同様に低下する。これにより流量制御弁の内部圧損が低減し、エネルギーのロスを低減し、エネルギ効率を向上することができる。
【0011】
走行加速時、登坂時等、走行用の油圧モータの負荷圧が所定圧力を超えて上昇する走行時は、切替弁は第2パイロット油路をタンクに開放して、減トルク制御ピストンによる減トルク制御を解除する。これにより油圧ポンプの最大吸収トルクは本来の設定値(定格)へと戻り、走破性を確保することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記走行検出回路は、前記第1パイロット油路から分岐した複数の分岐油路と、この複数の分岐油路とタンクTとの間にそれぞれ配置され、前記複数の流量制御弁のそれぞれのメインスプールと連動して対応するメインスプールの動作を検出する複数の動作検出弁を有し、前記複数の動作検出弁は、前記走行用の油圧モータが駆動される走行時に前記第1パイロット油路とタンクとの連通を遮断することにより前記第1パイロット油路に前記制御パイロット圧を発生させる。
【0013】
これにより走行検出回路は複数の流量制御弁のそれぞれのメインスプールの動作を検出し、走行時に第1パイロット油路に制御パイロット圧を発生させることができる。
【0014】
(3)また、上記(1)において、好ましくは、前記減トルク制御ピストンによる減トルク制御が行われないときの前記油圧ポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧をΔPLS0、前記減トルク制御ピストンによる減トルク制御時における前記油圧ポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧をΔPLSS、前記走行に必要な流量をQt、前記走行用の流量制御弁の最大開口面積をAa、前記メインポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧がΔPLS0にあるときに、前記走行用の油圧モータに流量Qtを供給可能な流量制御弁の最大開口面積をAbとしたとき、前記最大開口面積Aaは前記最大開口面積Abの√(ΔPLS0/ΔPLSS)倍である。
【0015】
このように走行用の流量制御弁の最大開口面積を設定することにより、走行時に油圧ポンプのサチュレーション状態が発生して流量制御弁の前後差圧が減少しても、走行に必要な流量を確保することができる。
【0016】
(4)また、上記(1)において、好ましくは、前記走行用の油圧モータの負荷圧が急上昇したときに前記減トルク制御解除用の切替弁による前記第1パイロット油路の制御パイロット圧の低下を徐々に行わせ、前記減トルク制御の解除を緩やかに行う圧力遅延回路を更に備える。
【0017】
これにより例えば走行中に石などの抵抗物に乗り上げ、走行用の油圧モータの負荷圧が急上昇した場合は、減トルク制御が緩やかに解除されるため、油圧ポンプの最大吸収トルクが急上昇して油圧ポンプの吐出流量が急に増加し、走行の急加速が生じるという不具合を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、走行以外のアクチュエータ動作では、従来通り、必要な最大流量を供給して必要なアクチュエータ速度を得ることができるとともに、走行時は減トルク制御によりエネルギーのロスを低減し、エネルギ効率を向上することができる。
【0019】
また、走行加速時、登坂時等、走行用の油圧モータの負荷圧が所定圧力を超えて上昇する走行時は、減トルク制御が解除されるため、油圧ポンプの最大吸収トルクは本来の設定値(定格)へと戻り、走破性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態における建設機械の油圧駆動装置の構成を示す油圧回路図である。
【図2】走行用の流量制御弁の開口面積特性を示す図である。
【図3】本発明が適用される建設機械の一例である油圧ショベルの外観を示す図である。
【図4】減トルク制御ピストンによるメインポンプの吸収トルクの変化を示すトルク線図である。
【図5】減トルク制御解除切替弁の作用によるメインポンプの吸収トルクの変化を示すトルク線図である。
【図6A】減トルク制御解除切替弁に導かれる最高負荷圧(走行負荷圧)と同切替弁により調整される第1パイロット油路の制御パイロット圧との関係を示す図である。
【図6B】減トルク制御解除切替弁により調整される第1パイロット油路の制御パイロット圧と減トルク制御ピストンにより調整されるメインポンプの最大吸収トルクとの関係を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における建設機械の油圧駆動装置の構成を示す油圧回路図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態における建設機械の油圧駆動装置の構成を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
<第1の実施の形態>
図1に本発明の第1の実施の形態における建設機械の油圧駆動装置の構成を示す。
【0022】
本実施例における油圧駆動装置は、エンジン1と、エンジン1によって駆動されるメインの油圧ポンプ(以下メインポンプという)2と、メインポンプ2と連動してエンジン1により駆動されるパイロットポンプ3と、コントロールバルブ4と、メインポンプ2から吐出された圧油がコントロールバルブ4を介して供給され、その圧油により駆動される複数のアクチュエータ6a,6b,6c,6d,6eとを備えている。
【0023】
本実施形態において建設機械は例えば油圧ショベルであり、アクチュエータ6a,6bは油圧ショベルの左右の走行モータであり、アクチュエータ6c,6d,6eはそれぞれ油圧ショベルのブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダである。油圧ショベルにはその他のアクチュエータも備えられているが、図1では図示の都合上、それらを省略している。
【0024】
コントロールバルブ4は、メインポンプ2の吐出油が供給される圧油供給油路2aに接続され、メインポンプ2から各アクチュエータに供給される圧油の方向と流量をそれぞれ制御する複数のバルブセクション4a,4b,4c,4d,4eと、複数のアクチュエータ6a〜6eの負荷圧のうち最も高い負荷圧(以下、最高負荷圧という)PLmaxを選択して信号油路21に出力する最高負荷圧検出手段としての複数のシャトル弁22a,22b,22c,22dとを有している。また、図示はしないが、コントロールバルブ4は、メインポンプ2の圧油供給油路2aに設けられ、メインポンプ2の最高吐出圧(最高ポンプ圧)を制限するメインリリーフ弁と、メインポンプ2の吐出圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧ΔPLSがある一定値を超えたときにメインポンプ2の吐出流量の一部をタンクTに戻し、差圧ΔPLSをその一定値以下に保つアンロード弁とを有している。
【0025】
バルブセクション4aは圧力補償弁7aと流量制御弁(メインスプール)8aとから構成され、バルブセクション4bは圧力補償弁7bと流量制御弁(メインスプール)8bとから構成され、バルブセクション4cは圧力補償弁7cと流量制御弁(メインスプール)8cとから構成され、バルブセクション4dは圧力補償弁7dと流量制御弁(メインスプール)8dとから構成され、バルブセクション4eは圧力補償弁7eと流量制御弁(メインスプール)8eとから構成されている。
【0026】
流量制御弁8a〜8eは、メインポンプ2からそれぞれのアクチュエータ6a〜6eに供給される圧油の方向と流量をそれぞれ制御し、圧力補償弁7a〜7eは流量制御弁8a〜8eの前後差圧をそれぞれ設定値(目標補償差圧)に保持するよう制御する。
【0027】
圧力補償弁7a〜7eは目標差圧設定用の対向する受圧部24a,25a;24b,25b;24c,25c;24d,25d;24e,25eを有し、受圧部24a,25a〜24e,25eにはメインポンプ2の吐出圧(ポンプ圧)Pdと最高負荷圧PLmaxがそれぞれ導かれ、ポンプ圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧ΔPLSにより目標補償差圧が設定されている。このような目標補償差圧の設定により、圧力補償弁7a〜7eは流量制御弁8a〜8eの前後差圧がポンプ圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧ΔPLSに等しくなるように制御する。これにより複数のアクチュエータを同時に駆動する複合操作時は、アクチュエータ6a〜6eの負荷圧の大小に係わらず、流量制御弁8a〜8eの開口面積比に応じてメインポンプ2の吐出流量を分配し、複合操作性を確保することができる。また、メインポンプ2の吐出流量が要求流量に満たないサチュレーション状態になった場合は、差圧ΔPLSはその供給不足の程度に応じて低下し、これに応じて圧力補償弁7a〜7eが制御する流量制御弁8a〜8eの前後差圧が同じ割合で低下して流量制御弁8a〜8eの通過流量が同じ割合で減少するため、この場合も流量制御弁8a〜8eの開口面積比に応じてメインポンプ2吐出流量を分配し、複合操作性を確保することができる。
【0028】
また、本実施の形態の油圧駆動装置は、パイロットポンプ3の吐出油が供給される圧油供給油路3aに接続され、圧油供給油路3aの圧力を一定に保つパイロットリリーフ弁11と、圧油供給油路3aに接続された操作装置12a,12b,12c,12dとを備えている。操作装置12a,12bは走行用の流量制御弁8a,8bを操作するためのものであり、ペダルの踏み込み量に応じて圧油供給油路3aの圧油に基づいて制御パイロット圧を生成するパイロットバルブ(減圧弁)備えている。操作装置12c,12dは走行以外の流量制御弁8c〜8e等を操作するためのものであり、操作レバーの操作量に応じて圧油供給油路3aの圧油に基づいて制御パイロット圧を生成するパイロットバルブ(減圧弁)備えている。
【0029】
メインポンプ2は可変容量型の油圧ポンプであり、ポンプトルク制御部を構成するトルク制限制御ピストン15と、ポンプ流量制御部を構成するLS制御弁16及びLS制御傾転アクチュエータ17を有している。
【0030】
トルク制限制御ピストン15はメインポンプ2の吐出圧が高くなるとメインポンプ2の傾転角を減らして、メインポンプ2の吸収トルクがバネ15aにより設定した値(最大トルク)を越えないように制限するものであり、これによりメインポンプ2の消費馬力を制限し、過負荷によるエンジン1の停止(エンジンストール)を防止する。
【0031】
LS制御弁16は対向する受圧部16a,16bを有し、受圧部16aにはメインポンプ2の吐出圧が導かれ、受圧部16bには信号油路21の最高負荷圧PLmaxが導かれている。また、LS制御弁の受圧部16b側にはロードセンシング制御の目標差圧(目標LS差圧)を設定するためのバネ16cが配置され、メインポンプ2の吐出圧が最高負荷圧PLmaxにバネ16cの設定圧を加えた圧力よりも高くなると、圧油供給油路3aの圧油をLS制御傾転アクチュエータ17に導いてメインポンプ2の傾転角を減らし、メインポンプ2の吐出圧が最高負荷圧PLmaxにバネ16cの設定圧を加えた圧力よりも低くなると、LS制御傾転アクチュエータ17をタンクTに連通してメインポンプ2の傾転角を増やし、メインポンプ2の吐出圧Pdが最高負荷圧PLmaxよりもバネ16cの設定値(目標LS差圧)だけ高くなるようにメインポンプ2の傾転量(押しのけ容積)を制御する。このようにLS制御弁16及びLS制御傾転アクチュエータ17は、メインポンプ2の吐出圧が複数のアクチユエータ6a〜6eの最高負荷圧PLmaxよりも目標LS差圧だけ高くなるようメインポンプ2の傾転を制御する。
【0032】
また、前述したように、圧力補償弁7a〜7eの目標補償差圧はポンプ圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧ΔPLSにより設定され、流量制御弁8a〜8eの前後差圧がその差圧ΔPLSに等しくなるように制御されるため、メインポンプ2の吐出圧が最高負荷圧PLmaxよりもバネ16cの設定圧(目標LS差圧)だけ高くなるように制御されるとき、圧力補償弁7a〜7eの目標補償差圧もバネ16cの設定圧(目標LS差圧)に等しくなるように設定され、流量制御弁8a〜8eの前後差圧はそのバネ16cの設定圧(目標LS差圧)に等しくなるように制御される。
【0033】
本実施の形態の油圧駆動装置は、更にその特徴的構成として、走行検出回路33と減トルク制御ピストン35と減トルク制御解除切替弁36とを備えている。
【0034】
走行検出回路33は、パイロットポンプ3の圧油供給油路3aに固定絞り要素31を介して接続された第1パイロット油路32と、第1パイロット油路32から分岐した分岐油路32a〜32eと、分岐油路32a〜32eとタンクTとの間に配置され、流量制御弁8a〜8eのメインスプールとそれぞれ連動して対応するメインスプールの動作を検出する動作検出弁37a〜37eとを有し、左右の走行モータ6a,6bが同時に駆動される走行時に、動作検出弁37a〜37eが第1パイロット油路32とタンクTとの連通を遮断することにより第1パイロット油路32に制御パイロット圧を発生させる。減トルク制御ピストン35は、メインポンプ2に対してトルク制限制御ピストン15と並列に設けられ、第1パイロット油路32に制御パイロット圧が発生したときにその制御パイロット圧が第2パイロット油路34を介して駆動圧力として導かれ、メインポンプ2の傾転を減らす方向に作用して、メインポンプ2の最大吸収トルクを減らす減トルク制御を行う。減トルク制御解除切替弁36は、第2パイロット油路34に接続され、走行モータ6a,6bの負荷圧が所定圧力を超えて上昇するときに第2パイロット油路34をタンクTに開放し、減トルク制御ピストン35による減トルク制御を解除する。
【0035】
動作検出弁37a〜37eは、走行用の流量制御弁8a,8bの両方が操作されたときにのみ第1パイロット油路32とタンクTとの連通を遮断して第1パイロット油路32に制御パイロット圧を発生させる3位置切換弁である。これら動作検出弁37a〜37eのうち、走行に係わる動作検出弁37a,37bは走行用の流量制御弁8a,8bが中立位置(非操作位置)にあるときは開位置にあって、分岐油路32a,32bをタンクTに連通させ、走行用の流量制御弁8a,8bが中立位置から操作されると閉位置に切り換えられて、分岐油路32a,32bとタンクTとの連通を遮断する。走行以外のアクチュエータに係わる動作検出弁37c〜37eは、対応する流量制御弁8c〜8eが中立位置(非操作位置)にあるときは閉位置にあって、対応する分岐油路32c〜32eとタンクTとの連通を遮断し、対応する流量制御弁8c〜8eが中立位置から操作されると開位置に切り換えられて、分岐油路32c〜32eをタンクTに連通させる。これにより走行用の流量制御弁8a,8bの一方のみが操作されたとき、或いは走行以外の流量制御弁8c〜8eの少なくとも1つが操作されたときは、第1パイロット油路32はタンクTに連通し、走行用の流量制御弁8a,8bが同時に操作されたときにのみ第1パイロット油路32とタンクTとの連通を遮断し、第1パイロット油路32に制御パイロット圧が発生するようになる。
【0036】
減トルク制御解除切替弁36は第2パイロット油路34から分岐した油路34aとタンクTとの間に配置された2位置切換弁であり、閉方向動作側に設けられた切換動作圧設定用のバネ36aと、開方向動作側に設けられた受圧部36bとを有し、受圧部36bは油路39を介して信号油路21に接続され、切替弁36の動作はロードセンシング制御で使用する最高負荷圧PLmaxにより制御される。すなわち、最高負荷圧PLmaxが切替弁36のバネ36aの設定値より低い場合は、切替弁36は図示の閉位置に保たれ、第2パイロット油路34の圧力は保持される。バネ36aの設定値より最高負荷圧PLmaxが高くなった場合は、切替弁36は開位置に切り換えられ、第2パイロット油路34の圧力はタンクTに開放される。切替弁36の開口面積特性は連続的であり、最高負荷圧PLmaxに応じて第2パイロット油路34の圧力は連続的に変化する。
【0037】
図2に、走行用の流量制御弁8a,8bの開口面積特性を示す。図中、Maが本実施の形態における流量制御弁8a,8bの開口面積特性であり、Mbが従来の開口面積特性である。
【0038】
本実施の形態では、走行用の操作装置12a,12bを操作した走行時には、後述する如く、流量制御弁8a,8bの前後差圧が本来の設定値である圧力ΔPLS0からΔPLSSに低減し、そのままでは走行モータ6a,6bへ供給される圧油の流量が従来のものよりも減少してしまう。そこで、走行モータ6a,6bへ供給される圧油の流量を従来通りに確保するため、流量制御弁8a,8bの前後差圧が減少する分、流量制御弁8a,8bの開口面積を大きく設定している。
【0039】
すなわち、本実施の形態における流量制御弁6a,6bの最大開口面積をAa、従来の流量制御弁の最大開口面積をAb、走行に必要な流量をQtとすると、
Qt=cAa√(2ΔPLSS/ρ)=cAb√(2ΔPLS0/ρ)
c:流量係数
ρ:作動油の密度
の関係にあり、
Aa=Ab√(ΔPLS0/ΔPLSS)
の関係が得られる。よって、本実施の形態における流量制御弁6a,6bの最大開口面積Aaは従来の流量制御弁の最大開口面積Abの√(ΔPLS0/ΔPLSS)倍にする必要があり、流量制御弁6a,6bはそのような最大開口面積を持つ開口面積特性に設定されている。
【0040】
なお、走行用の流量制御弁6a,6bの開口面積を増やす代わりに、従来の流量制御弁にパラレルに補助的な流量制御弁を配置し、合計の通過流量を従来の流量制御弁の通過流量と同じになるようにしてもよい。また、走行モータ6a,6bへ供給される圧油の流量を従来と同じにしなくてもよい場合は、必要とする流量が得られるよう走行用の流量制御弁6a,6bの開口面積を設定すればよい。
【0041】
図3に油圧ショベルの外観を示す。
【0042】
図3において、油圧ショベルは、上部旋回体300と、下部走行体301と、スイング式のフロント作業機302を備え、フロント作業機302は、ブーム306、アーム307、バケット308から構成されている。上部旋回体300は下部走行体301を旋回モータ6fの回転によって旋回可能である。上部旋回体300の前部にはスイングポスト303が取り付けられ、このスイングポスト303にフロント作業機302が上下動可能に取り付けられている。スイングポスト303はスイングシリンダ6gの伸縮により上部旋回体300に対して水平方向に回動可能であり、フロント作業機302のブーム306、アーム307、バケット308はブームシリンダ6c、アームシリンダ6d、バケットシリンダ6eの伸縮により上下方向に回動可能である。下部走行体301は中央フレーム304を備え、この中央フレーム304にはブレードシリンダ6hの伸縮により上下動作を行うブレード305が取り付けられている。下部走行体301は、走行モータ6a,6bの回転により左右の履帯310,311を駆動することによって走行を行う。
【0043】
上部旋回体300は運転室312を有し、運転室312内には走行用の操作装置12a,12b(図3では片側のみ図示)、旋回用、ブーム用、アーム用、バケット用の操作装置12c,12d(図3では一部のみ図示)、ブレード用の操作装置(図示せず)、スイング用の操作装置(図示せず)等が設置されている。
【0044】
次に、本実施の形態の動作を図3及び図4を用いて説明する。
【0045】
図4は減トルク制御ピストン35によるメインポンプ2の吸収トルクの変化を示すトルク線図であり、図5は減トルク制御解除切替弁36の作用によるメインポンプ2の吸収トルクの変化を示すトルク線図である。
【0046】
図4において、横軸はメインポンプ2の吐出圧であり、縦軸はメインポンプ2の容量(押しのけ容積或いは傾転角)である。Taはメインポンプ2の定格トルクTrateの曲線であり、定格トルクTrateはポンプトルク制御部のバネ15aによって設定されるメインポンプ2の最大吸収トルクである。
【0047】
本実施の形態において、走行以外のアクチュエータ動作のとき(走行用の流量制御弁8a,8bの一方のみが操作されたとき、或いは走行以外の流量制御弁8c〜8eの少なくとも1つが操作されたとき)は、第1パイロット油路32に制御パイロット圧が発生せず、減トルク制御ピストン35は機能しない。その結果、ポンプトルク制御部にはメインポンプ2の最大吸収トルクとして曲線Taの定格トルクTrateが設定され、メインポンプ2の吸収トルクはトルク制限制御ピストン15により定格トルクTrateを越えないように制御される。
【0048】
減トルク制御ピストン35を備えていない従来の油圧駆動装置では、走行時であるか否かに係わらずバネ15aによる定格トルクTrateが設定され、メインポンプ2の吸収トルクは定格トルク曲線Trateを越えないように制御される。
【0049】
また、従来の油圧駆動装置では、走行直進時等、走行用の流量制御弁8a,8bが同時操作される走行時において、メインポンプ2は図3のC点で動作する。このときの走行モータ6a,6bの負荷圧(以下走行負荷圧という)はPtであり、メインポンプ2の吐出圧はPpcである。このときメインポンプ2はLS制御弁16及びLS制御傾転アクチュエータ17によりメインポンプ2の吐出圧Pdが最高負荷圧PLmaxよりΔPLSだけ高くなるように制御されており、Ppc−Pt=ΔPLSの関係にある。また、メインポンプ2の容量はqtであり、この容量qtにメインポンプ2の回転数(エンジン回転数)を乗じた流量が走行に必要な流量として走行モータ6a,6bに供給される。
【0050】
ここで、走行時は、通常、メインポンプ2の吐出油の不足(サチュレーション)は生じておらず、メインポンプ2はロードセンシング制御によりポンプ吐出圧が最高負荷圧PLmaxよりもバネ16cの設定圧(目標LS差圧)だけ高くなるように制御されているため、バネ16cの設定圧(目標LS差圧)をΔPLS0とすると、Ppc−Pt=ΔPLS=ΔPLS0となる。
【0051】
本実施の形態において、走行用の流量制御弁8a,8bが同時操作される走行時は、走行に係わる動作検出弁37a,37bが閉位置に切り換わり、第1パイロット油路32に制御パイロット圧が発生する。その結果、減トルク制御ピストン35が機能して、メインポンプ2の最大吸収トルクを減らす減トルク制御が行われる。
【0052】
図3において、Tbは減トルク制御後のメインポンプ2の最大吸収トルクTredを示す曲線である。このようにメインポンプ2の最大吸収トルクがTrateからTredに減少すると、メインポンプ2の動作点はC点からI点に遷移し、メインポンプ2の吐出圧は従来のPpcよりも低いPpiとなる。これは、メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧PLmaxとの差圧ΔPLSが本来の設定圧であるΔPLS0からΔPLSSへと低下し、走行負荷圧Ptに対して十分にLS差圧が確保されていない状態(サチュレーショ状態)であることを意味する。また、この場合、圧力補償弁7a〜7eのの目標補償差圧はポンプ圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧ΔPLSによって設定されているため、ロードセンシング差圧ΔPLSの低下に応じて走行用の流量制御弁8a,8bの前後差圧もΔPLS0からΔPLSSへと低下する。
【0053】
このように本実施の形態では、メインポンプ2のサチュレーション状態を意図的に発生することで、走行用の流量制御弁8a,8bの前後差圧を減らし、ポンプトルク負荷を低減することが可能となる。また、前述したように、走行用の流量制御弁8a,8bの前後差圧の減少を見越して流量制御弁8a,8bの開口面積を大きく設定しておくため、走行に必要な流量を確保することが可能となる。
【0054】
この減トルク制御は走行用の流量制御弁8a,8bが同時操作される走行時にのみ行われ、ターンを想定した左右どちらかの走行モータ6a,6bの単独の操作では減トルク制御は行われず、定格トルクTrateにてメインポン2を動作させ、必要なトルクを確保することができる。
【0055】
更に、走行時でも、走行加速時、登坂時など、走行負荷圧が上昇した場合にも減トルク制御の効果を連続的に下げ、必要な走行トルクを確保できるようにしている。図4はこのときの動作を説明するための図であり、左上側のトルク線図の丸で囲った部分の拡大図が右下側に示されている。
【0056】
走行加速時、登坂時など、走行負荷圧PtがPt1,Pt2へと上昇すると、最高負荷圧(=走行負荷圧)が上昇し、減トルク制御解除切替弁36が開方向に連続的に切り換えられて、第1パイロット油路32に発生した制御パイロット圧が連続的に低下し、減トルク制御ピストン35の駆動圧が減少する。その結果、減トルク制御は解除され、定格トルク曲線Ta上でメインポンプ2の吐出流量は減少する。
【0057】
図6Aは、切替弁36に導かれる最高負荷圧(走行負荷圧)と切替弁36により調整される第1パイロット油路32の制御パイロット圧との関係を示す図であり、図6Bは、切替弁36により調整される第1パイロット油路32の制御パイロット圧と減トルク制御ピストン35により調整されるメインポンプ2の最大吸収トルクとの関係を示す図である。最高負荷圧(走行負荷圧)がPLa以下の走行状態では、切替弁36は図示の閉位置を保ち、第1パイロット油路32の制御パイロット圧はパイロットリリーフ弁11で設定される値Pcmaxにある。最高負荷圧(走行負荷圧)がPLaに達すると切替弁36は開き始め、第1パイロット油路32の制御パイロット圧は低下し始める。最高負荷圧(走行負荷圧)が更に上昇してPLbn達すると切替弁36は完全に開き、第1パイロット油路32の制御パイロット圧はタンク圧となる。第1パイロット油路32の制御パイロット圧がパイロットリリーフ弁11の設定圧であるPcmaxにある間は、減トルク制御ピストン35による減トルク制御が機能し、メインポンプ2の最大吸収トルクは定格トルクTrateからTredに減少している。第1パイロット油路32の制御パイロット圧がPcmaxから低下すると、減トルク制御ピストン35の駆動圧が低下し、メインポンプ2の最大吸収トルクはTredから増加し、第1パイロット油路32の制御パイロット圧がタンク圧になると、メインポンプ2の最大吸収トルクは定格トルクTrateまで増大する。
【0058】
このような機能により、本来走行走破性が必要とされる走行加速時、登坂時などでは、メインポンプ2の吸収トルクを定格に切替え、エンジン1の出力を有効に利用し、走破性を確保することができる。
【0059】
以上のように本実施の形態によれば、走行以外のアクチュエータ動作では、従来通り、必要な最大流量を供給して必要なアクチュエータ速度を得ることができるとともに、走行時は減トルク制御によりエネルギーのロスを低減し、エネルギ効率を向上することができる。
【0060】
また、走行加速時、登坂時等、走行用の油圧モータの負荷圧が所定圧力を超えて上昇する走行時は、減トルク制御が解除されるため、メインポンプ2の最大吸収トルクは本来の設定値(定格)へと戻り、走破性を確保することができる。
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図7を用いて説明する。図中、図1に示す要素と同等の要素には同じ符号を付している。
【0061】
図7において、本実施の形態の油圧駆動装置は、走行モータ6A,6bの負荷圧が急上昇したときに減トルク制御解除切替弁36による第1パイロット油路32の制御パイロット圧の低下を徐々に行わせ、減トルク制御の解除を緩やかに行う圧力遅延回路41を更に備えている。
【0062】
本実施の形態において、圧力遅延回路41は、信号油路21の最高負荷圧PLmaxを減トルク制御解除切替弁36の受圧部36bに導く油路39に設けられており、圧力遅延回路41は油路39に設けられた固定絞り要素41aと、この固定絞り要素41aに並列に配置され、信号油路21から切替弁36の受圧部36bへの圧力の伝達は阻止し、逆方向の圧力の伝達は許可するチェック弁41bとを有している。最高負荷圧PLmaxの上昇時は、切替弁36の受圧部36bに固定絞り要素41aを介して圧力が伝達され、最高負荷圧PLmaxの低下時は、切替弁36の受圧部36bからチェック弁41bを介して圧力が開放される。
【0063】
その他の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0064】
このように構成した本実施の形態では、例えば走行中に石などの抵抗物に乗り上げ、走行負荷圧が急上昇したとき、信号油路21から油路39を介して切替弁36の受圧部36bに伝わる最高負荷圧は、固定絞り要素の抵抗を受けて徐々に上昇するため、切替弁36が急に開位置に切り換わって第1パイロット油路32の制御パイロット圧が急低下することを防止し、第1パイロット油路32の制御パイロット圧の急低下によりメインポンプ2の最大吸収トルクが急上昇してメインポンプ2の吐出流量が急に増加し、走行の急加速が生じるという不具合が防止される。
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図8を用いて説明する。図中、図1に示す要素と同等の要素には同じ符号を付している。
【0065】
図8において、本実施の形態の油圧駆動装置は、圧力遅延回路の他の例として、減トルク制御解除切替弁36とタンクTとを連絡する油路34bに固定絞り要素42を配置したものである。その他の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0066】
このように構成した本実施の形態においても、例えば走行中に石などの抵抗物に乗り上げ、走行負荷圧が急上昇し、この走行負荷圧が最高負荷圧として切替弁36の受圧部36bに導かれ、切替弁36が急に開位置に切り換わったとしても、第1パイロット流路32の制御パイロット圧は固定絞り要素42の作用で徐々に低下するため、第1パイロット油路32の制御パイロット圧の急低下によりメインポンプ2の最大吸収トルクが急上昇してメインポンプ2の吐出流量が急に増加し、走行の急加速が生じるという不具合を防止することができる。
<その他の実施の形態>
以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、圧力補償弁7a〜7eの受圧部24a,25a〜24e,25eにメインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧を個別に導いて、ポンプ圧と最高負荷圧との差圧ΔPLSを目標補償差圧として設定したが、特許文献1記載のようにメインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧を絶対圧として出力する差圧減圧弁を設け、この差圧減圧弁の出力圧を圧力補償弁7a〜7eの開方向作動の受圧部に導いて目標補償差圧を設定してもよい。
【0067】
また、特許文献1記載のように、メインポンプ2を駆動するエンジン1の回転数に依存する圧力を絶対圧として出力する差圧減圧弁を設け、この差圧減圧弁の出力圧をLS制御弁16の開方向作動の受圧部に導き、ロードセンシング制御の目標差圧をエンジンの回転数に依存する可変値として設定してもよい。
【0068】
更に、上記実施の形態では、建設機械が油圧ショベルである場合について説明したが、走行モータを備えた建設機械であれば、油圧ショベル以外建設機械(例えば油圧クレーン、ホイール式ショベル等)に本発明を適用し、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 エンジン
2 メインポンプ
3 パイロットポンプ
4 コントロールバルブ
6a,6b 走行モータ(走行用の油圧モータ)
6c〜6e 他のアクチュエータ
4a〜4e バルブセクション
22a〜22d シャトル弁
7a〜7e 圧力補償弁
8a〜8e 流量制御弁
11 パイロットリリーフ弁
12a〜12d 操作装置
15 トルク制限制御ピストン
15a バネ
16 LS制御弁
16a,16b 受圧部
16c バネ
17 LS制御傾転アクチュエータ
24a,25a〜24e,25e 受圧部
32 第1パイロット油路
32a〜32e 分岐油路
33 走行検出回路
34 第2パイロット流路
34a 油路
34b 油路
35 減トルク制御ピストン
36 減トルク制御解除切替弁
36a バネ
36b 受圧部
37a〜37e 動作検出弁
41 圧力遅延回路
41a 固定絞り要素
41b チェック弁
42 固定絞り要素
300 上部旋回体
301 下部走行体
302 フロント作業機
303 スイングポスト
304 中央フレーム
305 ブレード
306 ブーム
307 アーム
308 バケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、
この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される走行用の油圧モータを含む複数のアクチュエータと、
前記油圧ポンプから前記複数のアクチュエータに供給される圧油の流量を制御する走行用の流量制御弁を含む複数の流量制御弁と、
前記複数の流量制御弁の前後差圧をそれぞれ制御する複数の圧力補償弁と、
前記油圧ポンプの吐出圧が上昇すると前記油圧ポンプの押しのけ容積を減らし、前記油圧ポンプの吸収トルクが予め設定した最大吸収トルクを超えないように制御するポンプトルク制御部及び前記油圧ポンプの吐出圧が前記複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるよう前記油圧ポンプの押しのけ容積を制御するポンプ流量制御部を有するポンプ制御装置とを備え、
前記複数の圧力補償弁は、前記流量制御弁の前後差圧が前記メインポンプの吐出圧と前記複数のアクチュエータの最高負荷圧との差圧に保持されるようにそれぞれの流量制御弁の前後差圧を制御する建設機械の油圧駆動装置において、
前記エンジンにより駆動されるパイロットポンプと、
このパイロットポンプの吐出油が供給される圧油供給油路に絞りを介して接続された第1パイロット油路を有し、前記走行用の油圧モータが駆動される走行時に前記第1パイロット油路に制御パイロット圧を発生させる走行検出回路と、
前記第1パイロット油路に第2パイロット油路を介して接続され、前記第1パイロット油路に制御パイロット圧が発生したときにその制御パイロット圧が駆動圧力として導かれ、前記油圧ポンプの最大吸収トルクを減らす減トルク制御を行う減トルク制御ピストンと、
前記第2パイロット油路に接続され、前記走行用の油圧モータの負荷圧が所定圧力を超えて上昇するときに前記第2パイロット油路をタンクに開放して、前記減トルク制御ピストンによる減トルク制御を解除する切替弁とを備えることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記走行検出回路は、前記第1パイロット油路から分岐した複数の分岐油路と、この複数の分岐油路とタンクTとの間にそれぞれ配置され、前記複数の流量制御弁のそれぞれのメインスプールと連動して対応するメインスプールの動作を検出する複数の動作検出弁を有し、前記複数の動作検出弁は、前記走行用の油圧モータが駆動される走行時に前記第1パイロット油路とタンクとの連通を遮断することにより前記第1パイロット油路に前記制御パイロット圧を発生させることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記減トルク制御ピストンによる減トルク制御が行われないときの前記油圧ポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧をΔPLS0、
前記減トルク制御ピストンによる減トルク制御時における前記油圧ポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧をΔPLSS、
前記走行に必要な流量をQt、
前記走行用の流量制御弁の最大開口面積をAa、
前記メインポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧がΔPLS0にあるときに、前記走行用の油圧モータに流量Qtを供給可能な流量制御弁の最大開口面積をAbとしたとき、
前記最大開口面積Aaは前記最大開口面積Abの√(ΔPLS0/ΔPLSS)倍であることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記走行用の油圧モータの負荷圧が急上昇したときに前記減トルク制御解除用の切替弁による前記第1パイロット油路の制御パイロット圧の低下を徐々に行わせ、前記減トルク制御の解除を緩やかに行う圧力遅延回路を更に備えることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−252511(P2011−252511A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124828(P2010−124828)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】