建設機械用フレーム
【課題】キャリアフレームを長くすることなく、トランスミッションの抜き代を確保することのできる移動式クレーンを提供する。
【解決手段】キャリアフレーム20と、このキャリアフレーム20上に取り付けた旋回台と、キャリアフレーム20の下部の左右に前後方向の位置が異なるように設けられた一対のアウトリガーボックス80,81とを備え、キャリアフレーム20は、一対のサイドメンバ21,22と、このサイドメンバ21,22の上部に取り付けられた上板23と、この上板23のアウトリガーボックス80,81の前側に形成された開口23Aとを有し、この開口23A内にエンジン60を配置するとともにトランスミッション70をその開口23Aの下側に取り付ける建設機械用フレームであって、アウトリガーボックス80,81のうち前側にある一方のアウトリガーボックス80から他方のアウトリガーボックス81へ向かうように、サイドメンバ21,22間にクロスメンバ30を前後方向に対して斜めに配設した。
【解決手段】キャリアフレーム20と、このキャリアフレーム20上に取り付けた旋回台と、キャリアフレーム20の下部の左右に前後方向の位置が異なるように設けられた一対のアウトリガーボックス80,81とを備え、キャリアフレーム20は、一対のサイドメンバ21,22と、このサイドメンバ21,22の上部に取り付けられた上板23と、この上板23のアウトリガーボックス80,81の前側に形成された開口23Aとを有し、この開口23A内にエンジン60を配置するとともにトランスミッション70をその開口23Aの下側に取り付ける建設機械用フレームであって、アウトリガーボックス80,81のうち前側にある一方のアウトリガーボックス80から他方のアウトリガーボックス81へ向かうように、サイドメンバ21,22間にクロスメンバ30を前後方向に対して斜めに配設した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャリアフレームの上板の開口にエンジンおよびトランスミッションを配置する建設機械用フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャリアフレーム上に水平旋回可能に取り付けられる旋回台と、この旋回台に起伏可能に取り付けられた伸縮可能なクレーン作業用のブームとを備えた建設機械用フレームが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる建設機械用フレームでは、キャリアフレームである型材の上面には旋回台を取り付けるための旋回リングが設けられている。また、型材の一端側にはクロスメンバが型材の長手方向に対して直交する方向に取り付けられていて、型材を補強している。
【特許文献1】実開昭59−155274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来の建設機械用フレームでは、エンジンおよびトランスミッションを取り付けるために型材の上面に開口が設けられている。この開口の後縁部は、クロスメンバが型材の長手方向に対して直交する方向に取り付けられていることにより、型材の長手方向に対して直交するように形成されている。
【0005】
そして、エンジンが上記開口内に配置され、トランスミッションがその開口の下側に取り付けられる。
【0006】
このため、エンジンおよびトランスミッションを合体させた一体型の場合、修理やメンテナンスの際、トランスミッションのみをその開口から引き上げて取り出すとき、エンジン出力軸に対するインプットシャフトの挿入代だけトランスミッションを後方へずらさなければ、エンジン出力軸からトランスミッションの入力軸を抜くことができない。このため、クロスメンバなどが設けられていることによりトランスミッションを後方へずらせるスペースがない場合、エンジンおよびトランスミッションを一体のまま取り外さなければならず、その取り外し作業は大掛かりなものになってしまう。
【0007】
また、トランスミッションの抜き代スペースを確保すると、その分キャリアフレームが長くなってしまう問題があった。
【0008】
この発明の目的は、キャリアフレームを長くすることなく、トランスミッションの抜き代を確保することのできる建設機械用フレームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、エンジンで回転駆動される車輪が取り付けられるキャリアフレームと、このキャリアフレーム上に水平旋回可能に取り付けられるとともにクレーン作業用のブームを取り付けた旋回台と、前記旋回台の前方の位置であって前記キャリアフレームの下部の左右に前後方向の位置が異なるように設けられた一対のアウトリガーボックスとを備え、前記キャリアフレームは、前後に延びた一対のサイドメンバと、このサイドメンバの上部に取り付けられた上板と、この上板の前記一対のアウトリガーボックスの前側位置に形成された開口とを有し、この開口内に前記エンジンを配置するとともに前記トランスミッションをその開口の下側に取り付ける建設機械用フレームであって、
前記一対のアウトリガーボックスのうち前側にある一方のアウトリガーボックスから他方のアウトリガーボックスへ向かうように、前記一対のサイドメンバ間にクロスメンバを前後方向に対して斜めに配設したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、前記クロスメンバは、一方のアウトリガーボックスの前壁面の位置から他方のアウトリガーボックスの前壁面へ向かうように配設されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、前記開口の後縁部を前記クロスメンバに沿うように斜めに形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、前記開口の後側に且つキャリアフレーム内の下部に、下方が開放された断面形状が凹状のロアプレートが取り付けられており、
このロアープレートの凹状の天板部の高さ位置が後方にいくにしたがって低くなるとともに、その天板部の幅が広くなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、クロスメンバを斜めに設けたことにより、キャリアフレームを長くすることなくトランスミッションの抜き代を確保することができ、エンジンおよびトランスミッションが一体型の場合であってもトランスミッションのみを取り外すことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、荷重のかかるアウトリガーボックス近傍のキャリアフレームの部分の補強を行うことができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、開口の面積を大きくとることができ、トランスミッションの取り外しがし易くなる。
【0016】
請求項4の発明によれば、プロペラシャフトを傾斜してキャリアフレーム内に配置する場合、キャリアフレームの剛性を損なうことなくプロペラシャフトを配置する空間を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明に係る建設機械用フレームを適用した移動式クレーンの最良の実施の形態である一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
図1に一部を省略した移動式クレーン10示す。この移動式クレーン10は、前後に延びたキャリアフレーム20と、このキャリアフレーム20の前部(図1において右端部)に設けられた走行用の運転キャビン40と、キャリアフレーム20の後部側の上面に設けられた旋回リング50と、この旋回リング50に取り付けられる図示しない旋回台と、この旋回台にブラケット(図示せず)を介して取り付けられたクレーン作業用のブーム(図示せず)と、旋回台の側方に設けたクレーン作業用の作業キャビン(図示せず)と、キャリアフレーム20に取り付けられたエンジン60(図12参照)およびトランスミッション70等とを備えている。61はエンジンフード、62は前輪、63は後輪である。
【0019】
旋回リング50とエンジン60(図12参照)との間のキャリアフレーム20の下部の両側には、アウトリガーボックス80,81が設けられており、アウトリガーボックス80がアウトリガーボックス81より前側に位置している。また、キャリアフレーム20の後端部の下部の両側にはアウトリガーボックス82,83が設けられており、アウトリガーボックス82がアウトリガーボックス83より前側に位置している。
【0020】
そして、キャリアフレーム20と旋回リング50と図示しない旋回台とアウトリガーボックス80〜83等とで建設機械用フレームが構成される。
[キャリアフレーム20]
キャリアフレーム20は、図2および図3に示すように、一対のサイドメンバ21,22と、このサイドメンバ21,22の上部に取り付けられた上板23と、サイドメンバ21,22の下部に設けられたサイドメンバ下板24,25と(図6参照)、サイドメンバ21,22の先端部の前壁部26に取り付けられたフレーム27とを有している。このフレーム27には運転キャビン40が取り付けられる。サイドメンバ下板24,25は、アウトリガーボックス80,81の前方の位置からサイドメンバ21,22の後端まで渡って設けられている。
【0021】
上板23には、先端部からアウトリガーボックス80,81の近傍まで延びた開口23Aが形成されている。この開口23Aの後縁部23Aaは後述するクロスメンバ30に沿うように形成されている。
【0022】
サイドメンバ21,22間には、図4ないし図6に示すように、アウトリガーボックス80の前壁面80aの位置からアウトリガーボックス81の前壁面81aの位置に渡ってクロスメンバ30が取り付けられており、このクロスメンバ30はキャリアフレーム20の長手方向(車両の前後方向)に対して斜めに配設されている。
[クロスメンバ]
このクロスメンバ30は、図7に示すように長方形に形成され、その下部には台形状の凹部31が形成されている。このクロスメンバ30は溶接によりサイドメンバ21,22や上板23やサイドメンバ下板24,25に固定されている。
【0023】
また、サイドメンバ21,22間のアウトリガーボックス81の後面81bの位置にはクロスメンバ32がキャリアフレーム20の長手方向と直交する方向に取り付けられている。
【0024】
このクロスメンバ32は、図8に示すように長方形に形成され、その下部には台形状の凹部33が形成されている。この凹部33の高さh1はクロスメンバ30の凹部31の高さh2より低く設定されている。また、クロスメンバ32は溶接によりサイドメンバ21,22や上板23やサイドメンバ下板24,25に固定されている。
【0025】
また、アウトリガーボックス80の後壁面80bの位置のキャリアフレーム20の上板23とサイドメンバ下板25(図6参照)との間には、図9に示すように長方形に形成されたクロスメンバ35が取り付けられている。このクロスメンバ35は、その幅がサイドメンバ下板25の幅と同一に設定され、溶接によってサイドメンバ21と上板23とサイドメンバ下板25とに固定されている。
【0026】
さらに、旋回リング50の前のキャリアフレーム20の上板23の下方には、補強用のロアープレート36が配置されている。
[ロアープレート36]
ロアープレート36は、図10に示すように、天板部36Aと、この天板部36Aの両側に形成された側板部36B,36Cとを有している。天板部36Aの幅は、図11(A)〜(C)に示すように後方へ行くにしたがって広くなるとともに、天板部36Aの高さは後方へ行くにしたがって低くなっている。
【0027】
側板部36B,36Cは、下部に行くにしたがって離間距離が広くなるように傾斜している。すなわち、ロアープレート36の断面形状は、下方が開放されるとともに拡開していく凹状に形成されている。
【0028】
ロアープレート36の側板部36B,36Cの下部は、図11に示すようにキャリアフレーム20のサイドメンバ下板24,25に溶接などにより固定されている。
【0029】
また、ロアープレート36の端面36aは、クロスメンバ30の面に沿って傾斜しており、この端面36aがクロスメンバ30の面に突き当てられて溶接されている。なお、クロスメンバ32の凹部33内にロアープレート36が入り込んで、クロスメンバ32がロアープレート36を跨いでこのロアープレート36に溶接されている。
[エンジン60,トランスミッション70]
エンジン60およびトランスミッション70は、図12および図13に示すように、図示しないブラケットを介してキャリアフレーム20に取り付けられていて、キャリアフレーム20の上板23の開口23A内にエンジン60が配置され、その開口23Aの下にトランスミッション70が配置されている。
【0030】
そして、トランスミッション70の出力軸に連結された第1プロペラシャフト90は、クロスメンバ30,32の凹部31,33内を通り、ロアープレート36の天板部36Aの下に配置されている。
【0031】
91は第1プロペラシャフト90に連結された第2プロペラシャフト、92,93はデファレンシャルである。
[作 用]
次に、上記のように構成された移動式クレーン10の作用について説明する。
【0032】
上述のように、クロスメンバ30がキャリアフレーム20の長手方向に対して斜めに配設されていることにより、アウトリガーボックス80の前面80aの位置にその長手方向に対して直交する方向に設けるよりも、トランスミッション70を配置した空間が広くなる。すなわち、キャリアフレーム20を長くしなくても、クロスメンバ30を斜めにした分だけトランスミッション70の後に空間S(図4参照)をトランスミッションの抜き代スペースとして確保することができる。
【0033】
このため、エンジン60およびトランスミッション70を合体させた一体型の場合であっても、空間Sがあることによりインプットシャフトの挿入代だけトランスミッション70を後方へずらすことができ、エンジン出力軸(図示せず)からトランスミッション70の入力軸(図示せず)を抜くことができる。このため、トランスミッション70を単体で取り外すことができ、トランスミッション70のメンテナンスや修理が非常に行い易いものとなる。
【0034】
また、上板23の開口23Aの後縁部23Aaをクロスメンバ30に沿って斜めに形成したので、その開口23Aの面積がその後縁部23Aaを斜めにした分だけ広くなり、このためトランスミッション70の取り外しがし易くなる。
【0035】
さらに、クロスメンバ30の他にクロスメンバ32やクロスメンバ35を設けたことにより、荷重の掛かるアウトリガーボックス80,81近傍のキャリアフレーム20の部分を十分に補強することができる。また、クロスメンバ32,35がロアープレート36に溶接接合されていることにより、その部分の補強がさらに十分に行われることになる。
【0036】
また、ロアープレート36の天板部36Aを後方にいくにしたがってその高さを低くしたので、キャリアフレーム20の剛性を損なうことなく、斜めに配置する第1,第2プロペラシャフト90,91の配置空間を確保することができる。
【0037】
上記実施例は、移動式クレーンで説明したが、これに限定されるものではなく、他の建設機械用フレームにも適用できることは勿論であり、この発明は、発明を逸脱しない範囲で設計変更することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明に係る実施例の移動式クレーンを一部を省略して示した側面図である。
【図2】図1の移動式クレーンのキャリアフレームを示した平面図である。
【図3】図2のキャリアフレームのE−E線に沿う断面図である。
【図4】図2のキャリアフレームの一部を拡大した部分拡大平面図である。
【図5】図4に示すキャリアフレームのD−D線に沿う断面図である。
【図6】図4に示すキャリアフレームの底面図である。
【図7】長手方向に対して斜めに配置するクロスメンバを示した正面図である。
【図8】長手方向に対して直交方向に配設するクロスメンバを示した正面図である。
【図9】アウトリガーボックスの後壁面の上のサイドメンバ内に設けるクロスメンバを示した正面図である。
【図10】図5に示すロアープレートを示した斜視図である。
【図11】(A)は図5のA−A線に沿う断面図、 (B)は図5のB−B線に沿う断面図、 (C)は図5のC−C線に沿う断面図である。
【図12】図2に示すキャリアフレームにエンジンおよびトランスミッションを取り付けた状態を示した平面図である。
【図13】図2に示すキャリアフレームにエンジンおよびトランスミッションを取り付けた状態を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 移動式クレーン
20 キャリアフレーム
21,22 サイドメンバ
23 上板
23A 開口
30 クロスメンバ
36 ロアープレート
60 エンジン
70 トランスミッション
80,81 アウトリガーボックス
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャリアフレームの上板の開口にエンジンおよびトランスミッションを配置する建設機械用フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャリアフレーム上に水平旋回可能に取り付けられる旋回台と、この旋回台に起伏可能に取り付けられた伸縮可能なクレーン作業用のブームとを備えた建設機械用フレームが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる建設機械用フレームでは、キャリアフレームである型材の上面には旋回台を取り付けるための旋回リングが設けられている。また、型材の一端側にはクロスメンバが型材の長手方向に対して直交する方向に取り付けられていて、型材を補強している。
【特許文献1】実開昭59−155274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来の建設機械用フレームでは、エンジンおよびトランスミッションを取り付けるために型材の上面に開口が設けられている。この開口の後縁部は、クロスメンバが型材の長手方向に対して直交する方向に取り付けられていることにより、型材の長手方向に対して直交するように形成されている。
【0005】
そして、エンジンが上記開口内に配置され、トランスミッションがその開口の下側に取り付けられる。
【0006】
このため、エンジンおよびトランスミッションを合体させた一体型の場合、修理やメンテナンスの際、トランスミッションのみをその開口から引き上げて取り出すとき、エンジン出力軸に対するインプットシャフトの挿入代だけトランスミッションを後方へずらさなければ、エンジン出力軸からトランスミッションの入力軸を抜くことができない。このため、クロスメンバなどが設けられていることによりトランスミッションを後方へずらせるスペースがない場合、エンジンおよびトランスミッションを一体のまま取り外さなければならず、その取り外し作業は大掛かりなものになってしまう。
【0007】
また、トランスミッションの抜き代スペースを確保すると、その分キャリアフレームが長くなってしまう問題があった。
【0008】
この発明の目的は、キャリアフレームを長くすることなく、トランスミッションの抜き代を確保することのできる建設機械用フレームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、エンジンで回転駆動される車輪が取り付けられるキャリアフレームと、このキャリアフレーム上に水平旋回可能に取り付けられるとともにクレーン作業用のブームを取り付けた旋回台と、前記旋回台の前方の位置であって前記キャリアフレームの下部の左右に前後方向の位置が異なるように設けられた一対のアウトリガーボックスとを備え、前記キャリアフレームは、前後に延びた一対のサイドメンバと、このサイドメンバの上部に取り付けられた上板と、この上板の前記一対のアウトリガーボックスの前側位置に形成された開口とを有し、この開口内に前記エンジンを配置するとともに前記トランスミッションをその開口の下側に取り付ける建設機械用フレームであって、
前記一対のアウトリガーボックスのうち前側にある一方のアウトリガーボックスから他方のアウトリガーボックスへ向かうように、前記一対のサイドメンバ間にクロスメンバを前後方向に対して斜めに配設したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、前記クロスメンバは、一方のアウトリガーボックスの前壁面の位置から他方のアウトリガーボックスの前壁面へ向かうように配設されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、前記開口の後縁部を前記クロスメンバに沿うように斜めに形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、前記開口の後側に且つキャリアフレーム内の下部に、下方が開放された断面形状が凹状のロアプレートが取り付けられており、
このロアープレートの凹状の天板部の高さ位置が後方にいくにしたがって低くなるとともに、その天板部の幅が広くなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、クロスメンバを斜めに設けたことにより、キャリアフレームを長くすることなくトランスミッションの抜き代を確保することができ、エンジンおよびトランスミッションが一体型の場合であってもトランスミッションのみを取り外すことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、荷重のかかるアウトリガーボックス近傍のキャリアフレームの部分の補強を行うことができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、開口の面積を大きくとることができ、トランスミッションの取り外しがし易くなる。
【0016】
請求項4の発明によれば、プロペラシャフトを傾斜してキャリアフレーム内に配置する場合、キャリアフレームの剛性を損なうことなくプロペラシャフトを配置する空間を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明に係る建設機械用フレームを適用した移動式クレーンの最良の実施の形態である一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
図1に一部を省略した移動式クレーン10示す。この移動式クレーン10は、前後に延びたキャリアフレーム20と、このキャリアフレーム20の前部(図1において右端部)に設けられた走行用の運転キャビン40と、キャリアフレーム20の後部側の上面に設けられた旋回リング50と、この旋回リング50に取り付けられる図示しない旋回台と、この旋回台にブラケット(図示せず)を介して取り付けられたクレーン作業用のブーム(図示せず)と、旋回台の側方に設けたクレーン作業用の作業キャビン(図示せず)と、キャリアフレーム20に取り付けられたエンジン60(図12参照)およびトランスミッション70等とを備えている。61はエンジンフード、62は前輪、63は後輪である。
【0019】
旋回リング50とエンジン60(図12参照)との間のキャリアフレーム20の下部の両側には、アウトリガーボックス80,81が設けられており、アウトリガーボックス80がアウトリガーボックス81より前側に位置している。また、キャリアフレーム20の後端部の下部の両側にはアウトリガーボックス82,83が設けられており、アウトリガーボックス82がアウトリガーボックス83より前側に位置している。
【0020】
そして、キャリアフレーム20と旋回リング50と図示しない旋回台とアウトリガーボックス80〜83等とで建設機械用フレームが構成される。
[キャリアフレーム20]
キャリアフレーム20は、図2および図3に示すように、一対のサイドメンバ21,22と、このサイドメンバ21,22の上部に取り付けられた上板23と、サイドメンバ21,22の下部に設けられたサイドメンバ下板24,25と(図6参照)、サイドメンバ21,22の先端部の前壁部26に取り付けられたフレーム27とを有している。このフレーム27には運転キャビン40が取り付けられる。サイドメンバ下板24,25は、アウトリガーボックス80,81の前方の位置からサイドメンバ21,22の後端まで渡って設けられている。
【0021】
上板23には、先端部からアウトリガーボックス80,81の近傍まで延びた開口23Aが形成されている。この開口23Aの後縁部23Aaは後述するクロスメンバ30に沿うように形成されている。
【0022】
サイドメンバ21,22間には、図4ないし図6に示すように、アウトリガーボックス80の前壁面80aの位置からアウトリガーボックス81の前壁面81aの位置に渡ってクロスメンバ30が取り付けられており、このクロスメンバ30はキャリアフレーム20の長手方向(車両の前後方向)に対して斜めに配設されている。
[クロスメンバ]
このクロスメンバ30は、図7に示すように長方形に形成され、その下部には台形状の凹部31が形成されている。このクロスメンバ30は溶接によりサイドメンバ21,22や上板23やサイドメンバ下板24,25に固定されている。
【0023】
また、サイドメンバ21,22間のアウトリガーボックス81の後面81bの位置にはクロスメンバ32がキャリアフレーム20の長手方向と直交する方向に取り付けられている。
【0024】
このクロスメンバ32は、図8に示すように長方形に形成され、その下部には台形状の凹部33が形成されている。この凹部33の高さh1はクロスメンバ30の凹部31の高さh2より低く設定されている。また、クロスメンバ32は溶接によりサイドメンバ21,22や上板23やサイドメンバ下板24,25に固定されている。
【0025】
また、アウトリガーボックス80の後壁面80bの位置のキャリアフレーム20の上板23とサイドメンバ下板25(図6参照)との間には、図9に示すように長方形に形成されたクロスメンバ35が取り付けられている。このクロスメンバ35は、その幅がサイドメンバ下板25の幅と同一に設定され、溶接によってサイドメンバ21と上板23とサイドメンバ下板25とに固定されている。
【0026】
さらに、旋回リング50の前のキャリアフレーム20の上板23の下方には、補強用のロアープレート36が配置されている。
[ロアープレート36]
ロアープレート36は、図10に示すように、天板部36Aと、この天板部36Aの両側に形成された側板部36B,36Cとを有している。天板部36Aの幅は、図11(A)〜(C)に示すように後方へ行くにしたがって広くなるとともに、天板部36Aの高さは後方へ行くにしたがって低くなっている。
【0027】
側板部36B,36Cは、下部に行くにしたがって離間距離が広くなるように傾斜している。すなわち、ロアープレート36の断面形状は、下方が開放されるとともに拡開していく凹状に形成されている。
【0028】
ロアープレート36の側板部36B,36Cの下部は、図11に示すようにキャリアフレーム20のサイドメンバ下板24,25に溶接などにより固定されている。
【0029】
また、ロアープレート36の端面36aは、クロスメンバ30の面に沿って傾斜しており、この端面36aがクロスメンバ30の面に突き当てられて溶接されている。なお、クロスメンバ32の凹部33内にロアープレート36が入り込んで、クロスメンバ32がロアープレート36を跨いでこのロアープレート36に溶接されている。
[エンジン60,トランスミッション70]
エンジン60およびトランスミッション70は、図12および図13に示すように、図示しないブラケットを介してキャリアフレーム20に取り付けられていて、キャリアフレーム20の上板23の開口23A内にエンジン60が配置され、その開口23Aの下にトランスミッション70が配置されている。
【0030】
そして、トランスミッション70の出力軸に連結された第1プロペラシャフト90は、クロスメンバ30,32の凹部31,33内を通り、ロアープレート36の天板部36Aの下に配置されている。
【0031】
91は第1プロペラシャフト90に連結された第2プロペラシャフト、92,93はデファレンシャルである。
[作 用]
次に、上記のように構成された移動式クレーン10の作用について説明する。
【0032】
上述のように、クロスメンバ30がキャリアフレーム20の長手方向に対して斜めに配設されていることにより、アウトリガーボックス80の前面80aの位置にその長手方向に対して直交する方向に設けるよりも、トランスミッション70を配置した空間が広くなる。すなわち、キャリアフレーム20を長くしなくても、クロスメンバ30を斜めにした分だけトランスミッション70の後に空間S(図4参照)をトランスミッションの抜き代スペースとして確保することができる。
【0033】
このため、エンジン60およびトランスミッション70を合体させた一体型の場合であっても、空間Sがあることによりインプットシャフトの挿入代だけトランスミッション70を後方へずらすことができ、エンジン出力軸(図示せず)からトランスミッション70の入力軸(図示せず)を抜くことができる。このため、トランスミッション70を単体で取り外すことができ、トランスミッション70のメンテナンスや修理が非常に行い易いものとなる。
【0034】
また、上板23の開口23Aの後縁部23Aaをクロスメンバ30に沿って斜めに形成したので、その開口23Aの面積がその後縁部23Aaを斜めにした分だけ広くなり、このためトランスミッション70の取り外しがし易くなる。
【0035】
さらに、クロスメンバ30の他にクロスメンバ32やクロスメンバ35を設けたことにより、荷重の掛かるアウトリガーボックス80,81近傍のキャリアフレーム20の部分を十分に補強することができる。また、クロスメンバ32,35がロアープレート36に溶接接合されていることにより、その部分の補強がさらに十分に行われることになる。
【0036】
また、ロアープレート36の天板部36Aを後方にいくにしたがってその高さを低くしたので、キャリアフレーム20の剛性を損なうことなく、斜めに配置する第1,第2プロペラシャフト90,91の配置空間を確保することができる。
【0037】
上記実施例は、移動式クレーンで説明したが、これに限定されるものではなく、他の建設機械用フレームにも適用できることは勿論であり、この発明は、発明を逸脱しない範囲で設計変更することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明に係る実施例の移動式クレーンを一部を省略して示した側面図である。
【図2】図1の移動式クレーンのキャリアフレームを示した平面図である。
【図3】図2のキャリアフレームのE−E線に沿う断面図である。
【図4】図2のキャリアフレームの一部を拡大した部分拡大平面図である。
【図5】図4に示すキャリアフレームのD−D線に沿う断面図である。
【図6】図4に示すキャリアフレームの底面図である。
【図7】長手方向に対して斜めに配置するクロスメンバを示した正面図である。
【図8】長手方向に対して直交方向に配設するクロスメンバを示した正面図である。
【図9】アウトリガーボックスの後壁面の上のサイドメンバ内に設けるクロスメンバを示した正面図である。
【図10】図5に示すロアープレートを示した斜視図である。
【図11】(A)は図5のA−A線に沿う断面図、 (B)は図5のB−B線に沿う断面図、 (C)は図5のC−C線に沿う断面図である。
【図12】図2に示すキャリアフレームにエンジンおよびトランスミッションを取り付けた状態を示した平面図である。
【図13】図2に示すキャリアフレームにエンジンおよびトランスミッションを取り付けた状態を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 移動式クレーン
20 キャリアフレーム
21,22 サイドメンバ
23 上板
23A 開口
30 クロスメンバ
36 ロアープレート
60 エンジン
70 トランスミッション
80,81 アウトリガーボックス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで回転駆動される車輪が取り付けられるキャリアフレームと、このキャリアフレーム上に水平旋回可能に取り付けられるとともにクレーン作業用のブームを取り付けた旋回台と、前記旋回台の前方の位置であって前記キャリアフレームの下部の左右に前後方向の位置が異なるように設けられた一対のアウトリガーボックスとを備え、前記キャリアフレームは、前後に延びた一対のサイドメンバと、このサイドメンバの上部に取り付けられた上板と、この上板の前記一対のアウトリガーボックスの前側位置に形成された開口とを有し、この開口内に前記エンジンを配置するとともに前記トランスミッションをその開口の下側に取り付ける建設機械用フレームであって、
前記一対のアウトリガーボックスのうち前側にある一方のアウトリガーボックスから他方のアウトリガーボックスへ向かうように、前記一対のサイドメンバ間にクロスメンバを前後方向に対して斜めに配設したことを特徴とする建設機械用フレーム。
【請求項2】
前記クロスメンバは、一方のアウトリガーボックスの前壁面の位置から他方のアウトリガーボックスの前壁面へ向かうように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械用フレーム。
【請求項3】
前記開口の後縁部を前記クロスメンバに沿うように斜めに形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建設機械用フレーム。
【請求項4】
前記開口の後側に且つキャリアフレーム内の下部に、下方が開放された断面形状が凹状のロアプレートが取り付けられており、
このロアープレートの凹状の天板部の高さ位置が後方にいくにしたがって低くなるとともに、その天板部の幅が広くなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の建設機械用フレーム。
【請求項1】
エンジンで回転駆動される車輪が取り付けられるキャリアフレームと、このキャリアフレーム上に水平旋回可能に取り付けられるとともにクレーン作業用のブームを取り付けた旋回台と、前記旋回台の前方の位置であって前記キャリアフレームの下部の左右に前後方向の位置が異なるように設けられた一対のアウトリガーボックスとを備え、前記キャリアフレームは、前後に延びた一対のサイドメンバと、このサイドメンバの上部に取り付けられた上板と、この上板の前記一対のアウトリガーボックスの前側位置に形成された開口とを有し、この開口内に前記エンジンを配置するとともに前記トランスミッションをその開口の下側に取り付ける建設機械用フレームであって、
前記一対のアウトリガーボックスのうち前側にある一方のアウトリガーボックスから他方のアウトリガーボックスへ向かうように、前記一対のサイドメンバ間にクロスメンバを前後方向に対して斜めに配設したことを特徴とする建設機械用フレーム。
【請求項2】
前記クロスメンバは、一方のアウトリガーボックスの前壁面の位置から他方のアウトリガーボックスの前壁面へ向かうように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械用フレーム。
【請求項3】
前記開口の後縁部を前記クロスメンバに沿うように斜めに形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建設機械用フレーム。
【請求項4】
前記開口の後側に且つキャリアフレーム内の下部に、下方が開放された断面形状が凹状のロアプレートが取り付けられており、
このロアープレートの凹状の天板部の高さ位置が後方にいくにしたがって低くなるとともに、その天板部の幅が広くなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の建設機械用フレーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−35224(P2009−35224A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203292(P2007−203292)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】
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