説明

弁体及び流量制御弁並びに流量制御装置

【課題】 弁体と弁シート部との間の凝着摩耗の発生を防止する。
【解決手段】 エンジンの流量制御装置4は、エンジンのボア7に設けられたスロットルバルブを迂回する通路壁20,30に形成された弁シート部28を有するバイパス通路48と、弁シート部28をステッピングモータ55の作動により弁体100を軸方向に移動させることにより開閉するISCバルブ34とを備える。弁体100と弁シート部28との相互に接触し合う接触部のいずれか一方の接触部としての弁シート部28を樹脂材料からなる樹脂層で形成するとともに、弁体の接触部を耐摩耗性に優れた耐摩耗層130で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体及び流量制御弁並びに流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジン(「内燃機関」ともいう。)の流量制御装置には、例えば、図16に断面図で示すように、エンジンのボア201に設けられたスロットルバルブ202を迂回するバイパス通路203と、バイパス通路203を流れる補助空気量を制御するアイドルスピードコントロールバルブ(ISCバルブという。)204とを備えるものがある。ISCバルブ204は、アクチュエータとしてのステッピングモータ205を備える。ステッピングモータ205は、ロータ206の回転に基づいて軸方向に移動する軸部材207を備える。軸部材207に取り付けられた弁体208は、軸方向(図16において左右方向)の移動により、バイパス通路203の通路壁211に形成された弁シート部210を開閉してその通路断面積を調整することにより、バイパス通路203を流れる吸入空気量を所定量に制御する。なお、上記した流量制御装置には、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−227232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、軽量化を図るために、弁体208、及び、弁シート部210を含む通路壁211の樹脂化が進んでいる。ところで、弁体208と弁シート部210とが樹脂同士接触となる場合がある。この場合、全閉時において、エンジン振動等により弁シート部210と弁体208との間に樹脂同士の接触による凝着摩耗が発生する場合があった。このように、弁体208と弁シート部210との間に発生する凝着摩耗は、全閉時の補助空気量の増加を招くことから好ましくない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、弁体と弁シート部との間の凝着摩耗の発生を防止することのできる弁体及び流量制御弁並びに流量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とする弁体及び流量制御弁並びに流量制御装置により解決することができる。
すなわち、請求項1に記載された弁体によると、流体が流れる流体通路の通路壁に形成された弁シート部を軸方向の移動により開閉しかつ樹脂材料で形成された弁本体を主体とするものである。そして、弁本体に、弁シート部に接触可能でかつ耐摩耗性に優れた耐摩耗層を設けている。したがって、例えば、弁シート部に、弁体と接触する樹脂材料からなる樹脂層が設けられた場合には、全閉時において、弁体の耐摩耗層が弁シート部(樹脂層)に接触することにより、樹脂同士の接触を回避することができる。このため、弁体と弁シート部との間の凝着摩耗の発生を防止あるいは低減することができる。
【0007】
また、請求項2に記載された弁体によると、弁本体の耐摩耗層が、合金材料、軽金属材料等の金属材料で形成された耐摩耗部材からなる弁体を提供することができる。
【0008】
また、請求項3に記載された弁体によると、耐摩耗部材が、ステンレス材あるいはアルミニウム材のいずれかの金属材料で形成されていることにより、弁体を軽量化することができ、弁体の作動性を向上することができる。
【0009】
また、請求項4に記載された弁体によると、弁本体を耐摩耗部材にインサート成形により容易に一体形成することができる。
【0010】
また、請求項5に記載された弁体によると、弁本体を耐摩耗部材にインサート成形すると同時に、耐摩耗部材の位置ずれ制限手段により、耐摩耗部材に対する弁本体の軸方向及び周方向の位置ずれを制限することができる。
【0011】
また、請求項6に記載された弁体によると、弁本体の耐摩耗層が、DLCコート(非晶質炭素被膜)等の表面処理により形成された表面処理層からなる弁体を提供することができる。また、表面処理層は、弁体の軽量化に有効で、弁体の作動性を向上することができる。
【0012】
また、請求項7に記載された弁体によると、アクチュエータの作動により軸方向に移動される軸部材に弁本体をインサート成形により容易に一体形成することができる。
【0013】
また、請求項8に記載された弁体によると、弁本体を軸部材にインサート成形すると同時に、軸部材の位置ずれ制限手段により、軸部材に対する弁本体の軸方向及び周方向の位置ずれを制限することができる。
【0014】
また、請求項9に記載された流量制御弁によると、弁体と弁シート部との間の凝着摩耗の発生を防止することのできる請求項1〜8のいずれか1つに記載の弁体を備えた流量制御弁を提供することができる。
【0015】
また、請求項10に記載された流量制御弁によると、アクチュエータとしてのステッピングモータが、ロータの回転に基づいて軸方向に移動されかつ弁体を一体化した軸部材を備える。このため、軸部材と一体で弁体が開閉することにより、弁体の開閉にかかる直進性を向上することができる。
【0016】
また、請求項11に記載された流量制御装置によると、流体が流れる流体通路の通路壁に形成された弁シート部と、弁シート部を軸方向の移動により開閉する弁体とを備える。そして、弁体と弁シート部との相互に接触し合う接触部のいずれか一方の接触部を樹脂材料からなる樹脂層で形成するとともに、他方の接触部を耐摩耗性に優れた耐摩耗層で形成したものである。したがって、全閉時において、弁体と弁シート部とによる樹脂同士の接触を回避することができる。このため、弁体と弁シート部との間の凝着摩耗の発生を防止あるいは低減することができる。
【0017】
また、請求項12に記載されたエンジンの流量制御装置によると、エンジンの吸気通路に設けられたスロットルバルブを迂回しかつ通路壁に形成された弁シート部を有する補助空気通路と、アクチュエータの作動により弁体を軸方向に移動させることにより弁シート部を開閉するアイドルスピードコントロールバルブとを備える。そして、弁体と弁シート部との相互に接触し合う接触部のいずれか一方の接触部を樹脂材料からなる樹脂層で形成するとともに、他方の接触部を耐摩耗性に優れた耐摩耗層で形成したものである。したがって、全閉時において、弁体と弁シート部とによる樹脂同士の接触を回避することができる。このため、弁体と弁シート部との間の凝着摩耗の発生を防止あるいは低減することができる。
【0018】
また、請求項13に記載されたエンジンの流量制御装置によると、アイドルスピードコントロールバルブが、弁体と弁シート部との間の凝着摩耗の発生を防止することのできる弁体を備えた請求項9または10に記載の流量制御弁である、エンジンの流量制御装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、弁体と弁シート部との間の凝着摩耗の発生を防止することのできる弁体及び流量制御弁並びに流量制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0021】
[実施例1]
本発明の実施例1を図面にしたがって説明する。本実施例は、自動二輪車、原付自転車等の二輪車に用いられるエンジンの吸気装置について説明する。なお、図1はエンジンの吸気装置を示す断面図、図2はスロットルボデーと流量制御装置との関係を示す断面図、図3は図2のIII−III線矢視断面図である。
図1に示すように、エンジンの吸気装置1は、スロットルボデー2とデバイスブロック3とを備えている。説明の都合上、スロットルボデー2を説明した後で、デバイスブロック3を説明する。
【0022】
まず、スロットルボデー2を説明する。スロットルボデー2は、図1に示すように、ボデー本体5を備えている。ボデー本体5は、例えば、樹脂製で、ほぼ中空円筒状のボア壁部6を有している。ボア壁部6内が、図1において紙面表裏方向に貫通するボア7となっている。なお、図示しないが、ボア壁部6の上流側端部となる一端部にはエアクリーナ(図示省略)が連通され、また、ボア壁部6の下流側端部となる他端部にはインテークマニホールド(図示省略)が連通される。したがって、エアクリーナから流れてくる吸入空気は、ボア壁部6内のボア7を通じてインテークマニホールドへ流れてゆく。
【0023】
前記ボア壁部6には、前記ボア7を径方向(図1において左右方向)に横切るスロットルシャフト9が配置されている。スロットルシャフト9は、例えば、金属製で、ボア壁部6に一体形成された左右一対の軸受ボス部10,11内に対して回転可能に支持されている。スロットルシャフト9の両端部には、ゴム製のシール材12が装着されている。両シール材12は、それぞれ軸受ボス部10,11の内周面に弾性的にかつ摺動可能に接触しており、スロットルシャフト9と軸受ボス部10,11との間をシールしている。
【0024】
前記スロットルシャフト9上には、前記ボア7を開閉するほぼ円板状のバタフライ式のスロットルバルブ14が設けられている。スロットルバルブ14は、スロットルシャフト9と一体で回転してボア7を開閉することにより、ボア7を流れる吸入空気量を調整すなわち制御する。また、スロットルシャフト9の一端部(図1において左端部)には、スロットルレバー15が設けられている。スロットルレバー15と、それに対向する軸受ボス部10との間には、ほぼ同一軸線上に位置するコイルスプリングからなるリターンスプリング16が介装されている。リターンスプリング16は、スロットルレバー15と共に、スロットルシャフト9及びスロットルバルブ14を常に閉方向へ付勢している。また、図示しないが、スロットルレバー15には、スロットル操作装置につながるアクセルワイヤが接続されかつ巻装されている。
【0025】
前記スロットルシャフト9の他端部(図1において右端部)には、デバイスブロック3が備えるスロットルポジションセンサ32のセンサロータ39(後述する。)が連結される連結部18が形成されている。また、スロットルシャフト9の連結部18側における軸受ボス部11の周りには、デバイスブロック3を設置するためのブロック設置部20が一体形成されている。
【0026】
図2に示すように、前記ボデー本体5のブロック設置部20には、バイパス入口孔23及びバイパス出口孔24が形成されている。バイパス入口孔23は、前記スロットルバルブ14より上流側(図2において左側)において、ボア7とブロック設置部20の外端面20aとを連通している。
また、バイパス出口孔24は、スロットルバルブ14より下流側(図2において右側)において、ボア7とブロック設置部20の外端面20aとを連通している。さらに、ブロック設置部20の外端面20aには、バイパス入口孔23とバイパス出口孔24の開口端部とを面方向に相互に連絡するバイパス通路溝26が形成されている。
【0027】
しかして、前記バイパス出口孔24は、円形状の貫通孔で形成されている。バイパス出口孔24におけるバイパス通路溝26の溝底面に開口する口縁部は、弁シート部28として形成されている(図3参照。)。弁シート部28は、ブロック設置部20を有するボデー本体5を形成する樹脂材料で形成されている。また、弁シート部28は、後述するアイドルスピードコントロールバルブ34の弁体100の軸方向(図2において上下方向)の移動によって開閉される。なお、弁シート部28は、本明細書でいう「樹脂層」に相当する。
【0028】
次に、デバイスブロック3について説明する。図1に示すように、デバイスブロック3は、ブロック本体30に、スロットルポジションセンサ32、及び、アイドルスピードコントロールバルブ34(図2及び図3参照。)が、エンジンに関連するデバイスとしてモジュール化して構成されている。ブロック本体30は、例えば、樹脂製で、ほぼブロック状をなしている。
【0029】
図1に示すように、前記ブロック本体30は、前記ボデー本体5のブロック設置部20の外端面20aに対して、ボルト等(図示しない。)により面接触状に締結されている。ブロック本体30とブロック設置部20との接合面間には、両者間を弾性的にシールするシール部材36が介装されている。また、ブロック本体30の反取付側の面(図1において左側面)には、スロットルポジションセンサ32を覆うカバー体37が密閉状に接合されている。なお、カバー体37は、アイドルスピードコントロールバルブ34をブロック本体30に取り付けるために、その周辺部は露出している。
【0030】
前記スロットルポジションセンサ32は、センサロータ39を内蔵している。センサロータ39は、前記スロットルシャフト9の連結部18に嵌合されており、スロットルシャフト9と一体的に回転する。また、センサロータ39には、前記ブロック本体30内に配置された配線基板40上を摺動する摺動接点41が設けられている。スロットルポジションセンサ32は、センサロータ39の回転にともない、摺動接点41が配線基板40上を摺動することにより、後述する制御手段に検出信号を出力する。
【0031】
前記ブロック本体30には、前記配線基板40に電気的につながるターミナル44を備えるコネクタ部43が樹脂モールド成形により一体形成されている。コネクタ部43は、図示しない電子制御ユニットいわゆるECUからなる制御手段に電気的につながる外部コネクタ(図示省略。)が差し込みによって接続可能に形成されている。制御手段は、各種検出手段(センサ、スイッチ等)からの出力信号に基づいて各種装置を制御する。また、制御手段には、前記スロットルポジションセンサ32からの検出信号が入力される。また、制御手段は、各種検出手段からの出力信号に基づいて、前記アイドルスピードコントロールバルブ34を制御する。
【0032】
図2に示すように、前記ブロック本体30の取付側の面には、前記ボデー本体5のブロック設置部20の外端面20aと面接触する接触面46が形成されている。その接触面46は、前記バイパス通路溝26の開放端面を閉鎖することにより、バイパス通路溝26内に、前記スロットルバルブ14を迂回する閉断面のバイパス通路48を形成する。バイパス通路48は、バイパス通路48は、前記ブロック設置部20に形成されたバイパス入口孔23及びバイパス出口孔24と連通する。
【0033】
前記ブロック本体30には、前記アイドルスピードコントロールバルブ34のバルブヘッド部67(後述する。)を嵌合するための嵌合孔50が形成されている。嵌合孔50は、前記バイパス通路48に連通しかつブロック本体30の反取付側の面に開口する円形状の貫通孔で形成されている。また、嵌合孔50は、前記ボデー本体5のブロック設置部20に形成された前記バイパス出口孔24と同一軸線L(図3参照。)上において、バイパス出口孔24より大きい口径をもって形成されている。
【0034】
上記したデバイスブロック3は、図1に示すように、スロットルボデー2のボデー本体5のブロック設置部20の外端面20aに対して、前に述べたように、ブロック本体30をボルト等(図示しない。)により締結することによって設置されている。また、ボデー本体5にデバイスブロック3を設置する際には、スロットルシャフト9の連結部18に、スロットルポジションセンサ32のセンサロータ39が係合されることにより、スロットルシャフト9とセンサロータ39とが一体的に連結される。したがって、スロットルポジションセンサ32は、センサロータ39の回転をもって、スロットルバルブ14の開度を検出することができる。また、スロットルシャフト9の連結部18とセンサロータ39との間には、両者間を径方向に関して弾性的に保持する板ばね52が介在される。
【0035】
次に、前記デバイスブロック3にモジュール化されたアイドルスピードコントロールバルブ(以下、「ISCバルブ」という。)34を説明する。なお、図4はISCバルブの全閉状態における弁体と弁シート部との関係を示す断面図、図5は同じく全開状態における断面図、図6はISCバルブを示す側面図、図7は図6のVII−VII線矢視断面図である。また、説明の都合上、ISCバルブ34は、図4〜図7に示すように、弁体100を下向きとした状態を基準として説明する。
【0036】
図2及び図3に示すように、ISCバルブ34は、前記バイパス通路48の弁シート部28を開閉することにより、バイパス通路48を流れる吸入空気量を制御するものである(図4及び図5参照。)。また、ISCバルブ34と弁シート部28を有するバイパス通路48とを備えることにより、流量制御装置4が構成されている。なお、バイパス通路48は、本明細書でいう「流体通路」、「補助空気通路」に相当する。また、ボデー本体5のブロック設置部20、及び、デバイスブロック3のブロック本体30は、本明細書でいう「補助空気通路の通路壁」を構成している。また、ISCバルブ34は、本明細書でいう「流量制御弁」に相当する。また、バイパス通路48を流れる吸入空気は、本明細書でいう「補助空気」に相当する。
【0037】
図7に示すように、前記ISCバルブ34は、アクチュエータとしてのステッピングモータ(ステップモータ、ステッパモータともいう。)55を備えている。ステッピングモータ55は、樹脂製のカバー部材56内に収容されたステータ58と、ステータ58内で回転するロータ60を備えている。
ステータ58は、樹脂製のボビン62を備えている。ボビン62は、4個のヨーク63及び4個(図7では2個を示す。)の端子64をインサート成形によって一体成形したものである。ボビン62には、ヨーク63を被覆する被覆部65のほか、その下端部の外周部にフランジ状に形成された取付プレート部66、取付プレート部66の下端面に突出する円筒状のバルブヘッド部67、ボビン62の上端面を閉鎖する端板部68が一体形成されている。また、ヨーク63は、2個1組として軸方向に積層状に配置されている。また、端板部68には、各端子64の基端部が埋設されている。各端子64は、前記カバー部材56に形成されるコネクタ部70内に突出されている。また、ボビン62の上端部には、後述するロータ60の上端部を回転可能に支持する軸孔73を有する金属製の軸受プレート72が設けられている。また、ボビン62の外周部には、コイル線76が上下2段に巻装されている。コイル線76の端末部は各端子64に接続されている。さらに、ステータ58の外周部には、磁性体からなる筒状部材77が外嵌されている。
【0038】
前記ステータ58には、前記カバー部材56がその上方から外嵌されている。カバー部材56の下端部を熱かしめにより折り曲げることにより、カバー部材56に前記ボビン62の取付プレート部66が抜け止めされている。これにより、ステータ58にカバー部材56が一体化されている。カバー部材56と取付プレート部66との嵌合面間には、両者間を弾性的にシールするOリング(オーリング)78が介在されている。また、カバー部材56の下端部の外周部には、フランジ状に形成された取付フランジ部79が形成されている。取付フランジ部79には、適数個(図7では1個を示す。)の金属製のカラー79aが設けられている。カラー79aには、取付フランジ部79を前記デバイスブロック3のブロック本体30に締結するためのボルト(図示しない。)が挿通されるようになっている。
【0039】
また、前記ボビン62のバルブヘッド部67内には、同一軸線Lをなす樹脂製のリテーナ80が圧入されている。リテーナ80は、ほぼ二重円筒状をなしており、バルブヘッド部67内に圧入される外筒側の取付筒部81と、内筒側のガイド筒部82とを同一軸線L上に有している。取付筒部81の上部とガイド筒部82の上端部が架設部83により連結されている。取付筒部81の上端部内には、ボール軸受からなる軸受85を介して、ロータ60の軸受スリーブ92(後述する。)が回転可能に支持されている。また、ガイド筒部82内は、軸線Lに直交する断面が異形すなわち非円形のガイド孔(符号省略。)となっている。なお、ガイド孔には、後述する軸部材110のスライド軸部113が軸回り方向に回り止めした状態で軸方向にスライド可能に挿入される。
【0040】
前記ロータ60は、樹脂製のロータ本体87と、ロータ本体87の外周部に設けられたマグネット88とを備えている。ロータ本体87は、中空円筒状に形成されている。また、ロータ本体87の上端部には、支持軸部87aが突出されている。また、ロータ本体87の中空部内には、めねじ孔90が形成されている。また、ロータ本体87の下部には、同一軸線L上に位置する中空円筒状をなす金属製の軸受スリーブ92の上半部がインサート成形により固着されている。軸受スリーブ92の下半部は、前記リテーナ80の取付筒部81内に前記軸受85を介して回転可能に支持されている。このようにして、リテーナ80にロータ60が軸受85を介して回転可能に支持されることにより、ロータサブアッセンブリ(符号省略。)が構成されている。
【0041】
前記ロータサブアッセンブリは、前記リテーナ80を、前記ボビン62の取付プレート部66のバルブヘッド部67内に圧入することにより、前記ステータ58に組付けられている。これとともに、ロータ本体87の支持軸部87aが、ボビン62の軸受プレート72の軸孔73内に回転可能に支持される。また、マグネット88は、前記ヨーク63の内側面に所定の隙間を隔ててて対応している。マグネット88は、ヨーク63の各磁極歯に対応する数のN極、S極が交互に着磁されている。
【0042】
前記ロータ本体87のめねじ孔90には、金属製の軸部材110のねじ軸部112が螺合されている。また、軸部材110のスライド軸部113は、前記リテーナ80のガイド筒部82内に軸回り方向に回り止めされた状態で、軸方向にスライド可能に挿入されている。したがって、前記ロータ60の回転(正転及び逆転)により、めねじ孔90とねじ軸部112の螺合を介して、軸部材110が軸方向すなわち上下方向に移動されることになる。
【0043】
上記のように構成されたステッピングモータ55の直動出力軸である軸部材110の先端部すなわち下端部には、その軸部材110を弁軸として兼用する弁体100が設けられている。なお、弁体100の詳細な構成については後で詳しく説明する。
また、前記リテーナ80のガイド筒部82には、コイルスプリングからなるバルブスプリング98が外嵌されている。バルブスプリング98は、前記リテーナ80の架設部83と、弁体100との間に介在されている。バルブスプリング98は、常に弁体100を下方へ付勢している。
【0044】
上記したISCバルブ34(図6及び図7参照)は、図3に示すように、デバイスブロック3に設置される。このとき、カバー部材56の取付フランジ部79が前記デバイスブロック3のブロック本体30にボルト等(図示しない。)により締結される。また、ブロック本体30と取付プレート部66との接合面間には、両者間を弾性的にシールするOリング99が介在される。また、バルブヘッド部67がブロック本体30の嵌合孔50に嵌合される。また、ISCバルブ34を設置したデバイスブロック3を、前記スロットルボデー2のボデー本体5のブロック設置部20に前に述べたように設置することにより、ISCバルブ34の弁体100が、ブロック設置部20のバイパス出口孔24の弁シート部28に対して同一軸線L上に整合する。また、ISCバルブ34のコネクタ部70には、前記制御手段(図示しない。)に通じる端子を有する外部コネクタが接続される。
【0045】
次に、上記したISCバルブ34の作動について説明する。ISCバルブ34のステッピングモータ55は、エンジンのアイドル時において、制御手段(図示しない。)により駆動制御される。詳しくは、図4に示すように、ISCバルブ34の弁体100がバイパス出口孔24の弁シート部28に接触した全閉状態において、制御手段(図示しない。)からステッピングモータ55に開弁信号が出力されると、ロータ60が開弁方向に回転(例えば、正転)される。これにより、めねじ孔90とねじ軸部112との螺合を介して、軸部材110が軸方向すなわち上方へ移動されるとともに、弁体100が弁シート部28から離れていくことにより、弁シート部28が開かれていく。このとき、バルブスプリング98は、弁体100の上昇にともなって圧縮されていく。そして、弁体100が弁シート部28から最大離れることによって全開位置となる(図5参照。)。
【0046】
また、ISCバルブ34の全開状態において、制御手段(図示しない。)からステッピングモータ55に閉弁信号が出力されると、ロータ60が閉弁方向に回転(例えば、逆転)される。これにより、めねじ孔90とねじ軸部112との螺合を介して、軸部材110が軸方向すなわち下方へ移動されるとともに、弁体100が弁シート部28を閉じていく。このとき、バルブスプリング98は、弁体100の下降にともなって弾性的に伸長していく。そして、弁体100が弁シート部28に接触することによって全閉位置となる(図4参照。)。
上記したように、ステッピングモータ55の駆動制御に基づいて、弁体100が所定量移動されることにより、バイパス通路48を流れる吸入空気量が調整すなわち制御される。
【0047】
次に、前記ISCバルブ34の弁体100の構成について詳述する。図8は弁体を示す断面図である。弁体100は、弁軸としての前記軸部材110と、軸部材110の先端部にインサート成形により一体形成された先細り状の弁本体120と、弁本体120の外周部を取り囲む円筒状の耐摩耗部材130を備えている。以下、説明の都合上、軸部材110、耐摩耗部材130、弁本体120の順に説明する。
【0048】
軸部材110を説明する。図9は軸部材を示す側面図、図10は図9のX−X線矢視断面図である。
図9に示すように、軸部材110は、金属製で、おねじを有するねじ軸部112と、異形断面のスライド軸部113とを、同一軸線100L上に有している。ねじ軸部112は、前に述べたように、ISCバルブ34(図7参照。)におけるロータ60のロータ本体87のめねじ孔90に螺合される。また、スライド軸部113は、相互に平行する二つの平坦面を有する断面小判形状に形成されている(図10参照。)。スライド軸部113は、前に述べたように、ISCバルブ34(図7参照。)におけるリテーナ80のガイド筒部82内に軸回り方向に回り止めされた状態で軸方向にスライド可能に挿入される。また、ねじ軸部112と前記スライド軸部113との間には、同一軸線100Lをなす小径の中間軸部114が形成されている。スライド軸部113の先端部には、先細りテーパ状をなす傘状部115が形成されている。さらに、スライド軸部113と傘状部115との間の外周面には環状をなす溝部116が形成されている。
【0049】
次に、耐摩耗部材130を説明する。図11は耐摩耗部材を示す側断面図、図12は図11のXII−XII線矢視断面図である。
図11に示すように、耐摩耗部材130は、金属製で、ほぼ円錐筒状に形成されている。耐摩耗部材130は、その基端部(図11において左部)において直円筒状の大径筒部131と、その先端部(図11において右部)において大径筒部131に比べて小径をなす直円筒状の小径筒部132と、大径筒部131と小径筒部132とを径方向に連設するほぼリング板状の連設部133とを有している。小径筒部132の外周面には、先細り状をなすテーパ面134が形成されている。耐摩耗部材130のテーパ面134(詳しくは、軸方向の中間部)には、前記弁体100が前記弁シート部28を閉じた際(図4参照。)に、弁シート部28に全周に亘って接触する可能となっている。また、連設部133の外周部には、先細り状をなしかつ大径筒部131と小径筒部132との外周面間をつなぐテーパ面135が形成されている。テーパ面135は、小径筒部132のテーパ面134のテーパ角度に比べて大きいテーパ角を有している。このテーパ角度の大きいテーパ面135により、耐摩耗部材130の連設部133の外側面に、吸入空気に含まれるデポジット、カーボン等が溜まることを防止あるいは低減することができる。
【0050】
また、前記小径筒部132の基端部(図11において左端部)の内周面には、環状のフランジ部136が形成されている。フランジ部136には、適数個(図12では左右2個を示す。)の切欠き状の凹部137が形成されている。また、前記連設部133の外側面には、フランジ部136の基端部から大径筒部131側の端面に向けて口径を次第に大きくするテーパ孔面138が形成されている(図11参照。)。なお、耐摩耗部材130は、本明細書でいう「耐摩耗層」に相当する。
【0051】
次に、弁本体120を説明する。図8に示すように、弁本体120は、樹脂製で、前記軸部材110の傘状部115を含むスライド軸部113の先端部と、前記耐摩耗部材130との間にインサート成形により一体形成されている。軸部材110の溝部116内に弁本体120の樹脂部が入り込むことにより、軸部材110に対して弁本体120が軸方向に位置決めされる(図8参照。)。また、スライド軸部113の先端部の外周面を弁本体120の樹脂部が取り巻くことにより、軸部材110に対して弁本体120が軸回り方向すなわち周方向に位置決めされる(図10参照。)なお、軸部材110の溝部116及びスライド軸部113は、本明細書でいう「弁本体の軸方向及び周方向の位置ずれを制限する位置ずれ制限手段」を構成している。
【0052】
前記耐摩耗部材130のフランジ部136を弁本体120の樹脂部が軸方向に取り巻くことにより、耐摩耗部材130に対して弁本体120が軸方向に位置決めされる(図8参照。)。また、耐摩耗部材130のフランジ部136の凹部137内に弁本体120の樹脂部が入り込むことにより、耐摩耗部材130に対して弁本体120が軸回り方向すなわち周方向に位置決めされる(図12参照。)なお、耐摩耗部材130のフランジ部136及び凹部137は、本明細書でいう「弁本体の軸方向及び周方向の位置ずれを制限する位置ずれ制限手段」を構成している。
【0053】
前記弁本体120における前記耐摩耗部材130のフランジ部136の大径筒部131側には、連設部133に面するばね座部122が形成されている。ばね座部122は、前記ISCバルブ34のバルブスプリング98(図7参照。)を支持する。また、弁本体120における先端部には、耐摩耗部材130の先端部より突出する先細り状の弁先部124が形成されている。弁先部124の外周面には、耐摩耗部材130のテーパ面134に連続する先細り状をなすテーパ面125が形成されている。なお、弁先部124のテーパ面125と耐摩耗部材130のテーパ面134とは、相互に連続するテーパ面、あるいは、大径側から小径側に向かって段階的にテーパ角度を小さくする複数段のテーパ面によって形成することができる。また、弁本体120には、軸線100Lに直交する平坦面で形成された先端面126が形成されている。
【0054】
前記弁本体120には、ばね座部122の外周部から後方(図8において左方)に延びる円筒状のカバー筒部127が一体形成されている。カバー筒部127は、前記耐摩耗部材130の大径筒部131内を取り巻いているとともに、前記軸部材110のスライド軸部113の回りを所定間隔を隔てて取り囲んでいる。カバー筒部127は、ISCバルブ34(図7参照。)におけるバルブスプリング98の回りをカバーする。これにより、リテーナ80のガイド筒部82と軸部材110のスライド軸部113との間に、吸入空気に含まれるデポジット等の異物が侵入することを抑制することができ、異物による弁体100の作動不良を防止あるいは低減することができる。
【0055】
次に、前記弁体100の成形方法について説明する。図13は弁本体の成形型を示す断面図である。
図13に示すように、成形型(成形金型とも呼ばれる。)140は、固定型141と、固定型141に対して型閉じ及び型開き可能な可動型142、及び、複数(図13では2つを示す。)の側面型143とを備えている。固定型141は、前記耐摩耗部材130をセット可能に形成されている。また、可動型142は、前記軸部材110をセット可能に形成されている。また、固定型141に対して、可動型142及び側面型143を型閉じすることによって、弁本体120を成形するためのキャビティ144が形成される。また、固定型141には、キャビティ144の先端面(図13において右側面)に連通する樹脂射出ゲート145が設けられている。また、固定型141と側面型143との型合わせ面146は、耐摩耗部材130の大径筒部131の開放端面に対応する面147と同一平面上に設定されている。また、可動型142と側面型143との型合わせ面148は、弁本体120のカバー筒部127の開放端面に対応する面149と同一平面上に設定されている。
【0056】
上記成形型140(図13参照。)により、弁体100を成形する場合を説明する。まず、固定型141に耐摩耗部材130をセットするとともに、可動型142に軸部材110をセットする。この状態で、成形型140の各型141,142,143を型閉じする。続いて、キャビティ144内に、固定型141の樹脂射出ゲート145から樹脂(詳しくは、溶融樹脂)を射出することにより弁本体120を射出成形する。そして、弁本体120を形成する樹脂部が硬化した後で、各型141,142,143を型開きしてから、成形品である弁体100を取り出せばよい。
【0057】
上記弁体100は、前に述べたように、前記ISCバルブ34に弁体100として組み込まれる(図7参照。)。さらに、弁体100を備えたISCバルブ34は、前に述べたように、前記デバイスブロック3のブロック本体30に設置される(図2及び図3参照。)。さらに、ISCバルブ34が設置されたブロック本体30は、前に述べたように、スロットルボデー2のボデー本体5のブロック設置部20に設置される(図2及び図3参照。)。そして、ISCバルブ34は、ステッピングモータ55の作動による弁体100の軸方向(図3において左右方向)の進退移動をもって、ブロック設置部20のバイパス出口孔24の弁シート部28を開閉してその通路断面積を調整することにより、バイパス通路48を流れる吸入空気量を所定量に制御する。
【0058】
しかして、前記弁体100の弁本体120の樹脂材料としては、ガラス強化樹脂材料が使用されている。詳しくは、弁本体120の樹脂材料には、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)に、ガラス繊維を30重量%〜60重量%程度混合したものを使用するのが好ましい。また、弁本体120の樹脂材料には、ポリフェニレンサルファイド樹脂に、カーボン繊維を20重量%〜40重量%、摩擦低減材としてポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を20重量%以下混合したものを使用しても良い。さらに、弁本体120の樹脂材料には、ポリフェニレンサルファイド樹脂に、ガラス繊維を20重量%〜40重量%、摩擦低減材としてポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を20重量%以下混合したものを使用しても良い。また、弁本体120の樹脂材料には、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)に、ガラス繊維を20重量%〜45重量%程度混合したものを使用しても良い。
【0059】
また、前記弁体100の耐摩耗部材130の金属材料には、耐摩耗性に優れた合金材料、軽金属材料等の金属材料が使用されている。とくに、本実施例では、耐摩耗部材130の金属材料として、ステンレス材あるいはアルミニウム材のいずれかの金属材料が使用されている。
また、弁体100の軸部材110の金属材料には、耐摩耗部材130と同様、耐摩耗性に優れた合金材料、軽金属材料等の金属材料が使用されている。とくに、本実施例では、軸部材110の金属材料として、ステンレス材あるいはアルミニウム材のいずれかの金属材料が使用されている。
なお、軸部材110、耐摩耗部材130としては、錆をほとんど生じることなく、硬い金属材料を用いることが望ましい。
【0060】
また、前記弁シート部28を含むボデー本体5の樹脂材料としては、ガラス強化樹脂材料が使用されている。ボデー本体5の樹脂材料には、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)に、ガラス繊維及びガラスビーズを30重量%〜70重量%程度混合したものを使用するのが好ましい。また、ボデー本体5の樹脂材料には、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)に、ガラス繊維を20〜45重量%程度混合したものを使用しても良い。さらに、ボデー本体5の樹脂材料には、ポリアミド樹脂(ナイロン(PA6、PA66)樹脂)に、ガラス繊維を20〜45重量%程度混合したものを使用しても良い。また、ボデー本体5の樹脂材料には、上記樹脂材料に、摩擦低減材としてポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を20重量%以下混合したものを使用しても良い。ここで、ボデー本体5を形成する樹脂材料に摩擦低減材としてポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を混合することにより、弁シート部28に対する弁体100のくい付きを防止あるいは低減することができる。
【0061】
上記した弁体100(図8参照。)によると、樹脂材料で形成された弁本体120に、弁シート部28(図4参照。)に接触可能でかつ耐摩耗性に優れた耐摩耗部材(耐摩耗層)130を設けている。したがって、全閉時において、弁体100の耐摩耗部材(耐摩耗層)130が、弁シート部(樹脂層)28に接触することにより、樹脂同士の接触を回避することができる。このため、弁体100と弁シート部28との間の凝着摩耗の発生を防止あるいは低減することができる。
【0062】
また、弁本体120の耐摩耗層が、合金材料、軽金属材料等の金属材料で形成された 耐摩耗部材130からなる弁体100を提供することができる。
また、樹脂材料で形成された弁本体120に耐摩耗部材130を部分的に設けるので、弁本体120全体を金属材料で形成する場合に比べて、弁体100の軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0063】
また、耐摩耗部材130が、ステンレス材あるいはアルミニウム材のいずれかの金属材料で形成されていることにより、弁体100を軽量化することができ、弁体100の作動性を向上することができる。
【0064】
また、弁本体120を耐摩耗部材130にインサート成形により容易に一体形成することができる。
【0065】
また、弁本体120を耐摩耗部材130にインサート成形すると同時に、耐摩耗部材130の位置ずれ制限手段(フランジ部136及び凹部137)により、耐摩耗部材130に対する弁本体120の軸方向及び周方向の位置ずれを制限することができる。
【0066】
また、ステッピングモータ55の作動により軸方向に移動される軸部材110に弁本体120をインサート成形により容易に一体形成することができる。
【0067】
また、弁本体120を軸部材110にインサート成形すると同時に、軸部材110の位置ずれ制限手段(溝部116及びスライド軸部113)により、軸部材110に対する弁本体120の軸方向及び周方向の位置ずれを制限することができる。また、本実施例では、ISCバルブ34のリテーナ80のガイド筒部82により、軸部材110の周方向の回り止めがなされる軸部材110のスライド軸部113を利用することにより、軸部材110に対する弁本体120の周方向の位置ずれを制限するための専用の位置ずれ手段を設けなくてよい。
【0068】
また、前記したISCバルブ(流量制御弁)34(図7参照。)によると、弁体100と弁シート部28との間の凝着摩耗の発生を防止することのできる弁体100を備えたISCバルブ(流量制御弁)34を提供することができる。
【0069】
また、アクチュエータとしてのステッピングモータ55(図7参照。)が、ロータ60の回転に基づいて軸方向に移動されかつ弁体100を一体化した軸部材110を備える。このため、軸部材110と一体で弁体100が開閉することにより、弁体100の開閉にかかる直進性を向上することができる。
【0070】
また、前記した流量制御装置4(図2及び図3参照。)によると、弁体100と弁シート部28との相互に接触し合う接触部のうち、弁シート部28を樹脂層で形成するとともに、弁体100の接触部を耐摩耗性に優れた耐摩耗部材(耐摩耗層)130で形成したものである。したがって、全閉時において、弁体100と弁シート部28とによる樹脂同士の接触を回避することができる。このため、弁体100と弁シート部28との間の凝着摩耗の発生を防止あるいは低減することができる。
【0071】
また、前記エンジンの流量制御装置4(図2及び図3参照。)によると、エンジンのボア7に設けられたスロットルバルブ14を迂回しかつ通路壁(ボデー本体5のブロック設置部20、及び、デバイスブロック3のブロック本体30)に形成された弁シート部28を有するバイパス通路48と、ステッピングモータ(アクチュエータ)55の作動により弁体100を軸方向に移動させることにより弁シート部28を開閉するアイドルスピードコントロールバルブ34とを備える。そして、弁体100と弁シート部28との相互に接触し合う接触部のうち、弁シート部28を樹脂層で形成するとともに、弁体100の接触部を耐摩耗性に優れた耐摩耗部材(耐摩耗層)130で形成したものである。したがって、全閉時において、弁体100と弁シート部28とによる樹脂同士の接触を回避することができる。このため、弁体100と弁シート部28との間の凝着摩耗の発生を防止あるいは低減することができる。これにより、凝着摩耗の発生によるアイドル回転数の不本意な上昇を防止あるいは低減することができる。
【0072】
また、ISCバルブ34が、弁体100と弁シート部28との間の凝着摩耗の発生を防止することのできる弁体100を備えた流量制御弁である、エンジンの流量制御装置4を提供することができる。
【0073】
[実施例2]
本発明の実施例2を図面にしたがって説明する。本実施例は、前記実施例1の一部を変更したものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明を省略する。なお、図14は弁体を示す側断面図、図15はISCバルブを示す断面図である。
本実施例は、図14に示すように、前記実施例1(図8参照。)における弁体100の耐摩耗部材130に代えて、弁本体120の表面処理により形成されたDLCコート(非晶質炭素被膜)等の表面処理層130Aにより耐摩耗層を形成したものである。また、、本実施例における弁体100Aの弁本体120Aには、前記耐摩耗部材130に形成されているテーパ面134,135に相当するテーパ面134A,135Aが形成されている。また、表面処理層130Aは、弁本体120Aの外表面であるテーパ面125A,134A,135A及び先端面126Aに形成されている。
また、図15に示すように、本実施例の弁体100Aも、前記実施例1の弁体100と同様に、ISCバルブ34の弁体100Aとして備えることができる。
【0074】
本実施例の弁体100Aによっても、前記実施例1と同様の作用・効果を得ることができる。
また、表面処理層130Aは、耐摩耗部材130に比べて、弁体100の軽量化に有効で、弁体100の作動性を向上することができる。
また、DLCコート(非晶質炭素被膜)等の表面処理層130Aは、樹脂材料で形成された弁本体120Aの表面粗さを向上することができる。
【0075】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明のエンジンの流量制御装置4は、二輪車に採用されている単気筒4サイクルエンジン以外の四輪車用エンジン、多気筒エンジン、2サイクルエンジン等に適用することが可能である。また、上記実施例では、ISCバルブ34の弁体100に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、そのような用途に限定されず、各種の流量制御弁の弁体として広く実施可能である。また、流量制御装置4は、スロットルボデー2以外の流体通路の通路壁に設置することができる。また、弁体100,100A及びISCバルブ34は、エンジンの吸入空気以外の流体の開閉に用いる弁体100,100A及び流量量制御弁としても適用することができる。また、デバイスブロック3には、スロットルポジションセンサ32及びISCバルブ34以外のデバイスをモジュール化してもよい。また、前記実施例では、弁シート部28を樹脂層で形成したが、弁体100の接触部を樹脂層で形成した場合には、弁シート部28を耐摩耗層(耐摩耗部材、表面処理層)で形成すればよい。また、樹脂層、及び、耐摩耗層は、弁体100,10Aと弁シート部28との相互に接触し合う接触部に少なくとも設けられていればよい。また、前記実施例では、ボデー本体5を樹脂材料により形成したが、ボデー本体5を合金材料、軽金属材料等の金属材料で形成することもできる。また、前記実施例では、流量制御装置4をデバイスブロック3に設置する例を示したが、流量制御装置4は、ボデー本体5、インテークマニホールド、あるいは、その他の流体通路等に設置することも可能である。また、前記実施例では、エンジンのスロットルバルブ14をバイパスするバイパス通路48に設置される流量制御装置4について説明したが、流量制御装置4は、バイパス通路48以外の空気通路に設置することも可能である。
【0076】
また、アクチュエータとしては、前記実施例のステッピングモータ55に代えて、DCモータ、ブラシレスモータを使用することができる。また、前記実施例では、耐摩耗部材130を円筒状に形成したが、耐摩耗部材130を断面円弧状をなす複数の構成要素の組合わせにより構成することができる。また、前記実施例では、耐摩耗部材130に弁本体120をインサート成形したが、樹脂材料で形成された弁本体120に耐摩耗部材130を接着、圧入等により取り付けることもできる。また、前記実施例では、軸部材110に弁本体120,120Aをインサート成形したが、樹脂材料で形成された弁本体120に軸部材110をその軸部材に設けたセルフタッピングねじで取り付けることもできる。また、前記実施例では、弁体100に軸部材110を備えたが、軸部材110を省略したり、軸部材110に代えて専用の弁軸を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施例1にかかるエンジンの吸気装置を示す断面図である。
【図2】スロットルボデーと流量制御装置との関係を示す断面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】アイドルスピードコントロールバルブの全閉状態における弁体と弁シート部との関係を示す断面図である。
【図5】アイドルスピードコントロールバルブの全開状態における弁体と弁シート部との関係を示す断面図である。
【図6】アイドルスピードコントロールバルブを示す側面図である。
【図7】図6のVII−VII線矢視断面図である。
【図8】弁体を示す側断面図である。
【図9】軸部材を示す側面図である。
【図10】図9のX−X線矢視断面図である。
【図11】耐摩耗部材を示す側断面図である。
【図12】図11のXII−XII線矢視断面図である。
【図13】弁本体の成形型を示す断面図である。
【図14】本発明の実施例2にかかる弁体を示す側断面図である。
【図15】本発明の実施例2にかかるアイドルスピードコントロールバルブを示す断面図である。
【図16】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 吸気装置
2 スロットルボデー
3 デバイスブロック
4 流量制御装置
5 ボデー本体
7 ボア(吸気通路)
14 スロットルバルブ
20 ブロック設置部(通路壁)
28 弁シート部
30 ブロック本体(通路壁)
34 ISCバルブ(流量制御弁)
48 バイパス通路(流体通路、補助空気通路)
55 ステッピングモータ(アクチュエータ)
100,100A 弁体
110 軸部材
113 スライド軸部(位置ずれ制限手段)
116 溝部(位置ずれ制限手段)
120,120A 弁本体
130 耐摩耗部材(耐摩耗層)
130A 表面処理層(耐摩耗層)
136 フランジ部(位置ずれ制限手段)
137 凹部(位置ずれ制限手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流体通路の通路壁に形成された弁シート部を軸方向の移動により開閉しかつ樹脂材料で形成された弁本体を主体とする弁体であって、
前記弁本体に、前記弁シート部に接触可能でかつ耐摩耗性に優れた耐摩耗層を設けたことを特徴とする弁体。
【請求項2】
請求項1に記載の弁体であって、
前記弁本体の耐摩耗層が、合金材料、軽金属材料等の金属材料で形成された耐摩耗部材からなることを特徴とする弁体。
【請求項3】
請求項2に記載の弁体であって、
前記耐摩耗部材が、ステンレス材あるいはアルミニウム材のいずれかの金属材料で形成されていることを特徴とする弁体。
【請求項4】
請求項2または3に記載の弁体であって、
前記弁本体が、前記耐摩耗部材にインサート成形により一体形成されていることを特徴とする弁体。
【請求項5】
請求項4に記載の弁体であって、
前記耐摩耗部材に、前記弁本体の軸方向及び周方向の位置ずれを制限する位置ずれ制限手段が設けられていることを特徴とする弁体。
【請求項6】
請求項1に記載の弁体であって、
前記弁本体の耐摩耗層が、DLCコート等の表面処理により形成された表面処理層からなることを特徴とする弁体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の弁体であって、
前記弁本体が、アクチュエータの作動により軸方向に移動される軸部材にインサート成形により一体形成されていることを特徴とする弁体。
【請求項8】
請求項7に記載の弁体であって、
前記軸部材に、前記弁本体の軸方向及び周方向の位置ずれを制限する位置ずれ制限手段が設けられていることを特徴とする弁体。
【請求項9】
流体が流れる流体通路の通路壁に形成された弁シート部を、アクチュエータの作動により軸方向に移動される弁体により開閉する流量制御弁であって、
前記弁体が、請求項1〜8のいずれか1つに記載の弁体であることを特徴とする流量制御弁。
【請求項10】
請求項9に記載の流量制御弁であって、
前記アクチュエータが、ステッピングモータであり、
前記ステッピングモータが、ロータの回転に基づいて軸方向に移動されかつ前記弁体を一体化した軸部材を備える
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項11】
流体が流れる流体通路の通路壁に形成された弁シート部と、
前記弁シート部を軸方向の移動により開閉する弁体と
を備える流量制御装置であって、
前記弁体と前記弁シート部との相互に接触し合う接触部のいずれか一方の接触部を樹脂材料からなる樹脂層で形成するとともに、他方の接触部を耐摩耗性に優れた耐摩耗層で形成したことを特徴とする流量制御装置。
【請求項12】
エンジンの吸気通路に設けられたスロットルバルブを迂回しかつ通路壁に形成された弁シート部を有する補助空気通路と、
前記弁シート部を、アクチュエータの作動により弁体を軸方向に移動させることにより開閉するアイドルスピードコントロールバルブと
を備えるエンジンの流量制御装置であって、
前記弁体と前記弁シート部との相互に接触し合う接触部のいずれか一方の接触部を樹脂材料からなる樹脂層で形成するとともに、他方の接触部を耐摩耗性に優れた耐摩耗層で形成したことを特徴とするエンジンの流量制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載のエンジンの流量制御装置であって、
前記アイドルスピードコントロールバルブが、請求項9または10に記載の流量制御弁であることを特徴とするエンジンの流量制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−127238(P2007−127238A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322101(P2005−322101)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】